JP2011106006A - 鋼と圧延鋼材の製造方法 - Google Patents

鋼と圧延鋼材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】建築、土木、海洋構造物等の分野で使用されるH形鋼の圧延素材として好適であり、圧延後の熱間鋸断性能、靱性、及び溶接性に優れる板厚が50〜80mmである引張強度が490MPa級、及び550MPa級の製品を作り分けることが可能な鋼材、及びそれを用いた製造方法を提供する。
【解決手段】C:0.04〜0.10%、Si:0.05〜0.60%、Mn:1.0〜2.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜1.5%、V:0.01〜0.10%、Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.005〜0.04%、B:0.0005〜0.0025%、sol.Al:0.005〜0.080%、およびN:0.0030〜0.0090%を含有し、残部Feおよび不純物からなり、不純物としてのP、SがそれぞれP:0.02%以下、S:0.008%以下、Ti量とN量との比(Ti/N):1.0〜3.0、Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B:0.16〜0.21%である化学組成を有する鋼片に、800℃以上の温度で熱間圧延を終了して鋼材とし、この鋼材の温度が550℃に達するまでを、放冷により冷却するか、あるいは加速冷却により冷却するかを選択することによって、ベイナイト面積率:0〜30%以下、厚さ:50〜80mm、引張強度:490MPa級の第1の圧延鋼材、又は、ベイナイト面積率:40〜100%、厚さ:50〜80mm、引張強度:550MPa級の第2の圧延鋼材のいずれかを製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋼と圧延鋼材の製造方法に関し、具体的には、板厚が50〜80mmである引張強度が490MPa級の圧延鋼材、及び板厚が50〜80mmである引張強度が550MPa級の圧延鋼材のいずれの圧延鋼材の素材としても用いることが可能な半製品としての鋼と、この鋼を用いて上記二種の圧延鋼材を作り分ける圧延鋼材の製造方法とに関する。本発明は、例えば、建築、土木さらには海洋構造物等の分野で使用される圧延H形鋼の圧延素材として好適であり、圧延後の熱間鋸断性能、靱性及び溶接性に優れる鋼と、この鋼を用いて、引張強度が490MPa級の圧延H形鋼、および引張強度が550MPa級の圧延H形鋼を作り分ける圧延H形鋼の製造方法とに関する。
近年、建築物の高層化や大型化に伴って、高強度で靱性にも優れるH形鋼へのニーズが高まっている。すなわち、従来から引張強度で400MPa級(400MPa以上510MPa以下)や490MPa級(490MPa以上610MPa以下)のH形鋼が用いられているが、さらに引張強度が550MPa級(550MPa以上670MPa以下)で靱性にも優れるH形鋼が望まれている。
しかしながら、一棟のビルの建築に用いられるH形鋼の大部分は、従来通りの400MPa級や490MPa級のH形鋼であり、特に高強度鋼が必要となる部分に限定して550MPa級のH形鋼が用いられる。一方、H形鋼の素材となる圧延前の鋼片や鋼塊は、例えば転炉により一度に200〜300トン程度製造され、550MPa級のH形鋼の必要量はこの一度の製造量よりもかなり少ないことが多いため、鋼片又は鋼塊の余剰在庫が発生し、製造コストが大幅に上昇する。そのため、引張強度が490MPa級のH形鋼、及び引張強度が550MPa級のH形鋼のいずれの素材としても用いることが可能な多用途を有する鋼が求められている。
特許文献1〜4には、同一種の鋼を素材として規格が異なる複数種の鋼材を作り分ける発明が開示されている。
特許文献1には、JIS G 3106に規定されたSM400A、SM400B、SM490A又はSM490B鋼において、JIS G 3106に規定された炭素当量をSM400A又はSM400B鋼では0.21〜0.25%(本明細書では特に断りがない限り化学組成に関する「%」は「質量%」を意味するものとする)、SM490A又はSM490B鋼では0.29〜0.37%とした化学組成を有する鋼片から、フランジ厚み12〜40mmのフランジを有する形鋼を圧延により製造するに際し、鋼片を1100〜1300℃の温度域に加熱した後に圧延を開始し、中間圧延工程のリバース圧延のパス間でフランジを水冷し、表層部の温度を750℃以下に冷却し、かつリバース圧延のパス間の復熱過程でフランジ表層部の温度を低温オーステナイト域ないしはオーステナイト/フェライト二相共存温度域で圧延する工程を1回以上繰り返し、フランジの圧延平均温度950℃以下で総圧下量20%以上になるように圧下し、仕上圧延工程の圧延終了後にフランジ厚さ12〜24mmではフランジ外側面を3〜10℃/秒の冷却速度で、フランジ厚さ25〜40mmではフランジ外側面を0.5〜6℃/秒の冷却速度で冷却して製造する、制御圧延による低炭素当量圧延形鋼の製造方法に係る発明が開示されている。
特許文献2には、同一規格で、フランジやウェブの寸法が様々に異なる圧延H形鋼を、同一成分系の素材を用いて製造する方法に係る発明が開示されている。
特許文献3には、鋼片を加熱圧延した後、加速冷却設備によって鋼板を冷却するに際し、鋼板の所望の強度分布に応じて鋼板の冷却速度を調整する製造方法に係る発明が開示されている。
さらに、特許文献4には、圧延長手方向で2以上の異なる規格の強度を有する厚鋼板に係る発明が開示されている。
特許第2837056号明細書 特開2001―9503号公報 特開昭61―284533号公報 特開2000―102814号公報
特許文献1には、上述したように、一種類の鋼片から板厚が異なる複数種の鋼材を作り分ける発明が開示されているものの、一種類の鋼片から異なる強度クラスの鋼材を作り分ける発明は開示されていない。また、特許文献1には、引張強度が400MPa級のH形鋼と引張強度が490MPa級のH形鋼とは開示されているものの、引張強度が550MPa級のH形鋼は開示されていない。また、特許文献1の実施例におけるC含有量は0.14%以上であるため、例えばフランジ厚が50mm以上である場合には靱性の確保が困難となるおそれがある。
特許文献2には、上述したように、同一成分系の素材を用いて同一規格でフランジやウェブの寸法が様々に異なる複数種のH形鋼を製造する発明が開示されているものの、異なる強度クラスのH形鋼を作り分けることは開示されていない。また、C含有量が0.001〜0.030%と低いため、例えばフランジ厚が50mm以上の場合に高強度と靱性を確保することが困難になるおそれがある。
特許文献3には、上述したように、鋼板の所望の強度分布に応じて鋼板の冷却速度を調整して非調質高張力鋼板を製造する発明が開示されているが、その実施例に示されているようにC含有量が0.12%と高いため、例えばフランジ厚が50mm以上の場合に靱性の確保が困難になるおそれがある。また、水冷による冷却停止温度が500℃と低いため、H形鋼の圧延後に熱間鋸断機による切断が難しく、大量生産を阻害するおそれがある。
さらに、特許文献4には、上述したように、圧延長手方向で2以上の異なる規格の強度を有する厚鋼板に係る発明が開示されているが、その実施例に示されているようにC含有量が0.12%と高いため、例えばフランジ厚が50mm以上の場合に靱性の確保が困難となるおそれがある。
本発明の目的は、板厚が50〜80mmである引張強度が490MPa級の圧延鋼材、及び板厚が50〜80mmである引張強度が550MPa級の圧延鋼材のいずれの素材としても用いることが可能な半製品としての鋼と、この鋼を素材として用いて上記二種の圧延鋼材を作り分ける圧延鋼材の製造方法とを提供することであり、例えば、建築、土木さらには海洋構造物等の分野で使用される圧延H形鋼の圧延素材として好適であり、圧延後の熱間鋸断性能、靱性及び溶接性に優れる鋼と、この鋼を用いて、引張強度が490MPa級の圧延H形鋼、および引張強度が550MPa級の圧延H形鋼を作り分ける方法とを提供することである。
本発明は、C:0.04%以上0.10%以下、Si:0.05%以上0.60%以下、Mn:1.0%以上2.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上1.5%以下、Cr:0.05%以上1.5%以下、V:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.04%以下、B:0.0005%以上0.0025%以下、sol.Al:0.005%以上0.080%以下、およびN:0.0030%以上0.0090%以下、望ましくはMo:1.0%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP、SがそれぞれP:0.02%以下、S:0.008%以下、Ti量とN量との比(Ti/N):1.0以上3.0以下、下記(1)式で計算されるPcmの値:0.16%以上0.21%以下である化学組成を有し、ベイナイト面積率が0%以上30%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度490MPa以上610MPa以下の第1の圧延鋼材、及び、ベイナイト面積率が40%以上100%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度が550MPa以上670MPa以下の第2の圧延鋼材の素材であることを特徴とする鋼である。
Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B ・・・・(1)
(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
別の観点からは、本発明は、前記化学組成を有する鋼片又は鋼塊に、800℃以上の温度で熱間圧延を終了して鋼材とし、この鋼材の温度が550℃に達するまでを、放冷により冷却するか、あるいは加速冷却により冷却するかを選択することによって、前記第1の圧延鋼材、又は、前記第2の圧延鋼材のいずれかを製造することを特徴とする圧延鋼材の製造方法である。
また、本発明は、前記化学組成を有する鋼片又は鋼塊に、800℃以上の温度で熱間圧延を終了して鋼材とし、前記第1の圧延鋼材を製造するか、あるいは、前記第2の圧延鋼材を製造するかに基づいて、前記第1の圧延鋼材を製造する場合には前記鋼材の温度が550℃に達するまでを放冷により冷却し、前記第2の圧延鋼材を製造する場合には、前記鋼材の温度が550℃に達するまでを加速冷却により冷却することを特徴とする圧延鋼材の製造方法である。
すなわち、本発明によれば、熱間圧延を終了した鋼材の温度が550℃に達するまでを、放冷により冷却するか、あるいは加速冷却により冷却するかを選択するので、一の化学組成を有する鋼片又は鋼塊を素材として、ベイナイト面積率が0%以上30%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度が490MPa以上610MPa以下の第1の圧延鋼材、及び、ベイナイト面積率が40%以上100%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度が550MPa以上670MPa以下の第2の圧延鋼材を作り分けることが可能になる。
本発明に係る鋼は、圧延後の熱間鋸断性能、靱性、及び溶接性に優れるとともに板厚が50mm以上80mm以下である引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材、及び圧延後の熱間鋸断性能、靱性、及び溶接性に優れるとともに板厚が50mm以上80mm以下である引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材を作り分けることが可能になるので、建築、土木、海洋構造物等の分野で使用されるH形鋼、T形鋼、I形鋼、山形鋼、溝形鋼、平鋼、鋼矢板などの圧延素材として好適である。
また、本発明によれば、490MPa級の第1の圧延鋼材、及び550MPa級の第2の圧延鋼材を、比較的容易に作り分けることができる。
本発明に係る鋼の化学組成、圧延鋼材のミクロ組織、板厚及び機械特性、ならびに圧延鋼材の製造方法について詳述する。
1.鋼の化学組成
(C:0.04%以上0.10%以下)
Cは、母材及び溶接部の強度を高める作用を有する。また、一般に、C含有量が高いほうが、冷却速度の増加に伴う強度の増加量が大きい。したがって、C含有量が高いほうが、冷却速度の変化によって異なる強度クラスの第1の圧延鋼材及び第2の圧延鋼材を作り分けることが容易となる。C含有量が0.04%未満ではこのような効果に乏しい。一方、C含有量が多くなり、特に、Cの含有量が0.10%を超えると、母材及び溶接部の靱性低下が著しくなり、また溶接割れが多くなる。なお、より大きな効果を得るために、C含有量は0.05%以上0.09%以下とすることが好ましく、0.06%以上0.08%以下とすることがより望ましい。
(Si:0.05%以上0.60%以下)
Siは、特に引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材において母材の強度を確保する作用を有する。しかしながら、その含有量が0.05%未満ではこのような効果に乏しい。一方、Si含有量が多くなり、特に、Si含有量が0.60%を超えると、母材及び溶接部の靱性低下が著しくなり、また溶接割れが多くなる。なお、より大きな効果を得るために、Si含有量は0.10%以上0.40%以下とすることが好ましく、0.15%以上0.30%以下とすることがより望ましい。
(Mn:1.0%以上2.0%以下)
Mnは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で不可欠な元素である。しかしながら、Mn含有量が1.0%未満ではこのような効果を得られない。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、母材及び溶接部の靱性低下が著しくなり、また溶接割れが多くなる。なお、より大きな効果を得るために、Mn含有量は1.2%以上1.7%以下とすることが好ましく、1.4%以上1.6%以下とすることがより望ましい。
(Cu:0.05%以上1.0%以下)
Cuは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で有用である。Cu含有量が0.05%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Cu含有量が1.0%を超えると、熱間加工時に割れが生じやすくなるし、また、母材及び溶接部の靱性劣化が顕著になり易い。なお、より大きな効果を得るために、Cu含有量は0.1%以上0.5%以下とすることが好ましく、0.1%以上0.4%以下とすることがより望ましい。
(Ni:0.05%以上1.5%以下)
Niは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で有用である。Ni含有量が0.05%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Ni含有量が1.5%を超えると鋳造した鋼の表面疵が著しくなり易い。なお、より大きな効果を得るために、Ni含有量は0.1%以上1.0%以下とすることが好ましく、0.1%以上0.5%以下とすることがより望ましい。また、Cu含有量による熱間加工時の割れを防止するため、Cu含有量の50%以上のNiを含有させることが好ましく、Cu含有量の75%以上のNiを含有させることがより望ましい。
(Cr:0.05%以上1.5%以下)
Crは、母材及び溶接部の強度を確保する上で有用である。Cr含有量が0.05%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Cr含有量が1.5%を超えると溶接割れが顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、Crの含有量は0.1%以上1.0%以下とすることが好ましく、0.1%以上0.5%以下とすることがより望ましい。
(V:0.01%以上0.10%以下)
Vは、母材の強度を確保する上で有用である。V含有量が0.01%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、V含有量が0.10%を超えると母材の靱性低下が顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、V含有量は0.02%以上0.08%以下とすることが好ましく、0.03%以上0.06%以下とすることがより望ましい。
(Nb:0.01%以上0.08%以下)
Nbは、母材の強度及び靱性を向上させる上で有用である。Nb含有量が0.01%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Nb含有量が0.08%を超えると、溶接部靱性の著しい低下を招く。なお、より大きな効果を得るために、Nb含有量は0.02%以上0.07%以下とすることが好ましく、0.03%以上0.06%以下とすることがより望ましい。
(Ti:0.005%以上0.04%以下)
Tiは、鋳造した鋼の表面性状を改善する上で有用である。また、Tiには、母材及び溶接部の靱性を高める作用もある。Ti含有量が0.005%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、Ti含有量が0.04%を超えると母材の靱性低下が顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、Ti含有量は0.006%以上0.03%以下とすることが好ましく、0.007%以上0.02%以下とすることがより望ましい。
(B:0.0005%以上0.0025%以下)
Bは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で有用である。B含有量が0.0005%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、B含有量が0.0025%を超えると母材の靱性低下が顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、B含有量は0.0007%以上0.0020%以下とすることが好ましく、0.0009%以上0.0018%以下とすることがより望ましい。
(sol.Al:0.005%以上0.080%以下)
Alは、製鋼時の脱酸に有効な元素である。しかしながら、sol.Al(酸可溶Al)含有量が0.005%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、sol.Al含有量が0.080%を超えると、介在物の生成量が多くなって母材及び溶接部の靱性劣化が著しくなる。なお、より大きな効果を得るために、sol.Al含有量は0.007%以上0.060%以下とすることが好ましく、0.010%以上0.040%以下とすることがより望ましい。
(N:0.0030%以上0.0090%以下)
Nは、TiNやBNなどの析出物を形成し、これらの析出物が微細な場合には、高温加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材と溶接部の靱性を高めることに寄与する。しかしながら、N含有量が0.0030%未満ではこのような効果を十分に得られない。一方、N含有量が0.0090%を超えると、母材と溶接部の靱性低下が大きくなる。なお、より大きな効果を得るために、N含有量は0.0040%以上0.0080%以下とすることが好ましく、0.0045%以上0.0070%以下とすることがより望ましい。
(Ti量とN量の比(Ti/N):1.0以上3.0以下)
母材及び溶接部において、Ti等の微細な窒化物の効果を確保するために、Ti含有量とN含有量との比(Ti/N)を1.0以上3.0以下とする。
(P:0.02%以下)
Pは、不純物として鋼中に存在する元素で、靱性の低下をきたし、また、溶接時に高温割れを生じさせる。特に、その含有量が0.02%を超えると、靱性の低下と溶接時の高温割れの発生が著しくなり易い。P含有量は少ないほど望ましいため、その下限は特に規定するものではない。なお、より大きな効果を得るために、P含有量は0.01%以下とすることが望ましい。
(S:0.008%以下)
Sは、母材及び溶接部の靱性劣化を招く。特に、その含有量が0.008%を超えると、母材及び溶接部の靱性劣化が著しくなり易い。Sは少ないほど望ましい不純物であるため、その下限は特に規定されない。なお、より大きな効果を得るために、S含有量は0.005%以下とすることが好ましく、0.003%以下とすることがより望ましい。
(Mo:1.0%以下)
Moは、含有しなくともよいが、含有することによって母材及び溶接部の強度を確保する上で有用である。Mo含有量が0.05%未満では十分な効果を得られないため、含有する場合には0.05%以上とすることが望ましい。一方、Mo含有量が1.0%を超えると溶接割れが顕著になる。なお、より大きな効果を得るために、Mo含有量は0.1%以上0.3%以下とすることが望ましい。
(Pcm:0.16%以上0.21%以下)
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・・(1)
この(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
上記式(1)は溶接割れ感受性指数として知られる式であるが、本発明においては母材の特性を良好にするためにも有用なパラメータである。Pcmの値が0.16%未満では、目標とする母材強度の確保が難しい。一方、Pcmの値が0.21%を超えると母材強度が高くなりすぎたり、母材靱性の低下も起こり易くなったりする。また、溶接割れが起こり易くなる。なお、より大きな効果を得るために、Pcmの値は0.17%以上0.20%以下とすることが望ましい。
その他:
O(酸素)は、鋼中に含まれる不純物である。O含有量が多くなり過ぎると母材及び溶接部の靱性や延性の著しい低下を招くため、O含有量を0.004%以下とすることが好ましく、0.002%以下とすることがより望ましい。
Ca及びREMは、硫化物(特にMnS)の形態を制御し、低温靱性を向上させることができる。この効果を得るためにCaを0.0005%以上含有させるとともに、REMを0.001%以上含有させてもよい。一方で、Ca、REMの含有量が多くなるとCa及びREMを含む介在物が粗大化、クラスター化することがあり、鋼の清浄度を害し溶接性にも悪影響を及ぼすことがある。このため、Ca含有量を0.01%以下とするとともに、REM含有量を0.02%以下とすることが望ましい。特に溶接性の観点よりCa含有量は0.006%以下とすることが望ましい。
Mgは、微細に分散した酸化物を形成し、HAZの粒径の粗大化を抑制して低温靭性を向上させる効果を発揮する。この効果を得るためにMgを0.0005%以上含有させてもよい。一方で、Mgを0.008%超含有すると、粗大な酸化物を生成し靭性を劣化させることがある。このため、Mg含有量を0.008%以下とする。
上記以外の残部は、Feおよび不純物である。
2.圧延鋼材のミクロ組織
鋼材が常温に達した時のベイナイト面積率を、板厚が50mm以上80mm以下である引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材(放冷材)では0%以上30%以下とするとともに、板厚が50mm以上80mm以下である引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材(加速冷却材)では40%以上100%以下とする。第1の圧延鋼材(放冷材)でベイナイト面積率が30%を超えると、強度が過剰となり易いため、490MPa級の第1の圧延鋼材、及び550MPa級の第2の圧延鋼材の作り分けが困難になる。一方、第2の圧延鋼材(加速冷却材)でベイナイト面積率が40%未満であると強度不足となり易いため、やはり490MPa級の第1の圧延鋼材、及び550MPa級の第2の圧延鋼材の作り分けが困難になる。
また、ベイナイト以外の組織は、主として、フェライト、及びパーライトであることが望ましい。なお、ベイナイト率の代わりにマルテンサイト面積率を大きくすることによっても高強度が得られるが、良好な靱性を確保することが難しくなり易い。
組織の種類は、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて観察することができる。ここで、ある組織の比率とは、観察視野の面積に対するその組織の面積割合をいう。
なお、組織の比率は、第1の圧延鋼材及び第2の圧延鋼材それぞれの圧延方向に対して垂直な断面において、その断面の平均値としての比率で判断することが望ましい。
便宜的には、第1の圧延鋼材及び第2の圧延鋼材それぞれの厚さ方向、幅方向、長さ方向、それぞれ1/4または1/2などの代表的な位置において、光学顕微鏡や電子顕微鏡でその鋼材の代表的な組織写真を撮影し、その組織写真から鋼の組織をフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト(ここでは、焼戻しマルテンサイト、及び島状マルテンサイトを含めることとする)に分類し、組織の面積率を求めることが例示される。
3.圧延鋼材の板厚
本発明により製造される、引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材(放冷材)の板厚、及び引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材(加速冷却材)の板厚は、いずれも、50mm以上80mm以下である。
4.圧延鋼材の機械特性
本発明により製造される第1の圧延鋼材の引張強度が490MPa級であるとは、引張強度が490MPa以上610MPa以下であることを意味し、また、引張強度が550MPa級であるとは、引張強度が550MPa以上670MPa以下であることを意味する。また、第1の圧延鋼材及び第2の圧延鋼材それぞれの、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーはいずれも100J以上である。
5.製造条件
以下に示す本発明に係る製造方法によって、引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材、及び550MPa級の第2の圧延鋼材を、効率的かつ安定して作り分けることが可能である。
すなわち、上記化学組成を有する鋼、つまり、本発明で規定する化学組成を有する鋼を、例えば、転炉で溶製し、連続鋳造法によってスラブに鋳造する。そして、第1の圧延鋼材を製造するか、あるいは、第2の圧延鋼材を製造するかに基づいて、
(i)第1の圧延鋼材を製造する場合には、鋳造された一のスラブを用いて、以下に説明する条件で、スラブの加熱、孔型圧延を用いた粗圧延、エッジャー圧延機及び粗ユニバーサル圧延機を用いた中間圧延並びに仕上ユニバーサル圧延機を用いた仕上圧延からなる熱間圧延を行い、800℃以上の温度で熱間圧延を終了し、鋼材の温度が550℃に達するまでの冷却履歴を放冷とすることによって、引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材(例えば圧延H形鋼)を製造し、
(ii)第2の圧延鋼材を製造する場合には、鋳造された他の一のスラブを用いて、以下に説明する条件で、スラブの加熱、孔型圧延を用いた粗圧延、エッジャー圧延機及び粗ユニバーサル圧延機を用いた中間圧延並びに仕上ユニバーサル圧延機を用いた仕上圧延からなる熱間圧延を行い、800℃以上の温度で熱間圧延を終了し、鋼材の温度が550℃に達するまでの冷却履歴を加速冷却とすることによって、引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材(例えば圧延H形鋼)を製造する
ことによって、第1の圧延鋼材と第2の圧延鋼材とを効率的にかつ安定して作り分けることが可能になる。以下、各工程を説明する。
(1)熱間圧延工程
上記の本発明に係る化学組成を有する鋼片又は鋼塊を所定の形状及び寸法に熱間圧延する。
以下の説明において、温度は、特に言及がなければ、鋼の表面温度を意味する。なお、圧延ロールとの接触による抜熱や加速冷却などによって鋼の表面温度が下がった後に復熱する場合には、復熱後の表面温度を意味する。
A)加熱温度:1200℃以上1350℃以下
加熱温度を1200℃以上とすることにより熱間加工が容易になるとともに、Nb、V、TiさらにはB等が基地に固溶して引張強度の増加の効果が得られる。また、加熱温度を1350℃以下とすることによって結晶粒の粗大化が比較的抑制され、良好な靱性の確保に寄与する。このため、鋼片又は鋼塊の加熱温度は1200℃以上1350℃以下とすることが望ましい。なお、より大きな効果を得るために、加熱温度を1200℃以上1330℃以下とすることが好ましく、1230℃以上1320℃以下とすることがより望ましい。
B)加熱時間:1時間以上
ここでは、昇温時間及び保持時間の合計を加熱時間とする。加熱時間が短すぎると表面温度は高くても鋼の内部温度が低いために、引張強度の増加の効果が得られない可能性がある。そのため、加熱時間を1時間以上とすることが望ましい。なお、加熱時間は長すぎると組織の粗大化によって靱性の低下を生じる可能性があるため、加熱時間は10時間以下とすることが望ましい。より良い性能を得るために、加熱時間は2時間以上6時間以下とすることがより望ましい。
C)950℃以下での累積圧下率:20%以上
950℃以下での累積圧下率を大きくすることによって、オーステナイト相に残留ひずみが与えられ、相変態後の組織が微細になるため、良好な靱性を得ることができる。この効果を得るために、950℃以下での累積圧下率を20%以上とすることが望ましい。なお、より大きな効果を得るために、950℃以下での累積圧下率を30%以上とすることがより望ましい。ここで、「950℃以下での累積圧下率」とは、{(950℃に達した時点の厚さ)−(最終厚さ)}/(950℃に達した時点の厚さ)×100(%)を意味する。
D)950℃超1050℃以下での累積圧下率:1%以上
950℃以下での累積圧下率を20%以上とすることに加えて、950℃超1050℃以下での累積圧下率を大きくすることによって、オーステナイト相の再結晶による細粒化や残留ひずみによって相変態後の組織が微細となって、靱性がより良好になる効果が得られる。さらに高温、例えば1250℃での圧下でオーステナイト相を再結晶させても、粒成長が速いために細粒化が難しい。したがって、950℃超1050℃以下での累積圧下率を1%以上とすることが望ましい。なお、より大きな効果を得るために、950℃超1050℃以下での累積圧下率を10%以上とすることがより望ましい。ここで、「950℃超1050℃以下での累積圧下率」とは、{(1050℃に達した時点の厚さ)−(951℃に達した時点の厚さ)}/(1050℃に達した時点の厚さ)×100(%)を意味する。
E)圧延仕上温度:800℃以上
圧延終了温度が800℃よりも低い場合には、熱間圧延後の加速冷却前にフェライト変態が進行し易いため、所望のミクロ組織と引張強度とを確保することが困難になる。このため、本発明では圧延仕上温度を800℃以上とする。
一方、圧延仕上温度が950℃よりも高い場合には、良好な靱性を確保することが困難になり易いので、圧延仕上温度は950℃以下であることが望ましい。
なお、より良好な強度と靱性を得るために、圧延仕上温度を800℃以上900℃以下とすることが好ましく、820℃以上870℃以下とすることがより望ましい。
F)圧延パス数:10パス以上
圧延パス数が少ないと圧延荷重が高くなり、鋼材の形状制御が難しくなる。また、温度測定及び温度制御を行う機会が減るため、性能がばらつき易くなり、良好な強度−伸びバランスや靱性が確保できない可能性が高くなる。したがって、圧延パス数は10パス以上とすることが望ましく、14パス以上とすることがより望ましい。
(2)放冷による冷却工程
上述したように連続鋳造法によって鋳造された一のスラブに対して、上記圧延工程による熱間圧延を行って得られた鋼材の温度が550℃に達するまでの冷却履歴を、放冷とすることによって、圧延後の熱間鋸断性能、靱性、及び溶接性に優れる引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材(例えば圧延H形鋼)を製造することができる。
ここで、放冷とは、熱間圧延を終了した鋼材を大気中に放置して冷却することを意味しており、鋼材は0.02℃/秒以上0.5℃/秒以下の冷却速度で冷却される。
(3)加速冷却による冷却工程
上述したように連続鋳造法によって鋳造された、上記一のスラブとは異なる他の一のスラブに対して、上記圧延工程による熱間圧延を行って得られた鋼材の温度が550℃に達するまでの冷却履歴を、加速冷却とすることによって、圧延後の熱間鋸断性能、靱性、及び溶接性に優れる引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材(例えば圧延H形鋼)を製造することができる。
なお、本発明の製造方法においては、降伏比を小さくするため、加速冷却後の圧延鋼材に対して焼戻処理を実施しない。
A)加速冷却速度:1℃/秒以上20℃/秒以下
この加速冷却は、引張強度や靱性を高める目的で実施する。この効果を得るために、加速冷却速度を1℃/秒以上とすることが望ましい。一方、加速冷却速度が大きすぎる場合には靱性の劣化、さらには曲がりや反りといった形状の悪化を招くため、加速冷却速度は20℃/秒以下とすることが望ましい。より大きな効果を得るために、加速冷却速度を1.5℃/秒以上、下記式(2)で計算されるAcr値℃/秒以下とすることがさらに望ましい。なお、(2)式においてtは冷却部の板厚(mm)を表す。
Acr=300/t ・・・・(2)
加速冷却される鋼材の表面は、加速冷却に用いられる水(あるいは他の液体)との熱伝達により速く冷却される一方、鋼材の内部は鋼の熱伝導で比較的遅く冷却されるので、鋼材の厚さが大きくなると鋼材の表面と内部との冷却速度差が顕著となり、速く冷却される表面近傍では靱性劣化が顕著になる可能性がある。Acr値を基準とすることにより、表面と内部との冷却速度差を比較的小さくし、ひいては表面と内部との機械的特性の差を小さくすることが可能になるので、望ましい。
また、上記の加速冷却速度とは、加速冷却開始温度と加速冷却停止温度との差を、加速冷却開始から加速冷却停止までの時間で除したものをいう。なお、加速冷却停止温度とは復熱後の表面温度を意味する。
なお、加速冷却を間欠的に行っても良い。例えば、水のスプレー装置に鋼が出入りすることによって、鋼の表面で水冷と空冷が繰り返されてもよい。その場合、加速冷却開始温度は最初の水冷の開始温度であり、加速冷却停止温度は最後の水冷の停止温度を意味する。また、加速冷却速度とは、最初の水冷の開始温度と最後の水冷の停止温度との差を、最初の水冷の開始から最後の水冷の停止までの時間で除したものをいう。
B)加速冷却開始温度:750℃以上850℃以下
加速冷却開始温度が850℃よりも高い場合には、良好な靱性を確保することが困難になるおそれがあるとともに、加速冷却開始温度が750℃よりも低い場合には、所望の引張強度特性を確保することが困難になるおそれがあるので、良好な強度と靱性を得るためには、加速冷却開始温度は750℃以上850℃以下とすることが望ましい。同様の観点から、加速冷却開始温度は780℃以上830℃以下とすることがより望ましい。
C)加速冷却停止温度:550℃以上690℃以下
加速冷却停止温度が690℃よりも高い場合には、所望の強度と靱性を確保することが困難になるおそれがあるとともに、加速冷却停止温度が550℃よりも低い場合には、圧延後の熱間鋸断性能が顕著に低下するおそれがあるので、加速冷却停止温度は550℃以上690℃以下とすることが望ましい。なお、より良好な強度と靱性を得るために、加速冷却停止温度を550℃以上650℃以下とすることがより望ましい。
なお、加速冷却を停止した後は、上記の加速冷却速度よりも小さな速度で常温(室温)まで冷却すればよい。例えば、架台の上で放冷すればよい。
このようにして、本発明により、板厚が50mm以上80mm以下である引張強度が490MPa級の第1の圧延鋼材、及び板厚が50mm以上80mm以下である引張強度が550MPa級の第2の圧延鋼材の素材として用いることが可能な半製品としての鋼を用いて、第1の圧延鋼材及び第2の圧延鋼材を、安定して確実に作り分けることが可能になる。このため、本発明によれば、例えば、建築、土木さらには海洋構造物等の分野で使用される圧延H形鋼の圧延素材として好適であり、圧延後の熱間鋸断性能、靱性及び溶接性に優れる鋼と、この鋼を用いて、引張強度が490MPa級の圧延H形鋼、および引張強度が550MPa級の圧延H形鋼を作り分けることが可能になる。
実施例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼を真空溶解炉により溶製し、鋳型に鋳込んで180kgの鋼塊とした。鋼1、2は化学組成が本発明で規定する範囲にある本発明例の鋼であり、鋼3、4は化学組成が本発明で規定する含範囲を外れる比較例の鋼である。
Figure 2011106006
上記の各鋼塊を950℃〜1250℃で熱間鍛造して、厚さ180mmの鋼片を作製した。なお、熱間鍛造後の冷却は大気中での放冷とした。
このようにして得た鋼片について、表2に示す圧延条件で熱間圧延を行った。常温から1250℃の加熱温度に1時間で昇温し、この温度でさらに1時間保持した。したがって、このときの加熱時間は2時間である。
こうして所定の時間加熱した鋼片に熱間圧延を行って板番号1〜11の圧延鋼材(熱延鋼板)とし、板番号1、2、4、5、7、8、10については、同じく表2に示す加速冷却条件で、水、及び水溶性焼入油を使用した加速冷却を行った。加速冷却終了後は、大気中に取り出して常温(室温)まで放冷した。このようにして、第2の圧延鋼材である板番号1、2、4、5、7、8、10の熱延鋼板を製造した。
一方、板番号3、6、9、11については、熱間圧延終了後に常温まで大気中で放冷した。このようにして、第1の圧延鋼材である板番号3、6、9、11の熱延鋼板を製造した。
Figure 2011106006
このようにして得た板番号1〜11の熱延鋼板について、ミクロ組織並びに機械的性質として引張特性、及びシャルピー特性を調査した。
ミクロ組織は、板番号1〜11の熱延鋼板の厚さ方向1/4、幅方向1/2、長さ方向1/2となる位置から試験片を採取し、圧延方向と板厚方向を含む面で鏡面研磨した後、ナイタルで腐食し、倍率を100倍又は500倍として光学顕微鏡観察、及びより高倍率の走査型電子顕微鏡観察を行うことにより、組織を調査した。
引張試験は、平行部の直径が8.5mm、標点距離42.5mmの丸棒引張試験片を用いて室温で行い、0.2%耐力(YP)及び引張強度(TS)を測定した。
なお、上記の引張試験片は、鋼板の幅方向中央部において、圧延方向(すなわち、鋼板の長さ方向)と平行に採取した。
また靱性を評価するため、圧延方向と平行にJIS Z 2242:2005に規定されるVノッチ試験片を採取してシャルピー衝撃試験を行い、0℃での吸収エネルギー(vE0)を測定した。
表2に、これらの各試験の結果をまとめて示す。
化学組成と製造条件が本発明で規定する条件を満たす「本発明例」の鋼番号1、2を用いて圧延した板番号1〜6の鋼板から、引張強度が490MPa級の熱延鋼板(第1の圧延鋼材)、及び引張強度が550MPa級の熱延鋼板(第2の圧延鋼材)を作り分けることができ、これらの熱延鋼板はいずれも圧延後の熱間鋸断性能、及びシャルピー特性(vE0)が優れている。
これに対して、「比較例」の鋼番号3から圧延した鋼板は、板番号7、8の550MPa級の製品において0℃での吸収エネルギーvE0が不芳である。このため、「比較例」の鋼番号3から、引張強度が490MPa級の熱延鋼板(第1の圧延鋼材)、及び引張強度が550MPa級の熱延鋼板(第2の圧延鋼材)を作り分けることができないことがわかる。
さらに、「比較例」の鋼番号4から圧延した鋼板は、板番号10の550MPa級の熱延鋼板においては圧延後の熱間鋸断性能が不芳であり、また板番号11の熱延鋼板は引張強度が490MPa級に達していない。このため、「比較例」の鋼番号4からも、引張強度が490MPa級の熱延鋼板(第1の圧延鋼材)、及び引張強度が550MPa級の熱延鋼板(第2の圧延鋼材)を作り分けることはできないことがわかる。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.04%以上0.10%以下、Si:0.05%以上0.60%以下、Mn:1.0%以上2.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上1.5%以下、Cr:0.05%以上1.5%以下、V:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.04%以下、B:0.0005%以上0.0025%以下、sol.Al:0.005%以上0.080%以下、およびN:0.0030%以上0.0090%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP、SがそれぞれP:0.02%以下、S:0.008%以下、Ti量とN量との比(Ti/N):1.0以上3.0以下、下記(1)式で計算されるPcmの値:0.16%以上0.21%以下である化学組成を有し、
    ベイナイト面積率が0%以上30%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度490MPa以上610MPa以下の第1の圧延鋼材、及び、ベイナイト面積率が40%以上100%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度が550MPa以上670MPa以下の第2の圧延鋼材の素材であること
    を特徴とする鋼。
    Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B ・・・・(1)
    ここで、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Mo:1.0質量%以下を含有する請求項1に記載の鋼。
  3. 質量%で、C:0.04%以上0.10%以下、Si:0.05%以上0.60%以下、Mn:1.0%以上2.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上1.5%以下、Cr:0.05%以上1.5%以下、V:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.04%以下、B:0.0005%以上0.0025%以下、sol.Al:0.005%以上0.080%以下、およびN:0.0030%以上0.0090%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP、SがそれぞれP:0.02%以下、S:0.008%以下、Ti量とN量との比(Ti/N):1.0以上3.0以下、下記(1)式で計算されるPcmの値:0.16%以上0.21%以下である化学組成を有する鋼片又は鋼塊に、800℃以上の温度で熱間圧延を終了して鋼材とし、該鋼材の温度が550℃に達するまでを、放冷により冷却するか、あるいは加速冷却により冷却するかを選択することによって、ベイナイト面積率が0%以上30%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度が490MPa以上610MPa以下の第1の圧延鋼材、又は、ベイナイト面積率が40%以上100%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度が550MPa以上670MPa以下の第2の圧延鋼材のいずれかを製造すること
    を特徴とする圧延鋼材の製造方法。
    Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B ・・・・(1)
    ここで、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
  4. 質量%で、C:0.04%以上0.10%以下、Si:0.05%以上0.60%以下、Mn:1.0%以上2.0%以下、Cu:0.05%以上1.0%以下、Ni:0.05%以上1.5%以下、Cr:0.05%以上1.5%以下、V:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.04%以下、B:0.0005%以上0.0025%以下、sol.Al:0.005%以上0.080%以下、およびN:0.0030%以上0.0090%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP、SがそれぞれP:0.02%以下、S:0.008%以下、Ti量とN量との比(Ti/N):1.0以上3.0以下、下記(1)式で計算されるPcmの値:0.16%以上0.21%以下である化学組成を有する鋼片又は鋼塊に、800℃以上の温度で熱間圧延を終了して鋼材とし、
    ベイナイト面積率が0%以上30%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度が490MPa以上610MPa以下の第1の圧延鋼材を製造するか、あるいは、ベイナイト面積率が40%以上100%以下であるとともに厚さが50mm以上80mm以下である引張強度が550MPa以上670MPa以下の第2の圧延鋼材を製造するかに基づいて、
    前記第1の圧延鋼材を製造する場合には前記鋼材の温度が550℃に達するまでを放冷により冷却し、前記第2の圧延鋼材を製造する場合には、前記鋼材の温度が550℃に達するまでを加速冷却により冷却すること
    を特徴とする圧延鋼材の製造方法。
    Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B ・・・・(1)
    ここで、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
  5. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Mo:1.0質量%以下を含有する請求項3又は請求項4に記載の圧延鋼材の製造方法。
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