本発明のシート材穿孔装置は、基本構成として、駆動源と、2組のパンチ機構部A、Bと、切替機構部とを備え、前記パンチ機構部A、Bは、ダイ孔と噛み合うことでシート材に穿孔する1個以上のパンチと、該パンチを穿孔駆動する梃子クランク機構をそれぞれ具備する。このような基本構成を有する本発明のシート材穿孔装置における重要な特徴は、後述する切替機構部の機械的構成により、駆動源の駆動方向を選択して切り替えるだけの簡単な制御で、パンチ機構部Aを駆動するか、もしくはパンチ機構部Bを駆動するか、を選択して切り替えることを可能としたことである。
本発明における切替機構部は、パンチ機構部A、Bの一端側に位置し、駆動源に連結して該駆動源の駆動方向の切替に対応して双方向に回転する主動部と、前記駆動源の一方駆動により前記主動部に対して連結して一方向に回転する第一の従動部と、前記駆動源の他方駆動により前記主動部に対して連結して一方向に回転する第二の従動部と、を有し、第一の従動部にはパンチ機構部Aが連結し、第二の従動部にはパンチ機構部Bが連結する。特に重要となるのは、主動部に対する第一の従動部の連結維持および第二の従動部の連結解除と、主動部に対する第二の従動部の連結維持および第一の従動部の連結解除とを、駆動源の駆動方向の切替に対応して行うことを可能とする機械的構成である。
以下、本発明において重要な切替機構部の主動部および従動部について説明する。
本発明において主動部は、駆動源と第一および第二の従動部に対して連結し、駆動源の駆動方向の切替に対応して双方向に回転可能な構成を有する機械的構成とする。従って、主動部は、例えば、駆動源がモータなどの回転駆動源であればその回転運動をギヤなどの機械要素を有して自らの回転運動にできる構成を有するものとなり、駆動源がシリンダなどの直線駆動源であればその直線運動をラックピニオンやクランクなどの機械的機構を有して自らの回転運動にできる構成を有するものとなる。
本発明において第一および第二の従動部は、自らが主動部に対して連結したときに主動部の回転運動を自らの回転運動として受けて一方向に回転することができる構成を有する機械的構成とする。さらに、第一の従動部は自らに直接もしくは間接に連結するパンチ機構部Aを駆動することができる構成を有するものとし、第二の従動部は自らに直接もしくは間接に連結するパンチ機構部Bを駆動することができる構成を有するものとする。従って、第一および第二の従動部は、例えば、主動部との間に後述する連結機構などを適用し、連結する主動部の回転運動を自らの回転運動として受け、受けた回転運動をギヤなどの機械要素を有して自らに連結する側のパンチ機構部に回転運動として伝達する構成となる。
上述した一方向に回転する第一および第二の従動部を構成するにおいては、例えば、ギヤによる噛み合い方式や摩擦もしくは磁気を利用した圧接方式などの一方向性クラッチ機構、爪などの歯止めを有する歯車方式や保持器で内包軸の転がり方向に指向性を付与する方式などのラチェット機構、これらを適用した市販の一方向性クラッチ部品などの連結機構が適用でき、これらの出力側を従動部とし、入力側を主動部とすることができる。
また、上述した第一および第二の従動部は、駆動源の駆動方向に対応して一方の従動部が主動部に対して連結して回転する場合には他方の従動部は主動部に対して連結せずに回転することがない構成であることが重要である。すなわち、駆動源の一方駆動により第一の従動部が主動部に対して連結して一方向に回転する場合には第二の従動部は回転することがなく、駆動源の他方駆動により第二の従動部が主動部に対して連結して一方向に回転する場合には第一の従動部は回転することがない構成である。
ここで、「主動部に対して連結して一方向に回転する」構成とは、駆動源の駆動により主動部が双方向のいずれかへ回転するとき、主動部の一方回転に対しては連結して自らが一方向に回転するものの、主動部の他方回転に対しては連結せずに自らが回転しないか、もしくは主動部に対して連結した状態であったとしても主動部との連結が解除されてしまうために自らが回転しない、といった構成を意味する。
こうした主動部と2つの従動部の特殊な連結関係を構成するにおいては、例えば、主動部に対して円環状に配置された複数の歯を具備し、従動部に対して主動部の歯形状に対応する複数の歯を具備し、主動部および従動部の歯の噛み合いにより従動部が主動部に対して連結する、といった機械的構成が好適である。このような歯形を利用した機械的噛み合い構成は、上述した磁気を利用した一方向性クラッチ機構や爪などの歯止めを有する歯車方式や内包軸に指向性を付与する方式のラチェット機構を適用する構成に比べ、機械的構成が簡素化できてコンパクト化や軽量化しやすい、駆動力伝達が高効率化できるなど多くの利点を有する。
また、主動部と2つの従動部の連結構成において、上述した歯形を利用した噛み合い構成を適用する場合は、歯形の噛み合いによって接触した歯面間で主動部から従動部への駆動力の伝達が行われる。このとき、噛み合う歯面の上述した傾斜角が小さくなるに連れて伝達効率は低下する。よって、上述した主動部の歯形に適用する歯としては、主動部の従動部と連結する回転方向において、前側となる前歯面と、後側となる後歯面と、を有して形成され、前歯面を含む平面と、主動部の回転中心と直行する平面とでなす傾斜角が70〜110度に形成されるものであることが望ましい。特に傾斜角が90度近傍であるときは互いの歯の接触摩擦による影響をほとんど受けることがなくなって高効率の駆動力伝達が可能となる。
ただし、この傾斜角を70度未満に設定すると、歯面間に生じる滑りの影響により歯形の噛み合いで生じる圧接力が過少となって駆動力の伝達効率が急激に劣化する。場合によっては、歯形の噛み合い状態が不安定になって従動部が回転できないことがある。また、この傾斜角を110度を超えて設定すると、90度からの角度差分だけ隙間を有することになり、歯形の噛み合いによる回転駆動の初期の動作が不安定になりやすく、加えて、個々の歯の歯先が薄肉となるため機械的強度不足により歯先に欠損を生じやすくなる。
上述した歯形を利用した構成の適用により、従動部を主動部に対して連結して回転したい場合に、歯形の噛み合いで生じる主動部と従動部との連結状態をより安定に維持できる。加えて、主動部の歯形をなす歯の後歯面に係る傾斜を好適に形成できるため、従動部を主動部に対して連結せずに回転したくない場合に、主動部側の歯が従動部側の歯に乗り上げて乗り越すことで生じる主動部と従動部との非連結状態の実現をより確実にできる。このことは、主動部に対しての第一および第二の従動部のいずれの関係においても成立する。
本発明のシート材穿孔装置は、上述した切替機構部を有することにより、第一の従動部に対してパンチ機構部Aの梃子クランク機構を連結することで当該第一の従動部の一方向への回転によりパンチ機構部Aが駆動し、第二の従動部に対してパンチ機構部Bの梃子クランク機構を連結することで当該第二の従動部の一方向への回転によりパンチ機構部Bが駆動するものとなる。
例えば、上述したパンチ機構部A、Bにおいて、シート材に穿孔する2孔の孔位置に対応して孔間距離が70mmなどとなるようにパンチ機構部Aに2個のパンチを具備し、3孔の孔位置に対応して孔間距離が108mmなどとなるようにパンチ機構部Bに3個のパンチを具備することで、シート材に穿孔する穿孔数を北米圏で多く利用される2孔か3孔の穿孔が選択可能な切替機能を有する本発明の一例となるシート材穿孔装置を得ることができる。この場合、パンチ機構部Aの片側駆動により2孔が穿孔でき、パンチ機構部Bの片側駆動により3孔が穿孔できる。このとき、すべてのパンチを直線上に揃えてパンチ列を構成することで、シート材に穿孔する孔列を直線上に配置できる。
上述した切替機能は2孔と4孔の場合にも同様に適用できる。例えば、上述したパンチ機構部A、Bにおいて、シート材に穿孔する2孔の孔位置に対応して孔間距離が80mmなどとなるようにパンチ機構部Aに2個のパンチを具備し、4孔の孔位置に対応して孔間距離が80mmなどとなるようにパンチ機構部Bに4個のパンチを具備することで、シート材に穿孔する穿孔数を北米圏で多く利用される2孔か4孔の穿孔が選択可能な切替機能を有する本発明の一例となるシート材穿孔装置を得ることができる。この場合、パンチ機構部Aの片側駆動により2孔が穿孔でき、パンチ機構部Bの片側駆動により4孔が穿孔できる。
また、本発明のシート材穿孔装置は、パンチ機構部A、Bにおいてパンチを穿孔駆動する機械的機構として梃子クランク機構を適用している。このため、クランク機構により駆動源の駆動力を切替機構部を介して高効率でパンチに伝達し、梃子構造により駆動力を増幅しながらパンチを直線的に穿孔駆動する、といった有効な機能を簡素な機械的構造で実現できるため、パンチ機構部などのコンパクト化、低コスト化、省エネルギー化をなすことができる。
上述したことから、本発明のシート材穿孔装置は、シート材に対する穿孔数の切替を可能とするレシプロ式のシート材穿孔装置として利用できるものであって、複写用紙等を使用する複写機やその後処理装置などの事務機器への搭載は特に好適となる。また、本発明のシート材穿孔装置の穿孔対象となるシート材は、シート状の形態を有する各種のシート材であってよく、例えば、紙、樹脂、食品、木材、金属、セラミックス、あるいはこれらの複合材等でなるものに適用可能である。
次に、パンチ機構部A、Bにおいて、パンチを穿孔駆動する本発明における梃子クランク機構について説明する。
本発明において適用する梃子クランク機構としては、上述した本発明における切替機構部に連結されて回転運動するクランク部材と、一端が揺動可能に支持された梃子部材と、パンチが付設されクランク部材と梃子部材とを連結する連接部材と、クランク部材の回転軸および梃子部材の前記一端を支持する固定部材とを具備し、クランク部材の回転運動によって連接部材がパンチの穿孔方向に揺動することでパンチを穿孔駆動する、機械的機構を適用できる。
ここで、梃子クランク機構とは、一般に四つのリンクを有し、全ての前記リンクが回り対偶によって連鎖をなす四節回転連鎖に属する機械的機構であって、前記リンクの中で長さが最小のリンクと対偶をなすリンクを固定した機械的機構をいう。つまり、該梃子クランク機構とは、回り対偶によって連鎖をなす4つのリンクのうち、1つは運動できない固定リンクであり、最小長さのリンクを含む3つのリンクが運動可能に構成されてなる機械的機構をいう。
また、一般に、回転運動するリンクをクランク、揺動運動するリンクを梃子、該梃子と前記クランクとを連結するリンクを連接棒という。そして、前記クランクが最小長さのリンクとなる。また、上述の対偶とは、隣り合ったリンクが互いに接して運動する構成において、互いに接する接触部分の組み合わせ部をいう。上述した構成においては、クランクが前記クランク部材に、梃子が前記梃子部材に、連接棒が前記連接部材に、および固定リンクが前記固定部材に対応する。
上述した梃子クランク機構において、クランク部材の回転運動により、連接部材がパンチの穿孔方向に揺動する。そして、該連接部材が穿孔方向に揺動することにより、該連接部材に連結したパンチを穿孔駆動する。従って、切替機構部からの出力として伝達される駆動力をクランク部材への入力として伝達できるように構成することにより、切替機構部を介して駆動源からの駆動力をパンチ機構部A、Bのそれぞれの梃子クランク機構に伝達し、これらを駆動することができる。
連接部材が揺動するとき、これに付設されたパンチは、連接部材の穿孔方向への揺動に追従して穿孔方向に駆動する。このため、パンチを穿孔駆動するために駆動源から伝達される駆動力の損失は、その作用方向が大きく変換されることがなくなって最小限に抑制される。さらには、駆動力の損失分が低減されて駆動源の小型化が可能になるため、パンチの穿孔駆動に係る駆動機構部に加わる負荷が低減される。よって、連接部材に付設されるパンチ数が多くなるほど効果的であって、例えば2孔、3孔、4孔、さらに多数孔を穿孔するシート材穿孔装置に適用するほどに高い作用効果が発揮できる。
また、梃子クランク機構を構成する連接部材に対して1個以上のパンチを付設し、該連接部材をシート材幅方向に沿って配置することにより、シート材に穿孔する孔列を形成するためのパンチ列を構成する。連接部材は、クランク部材と梃子部材との間に位置し、クランク部材の回転運動によってパンチの穿孔方向に揺動することができる。ここで、パンチの穿孔方向とは、シート材のシート面との直行方向であって、固定リンクとなる前記固定部材のシート材載置面に対して実質的に直行する方向に対応する。
よって、連接部材に対してパンチを付設しておくことにより、駆動力の作用方向を変換することなくパンチを穿孔方向に直接的に穿孔駆動できる。なお、連接部材に対してパンチを付設する場合は、パンチに軸部材などを設けて直接的に連接部材に付設する構成にもできるし、例えばパンチと連接部材との間にパンチ係止手段を設けて付設するなどの構成にもできる。
なお、上述した切替機構部とそれぞれのパンチ機構部A、Bに備えた梃子クランク機構との連結の仕方によっては、パンチの穿孔駆動後の待機位置が不安定になる可能性がある。例えば、上述した歯形の噛み合いを利用して構成した主動部および従動部を適用した切替機構部である場合は、主動部側の歯が従動部側の歯に乗り上げて乗り越すとき、従動部の歯形に対して乗り越えに抗する方向に荷重(以下、乗り越え反力という)が作用する。このとき、従動部の歯形は、乗り越え反力が作用したとしても必ずしも回転されないものの、仮に回転された場合には従動部に連結する梃子クランク機構をなすクランク部材が回転運動することとなって、パンチを穿孔駆動してしまう。
このような意図しないパンチの振れを生じる可能性がある場合は、梃子クランク機構をなすクランク部材もしくは梃子部材を構成するにあたり、クランク部材もしくは梃子部材に対して振れ止め機構(以下、ディテント機構という)を設けて、クランク部材もしくは梃子部材の不要な振れを抑止することが望ましい。例えば、バネの弾性力やカムの押圧力などを利用し、所望箇所において一方側に凸部を他方側に凸部形状に対応する凹部を設けて凸部の凹部に対する嵌り込み状態を保持し、従動部が主動部に連結して伝達された駆動力により前記嵌り込み状態が解消できる、といったディテント機構が適用できる。
次に、本発明のシート材穿孔装置について、本発明者が好適と考える具体的構成を挙げて詳細に説明する。
図1は、本発明の一例となる2組のパンチ機構部A、Bを有するシート材穿孔装置1(以下、穿孔装置1という)である。図1(a)は上方からの視点で、図1(b)はシート材(図示せず)の通紙方向からの視点で、穿孔装置1の待機状態を示す。また、図2(a)は図1(a)に示す切替機構部Cの拡大図で、さらに図2(b)、図2(c)は主動部43に具備する歯形43A、43B近傍の拡大図である。なお、穿孔装置1は一例であって、パンチ機構部A、Bや第一および第二の従動部をどちら側に配置するかなどは適宜選択することができる。
図1に示す穿孔装置1は、梃子クランク機構をなすそれぞれの連接アーム6A、6Bが互いに平行となるようにシート材の搬送方向と直交する方向すなわちシート材幅方向に沿って配置された2組のパンチ機構部A、Bと、ダイフレーム20と、シート材幅方向の一端側に回転軸が連接アーム6A、6Bと同方向となるように配置された駆動源となるモータ9と、パンチ機構部A、Bの一端側すなわちシート材幅方向の一端側に位置してモータ9とパンチ機構部A、Bを連結する切替機構部Cと、を備える。なお、穿孔対象となるシート材はダイフレーム20とパンチフレーム7でなすパンチ列に沿った狭隘な空間に挿入され、このパンチ列方向がすなわちシート材幅方向に対応する。
穿孔装置1において、パンチ機構部A、Bは、シート材に穿孔する1個以上のパンチと、これを穿孔駆動する梃子クランク機構をそれぞれ備え、切替機構部C側に対して梃子クランク機構をなすそれぞれのクランクギヤ4A、4Bによって連結する。それぞれのクランクギヤ4A、4Bは、切替機構部Cからの出力として伝達された駆動力をそれぞれの梃子クランク機構に対する入力として受け取ることができる。
パンチ機構部Aは、連接アーム6Aの長手方向すなわちシート材幅方向に沿って2個のパンチ2Aa、2Abが付設され、ダイフレーム20にシート材幅方向に沿って設けた5個のダイ孔のうちの2個のダイ孔3Aa、3Abと噛み合うことで、シート材に2孔を穿孔することができる。また、パンチ機構部Bは、同様に連接アーム6Bの長手方向に沿ってパンチ2Aa、2Abとは異なる位置に3個のパンチ2Ba、2Bb、2Bcが付設され、上述した5個のダイ孔のうちの3個のダイ孔3Ba、3Bb、3Bcと噛み合うことで、シート材のパンチ機構部Aによる穿孔位置とは異なる位置に3孔を穿孔することができる。
切替機構部Cは、パンチ機構部Aを駆動するか、あるいはパンチ機構部Bを駆動するかを、駆動源であるモータ9の駆動方向の切替により決定する機械的機構である。穿孔装置1における切替機構部Cは、基本構成として、駆動源であるモータ9を固設するフレーム8に両端を固設し、シート材搬送方向すなわちパンチ機構部A、Bの連接アーム6A、6Bに対して直行方向に配置した1本の軸42により回転可能に軸支された主動部43と第一および第二の従動部44A、44Bを有する。本発明においては、パンチ機構部A、Bと直行する1本の軸42上に主動部43と第一および第二の従動部44A、44Bを配設する上述したような構成の採用により、シート材幅方向において切替機構部Cをコンパクト化しやすくなる。
軸42上に配設される主動部43は、モータ9の回転軸に固設したギヤ10に対して連結する2つのギヤ43a、43bで構成される。ギヤ43aは、軸42方向に突出する歯形43Aを有して連接アーム6Aと平行に配設され、軸42を回転中心としてモータ9の駆動方向の切替に対応して双方向に回転可能となっている。同様に、ギヤ43bは、軸42方向に突出する歯形43Bを有して連接アーム6Bに対して平行に配設され、軸42を回転中心としてモータ9の回転方向に対応して双方向に回転可能となっている。そして、主動部43を構成するギヤ43a、43bは、それぞれの歯形43A、43Bの箇所において第一および第二の従動部44A、44Bの側に対して連結可能となっている。
軸42上に配設される第一の従動部44Aは、軸42方向に突出する歯形45Aを有して連接アーム6Aと平行に配設されたギヤ44Aaで構成される。同様に、第二の従動部44Bは、軸42方向に突出する歯形45Bを有して連接アーム6Bと平行に配設されたギヤ44Baで構成される。そして、第一および第二の従動部44A、44Bは、軸42方向において2つのギヤ43a、43bで構成される主動部43を挟み込むかのように対向配設され、それぞれがバネ41A、41Bの弾性力により主動部43の側に適正に押圧されている。
また、切替機構部Cにおいて、第一の従動部44Aに具備するギヤ44Aaに対して軸19Aで軸支して連接アーム6Aと平行に配設した2段ギヤ11Aが連結し、第二の従動部44Bに具備するギヤ44Baに対して軸19Bで軸支して連接アーム6Bと平行に配設した2段ギヤ11Bが連結する。そして、2段ギヤ11Aに対して軸12Aで軸支して連接アーム6Aと平行に配設したクランクギヤ4Aが連結し、2段ギヤ11Bに対して軸12Bで軸支して連接アーム6Bと平行に配設したクランクギヤ4Bが連結する。
従って、駆動源であるモータ9の駆動力は、まずギヤ10を介して主動部43を構成する2つのギヤ43a、43bに伝達される。そして、第一の従動部44Aが主動部43に対して連結する場合には、主動部43を構成する一方のギヤ43aを介して第一の従動部44Aに伝達され、さらに2段ギヤ11Aを介してパンチ機構部A側のクランクギヤ4Aへと伝達される。あるいは、第二の従動部44Bが主動部43に対して連結する場合には、主動部43を構成する他方のギヤ43bを介して第二の従動部44Bに伝達され、さらに2段ギヤ11Bを介してパンチ機構部B側のクランクギヤ4Bへと伝達される。
上述した主動部43と第一の従動部44Aとの連結構成に係る、第一の従動部44A側に突出して配置した主動部43の歯形43Aおよび主動部43側に突出して配置した第一の従動部44Aの歯形45Aは同等の構成を有してなり、互いに自らを貫通する軸42を中心として円環状に8個の歯を具備する。また、上述した主動部43と第二の従動部44Bとの連結構成に係る、第二の従動部44B側に突出して配置した主動部43の歯形43Bおよび主動部43側に突出して配置した第二の従動部44Bの歯形45Bもまた同等の構成を有してなり、互いに自らを貫通する軸42を中心として円環状に8個の歯を具備る。
歯形43Aについて説明すると、歯形43Aにおける個々の歯は、図2(b)に示すように、主動部43の回転方向において、前側となる前歯面43Aaと、後側となる後歯面43Abとを、主たる面として形成された歯形状を有する。また、歯形43Aの個々の歯において、主たる2面がなす歯先の向きに係る傾斜角は、すなわち、前歯面43Aaを含む平面と、主動部43の回転中心となる回転軸との直交平面つまり軸42が直交する平面とでなす傾斜角は約90度に、同様に後歯面43Abを含む平面がなす傾斜角は約60度に形成される。
一方、第一および第二の従動部44A、44Bのそれぞれの歯形45A、45Bは、上述したように軸42を中心として主動部43のそれぞれの歯形43A、43Bに対向するように円環状に8個の歯を具備する。そして、歯形45Aについて説明すると、歯形45Aにおける個々の歯において歯先の向きに係る主たる2面がなす傾斜角は、図2(b)に示すように、主動部43の歯形43Aにおける個々の歯形状に対応する歯形状を有する。すなわち、第一の従動部44Aの歯形45Aにおける個々の歯において、主動部43の歯形43Aにおける個々の歯の前歯面43Aaに対応する歯面45Aaがなす傾斜角は約90度に、同様に後歯面43Abに対応する歯面45Abがなす傾斜角は約60度に形成される。
図2(a)に示す静止状態において、主動部43のそれぞれの歯形43A、43Bに対する第一および第二の従動部44A、44Bのそれぞれの歯形45A、45Bは、見掛け上、バネ41A、41Bの弾性力により噛み合い状態にある。この後、モータ9の駆動により主動部43が実線で示す矢印方向に回転すると、主動部43の歯形43Aの個々の歯が対応する第一の従動部44Aの歯形45Aの個々の歯に対してより近接して歯面間の圧接力を増すように挙動するため、歯形43Aと歯形45A間の噛み合い状態が維持できて第一の従動部44Aを回転することができる。一方、主動部43の歯形43Bの個々の歯は対応する第二の従動部44Bの歯形45Bの個々の歯から離間するように挙動し、終には歯形43Bの個々の歯が対応する歯形45Bの個々の歯に乗り上げて乗り越すことになるため、歯形43Bと歯形45Bの噛み合い状態が維持できず、第二の従動部44Bを回転することができない。
また、モータ9の駆動方向の切替により主動部43が破線で示す矢印方向に回転すると、主動部43の歯形43Bの個々の歯が対応する第二の従動部44Bの歯形45Bの個々の歯に対してより近接して歯面間の圧接力を増すように挙動するため、歯形43Bと歯形45B間の噛み合い状態が維持できて第二の従動部45Bを回転することができる。一方、主動部43の歯形43Aの個々の歯は対応する第一の従動部44Aの歯形45Aの個々の歯から離間するように挙動し、終には歯形43Aの個々の歯が歯形45Aの個々の歯に乗り上げて乗り越すことになるため、歯形43Aと歯形45Aの噛み合い状態が維持できず、第一の従動部44Aを回転することができない。
従って、穿孔装置1は、駆動源であるモータ9の駆動方向の切替により、第一の従動部44Aに連結するパンチ機構部Aを駆動するか、あるいは第二の従動部44Bに連結するパンチ機構部Bを駆動するか、を選択して切り替えることが可能なものとなる。そして、パンチ機構部Aの駆動では、2個のパンチ2Aa、2Abが穿孔駆動されてダイ孔3Aa、3Abと噛み合うことでシート材に2孔を穿孔できる。また、パンチ機構部Bの駆動では、3個のパンチ2Ba、2Bb、2Bcが穿孔駆動されてダイ孔3Ba、3Bb、3Bcと噛み合うことでシート材に3孔を穿孔できる。すなわち、穿孔装置1は、駆動源の駆動方向の切替により、シート材に対する穿孔数を2孔もしくは3孔に選択して切り替える切替機能を有するものとなる。
本発明における切替機構部は上述した構成に限らない。例えば、上述した切替機構部Cにおいて、モータ9配置を見直し、傘歯車であるギヤ10や駆動速度および駆動トルクを調整する平歯車である2段ギヤ11A、11Bなどの部品を置換することで別の形態に構成した切替機構部の一例を図6に示す。
図6に示す切替機構部は、モータ109を固設するフレーム108に両端を軸支して双方向に回転可能に構成した主動部143となる軸142と、該軸142を回転中心とする第一の従動部144Aおよび第二の従動部144Bを有する。
主動部143を構成する軸142は、軸142方向において、第一の従動部144A側に歯形143Aを有し、第二の従動部144B側に歯形143Bを有し、それぞれの歯形143A、143Bは軸142と一体に形成されている。そして、主動部143は、モータ109と第一および第二の従動部144A、144Bの両方に対して連結する。具体的には、主動部143は、モータ109に対してはモータ軸に固設したギヤ110に対して軸113で軸支したギヤ111および軸142に固設したギヤ112を介して連結し、第一および第二の従動部144A、144Bに対しては歯形143A、143Bによりそれぞれ連結し、軸142を回転中心としてモータ109の駆動方向の切替に対応して双方向に回転可能となっている。なお、軸142に固設したギヤ112も主動部143に含めても構わない。
また、第一および第二の従動部144A、144Bは、軸142方向において主動部143に有する歯形143A、143Bにそれぞれ対向する歯形145A、145Bを有する。また、それぞれの歯形145A、145Bは、主動部143に有する歯形145A、145B部分を挟み込むかのようにしてバネ141A、141Bの弾性力により主動部143側に適度に押圧されている。そして、第一の従動部144Aに有するギヤ144Aaに対して軸12Aで軸支したクランクギヤ4Aが連結し、第二の従動部144Bに有するギヤ144Baに対して軸12Bで軸支したクランクギヤ4Bが連結し、この構成によりモータ109の駆動力をパンチ機構部A、Bに対して伝達することができる。
具体的には、モータ109の駆動により主動部143が実線で示す矢印方向に回転した場合には、第一の従動部144A側では、歯形145Aが主動部143の歯形143Aと噛み合って第一の従動部144Aが主動部143に対して連結して回転するため、モータ109の駆動力はギヤ144Aaを介してパンチ機構部A側のクランクギヤ4Aへと伝達される。このとき、第二の従動部144B側では、主動部143の歯形143Bの個々の歯が対応する歯形145Bの個々の歯に乗り上げて乗り越すことになって第二の従動部144Bが主動部143に対して連結できず回転することがないため、モータ109の駆動力はパンチ機構部B側のクランクギヤ4Bに対しては伝達されない。
また、モータ109の駆動方向の切替により主動部143が破線で示す矢印方向に回転した場合には、第二の従動部144B側では、歯形143Bが主動部143の歯形145Bと噛み合って第二の従動部144Bが主動部143に対して連結して回転するため、モータ109の駆動力はギヤ144Baを介してパンチ機構部B側のクランクギヤ4Bへと伝達される。このとき、第一の従動部144A側では、主動部143の歯形143Aの個々の歯が対応する歯形145Aの個々の歯に乗り上げて乗り越すことになって第一の従動部144Aが主動部143に対して連結できず回転することがないため、モータ109の駆動力はパンチ機構部A側のクランクギヤ4Aに対しては伝達されない。
従って、上述した図6に示す切替機構部の構成によっても、駆動源であるモータ109の駆動方向の切替により、主動部143に対して第一の従動部144Aを連結して回転するとともに第二の従動部144Bを連結しないで回転しないようにしたり、あるいは主動部143に対して第二の従動部144Bを連結して回転するとともに第一の従動部144Aを連結しないで回転しないようにしたり、といった機能を得ることができる。
次に、穿孔装置1におけるパンチ機構部A、Bのそれぞれに備える梃子クランク機構について説明する。
穿孔装置1では、パンチ機構部A側のクランクギヤ4Aが2段ギヤ11Aを介して第一の従動部44Aのギヤ44Aaに連結し、パンチ機構部B側のクランクギヤ4Bが2段ギヤ11Bを介して第二の従動部44Bのギヤ44Baに連結する。具体的には、パンチ機構部Aは、回転運動するクランク部材となるクランクギヤ4Aと、一端が揺動可能となるように他端をピン14で軸支した梃子部材となる揺動アーム5Aと、揺動アーム5Aとクランクギヤ4Aとを連結するとともにパンチ2Aa、2Abが付設された連接部材となる連接アーム6Aと、シート材のシート面に対向配置したパンチフレーム7と、これら部材を繋ぐ前記ピン14およびピン15Aによって構成される。
同様に、パンチ機構部Bは、回転運動するクランク部材となるクランクギヤ4Bと、一端が揺動可能となるように他端をピン14で軸支した梃子部材となる揺動アーム5Bと、揺動アーム5Bとクランクギヤ4Bとを連結するとともにパンチ2Ba、2Bbが付設された連接部材となる連接アーム6Bと、フレーム8とで固定部材となるパンチフレーム7と、これら部材を繋ぐ前記ピン14およびピン15Bによって構成される。
梃子クランク機構において駆動力の入力側となるクランクギヤ4A、4Bは、それぞれ軸12A、12Bから所定の離間位置に駆動ピン13A、13Bを具備し、それぞれ軸12A、12B回りに回転可能に構成される。そして、モータ9の回転により切替機構部Cを介してクランクギヤ4A、4Bが回転運動することで、駆動ピン13A、13Bは所定の回転半径で回転軌跡を描いて回転運動できる。従って、クランクギヤ4A、4Bは、クランクとしての機能を有することができ、梃子クランク機構をなすクランク部材となる。
連接アーム6A、6Bは、クランクギヤ4A、4Bに具備する駆動ピン13A、13Bに対して連結し、かつ、ピン15A、15Bにより揺動アーム5A、5Bに対して連結し、ダイ孔3Aa、3Abの孔列方向に沿うように配置される。この構成により、連接アーム6A、6Bは、クランクギヤ4A、4Bの駆動ピン13A、13Bと揺動アーム5A、5Bとを連結しながら、駆動ピン13A、13Bおよびピン15A、15Bの個所を揺動支点として揺動可能となる。従って、連接アーム6A、6Bは、連接棒としての機能を有することができ、梃子クランク機構をなす連接部材となる。
揺動アーム5A、5Bは、パンチフレーム7で軸支したピン14に対して一端を固設し、他端はピン15A、15Bにより連接アーム6A、6Bに対して連結する。そして、ピン14をパンチフレーム7で支持して回転可能になす。この構成により、揺動アーム5A、5Bは、ピン14を揺動支点として揺動可能となる。従って、揺動アーム5A、5Bは、梃子としての機能を有することができ、梃子クランク機構をなす梃子部材となる。なお、揺動アーム5A、5Bの一端の支持は固定リンクとしての機能を有する後述する固定部材のいずれかを利用して行えばよい。
また、上述したピン14には、揺動アーム5Aと一体となって同期回転するディテントカム50A、および揺動アーム5Bと一体となって同期回転するディテントカム50Bが固設される。また、パンチフレーム7には、ディテントカム50A、50Bに形成したそれぞれの凹部に対し、それぞれ嵌り込み可能な凸部を有してなるディテントバネ51A、51Bが固設される。この構成により、ピン14の移動により、ディテントバネ51A、51Bの凸部いずれかが、もしくはいずれもが、ディテントカム50A、50Bの凹部に嵌り込む位置関係となった場合は、凸部が凹部から離脱できる程の駆動力がピン14に作用しない限り、揺動アーム5A、5Bはその位置から揺動できずに振れ止めされる。従って、揺動アーム5A、5Bと連結する連接アーム6A、6B、さらにこれに連結するクランクギヤ4A、4Bもまた振れ止めされる。
穿孔装置1において、梃子クランク機構における固定リンクとしての機能は、パンチフレーム7により揺動アーム5A、5Bの一端を支持し、フレーム8に固設した軸12A、12Bによりクランクギヤ4A、4Bを軸支し、かつ、パンチフレーム7とフレーム8とを一体に組み立てる構造体によって得られる。さらに、ダイフレーム20もまた、パンチフレーム7と一体に組み立てることで固定リンクとしての機能を有することができる。なお、パンチフレーム7とダイフレーム20は、パンチ機構部A、Bで共有可能に構成できる。これらパンチフレーム7、フレーム8、ダイフレーム20は、構造体として一体化することで、穿孔装置1における固定部材となる。
穿孔装置1では、上述したように連接アーム6Aに対して2個のパンチ2Aa、2Abが付設され、連接アーム6Bに対して3個のパンチ2Ba、2Bb、2Bcが付設される。パンチ2Aa、2Abはその刃先と反対側の一端に設けたパンチ取付部30Aa、30Abに対してパンチピン31Aa、31Abが貫通して固設される。パンチ2Ba、2Bb、2Bcに対するパンチ取付部30Ba、30Bb、30Bcおよびパンチピン31Ba、31Bb、31Bcの関係も同様である。そして、パンチ取付部30Aa、30Abは、連接アーム6Aに設けた2個の長孔17Aa、17Abを連通する係止ピン18Aa、18Abが貫通することで係止される。同様に、パンチ取付部30Ba、30Bb、30Bcは、連接アーム6Bに設けた3個の長孔17Ba、17Bb、17Bcを連通する係止ピン18Ba、18Bb、18Bcが貫通することで係止される。
また、それぞれのパンチ2Aa、2Ab、2Ba、2Bb、2Bcは、パンチフレーム7に設けたそれぞれのパンチ案内部16Aa、16Ab、16Ba、16Bb、16Bcに挿入され、これにより穿孔方向および離間方向に移動自在に案内される。なお、連接アーム6A、6Bに設けた長孔17Aa、17Ab、17Ba、17Bb、17Bcには、それぞれクランクギヤ4A、4B側に近づくに従って傾斜角度が大きくなるように、それぞれに好適となる所定の傾斜を設けている。
連接アーム6A、6Bが穿孔方向へ接近するとき、揺動する連接アーム6A、6Bはシート材に対して平行を維持しながら移動することがないため、シート材とそれぞれのパンチ2Aa、2Ab、2Ba、2Bb、2Bcの刃先との距離は、連接アーム6A、6Bの長手方向における付設位置によって差を生じる。そこで、それぞれのパンチ2Aa、2Ab、2Ba、2Bb、2Bcの穿孔方向への移動量を同等量に近似するために、当該付設位置における差分に対応して長孔17Aa、17Ab、17Ba、17Bb、17Bcの傾斜角度を調整することが望ましい。
以上、穿孔装置1において、パンチ機構部Aでは、クランクギヤ4A、駆動ピン13A、連接アーム6A、ピン15A、揺動アーム5Aの間を連結し、固定リンクを形成するかのようにクランクギヤ4Aの回転中心すなわち軸12A軸心とピン14軸心との間をパンチフレーム7およびフレーム8とで固定し、この構成によりクランクギヤ4A、連接アーム6A、揺動アーム5Aの連動によるパンチ2Aa、2Abの穿孔駆動が可能となる。同様に、パンチ機構部Bでは、クランクギヤ4B、駆動ピン13B、連接アーム6B、ピン15B、揺動アーム5Bの間を連結し、固定リンクを形成するかのようにクランクギヤ4Bの回転中心すなわち軸12B軸心とピン14軸心との間をパンチフレーム7およびフレーム8とで固定し、この構成によりクランクギヤ4B、連接アーム6B、揺動アーム5Bの連動によるパンチ2Ba、2Bb、2Bcの穿孔駆動が可能となる。
上述した本発明における梃子クランク機構に関し、その機構学的な特徴や好適と考える構成について、パンチ機構部Aを例に挙げて説明する。なお、特に断りのない限り、パンチ機構部Bに対しても同様に該当する。
本発明において梃子クランク機構は、式:(CA+RA)<(LA+FA)の関係が成立するように各部材を配置する。ただし、CAは駆動ピン13Aの軸心と軸12Aの軸心の離間距離、RAは駆動ピン13Aの軸心とピン15Aの軸心の離間距離、LAはピン14の軸心とピン15Aの軸心の離間距離、FAは軸12Aの軸心とピン14の軸心の離間距離である。
この配置において、式:LA>CAの関係を成立させることで、パンチをより安定して穿孔駆動することができる。なお、ピン14が梃子の対偶に対応し、クランクギヤ4Aの回転中心つまり軸12Aの軸心がクランクの対偶に対応し、軸12Aの軸心とピン14の間の離間距離がそれぞれの固定リンクの長さに対応する。
また、クランクギヤ4Aの回転角度に応じた駆動ピン13Aおよび揺動アーム5Aなどの位置関係を、連接アーム6Aがシート材のシート面に対して水平状態に位置するときに揺動アーム5Aがシート面に対して垂直状態に位置できるように、調整することが望ましい。梃子クランク機構に対して駆動力を与えたとき、揺動アーム5Aの姿勢が揺動によりシート面に対する垂直状態から水平状態に近づいていく。このとき、連接アーム6Aに生じるシート面に対する垂直方向の駆動力は、クランクギヤ4Aおよび揺動アーム5Aのそれぞれの運動によって次第に大きくなっていく。
従って、揺動アーム5Aの揺動による連接アーム6Aの揺動によりパンチ2Aa、2Abがシート材に対して穿孔駆動するとき、揺動アーム5Aの待機位置での姿勢をできる限りシート面に対する垂直状態に近い姿勢にすることによって大きな穿孔力を得ることができる。加えて、パンチ2Aa、2Abの穿孔方向に対して大きな移動量を得ることができ、シート材穿孔装置のコンパクト化に有効となる。
また、穿孔装置1を穿孔前の待機状態にしたとき、シート材のシート面に対し、揺動アーム5Aはできる限り垂直状態に、連接アーム6Aにおけるパンチ2Aa、2Abの付設点はできる限り水平状態に、クランクギヤ4Aにおいて回転中心すなわち軸12A軸心と駆動ピン13A軸心とはできる限り水平状態に、それぞれ位置するように構成することが望ましい。この構成により、連接アーム6Aはシート面に対して水平に近い姿勢を保ちながら揺動でき、連接アーム6A動作に要する空間容積を低減でき、シート材穿孔装置のコンパクト化に有効となる。
加えて、連接アーム6Aにおいて、揺動アーム5A側のパンチ2Aaの穿孔方向への移動量を大きくすることで、それぞれのパンチ2Aa、2Abの穿孔方向への移動量を近似することができる。これによりパンチ自体やパンチの案内部などに係る部材の共通化が可能となり、シート材穿孔装置の低コスト化に有効となる。
次に、本発明のシート材穿孔装置の穿孔動作について、穿孔装置1を例に挙げ、図1〜図5を適宜用いて説明する。なお、図3は、穿孔装置1のパンチ機構部Aを駆動し、図1(b)に示す待機位置からシート材に2孔を穿孔した後に最下位置に到った状態を示す。また、図4は、穿孔装置1のパンチ機構部Bを駆動し、図1(b)に示す待機位置からシート材に3孔を穿孔したした後に最下位置に到った状態を、図1(b)とは反対方向の視点から示す。また、図5は、穿孔装置1を用いてシート材に2孔を穿孔する場合の一連の穿孔動作を示す。ただし、構成の明確化のために、各図においてはシート材を略し、図5では切替機構部Cおよびパンチ機構部Bなどを、図3ではディテントカム50Bおよびディテントバネ51Bを、図4ではディテントカム50Aおよびディテントバネ51Aを略して示す。
穿孔装置1において、モータ9の始動前は、バネ41Aで押圧された第一の従動部44Aの歯形45Aは主動部43の歯形43Aに対して見掛け上は噛み合い状態にある。モータ9の駆動により主動部43がギヤ10を介して図2に実線で示す矢印方向に回転し始めると、主動部43の歯形43Aは第一の従動部44Aの歯形45Aとの歯面間の接触圧力を高める方向へ挙動し、歯形43Aと歯形45Aの噛み合いが強化される。以降、モータ9が当該方向への駆動を継続する限り、歯形43Aと歯形45Aの噛み合い状態は維持される。従って、第一の従動部44Aは、主動部43に対する連結が確実となって、実線で示す矢印方向に回転することができる。
一方、穿孔装置1において、モータ9の駆動により主動部43がギヤ10を介して図2に破線で示す矢印方向に回転し始めると、主動部43の歯形43Aは第一の従動部44Aの歯形45Aとの歯面間を離間する方向へ挙動し、歯形43Aと歯形45Aの噛み合いは解消される。そして、終には、主動部43の歯形43Aの個々の歯は対応する第一の従動部44Aの歯形45Aの個々の歯に乗り上げて乗り越してしまう。以降、モータ9が当該方向への駆動を継続する限り、歯形43Aと歯形45Aは上述したように噛み合うことができない。従って、第一の従動部44Aは、主動部43に対して連結できないため回転することがない。
また、穿孔装置1では、パンチ機構部A側が待機位置にある状態ではディテントカム50Aの凹部に対してディテントバネ51Aの凸部が嵌り込むように構成している。この構成がパンチ機構部A側の梃子クランク機構におけるディテント機構として作用し、揺動アーム5Aが振れ止めされて揺動できないため、この揺動アーム5Aに連接アーム6Aを介して連結しているクランクギヤ4Aもまた回転することができない。従って、パンチ機構部Aは上述した乗り越え反力により穿孔駆動することがない。
上述した駆動源の駆動方向に対するパンチ機構部Aの駆動または非駆動の関係は、パンチ機構部Bの場合には反対関係となる。すなわち、パンチ機構部Bは、モータ9の駆動により主動部43が図2に破線で示す矢印方向に回転することで第二の従動部44Bが回転して駆動され、主動部43が実線で示す矢印方向に回転しても第二の従動部44Bが回転しないため駆動されない。よって、パンチ機構部としての動作自体は同様であることから以下、上述した主動部43および第一の従動部44Aの回転によるパンチ機構部Aの一連の穿孔動作について説明し、第二の従動部44Bの回転によるパンチ機構部Bの一連の穿孔動作については説明を略す。
穿孔装置1において、モータ9の駆動により主動部43が回転してギヤ43aが実線で示す矢印方向に回転し始めると、歯形43Aと歯形45Aとが噛み合って第一の従動部44Aが実線で示す矢印方向に回転し始め、さらに2段ギヤ11Aを介してクランクギヤ4Aが実線で示す矢印方向に回転し始める。このとき、主動部43に対して上述したように連結することができない第二の従動部44Bは回転することがない。
従って、この場合は、パンチ機構部Aは駆動し、パンチ機構部Bは駆動しないことになり、この後もパンチ機構部Aだけが駆動することになる。なお、穿孔装置1では、それぞれのパンチ2Aa、2Ab、2Ba、2Bb、2Bcの穿孔方向への移動量やシート面との位置関係が適正となるように、それぞれの長孔17Aa、17Ab、17Ba、17Bb、17Bcの傾斜角度などを調整している。
パンチ機構部Aにおいては、上述したクランクギヤ4Aの回転により、すなわち図5(a)に矢印49で示す回転により、駆動ピン13Aが所定の回転半径を持って回転軌跡を描きながら回転運動し、これにより連接アーム6Aがパンチの穿孔方向に揺動し始める。このとき、主動部43の歯形43Aと第一の従動部44Aの歯形45Aとが十分に噛み合っているため、ディテントバネ51Aの凸部がディテントカム50Aの凹部から離脱できるだけの駆動力が伝達される。
さらに駆動ピン13Aが回転運動するとき、シート材のシート面に対して水平状態の姿勢にあった図5(a)に示す連接アーム6Aは、クランクギヤ4Aの駆動ピン13Aに連結した連接アーム6Aの一端側が、駆動ピン13Aの回転運動に対して追従運動してシート材から離間する方向に移動する。また、連接アーム6Aの揺動アーム5Aにピン15Aで連結された他端側に着目すると、揺動アーム5Aのピン15A側がピン14を揺動支点として穿孔方向と交差する方向に移動するため、連接アーム6Aのピン15A側が、あたかも揺動アーム5Aの移動に対して追従運動するかのように動作してシート材に近づく方向へ移動する。上述した動作により、駆動ピン13Aが最上点の位置を通過し、クランクギヤ4Aが穿孔前の待機状態の位置から約120度まで回転し、図5(b)に示す状態となる。
連接アーム6Aの姿勢が図5(b)に示す状態にあるとき、揺動アーム5A側に位置するパンチ2Aaは、図5(a)に示す待機位置にあるときのパンチ2Aaよりも若干シート材へ近づく方向へ移動している。また、クランクギヤ4A側に位置するパンチ2Abは、待機位置にあるときのパンチ2Abよりも若干シート材から離間する方向へ移動している。この状態からさらにクランクギヤ4Aが矢印49で示す方向に回転すると、連接アーム6Aの駆動ピン13A側およびピン15A側がともにシート材に近づく方向に移動するようになるため、2個のパンチ2Aa、2Abはともにシート材へ近づく方向へ移動するようになる。
このとき、クランクギヤ4Aの駆動ピン13Aの回転半径、軸12Aの位置、および揺動アーム5Aの長さの調整により、上述したように連接アーム6Aのシート材に近づく方向への移動のタイミングを駆動ピン13A側とピン15A側とで異なるものにできるため、これにより2個のパンチ2Aa、2Abの穿孔駆動を異なるタイミングに設定できる。個々のパンチによるシート材への穿孔を異なるタイミングで行うことにより、より小さい穿孔力による穿孔が可能となって駆動力を低減でき、駆動源の小型化が可能となる。
穿孔装置1のパンチ機構部Aでは、2個のパンチ2Aa、2Abは異なるタイミングで穿孔駆動する。クランクギヤ4Aの回転が図5(b)に示す約120度に達すると、まずパンチ2Aaの刃先がダイ孔3Aaに到達する。そして、クランクギヤ4Aの回転が図5(c)に示す約150度に達する頃には、パンチ2Abの刃先がダイ孔3Abに到達する。なお、クランクギヤ4Aが約150度まで回転した場合に、ピン15Aの個所において揺動アーム5Aと連接アーム6Aとがなす角度は約155度となり、揺動アーム5Aの揺動角度は図5(a)に示す状態の位置から約65度となるように設定している。
さらに、クランクギヤ4Aの回転が図5(d)に示す170度を超える状態に達するまでには、2個のパンチ2Aa、2Abによるシート材への2孔の穿孔が終了する。この後は、クランクギヤ4Aの回転とともに、連接アーム6Aがそのピン15A側が最下点の位置に達した後にシート材から離間する方向へと移動方向を転じ、次いで2個のパンチ2Aa、2Abが最下点の位置に達した後に移動方向を転じるように移動する。
上述したパンチ機構部Aの一連の穿孔動作において、2個のパンチ2Aa、2Abの移動は、それぞれのパンチ2Aa、2Abの長さやこれを係止する長孔17Aa、17Abの傾斜の有無や傾斜角度を違えることで調整できる。例えば、図1(b)に示す穿孔装置1のように、長孔17Aa、17Abに傾斜を設け、かつ、長孔17Aa、17Abのクランクギヤ4Aに近い側の傾斜が大きくなるように傾斜角度を違えることにより、それぞれのパンチ2Aa、2Abの移動量をほぼ同じに調整できる。これにより、それぞれのパンチ2Aa、2Abに係るパンチ案内部16Aa、16Abなどの部材の共通化が可能となる。
従って、穿孔装置1は、切替機構部Cにおいて、駆動源であるモータ9が一方駆動して主動部43が図2において実線で示す矢印方向へ回転すると、第一の従動部44Aが主動部43に対して連結して回転し、かつ、第二の従動部44Bが主動部43に対して連結せずに回転しないため、パンチ機構部Aの梃子クランク機構だけが駆動されて2個のパンチ2Aa、2Abが穿孔駆動し、シート材に2孔を穿孔することができる。あるいは、駆動源であるモータ9の駆動方向の切替により、モータ9が他方駆動して主動部43が破線で示す矢印方向へ回転すると、第二の従動部44Bが主動部43に対して連結して回転し、かつ、第一の従動部44Aが主動部43に対して連結せずに回転しないため、パンチ機構部Bの梃子クランク機構だけが駆動されて3個のパンチ2Ba、2Bb、2Bcが穿孔駆動し、シート材に3孔を穿孔することができる。
以上、本発明における切替機構部によれば、2組のパンチ機構部A、Bの駆動を駆動源の駆動方向の切替により選択し、パンチ機構部Aに具備するパンチを穿孔駆動してシート材に穿孔することもできるし、パンチ機構部Bに具備するパンチを穿孔駆動してシート材に穿孔することもできる、切替機構を有するシート材穿孔装置を得ることができる。加えて、本発明における梃子クランク機構を適用したパンチ機構部によれば、パンチの穿孔駆動機構の簡素化や、駆動力の変換損失の低減およびこれによる駆動源の小型化が可能となるため、コンパクト性、省エネルギー性、コスト性などの点で優れたシート材穿孔装置を得ることができる。
従って、例えば、主に北米圏で多く利用される孔間距離が70mmなどの2孔と孔間距離が108mmなどの3孔の切替を可能とすべく、シート材への穿孔位置に対応するようにパンチ機構部Aに2個のパンチを具備し、パンチ機構部Bに3個のパンチを具備し、パンチ機構部Aを駆動してシート材に2孔を穿孔するか、あるいはパンチ機構部Bを駆動してシート材に3孔を穿孔するかの選択により、シート材に対する穿孔数を2孔か3孔に選択可能な切替機能を有する本発明の一例となるシート材穿孔装置を得ることができる。
また、例えば、主に欧州圏で多く利用される孔間距離が80mmなどで2孔と4孔の切替を可能とすべく、シート材への穿孔位置に対応するようにパンチ機構部Aに2個のパンチを具備し、パンチ機構部Bに4個のパンチを具備し、パンチ機構部Aを駆動してシート材に2孔を穿孔するか、あるいはパンチ機構部Bを駆動してシート材に4孔を穿孔するかの選択により、シート材に対する穿孔数を2孔か4孔に選択可能な切替機能を有する本発明の一例となるシート材穿孔装置を得ることができる。