以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成において、同一の構造部については同一の符号を付して示し、重複する説明は省略する。
[第1の実施形態]図1は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の圧電アクチュエータ6の縦断面図である。
[構成の説明]図1、図2に示すように、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、少なくとも一方の面に圧電素子1が貼り付けられている台座2と、台座2の少なくとも一方の面と貼り付けられて接続している振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有する材料で構成されている圧電性振動膜であり、支持部材4と接続されている。
図1、図2に示すように、圧電素子1、台座2、圧電特性を有する振動膜3、支持部材4はいずれも円形で、これらの4つの部材は同一中心となるように(同心円状に)配置されている。また、振動膜3の外周部は、円形枠状に形成された支持部材4に接続されている。なお、圧電素子1、台座2、振動膜3、支持部材4の形状は必ずしも円形に限らず、多角形でもよい。
[部分の説明]圧電素子1は、図1に示すように、互いに平行に対向する2つの主面10a、10bを有する圧電板(圧電セラミックス)である。圧電板の主面10aには上部電極層が形成され、また主面bには下部電極層(いずれも不図示)が形成されている。特に限定されるものではないが、圧電板の分極方向は、本実施形態では図示上下方向(圧電素子の厚み方向)において上向きとなっている。
圧電素子1は、図3に示すように上部電極層および下部電極層に交流電圧が印加され交流的な電界が付与されると、例えばその主面10aは拡大するように、また主面bは縮小するように、半径方向の伸縮運動(径拡がり運動)を行う。換言すれば、圧電素子1は、主面が拡大するような第1の変形モードと、主面が縮小するような第2の変形モードとを繰り返すような伸縮運動を行う。
台座2は、図2に示すように少なくとも一方の面に圧電素子1が貼り付けられており、圧電素子1より面積が大きい。台座2は、上記の構造により圧電素子1の伸縮運動を上下方向の振動に変換する機能を有する。台座2は、伸縮性のある材料である弾性体で構成されその材質としては、金属材料(例えばステンレス、アルミ合金、リン青銅、チタン、またはチタン合金、鉄ニッケル合金、鉄ニッケル合金、マグネシウム合金)や、樹脂材料(例えばエポキシ、アクリル、ポリイミド、またはポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリエステル、ポリプロピレンなど)が挙げられる。また台座2は、圧電素子1を構成するセラミック材料より低剛性の材料を広く用いることが望ましい。
台座2の表面は、圧電素子1の主面10b(下部電極層)と接続しているため、台座2は圧電素子1を拘束している。図1では、台座2は圧電素子1が貼り付けられる領域を拘束部20aとして示され、圧電素子が拘束されないそれ以外の領域(拘束部20aを包囲する領域)を非拘束部20bとして示している。
振動膜3は、台座2の少なくとも一方の面と、貼りつけられて接続している。振動膜3は、台座2の面積より大きく、端部において支持部材4と接続している。振動膜3は、圧電アクチュエータ6の振動振幅を増大させるための膜部材であり、台座2よりも低い剛性の材料であることが望ましい。
振動膜3の材質は圧電特性を有する機能分子材料(圧電高分子フィルム)からなる。例えば振動膜3は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの圧電高分子フィルムである。振動膜3の一方の主面には上部電極層、また他方の主面には下部電極層(いずれも不図示)が形成されている。振動膜3の分極方向は特に限定されるものではないが、本実施形態では、図示上下方向(振動膜3の厚み方向)上向きとなっている。
振動膜3は圧電素子1と同様に、上部電極層および下部電極層に交流電圧が印加され交流的な電界が付与されると、一方の主面は拡大し、他方の主面は縮小するような、半径方向の伸縮運動(径拡がり運動)を行う。換言すれば、振動膜3は、主面が拡大するような第1の変形モードと、主面が縮小するような第2の変形モードとを繰り返すような伸縮運動を行う(図3の圧電素子と同様な振動モードを示す)。
振動膜3の厚みは、例えば10μm以上500μm以下であればよい。特に、振動膜30が平らなシート材の場合、好ましくは20μm以上200μm以下が好ましい。
支持部材4は、圧電アクチュエータ6の筐体を構成する支持材料であり、その材質は特に限定されるものではなく、樹脂材料であってもよいし金属材料であってもよい。なお、圧電素子1と台座2との接合、および、台座2と振動膜3との接合、振動膜3と支持部材4との接合には、例えば、エポキシ系接着剤が利用可能である。
接着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、あまりに厚すぎると接着剤層に吸収される振動エネルギーが増大し、十分な振動振幅が得られなくなる可能性もあるため、例えば20μm以下であることが好ましい。
[作用の説明]次に、本発明の第1の実施形態における動作について説明する。
圧電素子1は、電圧が印加されていない中立の状態(図2参照)から、圧電素子1に所定の電圧(電界)を印加すると、図3(a)の矢印pに示すように、圧電素子1はその面積が広がる方向に変形する。
圧電素子1の下面(主面10b)は、台座2に拘束されているため、この拘束効果により、圧電素子1の上面と下面との間に変形の量の差が生じる。その結果、図示するような凸型の変形モードとなる。この変形モードでは、圧電素子1および台座2、さらには台座2を支持している振動膜3が、図示上方に向かって凸となるような湾曲状態となる。
また圧電素子1は、上記とは逆の電界を印加すると、図3(b)の矢印qに示すように、圧電素子1がその面積が減少する方向に変形する。圧電素子1は台座2による拘束効果により、圧電素子1の上面と下面との間に変形量の差が生じる。その結果、図示するような凹型の変形モードとなる。この変形モードでは、上記とは逆に、圧電素子1、台座2、および振動膜3が、図示下方に向かって凸となるような湾曲状態となっている。本実施形態の圧電アクチュエータ6は、上述のような凸型の変形モードと凹型の変形モードを交互に繰り返すことで、圧電素子1、拘束部材2、および振動膜3が上下方向に振動する。
圧電特性を有している振動膜3は、圧電素子1と同様に、交流電圧を印加することで伸縮運動を繰り返し、厚み方向である上下方向に振動を行う。そして圧電アクチュエータ6は、圧電素子1から振動膜3に伝播される振動と、振動膜3自体の振動とを同期させて、振動を重ね合わすことで、振動量は増幅させて音圧レベルを増加することができる。
[効果の説明]第1の実施形態における効果について説明する。第1の実施形態における構成によれば、台座2と支持部材4とを接続する部材が、圧電特性を有する振動膜3により接続されている。圧電素子1は、交流電圧を印加されることにより伸縮運動を行い、その振動は台座2から振動膜3に伝播される。そして振動膜3自体は、圧電特性を有しているため圧電素子と同様に、交流電圧を1印加されることで厚み方向に伸縮運動を行う。
その結果、圧電アクチュエータ6は、振動膜3に伝播された圧電素子1の振動と、振動膜3自体の伸縮運動による振動とを同期させることで、振動量を増幅させ、大きな音圧レベルを得ることができる。
また第1の実施形態における構成において、圧電特性を有する振動膜3は、台座2に比べて相対的に低剛性な部材で構成されているため、より変形しやすいものとなっている。そのため、台座2の外周部が支持部材4に直接支持される従来の構成に比べて、基本共振周波数を低くさせることができ、広い周波数帯域を得ることができる。
本実施形態の圧電アクチュエータ6は、広い周波数帯域で高い音圧レベルで振動する十分な振動振幅を得ることができ、音響素子として用いた場合、良好な周波数特性を実現することが可能となる。
[第2の実施形態]次に第2の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
[構成の説明]図4に第2の実施形態における圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、第1の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、少なくとも一方の面に圧電素子1が貼り付けられる台座2と、台座2の少なくとも一方の面と貼り付けられて接続する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されており、各構成要素の接続関係については、第1の実施形態と同様の接続関係である。
第2の実施形態と第1の実施形態との相違点として、圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。制御部5は、圧電素子1に設けられた上部電極層および下部電極層(いずれも不図示)と接続し、また振動膜3に設けられた上部電極層および下部電極層と接続している。制御部5はメモリ7とも接続している。その他の構成については上記の実施形態と同様である。
制御部5は、圧電素子1および振動膜3に設けられたそれぞれの電極層に、周波数に応じて交流電圧を独立的に印加することができる。そのため、制御部5は交流電圧を独立的に印加することで、圧電素子1および振動膜3の主面が拡大するような第1の変形モードと、主面が縮小するような第2の変形モードとを繰り返すような伸縮運動を、独立的に制御することができる。
メモリ7は、事前に圧電アクチュエータ6の音響測定を行うことで、図5に示すような音響特性が急峻な山となる周波数Aと、音響特性が急峻な谷となる周波数Bとなることを抑制する、圧電素子1と振動膜3の最適化した駆動条件を記憶している。なお図5は、圧電アクチュエータ6を駆動したときの、音圧レベルの周波数特性を示す図である。
つまり、メモリ7は、音響特性が急峻な山となる周波数Aにおいて、音圧レベルを低下させるように、圧電素子1と振動膜3とを独立的に駆動させる駆動条件と、音響特性が急峻な谷となる周波数Bにおいて、音圧レベルを増加させるように、圧電素子1と振動膜3とを独立的に駆動させる駆動条件とを保存している。
[作用の説明]次に、本発明の第2の実施形態における動作について説明する。なお図6は、圧電素子1と振動膜3の伸縮運動を断面図として簡易的に表したものである。図6(a)は、音響特性が急峻な山となる周波数Aにおける圧電素子1と振動膜3の振動様態であり、図6(b)は、音響特性が急峻な谷となる周波数Bにおける圧電素子1と振動膜3の振動様態である。
制御部5は、例えば図6(a)に示される音響特性が急峻な山となる振動様態を以下のように抑制する。制御部5は、音響特性が急峻な山となる周波数において、音圧レベルを低下するために、振動膜3の駆動を停止させ、圧電素子1のみを駆動するように制御する。
圧電アクチュエータ6は、図6(a)のように振動膜3の振動を停止させ、圧電素子1のみを駆動するため、周波数Aにおいて音圧レベルを低下させることができる。そのため、圧電アクチュエータ6は、図7に示すように周波数Aにおいて、音響特性が急峻な山となることを抑制できるため、音圧レベルの平坦化を実現することができる。なお図7は、音圧レベルの平坦化を行った場合の、音圧レベルの周波数特性を示す図である。
なお、音響特性が急峻な山となることを抑制するための圧電素子1と振動膜3の駆動方法は上記に限られるものではなく、圧電素子1と振動膜3を独立的に駆動させることで音圧レベルを低下させることができるものであればよい。例えば、図6(a)の振動様態の場合、制御部5は、振動膜3の振動を圧電素子1とは逆相に駆動させることでも、音圧レベルを低下させることができる。
一方、制御部5は、例えば図6(b)にように示される音響特性が急峻な谷となる振動様態を以下のように抑制する。制御部5は、振動様態が急峻な谷となる周波数において、音圧レベルを向上させるために、振動膜3を逆相で駆動するように制御させる。
圧電アクチュエータ6は、図6(b)にように振動膜3の振動を圧電素子1と逆相で駆動することで、周波数Bにおいて音圧レベルを増加させることができる。そのため圧電アクチュエータ6は、図7に示すように周波数Bおいて音響特性が、急峻な谷となることを抑制できるため、圧電アクチュエータ6は、音圧レベルの平坦化を実現することができる。
なお、音響特性が急峻な谷となることを抑制するための圧電素子1と振動膜3の駆動方法は上記に限られるものではなく、圧電素子1と振動膜3を独立的に駆動させることで音圧レベルを低下させることができるものであればよい。
[効果]第2の実施形態における効果について説明する。
第2の実施形態における圧電クチュエータ6は、制御部5が圧電素子1と振動膜3とを独立的に制御することで振動姿態を変形させ、分割振動を抑制することができる。
分割振動とは、位相が異なる(同相と逆位相)振動モードが規則的に混在した振動姿態を形成される。この分割振動における音響放射は、放射面内に混在した位相が異なる(同相と逆位相)振動モードが互いに位相を干渉し、放射音が打ち消されてしまう。
この分割振動が発生すると、面全体が同一方向に並進運動するピストン運動(基本共振周波数で発生する振動モード)と異なり、入力音響信号から音響振動への変換効率が、分割振動の発生周波数前後で著しく変化し、音響信号以外の音響を生じさせてしまう。
そこで、本発明の第2の実施の形態では制御部5は、急峻な山谷の要因となる分割振動の姿態に合わせて選択的に圧電素子1と振動膜3とに独立的に交流電圧を制御し、急峻な山谷となる形状を抑制させることができる。
そのため圧電クチュエータ6は、分割振動の発生により特定の周波数において、音が再生できなかったり、音が強調されたり、再生音が歪んだりして、音圧レベル周波数特性に起伏をもたらす原因を防ぐことができ、音圧レベルを高めるとともに、音圧レベルの平坦化を実現することができる。
本実施形態の圧電アクチュエータ6は、上記の効果に加え、振動膜3が台座2に比べ低剛性で構成されているため、基本共振周波数を低減させることができ、広い周波数帯域を得ることができる。
その結果、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、広い周波数帯域で高い音圧レベルで振動する十分な振動振幅を得ることができ、音響素子として用いた場合、良好な周波数特性を実現することが可能となる。
なお、従来、分割振動の抑制には、その振動姿態を考慮して特定の箇所に部材を配置し、局部的な剛性を調整することで、姿態を変形する方法が行われていた。しかしながら、この方法では、特定の分割振動を抑制できるが、これ以外の振動モードをも減衰させてしまい、音響特性が全般的に劣化する問題があった。
したがって、本発明では、特定周波数での振動姿態を選択的に抑制することができ、周波数が急峻な山や谷となる周波数のみを抑制することができることから、その利用価値は高い。
[第3の実施形態]次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
[構成の説明]図8に本実施形態の圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5を備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。
第3の実施形態と第2の実施形態との相違点は、圧電アクチュエータ6がセンサ8と処理部9を備えていることである。その他の構成については上記の実施形態と同様である。
センサ8は、圧電素子1または振動膜3に接続され、圧電アクチュエータ6の周波数に応じた、音圧レベルを測定する。そしてセンサ8は、制御部5に接続され、測定した情報を制御部9に送信する。
センサ8は、特に限定されず、設置位置も特に限定ない。センサ8は、圧電アクチュエータ6の周波数に応じた音圧レベルを特定できるものであればよく、音響マイクロホンなどがあげられる。
処理部9は、図5で示すような周波数と音圧レベルの関係から、音響特性が急峻な山となる周波数Aと、音響特性が急峻な谷となる周波数Bを抽出する。
そして処理部9は、抽出した音響特性が急峻な山となる周波数での振動様態(A1)、急峻な谷となる周波数での振動様態(B1)を特定する。そして処理部9は、周波数Aにおいて音響特性が急峻な山となること、また周波数Bにおいて音響特性が急峻な谷となることを抑制する、最適化した駆動条件を制御部5に送信する。
制御部5は圧電素子1に設けられた上部電極層および下部電極層(いずれも不図示)と接続している。また、制御部5は振動膜3に設けられた上部電極層および下部電極層(いずれも不図示)と接続している。
第3の実施形態では、圧電アクチュエータ6はセンサ8と処理部9とを備えることで、事前に音響測定を行いメモリ7に駆動条件の保存をする必要がなく、圧電アクチュエータ6の動作時おいても分割振動の発生を防ぐことができる。
[作用の説明]次に、第3の実施形態の作用について説明する。第3の実施形態における圧電アクチュエータ6の駆動方法を図9のフローチャートを用いて説明する。
S1において、制御部5は、圧電素子1の電極に交流電流を印加し、圧電アクチュエータ6を振動させる。次に、S2に処理を進める。
S2において、センサ8は、周波数ごとの音圧レベルを測定し、その情報を処理部9に送る。次に、S3に処理を進める。
S3において、処理部9は、センサ8から送られた圧電アクチュエータ6の周波数ごとの音圧レベルから、音響特性が山となる周波数Aを抽出した場合、S4に処理を進める。音響特性が山となる周波数Aを抽出できない場合は、S7に処理を進める。
S4において、処理部9は、抽出した音響特性が急峻な山となる周波数での振動様態(A1)を特定する。次に、S5に処理を進める。
S5において、処理部9は周波数Aにおいて音圧レベルを低下させ、音響特性が急峻な山となることを抑制する、最適化した駆動条件が算出し制御部5に送る。次に、S6に処理を進める。
S6において、制御部5は、処理部9から送信された情報に基づいて、周波数Aにおいて音圧レベルを低下させ音響特性が急峻な山となる振動様態を抑制するように、圧電素子1と振動膜3の駆動を独立的に制御する。
S7において、処理部9は、センサ8から送られた圧電アクチュエータ6の周波数ごとの音圧レベルから、音響特性が谷となる周波数Bを抽出した場合、S8に処理を進める。音響特性が谷となる周波数Bを抽出できない場合は、S11に処理を進める。
S8において、処理部9は、抽出した音響特性が急峻な谷となる周波数での振動様態(B1)を特定する。次に、S5に処理を進める。
S9において、処理部9は周波数Bにおいて音圧レベルを増加させ、音響特性が急峻な谷となることを抑制する、最適化した駆動条件が算出し制御部5に送る。次に、S10に処理を進める。
S10において、制御部5は、処理部9から送信された情報に基づいて、周波数Bにおいて音圧レベルを増加させ音響特性が急峻な谷となる振動様態を抑制するように、圧電素子1と振動膜3の駆動を独立的に制御する。
S11において、圧電アクチュエータ6は音圧レベルの平坦化を実現することができる。
[効果の説明]第3の実施形態における効果について説明する。第3の実施形態における圧電クチュエータ6は、センサ8と処理部9とを備えることで事前に音響測定を要することなく、分割振動を抑制することができる。
第3の実施形態における圧電アクチュエータ6は、センサ8が圧電アクチュエータ6の動作時の周波数ごとの音圧レベルを検知し、その情報に基づいて処理部9が算出した駆動条件に基づき、制御部5が圧電素子1と振動膜3とを独立的に制御することで振動姿態を変形させ、分割振動を抑制する。
すなわち処理部9は、圧電アクチュエータ6が動作時の周波数音圧レベル特性において急峻な山谷の要因となる分割振動の姿態と、それが発生する周波数を特定する。そして制御部5は、処理部9が算出した駆動条件に合わせて選択的に圧電素子1と振動膜3とに交流電圧を制御し、急峻な山谷となる形状を抑制することができる。
そのため圧電アクチュエータ6は、携帯機器などに搭載することによる外的要因や、圧電アクチュエータ6が搭載する携帯機器筐体の損傷や劣化など、使用状況による周囲環境よる音圧レベルの変化に対応することができる。そして、圧電アクチュエータ6は、センサ8により周囲環境による影響を受けた音響特性を測定することで、アクティブに音圧レベル特性が急峻な山谷に変化した場合でも、音圧レベルを高めるとともに、音圧レベルの平坦化を実現することができる。
つまり、圧電アクチュータ6が動作時において、周囲環境により分割振動の発生し特定の周波数において、音が再生できなかったり、音が強調されたり、再生音が歪んだりして、音圧レベル周波数特性に起伏をもたらす原因を防ぐことができる。
本実施形態の圧電アクチュエータ6は、上記の効果に加え、振動膜3が台座2に比べ低剛性で構成されているため、基本共振周波数を低減させることができ、広い周波数帯域を得ることができる。
その結果、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、広い周波数帯域で高い音圧レベルで振動する十分な振動振幅を得ることができ、音響素子として用いた場合、良好な周波数特性を実現することが可能となる。
[第4の実施形態]次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
[構成の説明]図10に第4の実施形態における圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。
第4の実施形態と上記の実施形態との相違点としては、圧電アクチュエータ6は、振動膜3は圧電セラミックスを樹脂膜内部に分散させて成形した複合圧電フィルムで構成されていることである。その他の構成については上記の実施形態と同様である。
振動膜3の材質は、圧電セラミックスを樹脂膜3a内部に分散させて成形した複合圧電フィルムであり、図10で示されるように圧電セラミックス3bをブロック上に加工し、エポキシ樹脂を含浸させることで形成される。振動膜3は、上記の実施形態と同様に圧電アクチュエータ6の振動振幅を増大させるための部材であり、台座2よりも低い剛性を有している。
図10(a)は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の断面図であり、振動膜3は、樹脂膜3aに圧電セラミックス3bを分散して成形することで、振動膜3の延在方向に圧電セラミックスと樹脂膜が交互に配列されている。なお、図10(b)に示すように、圧電セラミックスは樹脂膜の一部に成形されていてもよい。なお、圧電セラミックス3bは、上面から見て格子状に設けてもよいし、千鳥格子上に設けてもよい。
振動膜3は、圧電素子の表面が現れるまで研磨され、平行に対向する2つの主面に上部電極層および下部電極層(いずれも不図示)が形成されている。振動膜3の分極方向は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、図示上下方向(振動膜3の厚み方向)上向きとなっている。
[作用の説明]第4の実施形態における振動膜3は、上記の実施形態と同様に上部電極層および下部電極層に交流電圧が印加され交流的な電界が付与されると、その両主面が同時に拡大または縮小するような、半径方向の伸縮運動(径拡がり運動)を行う。振動膜3は、主面が拡大するような第1の変形モードと、主面が縮小するような第2の変形モードとを繰り返すような伸縮運動を行う(図3の圧電素子と同様な振動モードを示す)。
[効果の説明]第4の実施形態における効果について説明する。第4の実施形態における圧電クチュエータの振動膜3は、圧電セラミックスを樹脂膜内部に分散させて成形した複合圧電フィルムである。そのため、上記の第1〜第3の実施形態と同様に、圧電素子1と振動膜3とを独立的に駆動制御することで、音圧レベルを高めるとともに、音圧レベルの平坦化を実現することができる。
圧電性を有する振動膜3は、樹脂膜3aに比べコストが高いという問題があった。そこで、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、樹脂膜に圧電セラミックなどの圧電素子1を分散させた複合圧電フィルムを振動膜3として備えているため、コストを低減することができる。
また、圧電性を有する振動膜3は、樹脂膜3aに比べ傷つきやすいという品質の点においても問題があった。そこで、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、樹脂膜に圧電セラミックなどの圧電素子を分散させた複合圧電フィルムを振動膜3として備えているため、圧電セラミックを樹脂膜3aが保護することで、品質を向上させることができる。
本実施形態の圧電アクチュエータ6は、上記の効果に加え、振動膜3が台座2に比べ低剛性で構成されているため、基本共振周波数を低減させることができ、広い周波数帯域を得ることができる。
その結果、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、広い周波数帯域で高い音圧レベルで振動する十分な振動振幅を得ることができ、音響素子として用いた場合、良好な周波数特性を実現することが可能となる。
[第5の実施形態]次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
[構成の説明]図11に第5の実施形態における圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。
第5の実施形態と第4の実施形態との相違点としては、圧電アクチュエータ6は圧電特性を有する振動膜3の一方の面に、樹脂膜3a をエポキシ系接着剤により接合した複合材料であることである。その他の構成については上記の実施形態と同様である。
振動膜3と樹脂膜3aとからなる複合材料は、上記の実施形態と同様に圧電特性を有することで、圧電アクチュエータ6の振動振幅を増大させる部材であり、台座2よりも低い剛性を有している。
図12は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の断面図であり、振動膜3における振動方向の一方の面に、樹脂膜3aがエポキシ系接着剤により接合されている。なお振動膜3の、樹脂膜3aが接合される面は、図12では台座と反対側の面であるが、これに限定されない。
つまり、振動膜3と台座2との間に樹脂膜3aを介在させて、接合してもよい。
振動膜3は、平行に対向する2つの主面に上部電極層および下部電極層(いずれも不図示)が形成されている。振動膜3の分極方向は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、図示上下方向(振動膜3の厚み方向)上向きとなっている。
[作用の説明]第5の実施形態における振動膜3は、上記の実施形態と同様に上部電極層および下部電極層に交流電圧が印加され交流的な電界が付与されると、その両主面が同時に拡大または縮小するような、半径方向の伸縮運動(径拡がり運動)を行う。振動膜3は、主面が拡大するような第1の変形モードと、主面が縮小するような第2の変形モードとを繰り返すような伸縮運動を行う(図3の圧電素子と同様な振動モードを示す)。
[効果の説明]第5の実施形態における効果について説明する。第5の実施形態における圧電クチュエータの振動膜3は、一方の面に樹脂膜3aが接合されている。そのため、上記の実施形態と同様に、圧電素子1と振動膜3とを独立的に駆動制御することで、音圧レベルを高めるとともに、音圧レベルの平坦化を実現することができる。
圧電性を有する振動膜3は、品質の点において樹脂膜に比べ傷つきやすいという問題があった。そこで、本実施形態の圧電アクチュエータ6の振動膜3は、一方の面に樹脂膜3aが接合されているため、振動膜3を樹脂膜が保護することで、品質を向上させることができる。
本実施形態の圧電アクチュエータ6は、上記の効果に加え、振動膜3が台座2に比べ低剛性で構成されているため、基本共振周波数を低減させることができ、広い周波数帯域を得ることができる。
その結果、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、広い周波数帯域で高い音圧レベルで振動する十分な振動振幅を得ることができ、音響素子として用いた場合、良好な周波数特性を実現することが可能となる。
[第6の実施形態]次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
[構成の説明]図12に第6の実施形態における圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。
上記の実施形態と上記の実施形態との相違点としては、圧電アクチュエータ6は、台座2が圧電特性を有する振動膜3と同一の材料で形成されていることである。台座2の材質以外の構成については、上記の実施形態と同様である。台座2と振動膜3の部材は、圧電特性を有する高分子フィルムで構成することができる。
図12は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の断面図であり、台座2は上記の実施形態と同様に、圧電素子と接続する拘束部20aと、拘束部20aの外側を非拘束部20bと示している。
[作用の説明]第6の実施形態における振動膜3は、上記の実施形態と同様に上部電極層および下部電極層に交流電圧が印加され交流的な電界が付与されると、その両主面が同時に拡大または縮小するような、半径方向の伸縮運動(径拡がり運動)を行う。振動膜3は、主面が拡大するような第1の変形モードと、主面が縮小するような第2の変形モードとを繰り返すような伸縮運動を行う(図3の圧電素子と同様な振動モードを示す)。
また第6の実施形態における台座2は、振動膜3と同様な材質で形成されているため、台座2の非拘束部20bと振動膜3とで構成される変形しやすい領域A30が広くなることで、圧電アクチュエータ6として大きな変形を実現することができる。
なお、台座2は振動膜3と同様の材質であっても、台座2と圧電素子1が接続している領域A20は、領域A30に比べ変形しにくいため、ピストン運動を維持することができる。
[効果の説明]第6の実施形態における効果について説明する。第6の実施形態における台座2は、振動膜3と同様な材質で形成されているため、台座2の非拘束部20bと振動膜3とで構成される変形しやすい領域A30が広くなることで、圧電アクチュエータ6として大きな変形を実現することができる。
第6の実施形態における圧電アクチュエータ6は、基本共振周波数が低くなることを意味する。そして、基本共振周波数が下がるということは、音響素子の周波数特性の改善につながる。すなわち、基本共振周波数の低下により、低周波数帯域の音圧レベルが増加する。
[第7の実施形態]次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
[構成の説明]図13に第7の実施形態における圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。図14は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の上面図である。
上記の実施形態と第7の実施形態との相違点としては、圧電アクチュエータ6の振動膜3は、図13に示すように開口部3A形成されていることである。開口部3Aは円形であり、圧電素子1や台座2と同一中心となっていることが好ましいが、これに限定されない。なお、圧電素子1、台座2、振動膜3、支持部材4の形状は必ずしも円形に限らず、多角形でもよい。その他の構成については上記の実施形態と同様である。
振動膜3は、開口部3Aが形成されていることにより、台座2は、その裏面(図示下面)の外周付近のみが振動膜3により支持されることとなる。つまり、台座2の裏面は、開口部3Aに対応する領域が露出した構造となっている。
[作用の説明]上記のように構成された本実施形態の圧電アクチュエータ6は、圧電素子1を駆動源として上記実施形態同様に振動動作を行う。台座2は、外周部のみが支持される構成となっており、開口部3Aのところでは振動膜3による拘束を受けない。
[効果の説明]第7の実施形態における効果について説明する。第7の実施形態における圧電クチュエータ6の振動膜3は、開口部3Aが形成されていることにより、台座2は屈曲変形し易くなり、圧電アクチュエータ6の振動振幅が増大する。また、圧電アクチュエータ6は、台座2と振動膜3の見かけ上の剛性が低下するため、圧電アクチュエータ6の共振周波数が下がることを意味し、音響素子の周波数特性が改善される。
上記のような、振動膜3の開口部3Aによる作用効果に鑑みれば、開口部3Aの面積が大きくなるにしたがって、台座2がより屈曲変形し易くなる。そして、圧電アクチュエータ6の共振周波数も低減すると言える。なお、開口部3Aの形状は、円形に限らず矩形または多角形であってもよい。また、上記実施形態のように1つの開口部3Aだけでなく、複数の開口部3Aが設けられていてもよい。
[第8の実施形態]次に、本発明の第8の実施形態について説明する。
図14に第8の実施形態における圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。図14は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の上面図である。
上記の実施形態と第7の実施形態との相違点としては、圧電アクチュエータ6の圧電素子1は正方形に形成されていることである。その他の構成については上記の実施形態と同様である。
本実施形態の圧電アクチュータ6は、上記の実施形態の圧電素子1の輪郭形状のみを変更したものであり、その材質や基本的構造については上記の実施形態と同様である。例えば、圧電板の上下面にそれぞれ上部電極層と下部電極層とが形成されている点については、上記実施形態と同様である。
なお、圧電素子1の形状は、正方形に限らず多角形でもよい。
[効果の説明]第8の実施形態における効果について説明する。第8の実施形態における圧電クチュエータ6の圧電素子1は、正方形であるので、円形の圧電素子1と同様に対称性が高く、伸縮運動(径拡がり運動)する際のエネルギー効率が高くなり大きな駆動力が得ることができる。そして圧電素子1の大きな駆動力により、圧電アクチュエータ6は十分な振動振幅が得られることとなる。
また、圧電素子1が多角形であるため、円形素子と比較して歩留まりがよく、また、作製するのも容易であることから製造コストの点で有利である。
[第9の実施形態]次に、本発明の第9の実施形態について説明する。
[構成の説明]図15に第9の実施形態における圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。図15は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の上面図である。
上記の実施形態と第7の実施形態との相違点としては、圧電アクチュエータ6の支持部材4は、矩形に形成されている。支持部材4に合わせて振動膜3の輪郭形状は、矩形とされていることである。その他の構成については上記の実施形態と同様である。
[作用の説明]第9の実施形態における圧電クチュエータ6の振動膜3は、矩形であったとしても、台座2が振動膜3を介して支持部材4に接続されていることによる上記の実施形態による作用効果は同様にして得ることができる。
[効果の説明]第9の実施形態における効果について説明する。第9の実施形態における振動膜3は、矩形に形成されることにより、次のような点から、圧電アクチュエータ6を配置するため面積を有効に利用できるようになる。
例えば、図15の破線にて示すような円形の振動膜3と、矩形振動膜3とを考える。円形振動膜3のサイズは、円形振動膜3の輪郭が矩形振動膜3の輪郭に内接するような関係にある。
圧電アクチュエータ6を電子機器等に配置する場合、電子機器側の配置スペースとしては矩形領域が確保されていることが多い。この場合、振動膜3は、円形の振動膜3を利用しようが、あるいは、矩形の振動膜3を利用しようが、電子機器側に必要な配置スペースはほぼ同じである。
この点に鑑みれば、同じ配置スペースを使用する2つの振動膜3のうち、振動膜3の面積をより広くすることが可能な本実施形態の圧電アクチュエータ6の方が、より高い音圧レベルを実現し得る点で有利である。
なお、矩形の振動膜3と円形の振動膜3とを比較すると、矩形の振動膜3の方が振動膜3の面積が広くなり、圧電アクチュエータ6は、この増分に対応した音圧レベルの向上を実現することができる。
[第10の実施形態]次に、本発明の第10の実施形態について説明する。
[構成の説明]図16に第10の実施形態における効果について説明する。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。図16は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の断面図である。
上記の実施形態と第10の実施形態との相違点としては、圧電アクチュエータ6の振動膜3は、平坦な中央部31と、端部に湾曲部32を備えた構造となっていることである。振動膜3は、湾曲部32を介して指示部材4と接続している。その他の構成については上記の実施形態と同様である。
振動膜3は、台座2の裏面を支持する平坦な中央部31と、該中央部31の外側に形成された湾曲部32とを有している。図示は省略するが、上面側から見た中央部31の輪郭形状は円形であり、湾曲部32の輪郭形状は、該中央部31と同心のドーナツ状となっている。
[作用の説明]第10の実施形態における圧電クチュエータ6の振動膜3は、湾曲部32を備えた構造であったとしても、台座2が振動膜3を介して支持部材4に接続されていることによる上記の実施形態による作用効果は同様にして得ることができる。
[効果の説明]第10の実施形態における効果について説明する。第10の実施形態における圧電アクチュエータ6は、振動膜3の端部に湾曲部32が形成されていることにより、接続部領域A30における振動膜3のストークが長尺化し、これにより振動膜が低剛性化する。そのため、振動膜3は、変形し易くなり共振周波数が低減すると共に、より大きな振動振幅が得られるようになる。
なお湾曲部3cは、振動膜の一部を立体的に湾曲させた構造部を意図するものであり、したがって、図16に示す断面半円状の湾曲部32の他にも、例えば、波形形状が連続するような断面の構造部も含まれる。
[第11の実施形態] 次に、本発明の第10の実施形態について説明する。
[構成の説明]図17に第11の実施形態における圧電アクチュエータ6を示す。圧電アクチュエータ6は、上記の実施形態と同様に電界の状態に応じて少なくとも対向する2つの面が伸縮運動する圧電素子1と、圧電素子1を支持する台座2と、台座2を支持する振動膜3とが順に積層された構成となっている。また振動膜3は電界の状態に応じて伸縮運動する圧電特性を有しており、支持部材4と接続されている。また圧電アクチュエータ6は、制御部5とメモリ7とを備えている。
各構成要素の接続関係については、上記の実施形態と同様の接続関係を有している。図17は、本実施形態の圧電アクチュエータ6の断面図である。
上記の実施形態との相違点としては、圧電アクチュエータ6は、台座2の両面に圧電素子1aと圧電素子2aとが貼り付けられていることである。
[作用の説明]圧電アクチュエータ6は、圧電素子1aが伸びると圧電素子1bが縮み、圧電素子1bが伸びると圧電素子1aが縮むといった動作を繰り返し行う。
[効果の説明]第11の実施形態における効果について説明する。第11の実施形態における圧電アクチュエータ6は、台座2の両面に圧電素子1が貼り付けられている。そのため、圧電アクチュエータ6は、1枚型の圧電素子と比較して大きな駆動力を得ることが可能となる。
バイモルフ型の圧電素子1は、圧電素子1a、1bが、一方が伸び他方が縮むような動作を行うものであれば(要するに、互いに逆の動作を行うような2枚の素子からなるものであれば)、各圧電素子1の分極方向は特に限定されるものではない。例えば、両方の圧電素子1の分極方向がいずれも同一方向(例えば図示上向き)に揃っていてもよい。
なお、バイモルフ型の素子を利用する場合、図18に示すように、開口部3Aが形成された振動膜3を用いるようにしてもよい。あるいは、開口部3Aがない振動膜3を用い、振動膜3を介在させた状態で、圧電素子1aを圧電素子1bの反対側に貼り付けるようにしてもよい。
[第12の実施形態]上記の第1〜第10の実施形態における圧電アクチュエータ6は携帯機器に搭載することができる。
構成と動作については、第1〜第10の実施形態におけるいずれかの構成と動作と同様であるため、説明は省略する。
本実施形態では、圧電アクチュエータ6は携帯機器に搭載されているため、第3の実施形態におけるセンサ8を携帯機器に組み込まれているマイク等を利用することや、携帯機器のCPUを処理部9として利用することもできる。
[効果の説明]特許文献1、2の圧電素子1を用いた圧電アクチュエータ6は、基本共振周波数以下の周波数で十分な音圧を出すのは困難とされていた。そのため、基本共振周波数以降の周波数帯のみを再生可能な音として利用する構成が採られることが多かった。具体的には、圧電アクチュエータ6の基本共振周波数が高周波数帯域(例えば2kHz)にあるような場合、極単に言えば、音響素子は2kHz以上の帯域でしか、充分な音圧レベルが得られないこととなる。
携帯電話機等の携帯端末で音楽を再生する場合に必要な周波数帯域は、少なくとも1kHz〜10kHzの範囲を超える広帯域であることが好ましい。本発明の上記の実施形態における圧電アクチュエータ6は、音圧レベルの平坦化を維持しながら、基本共振周波数が1kHz以下へ低周波かすることが可能である。従って、本発明の圧電アクチュエータ6は、携帯電話機等に好適であり、特に本実施形態のような小型化にも有利なアクチュエータであればその利用価値は非常に高いものとなる。
そのため、本発明に係る圧電アクチュエータ6は、電子機器(例えば、携帯電話機、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、小型ゲーム機器など)の音源としても利用可能である。
また、圧電素子1としてセラミックスを用いる圧電アクチュエータ6においては、落下させた際に圧電素子が破損しやすいという一面があった。このことから、携帯型の電子機器は、使用時にユーザが誤って機器を落下させてしまうことも多いため、圧電アクチュエータ6は携帯型の機器には適していないと考えられてきた。
本発明の上記の実施形態における圧電アクチュエータ6は、圧電素子1が固定された台座2と支持部材が4、低剛性の圧電特性を有する振動膜3を介して支持されている。そのため、圧電アクチュエータ6を備えた携帯型の電子機器を落下した場合であっても、落下時に応力が集中する振動の節目に、低剛性な樹脂材料が配置されているため、衝撃が振動膜3の減衰により吸収される。
そのため、圧電素子1の破損が生じにくいものとなり、衝撃安定性を向上にも有利である。したがって、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、携帯型の電子機器に対しても好適に利用することが可能である。
また、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、下記のような利点も持つ。圧電アクチュエータ6の音響特性は、構成する部材の材質や形状を適宜変化させることによって容易に調整することができる。このため、従来のように音響特性を調整するために、音響素子の構造を大幅に変更する必要がないため、製造安定性の向上、製造コストの低減にも有利である。
また、本実施形態の圧電アクチュエータ6は、下記のような利点も持つ。圧電アクチュエータは、基本共振周波数を下げるために、圧電素子を薄くする必要があった。しかし、本発明によれば比較的厚い圧電素子1を用いたとしても、圧電特性を有する振動膜3の膜厚および、支持部材4と拘束部材との間隔の調整や、部材の形状の微調整により、剛性や慣性の効果を利用して、基本共振周波数を下げることが可能となる。
一般に、薄い圧電素子1の製造は、焼成時に割れなど破損が生じてしまい、歩留まりの低下などで比較的コストがかかる。これに対して、本発明によれば薄い圧電素子を用意する必要がないため、製造コストを抑えることが可能となり、圧電アクチュエータの製造コストは低減できる効果を持つ。
また、本実施形態の構成において、支持部材3は、水平方向に延在するように(すなわち圧電素子10の主面と平行となるように)設けられている。したがって、振動膜3を追加したことによる圧電アクチュエータ6全体の形状サイズの増加という問題も生じにくく、圧電アクチュエータ6の薄型化を実現することができる。