JP2011106883A - 透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法 - Google Patents

透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】透過型電子顕微鏡によって観察できる範囲に観察領域を形成することを容易にする。
【解決手段】板状の試験片に電解研磨を行って貫通孔を形成して貫通孔の周辺を電子線が透過可能な観察領域にする透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法であって、電解研磨を行う前の試験片(ステップS21)に、透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダに取り付けるための取付部と、取付部の間に設けられ、研磨ホルダの孔の直径よりも幅が狭く、引っ張りホルダによって引っ張られた場合に破断を生じさせる破断部と、取付部の間に破断部に並んで設けられた強度部とを設けておき(ステップS22)、電解研磨では、研磨ホルダと試験片との間に研磨ホルダの孔よりも小さく且つ研磨液を試験片に局所的に接触させる微小孔を有するマスク6を挟み込み(ステップS23,S24)、試験片に対する微小孔の位置を調節することで、貫通孔があく位置を所定の範囲に制限する。
【選択図】図1

Description

本発明は、透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、透過型電子顕微鏡(TEM)の引っ張りホルダに取り付けて引っ張りながら観察を行う試験片の作製方法であって、電解研磨を行って観察領域を形成する方法の改良に関するものである。
透過型電子顕微鏡で観察を行う試験片には、電子線が透過可能な観察領域が設けられている。この観察領域を形成する方法として電解研磨が行われており(特許文献1参照)、電解研磨には、例えば図8に示すような電解研磨装置100(例えばテヌポール電解研磨装置、ストルアル社製)が使用される。
この電解研磨装置100では、板状の試験片101を研磨ホルダ104によって立てた状態で保持すると共に、試験片101の両側面に電極102を向かい合わせて配置している。そして、試験片101と電極102との間に電解液から成る研磨液103を流すと共に、試験片101と電極102間に電圧を印加して試験片101の両面を電解研磨する。試験片101を覆うように挟み込んで保持する研磨ホルダ104には、図9に示すように、試験片101の両側面に研磨液103を部分的に接触させる2つの孔104a,104aが設けられており、各孔104aから露出する部分以外の部分には研磨液103が接触しない構造になっている。研磨ホルダ104の2つの孔104a,104aは試験片101を挟んで対向する位置に設けられており、電解研磨が進んで試験片101の両面のすり鉢状の減肉が進行すると、両面の減肉が繋がって試験片101に微小な貫通孔105があく。電解研磨装置100は貫通孔105を光学的に検出し、電解研磨を停止する。この貫通孔105(例えば直径0.1mm程度)の周囲は厚さが非常に薄く、電子線が透過可能な観察領域106(例えば直径0.13mm程度の領域)となる。
試験片101としては、一般的には金属製の直径3mm程度の円板状のものが使用される。また、研磨ホルダ104に設けられている孔104aは奥に行くにつれて径が小さくなる形状のものであり、試験片101に接する部分、即ち一番奥の部分の直径は2mm程度になっている。したがって、試験片101の両面の直径2mm程度の円形領域に研磨液103が接触し、この領域で研磨が進行する。つまり、直径2mm程度の円形領域に直径0.1mm程度の貫通孔105が形成されることになる。
特開2001−337012号公報
しかしながら、電解研磨を行って試験片101に貫通孔105をあける方法では、研磨液103に接触している部分が全体的に研磨されて整ったすり鉢状に減肉が進行するとは限らず、局所的に偏って減肉が進行することも多い。そのため、研磨液103が接触する円形領域の中心に貫通孔105があくとは限らず、実際には、どこに貫通孔105があくのか研磨を行ってみなければ分からないのが実情である。
そのため、一般的な形状の試験片101ではなく、引っ張りながら観察を行う引っ張り試験片101を作製する場合には、特に以下の問題がある。つまり、透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダに取り付けて引っ張りながら観察を行い、例えば破断する様子を調べるのに用いる試験片101では、予め決められている位置又はその近傍(観察可能な位置)に観察領域106を作る必要がある。しかしながら、上記の方法で試験片101を作製する場合、電解研磨によって貫通孔105があく位置が研磨液103に接触する直径2mm程度の円形領域内でばらついてしまうので、観察可能な位置に観察領域106を作るのが難しく、試験片101作製の歩留まりが大変悪い。
本発明は、透過型電子顕微鏡によって観察できる範囲に観察領域を形成するのが容易な透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1記載の発明は、板状の試験片に研磨液を部分的に接触させる孔を有する研磨ホルダによって試験片を保持して電解研磨を行い、試験片に貫通孔を形成して貫通孔の周辺を電子線が透過可能な観察領域にする透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法において、電解研磨を行う前の試験片に、透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダに取り付けるための一対の取付部と、一対の取付部の間に設けられ、研磨ホルダの孔の直径よりも幅が狭く、引っ張りホルダによって引っ張られた場合に破断を生じさせる破断部と、一対の取付部の間に破断部に並んで設けられた強度部とを設けておき、電解研磨では、研磨ホルダと試験片との間に研磨ホルダの孔よりも小さく且つ研磨液を試験片に局所的に接触させる微小孔を有するマスクを挟み込み、試験片に対する微小孔の位置を調節することで、貫通孔があく位置を所定の範囲に制限するものである。
したがって、電解研磨を行う場合、研磨液に接触するのは試験片のマスクに設けられた微小孔から覗く範囲に限定され、貫通孔が形成される位置はこの狭い範囲の中に限定される。そのため、試験片の破断部にマスクの微小孔を対向させることで、破断部に貫通孔をあけることができ、透過型電子顕微鏡で観察可能な位置に観察領域が形成される。
請求項1記載の発明では、電解研磨によって貫通孔が形成される位置がマスクの微小孔に対向する極狭い範囲の中に限定されるので、マスクの微小孔の位置を調節することで貫通孔が形成される位置を微小孔に対向する狭い範囲に制限することができる。そのため、観察領域を透過型電子顕微鏡によって観察可能な位置に形成することが容易であり、試験片作製の歩留まりを大幅に向上させることができる。
本発明の透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の製作方法の実施形態の一例を示す流れ図である。 研磨ホルダを示し、一方の側部材から他方の側部材を外した状態の断面図である。 同研磨ホルダを示し、試験片を保持している状態の断面図である。 マスクを示し、(A)はその平面図、(B)はその側面図である。 試験片の作製過程を示し、(A)はブランクの状態の平面図、(B)は取付部,破断部,強度部を形成した状態の平面図、(C)は貫通孔及び観察領域を形成した状態の平面図、(D)は貫通孔及び観察領域を形成した部分を拡大して示す断面図である。 試験片とマスク及びホルダの孔との位置関係(位置あわせした状態)を示す図である。 透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダに試験片を取り付ける様子を示す図である。 電解研磨装置を示す図である。 研磨ホルダで試験片を保持している様子を示す断面図である。
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図7に本発明の透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法の実施形態の一例を示す。透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法は、板状の試験片1に研磨液2を部分的に接触させる孔3aを有する研磨ホルダ3によって試験片1を保持して電解研磨を行い、試験片1に貫通孔4を形成して貫通孔4の周辺を電子線が透過可能な観察領域5にするもので、電解研磨を行う前の試験片1に、透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダに取り付けるための一対の取付部1a,1aと、一対の取付部1a,1aの間に設けられ、研磨ホルダ3の孔3aの直径よりも幅が狭く、引っ張りホルダによって引っ張られた場合に破断を生じさせる破断部1bと、一対の取付部1a,1aの間に破断部1bに並んで設けられた強度部1cとを設けておき、電解研磨では、研磨ホルダ3と試験片1との間に研磨ホルダ3の孔3aよりも小さく且つ研磨液2を試験片1に局所的に接触させる微小孔6aを有するマスク6を挟み込み、試験片1に対する微小孔6aの位置を調節することで、貫通孔4があく位置を所定の範囲に制限するものである。
まず最初に、電解研磨に使用する研磨ホルダ3及びマスク6について説明する。研磨ホルダ3を図2及び図3に示す。本実施形態の研磨ホルダ3は、2つの側部材3b,3cによって試験片1を挟み込むものであり、一方の側部材3bに設けられた凹部3dの内周面には雌ねじが形成され、もう一方の側部材3cの外周面には雄ねじが形成されており、一方の側部材3bの凹部3dにもう一方の側部材3cをねじ込むことで試験片1を挟み込んで保持する構造になっている。
一方の側部材3bの凹部3d底面には試験片1を挟み込む挟持用凹部3eが設けられている。また、一方の側部材3bには電極9が取り付けられており、電極9から挟持用凹部3eに向けて電線10が延びており、挟持用凹部3eにセットした試験片1と電極9とを導通して試験片1への電圧の印加を可能にしている。
本実施形態では、孔3aを各側部材3b,3cのそれぞれに設けており、試験片1の両面に電解液からなる研磨液2を接触させて試験片1の減肉を表裏両面から進めるようにしている。各側部材3b,3cの孔3aは試験片1を面と考えた場合に試験片1を挟んで面対称になるように設けられている。この研磨ホルダ3は市販品(電解研磨装置の付属品)であり、その形状や孔3a,3aの大きさは予め決められている。各孔3a,3aは奥に行くにつれて径が徐々に小さくなる形状のものであり、試験片1に接する部分の直径、即ち一番奥の部分の直径は試験片1の破断部1bの幅よりも大きくなっている。
図4にマスク6を示す。マスク6は試験片1の研磨面と研磨ホルダ3との間に挟み込まれている。本実施形態では、試験片1の両面を同時に研磨するので、試験片1の両側にマスク6がそれぞれ挟み込まれている。
マスク6は、例えば円板状の薄板で、中央に微小孔6aが設けられている。マスク6は研磨液2に腐食されない材料、例えば白金等で形成されることが好ましい。ただし、マスク6を1回毎の使い捨てにする場合には1回の使用中に耐えることができる材料であればある程度腐食されるものでも使用可能である。また、マスク6の大きさは研磨ホルダ3によって保持できる大きさ、即ち研磨ホルダ3の挟持用凹部3eに入れることが可能で且つ孔3aの一番奥の部分(試験片1に接する部分)の直径よりも大きな値になっている。
マスク6の微小孔6aの直径は、研磨ホルダ3の孔3aの一番奥の部分の直径に比べて著しく小さく、また、試料1の破断部1bの幅に比べて小さいことが好ましい。微小孔6aの直径を破断部1bの幅に比べて小さくすることで、マスク6を重ねる位置が試験片1に対して多少ずれた場合にも破断部1bに観察領域5を形成することができる。
マスク6の微小孔6aの深さ(微小孔6aの部分のマスク6の厚さ)は、研磨液2がたとえ粘性のあるものであっても微小孔6aの中に入り込んで試験片1に接触できる程度の深さになっている(条件a)。また、マスク6の周縁部の厚さは、試験片1と重ね合わせた場合にこれら全体の厚みをホルダ3によってしっかりと保持できる厚みにする厚みになっている(条件b)。即ち、マスク6を1枚の板材で形成し、その中央(微小孔6aが設けられている部分)と周縁の厚さが同じ場合には、マスク6全体が上記条件a,bを満たす厚さになっている。
マスク6の微小孔6aの大きさ(直径)と深さの関係は試験片1と研磨液2との接触に大きく影響するので、両者の値はバランスをとって決めることが好ましい。即ち、微小孔6aの直径が大きくなると研磨液2が微小孔6a内に入り込みやすくなるので研磨液2が試験片1に接触し易くなり、逆に、直径が小さくなると研磨液2が微小孔6a内に入り込み難くなるので研磨液2が試験片1に接触し難くなる。また、微小孔6aの深さが浅くなると微小孔6a内に入り込んだ研磨液2が試験片1に到達しやすくなり、逆に、深さが深くなると微小孔6a内に入り込んだ研磨液2が試験片1に到達し難くなる。したがって、透過型電子顕微鏡によって観察可能な範囲の大きさ、貫通孔4の形成が許される範囲等を考慮して、微小孔6aの大きさと深さのバランスをとって両者の値を決めることが好ましい。
本実施形態では、研磨ホルダ3の孔3aの一番奥の部分の直径は例えば約2mmである。また、試験片1は長さ:11.5mm、幅:2.6mm、厚さ:0.08mmであり、孔7の直径:1.32(±0.1)mm、両端の孔7,7の中心距離:9(±0.25)mm、破断部1bの幅:0.6mm、長孔8の長さ:4.5mm、長孔8の幅0.6mmである(図5,図6)。破断部1bは試験片1の幅方向中央に設けられており、2本の長孔8は試験片1の長さ方向の中央に設けられている。試験片1の材質は高クロム鋼である。
このような研磨ホルダ3を使用し、また試験片1のサイズが上記の場合、マスク6の微小孔6aの直径を例えば0.1mm〜0.5mm、微小孔6aの深さ(マスク6の厚さ)を例えば0.01〜0.1mmとするのが好ましい。これらの範囲にすることで、試験片1の破断部1bに観察領域5を良好に形成することができる。より好ましくは、微小孔6aの直径:0.3〜0.5mm、深さ:0.01〜0.1mmである。このようにすることで、マスク6の微小孔6aの試験片1の破断部1bへの位置合わせが容易になる。更に好ましくは、微小孔6aの直径:0.4mm、深さ:0.1mmである。このようにすることで、マスク6の微小孔6aの試験片1の破断部1bへの位置合わせが更に容易になると共に、観察領域5を最も良好に形成することができる。
マスク6を自作しても良いが、市販品を使用しても良い。市販品としては、例えば単孔グリッド(日新EM社)の使用が可能である。単孔グリッドとしては、例えば白金製で単孔(微小孔6a)の直径が0.1mm(型番26441),0.3mm(型番26442),0.5mm(型番26443)の使用が可能である。なかでも、型番26442の使用が最も好ましい。
なお、試験片1を挟む2枚のマスク6として微小孔6aの直径が異なるものを使用しても良い。例えば、2枚のマスク6の微小孔6aと試験片1の破断部1bを一直線上に揃える(軸合わせ)ことが比較的難しい場合等には、微小孔6aの直径が異なる2枚のマスク6を使用することが有効である。例えば、微小孔6aの直径が0.3mmのマスク6(φ0.3マスク6)と微小孔6aの直径が0.5mmのマスク6(φ0.5マスク6)を使用する場合を例に説明すると、まず最初にφ0.3マスク6を横にした研磨ホルダ3の側部材3bの挟持用凹部3eの上に置き、その上に試験片1を置き、最後にφ0.5マスク6を置く。そして、側部材3bの凹部3dに側部材3cをねじ込む。このように孔径の小さなφ0.3マスク6を孔径の大きなφ0.5マスク6よりも先に置くのが好ましいのは、2枚目のマスク6を重ねる際に既に重ねられている1枚目のマスク6と試験片1とをずらしてしまう虞があるからである。即ち、2枚目のマスク6を重ねる際に1枚目のマスク6に対して試験片1をずらしてしまったとしても、1枚目のマスク6の微小孔6aが小さければ小さいほど試験片1の破断部1bの所定範囲からはみ出る確率が小さくなる。逆に、1枚目のマスク6の微小孔6aが大きければ大きいほど、僅かなずれでも破断部1bの所定範囲からはみ出る確率は大きくなる。1枚目のマスク6と試験片1とのずれを後から修正するのは難しく、1枚目のマスク6の微小孔6aが破断部1bの所定範囲からはみ出てしまった場合には、もう一度最初からやり直す必要がある。そのため、微小孔6aが小さな方のマスク6を最初に載せ、微小孔6aの直径が大きな方のマスク6を後から載せるようにするのが好ましい。そして、仮にφ0.5マスク6の軸がずれて微小孔6aが破断部1bからはみ出したとしても、φ0.3マスク6の軸が合っていればφ0.3マスク6側からの電解研磨が破断部1bの所定位置から進行するため、結果として、破断部1bの所定範囲に貫通孔4を形成することができる。なお、使用する2枚のマスク6の微小孔6aの直径は上述の値に限るものではなく、その他の値のものを組み合わせても良い。また、厚さの異なるマスク6を使用しても良い。
本発明では、まず最初に試験片1のブランクを作成し(図1のステップS21)、このブランクに取付部1a,1a,破断部1b,強度部1cを形成(ステップS22)した後、電解研磨(ステップS24)を行うことで試験片1を作製する。
試験片1のブランクを図5(A)に示す。ブランクは、調査対象の材料で形成された板材である。ブランクは、例えば板材を切断したり、ブロックから板状に切り出す等の手段によって作成される。ただし、ブランクの作成手段はこれらに限るものではなく、所定の寸法形状に成形可能であればいずれの手段を用いても良い。
次に、試験片1に取付部1a,破断部1b,強度部1cを形成する(ステップS22)。本実施形態では、図5(B)に示すように、ブランクの両端近傍に孔7をあけることで取付部1aを形成すると共に、両端の取付部1a,1aの間に試験片1の長手方向に細長い長孔8を2本形成することで破断部1b及び2つの強度部1c,1cを形成している。2本の長孔8,8の間が破断部1b、その両側が強度部1c,1cとなる。孔7,7及び長孔8,8は、例えばフォトエッチングによって形成される。フォトエッチングによれば試験片1に残留応力を発生させることなく孔7,7及び長孔8,8を形成することができるので、観察領域5を残留応力のないものにすることができる。ただし、孔7,7及び長孔8,8の形成手段はフォトエッチングに限るものではなく、所定形状の孔7,7及び長孔8,8を形成することができればその他の手段を使用しても良い。
次に、電解研磨を行って試験片1に観察領域5を形成する。研磨ホルダ3の側部材3bから側部材3cを取り外し、凹部3d内の挟持用凹部3eに試験片1及びマスク6をセットする(ステップS23)。このとき、2枚のマスク6の間に試験片1を挟み込み、研磨ホルダ3の孔3a,3aをマスク6で塞ぐようにする。また、マスク6の微小孔6aを試験片1に貫通孔4をあけたい位置に対向させる(軸合わせ)。そして、研磨ホルダ3を電解研磨装置にセットし、電解研磨を行う(ステップS24)。電解研磨装置として、例えばテヌポール電解研磨装置(ストルアル社製)が使用される。
電解研磨が開始されると、試験片1の研磨液2に接触する部分が徐々に薄くなる(減肉)。この減肉はすり鉢状に進行する。本実施形態では、試験片1の両面に研磨液2を当てて両面研磨を行っているので、試験片1の表裏両面からすり鉢状に減肉が進行し、やがて繋がって貫通孔4となる(図5(C),(D))。貫通孔4の周辺の厚さは透過型電子顕微鏡の電子線が透過できる程度に薄くなっており、この領域が観察領域5となる。テヌポール電解研磨装置は貫通孔4を光学的に検出し、電解研磨を自動的に停止する。
電解研磨の終了後、研磨ホルダ3から試験片1を取り出し、洗浄する(ステップS25)。これにより、試験片1が完成する。試験片1の破断部1bには貫通孔4が設けられておりこの部分の強度は小さくなっているが、破断部1bの両側には強度部1cが設けられているので、試験片1全体としての強度は確保され、試験片1の取り扱いに支障はない。
図7に、透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダ11を示す。試験片1は引っ張りホルダ11の固定クロスヘッド12と可動クロスヘッド13に取り付けられる。本実施形態では、ボルト14,14を試験片1の孔7,7に通して固定クロスヘッド12又は可動クロスヘッド13に締結することで、試験片1の取付部1a,1aを固定クロスヘッド12又は可動クロスヘッド13に取り付けている。可動クロスヘッド13を図中矢印方向に移動させることで試験片1の一端を引っ張り、破断部1bを伸ばし破断させながら観察を行うことができる。なお、本実施形態の引っ張りホルダ11にはヒータ15が設けられており、試験片1を加熱しながら観察を行うことができる。ただし、引っ張りホルダ11としてヒータ15が設けられていないものを使用しても良い。
電解研磨では、試験片1の電解液2に接触している部分全体について減肉が進行するのではなく、特定の部位だけ著しく偏って減肉が進行することがある。このような場合、貫通孔4は試験片1の電解液2に接触している部分の中心に形成されずに偏った位置に形成されることがある。即ち、貫通孔4があく位置がばらつく。
仮にマスク6がない場合には、研磨ホルダ3の孔3aの一番奥の部分の直径(本実施形態では2mm)は試験片1の破断部1bの幅(本実施形態では0.6mm)よりも大きくなっているので、研磨液2に接触する範囲が広く、破断部1bの中央から大きく外れた位置や強度部1cに貫通孔4があく虞がある。貫通孔4の位置が破断部1bの中央から大きく外れると、観察領域5が形成される位置が透過型電子顕微鏡によって観察できる範囲からずれてしまうので、そのような試験片1を採用することができない。
これに対し、本発明では研磨ホルダ3と試験片1との間にマスク6を挟み込むので、研磨液2に接触するのは試験片1のマスク6に設けられた微小孔6aから覗く極狭い範囲に制限される。そのため、貫通孔4が形成される位置が電解液2接触部分の中心からずれたとしても、貫通孔4が形成される位置は必ずこの極狭い範囲の中になる。したがって、試験片1の貫通孔4をあけたい位置(破断部1bの中央部)にマスク6の微小孔6aを対向させることで、貫通孔4をあけたい位置(破断部1bの中央部)又はその近傍に貫通孔4をあけることができ、透過型電子顕微鏡によって観察できる範囲に観察領域5を形成することができる。
このように、本発明では、マスク6の微小孔6aを試験片1に対して位置合わせすることで、透過型電子顕微鏡によって観察できる範囲に観察領域5を形成することができる。そのため、透過型電子顕微鏡によって観察できる範囲に観察領域5が形成されている試験片1を作製するのが容易であり、また、不良品の発生を抑制して試験片1作製の歩留まりを大幅に向上させることができる。
本実施形態で使用する研磨ホルダ3は市販品であり、孔3aの大きさは予め決められている。そのため、透過型電子顕微鏡の試験片として一般的に使用されている直径3mmの金属製円板に貫通孔4及び観察領域5を形成するのには適しているが、透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダ11(図7)に取り付ける試験片1の作製には適していない。しかしながら、研磨ホルダ3と試験片1との間にマスク6を挟み込むことで、市販品の研磨ホルダ3を使用して引っ張りホルダ11に取り付けることが可能な試験片1を作製することができる。即ち、本来であれば市販品の研磨ホルダ3の使用に適していない引っ張り試験用の試験片1を市販品の研磨ホルダ3を使用して簡単に作製することができる。そして、専用の研磨ホルダ3を必要としないので、安価に試験片1を作製することができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の説明では、試験片1の両面について電解研磨を行う場合を例にしていたが、必ずしもこれに限るものではなく、試験片1の片面についてのみ電解研磨を行う場合に適用しても良い。即ち、片側にのみ孔3aが設けられている研磨ホルダ3を使用し、孔3aが設けられている側にのみマスク6を挟み込んで電解研磨を行うようにしても良い。この場合にも、貫通孔4があく位置を所定の範囲に制限することができ、透過型電子顕微鏡によって観察できる範囲に観察領域5を形成するのが容易であり、試験片1作製の歩留まりを著しく向上させることができる。
また、上述の試験片1の形状や大きさは一実施形態であり、その他の形状や大きさのものについても本発明は適用可能である。
1 電子顕微鏡用引っ張り試験片
1a,1a 一対の取付部
1b 破断部
1c 強度部
2 研磨液
3 研磨ホルダ
3a 研磨ホルダの孔
4 試験片の貫通孔
5 観察領域
6 マスク
6a マスクの微小孔
11 透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダ

Claims (1)

  1. 板状の試験片に研磨液を部分的に接触させる孔を有する研磨ホルダによって前記試験片を保持して電解研磨を行い、前記試験片に貫通孔を形成して前記貫通孔の周辺を電子線が透過可能な観察領域にする透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法において、前記電解研磨を行う前の前記試験片に、透過型電子顕微鏡の引っ張りホルダに取り付けるための一対の取付部と、前記一対の取付部の間に設けられ、前記研磨ホルダの前記孔の直径よりも幅が狭く、前記引っ張りホルダによって引っ張られた場合に破断を生じさせる破断部と、前記一対の取付部の間に前記破断部に並んで設けられた強度部とを設けておき、前記電解研磨では、前記研磨ホルダと前記試験片との間に前記研磨ホルダの前記孔よりも小さく且つ前記研磨液を前記試験片に局所的に接触させる微小孔を有するマスクを挟み込み、前記試験片に対する前記微小孔の位置を調節することで、前記貫通孔があく位置を所定の範囲に制限することを特徴とする透過型電子顕微鏡用引っ張り試験片の作製方法。
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