JP2011093338A - 自動車用暖機装置及び自動車用暖機方法 - Google Patents

自動車用暖機装置及び自動車用暖機方法 Download PDF

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晴久 豊田
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Abstract

【課題】装置をコンパクトかつ安価に形成できるとともに、所要の熱量を発生させることのできる自動車用暖機装置及び自動車用暖機方法を提供する。
【解決手段】自動車空調用回路Sを流動する熱媒体を用いて、始動時に自動車の所定の暖機部位を加熱する自動車用暖機装置10であって、上記熱媒体を流動させる暖機回路12と、上記熱媒体を吸着させる吸着媒18aと、上記熱媒体が上記吸着媒に吸着されることにより生じる吸着熱を暖機部位に作用させて加熱する暖機手段18と、上記暖機回路を流れる熱媒体を制御する熱媒体制御手段14,16,15,21,V1,V2,V3とを備えて構成される。
【選択図】図1

Description

本願発明は、自動車用暖機装置及び自動車用暖機方法に関する。特に、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される電池や、燃料電池車に搭載される燃料電池を、始動時に加熱するのに好適な自動車用暖機装置及び自動車用暖機方法に関する。
環境問題や石油資源の枯渇に対応する必要があることから、ガソリンエンジン等に電気モータの駆動を組み合わせて燃費を高めたハイブリッド自動車や、ガソリンを使わずに走行する電気自動車、さらに、燃料電池を搭載した燃料電池車が提供されている。
上記のような自動車においては、電力を蓄える電池や燃料電池が採用されているが、これら電池は、低温始動性が悪い。たとえば、夜間に戸外に駐車された場合、上記電池の温度は外気温度にまで低下する。寒冷地においては、マイナス50度に達する低温にまで低下する可能性がある。このような低温では、電池の発電能力は非常に低く、始動に必要な電力を賄えない恐れがある。
また、自動車始動時のエンジンや、トランスミッション等のパワートレインも低温始動時には燃費を低下させ、また有害物質の排出量も多い。従って、これら部位を加熱することにより、燃費を向上させ、有害物質の排出量を低減させることができる。
暖機を行うために、始動時に電気ヒータ等を用いて暖機部位を加熱する手法が考えられる。しかしながら、電気ヒータによる加熱は、電池に蓄積した電力を消費することになり、電気自動車では走行に支障をきたす恐れがある。また、従来の電池では、充分な効果を期待できない。上記問題を解決するために、水蒸気の吸着熱を利用した電池温度調節装置が提案されている。
特開2008−305575号公報
上記特許文献に記載されている電池温度調節装置では、車両の始動時に、蒸気をシリカゲル等の吸着媒を充填した吸着器に供給し、蒸気が吸着媒に吸着されることによって生じる吸着熱を、熱交換媒体を介して電池に作用させて加熱するように構成されている。
電池の加熱が必要となるのは、外気温度が0℃以下の低温始動時である。一方、空気中の水蒸気の濃度は温度の関数であり、温度が高いほど空気中の水蒸気量が多くなる。このため、低温始動時には、空気中の蒸気量は非常に少なく、電池を加熱する熱量を発熱させるのに時間を要する。また、発熱量が少ないため、電池以外の部位を暖機するのは困難である。
また、吸着媒に多量の水蒸気を作用させるために、外気をファン等で多量に導入することも考えられる。しかしながら、低温の外気を導入すると、電池や吸着媒が冷却されることになる。このため、発生する吸着熱を有効に利用できない。
さらに、飽和水蒸気を蓄積するタンクを設けることも考えられる。しかしながら、装置が大型化するとともに、上記タンクの保温装置等を設ける必要があるため、製造コストが増加するといった問題が生じる。
本願発明は、既設の自動車用空調装置の熱媒体を吸着媒に作用させて発熱させることにより、上記問題を解決した自動車用暖機装置及び自動車用暖機方法を提供するものである。
本願の請求項1に記載した発明は、自動車空調用回路を流動する熱媒体を用いて、始動時に自動車の所定の暖機部位を加熱する自動車用暖機装置であって、上記熱媒体を流動させる暖機回路と、上記熱媒体を吸着させる吸着媒と、上記熱媒体が上記吸着媒に吸着されることにより生じる吸着熱を暖機部位に作用させて加熱する暖機手段と、上記暖機回路を流れる熱媒体を制御する熱媒体制御手段とを備えて構成される。
本願発明では、上記暖機回路に、空調用の熱媒体が流動させられる。すなわち、空調用熱媒体が流動する空調用回路の一部を利用して上記自動車用暖機回路が構成される。本願発明に係る暖機装置においては、熱媒体の圧縮機やコンデンサを自動車用空調装置と共用できる。したがって、上記暖機装置を、コンパクトにかつ安価に構成することができる。
しかも、空調用回路を流れる熱媒体は、圧力等が精度高く管理されているため、外気に含まれる水蒸気等を利用する場合に比べて、熱媒体の濃度等の管理を容易に行うことができる。したがって、始動時に所要の熱量を確実に発生させることができる。
上記熱媒体は、自動車空調用に利用できる熱媒体であれば、種々のものを利用できる。たとえば、フロン、代替フロン、CO2等の種々の空調用熱媒体を利用することができる。
上記吸着媒として、ガス吸着能を有する種々の多孔質体を採用できる。たとえば、活性炭、ゼオライト、金属多孔質体等を採用できる。請求項5に記載した発明のように、上記吸着媒として、活性炭を採用するのが好ましい。活性炭は安価であるとともに、空調用フロンガスの吸着量が多く、発熱量も多い。例えば、密度が0.5g/ccの粒状の活性炭を採用した場合、活性炭1gにフロンガス1gを吸着させることができるとともに、約100kJ/Lの熱量を発生させることができる。
請求項4に記載した発明のように、上記暖機手段を、上記吸着媒を収容するとともに、上記熱媒体を吸着させることにより発生する吸着熱を上記暖機部位に作用させて加熱する吸着媒保持容器を備えて構成することができる。
たとえば、上記吸着媒保持容器の外壁を介して、電池等に吸着熱を作用させることができる。また、暖機用の熱媒体等を介して暖機部位を加熱するように構成することもできる。本願発明では、活性炭等の吸着媒自体が発熱するため、熱を吸着媒から効率よく取り出して、暖機対象部位へ移動させる手段を設けるのが望ましい。例えば、吸着媒を充填した容器内に、熱伝導性の高い材料で形成された通気性のある熱伝導部材を設けるのが望ましい。上記熱伝導部材として、金属多孔質体や、ハニカム構造体、放射状の熱伝導部材等を採用できる。
本願発明が適用される暖機部位も特に限定されることはない。低温始動時に加熱することにより、燃費を改善できる部位に適用することができる。たとえば、エンジンブロックやパワートレイン等を加熱することができる。特に、請求項7に記載した発明のように、加熱することにより発電量が増加する種々の電池を暖機するのに好適である。たとえば、リチウムイオン電池等の駆動用二次電池のみならず、燃料電池に本願発明を適用できる。また、電池を搭載した自動車の駆動方式も特に限定されることはない。たとえば、電気自動車や、ハイブリッド自動車、さらに燃料自動車に本願発明を適用できる。
請求項2に記載した発明のように、上記熱媒体制御手段を、液状の上記熱媒体を気化させる気化装置と、気化された上記熱媒体に大気から吸熱させて温度を上昇させる吸熱手段と、気化された熱媒体を所定圧力で貯蔵する熱媒体貯蔵タンクと、上記暖機回路を流れる熱媒体の流動を制御するバルブ装置とを備えて構成できる。
自動車の空調装置においては、始動時における熱媒体は、圧縮機によって圧縮されるとともに、コンデンサによって液化された状態でレシーバ等に保持されている。本願発明では、まず、上記液化された熱媒体を、本願発明に係る暖機回路に導入するとともに、上記気化装置によって気化させる。上記気化装置として、空調用のエバポレータに採用されている膨張弁等を利用することができる。
上記気化装置によって、液状の熱媒体を気化させると、気化熱によって熱媒体の温度が低下する。たとえば、フロンガスの気化潜熱は、216kJ/Kgであり、冷房に用いる場合と同様に温度が低下する。温度が低下した熱媒体をそのまま吸着媒に作用させると、暖機装置自体を冷却することになり、吸着媒において生じる吸着熱を有効に利用することができなくなる。
上記不都合を回避するために、上記吸熱手段が設けられる。上記吸熱手段の構成は特に限定されることはなく、上記気化させられた熱媒体が流動する熱伝導性のパイプの外周部に吸熱フィンを設けて、上記気化によって低下した温度を外気の温度まで昇温させることができる。
低温始動時には、気化させた熱媒体を外気温度まで昇温させるのに時間を要する場合がある。このため、外気温度まで昇温させた熱媒体を所定圧力で貯蔵する上記熱媒体貯蔵タンクを設けるのが好ましい。熱媒体貯蔵タンクを設けることにより、始動時において、外気温度まで昇温させた熱媒体を吸着媒に迅速に作用させることができる。
上記熱媒体貯蔵タンクは、上記吸着媒に作用させるだけの容量の熱媒体を貯蔵できる容量で足りる。また、貯蔵圧力も特に限定されることはなく、たとえば、吸着媒を含む暖機回路内に上記吸着媒を流動させる圧力で貯蔵すれば足りる。このため、小さな容量の熱媒体貯蔵タンクで足り、装置が大型化することはない。
空調装置に使用される熱媒体の気化温度は低く、40℃以上で熱媒体から離脱させることができる。このため、暖機部位の発熱によって、上記熱媒体を吸着媒から離脱させることができる。なお、温度が充分に上昇しない暖機部位に適用した場合や、寒冷地で使用する場合には、請求項6に記載した発明のように、上記熱媒体が吸着された上記吸着媒を加熱することにより熱媒体を離脱させる吸着媒加熱手段を設けることができる。たとえば、電気ヒータやエンジンの排気熱を利用して上記吸着媒加熱手段を構成することができる。上記吸着媒加熱手段を設けることにより、熱媒体を吸着媒から確実に離脱させて、次回の加熱の際の吸着熱を確実に密生させることができる。
請求項3に記載した発明のように、上記バルブ装置を、上記自動車空調システムの液状熱媒体を上記暖機回路に導入する第1の制御バルブと、上記熱媒体貯蔵タンクの出口側に設けられる第2の制御バルブと、上記熱媒体を上記自動車空調システムの圧縮機の上流側へ戻す第3の制御バルブと、これらバルブを開閉制御するバルブ制御装置とを備えて構成することができる。
上記各バルブ装置を上記バルブ制御装置によって開閉制御し、上記暖機回路に熱媒体を流動させることにより、上記吸着媒に上記熱媒体を作用させることができる。
上記第1の制御バルブは、空調装置内の熱媒体を上記暖機回路に導入するとともに、自動車停止時や空調装置の作動時に、空調用の熱媒体流動回路と本願発明に係る暖機回路とを分離するために設けられる。上記第1の制御バルブは、上記気化装置の上流に設けることもできるし、下流側に設けることもできる。また、上記第1の制御バルブと上記気化装置を構成する膨張弁とを兼用させることもできる。上記第1の制御バルブは、自動車の停止時に自動的に開動するように構成し、次回の暖機行程を行う前に、上記熱媒体貯蔵タンクに所定の気体熱媒体を貯蔵できるように構成するのが望ましい。また、下流側が所定の圧力に達した後に、閉動するように構成するのが望ましい。たとえば、下流側が所定圧力に達した時に自動的に閉動する減圧弁を採用することができる。また、上記熱媒体貯蔵タンク内に圧力センサーを設置し、上記圧力センサー等の信号出力に基づいて、上記制御装置を介して上記第1の制御バルブを閉動させるように構成することもできる。
上記第2の制御バルブは、熱媒体貯蔵タンクの下流側に設けられて、上記熱媒体貯蔵タンク内に所定圧力で気体状態の熱媒体を貯蔵するために設けられる。すなわち、上記第2の制御バルブは、暖機を行う場合以外は閉状態に保持されており、外気温度まで昇温させられた熱媒体が上記熱媒体貯蔵タンク内に貯蔵される。一方、上記第2の制御バルブは、自動車の始動時に、上記熱媒体を吸着媒に作用させるために開動される。さらに、上記熱媒体が吸着媒から離脱させられるとともに、圧縮機によって、自動車空調用回路から上記熱媒体が回収された後に、上記バルブ制御装置によって閉動させられる。
上記第3の制御バルブは、吸着媒及び暖機回路に導入された熱媒体を上記空調用の回路に戻すために設けられる。上記第3の制御バルブは、上記自動車空調装置を構成する圧縮機の上流側へ連通する管路に設けられる。暖機が終了した後に、上記圧縮機を作動させるとともに上記第3の制御バルブを開動させると、上記暖機回路内の熱媒体に上記圧縮機によって生じる負圧によって気体熱媒体が圧縮機に吸引され、空調用回路内に戻される。上記第3の制御バルブは、暖機回路内が所定の圧力以下になった後に、上記バルブ制御装置によって閉動させられ、暖機回路内が負圧に保持される。これにより、次に暖機を行う場合に、熱媒体を暖機回路に円滑に導入することができる。
上記バルブ制御装置は、電子回路を備えて構成されるとともに、自動車駆動装置の始動及び停止動作、上記暖機回路内の圧力や温度に応じて、上記各制御バルブを開閉動させるように構成される。また、始動時に電池で駆動される自動車においては、始動時に電池温度を検出し、電池を昇温させるように制御するのが好ましい。
以下、本願発明に係る暖機方法を、以下に説明する。
請求項8に記載した発明のように、本願発明に係る自動車用暖機方法は、自動車空調用回路内のコンデンサによって液化された上記熱媒体を暖機回路内に導入して気化させる気化行程と、気化された上記熱媒体に大気から吸熱させて昇温させる吸熱行程と、昇温させた熱媒体を吸着媒に吸着させて発熱させるとともに上記暖機部位に作用させて加熱する暖機行程と、上記吸着媒に吸着された熱媒体を離脱させる熱媒体離脱行程と、離脱させた熱媒体を上記自動車空調用回路内の圧縮機に戻して圧縮するとともに、上記コンデンサにおいて液化させる液化行程とを含んで構成される。なお、上記液化工程は、空調時に自動車空調用回路内で行われるものと同様であるので説明は省略する。
本願発明に係る自動車用暖機方法においては、液状の上記熱媒体を上記暖機回路内で気化させる気化行程が行われる。上記気化行程は、自動車の始動の際に行うこともできるし、自動車の停止時に行うこともできる。なお、上記気化行程を行う前に、暖機回路は、空調装置の圧縮機による吸引によって、所定の真空状態に設定しておくのが望ましい。
液状熱媒体が気化させられると、気化熱が奪われるために温度が低下する。このため、気化された上記熱媒体に大気から吸熱させる吸熱行程が行われる。上記吸熱行程は、たとえば、吸熱フィンを設けた熱伝導性のパイプに上記熱媒体を流動させることにより、行うことができる。
また、請求項9に記載した発明のように、気化させた熱媒体を所定の圧力で熱媒体貯蔵タンクに収容する熱媒体貯蔵行程を含ませることができる。この場合、上記気体熱媒体貯蔵行程を行う熱媒体貯蔵タンク内で上記吸熱行程を行うこともできる。上記吸熱行程において、上記熱媒体は、少なくとも外気温度まで昇温させられる。このため、低温始動時において、上記吸着媒を外気温度以下に冷却することはない。
昇温させられた熱媒体を吸着媒に吸着させることにより吸着熱を発生させ、この吸着熱を暖機部位に作用させる暖機行程が行われる。上記暖機行程は、上記吸着媒を収容した吸着媒保持容器の外壁等を介して、熱を伝導させて暖機を行うことができる。また、流動性のある他の熱媒体を利用して、発生した熱を移動させて所要の部位を加熱するように構成することもできる。
始動直後の上記暖機行程が終了した後、上記吸着媒に吸着された熱媒体を離脱させる熱媒体離脱行程が行われる。上記熱媒体離脱行程は、暖機回路の下流側に設けられるとともに自動車空調用回路に連通する管路に設けられた制御バルブを開動させ、上記空調装置の圧縮機を作動させることにより行われる。上記圧縮機の負圧を上記吸着媒に作用させるとともに、上記暖機部位の自己発熱によって吸着された熱媒体が吸着媒から離脱させられる。その際、気化熱が奪われるために、発熱する暖機部位を冷却する効果も期待できる。
なお、自己発熱の少ない部位等を暖機する場合や、外気温度が低く充分に自己発熱できない場合には、ヒータ等を設けて吸着媒を加熱して、熱媒体離脱行程を行うこともできる。
上記熱媒体が吸着媒から離脱させられるとともに、暖機回路内が負圧になった後に、上記下流側の制御バルブを閉動させて、暖機回路を自動車空調用回路から切り離し、本願発明に係る暖機方法の一連の行程が終了する。
始動時に必要な所要の熱量を発生させて電池等の暖機部位を加熱することができるとともに、空調装置の熱媒体及び一部の装置を利用することができるため装置をコンパクトかつ安価に構成することができる。
本願発明に係る自動車用暖機装置の全体構成を示す図である。 本願発明に係る暖機方法の一例を示すフローチャートである。
以下、本願発明を適用した自動車用暖機装置の一例について説明する。
図1に示すように、本実施形態は、電気自動車等に搭載される駆動用リチウムイオン電池19を加熱する自動車用暖機装置10に、本願発明を適用したものである。
自動車用空調装置1は、冷房用の冷凍回路Sを備えて構成される。上記冷凍回路Sは、エンジンあるいはモータ2によって駆動される圧縮機3と、コンデンサ4と、レシーバ5と、気化装置としての膨張弁6と、エバポレータ7と、上記各機器を連通させた空調用管路8とを備えて構成される。なお、エンジン駆動車においては、上記圧縮機3は、エンジンによって駆動される。一方、電気自動車や燃料電池自動車においては、上記圧縮機3は、モータによって駆動される。
上記圧縮機3は、気体状の熱媒体(フロンガス等)を圧縮して高温高圧の半液体の状態とする。上記熱媒体は、上記コンデンサ4において冷却されて液化される。上記コンデンサ4において液化された熱媒体は、上記レシーバ5に送られ、液化されなかった部分が分離されるとともに、乾燥剤やストレーナによって水分や不純物が除去されて高圧の液状熱媒体が保持される。上記液状熱媒体は、上記膨張弁6に送られて微小なノズルからエバポレータ7内に霧状に噴出させられて気化させられる。上記熱媒体の気化によって、潜熱が吸収されて上記エバポレータ7が冷却される。上記エバポレータ7の外側には、多数のフィンが設けられているとともに、空調用空気が流動させられる図示しない送風路が配置されている。上記送風路には、空気を流動させるファンが設けられており、空気取り入れ口から空調用空気が流入させられるとともに、上記エバポレータ7を通過させられて冷却される。これにより、空調用の冷却空気が調製される。上記気化させられた熱媒体は、冷凍回路Sを構成する空調用管路8を通って上記圧縮機3に戻される。上記熱媒体は、上記空調用管路8内で循環流動させられるとともに、上記各行程が繰り返される。
本実施形態では、上記空調用冷凍回路Sの空調用管路8を流動する上記熱媒体を用いて電池19を加熱する暖機装置10が設けられている。
上記暖機装置10は、上記空調用の熱媒体を流動させる暖機回路12を備えて構成される。上記暖機回路12は、上記レシーバ5から液状の熱媒体を導入する導入管路12aと、電池19に隣接して設けられるとともに吸着媒18aとしての活性炭を充填した吸着媒保持容器18に上記熱媒体を供給して吸着発熱させ、上記電池19を加熱する暖機管路12bと、上記熱媒体を空調用管路8に戻す戻し管路12cを備えて構成される。
上記導入管路12aには、第1の制御バルブV1と、上記導入管路12aに導入された液状の熱媒体を気化させる気化装置14としての膨張弁と、上記気化装置14によって気化させられた熱媒体を貯蔵する熱媒体貯蔵タンク15と、上記熱媒体貯蔵タンク15の外壁に設けられた吸熱手段16としての吸熱フィンと、上記熱媒体貯蔵タンク15の下流側に設けられた第2の制御バルブV2とが設けられている。
上記第1の制御バルブV1は、空調用管路8内の熱媒体を上記暖機回路12に導入するとともに、自動車停止時や空調装置1の作動時に、空調用の回路Sと本願発明に係る暖機回路12を分離するために設けられる。上記第1の制御バルブV1は、上記気化装置14の上流側に設けることもできるし、下流側に設けることもできる。また、上記第1の制御バルブV1と上記気化装置14とを兼用するバルブを採用することもできる。上記第1の制御バルブV1は、自動車の停止時に自動的に開動するように構成されており、次回の暖機行程を行う前に、上記熱媒体貯蔵タンク15内に所定量の気体熱媒体を貯蔵できるように構成される。また、上記熱媒体貯蔵タンク15には圧力センサーP1が設けられており、上記熱媒体貯蔵タンク15の圧力が所定の圧力に達した時、制御信号をバルブ制御装置21に出力して、上記第1の制御バルブV1を閉動させるように制御される。
上記第2の制御バルブV2から延出する暖機管路12bには、吸着媒を収容した吸着媒保持容器18が設けられている。本実施形態では、上記吸着媒保持容器18には、粒状の活性炭が収容されており、粒状活性炭の空隙を気体状の上記熱媒体が流動できるように構成されている。上記吸着媒保持容器18の外壁は、銅等の熱伝導性の高い金属から形成されており、電池19の外壁に接触するように配置されている。また、本実施形態では、吸着媒自体が発熱するため、熱を吸着媒から効率よく取り出して、暖機対象部位へ移動させる手段を設けるのが望ましい。例えば、上記吸着媒保持容器18内に、熱伝導性の高い材料で形成された通気性のある熱伝導部材を設けるのが望ましい。上記熱伝導部材として、金属多孔質体や、ハニカム構造体、放射状の熱伝導部材等を採用できる。上記吸着媒保持容器18に密度が0.5g/ccの活性炭を充填し、凝縮潜熱が216kJ/kgのフロンガスを吸着させる場合、活性炭1L当たりのフロンガス凝縮熱(吸着熱)は、108kJ/Lであり、約100kJ/Lの発熱が生じる。したがって、暖機部位に応じて上記活性炭の保持量を設定することにより、暖機用の発熱量を確保することができる。
上記吸着媒保持容器18の下流側に上記戻り管路12cが延出させられている。上記戻り管路12cには、第3の制御バルブV3が設けられており、この第3の制御バルブの下流側が、上記空調用管路8における上記圧縮機3の上流側に連結されている。
上記各制御バルブV1,V2,V3は、制御装置21によって開閉制御が行われるように構成されている。
以下、上記構成の暖機装置10における行程を、図2のフローチャートに基づいて説明する。
本実施形態は、自動車の定常運転終了時に、次回の始動時の暖機を行うための行程が開始するように構成したものである。自動車が定常運転されているとき(S101)、上記各制御バルブV1,V2,V3が閉状態に保持されている。後に説明するように、前回の停止時に、上記圧縮機によって、上記各配管及び吸着媒保持容器18内は真空状態に保持されている。なお、自動車の始動時から本実施形態に係る各行程を開始するように構成することもできる。
自動車駆動用のエンジンやモータ2を停止させた際(S102)に、上記バルブ制御装置21によって、上記第1の制御バルブV1が開動させられる(S103)。これにより、上記レシーバ5内の高圧の液状熱媒体が、上記導入管路12aを介して暖機回路12に導入される。このとき、上記第2の制御バルブV2は閉状態に保持されているとともに、上記第1の制御バルブV1の下流側の上記熱媒体導入管路12a及び上記熱媒体貯蔵タンク15内は、予め真空状態に設定されている。このため、上記気化装置14によって、液状の上記熱媒体が気化させられる気化行程(S104)が行われるとともに、気化させられた上記熱媒体が上記熱媒体貯蔵タンク15内に充填される熱媒体貯蔵行程(S105)が行われる。
上記熱媒体貯蔵タンク15内には、圧力センサーP1が設けられており、所定の圧力を検出することにより(S106)、第1の制御バルブV1が閉動させられる(S107)。なお、自動車が、一時的に停止するような場合には、上記熱媒体貯蔵タンク15内には、前回の停止時に充填された熱媒体が保持されており、熱媒体貯蔵行程(S105)は行われない。
上記熱媒体貯蔵タンク15の外壁には、吸熱手段16としての吸熱フィンが設けられているため、上記気化行程(S104)において温度が低下させられた熱媒体が外気から熱を吸熱する吸熱行程(S108)が行われて、熱媒体が外気温度まで昇温させられる。
上記熱媒体貯蔵タンク15内に、熱媒体が外気温度で貯蔵された状態で、次に自動車が始動するまで待機させられる(S109)。
上記状態から自動車を始動させると(S110)、電池温度が検出され(S111)、暖機が必要な温度でない場合(S111でNo)、待機状態が継続させられる。一方、暖機が必要な温度である場合(S111でYes)、上記制御装置21によって、上記第2の制御バルブV2が開動させられる(S112)。
上記暖機管路12b、上記吸着媒保持容器18及び上記戻り管路12c内は、予め所定の真空状態に保持されているため、上記第2の制御バルブV2を開動させることにより、上記熱媒体貯蔵タンク15内に貯蔵された熱媒体が、上記暖機管路12b、上記吸着媒保持容器18及び上記戻り管路12c内に、所定の圧力で充填される。上記圧力は、0.5〜1.5気圧に設定するのが好ましい。
上記吸着媒保持容器18に上記熱媒体が上記圧力で充填されることにより、上記熱媒体が吸着媒18aとしての活性炭に吸着されて吸着熱が発生する。発生した吸着熱は、上記吸着媒保持容器18の外壁等を介して上記電池19に伝導されて、暖機行程が行われる(S113)。
上記暖機行程(S113)によって、上記電池19が加熱されて、電池出力が高められる。これにより、低温始動時に要する電力を確保することができる。
始動後、所定の時間が経過して自動車が定常運転に入ると、電池19が自己発熱する。上記電池19が所定温度に達すると、電池に設けた温度センサーT1によって、制御信号が上記バルブ制御装置21に出力され(S114)、第3の制御バルブV3を開動させるとともに(S115)、上記圧縮機3を作動させる(S116)。これにより、上記暖機回路12内の熱媒体が吸引されて、上記熱媒体が上記吸着媒から離脱させられる離脱行程が行われるとともに(S117)、上記熱媒体が上記空調用管路8に戻される。
上記空調用回路8に戻された気体状熱媒体は、上記圧縮機3によって圧縮され、上記コンデンサ4において液化された後(S118)、レシーバ5内に液状の熱媒体として回収される。
上記吸着媒保持容器18あるいは上記戻り管路12c内には、圧力センサーP2が設けられており、所定の真空圧力に達したことを検出して(S119)、上記制御装置21に制御信号を出力する。この制御信号によって、上記第2の制御バルブV2及び第3の制御バルブV3が閉動させられて(S120)、上記各制御バルブで区画された各管路内が所定の真空状態に保持されて、一連の暖機動作が終了する。
本実施形態における上記暖機装置10は、空調用の熱媒体を利用して電池19の暖機を行うことができるとともに、上記空調装置1を構成する圧縮機3、コンデンサ4及びレシーバ5を共用することができる。
このため、別途に圧縮機等を設ける必要がなく、暖機装置をコンパクトに形成できるとともに、安価に構成できる。
また、空調用の熱媒体を利用しているため、熱媒体の温度や圧力を精度高く管理することができる。したがって、水蒸気を利用する場合のように外気の状態に左右されることなく、始動時に要する熱量を確実に発生させることができる。
上記実施形態では、本願発明を電池19を加熱する暖機装置に適用したが、エンジンブロックや、パワートレイン等を加熱する暖機装置に適用することができる。
また、実施形態では、電池19の自己発熱と、圧縮機3による真空圧によって、上記吸着媒から熱媒体を離脱させるように構成したが、自己発熱しない部位の暖機に適用する場合や、自己発熱のみでは熱媒体離脱行程を充分に行えない場合には、上記吸着媒を加熱するヒータを設けることもできる。たとえば、定常運転に入ったエンジンやモータの排熱を利用して、上記吸熱媒を加熱し、熱媒体離脱行程を促進することができる。
また、実施形態では、気化行程(S104)と熱媒体貯蔵行程(S105)とを設けて、この熱媒体貯蔵行程後に熱媒体貯蔵容器15内で吸熱行程を行うように構成したが(S108)、気化行程を行うと同時に熱媒体に吸熱させることもできる。例えば、気化装置14の下流側の管路の外周部に吸熱用のフィンを設け、この流路を流れる熱媒体に吸熱させることもできる。この場合、自動車始動時に上記気化行程以下の行程を行うように構成できる。
上記開示された本願発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本願発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本願発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
空調装置用の熱媒体を吸着媒に吸着させることにより、暖機装置をコンパクトに構成できるとともに、安価に提供することができる。
10 自動車用暖機装置
12 暖機回路
14 気化装置(制御手段)
16 吸熱手段(制御手段)
15 熱媒体貯蔵タンク(制御手段)
18 吸着媒保持容器(暖機手段)
18a 吸着媒
21 制御装置(制御手段)
S 自動車空調用回路
V1 第1の制御バルブ(制御手段)
V2 第2の制御バルブ(制御手段)
V3 第3の制御バルブ(制御手段)

Claims (11)

  1. 自動車空調用回路を流動する熱媒体を用いて、始動時に自動車の所定の暖機部位を加熱する自動車用暖機装置であって、
    上記熱媒体を流動させる暖機回路と、
    上記熱媒体を吸着させる吸着媒と、
    上記熱媒体が上記吸着媒に吸着されることにより生じる吸着熱を暖機部位に作用させて加熱する暖機手段と、
    上記暖機回路を流れる熱媒体を制御する熱媒体制御手段とを備える、自動車用暖機装置。
  2. 上記熱媒体制御手段は、
    液状の上記熱媒体を気化させる気化装置と、
    気化された上記熱媒体に大気から吸熱させて温度を上昇させる吸熱手段と、
    気化された熱媒体を所定圧力で貯蔵する熱媒体貯蔵タンクと、
    上記暖機回路を流れる熱媒体の流動を制御するバルブ装置とを備える、請求項1に記載の自動車用暖機装置。
  3. 上記バルブ装置は、
    上記自動車空調用回路におけるコンデンサの下流側に設けられるとともに、液状熱媒体を上記暖機回路に導入する第1の制御バルブと、
    上記熱媒体貯蔵タンクの出口側に設けられる第2の制御バルブと、
    上記熱媒体を上記自動車空調用回路における圧縮機の上流側へ戻す第3の制御バルブと、
    これらバルブを制御するバルブ制御装置とを備える、請求項2に記載の自動車用暖機装置。
  4. 上記暖機手段は、吸着媒を収容するとともに、上記熱媒体を上記吸着媒に吸着させることにより発生する吸着熱を上記暖機部位に作用させて加熱する吸着媒保持容器を備えて構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動車用暖機装置。
  5. 上記吸着媒が活性炭である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自動車用暖機装置。
  6. 上記熱媒体が吸着された上記吸着媒を加熱することにより熱媒体を離脱させる吸着媒加熱手段を備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の自動車用暖機装置。
  7. 上記暖機部位が電池である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の自動車用暖機装置。
  8. 自動車空調用回路を流動する熱媒体を用いて自動車の暖機部位を加熱する自動車用暖機方法であって、
    自動車空調用回路内のコンデンサによって液化された上記熱媒体を暖機回路内に導入して気化させる気化行程と、
    気化された上記熱媒体に大気から吸熱させて昇温させる吸熱行程と、
    昇温させた熱媒体を吸着媒に吸着させて発熱させるとともに上記暖機部位に作用させて加熱する暖機行程と、
    上記吸着媒に吸着された熱媒体を離脱させる熱媒体離脱行程と、
    離脱させた熱媒体を上記自動車空調用回路内の圧縮機に戻して圧縮するとともに、上記コンデンサにおいて液化させる液化行程とを含む、自動車用暖機方法。
  9. 気化させた熱媒体を所定の圧力で熱媒体貯蔵タンクに収容する熱媒体貯蔵行程を含む、請求項8に記載の自動車用暖機方法。
  10. 上記熱媒体離脱行程において、吸着媒を加熱する、請求項8又は請求項9のいずれかに記載の自動車用暖機方法。
  11. 上記暖機行程において、自動車に搭載された電池を加熱する、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の自動車用暖機方法。
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