JP2011102796A - 粒子保存溶液および粒子の保存方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の粒子保存溶液は、生物由来物質を固定化するための粒子と、前記粒子を保存する保存液とを含む粒子保存溶液であって、前記粒子の比重(S1)と、前記保存液の比重(S2)との比重差が、0.4以下であることを特徴とする。また、本発明の粒子の保存方法は、上述に記載の粒子保存溶液を用いることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
また、本発明の別の目的は、一定量の粒子を効率良く、かつ精度良く分取することが可能な粒子の保存方法に関する。
(1) 生物由来物質を固定化するための粒子と、前記粒子を保存する保存液とを含む粒子保存溶液であって、
前記粒子の平均比重(S1)と、前記保存液の比重(S2)との比重差が、0.4以下であることを特徴とする粒子保存溶液。
(2)前記保存液の比重(S2)が、0.5〜5である(1)に記載の粒子保存溶液。
(3)前記粒子の平均粒子径(r)は、0.1〜500μmである(1)または(2)に記載の粒子保存溶液。
(4)前記粒子の平均比重をS1とし、粒子の比重の標準偏差をσとし、保存液の比重をS2としたとき、
S1−3σ<S2<S1+3σ を満足する(1)ないし(3)のいずれかに記載の粒子保存溶液。
(5)前記保存液は、2種類以上の溶液を混合してなる混合溶液である(1)ないし(4)のいずれかに記載の粒子保存溶液。
(6)前記保存液は、無機塩の水溶液である(1)ないし(4)のいずれかに記載の粒子保存溶液。
(7)前記無機塩は、セシウム塩、バリウム塩、ルビジウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ベリリウム塩から選ばれる少なくとも一つである(6)に記載の粒子保存溶液。
(8)前記無機塩の含有量は、前記水溶液中の0.1〜50重量/体積%である(6)または(7)に記載の粒子保存溶液。
(9)前記保存液の沸点が、50℃以上である(1)ないし(8)のいずれかに記載の粒子保存溶液。
(10)前記粒子は、樹脂粒子である(1)ないし(9)のいずれかに記載の粒子保存溶液。
(11)(1)ないし(10)のいずれかに記載の粒子保存溶液を用いることを特徴とする粒子の保存方法。
(12)(1)ないし(10)のいずれかに記載の粒子保存溶液で、該溶液中の粒子の分散を測定する方法であり、該溶液の可視光線の透過率を測定する粒子保存溶液の測定方法。
(13)(12)に記載の可視光線の透過率の測定において、透過率の時間変化を測定する保存溶液の測定方法。
また、本発明によれば、一定量の粒子を効率良く、かつ精度良く分取することが可能な粒子の保存方法を提供することができる。
本発明の粒子保存溶液は、生物由来物質を固定化するための粒子と、前記粒子を保存する保存液とを含む粒子保存溶液であって、前記粒子の比重(S1)と、前記保存液の比重(S2)との比重差が、0.4以下であることを特徴とする。
また、本発明の粒子の保存方法は、上述に記載の粒子保存溶液を用いることを特徴とする。
まず、粒子保存溶液について説明する。
本発明の粒子保存溶液は、生物由来物質を固定化するための粒子を保存するために用いるものである。このような粒子は、上述したように水溶液等の分散液として保存されることが多い。そして、使用される際には必要量を分取するという使用方法であるが、このような粒子を分散液中に均一に分散させるのは困難であり、使用毎に分取量が変化してしまうことがあった。本発明は、生物由来物質を固定化するための粒子に要求される課題を解決するためのものである。
前記比重差は、特に好ましくは0.2以下であり、より好ましくは0.1以下である。比重差が前記範囲内であると、分散している粒子が沈降または浮遊するまでの時間を長くすることができ、それによって試料を分取するさいのバラツキを低減することができる。
粒子の平均比重(S1)は、例えば比重瓶で測定し、標準偏差(σ)は密度勾配法により算出できる。
具体的には、シリカ(微)粒子、高分子(微)粒子、金(微)粒子、セファロース(微)粒子、アガロース(微)粒子、セルロース(微)粒子等が挙げられる。これらの(微)粒子の中でも、表面に活性基としてアビジン、ビオチン、抗体、レクチン、カルボニル基、アミノ基、アミノオキシ基、ヒドラジド基、エステル基、マレイミド基およびチオール基のいずれか1種以上の活性基を有するものが好ましい。
このような平均比重は、例えば比重瓶を用いて評価することができる。
前記平均粒子径は、例えば粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
2種以上の溶液の組み合わせとしては、例えば水とメタノール、水とエタノール、メタノールとクロロホルムが挙げられる。
一方、比重が1より小さい粒子を分散させるための保存液としては、水と有機溶媒の混合液、有機溶媒同士の混合液が好ましい。
本発明の粒子の保存方法は、上述したような粒子保存液を用いることを特徴とする。これにより、粒子保存液中で粒子の沈降、浮遊するのを抑制することができる。すなわち、一度攪拌等により粒子を保存液中で分散させると、その分散状態を長く維持することができ、それによって粒子の正確な分取を可能とすることができるものである。
例えば、高分子(微)粒子を無機塩の水溶液に分散させて保存する保存方法等がある。
本発明の粒子の保存方法において、溶媒中の粒子が分散している状態を観察するには、簡便には、目視で観察し、沈殿物、すなわち、沈降した粒子の存在の有無により確認できる。
より詳細に、粒子の分散状態を確認する方法としては、粒子保存溶液に可視光線を照射し、その光透過率で粒子の分散状態を数値化することが可能である。これは、粒子が溶媒中に分散している状態においては、分散状態の粒子が障害物となり、照射した可視光線が透過せず、その分散粒子の濃度により光透過率が変わることを利用したもので、可視光線の分散状態に応じた可視光線の光透過率を示すことができる。
また、分取の自動化の場合は、送液ライン中に透過光率測定のための窓を設け、それを使用して光透過率測定をすれば、分取時の粒子の分散状態を追跡することが可能で、より精度の高い分取が可能となる。
1.保存液の調製
塩化セシウム(比重3.99、和光純薬、035−01952)2.43gを、水7.57mLに溶解させて、質量パーセント濃度24.3%の塩化セシウム水溶液(比重1.223)を得た。
微粒子としてヒドラジドビーズ(ポリマー粒子、球状、50mg、ヒドラジド基保有、住友ベークライト社製、BS−45603、平均比重1.291)を、1.5mLチューブに量り取り、そして上述の保存液を500μL分注し、ボルテックスミキサーで攪拌して、粒子保存溶液を得た。この微粒子と、保存液との比重差は、0.068であった。
保存液として、以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
塩化セシウム(比重3.99、和光純薬、035−01952)3.63gを、水6.37mLに溶解させて、質量パーセント濃度36.3%の塩化セシウム水溶液(比重1.374)を得た。この微粒子と、保存液との比重差は、0.083であった。
保存液として、以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
塩化セシウム(比重3.99、和光純薬、035−01952)2.1gを、水7.9mLに溶解させて、質量パーセント濃度21%の塩化セシウム水溶液(比重1.187)を得た。この微粒子と、保存液との比重差は、0.104であった。
保存液としてメタノール(比重0.791)のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。この微粒子と保存液との比重差は0.5であった。
保存液として、以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
塩化セシウム(比重3.99、和光純薬、035−01952)5.71gを、水4.29mLに溶解させて、質量パーセント濃度57.1%の塩化セシウム水溶液(比重1.748)を得た。この微粒子と、保存液との比重差は、0.457であった。
ボルテックスミキサーで攪拌後における粒子保存溶液の微粒子の分散状態を、目視で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:0.5時間経過後も微粒子の沈殿、浮遊が無かった。
○:0.2時間以上、0.5時間未満で微粒子の沈殿、浮遊が無かった。
△:0.1時間以上、0.2時間未満で微粒子の沈殿、浮遊が無かった。
×:0.1時間未満に、微粒子の沈殿、浮遊が有った。
実施例1で得られた粒子保存溶液および比較例1で得られた粒子保存溶液を、それぞれボルテックスミキサーにて攪拌した。この攪拌直後から、1分後、3分後、5分後、10分後、15分後、20分後、30分後、60分後にそれぞれ100μLの粒子保存液を、重量があらかじめ測定してある1.5mLチューブに分注した。その後、凍結乾燥により1.5mLチューブ内の水を完全に除去し1.5mLチューブの重量を再測定した。1.5mLチューブ本体の重量との差から1.5mLチューブ内に分注された粒子および塩化セシウム量を算出し、それぞれ比較した。得られた結果を、図1に示す。
実施例1で得られた粒子保存溶液および超純水に粒子を分散させたものの光透過率の継時変化を測定した。
具体的には、実施例1で得られた粒子保存液を保存液で10倍希釈したものを準備、また比較例1同様に粒子をメタノールで濃度が同じになるように希釈した溶液を準備した。各々の溶液を装置専用の測定用ガラスセルに移した。
測定は、多目的紫外可視分光光度計DU730(BECKMAN COULTER, Life Scienve UV/Vis Spectorometer)で測定した。測定時間は、粒子保存液は、0,5,10,15,30,40,50,60分、メタノール分散は、0, 0.25, 0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5分に測定した。対照は、それぞれの粒子を含まない溶液を用いた。得られた結果を図4に示す。
(A)微粒子の回収
次に、粒子保存溶液中の微粒子の反応に使用する新たな反応容器(フィルターカラム、住友ベークライト社製、BS−45603)を準備した。粒子保存溶液50μLを反応容器に添加した。卓上遠心機を用いて保存液を遠心除去した。さらに、微粒子の入った反応容器の内部に純水200μLを加え、卓上遠心機を用いて純粋を遠心除去した。これをさらに2回繰り返し粒子に付着した塩化セシウム塩を除去した。
ウシ免疫グロブリンG(ウシIgG)1mgを100mM(ミリモーラー)の重炭酸アンモニウム50μLに溶解させた後、120mM(ミリモーラー)のDTT(ジチオスレイトール)を5μL加え、60℃で30分間反応させた。反応終了後、123mM(ミリモーラー)のIAA(ヨードアセトアミド)10μLを加えて遮光下、室温で1時間反応させた。続いて400Uのトリプシンによってプロテアーゼ処理をし、タンパク質部分をペプチド断片化した。反応溶液を90℃で5分処理した後、5UのグリコシダーゼFによる処理を行って糖鎖をペプチドから遊離させ、予備処理済の生体試料を得た。
微粒子が入ったフィルターカラムに、予備処理済の生体試料の懸濁物20μLおよび180μLの2%酢酸/アセトニトリル溶液を加え、80℃で1時間反応させ微粒子上のヒドラジド基に糖を固定させた。反応は開放系で行い、溶媒が完全に蒸発し微粒子が乾固した状態であることを目視で確認した。続いて、グアニジン溶液、水、メタノール、トリエチルアミン溶液にて微粒子を洗浄後、10%無水酢酸/メタノールを添加し、室温で30分間反応させ、未反応のヒドラジド基をキャッピングした。キャッピング後、メタノール、塩酸水溶液、水にて微粒子を洗浄した。微粒子の入ったフィルターカラムに、超純水20μLおよび2%酢酸/アセトニトリル溶液180μLを加え、70℃で1時間反応させ微粒子上の糖鎖を切り出した。反応は開放系で行い、溶媒が完全に蒸発し微粒子が乾固した状態であることを目視で確認した。
微粒子および切り出した糖鎖の入ったフィルターカラムに、2−アミノベンズアミド(2−AB)およびシアノ水素化ホウ素ナトリウムの終濃度がそれぞれ0.35M、1Mになるように30%酢酸/DMSO混合溶媒に溶解させて調整した溶液50μLを添加し、60℃で2時間反応させて、切り出した糖鎖を2−ABで標識化した。
上述の溶液50μLを回収し、アセトニトリルで10倍に希釈した後、標識化した糖鎖を付属のクリーンアップカラムに吸着させた。アセトニトリル、アセトニトリル/水混合溶液(95:5)にてカラムを洗浄後、超純水50μLにて標識化した糖鎖を回収した。
得られた標識化した糖鎖をHPLCにて測定した。アミドカラム(TSK−GEL Amide−80 4.6*250)を用いて励起波長330 nm、蛍光波長420 nmにて測定した。溶媒Aは50mMギ酸、25%アンモニア水にてpH4.4に調整したものを使用し、溶媒Bとしてアセトニトリルを使用し、溶媒A液20%(0min)→A液58%(158min)で送液した。カラム温度は30℃で流速は0.4mL/minとした。図2に示すように、ウシIgG糖鎖由来ピークが観察された。
これより、本発明の粒子保存容器を用いることにより、微粒子が損失せずに容器内に保存可能であることが示された。
実施例1で用いたヒドラジドビーズを、上述した粒子保存容器内で保存することなく、直ぐに標識化糖鎖の検出を行った。得られた結果を、図3に示す。実線は、ウシIgG糖鎖由来ピークであった。
これより、本発明の粒子保存溶液を用いて粒子を保存しても粒子表面の活性基は失活しないことが分かった。
Claims (13)
- 生物由来物質を固定化するための粒子と、前記粒子を保存する保存液とを含む粒子保存溶液であって、
前記粒子の平均比重(S1)と、前記保存液の比重(S2)との比重差が、0.4以下であることを特徴とする粒子保存溶液。 - 前記保存液の比重(S2)が、0.5〜5である請求項1に記載の粒子保存溶液。
- 前記粒子の平均粒子径(r)は、0.1〜500μmである請求項1または2に記載の粒子保存溶液。
- 前記粒子の平均比重をS1とし、粒子の比重の標準偏差をσとし、保存液の比重をS2としたとき、
S1−3σ<S2<S1+3σ を満足する請求項1ないし3のいずれかに記載の粒子保存溶液。 - 前記保存液は、2種類以上の溶液を混合してなる混合溶液である請求項1ないし4のいずれかに記載の粒子保存溶液。
- 前記保存液は、無機塩の水溶液である請求項1ないし4のいずれかに記載の粒子保存溶液。
- 前記無機塩は、セシウム塩、バリウム塩、ルビジウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ベリリウム塩から選ばれる少なくとも一つである請求項6に記載の粒子保存溶液。
- 前記無機塩の含有量は、前記水溶液中の0.1〜50重量/体積%である請求項6または7に記載の粒子保存溶液。
- 前記保存液の沸点が、50℃以上である請求項1ないし8のいずれかに記載の粒子保存溶液。
- 前記粒子は、樹脂粒子である請求項1ないし9のいずれかに記載の粒子保存溶液。
- 請求項1ないし10のいずれかに記載の粒子保存溶液を用いることを特徴とする粒子の保存方法。
- 請求項1ないし10のいずれかに記載の粒子保存溶液で、該溶液中の粒子の分散を測定する方法であり、該溶液の可視光線の透過率を測定する粒子保存溶液の測定方法。
- 請求項12に記載の可視光線の透過率の測定において、透過率の時間変化を測定する粒子保存溶液の測定方法。
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