JP2011106319A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を好適に変更することのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】この装置は、バルブタイミング変更機構と、作動油の圧力低下時に作動してクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相をロック位相でロックするロック機構とを備える。機関運転状態に基づき設定される目標位相と実際の相対回転位相とが一致するようにバルブタイミング変更機構の作動制御を実行する。バルブタイミング変更機構の作動制御を、作動油温度TOが判定温度T以下のときには(S101:NO)カムシャフトの相対回転位相のロック位相への変更を許可しつつ実行し(S103)、作動油温度TOが判定温度Tより高いときには(S101:YES)、カムシャフトの相対回転位相のロック位相への変更を禁止しつつ実行する(S104)。
【選択図】図7
【解決手段】この装置は、バルブタイミング変更機構と、作動油の圧力低下時に作動してクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相をロック位相でロックするロック機構とを備える。機関運転状態に基づき設定される目標位相と実際の相対回転位相とが一致するようにバルブタイミング変更機構の作動制御を実行する。バルブタイミング変更機構の作動制御を、作動油温度TOが判定温度T以下のときには(S101:NO)カムシャフトの相対回転位相のロック位相への変更を許可しつつ実行し(S103)、作動油温度TOが判定温度Tより高いときには(S101:YES)、カムシャフトの相対回転位相のロック位相への変更を禁止しつつ実行する(S104)。
【選択図】図7
Description
この発明は、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相の変更を通じて機関バルブのバルブタイミングを可変設定するバルブタイミング変更機構と上記相対回転位相の変更動作を機械的な係合を通じて規制してこれをロックするロック機構とを備える内燃機関の制御装置に関する。
近年、機関出力性能の向上やエミッションの改善等を図るために、機関バルブの開閉時期(バルブタイミング)を適宜に変更するバルブタイミング変更機構を内燃機関に搭載することが提案されている。
バルブタイミング変更機構としては、内燃機関のクランクシャフトに駆動連結されたハウジングとカムシャフトに駆動連結されたベーン体とを備えて、それらハウジングおよびベーン体がカムシャフトの回転軸を中心として相対回転可能に配設されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。こうしたバルブタイミング変更機構では、ベーン体に径方向に延びるベーンが形成されており、このベーンによってハウジングの内部が進角用圧力室と遅角用圧力室とに区画されている。
それら圧力室にはそれぞれオイルポンプから作動油が圧送供給されており、その作動油の圧力がそれぞれベーンに作用することにより、ハウジングに対するベーン体の相対回転位相、換言すればクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相が進角側または遅角側に変更される。そして、このようにカムシャフトの相対回転位相を変更することにより、機関バルブのバルブタイミングが変更されるようになる。
また、カムシャフトの相対回転位相を所定のロック位相で機械的にロックするロック機構を内燃機関に搭載することも提案されている。ロック機構を備えた内燃機関では、その始動時などといった作動油の供給圧を十分に確保できないときでも、バルブタイミングを機関運転状態に適したタイミングに保持することができる。
ロック機構としては、例えばベーン体に形成された収容孔に出没可能に配設されるロックピン、ハウジングに形成されてロックピンの先端部が挿入される凹部(ロック穴)、同ロックピンをロック穴側に付勢するスプリング等を備えたものが知られている。このロック機構では、ベーン体における上記収容孔の近傍にロック解除用の圧力室が形成されており、この圧力室が上記各圧力室に連通されて作動油の一部が供給されている。そして、ロック解除用の圧力室内の作動油の圧力(ロック解除圧)に応じた大きさの付勢力がロックピンに作用することにより、同ロックピンがロック穴から離間する側に付勢される。
こうしたロック機構では、スプリングの付勢力とロック解除圧に基づく付勢力との大小関係に応じてロックピンの出没状態、すなわちハウジングおよびベーン体の相対回動が規制される状態(ロック状態)と同規制が解除された状態(解除状態)とが選択的に切り換えられる。
具体的には、内燃機関の運転停止時には、オイルポンプからの作動油の供給が停止されており作動油の圧力が低い。このとき上記ロック解除圧が所定圧(ロック機構がロック状態になる圧力)より低く、スプリングの付勢力が同ロック解除圧に基づく付勢力より大きいために、スプリングの付勢力によってロックピンがロック穴側に押圧されて同ロックピンの先端部がロック穴に挿入されたロック状態になる。
一方、内燃機関の運転中には、オイルポンプの供給圧が高くロック解除圧が上記所定圧より高いために、同ロック解除圧に基づく付勢力がスプリングの付勢力より大きい。そのため、ロック解除圧に基づく付勢力によってロックピンがロック穴から離間する側に押圧されて、同ロックピンの先端部がロック穴から離脱した解除状態になる。
なお、本発明にかかる先行技術文献としては、上記特許文献1の他にも以下の特許文献2が挙げられる。
ここで、作動油はその温度上昇に伴って粘度が低下するといった特性を有する。そのため、内燃機関の運転に伴って作動油の温度が高くなると、バルブタイミング変更機構およびロック機構の内部やそれらに作動油を供給する作動油供給系の内部において不要に漏れる作動油の量が多くなり、作動油の圧力が低くなって前記ロック解除圧も低くなる。したがって、前述した装置において作動油の温度が過度に高くなるようなことがあると、上記ロック解除圧が、内燃機関の運転中においてロック機構を解除状態で維持することの可能なレベルの圧力を下回るおそれがある。そして、そうした状況ではロック機構をロック状態から解除状態に変更することができなくなるために、ロック機構がロック状態になると、その後においてクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を変更することができなくなってしまう。
なお、こうした作動油の温度上昇に起因して生じる不都合は、油圧作動式のロック機構が搭載された内燃機関であれば、例えば電気駆動式のバルブタイミング変更機構などといった油圧作動式以外のバルブタイミング変更機構が搭載された内燃機関においても同様に生じる。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を好適に変更することのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を変更するバルブタイミング変更機構と、圧力室への作動油の供給が停止された状態で前記相対回転位相がロック位相になると機械的な係合を通じて前記相対回転位相を前記ロック位相でロックするロック状態になり、前記圧力室に作動油が供給されると同作動油の圧力によって前記機械的な係合が解除されて前記ロックを解除した解除状態になるロック機構と、を備え、機関運転状態に基づき目標位相を設定するとともに該目標位相と前記相対回転位相とを一致させるように前記バルブタイミング変更機構の作動制御を実行する内燃機関の制御装置において、前記作動制御を、前記作動油の温度が判定温度以下のときには前記相対回転位相の前記ロック位相への変更を許可しつつ実行し、前記作動油の温度が前記判定温度より高いときには前記相対回転位相の前記ロック位相への変更を禁止しつつ実行することをその要旨とする。
請求項1に記載の発明は、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を変更するバルブタイミング変更機構と、圧力室への作動油の供給が停止された状態で前記相対回転位相がロック位相になると機械的な係合を通じて前記相対回転位相を前記ロック位相でロックするロック状態になり、前記圧力室に作動油が供給されると同作動油の圧力によって前記機械的な係合が解除されて前記ロックを解除した解除状態になるロック機構と、を備え、機関運転状態に基づき目標位相を設定するとともに該目標位相と前記相対回転位相とを一致させるように前記バルブタイミング変更機構の作動制御を実行する内燃機関の制御装置において、前記作動制御を、前記作動油の温度が判定温度以下のときには前記相対回転位相の前記ロック位相への変更を許可しつつ実行し、前記作動油の温度が前記判定温度より高いときには前記相対回転位相の前記ロック位相への変更を禁止しつつ実行することをその要旨とする。
上記構成によれば、作動油の温度が低い状況、換言すればロック機構がロック状態になった場合であってもその後において解除状態への変更が可能な状況では、カムシャフトの相対回転位相をロック位相にするべくバルブタイミング変更機構の作動制御が実行されることを許可することができる。そのためカムシャフトの相対回転位相の変更を、ロック位相を含めたかたちで好適に行うことができる。
しかも、作動油の温度が高い状況、換言すればカムシャフトの相対回転位相がロック位相になったときにロック機構がロック状態になるとともにその後における解除状態への変更ができなくなるおそれのある状況では、相対回転位相をロック位相にするべくバルブタイミング変更機構の作動制御が実行されることを回避することができる。そのため、ロック機構がロック状態になって解除状態に変更できない状況になることを好適に抑えることができる。
したがって上記構成によれば、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を好適に変更することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、機関出力を調節する機関運転制御と前記内燃機関の出力軸に駆動連結された発電機の発電量を調節する発電機運転制御とをそれぞれアクセル操作部材の操作状態に基づき実行するものであり、前記作動油の温度が前記判定温度より高いときであり、且つ同作動油の温度が前記判定温度以下であるとの仮定のもとでは前記目標位相として前記ロック位相が設定されるときに、機関出力が前記仮定のもとでの機関出力より大きくなるように前記機関運転制御を実行して前記ロック位相への変更を禁止し、前記発電機の発電量が前記仮定のもとでの発電量より多くなるように前記発電機運転制御を実行することをその要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、機関出力を調節する機関運転制御と前記内燃機関の出力軸に駆動連結された発電機の発電量を調節する発電機運転制御とをそれぞれアクセル操作部材の操作状態に基づき実行するものであり、前記作動油の温度が前記判定温度より高いときであり、且つ同作動油の温度が前記判定温度以下であるとの仮定のもとでは前記目標位相として前記ロック位相が設定されるときに、機関出力が前記仮定のもとでの機関出力より大きくなるように前記機関運転制御を実行して前記ロック位相への変更を禁止し、前記発電機の発電量が前記仮定のもとでの発電量より多くなるように前記発電機運転制御を実行することをその要旨とする。
上記構成によれば、作動油の温度が高いときに、目標位相としてロック位相が設定される機関運転状態にならないように機関運転制御を実行することができ、カムシャフトの相対回転位相のロック位相への変更を禁止することができる。しかも、発電機の発電量を多くした分だけクランクシャフトに作用する負荷が増加するために、その増加分と機関出力の増加分の一部とを相殺することができ、これにより上記相対回転位相のロック位相への変更の禁止に伴うクランクシャフトの回転トルクの変化を抑えることができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態にかかる内燃機関の制御装置について説明する。
図1に、本実施形態にかかる内燃機関の制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動系の構成を示す。
図1に、本実施形態にかかる内燃機関の制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動系の構成を示す。
同図1に示すように、このハイブリッド車両には、内燃機関ENGと二つの回転機(第1回転機MG1および第2回転機MG2)とが搭載されている。第1回転機MG1は主にバッテリ(図示略)への充電電力の供給や上記第2回転機MG2への駆動電力の供給を行うための発電機として機能する。第2回転機MG2は主に、車両の加速時や発進時などといった大きい出力が必要とされるときに同車両の駆動軸であるプロペラシャフトPSに回転トルクを付与するための電動機として機能する。また車両のトランスアクスルには、動力分配機構と二つの遊星歯車機構(フロント遊星歯車機構P1およびリア遊星歯車機構P2)とが設けられている。
内燃機関ENGの出力軸(後述するクランクシャフト11)は、サンギアs1、キャリアc1、リングギアr1の3回転要素からなるフロント遊星歯車機構P1のキャリアc1に接続されている。フロント遊星歯車機構P1のサンギアs1は、上記第1回転機MG1の回転子に一体回転可能に接続されている。またフロント遊星歯車機構P1のリングギアr1は、リア遊星歯車機構P2のリングギアr2に一体回転可能に接続されている。リア遊星歯車機構P2は、トランスアクスルの出力軸OSに、ひいてはプロペラシャフトPSに一体回転可能に接続されたサンギアs2と、回転不能に固定されたキャリアc2とを備えている。そしてプロペラシャフトPSには、第2回転機MG2の回転子が一体回転可能に接続されている。
図2に、上記内燃機関ENGおよびその周辺機器の概略構成を示す。
同図2に示すように、内燃機関ENGのクランクシャフト11には、図示しない吸気バルブを開閉する吸気カムシャフト12がタイミングチェーン13を介して連結されている。吸気カムシャフト12の先端にはバルブタイミング変更機構20が設けられており、タイミングチェーン13はこのバルブタイミング変更機構20のスプロケット21に巻き掛けられている。これにより、機関運転に伴いクランクシャフト11が回転するとその駆動力がタイミングチェーン13を介してバルブタイミング変更機構20に伝達され、バルブタイミング変更機構20とともに吸気カムシャフト12が回転する。このバルブタイミング変更機構20の作動を通じて、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対化移転位相が変更される。
同図2に示すように、内燃機関ENGのクランクシャフト11には、図示しない吸気バルブを開閉する吸気カムシャフト12がタイミングチェーン13を介して連結されている。吸気カムシャフト12の先端にはバルブタイミング変更機構20が設けられており、タイミングチェーン13はこのバルブタイミング変更機構20のスプロケット21に巻き掛けられている。これにより、機関運転に伴いクランクシャフト11が回転するとその駆動力がタイミングチェーン13を介してバルブタイミング変更機構20に伝達され、バルブタイミング変更機構20とともに吸気カムシャフト12が回転する。このバルブタイミング変更機構20の作動を通じて、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対化移転位相が変更される。
図3に、バルブタイミング変更機構20の内部構造を示す。
同図3に示すように、スプロケット21と一体に形成されたバルブタイミング変更機構20のハウジング22の内部には、吸気カムシャフト12に連結されたロータ23が回動可能に収容されている。
同図3に示すように、スプロケット21と一体に形成されたバルブタイミング変更機構20のハウジング22の内部には、吸気カムシャフト12に連結されたロータ23が回動可能に収容されている。
このロータ23にはその中心から径方向に突出する4つのベーン24が設けられており、ハウジング22にはそれらベーン24を各別に収容する4つの収容室25が形成されている。そうしたハウジング22内にロータ23が収容されることにより、各収容室25がベーン24によってそれぞれ進角用圧力室26と遅角用圧力室27とに区画されている。そして、ベーン24を挟むように配設された進角用圧力室26および遅角用圧力室27内の油圧を調整することにより、ベーン24が収容室25内で移動して、ロータ23がハウジング22内で回動するようになる。
図2に示すように、バルブタイミング変更機構20の進角用圧力室26および遅角用圧力室27への作動油の供給は、内燃機関ENGのクランクシャフト11に駆動連結された機械式のオイルポンプ15によって行われる。進角用圧力室26には進角用油路42が接続されており、遅角用圧力室27には遅角用油路43が接続されている。進角用油路42および遅角用油路43は、油圧調整弁40を介して供給油路41および還流油路44に接続されている。
オイルポンプ15は供給油路41の途中に設けられており、オイルポンプ15によってオイルパン14からくみ上げられた作動油は、供給油路41を通じて各圧力室26,27に選択的に供給される。また、ロータ23の回動に伴い各圧力室26,27から排出される作動油は還流油路44を通じてオイルパン14に戻される。なおオイルポンプ15により圧送される作動油の一部は、図示しない潤滑油通路を通じて機関各部に潤滑油として供給され、内燃機関ENGの各部の潤滑に供された後、オイルパン14へと戻される。
油圧調整弁40は電気的な駆動信号に基づいて駆動されるソレノイドバルブを内蔵した電磁駆動式のものであり、機関ECU51から出力される信号(駆動信号)に応じて上記各油路41〜44の接続態様を、[保持状態]、[進角状態]、[遅角状態]のうちの何れか一つに選択的に切り替える。
保持状態では、上記各油路41〜44の連通が全て遮断される。このとき、各圧力室26,27内の作動油の給排が停止されるために、各圧力室26,27内の油圧によってハウジング22内でのロータ23(図3参照)の回動が規制されてバルブタイミングが保持される。
進角状態では、供給油路41と進角用油路42とが連通されるとともに、還流油路44と遅角用油路43とが連通される。このとき、オイルポンプ15によってくみ上げられた作動油が供給油路41および進角用油路42を通じて進角用圧力室26に供給されるとともに、遅角用圧力室27内の作動油が遅角用油路43および還流油路44を通じてオイルパン14へと戻される。これにより進角用圧力室26内の油圧が高くなって、ハウジング22内においてロータ23が進角側(図3中の破線矢印を参照)に回動するようになる。これに伴い吸気カムシャフト12が進角側に回動し、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対回転位相がバルブタイミングを進角させる方向に変位する。
遅角状態では、供給油路41と遅角用油路43とが連通されるとともに、還流油路44と進角用油路42とが連通される。このとき、オイルポンプ15によってくみ上げられた作動油が供給油路41および遅角用油路43を通じて遅角用圧力室27に供給されるとともに、進角用圧力室26内の作動油が進角用油路42および還流油路44を通じてオイルパン14へと戻される。これにより遅角用圧力室27内の油圧が高くなると、ハウジング22内においてロータ23が遅角側(図3中の破線矢印を参照)に回動するようになる。これに伴い吸気カムシャフト12が遅角側に回動し、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対回転位相がバルブタイミングを遅角させる方向に変位する。
ここで、内燃機関ENGの始動時には機関回転速度NEが低く、オイルポンプ15の回転速度も低いために、オイルポンプ15からバルブタイミング変更機構20の進角用圧力室26と遅角用圧力室27とに供給される作動油の圧力も低い。そのため、それら圧力室26,27内の油圧が不足して、ロータ23を所定の位相に保持することができなくなり、バルブタイミングが不安定になるおそれがある。
この点をふまえて本実施形態では、バルブタイミング変更機構20のロータ23を機械的な係合によって所定の位相に保持するロック機構30を設け、このロック機構30によって内燃機関ENGの始動時におけるロータ23の回転位相を所定のロック位相(詳しくは、バルブタイミングが最も遅いタイミングになる最遅角位相)で保持するようにしている。
図4[a],[b]に、バルブタイミング変更機構20におけるロック機構30近傍の断面構造を拡大して示す。
図3および図4に示すように、ロック機構30は、四つの収容室25のうちの一つに形成された係合穴33と、ベーン24から出没するように往復動可能に設けられてこの係合穴33に挿入されるロックピン31とを備えている。
図3および図4に示すように、ロック機構30は、四つの収容室25のうちの一つに形成された係合穴33と、ベーン24から出没するように往復動可能に設けられてこの係合穴33に挿入されるロックピン31とを備えている。
ロックピン31はスプリング32(図4)によってベーン24から突出する方向に常時付勢されている。係合穴33の底部は、ロック解除用油路34を介して進角用圧力室26に連通されている。これにより、ロックピン31の先端部と係合穴33の底部とにより区画される圧力室(ロック解除圧力室35)に進角用圧力室26内の作動油が供給されるようになっている。
内燃機関ENGの運転が停止されるとオイルポンプ15(図2参照)の駆動が停止されて進角用圧力室26内の油圧が低下するために、ロック解除圧力室35内の油圧も低下する。そのため、このとき吸気カムシャフト12の相対回転位相がロック位相になっていると、スプリング32による付勢力によってロックピン31がベーン24から突出して、同ロックピン31の先端が係合穴33に係合したロック状態(図4[a]に示す状態)になり、ロータ23の移動が規制されるようになる。
一方、内燃機関ENGが始動されてオイルポンプ15が駆動されると、進角用圧力室26内の油圧が高くなってロック解除圧力室35内の油圧も高くなるために、同油圧によってロックピン31がスプリング32の付勢力に抗して押し戻されて、ロックピン31と係合穴33との係合が解除された解除状態(図4[b]に示す状態)になる。
図5に、本実施形態のハイブリッド車両の制御構造を概略的に示す。
同図5に示すように、ハイブリッド車両には、その運転状態を制御するための三つの電子制御ユニット(ハイブリッドECU50、機関ECU51、回転機ECU52)が設けられている。これら電子制御ユニットは、各種センサの出力信号を取り込むとともに各種の演算処理を実行し、その演算結果に基づき内燃機関ENGの運転制御や回転機の作動制御などといったハイブリッド車両の運転にかかる各種制御を実行する。
同図5に示すように、ハイブリッド車両には、その運転状態を制御するための三つの電子制御ユニット(ハイブリッドECU50、機関ECU51、回転機ECU52)が設けられている。これら電子制御ユニットは、各種センサの出力信号を取り込むとともに各種の演算処理を実行し、その演算結果に基づき内燃機関ENGの運転制御や回転機の作動制御などといったハイブリッド車両の運転にかかる各種制御を実行する。
各種センサとしては、例えば車両の走行速度(車速SPD)を検出するための車速センサ53や、アクセル操作部材16(例えばアクセルペダルやアクセルレバーなど)の操作量(アクセル操作量ACC)を検出するためのアクセルセンサ54、内燃機関ENGの吸入空気量GAを検出するための吸気量センサ55が設けられている。また、クランクシャフト11の回転位相(クランク角CA)および回転速度(機関回転速度NE)を検出するためのクランクセンサ56や、吸気カムシャフト12の回転位相(カム角CAMA)を検出するためのカムセンサ57が設けられている。その他、バルブタイミング変更機構20に供給される作動油の温度(作動油温度TO)を検出するための油温センサ58なども設けられている。
ハイブリッドECU50は、ハイブリッド車両の運転状態を統括的に制御する。具体的には、アクセル操作量ACCおよび車速SPDに基づいてプロペラシャフトPSに付与する回転トルクの制御目標値(要求トータル出力)を算出するとともに、この要求トータル出力に基づいて機関出力の制御目標値(要求機関出力)と第1回転機MG1および第2回転機MG2の出力の制御目標値(要求回転機出力)とをそれぞれ算出する。なお要求機関出力としては、内燃機関ENGの運転によってクランクシャフト11に付与される回転トルクについての制御目標値(パワー要求)と、機関回転速度NEについての制御目標値(目標機関回転速度Tne)とが算出される。そして、要求機関出力は機関ECU51に出力され、要求回転機出力は回転機ECU52に出力される。
機関ECU51は、内燃機関ENGの運転制御を実行する。具体的には、ハイブリッドECU50から入力される要求機関出力(パワー要求、目標機関回転速度Tne)に基づいて内燃機関ENGの各種制御パラメータの制御目標値を算出するとともに、それら制御目標値をもとに各種制御パラメータを制御する。
上記制御目標値としては、例えば内燃機関ENGの吸入空気量GAの調節に用いられるスロットルバルブの開度についての制御目標値(目標スロットル開度Tta)が算出される。そして、この目標スロットル開度Ttaと実際のスロットルバルブの開度とが一致するように同スロットルバルブの開度が制御される。
また上記制御目標値として、インジェクタから噴射される燃料の量についての制御目標値(目標燃料噴射量TQ)が算出される。そして、この目標燃料噴射量TQと同量の燃料が噴射されるようにインジェクタが開弁駆動される。
さらに上記制御目標値として、機関点火時期についての制御目標値(目標点火時期TR)が算出される。そして、この目標点火時期TRにおいて点火プラグによる点火動作が行われるように同点火プラグの作動が制御される。
また上記制御目標値として、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対回転位相についての目標位相(目標バルブタイミングTvt)が算出される。そして、この目標位相が実際の相対回転位相と一致するようにバルブタイミング変更機構20(詳しくは、油圧調整弁40)の作動制御が実行される。なお本実施形態では、クランクセンサ56により検出されるクランク角CAとカムセンサ57により検出されるカム角CAMAとに基づいて実際の相対回転位相(バルブタイミングVT)が算出されてバルブタイミング変更機構20の作動制御に用いられる。また本実施形態では、パワー要求および目標機関回転速度Tneにより定まる機関運転領域と同運転領域に適した吸気バルブのバルブタイミングとの関係(具体的には、図6に示す算出マップ)が実験やシミュレーションの結果などに基づき予め求められて機関ECU51に記憶されている。本実施形態では、内燃機関ENGの燃料消費量の低減を図るために、同内燃機関ENGの中負荷運転領域(同図中にAで示す領域)における目標バルブタイミングTvtとして最遅角位相が算出される。そして、そうした機関ECU51に記憶されている関係をもとに、パワー要求および目標機関回転速度Tneに基づいて目標バルブタイミングTvtが算出される。
回転機ECU52は、第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動状態を制御する。具体的には、ハイブリッドECU50から入力される要求回転機出力に基づいて、第1回転機MG1の制御量の制御目標値Tmg1と、第2回転機MG2の制御量の制御目標値Tmg2とが算出される。そして、制御目標値Tmg1に応じて第1回転機MG1(詳しくは、制御回路TR1)の作動が制御され、制御目標値Tmg2に応じて第2回転機MG2(詳しくは、制御回路TR2)の作動が制御される。本実施の形態の車両では、第1回転機MG1が制御回路TR1を介して、また第2回転機MG2が制御回路TR2を介してそれぞれバッテリBATに接続されている。
ここで、作動油はその温度上昇に伴って粘度が低下するといった特性を有する。そのため、内燃機関ENGの運転に伴って作動油の温度が高くなると、バルブタイミング変更機構20およびロック機構30の内部(詳しくは、その摺動部分)や、それらバルブタイミング変更機構20およびロック機構30に作動油を供給する作動油供給系(例えばオイルポンプ15、油圧調整弁40)の内部において不要に漏れる作動油の量が多くなる。そして、これに伴って作動油の圧力が低くなって進角用圧力室26内の作動油の圧力も低くなり、ロック解除用油路34を介してロック解除圧力室35に供給される作動油の圧力(ロック解除圧)が低くなる。
本実施形態では、作動油の温度が過度に高くなった場合に、上記ロック解除圧が、内燃機関ENGの運転中においてロック機構30を解除状態で維持することの可能なレベルの圧力よりも低くなるおそれがある。そして、そうした状況ではロック機構30をロック状態から解除状態に変更することができなくなるために、内燃機関ENGの運転中においてロック機構30がロック状態になってしまうと、その後においてクランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対回転位相を変更することができなくなってしまう。
この点をふまえて本実施形態では、バルブタイミング変更機構20の作動制御を、作動油の温度が判定温度T(例えば、110度)以下のときには前記相対回転位相の最遅角位相(ロック位相)への変更を許可しつつ実行し、作動油の温度が判定温度Tより高いときには上記相対回転位相のロック位相への変更を禁止しつつ実行するようにしている。具体的には、バルブタイミング変更機構20の作動制御の実行に際して上記相対回転位相がロック位相になるバルブタイミング(ロックタイミング)を目標バルブタイミングTvtとして設定することが、作動油の温度が判定温度T以下のときには許可される一方、作動油の温度が判定温度Tより高いときには禁止される。
これにより、作動油の温度が低い状況、換言すればロック機構30がロック状態になった場合であってもその後において解除状態への変更が可能な状況では、吸気カムシャフト12の相対回転位相をロック位相にするべくバルブタイミング変更機構20の作動制御を実行することが許可される。そのため、吸気バルブのバルブタイミングの調節が、上記ロックタイミングを含めたかたちで好適に行われるようになる。
一方、作動油の温度が高い状況、換言すれば吸気カムシャフト12の相対回転位相がロック位相になったときにロック機構30がロック状態になるとともにその後における解除状態への変更ができなくなるおそれのある状況では、上記相対回転位相をロック位相にするべくバルブタイミング変更機構20の作動制御を実行することが回避される。これにより、吸気バルブのバルブタイミングがロックタイミングになることが抑えられ、ロック機構30がロック状態になって解除状態に変更することのできない状況になることが抑えられる。そのため、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対回転位相を変更可能な状態が維持されるようになる。
以下、作動油の温度に応じてバルブタイミング変更機構20の作動制御の実行態様を切り換えるための処理(切り換え処理)の実行態様について図7および図8を参照しつつ詳細に説明する。
なお図7のフローチャートに示す一連の処理は、切り換え処理の具体的な実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の割り込み処理として各電子制御ユニットにより実行される。また図8は、内燃機関ENGの運転中における機関出力と機関回転速度NEとの関係の一例を示している。
図7に示すように、この処理では先ず、作動油温度TOが判定温度Tより高いか否かが判断される(ステップS101)。そして、作動油温度TOが判定温度Tより高い場合には(ステップS101:YES)、アクセル操作量ACCおよび車速SPDにより定まる車両運転領域が、作動油温度TOが判定温度T以下であると仮定した場合において前記ロックタイミングが目標バルブタイミングTvtとして設定される運転領域(ロック領域)であるか否かが判断される(ステップS102)。
作動油温度TOが判定温度T以下である場合には(ステップS101:NO)、ロック機構30がロック状態になったとしてもその後に解除状態に変更可能な状況であるとして、通常時の車両運転制御がその実行態様を何ら変更することなく実行される(ステップS103)。この場合における車両運転制御は、詳しくは、以下のように実行される。
すなわち先ず、アクセル操作量ACCおよび車速SPDに基づいてハイブリッドECU50により要求トータル出力が算出されるとともに、この要求トータル出力に基づいて要求機関出力と要求回転機出力とがそれぞれ算出される。これら要求機関出力(パワー要求、目標機関回転速度Tne)および要求回転機出力としては、基本的に、内燃機関ENGの燃料消費量を少なく抑えた状態で車両を運転することの可能な値が算出される。そして、この要求機関出力に基づいて機関ECU51により内燃機関ENGの運転制御が実行され、要求回転機出力に基づいて回転機ECU52により第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動制御が実行される。なお、この場合には、前記ロックタイミングを含むかたちでのバルブタイミング変更機構20の作動制御が実行されるとともに、その作動制御の実行に見合うように第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動制御が実行される。
一方、作動油温度TOが判定温度Tより高く(ステップS101:YES)、車両運転領域が上記ロック領域でない場合には(ステップS102:NO)、そもそも目標バルブタイミングTvtとしてロックタイミングが設定されないとして、上述した通常時の車両運転制御が実行される(ステップS103)。
他方、作動油温度TOが判定温度Tより高く(ステップS101:YES)、且つ車両運転領域が上記ロック領域である場合には(ステップS102:YES)、車両運転制御が、通常時とは異なる実行態様で実行される(ステップS104)。この場合における車両運転制御は、詳しくは、以下のように実行される。
すなわち先ず、アクセル操作量ACCおよび車速SPDに基づいてハイブリッドECU50により要求トータル出力が算出されるとともに、この要求トータル出力に基づいて要求機関出力と要求回転機出力とが算出される。ただし、これら要求機関出力(パワー要求、目標機関回転速度Tne)および要求回転機出力としては、通常時の車両運転制御の実行時と異なる値が算出される。
上記要求機関出力としては詳しくは、パワー要求および目標機関回転速度Tneにより定まる機関運転領域が目標バルブタイミングTvtとしてロックタイミングが設定される領域になることのない値が算出される。具体的には、パワー要求および目標機関回転速度Tneとして、高い燃費効率での内燃機関ENGの運転を実現可能な関係(図8に実線で示す関係)を満たす値のうちの、通常時の車両運転制御を実行したと仮定した場合に算出される値(例えば図8中に点Bで示す値)より機関出力が大きくなる値(例えば図8中に点Cで示す値)が算出される。
そして、上記要求機関出力に基づいて機関ECU51により内燃機関ENGの運転制御が実行される。これにより、このとき目標バルブタイミングTvtとしてロックタイミングが設定される機関運転状態にならないように内燃機関ENGの運転制御が実行されて、吸気カムシャフト12の相対回転位相の前記ロック位相への変更が禁止されるようになる。しかも、内燃機関ENGの運転制御が高い燃費効率で実行されるようになる。
また、要求回転機出力としては、通常時の車両運転制御の実行時よりも要求機関出力を大きくしたことによる機関出力の増加分を相殺することの可能な分だけ第1回転機MG1および第2回転機MG2から内燃機関ENGのクランクシャフト11に作用する負荷が大きくなる値が算出される。具体的には、要求回転機出力として、通常時の車両運転制御を実行したと仮定した場合における要求回転機出力と比較して小さい値が算出される。
そして、上記要求回転機出力に基づいて回転機ECU52により第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動制御が実行される。この場合には、第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動制御が、第1回転機MG1および第2回転機MG2のうちの少なくとも一方が発電機として機能するように、且つその発電量が上述した機関出力の増加分を相殺することの可能な分だけ通常時の車両運転制御の実行時より多くなるように実行される。これにより、発電量を多くした分だけ第1回転機MG1および第2回転機MG2からクランクシャフト11に作用する負荷を増加させて、その増加分と上記要求機関出力の変更に伴う機関出力の増加分(詳しくは、その一部)とを相殺することができるようになる。そのため、このとき要求機関出力を増加させることによって吸気カムシャフト12の相対回転位相の上記ロック位相への変更を禁止するようにしているとはいえ、その禁止に伴うクランクシャフト11の回転トルクの変化が抑えられるようになる。
なお本実施形態の車両運転制御では、車両の加速時や発進時などといった大きい出力が必要とされるときに、第2回転機MG2を電動機として機能させることによって同第2回転機MG2から車両のプロペラシャフトPSに回転トルクが付与される。このようにして第2回転機MG2を電動機として機能させる際に、上述した切り換え処理(詳しくは、ステップS104の処理)を通じてバッテリBATに余分に充電された電力が同第2回転機MG2によって消費される。そのため、切り換え処理の実行に伴ってバッテリBATへの充電量が増加するとはいえ、その増加分が有効に利用されるようになり、さらには同バッテリBATが過充電状態になることが回避されるようになる。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)バルブタイミング変更機構20の作動制御を、作動油温度TOが判定温度T以下のときには吸気カムシャフト12の相対回転位相のロック位相への変更を許可しつつ実行し、作動油温度TOが判定温度Tより高いときには上記相対回転位相のロック位相への変更を禁止しつつ実行するようにした。そのため、作動油の温度が低い状況では、吸気バルブのバルブタイミングの調節を、上記ロックタイミングを含めたかたちで好適に行うことができる。しかも、作動油の温度が高い状況では、上記相対回転位相をロック位相にするべくバルブタイミング変更機構20の作動制御が実行されることを回避することができ、ロック機構30がロック状態になって解除状態に変更することのできない状況になることを抑えることができる。したがって、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対回転位相を変更可能な状態で維持することができ、同相対回転位相を好適に変更することができる。
(1)バルブタイミング変更機構20の作動制御を、作動油温度TOが判定温度T以下のときには吸気カムシャフト12の相対回転位相のロック位相への変更を許可しつつ実行し、作動油温度TOが判定温度Tより高いときには上記相対回転位相のロック位相への変更を禁止しつつ実行するようにした。そのため、作動油の温度が低い状況では、吸気バルブのバルブタイミングの調節を、上記ロックタイミングを含めたかたちで好適に行うことができる。しかも、作動油の温度が高い状況では、上記相対回転位相をロック位相にするべくバルブタイミング変更機構20の作動制御が実行されることを回避することができ、ロック機構30がロック状態になって解除状態に変更することのできない状況になることを抑えることができる。したがって、クランクシャフト11に対する吸気カムシャフト12の相対回転位相を変更可能な状態で維持することができ、同相対回転位相を好適に変更することができる。
(2)作動油温度TOが判定温度Tより高いときであり、且つ同作動油温度TOが判定温度T以下であると仮定した場合に目標バルブタイミングTvtとしてロックタイミングが設定されるときに、要求機関出力として上述のように仮定した場合における要求機関出力より大きい値を算出した。また、第1回転機MG1および第2回転機MG2のうちの少なくとも一方を発電機として機能させるとともに、その発電量が上述のように仮定した場合における発電量より多くなるように第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動制御を実行した。そのため、作動油の温度が高いときに、目標バルブタイミングTvtとしてロックタイミングが設定される機関運転状態にならないように内燃機関ENGの運転制御を実行することができ、吸気カムシャフト12の相対回転位相のロック位相への変更を禁止することができる。しかも、発電機として機能する第1回転機MG1または第2回転機MG2の発電量を多くした分だけ、クランクシャフト11に作用する負荷が増加するために、その増加分と切り換え処理の実行に伴う機関出力の増加分とを相殺することができる。そのため、吸気カムシャフト12の相対回転位相のロック位相への変更の禁止に伴うクランクシャフト11の回転トルクの変化を抑えることができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・切り換え処理を通じてバッテリBATに余分に充電された電力を次のように消費するようにしてもよい。すなわち先ず、切り換え処理の実行に伴う発電量の増加分の積算値を算出して記憶する。そして、車両の加速時や発進時などといった大きい出力が必要とされるときに、上記積算値が「0」になるまで、要求機関出力を前述のように仮定した場合における要求機関出力より小さくするとともに、同要求機関出力を小さくした分が補われるように要求回転機出力を前述のように仮定した場合における要求回転機出力より大きくする。これにより、切り換え処理の実行に伴ってバッテリBATに余分に充電された電力を的確に消費することができる。
・切り換え処理を通じてバッテリBATに余分に充電された電力を次のように消費するようにしてもよい。すなわち先ず、切り換え処理の実行に伴う発電量の増加分の積算値を算出して記憶する。そして、車両の加速時や発進時などといった大きい出力が必要とされるときに、上記積算値が「0」になるまで、要求機関出力を前述のように仮定した場合における要求機関出力より小さくするとともに、同要求機関出力を小さくした分が補われるように要求回転機出力を前述のように仮定した場合における要求回転機出力より大きくする。これにより、切り換え処理の実行に伴ってバッテリBATに余分に充電された電力を的確に消費することができる。
・目標バルブタイミングTvtとしてロックタイミングが設定される機関運転状態にならないように内燃機関ENGの運転制御を実行することができるのであれば、パワー要求の算出態様および目標機関回転速度Tneの算出態様のうちの一方のみを変更するようにしてもよい。
・上記実施形態では、第1回転機MG1および第2回転機MG2のうちの少なくとも一方を発電機として機能させるとともに、その発電量が前述のように仮定した場合の発電量より多くなるように、それら第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動制御を実行した。これに限らず、第1回転機MG1および第2回転機MG2の作動によってクランクシャフト11に作用する負荷が小さくなるのであれば、電動機として機能する第2回転機MG2(あるいは第1回転機MG1)の出力トルクを前述のように仮定した場合の出力トルクより小さくするなどしてもよい。
・上記実施形態にかかる内燃機関の制御装置は、駆動源として内燃機関のみが搭載された車両にも、その構成を適宜変更したうえで適用することができる。こうした構成を採用する場合、内燃機関ENGのクランクシャフト11に駆動連結された発電機と同発電機の発電量を調節するためのシステムとが設けられた車両であれば、前述した実施形態にかかる制御装置に準じた作用効果を得ることができる。
・要求機関出力を前述のように仮定した場合の要求機関出力より大きくする際に、発電機として機能する第1回転機MG1(あるいは第2回転機MG2)の発電量を前述のように仮定した場合の発電量より多くしなくてもよい。この場合には、第1回転機MG1や第2回転機MG2を省略することができる。
・目標バルブタイミングTvtとしてロックタイミングが設定される機関運転状態にならないように内燃機関ENGの運転制御を実行することに代えて、目標バルブタイミングTvtとしてロックタイミングが算出されないように同目標バルブタイミングTvtの算出処理を実行するようにしてもよい。
そうした算出処理としては、例えば目標バルブタイミングTvtについての遅角ガード処理を実行することが考えられる。この遅角ガード処理としては例えば、前述した算出マップから目標バルブタイミングTvtとして遅角ガード値(ロックタイミングより若干進角側のタイミング)より遅角側のタイミングが算出されたときに同遅角ガード値を目標バルブタイミングTvtとして算出するとの処理を採用することができる。
また上記算出処理としては、目標バルブタイミングTvtの算出に用いる算出マップの切り換えを行うことなども考えられる。図9に、そうした算出処理の一例を示す。同図9に示すように、この処理では、作動油温度TOが判定温度T以下であるときには(ステップS201:NO)、前述した算出マップ(図6参照)が選択される(ステップS202)。一方、作動油温度TOが判定温度Tより高いときには(ステップS201:YES)、前述した算出マップと異なる算出マップ(以下、「回避マップ」)が選択される(ステップS203)。この回避マップは内燃機関ENGの中負荷運転領域(図6中にAで示す領域)において算出される値のみが前述した算出マップ(図6参照)と異なり、同回避マップには上記中負荷運転領域においてロックタイミングより若干進角側のタイミングが目標バルブタイミングTvtとして算出されるようになる関係が記憶されている。
・ロック機構30の構成は、オイルポンプ15の圧送による作動油の圧力上昇によって解除状態になり、且つオイルポンプ15の圧送停止による作動油の圧力低下によってロック状態になる構成であれば、任意に変更することができる。
・本発明は、ロック機構のロック位相として最遅角位相が設定された内燃機関に限らず、バルブタイミングが最も早いタイミングになる吸気カムシャフトの相対回転位相(最進角位相)がロック位相として設定された内燃機関にも適用することができる。また、ロック機構のロック位相として最遅角位相より若干進角側の位相が設定された内燃機関や、最進角位相より若干遅角側の位相が設定された内燃機関などにも適用可能である。この場合には目標位相を、ロック位相を跨いで変化することのないように設定することが望ましい。
・本発明は、排気カムシャフトに設けられるバルブタイミング変更機構と同排気カムシャフトの相対回転位相をロックするロック機構とを備えた内燃機関にも適用することができる。
・本発明は、油圧作動式のロック機構が搭載される内燃機関であれば、電動機をアクチュエータとして用いる電気作動式のバルブタイミング変更機構や、空気などの油以外の流体を用いた流体作動式のバルブタイミング変更機構が搭載された内燃機関にも適用することができる。
ENG…内燃機関、MG1…第1回転機、MG2…第2回転機、TR1,TR2…制御回路、P1…フロント遊星歯車機構(s1…サンギア,c1…キャリア,r1…リングギア)、P2…リア遊星歯車機構(s2…サンギア,c2キャリア,r2…リングギア)、OS…トランスアクスルの出力軸、PS…プロペラシャフト、11…クランクシャフト、12…カムシャフト、13…タイミングチェーン、14…オイルパン、15…オイルポンプ、16…アクセル操作部材、20…バルブタイミング変更機構、21…スプロケット、22…ハウジング、23…ロータ、24…ベーン、25…収容室、26…進角用圧力室、27…遅角用圧力室、30…ロック機構、31…ロックピン、32…スプリング、33…係合穴、34…ロック解除用油路、35…ロック解除圧力室、40…油圧調整弁、41…供給油路、42…進角用油路、43…遅角用油路、44…還流油路、50…ハイブリッドECU、51…機関ECU、52…回転機ECU、53…車速センサ、54…アクセルセンサ、55…吸気量センサ、56…クランクセンサ、57…カムセンサ、58…油温センサ。
Claims (2)
- クランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を変更するバルブタイミング変更機構と、
圧力室への作動油の供給が停止された状態で前記相対回転位相がロック位相になると機械的な係合を通じて前記相対回転位相を前記ロック位相でロックするロック状態になり、前記圧力室に作動油が供給されると同作動油の圧力によって前記機械的な係合が解除されて前記ロックを解除した解除状態になるロック機構と、を備え、
機関運転状態に基づき目標位相を設定するとともに該目標位相と前記相対回転位相とを一致させるように前記バルブタイミング変更機構の作動制御を実行する内燃機関の制御装置において、
前記作動制御を、前記作動油の温度が判定温度以下のときには前記相対回転位相の前記ロック位相への変更を許可しつつ実行し、前記作動油の温度が前記判定温度より高いときには前記相対回転位相の前記ロック位相への変更を禁止しつつ実行する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
機関出力を調節する機関運転制御と前記内燃機関の出力軸に駆動連結された発電機の発電量を調節する発電機運転制御とをそれぞれアクセル操作部材の操作状態に基づき実行するものであり、
前記作動油の温度が前記判定温度より高いときであり、且つ同作動油の温度が前記判定温度以下であるとの仮定のもとでは前記目標位相として前記ロック位相が設定されるときに、機関出力が前記仮定のもとでの機関出力より大きくなるように前記機関運転制御を実行して前記ロック位相への変更を禁止し、前記発電機の発電量が前記仮定のもとでの発電量より多くなるように前記発電機運転制御を実行する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
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