JP2011097159A - 電子機器、電子機器による音響処理方法 - Google Patents

電子機器、電子機器による音響処理方法 Download PDF

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淳 黒田
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Abstract

【課題】音量変化による音質変化が人間の聴感上発生しないようにすること。
【解決手段】本発明の電子機器は、音量設定を調整する音量設定調整部と、等ラウドネスカーブに基づいて、各音量設定に対し、音声信号に乗算する周波数応答関数を割り当てたテーブルと、音声信号に対し、その時点の音量設定に応じた周波数応答関数を乗算する乗算部と、を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、電子機器、電子機器による音響処理方法に関する。
携帯電話などの電子機器の多くは、ユーザーが音声(音楽を含む。以下、同じ)を聴くことが可能となっている。例えば、特許文献1に開示されているようなヘッドフォンが接続可能な電子機器、音を鳴動させることができるスピーカやレシーバなどの音響デバイス自体を具備している電子機器、ブルートゥース(Bluetooth)や無線LAN(Local Area Network)などの通信手段を用いて音声を送受信可能な電子機器などである。
当然、これらの電子機器には、電子機器本体もしくは電子機器から送出された音声信号を受け取る再生機器側に、音量(人間が感じる感覚量としての音の大きさ。以下、同じ)を調整する音量調整機能が備えられている。そのため、ユーザーは、用途や使用シーンに応じて、音量を自由にコントロールすることができる。
特開2009−212772号公報
しかしながら、図8のFletcher−Munsonの等ラウドネスカーブ1に示される通り、人間の耳は、音量(図中の「phon」)が低下するにしたがって、低音域と高音域の音量が全体の音量よりも低下し、著しい音質変化があったように感じる。
ところが、関連する電子機器は、音量変化による音質変化を補正する機能を具備していない。
そこで、本発明の目的は、音量変化による音質変化が人間の聴感上発生しないようにすることができる電子機器、電子機器による音響処理方法を提供することにある。
本発明の電子機器は、
音声信号の音響処理を行う電子機器であって、
音量設定を調整する音量設定調整部と、
等ラウドネスカーブに基づいて、各音量設定に対し、音声信号に乗算する周波数応答関数を割り当てたテーブルと、
音声信号に対し、その時点の音量設定に応じた周波数応答関数を乗算する乗算部と、を有する。
本発明の音響処理方法は、
電子機器による音声信号の音響処理方法であって、
等ラウドネスカーブに基づいて、各音量設定に対し、音声信号に乗算する周波数応答関数を割り当てたテーブルを格納するステップと、
音量設定を調整するステップと、
音声信号に対し、その時点の音量設定に応じた周波数応答関数を乗算するステップと、を有する。
本発明によれば、等ラウドネスカーブに基づいて、各音量設定に対し、周波数応答関数を割り当て、音声信号に対し、その時点の音量設定に応じた周波数応答関数を乗算するため、音量調整時に、音量変化による音質変化が人間の聴感上発生しないようにすることができるという効果が得られる。
本発明の第1、第2、及び第4の実施形態の電子機器の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態の電子機器の動作を、ラウドネスレベル周波数特性として示す図である。 本発明の第1の実施形態におけるDSPの内部とデジタルゲイン調整部の内部を模式的に示す図である。 本発明の第2の実施形態におけるDSPの内部とデジタルゲイン調整部の内部を模式的に示す図である。 本発明の第3の実施形態の電子機器の構成を示すブロック図である。 本発明の第4の実施形態におけるDSPの内部とデジタルゲイン調整部の内部を模式的に示す図である。 本発明の第4の実施形態の電子機器の動作を、ラウドネスレベル周波数特性として示す図である。 等ラウドネスカーブを示す図である。
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
以下では、本発明を、ヘッドフォンが接続されて、ヘッドフォンから音声を出力する電子機器に適用した場合を例に挙げて説明する。
(第1の実施形態)
図1に示されているように、本実施形態の電子機器は、音源2から出力された音声信号を処理し、処理した音声信号を音声としてヘッドフォン8から出力するものである。
本実施形態の電子機器は、音源2から出力された音声信号を処理する構成要素として、DSP(Digital Signal Processor:デジタル信号処理プロセッサ)3と、音量設定調整部となるデジタルゲイン調整部4と、D/Aコンバータ5と、アナログゲイン調整部6と、ヘッドフォンアンプ(Amp)7と、を有している。
DSP3は、音源2から出力された音声信号の音響処理(イコライザ(Equalizer)、コンプレッサ(Compressor)、サラウンド(Surround)など)を行う。なお、DSP3内のコンプレッサには、電子機器の音量設定の状況に応じて、マルチバンドコンプレッサ(Multiband Compressor)またはシングルバンドコンプレッサ(Single band Compressor)のどちらかが用いられる。
デジタルゲイン調整部4は、音声信号のデジタルゲインを調整する。
D/Aコンバータ5は、音声信号をD/A変換する。
アナログゲイン調整部6は、音声信号のアナログゲインを調整する。
ヘッドフォンアンプ7は、音声信号を増幅する。
ヘッドフォン8は、音声信号に応じた音を出力する。
なお、本実施形態の電子機器においては、音量設定の調整は、デジタルゲイン調整部4によりデジタルゲインを変化させて行う。
以下、本実施形態の電子機器の動作について説明する。
なお、以下の説明では、定性的かつ簡単に説明を行うことを目的として、時系列及び周波数系列は、連続的な解析式として記載する。
また、音声信号の信号レベルは、デジタルフルスケール(dBFs)に対するデジタルスケール値を示すものとし、単位をdBとする。
また、電子機器の音量設定は0(消音)からn(n∈N)までの(n+1)段階あるものとする。ここで、音量0時は消音状態であり、音量nは最大の音量である。また、音量は、0からnに向かって1ステップずつ増加させることができるものとする。
ここで、電子機器の各音量の設計を考える際に、標準的な音源2から出力された標準の信号レベルの音声信号と位置づけられるインパルス信号をaδ(t)[dB Fs]とする。ここで、aは実数定数、δ(t)はディラックのδ関数である。
音源2からのインパルス信号aδ(t)[dB Fs]をDSP3に入力した時のヘッドフォンアンプ7からの出力であるインパルス応答を下記のように定める。
Figure 2011097159
また、この畳み込み積分、すなわち伝達関数の周波数応答を、
Figure 2011097159
とする。ここで、
Figure 2011097159
である。なお、サフィックスkは、音量0からnまでに対応している。
k(f)には、デジタルゲイン調整部4で調整されたゲインが加算され、また、DSP3内部のイコライザ、コンプレッサ、サラウンドなど各種音響処理の伝達関数が乗算される。
しかし、音量kによってYk(f)が変化するのは、デジタルゲイン調整部4により音声信号全体の信号レベルが変化することに加えて、D/Aコンバータ5、アナログゲイン調整部6などでの各周波数における電気的な入出力線形性や、ヘッドフォン8での機械音響的な入出力線形性が損なわれることによる。
ここで、数式2で定義したYk(f)の集合(列ベクトル)は、音圧周波数特性に対応するものである。これに更に、Yk(f)の集合の周波数特性として、図8の等ラウドネスカーブ1の逆特性、すなわち、音圧(音による気圧からの圧力変化量。単位はdBPa,dBsplなど。以下、同じ)からラウドネスレベル周波数特性への写像Gkの終域Lk(f)を下記の通り定義する。なお、Gk、Lk(f)も、数式1及び数式2と同様に、列ベクトルとなるが、次式では、k番目についてのみ、写像と終域との対応を記載する(以後も同様)。
Figure 2011097159
以上の定義から、最大音量nに対するラウドネスレベル周波数特性Ln(f)は、次式で表される。
Figure 2011097159
また、最大音量nに比して、十分に音量が下げられた音量kに対するラウドネスレベル周波数特性Lk(f)は、次式で表される。
Figure 2011097159
図2に、ラウドネスレベル周波数特性Ln(f),Lk(f)の概念図を示す。
図2において、曲線9はLn(f)を表し、曲線10はLk(f)を表す。また、音声の帯域を考えた際の最低周波数をf1、最大周波数をf3、曲線9、10が最大となる周波数をf2とする。通常、f1、f2、f3は、以下のようになる。
Figure 2011097159
Figure 2011097159
Figure 2011097159
また、f2における曲線9と曲線10の差分をαkとする。すなわち、
Figure 2011097159
さて、図2に示されているように、f2においては、曲線9と10の差分はαkである。
しかしながら、図8の等ラウドネスカーブ1の特性からみて自明な通り、最低周波数f1、最大周波数f3では、その差分がαkよりも大きくなる。これが、本発明で課題としている、音量を変化させたときに音質が変化したように人間の耳に聞こえる原因である。
上記を解決するためには、fの帯域内全域にわたって、上記の曲線9との差分がほぼαkと等しくなる写像Hkを見出せばよい。
すなわち、下記を満たす写像Hkとその終域Mk(f)を新たに定義する。
Figure 2011097159
Figure 2011097159
ただし、k=nに対しては、αk=n=0であり、
Figure 2011097159
と定義すればよいことがわかる。なお、図2において、11はMk(f)の曲線を表す。
以上から、本発明の課題を解決するためには、等ラウドネスカーブに基づいて、各音量設定(音量k)に対し、写像(周波数応答関数)Hkを割り当てたテーブルを作り、元の音声信号に対して、その時点の音量設定(音量k)に応じた写像Hkを乗算すればよい。なお、上記テーブルは、DSP3の内部の不図示のメモリ、または、不図示の外部メモリに格納可能である。また、写像Hkの乗算は、DSP3またはD/Aコンバータ5の内部において、IIR(Infinite impulse response)フィルタやFIR(Finite impulse response)フィルタなどを用いて行うことができる。
本実施形態においては、DSP3の内部において、元の音声信号に対する写像Hkの乗算を行う。
図3に、DSP3の内部とデジタルゲイン調整部4の内部を、上記の写像Hkの対応がわかりやすいように模式的に示す。
図3に示されているように、DSP3は、音響処理部12と、乗算部となる各音量対応フィルタ13と、を有している。
音源2から出力された音声信号は、DSP3に入力されるが、まず、DSP3の音響処理部12で、音響処理(イコライザ、コンプレッサ、サラウンドなど)が必要に応じて行われる。
次に、音声信号は、上記で説明した通り、DSP3の各音量対応フィルタ13により、後にデジタルゲイン調整部4により調整される音量設定(音量k)14に応じた写像Hkの乗算処理をされる。なお、DSP3は、不図示のCPU(Central Processing Unit)に接続されており、CPUから音量kが通知される。
その後、音声信号は、デジタルゲイン調整部4により、音量が決定され、D/Aコンバータ5へと出力され、最終的に、ヘッドフォン8から音声として出力される。
以下、本実施形態の効果について説明する。
仮に、図1のデジタルゲイン調整部4によって、音量を増減させただけの場合、最大音量nから十分に下がった音量k時には、図8の等ラウドネスカーブ1に示される通り、低音域と高音域において、音量がより大きく減少したように人間の耳には聞こえる。
すなわち、図2に示されるように、低音域(f1)と高音域(f3)においては、周波数f2における音量差分αk以上に大きな、Ln(f1)−Lk(f1)、及び、Ln(f3)−Lk(f3)の音量差分が発生し、音質が著しく変化したように聞こえる。
これに対して、本実施形態は、等ラウドネスカーブに基づいて、各音量設定(音量k)に対して写像Hkを決定し、元の音声信号に対し、その時点の音量設定(音量k)に応じた写像Hkを乗算する。
これにより、図2に示される通り、帯域全域にわたって、最大音量n時と音量k時の音量差分がαkとなり、人間の聴感上、音質が変化せず保たれているように感じられる。
すなわち、ヘッドフォン8から出力される音は、いかなる音量においても音質が同等に聞こえるよう調整されたものとなり、ユーザーにとって音質が著しく変化することを避けることができるため、本発明の目的が達せられる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、上記のテーブルは、1個の音量設定に対して、1個の写像Hkを割り当てたものとなっている。
しかし、数個の音量設定分で等ラウドネスカーブの変化、高音域、低音域の音量差分が現れる程度であれば、これら数個の音量設定に対して、1個の写像Hkを割り当てれば十分である。
そこで、本実施形態においては、図4に示されるように、上記のテーブルは、等ラウドネスカーブの変化、高音域、低音域の音量差分が現れない複数個の音量設定に対して、1個の写像Hkを割り当てたものとなっている。
(第3の実施形態)
図5に示されるように、本実施形態は、図1の第1の実施形態と比較して、DSP3とデジタルゲイン調整部4の配置位置が逆となっている。
ただし、第1の実施形態の場合、音量kによりYk(f)が変化するのは、デジタルゲイン調整部4により音声信号全体の信号レベルが変化するのみであったが、本実施形態の場合、音量変化がDSP3内部の音響処理、特に、コンプレッサなどの処理に影響を与え、周波数特性が変化しうるので、写像Hkの導出の際には注意が必要である。
(第4の実施形態)
上述の実施形態においては、音声信号に対して乗算する写像Hkを使用する。この場合に留意すべき点として、低音域と高音域の補正量(図2のLn(f1)−Mk(f1)、Ln(f3)−Mk(f3))が大きく、音源2から出力される音声信号の信号レベルが高い場合には、デジタルクリップによる信号波形の歪が発生することがある。
これを防止するために、本実施形態においては、図6に示されるように、各音量対応フィルタ13の後段にマルチバンドコンプレッサ15を設置する。
一般的に、マルチバンドコンプレッサは、音声信号をフィルタにより複数の周波数帯域に分割し(通常は2〜4バンド)、分割された各周波数帯域の音声信号の信号成分に対して、コンプレッサ処理を行い、その後に、分割された各周波数帯域の音声信号の信号成分同士を加算するものである。
本実施形態においては、マルチバンドコンプレッサ15により、音声信号の低音域と高音域の信号成分に対して、音声信号の信号レベルに応じたコンプレッサ処理(ダイナミックレンジの圧縮処理、補正処理)を行うことにより、各音量対応フィルタ13での低音域と高音域の補正量を小さくする。
すなわち、本実施形態においては、DSP3の内部において、一旦、コンプレッサ処理を行い、音声信号の信号レベルの平均化を行った上で、各音量対応フィルタ13内部でデジタルクリップを避けながら低音域と高音域での補正を行う。更に、マルチバンドコンプレッサ15において、低音域と高音域のコンプレッサ処理を行い、デジタルゲイン調整部4においてもデジタルクリップがないようにする。
マルチバンドコンプレッサ15のコンプレッサ処理による写像をIk、写像IkによるMk(f)の終域をNk(f)とすると、Ik及びNk(f)は次式で表される。
Figure 2011097159
Figure 2011097159
Figure 2011097159
図7に、上記の動作をラウドネスレベル周波数特性として示す。
曲線16は、音声信号の信号レベルが小さい場合のNk(f)である。この場合、マルチバンドコンプレッサ15による圧縮量(Mk(f)−Nk(f))、すなわち、補正の制限量は小さい。
曲線17は、音声信号の信号レベルが大きい場合のNk(f)である。この場合、マルチバンドコンプレッサ15による圧縮量(=補正の制限量)は大きい。
1 等ラウドネスカーブ
2 音源
3 DSP
4 デジタルゲイン調整部
5 D/Aコンバータ
6 アナログゲイン調整部
7 ヘッドフォンアンプ
8 ヘッドフォン
9 Ln(f)の曲線
10 Lk(f)の曲線
11 Mk(f)の曲線
12 音響処理部
13 各音量対応フィルタ
14 音量設定
15 マルチバンドコンプレッサ
16 Nk(f)の曲線(圧縮量が小さい場合)
17 Nk(f)の曲線(圧縮量が大きい場合)

Claims (8)

  1. 音声信号の音響処理を行う電子機器であって、
    音量設定を調整する音量設定調整部と、
    等ラウドネスカーブに基づいて、各音量設定に対し、音声信号に乗算する周波数応答関数を割り当てたテーブルと、
    音声信号に対し、その時点の音量設定に応じた周波数応答関数を乗算する乗算部と、を有する電子機器。
  2. 前記テーブルは、1個の音量設定に対し、1個の周波数応答関数を割り当てたものである、請求項1に記載の電子機器。
  3. 前記テーブルは、複数個の音量設定に対し、1個の周波数応答関数を割り当てたものである、請求項1に記載の電子機器。
  4. 音声信号の低音域と高音域の信号成分に対して、音声信号の信号レベルに応じたコンプレッサ処理を行うことマルチバンドコンプレッサをさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器。
  5. 電子機器による音声信号の音響処理方法であって、
    等ラウドネスカーブに基づいて、各音量設定に対し、音声信号に乗算する周波数応答関数を割り当てたテーブルを格納するステップと、
    音量設定を調整するステップと、
    音声信号に対し、その時点の音量設定に応じた周波数応答関数を乗算するステップと、を有する音響処理方法。
  6. 前記テーブルは、1個の音量設定に対し、1個の周波数応答関数を割り当てたものである、請求項1に記載の音響処理方法。
  7. 前記テーブルは、複数個の音量設定に対し、1個の周波数応答関数を割り当てたものである、請求項1に記載の音響処理方法。
  8. 音声信号の低音域と高音域の信号成分に対して、音声信号の信号レベルに応じたコンプレッサ処理を行うステップをさらに有する、請求項5から7のいずれか1項に記載の音響処理方法。
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