[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る多層回路基板1における電気回路27の構成及び層間接続用孔21(ないし金属柱22)の配置等を示すための部分平面図である。図示したように、本実施形態においては、電気回路27と層間接続用孔21であるビアホールとが相互に接続している多層回路基板1が製造される。回路27は、線幅の微細な配線27aと、電極用パッド部27bとを含む。電極用パッド部27bは、層間接続用孔21に重ねて設けられている。
図1中のI−I線は、図2〜図4の端面図の切断箇所を示す。図2中、符号10は回路基板、符号11は第1電気回路、符号20は第1絶縁層、符号21は層間接続用孔、符号22は金属柱、符号23は第2絶縁層、符号24は樹脂皮膜、符号25は回路パターン、符号26はメッキ触媒、符号27は第2電気回路、符号30は第1絶縁層20と第2絶縁層23とを合わせた絶縁層全体を示す。図2Iに示すように、この多層回路基板1においては、回路基板10に形成された第1電気回路11と、回路基板10の上に積層された絶縁層30(第1絶縁層20及び第2絶縁層23)に形成された第2電気回路27とが、第1絶縁層20に形成された層間接続用孔21(ないし金属柱22)を介して層間接続されている。
<回路基板準備工程>
本実施形態の製造方法においては、まず、図2Aに示すように、第1電気回路11が形成された回路基板10を準備する(回路基板準備工程)。なお、図2Aでは、第1回路11は回路基板10の上面に載っているが、回路基板10の上面に埋設されていてもよい。また、第1回路11の形成方法もここでは問わない。例えばサブトラクティブ法やアディティブ法等の従来から知られた回路形成方法で形成されたものでよい。さらに、回路基板は、片面のみに回路形成されたものでも、あるいは両面とも回路形成されたものでもよい。また、多層回路基板であってもよい。
回路基板10としては、従来から多層回路基板の製造に使用される各種有機基板が特に限定なく採用可能である。有機基板の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂等からなる基板が挙げられる。回路基板10の形態としては、シート、フィルム、プリプレグ、三次元形状の成形体等、特に限定されない。回路基板10の厚みも特に限定されず、例えば、シート、フィルム、プリプレグ等の場合は、10〜500μm、好ましくは20〜200μm程度の厚みである。その他、回路基板10の詳しい説明は、次に記載する第1絶縁層20の詳しい説明に準じて同様である。
<絶縁層形成工程>
次に、図2Bに示すように、第1回路11が形成された回路基板10の上面(回路形成面)に第1絶縁層20を形成する(第1絶縁層形成工程)。この第1絶縁層20の形態としては、特に限定されない。具体的には、シート、フィルム、プリプレグ、及び三次元形状の成形体等、樹脂溶液塗布により形成したもの等が挙げられる。前記第1絶縁層20の厚みは、特に限定されない。具体的には、シート、フィルム、プリプレグの場合には、例えば、10〜200μmであることが好ましく、20〜100μm程度であることがより好ましい。また、前記第1絶縁層20としては、シリカ粒子等の無機微粒子を含有してもよい。第1絶縁層20は、例えば、回路基板10の上面に、シート、フィルム、あるいはプリプレグを積層し、加圧して張り合わせた後、硬化させることで形成できるし、加熱加圧により硬化させることでも形成できる。また、第1絶縁層20は、回路基板10の上面に樹脂溶液を塗布した後、硬化させることにより形成することもできる。また、金型及び枠型等を用いて絶縁層となる材料を入れて、加圧し、硬化させることで三次元形状の成形体等を形成してもよいし、シート、フィルム、あるいはプリプレグを打ち抜き、くりぬいたものを、回路基板10の上面に積層し、加圧張り合わせた後、硬化させること、もしくは、加熱加圧により硬化させることにより三次元形状の成形体等を形成してもよい。
前記第1絶縁層20は、従来から多層回路基板の製造に使用される各種有機基板が特に限定なく採用可能である。有機基板の具体例としては、従来から多層回路基板の製造に使用される、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂等からなる基板が挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、回路基板の製造に用いられうる各種有機基板を構成するエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、難燃性を付与するために、臭素化又はリン変性した、上記エポキシ樹脂、窒素含有樹脂、シリコーン含有樹脂等も挙げられる。また、前記エポキシ樹脂及び樹脂としては、上記各エポキシ樹脂および樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記各樹脂で基材を構成する場合、一般的に、硬化させるために、硬化剤を含有させる。前記硬化剤としては、硬化剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ジシアンジアミド、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミノトリアジンノボラック系硬化剤、シアネート樹脂等が挙げられる。
前記フェノール系硬化剤としては、例えば、ノボラック型、アラルキル型、テルペン型等が挙げられる。更に難燃性を付与するためリン変性したフェノール樹脂または、リン変性したシアネート樹脂等もあげられる。また、前記硬化剤としては、上記各硬化剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また特に限定されないが、レーザー加工により回路パターンを形成することから、100nm〜400nm波長領域でのレーザー光の吸収率が良い樹脂等を用いることが好ましい。例えば、具体的には、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
また、前記絶縁基材(絶縁層)には、フィラーを含有していてもよい。前記フィラーとしては、無機微粒子であっても、有機微粒子であってもよく、特に限定されない。フィラーを含有することで、レーザー加工部にフィラーが露出し、フィラーの凹凸によるメッキと樹脂との密着性を向上することが可能である。
前記無機微粒子を構成する材料としては、具体的には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、シリカ(SiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化チタン(TiO2)等の高誘電率充填材;ハードフェライト等の磁性充填材;水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)2)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、五酸化アンチモン(Sb2O5)、グアニジン塩、ホウ酸亜鉛、モリブテン化合物、スズ酸亜鉛等の無機系難燃剤;タルク(Mg3(Si4O10)(OH)2)、硫酸バリウム(BaSO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、雲母等が挙げられる。前記無機微粒子としては、上記無機微粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの無機微粒子は、熱伝導性、比誘電率、難燃性、粒度分布、色調の自由度等が高いことから、所望の機能を選択的に発揮させる場合には、適宜配合及び粒度設計を行って、容易に高充填化を行うことができる。また、特に限定はされないが、絶縁層の厚み以下の平均粒径のフィラーを用いるのが好ましく、更には0.01μm〜10μm、更に好ましくは、0.05μm〜5μmの平均粒径のフィラーを用いるのがよい。
また、前記無機微粒子は、前記絶縁基材中での分散性を高めるために、シランカップリング剤で表面処理してもよい。また、前記絶縁基材は、前記無機微粒子の、前記絶縁基材中での分散性を高めるために、シランカップリング剤を含有してもよい。前記シランカップリング剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、エポキシシラン系、メルカプトシラン系、アミノシラン系、ビニルシラン系、スチリルシラン系、メタクリロキシシラン系、アクリロキシシラン系、チタネート系等のシランカップリング剤等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、上記シランカップリング剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記絶縁基材は、前記無機微粒子の、前記絶縁基材中での分散性を高めるために、分散剤を含有してもよい。前記分散剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、アルキルエーテル系、ソルビタンエステル系、アルキルポリエーテルアミン系、高分子系等の分散剤等が挙げられる。前記分散剤としては、上記分散剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記有機微粒子としては、具体的には、例えば、ゴム微粒子等が挙げられる。
また、例えば、回路基板10及び第1絶縁層20としてプリプレグを用いる場合には、回路基板10の上面(回路形成面)に第1絶縁層20を重ね合わせ、加熱プレスすることにより積層し硬化させてもよい。
なお、回路基板10を構成する素材の種類及び樹脂の種類等と、第1絶縁層20を構成する素材の種類及び樹脂の種類等とは、互いに異なっていてもよい。ただし、回路基板10と第1絶縁層20とを良好に密着させ積層させる観点からは、互いになじみの良い種類同士とすることが好ましく、典型的には同じ種類同士とすることがより好ましい。
<孔形成工程>
次に、図2Cに示すように、第1絶縁層20の上面(外表面)側からレーザー加工することにより、第1絶縁層20に上面(外表面)から層間接続用孔21を形成する(孔形成工程)。このとき、層間接続用孔21は、回路基板10の第1回路11まで到達しており、該第1回路11を露出させている。その他、レーザー加工及びその周辺技術の詳しい説明は、他の工程で記載するレーザー加工及びその周辺技術の詳しい説明に準じて同様である。
なお、レーザー加工により露出させた第1回路11の上には、第1絶縁層20の樹脂残渣であるスミア(図示せず)が残る。スミアは導通不良の原因となるため、デスミア処理により除去することが好ましい。デスミア処理としては、例えば、過マンガン酸溶液に浸漬することによりスミアを溶解除去する等の公知の方法が限定なく用いられる。ただし、状況に応じて、デスミア処理を省略することもできる。
<金属柱形成工程>
次に、図2Dに示すように、露出させた第1回路11から、無電解メッキ又は電解メッキにより、前記層間接続用孔21をメッキ金属で充填して、層間接続用孔21に金属柱22を形成する(金属柱形成工程)。なお、無電解メッキの場合は、第1回路11がメッキ核として機能し、第1回路11からメッキ膜が成長する。一方、電解メッキの場合は、第1絶縁層20の表面、孔21の内壁面、及び露出させた第1回路11の表面にメッキ触媒を被着させ、メッキ触媒被着部に無電解メッキを施した後、電解メッキを施すことにより、孔21をメッキ金属で充填し、その後、第1絶縁層20の表面を含む第1絶縁層20の外表面側に析出したメッキ金属を除去する。
金属柱22の形状、大きさ、間隔等は特に限定されない。具体的には、例えば、略円柱状であって、高さが5〜200μm程度、底面の直径が10〜500μm程度の金属柱22が好ましく実現可能である。なお、角柱状や円錐台状あるいは角錐台状等の金属柱22でも構わない。
なお、図2Dは、この金属柱形成工程で、金属柱22が第1絶縁層20の外表面(上面)の高さまで成長した場合を示している。
このような方法によれば、後述する第2絶縁層形成工程で第2絶縁層23を形成する前及び皮膜形成工程で樹脂皮膜24を形成する前に、第1回路11と第2回路26とを層間接続する層間接続用孔21に、ボイドの発生が抑制された良好な金属柱22を十分量充填して形成することができる。
<第2絶縁層形成工程>
次に、図2Eに示すように、第1絶縁層20の外表面及び金属柱22の頂部に第2の絶縁層23を形成する(第2絶縁層形成工程)。第2絶縁層23は、第1絶縁層20の場合と同様である。具体的には、第2絶縁層23は、シート、フィルム、プリプレグ、及び三次元形状の成形体等、樹脂溶液塗布により形成したもの等が挙げられる。前記第2絶縁層23の厚みは、特に限定されない。具体的には、シート、フィルム、プリプレグの場合には、例えば、3〜50μmであることが好ましく、5〜40μm程度であることがより好ましい。また、前記第2絶縁層23としては、シリカ粒子等の無機微粒子を含有してもよい。
第2絶縁層23は、例えば、第1絶縁層20の外表面にシート及びフィルム、プリプレグを積層し、加圧張り合わせた後、硬化させることで形成してもよいし、また、第1絶縁層20の外表面に樹脂溶液を塗布した後、硬化させることにより形成してもよい。また、金型及び枠型等を用いて第2絶縁層23となる材料を入れて、加圧し、硬化させることで三次元形状の成形体等を形成してもよい。
前記第2絶縁層23は、従来から多層回路基板の製造に使用される各種有機基板が特に限定なく採用可能である。有機基板の具体例としては、従来から多層回路基板の製造に使用される、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂等からなる基板が挙げられる。その他、第2絶縁層23の詳しい説明は、先に記載した第1絶縁層20の詳しい説明に準じて同様である。
なお、第1絶縁層20を構成する素材の種類及び樹脂の種類等と、第2絶縁層23を構成する素材の種類及び樹脂の種類等とは、互いに異なっていてもよい。ただし、第1絶縁層20と第2絶縁層23とを良好に密着させ積層させる観点からは、互いになじみの良い種類同士とすることが好ましく、典型的には同じ種類同士とすることがより好ましい。
<皮膜形成工程>
次に、同じく図2Eに示すように、第2絶縁層23の外表面に樹脂皮膜24を形成する(皮膜形成工程)。樹脂皮膜(レジスト)24は、後述する皮膜除去工程で除去可能なものであれば、特に限定されない。樹脂皮膜24は、所定の液体で溶解又は膨潤することにより第2絶縁層23の表面から容易に溶解除去又は剥離除去が可能な樹脂皮膜が好ましい。具体的には、例えば、有機溶剤やアルカリ溶液により容易に溶解し得る可溶型樹脂からなる皮膜や、所定の液体(膨潤液)で膨潤し得る膨潤性樹脂からなる皮膜等が挙げられる。なお、膨潤性樹脂皮膜には、所定の液体に対して実質的に溶解せず、膨潤により第2絶縁層23の表面から容易に剥離するような樹脂皮膜だけではなく、所定の液体に対して膨潤し、さらに少なくとも一部が溶解し、その膨潤や溶解により第2絶縁層23の表面から容易に剥離するような樹脂皮膜や、所定の液体に対して溶解し、その溶解により第2絶縁層23の表面から容易に剥離するような樹脂皮膜も含まれる。このような樹脂皮膜を用いることにより、絶縁層表面から樹脂皮膜を容易かつ良好に除去できる。樹脂皮膜を除去するときに樹脂皮膜を崩壊させると、その樹脂皮膜に被着したメッキ触媒が飛散し、飛散したメッキ触媒が絶縁層に再被着してその部分に不要なメッキ膜が形成される問題がある。絶縁層表面から樹脂皮膜を容易かつ良好に除去できるから、そのような問題が防止できる。
樹脂皮膜24の形成方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、第2絶縁層23の外表面(上面)に、樹脂皮膜24を形成し得る液状材料を塗布した後、乾燥させる方法や、支持基板に前記液状材料を塗布した後、乾燥することにより形成される樹脂皮膜を第2絶縁層23の表面に転写する方法等が挙げられる。また、別の方法としては、第2絶縁層23の外表面(上面)に、予め形成された樹脂皮膜24からなる樹脂フィルムを貼り合せる方法等も挙げられる。なお、液状材料を塗布する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、従来から知られたスピンコート法やバーコータ法等が挙げられる。
樹脂皮膜24を形成するための材料としては、所定の液体で溶解又は膨潤することにより第2絶縁層23の表面から容易に溶解除去又は剥離除去が可能な樹脂であれば特に限定なく用いられ得る。好ましくは、所定の液体に対する膨潤度が50%以上、より好ましくは、100%以上、さらに好ましくは、500%以上であるような膨潤度の樹脂が用いられる。なお、膨潤度が低すぎる場合には、樹脂皮膜が剥離しにくくなる傾向がある。
なお、樹脂皮膜の膨潤度(SW)は、膨潤前重量m(b)及び膨潤後重量m(a)から、「膨潤度SW={(m(a)−m(b))/m(b)}×100(%)」の式で求められる。
このような樹脂皮膜は、第2絶縁層23の表面にエラストマーのサスペンジョン又はエマルジョンを塗布した後、乾燥する方法や、支持基材にエラストマーのサスペンジョン又はエマルジョンを塗布した後、乾燥することにより形成される皮膜を第2絶縁層23の表面に転写する方法等により容易に形成され得る。
エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン系共重合体等のジエン系エラストマー、アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマー等が挙げられる。このようなエラストマーによれば、サスペンジョン又はエマルジョンとして分散されたエラストマー樹脂粒子の架橋度またはゲル化度等を調整することにより所望の膨潤度の樹脂皮膜を容易に形成することができる。
なお、このような樹脂皮膜としては、特に、膨潤度が膨潤液のpHに依存して変化するような皮膜であることが好ましい。このような、皮膜を用いた場合には、後述する触媒被着工程における液性条件と、後述する皮膜除去工程における液性条件とを相異させることにより、触媒被着工程におけるpHにおいては樹脂皮膜24は第2絶縁層23に対する高い密着力を維持し、皮膜除去工程におけるpHにおいては容易に樹脂皮膜24を剥離除去することができる。
さらに具体的には、例えば、後述する触媒被着工程が、例えば、pH1〜3の範囲の酸性触媒金属コロイド溶液中で処理する工程を備え、後述する皮膜除去工程がpH12〜14の範囲のアルカリ性溶液中で樹脂皮膜を膨潤させる工程を備える場合には、前記樹脂皮膜は、前記酸性触媒金属コロイド溶液に対する膨潤度が60%以下、さらには40%以下であり、前記アルカリ性溶液に対する膨潤度が50%以上、さらには100%以上、さらには500%以上であるような樹脂皮膜であることが好ましい。
このような樹脂皮膜の例としては、所定量のカルボキシル基を有するエラストマーから形成されるシートや、プリント配線板のパターニング用のドライフィルムレジスト(以下「DFR」と記す場合がある)等に用いられる光硬化性のアルカリ現像型のレジストを全面硬化して得られるシートや、熱硬化性やアルカリ現像型のシート等が挙げられる。
カルボキシル基を有するエラストマーの具体例としては、カルボキシル基を有するモノマー単位を共重合成分として含有することにより、分子中にカルボキシル基を有する、スチレン−ブタジエン系共重合体等のジエン系エラストマーや、アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル系エラストマー、あるいはポリエステル系エラストマー等が挙げられる。このようなエラストマーによれば、サスペンジョン又はエマルジョンとして分散されたエラストマーの、酸当量、架橋度又はゲル化度等を調整することにより、所望のアルカリ膨潤度を有する樹脂皮膜を形成することができる。また、皮膜除去工程において用いる所定の液体に対する膨潤度をより大きくでき、前記液体に対して溶解する樹脂皮膜も容易に形成することができる。エラストマー中のカルボキシル基はアルカリ水溶液に対して樹脂皮膜を膨潤させて、第2絶縁層23の表面から樹脂皮膜を剥離する作用をする。また、酸当量とは、カルボキシル基1個当たりのポリマー分子量である。
カルボキシル基を有するモノマー単位の具体例としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、及びマレイン酸無水物等が挙げられる。
このようなカルボキシル基を有するエラストマー中のカルボキシル基の含有割合としては、酸当量で100〜2000、さらには100〜800であることが好ましい。酸当量が小さ過ぎる場合(カルボキシル基の数が相対的に多過ぎる場合)には、溶媒または他の組成物との相溶性が低下することにより、無電解メッキの前処理液に対する耐性が低下する傾向がある。また、酸当量が大き過ぎる場合(カルボキシル基の数が相対的に少な過ぎる場合)には、アルカリ水溶液に対する剥離性が低下する傾向がある。
また、エラストマーの分子量としては、1万〜100万、さらには、2万〜50万、さらには、2万〜6万であることが好ましい。エラストマーの分子量が大き過ぎる場合には剥離性が低下する傾向があり、小さ過ぎる場合には粘度が低下するために樹脂皮膜の厚みを均一に維持することが困難になると共に、無電解メッキの前処理液に対する耐性も低下する傾向がある。
また、DFRとしては、例えば、所定量のカルボキシル基を含有する、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂等を樹脂成分とし、光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物のシートが用いられ得る。このようなDFRの具体例としては、特開2000−231190号公報、特開2001−201851号公報、特開平11−212262号公報に開示されるような光重合性樹脂組成物のドライフィルムを全面硬化させて得られるシートや、アルカリ現像型のDFRとして市販されている、例えば、旭化成工業社製のUFGシリーズ等が挙げられる。
さらに、その他の樹脂皮膜の例としては、カルボキシル基を含有する、ロジンを主成分とする樹脂(例えば、吉川化工社製の「NAZDAR229」)や、フェノールを主成分とする樹脂(例えば、LEKTRACHEM社製の「104F」)等が挙げられる。
樹脂皮膜24は、第2絶縁層23の表面に樹脂のサスペンジョン又はエマルジョンを従来から知られたスピンコート法やバーコーター法等の塗布手段を用いて塗布した後、乾燥する方法や、支持基材に形成されたDFRを真空ラミネーター等を用いて第2絶縁層23の表面に貼り合わせた後、全面硬化することにより容易に形成することができる。
樹脂皮膜24の厚みとしては、例えば、10μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。また、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がさらに好ましい。厚みが厚過ぎる場合は、微細な回路パターン25をレーザー加工や機械加工等により形成する際に精度が低下する傾向がある。また、厚みが薄過ぎる場合は、均一な膜厚の樹脂皮膜24を形成し難くなる傾向がある。
また、前記樹脂皮膜24として、例えば、酸等量が100〜800程度のカルボキシル基を有するアクリル系樹脂からなる樹脂(カルボキシル基含有アクリル系樹脂)を主成分とする樹脂皮膜もまた好ましく用いられ得る。
さらに、上記のものの他に、前記樹脂皮膜23として、次のようなものもまた好適である。すなわち、前記樹脂皮膜を構成するレジスト材料に必要な特性としては、例えば、(1)後述の触媒被着工程で、樹脂皮膜が形成された絶縁基材(回路基板や絶縁層等)を浸漬させる液体(めっき核付け薬液)に対する耐性が高いこと、(2)後述の皮膜除去工程、例えば、樹脂皮膜が形成された絶縁基材をアルカリに浸漬させる工程によって、樹脂皮膜(レジスト)が容易に除去できること、(3)成膜性が高いこと、(4)ドライフィルム(DFR)化が容易なこと、(5)保存性が高いこと等が挙げられる。めっき核付け薬液としては、後述するが、例えば、酸性Pd−Snコロイドキャタリストシステムの場合、全て酸性(例えばpH1〜3)水溶液である。また、アルカリ性Pdイオンキャタリストシステムの場合は、触媒付与アクチベーターが弱アルカリ(pH8〜12)であり、それ以外は酸性である。以上のことから、めっき核付け薬液に対する耐性としては、pH1〜11、好ましくはpH1〜12に耐え得ることが必要である。なお、耐え得るとは、レジストを成膜したサンプルを薬液に浸漬した際、レジストの膨潤や溶解が充分に抑制され、レジストとしての役割を果たすことである。また、浸漬温度は、室温〜60℃、浸漬時間は、1〜10分間、レジスト膜厚は、1〜10μm程度が一般的であるが、これらに限定されない。皮膜除去工程に用いるアルカリ剥離の薬液としては、後述するが、例えば、NaOH水溶液や炭酸ナトリウム水溶液が一般的である。そのpHは、11〜14であり、好ましくはpH12から14でレジスト膜が簡単に除去できることが望ましい。NaOH水溶液濃度は、1〜10%程度、処理温度は、室温〜50℃、処理時間は、1〜10分間で、浸漬やスプレイ処理をすることが一般的であるが、これらに限定されない。絶縁材料上にレジストを形成するため、成膜性も重要となる。はじき等がない均一性な膜形成が必要である。また、製造工程の簡素化や材料ロスの低減等のためにドライフィルム化されるが、ハンドリング性を確保するためにフィルムの屈曲性が必要である。また絶縁材料上にドライフィルム化されたレジストをラミネーター(ロール、真空)で貼り付ける。貼り付けの温度は、室温〜160℃、圧力や時間は任意である。このように、貼り付け時に粘着性が求められる。そのために、ドライフィルム化されたレジストはゴミの付着防止も兼ねて、キャリアフィルム、カバーフィルムでサンドイッチされた3層構造にされることが一般的であるが、これらに限定されない。保存性は、室温での保存できることがもっとも良いが、冷蔵、冷凍での保存ができることも必要である。このように低温時にドライフィルムの組成が分離したり、屈曲性が低下して割れたりしないようにすることが必要である。
以上のような観点から、前記樹脂皮膜24として、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と、(b)(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体と、を重合させることで得られる重合体樹脂、又はこの重合体樹脂を含む樹脂組成物であってもよい。公知技術として、特開平7−281437、特開2000−231190、特開2001−201851等が挙げられる。(a)単量体の一例として、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、単独、もしくは2種類以上を組み合わせても良い。(b)単量体の例としては、非酸性で分子中に重合性不飽和基を(1個)有するものが一般的であり、その限りではない。めっき工程での耐性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート類がある。また酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や(メタ)アクリロニトリル、スチレンまたは重合可能なスチレン誘導体等がある。また上記の重合性不飽和基を分子中に1個有するカルボン酸または酸無水物のみの重合によっても得ることが出来る。さらには、3次元架橋できるように、重合体に用いる単量体に複数の不飽和基を持つ単量体を選定することができる。また、分子骨格にエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、ビニル基などの反応性官能基を導入することができる。
樹脂中にカルボキシル基が含まれる場合、樹脂中に含まれるカルボキシル基の量は酸当量で100〜2000が良く、100〜800が好ましく、100〜600がさらに好ましい。酸当量が低すぎると、溶媒または他の組成物との相溶性の低下やめっき前処理液耐性が低下する。酸当量が高すぎると剥離性が低下する。また、(a)単量体の組成比率は5〜70質量%が好ましい。
樹脂組成物は、メイン樹脂(バインダー樹脂)として前記重合体樹脂を必須成分とし、オリゴマー、モノマー、フィラーや、その他の添加剤の少なくとも1種類を添加してもよい。メイン樹脂は、熱可塑的性質を持ったリニア型のポリマーが良い。流動性、結晶性などをコントロールするためにグラフトさせて枝分かれさせることもある。分子量としては、重量平均分子量で1,000〜500,000程度であり、5,000〜50,000が好ましい。重量平均分子量が小さいと膜の屈曲性やめっき核付け薬液耐性(耐酸性)が低下する。また分子量が大きいとアルカリ剥離性やドライフィルムにした場合の貼り付け性が悪くなる。さらに、めっき核付け薬液耐性向上やレーザー加工時の熱変形抑制、流動制御のために架橋点を導入してもよい。
モノマーやオリゴマーとしては、めっき核付け薬液への耐性やアルカリで容易に除去できるようなものであれば何でも良い。またドライフィルム(DFR)の貼り付け性を向上させるために粘着性付与材として可塑剤的に用いることが考えられる。さらに各種耐性をあげるために架橋剤を添加することが考えられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート類がある。また酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や(メタ)アクリロニトリル、スチレンまたは重合可能なスチレン誘導体等がある。また上記の重合性不飽和基を分子中に1個有するカルボン酸または酸無水物のみの重合によっても得ることが出来る。さらに、多官能性不飽和化合物を含んでも良い。上記のモノマーもしくはモノマーを反応させたオリゴマーのいずれでも良い。上記のモノマー以外に他の光重合性モノマーを2種類以上含むことも可能である。モノマーの例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート等がある。上記のモノマーもしくはモノマーを反応させたオリゴマーのいずれでも良い。
フィラーは特に限定されないが、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、酸化亜鉛、タルク、マイカ、ガラス、チタン酸カリウム、ワラストナイト、硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、有機フィラー等が挙げられる。また、レジストの好ましい厚みは、0.1〜10μmと薄いため、フィラーサイズも小さいものが好ましい。平均粒径が小さく、粗粒をカットしたものを用いることが良いが、分散時に砕いたり、ろ過で粗粒を除去することもできる。
その他の添加剤として、光重合性樹脂(光重合開始剤)、重合禁止剤、着色剤(染料、顔料、発色系顔料)、熱重合開始剤、エポキシやウレタンなどの架橋剤等が挙げられる。
次に説明する回路パターン形成工程では、樹脂皮膜23は、レーザー加工等されるため、レジスト材料にレーザーによるアブレーション性を付与することが必要である。レーザー加工機は、例えば、炭酸ガスレーザーやエキシマレーザー、UV−YAGレーザーなどが選定される。これらのレーザー加工機は種々の固有の波長を持っており、この波長に対してUV吸収率の高い材料にすることで、生産性を向上させることができる。そのなかでもUV−YAGレーザーは微細加工に適しており、レーザー波長は3倍高調波355nm、4倍高調波266nmであるため、レジスト材料(樹脂皮膜24の材料)としては、これらの波長に対して、UV吸収率が相対的に高いことが望ましい。UV吸収率が高くなるほど、レジスト24の加工がきれいに仕上がり、生産性の向上が図れる。もっとも、これに限らず、UV吸収率の相対的に低いレジスト材料を選定するほうがよい場合もあり得る。UV吸収率が低くなるほど、UV光がレジスト24を通過するので、その下の第2絶縁層23および第1絶縁層20の加工にUVエネルギーを集中させることができ、絶縁層20,23が加工しにくい材料である場合等に特に好ましい結果が得られる。このように、レジスト24のレーザー加工のしやすさ、絶縁層20,23のレーザー加工のしやすさ、およびこれらの関係等に応じて、レジスト材料を設計することが好ましい。
<回路パターン形成工程>
次に、図2Fに示すように、樹脂皮膜24の上面(外表面)から少なくとも該樹脂皮膜24の厚みと第2絶縁層23の厚みとの合計値(以下「合計厚み」と記す場合がある)以上の所定の深さ及び所定の形状を有する溝及び/又は孔を形成することにより回路パターン25を形成する(回路パターン形成工程)。回路パターン25は、レーザー加工、切削加工又は型押加工等により形成される。また、回路パターン25の溝は、主として配線27a(図1参照)用の溝であり、回路パターン25の孔は、例えば電極用パッド部27b(図1参照)用の孔である。また、状況に応じて、回路パターン25は、層間接続用孔(すでに金属柱形成工程で金属柱22が形成された孔21とは別の層間接続用孔)を含んでもよい。この場合において、合計厚みの分だけ回路パターン25を形成した場合は、図2Fに示すように、第1絶縁層20は掘り込まれず、第1絶縁層20の外表面(上面)に回路パターン25が載った状態となる。一方、合計厚みの分を超えて回路パターン25を形成した場合には、第2実施形態の図3Fや第3実施形態の図4Fに示すように、第1絶縁層20が掘り込まれて、第1絶縁層20の外表面(上面)に回路パターン25が埋設された状態となる。
回路パターン25における配線27a用の溝の幅は特に限定されない。なお、レーザー加工を用いた場合には線幅20μm以下のような微細な溝も容易に形成できる。
回路パターン25を形成する方法は特に限定されない。具体的には、レーザー加工、ダイシング加工等による切削加工、型押加工等が用いられる。高精度の微細な回路パターン25を形成するためには、レーザー加工が好ましい。レーザー加工によれば、レーザーの出力(エネルギー又はパワー)を制御することにより、第1絶縁層20の掘り込み深さ等を容易に調整することができる。また、型押加工としては、例えば、ナノインプリントの分野において用いられるような微細樹脂型による型押加工が好ましく用いられ得る。
このように所定の回路パターン25を形成することにより、後に無電解メッキ膜が付与されて第2電気回路27が形成される部分が規定される。
なお、第2実施形態を示す図3Fは、この回路パターン形成工程で、回路パターン25の底面から、先の金属柱形成工程で形成された金属柱22の頂部が露出し、かつ突出するように回路パターン25を形成した場合を示している。これは、後述するように、レーザー加工により第1絶縁層20を掘り込んだときに、第1絶縁層20を構成する樹脂等は容易に除去され得るが、金属柱22を構成するメッキ金属は除去され難いことにより起る。
<触媒被着工程>
次に、図2Gに示すように、樹脂皮膜24の表面及び回路パターン25の表面にメッキ触媒26を被着させる(触媒被着工程)。つまり、回路パターン25が形成された樹脂皮膜24及び絶縁層30の表面、及び回路パターン25が形成されなかった樹脂皮膜24及び絶縁層30の表面の全体にメッキ触媒26を被着するのである。なお、後述する無電解メッキの観点からは、金属柱22の表面にわざわざメッキ触媒26を被着させる必要はないが、樹脂皮膜24及び絶縁層30の全体にメッキ触媒26を被着させることで作業の容易化が図られる。ここで、メッキ触媒26は、その前駆体を含む概念である。
メッキ触媒26は、後述するメッキ工程において無電解メッキ膜を形成したい部分のみに該メッキ膜を形成させるために予め付与される触媒である。メッキ触媒26としては、無電解メッキ用の触媒として知られたものであれば特に限定なく用いられ得る。また、予めメッキ触媒26の前駆体を被着させ、樹脂皮膜24の除去後にメッキ触媒26を生成させてもよい。メッキ触媒26の具体例としては、例えば、金属パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)等の他、これらを生成させるような前駆体等が挙げられる。
メッキ触媒26を被着させる方法としては、例えば、pH1〜3の酸性条件下で処理される酸性Pd−Snコロイド溶液で処理した後、酸溶液で処理するような方法が挙げられる。より具体的には次のような方法が挙げられる。
はじめに、回路パターン25が形成された樹脂皮膜24及び絶縁層30の表面に付着している油分等を界面活性剤の溶液(クリーナー・コンディショナー)中で所定の時間湯洗する。次に、必要に応じて、過硫酸ナトリウム−硫酸系のソフトエッチング剤でソフトエッチング処理する。そして、pH1〜2の硫酸水溶液や塩酸水溶液等の酸性溶液中でさらに酸洗する。次に、濃度0.1%程度の塩化第一錫水溶液等を主成分とするプリディップ液に浸漬して樹脂皮膜24及び絶縁層30の表面に塩化物イオンを吸着させるプリディップ処理を行う。その後、塩化第一錫と塩化パラジウムを含む、pH1〜3の酸性Pd−Snコロイド等の酸性触媒金属コロイド溶液にさらに浸漬することによりPd及びSnを凝集させて吸着させる。そして、吸着した塩化第一錫と塩化パラジウムとの間で、酸化還元反応(SnCl2+PdCl2→SnCl4+Pd↓)を起こさせる。これによりメッキ触媒26である金属パラジウムが析出する。
なお、酸性触媒金属コロイド溶液としては、公知の酸性Pd−Snコロイドキャタリスト溶液等が使用でき、酸性触媒金属コロイド溶液を用いた市販のメッキプロセスを用いてもよい。このようなプロセスは、例えば、ローム&ハース電子材料社からシステム化されて販売されている。
このような触媒被着処理により、図2Gに示したように、樹脂皮膜24の表面及び回路パターン25の表面にメッキ触媒26を被着させることができる。
<皮膜除去工程>
次に、図2Hに示すように、樹脂皮膜24を絶縁層30(より具体的には第2絶縁層23)から除去する(皮膜除去工程)。つまり、樹脂皮膜24が可溶型の樹脂でなる場合は、有機溶剤やアルカリ溶液を用いて樹脂皮膜24を溶解し、絶縁層30の表面から除去する。また、樹脂皮膜24が膨潤性の樹脂でなる場合は、所定の液体を用いて樹脂皮膜24を膨潤させ、絶縁層30の表面から剥離して除去する。
この皮膜除去工程によれば、絶縁層30において回路パターン25が形成された部分の表面のみにメッキ触媒26を残留させることができる。一方、樹脂皮膜24の表面に被着されたメッキ触媒26は、樹脂皮膜24と共に絶縁層30から除去される。ここで、絶縁層30から除去されたメッキ触媒26が飛散して絶縁層30の表面に再被着することを防ぐ観点から、樹脂皮膜24は、絶縁層30から除去されるときにバラバラに崩壊することなく全体が連続したまま除去され得るものが好ましい。
樹脂皮膜24を溶解又は膨潤させる液体としては、回路基板10、絶縁層30及びメッキ触媒26を実質的に分解や溶解させることなく、樹脂皮膜24が容易に絶縁層30から溶解除去又は剥離除去され得る程度に溶解又は膨潤させ得る液体であれば特に限定なく用いられ得る。このような樹脂皮膜除去用液体は、樹脂皮膜24の種類や厚み等により適宜選択され得る。具体的には、例えば、レジスト樹脂として、光硬化性エポキシ樹脂を用いた場合には、有機溶剤、又はアルカリ水溶液のレジスト除去剤等が用いられる。また、例えば、樹脂皮膜24がジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのようなエラストマーから形成されている場合、あるいは、樹脂皮膜24として、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と、(b)(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体と、を重合させることで得られる重合体樹脂、又はこの重合体樹脂を含む樹脂組成物である場合、あるいは、前述のカルボキシル基含有アクリル系樹脂から形成されている場合には、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液が好ましく用いられ得る。
なお、触媒被着工程において上述したような酸性条件で処理するメッキプロセスを用いた場合には、樹脂皮膜24が、酸性条件下においては膨潤度が60%以下、好ましくは40%以下であり、アルカリ性条件下では膨潤度が50%以上であるような、例えば、ジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのようなエラストマーから形成されていること、あるいは、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と、(b)(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体と、を重合させることで得られる重合体樹脂、又はこの重合体樹脂を含む樹脂組成物から形成されていること、あるいは、前述のカルボキシル基含有アクリル系樹脂から形成されていることが好ましい。このような樹脂皮膜は、pH11〜14、好ましくはpH12〜14であるようなアルカリ水溶液、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等に浸漬等することにより、容易に溶解又は膨潤し、溶解除去又は剥離除去される。なお、溶解性又は剥離性を高めるために、浸漬中に超音波照射してもよい。また、必要に応じて軽い力で引き剥がすことにより除去してもよい。
樹脂皮膜24を除去させる方法としては、例えば、樹脂皮膜除去用液体に、樹脂皮膜24で被覆された絶縁層30を所定の時間浸漬する方法等が挙げられる。また、剥離除去性又は溶解除去性を高めるために、浸漬中に超音波照射すること等が特に好ましい。なお、剥離除去又は溶解除去し難い場合等には、例えば、必要に応じて軽い力で引き剥がしてもよい。
<メッキ工程>
次に、図2Iに示すように、絶縁層30に無電解メッキを施すことにより、メッキ触媒26が残留する回路パターン25の部分及び金属柱22の露出部分に無電解メッキ膜を形成して前記絶縁層30(つまり第1絶縁層20及び第2絶縁層23)に第2電気回路27を形成する。併せて、この絶縁層30の第2回路27と回路基板10の第1回路11とを前記金属柱22を介して層間接続する(メッキ工程)。このような無電解メッキ処置により、回路パターン25が形成された部分のみに精度よく無電解メッキ膜が析出する。
無電解メッキ処理の方法としては、部分的にメッキ触媒26が被着された絶縁層30を無電解メッキ液に浸漬して、メッキ触媒26が被着された部分のみに無電解メッキ膜を析出させるような方法が用いられ得る。
無電解メッキに用いられる金属としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。これらのうちでは、Cuを主成分とするメッキが導電性に優れている点から好ましい。また、Niを含む場合には、耐食性や、はんだとの密着性に優れる点から好ましい。
無電解メッキ膜の膜厚は、特に限定されない。具体的には、例えば、0.1〜10μm、さらには1〜5μm程度であることが好ましい。
メッキ工程により、絶縁層30の表面のメッキ触媒26が残留する部分のみに無電解メッキ膜が析出する。そのために、第2回路27を形成したい部分のみに精度よく導体層を形成することができる。一方、回路パターン25を形成していない部分に対する無電解メッキ膜の析出を抑制することができる。したがって、狭いピッチ間隔で線幅が狭いような微細な配線27aを複数本形成するような場合でも、隣接する配線27a間に不要なメッキ膜が残らない。そのために、短絡の発生やマイグレーションの発生を抑制することができる。
このようなメッキ工程により、絶縁層30の表面のレーザー加工された部分のみに無電解メッキ膜を析出させることができる。これにより、絶縁層30の表面に新たに第2回路27が形成されると共に、この絶縁層30の第2回路27と回路基板10の第1回路11とが、層間接続用孔21ないし金属柱22を介して層間接続される。
このような工程を経てあるいは繰り返すことにより、図1に示したような、絶縁層30の表面に第2回路27を有する多層回路基板1が製造される。そして、この多層回路基板1においては、各層において電気回路11,27と層間接続用孔21とが相互に接続していると共に、各層の電気回路11,27同士が層間接続用孔21を介して層間接続している。
本実施形態で説明した製造方法を用いれば、絶縁層30に対する回路パターン25の深さを調整することにより、第2回路27の膜厚や深さを自由に調整できる。例えば、第2回路27を絶縁層30の深い部分に形成することや、複数の第2回路27を相互に深さの異なる位置に形成することができる。また、絶縁層30の深い部分に第2回路27を形成することにより、厚みの厚い回路27を形成することができる。厚膜の回路は断面積が大きいために、高い強度及び電気容量を有する。
本実施形態の製造方法においては、回路パターン25を形成する前の第1絶縁層形成工程と孔形成工程と金属柱形成工程とにより、予め層間接続用孔21だけをメッキ金属で充填するので、第2回路27の過剰な導体形成を気にすることなく、層間接続用孔21の金属充填を時間をかけて十分に行うことができる。また、層間接続用孔21の金属充填時には、回路パターン25がまだ形成されていないので、メッキ膜が回路パターン側から成長してくることがなく、ボイドの発生が抑制された良好な金属充填が実現する。そして、層間接続用孔21の金属充填を完了した後に、第2絶縁層形成工程と皮膜形成工程と回路パターン形成工程と触媒被着工程と皮膜除去工程とメッキ工程とにより、アディティブ法で第2回路27の導体形成を行うので、短時間で微細な導体を精度よく形成することができ、第2回路27に導体を過剰に形成することが回避される。以上により、微細な回路パターン25と層間接続用孔21とが混在していても、アディティブ法を良好に適用しつつ、ビルドアップ法により多層回路基板1を支障なく製造することができる。
本実施形態の製造方法においては、第1絶縁層20の外表面に第2絶縁層23を形成し、第2絶縁層23の外表面に樹脂皮膜24を形成し、少なくとも樹脂皮膜24の厚みと第2絶縁層23の厚みとの合計値以上の深さの回路パターン25を形成した後、樹脂皮膜24を除去するので、回路パターン25の部分は必ず第2絶縁層23が加工されて除去されていることになる。したがって、回路パターン25の底面は第2絶縁層23の外表面より掘り下げられた位置に位置し、第2回路27を構成する導体層は第2絶縁層23の外表面に一部又は全部が埋設される状態となる。その結果、導体層の厚みを大きくできて、第2回路27の機械的強度を確保できる。また、導体層の第2絶縁層23からの突出量をなくす又は減らすことができて、第2回路27を保護すること、第2回路27の絶縁層30からの脱落を抑制すること、回路形成面に生じる凹凸をなくす又は減らすことが可能となる。
本実施形態の製造方法においては、金属柱形成工程で、露出させた第1の電気回路11から無電解メッキによりメッキ膜を成長させることにより、層間接続用孔21をメッキ金属で充填することができる。導体である電気回路11を、無電解メッキのメッキ核に利用するので、合理的に金属柱22を形成できる。
また、本実施形態の製造方法においては、金属柱形成工程で、第1絶縁層20の表面、層間接続用孔21の内壁面、及び露出させた第1の電気回路11の表面にメッキ触媒25を被着させ、メッキ触媒被着部に無電解メッキを施した後、電解メッキを施すことにより、層間接続用孔21をメッキ金属で充填し、その後、第1絶縁層20の表面を含む第1絶縁層20の外表面側に析出したメッキ金属を除去してもよい。第1絶縁層20の表面を含む第1絶縁層20の外表面側に形成した無電解メッキ層を、電解メッキで必要な給電層として利用するので、合理的に金属柱22を形成できる。
本実施形態の製造方法においては、樹脂皮膜24は、所定の液体で溶解又は膨潤することにより第2絶縁層23(あるいは絶縁層30)から溶解除去又は剥離除去が可能な樹脂皮膜であることが好ましい。このような樹脂皮膜24を用いることにより、第2絶縁層23の表面から樹脂皮膜24を容易かつ良好に溶解除去又は剥離除去することができる。樹脂皮膜24を除去するときに樹脂皮膜24を崩壊させると、その樹脂皮膜24に被着したメッキ触媒26が飛散し、飛散したメッキ触媒26が絶縁層30に再被着してその部分に不要なメッキ膜が形成される問題がある。絶縁層30表面から樹脂皮膜24を容易かつ良好に除去できるから、そのような問題が防止できる。
本実施形態の製造方法により製造された多層回路基板1は、微細な回路パターン25と層間接続用孔21とが混在していても、層間接続用孔21の金属充填が十分かつ良好に行われて、回路11,27と層間接続用孔21との接続が良好で、かつ回路27部分の過剰な導体形成が回避されて、短絡等が起り難い多層回路基板1が得られる。したがって、アディティブ法を良好に適用しつつ、ビルドアップ法により多層回路基板1を支障なく製造することができる。その結果、形状精度の高い電気回路27が形成された多層回路基板1が提供される。このような多層回路基板1の製造方法を用いることにより、配線27aの幅及び配線27aの間隔が狭いICサブストレート、携帯電話用プリント配線板、立体回路基板等の用途に用いられる多層回路基板1を製造することができる。
なお、多層回路基板の製造方法においては、樹脂皮膜24に蛍光性物質を含有させることにより、上述した皮膜除去工程の後、検査対象面に紫外光や近紫外光を照射することによる蛍光性物質からの発光を用いて皮膜除去不良を検査することができる。本実施形態の多層回路基板の製造方法においては、配線27aの線幅及び配線27aの間隔が極端に小さい金属配線27aを形成することができる。このような場合においては、例えば、隣接する金属配線27a間の樹脂皮膜24が完全に除去されずに残留することが懸念される。金属配線27a間に樹脂皮膜24が残留した場合には、その部分にメッキ膜が形成されてしまい、マイグレーションや短絡の原因になり得る。このような場合、樹脂皮膜24に蛍光性物質を含有させ、皮膜除去工程の後、皮膜除去面に所定の発光源を照射して皮膜24が残留している部分のみを蛍光性物質により発光させることにより、皮膜除去不良の有無や皮膜除去不良の箇所を検査することができる。
本検査工程に用いられる樹脂皮膜24に含有させ得る蛍光性物質は、所定の光源により光を照射することにより発光特性を示すものであればとくに限定されない。その具体例としては、例えば、Fluoresceine、Eosine、Pyronine G等が挙げられる。
本検査工程により蛍光性物質からの発光が検出された部分は、樹脂皮膜24が残留する部分である。したがって、発光が検出された部分を除去することにより、その部分にメッキ膜が形成されることを抑制できる。これにより、マイグレーションや短絡の発生を未然に抑制することができる。
[第2実施形態]
図3を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同じ又は相当する構成要素には同じ符号を用い、その説明は省略し、第2実施形態の特徴部分のみ説明を加える。
この第2実施形態では、図3Fに示すように、回路パターン形成工程において、樹脂皮膜24の外表面から樹脂皮膜24の厚みと第2絶縁層23の厚みとの合計値を超えて回路パターン25を形成している。これにより、回路パターン25の部分においては、樹脂皮膜24及び第2絶縁層23が除去された上に、第1絶縁層20が掘り込まれて、回路パターン25の底面が第1絶縁層20の外表面より内方に位置している。そして、この第2実施形態では、図3Fに示すように、回路パターン形成工程において、回路パターン25の底面から、図3Dの金属柱形成工程で形成された金属柱22の頂部が突出するように回路パターン25を形成している。これは、レーザー加工により第1絶縁層20を掘り込んだときに、第1絶縁層20を構成する樹脂等は容易に除去されるが、金属柱22を構成するメッキ金属は除去され難いことにより起る。
本実施形態の製造方法においては、回路パターン形成工程で、回路パターン25の底面から金属柱22の頂部が突出するように回路パターン25を形成し、この金属柱22の頂部を覆うように形成された第2電気回路27の部分(図3I参照)を電極用パッド部27bとすることが好ましい(図1参照)。金属柱22の頂部がパッド部27bの導体層に食い込んで、アンカー効果によりパッド部27bの絶縁層30からの脱落が効果的に抑制され、実装部品の重みに十分耐え得るパッド部27bが得られるからである。
[第3実施形態]
図4を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同じ又は相当する構成要素には同じ符号を用い、その説明は省略し、第3実施形態の特徴部分のみ説明を加える。
この第3実施形態では、図4Dに示すように、金属柱形成工程において、金属柱22が第1絶縁層20の外表面の高さまで成長していない。代わりに、金属柱22は、回路パターン25の底面となる位置(図4F参照)までメッキ膜が成長されて構成されている。すなわち、金属柱22を第1絶縁層20の外表面まで成長させるのではなく、それより手前の高さで成長を止めるのである。これにより、回路パターン形成工程より前の金属柱形成工程の段階で、回路パターン25の底面から金属柱22の頂部が突出しないようにすることが容易に達成できる。そして、図4Fに示すように、回路パターン形成工程において、回路パターン25の底面から金属柱22の頂部が突出しないように回路パターン25が形成される。この結果、図4Iに示すように、メッキ工程において、金属柱22の頂部の上に形成される導体層が第2絶縁層23の外表面から突出することが回避でき、絶縁層30の回路27形成面に生じる凹凸をなくす又は減らすことが可能となる。したがって、積層数が増えても、回路形成面に生じる凹凸が大きくならず、微細回路の形成が可能となる。
あるいは、第1実施形態の図2Dに示したように、金属柱形成工程で、金属柱22を第1絶縁層20の上面の高さまで成長させた後に、回路パターン25の底面となる位置まで金属柱22の頂部を例えばソフトエッチング等により除去することにより、図4Fに示すように、回路パターン形成工程において、回路パターン25の底面から金属柱22の頂部が突出しないように回路パターン25を形成することも可能である。これにより、金属柱22の頂部の位置を修正して、回路パターン25の底面から金属柱22の頂部が突出しないようにすることが確実に達成できる。
以下、本発明を実施例を通してさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施例により何ら限定されて解釈されるものではない。
(A)回路基板準備工程:硬化した銅張積層板(パナソニック電工株式会社製の「R1515T」)の銅箔をエッチング除去して所定の電気回路が形成された回路基板(厚み:500μm)を準備した。
(B)第1絶縁層形成工程:この回路基板の回路形成面上にエポキシ樹脂シートでなる第1絶縁層を積層させた。すなわち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製の「850S」)と、硬化剤としてのジシアンジアミド(日本カーバイド工業株式会社製の「DICY」)と、硬化促進剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製の「2E4MZ」)と、無機フィラーとしての溶融シリカ(電気化学工業株式会社製の「FB1SDX」)と、シランカップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「A−187」)と、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とを含む樹脂組成物からなるシート(厚み:60μm)を、前記回路基板の回路形成面上に載置し、さらに、この樹脂組成物からなるシートの外表面にPETフィルム(東洋紡績株式会社製の「TN100」)を載置し、この積層体を、0.4Pa、100℃で、1分間、加圧加熱成形し張り合わせた後、さらに、175℃で、90分間、加熱硬化した後に、前記シートを硬化させた。その後、PETフィルムを剥離することにより、回路基板の上に第1絶縁層を積層させた積層体を得た。
(C)孔形成工程:前記第1絶縁層に対して、外表面から、レーザー加工を行うことにより、50μmの径の孔を第1回路の上に形成し、第1回路を露出させた。レーザー加工は、UV−YAGレーザーを備えたレーザー光照射装置(ESI社製の「MODEL5330」)を用いて行った。
(D)金属柱形成工程:孔を形成した後、基板を硫酸系のエッチング液に35℃で5分間浸漬し、基板の孔の形成により露出した第1回路の表面の酸性クリーナー処理を行った。さらに、水洗いをした後に、基板の孔形成箇所に金属柱を形成するために、無電解銅メッキ液(上村工業株式会社製の「SP−2」)に、70℃、7〜8時間、基板を浸漬し、孔の底部の第1電気回路部からメッキを析出成長させて金属柱を形成した。
(E)第2絶縁層形成工程及び皮膜形成工程:次に、前記第1絶縁層形成工程と同様にして、第1絶縁層と同様の第2絶縁層(厚み:10μm)を、前記第1絶縁層の外表面及び前記金属柱の頂部の上に積層させ形成した。次に、この第2絶縁層の外表面にスピンコート法を用いて、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)のメチルエチルケトン(MEK)サスペンジョン(日本ゼオン(株)製、粒子径200nm、固形分15%)を塗布し、80℃で30分間乾燥することにより、2μm厚の樹脂皮膜を形成した。
(F)回路パターン形成工程:次に、樹脂皮膜が形成された積層体に対して、レーザー加工により所定の位置に幅20μm、深さ15μmの微細溝を回路パターンとして形成した。なお、レーザー加工にはUV−YAGレーザーを備えたESI社製のMODEL5330を用いた。
(G)触媒被着工程:次に、レーザー加工された積層体をクリーナーコンディショナー(C/N3320)中に浸漬した後、水洗した。そして、付着されるスズ−パラジウムコロイドの分解を抑制するために、PD404(シプレイ・ファーイースト(株)製)を用いてプリディップ工程を行った。そして、キャタリスト液(CAT44、シプレイ・ファーイースト(株)製)に浸漬し、無電解銅メッキの核となるパラジウムをスズ−パラジウムコロイドの状態で樹脂皮膜が形成された積層体に吸着させた。
(H)皮膜除去工程:次に、スズ−パラジウムコロイドが吸着された積層体を、5%水酸化ナトリウム水溶液中に超音波処理しながら10分間浸漬することにより、表面のSBR皮膜を膨潤させることにより、樹脂皮膜を剥離除去した。次に、積層体表面に紫外光を照射した。このとき、紫外光の照射により部分的に蛍光発光が認められた。蛍光部分が認められた部分は、布でラビングすることにより除去した。
(I)メッキ工程:次に、積層体をアクセレータ薬液(ACC19E、シプレイ・ファーイースト(株)製)に浸漬することにより、パラジウム核を発生させた。そして、積層体を無電解メッキ液(CM328A,CM328L、CM328C、シプレイ・ファーイースト(株)製)に浸漬させて無電解銅メッキ処理を行った。これにより、厚み3μmの無電解銅メッキ膜が析出した。さらに、前記回路溝を埋めるまで、無電解銅メッキ処理(フィルアップめっき)を行った。
上述のような無電解メッキ処理された積層体表面をSEM(走査型顕微鏡)により観察したところ、レーザー加工された溝部分には、無電解メッキ膜により形成された金属配線が高精度に形成されていることが確認できた。
なお、樹脂皮膜の膨潤度は、以下のように測定した。すなわち、離型紙上に、絶縁基材上に樹脂皮膜を形成するために塗布したSBRサスペンジョンを塗布し、80℃で30分間乾燥することにより、エポキシ樹脂基板に形成した厚みと同様の厚みである、2μm厚の皮膜を形成した。そして、形成された皮膜を強制的に剥離したものを試料とした。そして、得られた試料0.02g程度を秤量した。このときの試料重量を膨潤前重量m’とする。そして、秤量された試料を20±2℃の水酸化ナトリウム5%水溶液10ml中に15分間浸漬した。そして、遠心分離器を用いて1000Gで約10分間遠心分離処理を行い、試料に付着した水分等を除去した。そして、遠心分離後の膨潤した試料の重量を測定し、膨潤後重量mとする。得られた、膨潤前重量m’及び膨潤後重量mから、「膨潤度SW=(m−m’)/m’×100(%)」の式から、膨潤度を算出した。なお、その他の条件は、JIS L1015 8.27(アルカリ膨潤度の測定方法)に準じて行った。このとき、得られた膨潤度は約750%であった。