JP2011112286A - ガスタービン燃焼器 - Google Patents
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Abstract
【課題】火炎位置が変動することによって生じる圧力変動を抑制して、ガスタービン燃焼器の信頼性を向上させるガスタービン燃焼器を提供する。
【解決手段】複数の燃料ノズルと、燃料ノズルと燃焼室との間に設置された複数の空気孔を有する空気孔プレートとでバーナを構成するガスタービン燃焼器において、空気孔プレートに形成された複数の空気孔から構成される空気孔群は、ピッチ円上に1列に配置されるように複数個備えられていると共に、それぞれの空気孔群の前記ピッチ円の中心位置が相互に異なるように配設されており、空気孔群を構成する複数の空気孔は、各空気孔の中心軸が前記ピッチ円の周方向に傾斜して形成されており、空気孔プレートに形成された前記空気孔群の空気孔間の距離は、燃焼室側の空気孔プレート表面における空気孔間の距離が燃料ノズル側の空気孔プレート表面における空気孔間の距離よりも小さくなるように構成した。
【選択図】図2
【解決手段】複数の燃料ノズルと、燃料ノズルと燃焼室との間に設置された複数の空気孔を有する空気孔プレートとでバーナを構成するガスタービン燃焼器において、空気孔プレートに形成された複数の空気孔から構成される空気孔群は、ピッチ円上に1列に配置されるように複数個備えられていると共に、それぞれの空気孔群の前記ピッチ円の中心位置が相互に異なるように配設されており、空気孔群を構成する複数の空気孔は、各空気孔の中心軸が前記ピッチ円の周方向に傾斜して形成されており、空気孔プレートに形成された前記空気孔群の空気孔間の距離は、燃焼室側の空気孔プレート表面における空気孔間の距離が燃料ノズル側の空気孔プレート表面における空気孔間の距離よりも小さくなるように構成した。
【選択図】図2
Description
本発明はガスタービン燃焼器に関するものである。
化石資源を燃料とするガスタービン発電プラントでは、地球温暖化物質である二酸化炭素(CO2)の排出を低減するため、発電効率の向上が求められている。発電効率の向上にはガスタービン燃焼器から排出される燃焼ガスを高温化することが有効である。
しかし、燃焼ガスの高温化により環境阻害物質である窒素酸化物(NOx)が増加するため、発電効率を向上させるとともにNOxを低減することが重要な技術課題となっている。
近年、地球温暖化防止の観点から製鉄所で副生するコークス炉ガスや製油所で副生するオフガスなどを燃料として有効利用することが求められている。また、豊富な資源である石炭を酸素でガス化して発電する石炭ガス化発電プラント(Integrated coal Gasification Combined Cycle:IGCC)では地球温暖化防止の観点より、ガスタービンに供給される燃料中の炭素分を分離・回収するシステムが国内外で検討されている。
上記のような副生ガスの成分の30%〜60%が水素であり、またIGCCプラントの燃料である石炭ガス化ガスの成分も、CO2を回収する前では25%程度、CO2回収後はほとんどが水素である。このようにガスタービン燃焼器において水素含有燃料の需要が高まっている。
燃料中の水素は可燃範囲が広く燃焼速度が速いため、燃焼室内の壁面近傍で高温の火炎が形成され、燃焼器の信頼性を損なう場合がある。局所的に高温の火炎の形成を防止する手段として、燃料を分散させて燃焼室内で均一に燃焼させる方法が有効である。
空気に対する燃料の分散性を高めてNOxを低減する方法として、特開2003−148734号公報には複数の燃料ノズルと複数の空気孔を備え、燃料流、および燃料流の外周側に形成した空気流を燃焼室に噴射するバーナをもつ燃焼器の技術が開示されている。
前記した特許文献1に記載されたガスタービン燃焼器に関する技術においては、ある種の外乱によって燃焼器の燃焼室に形成される火炎位置が変動して圧力変動が生じる可能性がある。この圧力変動が生じた場合にはガスタービン燃焼器の信頼性を低下させる原因となる。
本発明の目的は、燃焼室に形成される火炎位置が変動することによって生じる圧力変動を抑制して、ガスタービン燃焼器の信頼性を向上させるガスタービン燃焼器を提供することにある。
本発明のガスタービン燃焼器は、下流側の燃焼室に燃料を噴出する複数の燃料ノズルと、前記複数の燃料ノズルと対応させて前記燃焼室に空気を導く複数の空気孔がそれぞれ形成されており、前記燃料ノズルと前記燃焼室との間に設置された空気孔プレートとでバーナを構成するガスタービン燃焼器において、前記空気孔プレートに形成された複数の空気孔から構成される空気孔群は、ピッチ円上に1列に配置されるように複数個備えられていると共に、それぞれの空気孔群の前記ピッチ円の中心位置が相互に異なるように配設されており、前記空気孔群を構成する複数の空気孔は、各空気孔の中心軸が前記ピッチ円の周方向に傾斜して形成されており、前記空気孔プレートに形成された前記空気孔群の空気孔間の距離は、燃焼室側の前記空気孔プレート表面における空気孔間の距離が、燃料ノズル側の前記空気孔プレート表面における空気孔間の距離よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、燃焼室に形成される火炎位置が変動することによって生じる圧力変動を抑制して、ガスタービン燃焼器の信頼性を向上させるガスタービン燃焼器を実現することができる。
本発明の実施例であるガスタービン燃焼器について図面を引用して以下に説明する。
本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器について図1乃至図3を引用して説明する。
図1及び図2は本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器に設置された空気孔プレートの構造を示す縦断面図及び正面図であり、図3は前記空気孔プレートを有するガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントを示す概略構成図である。
まず、本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器3を備えたガスタービンプラント1について図3を用いて説明すると、ガスタービンプラント1は、大気より吸入空気101を吸入して圧縮する空気圧縮機2と、空気圧縮機2により圧縮した圧縮空気102とガス燃料200とを燃焼室5で燃焼させて高温の燃焼ガス110を生成するガスタービン燃焼器3と、ガスタービン燃焼器3の燃焼室5で発生した高温の燃焼ガス110を導いて駆動するタービン4と、タービン4の駆動により回転し発電する発電機6と、ガスタービン起動時に空気圧縮機2を起動するガスタービン起動用モータ7とを備えている。
そして、タービン4を駆動後の燃焼ガス110は、排気ガス111となってタービン4から排出される。
ガスタービン燃焼器3の頭部にはバーナ8が設けられており、このバーナ8は燃焼室5に圧縮空気102aを導くための空気孔21を複数個設けた空気孔プレート20と、この空気孔プレート20の上流側に配置されてガス燃料200を前記空気孔プレート20の空気孔21内に向けて噴射する複数個の燃料ノズル22とから構成されている。
複数個設けられた各空気孔21と複数個設けられた各燃料ノズル22とは1個ずつ対応させて同軸上にそれぞれ配置されている。
本実施例のガスタービン燃焼器3に設置されたバーナ8を構成する空気孔プレート20と燃料ノズル22について詳細に説明すると、図1及び図2に示すように、ガスタービン燃焼器3のバーナ8を構成する空気孔プレート20は、ピッチ円上に5個の空気孔21を1列に環状に配置した空気孔群50、51を複数個設けており、の空気孔群50、51のそれぞれのピッチ円の中心位置が異なっている。
図1及び図2は空気孔プレート20に設ける空気孔群として、中央空気孔群50を空気孔プレート20のバーナ中央部30に1個、外周空気孔群51をバーナ中央部30の外周側となる空気孔プレート20のバーナ外周部31に6個設けた構造を示している。
空気孔プレート20に設けた中央空気孔群50及び外周空気孔群51では、各空気孔群50、51を構成するそれぞれの空気孔21は、図1に示したように前記空気孔群の軸線方向に傾斜するように形成されていると共に、各空気孔21の中心軸が破線の円として示した空気孔群のピッチ円の周方向に傾斜して形成されていることによって、前記空気孔群のこれらの空気孔21を通過した流体(燃料と空気との混合気)の流れは図2に示したように空気孔21の下流位置で螺旋状に旋回する流体の流れを形成する。
更に、前記中央空気孔群50及び外周空気孔群51の各空気孔群において、図1に示した空気孔プレート20の燃焼室側301における隣接した空気孔21の距離である空気孔間距離Dc2、Do2は、空気孔プレート21のエンドカバー側300における隣接した空気孔21の距離である空気孔間距離Dc1、Do1よりもそれぞれ小さくなるように形成されている。
すなわち、中央空気孔群50では空気孔間距離はDc2<Dc1であり、外周空気孔群51では空気孔間距離はDo2<Do1である。
空気孔プレート21に形成される前記中央空気孔群50及び外周空気孔群51は、燃料の分散性を高めるために外周空気孔群51の数は3個以上、また安定な旋回流をつくるために中央空気孔群50と外周空気孔群51に形成されるそれぞれの空気孔の数は4孔以上であるのが望ましい。
本実施例のガスタービン燃焼器3においては、空気孔プレート21に形成される前記中央空気孔群50及び外周空気孔群51は、図2に示したようにそれぞれのピッチ円の中心に旋回軸をもつ旋回流が合計7個形成され、それらの旋回流の回転方向がすべて同じ方向(本図では反時計回り)である場合を示す。
また、図2に示した前記外周空気孔群51が配設されている間隔である隣り合うピッチ円の中心間距離Lgは、空気孔21の口径daに対して、2da<Lg<5daの関係を満たすように設定されているので、空気孔21の下流位置で螺旋状に旋回する流体の流れを確実に形成することができる。
前記空気孔プレート20の上流側に位置して該空気孔プレート20とガスタービン燃焼器3のバーナ8を構成する燃料ノズル22は燃料分配器23と連結されており、この燃料分配器23によって燃料ノズル22に供給する燃料の系統を分配できるようになっている。
図3のガスタービン燃焼器3を備えたガスタービンプラント1では、バーナ8のバーナ中央部30と、このバーナ中央部30の外周側となるバーナ外周部31の2つに燃料を分配した燃料系統を示している。
バーナ8の燃料ノズル22に供給するガス燃料200は、燃料系統に設置された燃料遮断弁60を通って2つに分岐し、それぞれの燃料系統に設置された燃料圧力調整弁61a、62a、および燃料流量調整弁61b、62bを通過し、ガス燃料201、202としてガスタービン燃焼器3のバーナ8を形成するバーナ中央部30の中央空気孔群50とバーナ外周部31の外周空気孔群51に対応してそれぞれ設置された各燃料ノズル22に供給される。
本実施例のガスタービン燃焼器3では燃料を前記燃料ノズル22に供給する燃料燃料を2系統に分配したが、それ以上の数の燃料系統に分配してもよい。例えば、バーナ8のバーナ中央部30に1個設置した中央空気孔群50に対応する燃料ノズル22に燃料を供給する燃料系統を1系統設置し、バーナ外周部31に6個設置した外周空気孔群51に対応する燃料ノズル22に燃料を供給する燃料系統のうち、3個の外周空気孔群51に対応する燃料ノズル22と他の3個の外周空気孔群51に対応する燃料ノズル22に燃料を供給する燃料系統をそれぞれ1系統ずつ設置して、合計3系統の燃料系統に分配してもよい。
燃料として供給するガス燃料200としては天然ガスや、コークス炉ガス、製油所オフガス、石炭ガス化ガスなどの水素含有燃料を使用できる。
ここで本願発明による作用効果を理解するために、例えば特開2003−148734号公報(特許文献1)に記載されたガスタービン燃焼器と同じ構成のガスタービン燃焼器について、燃焼室内に圧力変動が発生する原理を説明する。
図4及び図5は、前記特許文献1に記載された比較例である多数の空気孔を形成した空気プレートを有するバーナを備えたガスタービン燃焼器において、空気孔プレート20の正面図と、空気孔プレート下流の燃焼室内に形成される流体の流動及び火炎の状況の模式図とを示したものである。
図4に示した比較例のガスタービン燃焼器の空気孔プレート20では、環状に配列されたそれぞれの空気孔列52、53、54のピッチ円の中心がすべてバーナ中心に位置しており、空気孔プレート20のバーナ中央部30に1列目空気孔52、バーナ外周部31に2列目空気孔53及び3列目空気孔54をそれぞれ配設した構成となっている。
各列の空気孔52、53、54はその中心軸が空気孔プレート20の周方向に傾斜しており、空気孔プレート20の燃焼室側表面301での空気孔間距離は、空気孔プレートエンドカバー側表面300での空気孔間距離と等しい寸法に形成されている。
各列の空気孔52、53、54が形成する旋回流はいずれもバーナ中心に旋回軸をもつため、図4に矢印で示したように、それらの旋回流は互いに合流してバーナ中心に回転軸をもつ1つの旋回流が形成される。
図5は比較例のガスタービン燃焼器における空気孔プレート20の下流の燃焼室内に形成される流体の流動と火炎の状況を示した模式図であり、流線82は、燃焼器の横断面における旋回流の主流成分の包絡線をバーナ中心を含む断面で示している。
空気孔出口で旋回流が急拡大するため、点Pに向けて燃焼ガスの一部が燃焼室5の下流側から空気孔プレート20に向かって逆流する循環流81が形成される。
この循環流81の形成によって燃焼室5内に点Pを保炎点80として定常な火炎83が形成され、火炎83の火炎面84aは保炎点80を基点として燃焼室5内の下流側に広がった状況となる。
ところで、ガスタービン燃焼器3の燃焼室5内に形成される火炎面においては、空気流量に対する燃料流量の比(燃空比)と火炎が伝播する速度(燃焼速度)との間には図6に示した関係の特性がある。つまり、図6の特性図において、燃焼速度はある燃空比で極大の最大燃焼速度の点Sに到達する(図6中の点S)。
したがって、例えば流量変動等の何らかの外乱が生じてガスタービン燃焼器3のバーナ8を構成する空気孔プレート20の下流となる燃焼室内に形成される火炎面における燃空比が増加すると、燃焼速度が増加する(図6の点Aから点Bに移動して燃焼速度が増加する)。
その結果、比較例のガスタービン燃焼器3では、図5に示すように空気孔プレート20の下流の燃焼室内に形成される火炎83の火炎面84aは上流に伝播して空気孔プレート20近傍まで接近し、火炎面84bに変化することになる。
このように空気孔プレート20の近傍まで火炎が接近すると、空気孔プレート20の外周部31の下流の外周側後流86に可燃範囲の混合気が存在した場合、高温の燃焼ガスが着火源となり混合気に着火してしまうことになる。
混合気への着火は圧力波を発生させ、外周側後流86や空気孔プレート20の空気孔53、54内、および燃料ノズル22の出口における圧力を瞬間的に上昇させる。
燃料ノズル22出口の圧力が上昇すると、燃料供給差圧が低下し、燃料流量、すなわち燃空比が減少し、燃焼速度が減少する(図6の点Bから点Cに移動する)。
その結果、燃焼室内に形成される火炎83の火炎面84bは下流側に後退して火炎面84cに変化する。火炎面84bが火炎面84cに変化したときには、燃料供給差圧の低下は解消されて、燃空比が再び増加し、燃焼速度も増加する(図6の点Cから点Bに戻る)。
この火炎面84cは空気孔プレート20近傍まで接近し、再び火炎面84bに変化する。このような現象が繰り返されて燃焼室5内に形成される火炎位置が変動することにより燃焼室内に圧力変動が起こる。
そしてこの圧力変動が大きい場合には、結果としてガスタービン燃焼器の信頼性を低下させることになる。
このようにして生じるガスタービン燃焼器の燃焼室内に形成される火炎位置の変動は、比較例の空気孔プレート20のバーナ外周部31の2列目、3列目空気孔53、54から可燃範囲の混合気が連続的に供給されること、および外周側後流86に混合気が連続的に流入してガス交換し、着火源となる高温燃焼ガスが流入することが要因である。
そして、空気孔プレート20のバーナ外周部31の2、3列目空気孔53、54から混合気が連続的に供給され、外周側後流86が混合気の着火が起こる状態となっていれば、上述の現象が繰り返されて燃焼室内に形成される火炎位置が変動し、燃焼室内で生じる圧力変動が大きな場合にはガスタービン燃焼器の信頼性を低下させる可能性がある。
そこで、図4及び図5、並びに図6を用いて説明したような、比較例におけるガスタービン燃焼器の燃焼室内に形成される火炎位置の変動で生じる燃焼室内の圧力変動を抑制してガスタービン燃焼器の信頼性を向上させるため、本実施例のガスタービン燃焼器3においては、バーナ8を構成する空気プレート20におけるバーナ中央部30の外周側となるバーナ外周部31での空気流量に対する燃料流量の比(燃空比)が、図6に示した最大燃焼速度の点Sよりも燃料希薄な条件となるように供給される燃料を配分する構成にしている。
そして、本実施例のガスタービン燃焼器3においては、図1乃至図3に示したように、空気プレート20に形成したピッチ円上に1列に配置した空気孔群50、51をそのピッチ円中心が異なる位置となるように複数個設け、各空気孔群50、51における燃焼室側301の空気孔間距離をエンドカバー側300の空気孔間距離よりも小さくなるように構成している。その効果を図7乃至図9を用いて説明する。
図7乃至図9は図1乃至図3に示した本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器3において、燃焼室5に形成される流体の流動と火炎の状況を示す図であり、図7は燃焼室5側から見た空気孔プレート20の正面図、図8は燃焼室5に形成される流体の流動と火炎の状況の模式図を表わしたバーナ中心軸を含む縦断面図、図9は複数の空気孔を形成した空気孔プレート20における各ピッチ円中心軸上の圧力分布を示す。
図8の模式図に示すように、第1実施例のガスタービン燃焼器3の空気孔プレート20では、空気孔プレート20に形成された中央空気孔群50及び外周空気孔群51の各空気孔群はエンドカバー側300での空気孔間距離Do1、Dc1よりも燃焼室側301での空気孔間距離Do2、Dc2の方が小さいため、空気孔21を通過する流体が形成する旋回流は図8中に点Qとして示す保炎点80までは徐々に旋回半径を小さくしながら燃焼室5内に噴出する。
旋回流が燃焼室5内をさらに下流側に進むと点Qからは旋回半径は拡大する。このように流動する旋回流の包絡線を流線82として図8に示す。
旋回半径が小さくなる空気孔プレート20から点Qまでの領域では、角運動量保存則より旋回方向速度成分が増加するため、旋回軸付近には流れ方向に圧力が低下する順方向圧力勾配が生じる。
一方、旋回半径が大きくなる点Qより下流の領域では、旋回方向速度成分が減少するため、旋回軸付近には流れ方向に圧力が上昇する逆方向圧力勾配が生じる。その結果、それぞれの旋回軸付近には図9に示す圧力分布が形成される。
図9に示したような圧力分布が形成されることにより空気孔プレート20の下流側にある燃焼室5内の燃焼ガスの一部は循環流81として上流側へ逆流するが、上記の順圧力勾配が存在するため燃焼ガスは点Qを越えて空気孔プレート20には接近できない。そのため、空気孔プレート20から下流側に離れた位置に点Qとして示す保炎点80が形成され、この保炎点80を基点にして燃焼室内に火炎83が保持される。
本実施例のガスタービン燃焼器3では、空気孔プレート20に設けた1個の中央空気孔群50及び6個の外周空気孔群51の各空気孔群のそれぞれによって燃焼室5内に上記のような流体の流動が形成されるため、バーナ中央部30だけでなくバーナ外周部31においても流体の流動により形状を規定された火炎がそれぞれ保持される。したがって、本実施例のガスタービン燃焼器3では空気プレート20の下流に7つの火炎が形成されることになる。
このように本実施例のガスタービン燃焼器3では、1つの空気プレート20の下流の燃焼室5内に7つの火炎が形成されるので、仮に燃焼室内に形成される火炎位置が変動しても、比較例のような2、3列目空気孔53、54からの連続的な混合気の供給がないため、燃焼室内に形成される火炎位置の変動が大きくならず、燃焼室内の圧力変動が抑制されるのでガスタービン燃焼器の安定燃焼が可能となる。
また、たとえ仮に、各旋回流において、空気孔プレート20から点Qまでの領域で混合気が流入しても、空気孔プレート20の空気孔21から噴出した混合気流と、点Qより下流の逆方向圧力勾配に阻害されて、混合気はこの領域から流出できず燃焼ガスとして滞留し、この領域は淀み領域となる。したがって、この淀み領域では混合気の連続的な流入とガス交換はない。
一方、着火源となる高温の燃焼ガスに関しては、空気孔プレート20から点Qまでの順方向圧力勾配のため、燃焼ガスの一部が点Qを越えて空気孔プレート20近傍の中央部後流87や外周側後流86に到達することはない。
なお、図8に示した旋回流の外側に位置する空気孔プレート20近傍の領域88や領域89では、燃料の方が空気よりも密度が低いために、空気孔21から空気流に包まれて噴出した燃料流が旋回流中であっても空気流を超えて旋回流の外側に流出することはなく、領域88、89への混合気の流入はない。
以上の説明から明らかなように、本実施例のガスタービン燃焼器3によれば、比較例のような2、3列目空気孔からの連続的な混合気の供給、および外周側後流86における混合気の連続的な流入とガス交換、そして着火源となる高温燃焼ガスの流入を防止できるため、燃焼室5内に形成される火炎位置の変動は大きくならず、火炎位置の変動によって生じる燃焼室内の圧力変動が抑制されるので、この結果、ガスタービン燃焼器の安定燃焼が維持できるのでガスタービン燃焼器の信頼性を向上することができる。
さらに、本実施例のガスタービン燃焼器3では、燃焼室5の火炎85は点Qより下流で形成されるため、空気孔プレート20の空気孔から噴出した混合気が点Qに至るまでに燃料と空気の混合が促進され、NOxを低減できる。
以上説明したことから明らかなように、本実施例によれば、燃焼室に形成される火炎位置が変動することによって生じる圧力変動を抑制して、ガスタービン燃焼器の信頼性を向上させるガスタービン燃焼器を実現することができる。
次に本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器について図10及び図11を引用して説明する。
本実施例のガスタービン燃焼器は図1乃至図3に示した第1実施例のガスタービン燃焼器と基本的な構成、並びに作用効果は同じなので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分について以下に説明する。
本実施例のガスタービン燃焼器3のバーナ8を構成する空気孔プレート20の構造を図10の縦断面図、及び図11の正面図にそれぞれ示す。
本実施例のガスタービン燃焼器3では、空気孔プレート20のバーナ中央部30に設けた中央空気孔群50による旋回流だけが時計回りの旋回流を形成し、バーナ中央部30の外周側となるバーナ外周部31に設けた外周空気孔群51による旋回流が反時計回りの旋回流を形成して相互に逆方向に回転する点である。その他の構成は第1実施例のガスタービン燃焼器3と同じである。
本実施例のガスタービン燃焼器3では、バーナ外周側の火炎の安定性を更に向上する効果がある。即ち、図11に示すように、空気孔プレート20のバーナ中央部30の旋回流とバーナ外周部31の旋回流との境界では、それぞれの旋回流は同じ方向に進む。そのため、保炎点80の下流側において、バーナ中央部30の燃焼ガス90がバーナ外周部31の旋回流に容易に流入する。
バーナ外周部31の旋回流に流入した高温の燃焼ガス90は、バーナ外周部31の火炎の安定性を向上させる。したがって、本実施例のガスタービン燃焼器によれば、第1実施例のガスタービン燃焼器に比べてバーナ外周側の火炎の安定性をさらに向上できることになる。
以上説明したことから明らかなように、本実施例によれば、燃焼室に形成される火炎位置が変動することによって生じる圧力変動を抑制して、ガスタービン燃焼器の信頼性を向上させるガスタービン燃焼器を実現することができる。
次に本発明の第3実施例であるガスタービン燃焼器について図12及び図13を引用して説明する。
本実施例のガスタービン燃焼器は図1乃至図3に示した第1実施例のガスタービン燃焼器と基本的な構成、並びに作用効果は同じなので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分について以下に説明する。
本実施例のガスタービン燃焼器3のバーナ8を構成する空気孔プレート20の構造を図12の空気孔プレートの断面図、図13の正面図にそれぞれ示す。また、図14は図12及び図13に示した前記空気孔プレートを有するガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントを示す概略構成図である。
本実施例のガスタービン燃焼器3は、第1実施例のガスタービン燃焼器3の空気孔プレート20に設けた1個の中央空気孔群50及び6個の外周空気孔群51から構成される空気孔群バーナを中央バーナ32として空気孔プレート20の中央部に1台設置し、さらに前記中央空気孔群50及び6個の外周空気孔群51から構成される空気孔群バーナを外周バーナ33として前記中央バーナ32の外周側となる空気孔プレート20の外周部に6台設置した構成である。
即ち、図12及び図13に示したように本発明の第3実施例であるガスタービン燃焼器に設置された空気孔プレートでは、空気孔プレート20の中央部に1個の中央空気孔群50及び6個の外周空気孔群51から構成される空気孔群バーナを中央バーナ32として1台配置し、空気孔プレート20の外周部に1個の中央空気孔群50及び6個の外周空気孔群51から構成される空気孔群バーナを外周バーナ33として6台配置した場合を示す。
前記外周バーナ33は3台以上配置するのが望ましい。また、前記中央バーナ32及び外周バーナ33を構成する各バーナの空気孔21と空気孔群50、51の構造や配置は第1実施例のガスタービン燃焼器3と同様である。
図14は図12及び図13に示した1個の中央空気孔群50及び6個の外周空気孔群51から構成される空気孔群バーナを、空気孔プレート20の中央部に中央バーナ32として1台、及び空気孔プレート20の外周部に外周バーナ33として6台有する構造のガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントを示す概略構成図である。
バーナ8の燃料ノズル22に供給するガス燃料200は、燃料系統に設置された燃料遮断弁63を通って2つに分岐し、それぞれの燃料系統に設置された燃料圧力調整弁66a、67a、および燃料流量調整弁66b、67bを通過し、ガス燃料206、207としてガスタービン燃焼器3における1台の中央バーナ32を構成する中央空気孔群50と外周空気孔群51とに区分されてそれぞれ供給される。
同様に、ガス燃料200は燃料系統に設置された燃料遮断弁63を通って別の4つの燃料系統に分岐し、それぞれの燃料系統に設置された燃料圧力調整弁64a、65a、68a、69a、および燃料流量調整弁64b、65b、68b、69bを通過し、ガス燃料204、205、208、209としてガスタービン燃焼器3における6台の外周バーナ33を構成する中央空気孔群50と外周空気孔群51に対応してそれぞれ設置された各燃料ノズル22とに区分されてそれぞれ供給される。
ここで、前記6台設置した外周バーナ33に燃料を供給する前記4つの燃料系統は、空気プレート20に6台設置された外周バーナ33を奇数番の外周バーナ33と偶数番の外周バーナ33とに区分し、更に前記各外周バーナ33を構成する中央空気孔群50と外周空気孔群51とに区分することによって4つの燃料系統に分けられたものであり、これらの4つに分けられた燃料系統にそれぞれ燃料を供給するように構成されている。
即ち、本実施例のガスタービン燃焼器3を備えたガスタービンプラントでは、前記ガスタービン燃焼器3に備えられた1台の中央バーナ32に燃料を供給する燃料配管を2系統、6台の外周バーナ33に燃料を供給する燃料配管を4系統に分配した燃料系統を示している。
尚、本実施例のガスタービン燃焼器3では燃料供給する燃料系統を合計6系統に分配した例を示したが、それ以上の数の系統に分配してもよい。
本実施例のガスタービン燃焼器3は、比較的大きな負荷に対応するガスタービンプラントに有効である。配置する外周バーナ33の個数を調整することにより、燃焼室5内に形成される火炎位置の変動による燃焼室内の圧力変動を抑制することができる。それとともに、ガスタービン負荷に対応して燃料を供給する燃料系統を制御することにより、ガスタービン負荷の広い範囲において低NOx燃焼と安定燃焼を両立させることが可能となる。
また、ガスタービン燃焼器に燃料を供給する燃料系統を増加させることでガスタービン燃焼器の運転の自由度を増すことができる。本実施例のガスタービン燃焼器では中央バーナ32と外周バーナ33を同一構造として説明したが、比較例の構造の空気孔プレート20も燃焼条件によっては安定燃焼が可能であるため、中央バーナ32に比較例の空気孔プレート20を配置しても同等の効果を得ることができる。
以上説明したことから明らかなように、本実施例によれば、燃焼室に形成される火炎位置が変動することによって生じる圧力変動を抑制して、ガスタービン燃焼器の信頼性を向上させるガスタービン燃焼器を実現することができる。
次に本発明の第4実施例であるガスタービン燃焼器について図12及び図13を引用して説明する。
本実施例のガスタービン燃焼器は図1乃至図3に示した第1実施例のガスタービン燃焼器と基本的な構成、並びに作用効果は同じなので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分について以下に説明する。
本実施例のガスタービン燃焼器3のバーナ8を構成する空気孔プレート20の構造を図15の空気孔プレートの正面図に示す。また、図16は図15に示した前記空気孔プレートを有するガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントを示す概略構成図である。
本実施例のガスタービン燃焼器3は、中央バーナとして、主に着火、および低負荷のときに使用する燃料噴射口40を有するパイロットバーナ34を1台配置し、第1実施例のガスタービン燃焼器3の空気孔プレート20に設けた1個の中央空気孔群50及び6個の外周空気孔群51から構成される空気孔群バーナを外周バーナ33として、前記パイロットバーナ34の外周側となる空気孔プレート20の外周部に6台設置した構成である。
図16は図15に示した1台のパイロットバーナ34及び6台の外周バーナ33を有するガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントを示す概略構成図であるが、パイロットバーナ34に供給する起動用燃料210は燃料系統に設置された燃料遮断弁59を通って燃料圧力調整弁70a、および燃料流量調整弁70bを通過し、パイロット燃料210としてガスタービン燃焼器3のパイロットバーナ34に供給される。
起動用燃料210として、灯油、A重油などの油燃料が使用される。
また、ガス燃料200は燃料系統に設置された燃料遮断弁63を通って図14に示した前記実施例3のガスタービンプラントの場合と同様に、4つの燃料系統に分岐し、それぞれの燃料系統に設置された燃料圧力調整弁64a、65a、68a、69a、および燃料流量調整弁64b、65b、68b、69bを通過し、ガス燃料204、205、208、209としてガスタービン燃焼器3の6台の外周バーナ33にそれぞれ供給される。
本実施例のガスタービン燃焼器3は、着火時や、低負荷時にガスタービン燃焼器3の安定燃焼を得るために有効である。水素含有燃料を使用する場合、着火に失敗すると水素含有燃料がガスタービン燃焼器で燃焼せずに排出され、下流側のガスタービン内で着火して燃焼する可能性がある。
そこで、本実施例のガスタービン燃焼器3を採用することにより、ガスタービン燃焼器3のパイロットバーナ34によって水素を含まない燃料で着火、および低負荷まで運転し、その後、外周バーナ33に順次水素含有燃料を投入して燃焼させることにより、前記したような着火及び燃焼を未然に防止できる。
尚、上記の説明では起動用燃料として油燃料を例に挙げて説明したが、着火や低負荷時に安定燃焼が可能であれば天然ガスなどの気体燃料を利用できることは言うまでもない。
以上説明したことから明らかなように、本実施例によれば、燃焼室に形成される火炎位置が変動することによって生じる圧力変動を抑制して、ガスタービン燃焼器の信頼性を向上させるガスタービン燃焼器を実現することができる。
本発明は、安定燃焼を得るガスタービン燃焼器に適用可能である。
1:ガスタービンプラント、2:空気圧縮機、3:ガスタービン燃焼器、4:タービン、5:燃焼室、6:発電機、7:ガスタービン起動用モータ、8:バーナ、10:外筒、12:主室ライナ、13:燃焼器エンドカバー、20:空気孔プレート、21:空気孔、22:燃料ノズル、23:燃料分配器、30:バーナ中央部、31:バーナ外周部、32:中央バーナ、33:外周バーナ、34:パイロットバーナ、40:燃料噴射孔、50:中央空気孔群、51:外周空気孔群、52:1列目空気孔、53:2列目空気孔、54:3列目空気孔、60、63、59:燃料遮断弁、61a、62a、64a、65a、66a、67a、68a、69a、70a:燃料圧力調整弁、61b、62b、64b、65b、66b、67b、68b、69b、70b:燃料流量調整弁、80:保炎点、81:循環流、82:燃焼器横断面における旋回流の軸方向速度の流線、83:火炎、84a、84b、84c、85:火炎面、86:外周側後流、87:中央部後流、88、89:各旋回流の外側の領域、90:燃焼ガス、101:吸入空気、102、102a:圧縮空気、103:冷却空気、110:燃焼ガス、111:排気ガス、200、201、202、204、205、206、207、208、209:ガス燃料、210:起動用燃料、300:空気孔プレートのエンドカバー側、301:空気孔プレートの燃焼室側。
Claims (6)
- 下流側の燃焼室に燃料を噴出する複数の燃料ノズルと、前記複数の燃料ノズルと対応させて前記燃焼室に空気を導く複数の空気孔がそれぞれ形成されており、前記燃料ノズルと前記燃焼室との間に設置された空気孔プレートとでバーナを構成するガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートに形成された複数の空気孔から構成される空気孔群は、ピッチ円上に1列に配置されるように複数個備えられていると共に、それぞれの空気孔群の前記ピッチ円の中心位置が相互に異なるように配設されており、
前記空気孔群を構成する複数の空気孔は、各空気孔の中心軸が前記ピッチ円の周方向に傾斜して形成されており、
前記空気孔プレートに形成された前記空気孔群の空気孔間の距離は、燃焼室側の前記空気孔プレート表面における空気孔間の距離が、燃料ノズル側の前記空気孔プレート表面における空気孔間の距離よりも小さくなるように形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。 - 請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記複数の空気孔から構成される空気孔群は前記空気孔プレートのバーナ中央部に1個、前記バーナ中央部の外周側となるバーナ外周部に3個以上それぞれ設置されており、
前記バーナ外周部に設置された空気孔群は隣り合う前記ピッチ円の中心間距離が空気孔径の2倍より大きく、空気孔径の5倍より小さな範囲に設定されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。 - 請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートのバーナ中央部に設置された前記複数の空気孔から構成される空気孔群の空気孔から供給される流体が形成する旋回流の回転方向が、前記空気孔プレートのバーナ外周部に設置された前記複数の空気孔から構成される空気孔群の空気孔から供給される流体が形成する旋回流の回転方向と同じ方向であることを特徴とするガスタービン燃焼器。 - 請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートのバーナ中央部に設置された前記複数の空気孔から構成される空気孔群の空気孔から供給される流体が形成する旋回流の回転方向が、前記空気孔プレートのバーナ外周部に設置された前記複数の空気孔から構成される空気孔群の空気孔から供給される流体が形成する旋回流の回転方向と反対方向であることを特徴とするガスタービン燃焼器。 - 請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記複数の空気孔から構成される空気孔群は、中央に1個設置された空気孔群とその外周側に3個以上設置された空気孔群とから1台の空気孔群バーナを構成し、
前記空気孔プレートのバーナ中央部に前記空気孔群バーナを中央バーナとして1台設置し、前記中央バーナの外周側となるバーナ外周部に前記空気孔群バーナを外周バーナとして3台以上設置したことを特徴とするガスタービン燃焼器。 - 請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートのバーナ中央部に、着火および低負荷の時に使用するパイロットバーナを設置し、
前記複数の空気孔から構成される空気孔群は、中央に1個設置された空気孔群とその外周側に3個以上設置された空気孔群とから1台の空気孔群のバーナを構成し、
前記パイロットバーナの外周側となる前記空気孔プレートのバーナ外周部に前記空気孔群のバーナを外周バーナとして3台以上設置したことを特徴とするガスタービン燃焼器。
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