本発明は、吐水口を構成するスパウトが水栓本体部に連結される構成において、水栓本体部側およびスパウト側のそれぞれに固定される二つの継手を用いることで、ネジ等の締結具を用いることなく、水栓本体部とスパウトとをこれらの内部において連結させるものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第一実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る水栓装置1は、例えばシンクの周囲等に形成される設置面2上に設けられる台付き水栓である。水栓装置1においては、設置面2に対する基部を構成する水栓本体部3に、水を吐出させる吐水口5を構成するスパウト4が支持される。水栓本体部3は、設置面2に対して固定された状態で設けられる。水栓本体部3とスパウト4とは、設置面2上において互いに連結された状態で一体的に吐水口5までの通水経路を構成する。
このように、スパウト4を支持する水栓本体部3を備える水栓装置1は、スパウト4を構成するとともに水栓本体部3に連結されるスパウト部6を備える。つまり、スパウト部6は、スパウト4の一部であって、スパウト4における水栓本体部3に連結される部分である。なお、本実施形態では、スパウト部6は、スパウト4において吐水口5を形成する部分に対して一体的に形成される部分であるが、例えば、水栓装置において吐水口を形成する部分が水栓本体部の内部を通るホース等を介してヘッド部分として引出し可能な構成においては、スパウト部は、吐水口を形成する部分に対して別体の部分となる。
水栓本体部3は、略釣鐘形状を有し、上側に向けて徐々に縮径するように設置面2上に立った状態で設けられる。水栓本体部3の上側に、スパウト4が支持される。スパウト4は、主に略鉤状に折り曲げられた細管状の部分により構成され、この細管状の部分の先端に、斜め下方向に向く吐水口5が形成される。
スパウト4は、水栓本体部3に連結されるスパウト部6において、水栓本体部3のテーパ形状を連続させるように上側に向けて徐々に縮径する外形を有する。これにより、水栓本体部3とスパウト部6との連結部分において一体的なフォルムが形成される。水栓本体部3およびスパウト4は、金属や樹脂等を材料として形成される。以下の説明では、水栓装置1において、水栓本体部3とスパウト部6との関係における水栓本体部3側(図1において下側)を下側とし、スパウト部6側(同図において上側)を上側とする。
水栓装置1においては、水栓本体部3に、吐水口5から吐出される水の止水・吐水を含む流量の調整を行うための操作部7が設けられている。操作部7は、略円筒状の外形の中心軸の方向を回転軸方向として回動操作されるように構成される。操作部7の外周面には、操作部7を回動させるための操作用突起7aが設けられている。操作部7は、水栓本体部3の内部に組み込まれる流量調整のための機構と連動する。この流量調整のための機構は、操作部7の回動に連動して水栓本体部3に供給される水の通水路に対する連通面積を変化させることで、吐水口5から吐出される水の止水・吐水を含む流量の調整を行う。
水栓装置1においては、水栓本体部3とスパウト部6との連結部分の内部に、水栓本体部3とスパウト部6とを互いに連結するための機構が設けられる。以下、水栓本体部3とスパウト部6との連結構造(以下「スパウト連結構造」という。)について説明する。
図2〜図4に示すように、水栓装置1は、スパウト連結構造として、第一継手部11と第二継手部12とを含む構成を備える。第一継手部11および第二継手部12は、金属や樹脂等を材料として形成される。第一継手部11は、全体として略円筒状の外形を有し、その筒軸方向が水栓本体部3とスパウト部6との連結方向、つまり上下方向に沿う姿勢で支持される。
第一継手部11は、水栓本体部3の上側(スパウト部6側)に開口する開口部(以下「本体部側開口部」という。)8にねじ込まれることで水栓本体部3に固定される。第一継手部11は、その下端部が本体部側開口部8に螺合した状態で支持される。本体部側開口部8は、第一継手部11の下端部の外周面形状に対応する形状の凹部として形成される。
第一継手部11の下端部における外周面には、ネジ部11aが形成されている。これに対応して、本体部側開口部8を形成する内周面には、ネジ部8aが形成されている。第一継手部11は、ネジ部11aを本体部側開口部8のネジ部8aに係合させることで、水栓本体部3にねじ込み固定される。また、水栓本体部3において本体部側開口部8の開口端面となる上端面3aは、略水平面として形成される。
第一継手部11は、本体部側開口部8に対して固定された状態で水栓本体部3からスパウト4への通水を確保する通水部としての通水孔11bを有する。通水孔11bは、略円筒状の第一継手部11において上下方向に沿うように第一継手部11の中心軸部分に形成される。本体部側開口部8には、水栓本体部3に組み込まれる流量調整のための機構を介した水の通水路3bが連通する。
つまり、水栓本体部3には図示せぬ給水管から水が供給され、水栓本体部3に供給された水は、水栓本体部3の内部に形成される通水路3bによって流量調整のための機構を介して、本体部側開口部8に導かれる。本体部側開口部8に導かれた水は、本体部側開口部8に対して固定された状態の第一継手部11の通水孔11bにより、スパウト4側へと導かれる。このように、本実施形態では、第一継手部11の通水孔11bによる通水方向は上下方向となる。
ここで、前記のとおり水栓装置において吐水口を形成する部分が水栓本体部の内部を通るホース等を介してヘッド部分として引出し可能な構成においては、第一継手部11が有する通水部は、ヘッド部分に接続されるホースを挿通させる孔部として機能する。なお、第一継手部11の下端部には、Oリング13が外嵌される。Oリング13は、本体部側開口部8に対して固定された状態の第一継手部11の外周面と本体部側開口部8の内周面との間をシールする。
なお、本実施形態では、第一継手部11は、水栓本体部3に対してねじ込み固定される水栓本体部3とは別体の部材であるが、これに限定されない。第一継手部11と水栓本体部3との固定方法は、ビス等の締結具による固定や、ロー付けによる固定等であってもよい。また、第一継手部11は、例えば鋳造からの機械加工等によって水栓本体部3の一部として水栓本体部3と一体的に構成される部分であってもよい。つまり、第一継手部11は、水栓本体部3の上側(スパウト部6側)の端部に突出するように設けられるものであればよい。
第二継手部12は、略筒状に構成され、第一継手部11に対して同軸心状に配置された姿勢で上側から嵌め込まれることで、第一継手部11に外嵌される。つまり、第二継手部12は、第一継手部11において第二継手部12が嵌め込まれる部分の外径寸法と略同じ内径寸法を有し、内周面12bにより形成される孔部に第一継手部11を貫通させた状態で第一継手部11に対して支持される。
第二継手部12は、第一継手部11に外嵌された状態で、上下方向の抜けが規制された状態で支持される。第二継手部12の上方向への抜けは、第一継手部11の上部に外嵌される略円環状の止め輪14によって規制される。止め輪14は、第一継手部11の上部に形成される外周溝11cに嵌め込まれた状態で支持される。
第二継手部12の下方向への抜けは、第一継手部11の下端部に形成される拡径部11dによって規制される。拡径部11dは、第一継手部11において第二継手部12が嵌め込まれる部分の外径寸法よりも大きい外径寸法を有する部分である。なお、拡径部11dには、本体部側開口部8に対する第一継手部11の固定のためのネジ部11aが形成される。このように、第二継手部12は、略筒状の形状を有し第一継手部11に対して通水孔11bによる通水方向に沿う方向である上下方向に抜けが規制された状態で外嵌される。
第二継手部12は、スパウト部6の下側(水栓本体部3側)に開口する開口部(以下「スパウト側開口部」という。)9にねじ込まれることでスパウト部6に固定される。第二継手部12は、その筒軸方向における中間部がスパウト側開口部9に螺合した状態で支持される。スパウト側開口部9は、第二継手部12の中間部の外周面形状に対応する形状の凹部として形成される。
第二継手部12の筒軸方向の中間部における外周面には、ネジ部12aが形成されている。これに対応して、スパウト側開口部9を形成する内周面には、ネジ部9aが形成されている。第二継手部12は、ネジ部12aをスパウト側開口部9のネジ部9aに係合させることで、スパウト部6にねじ込み固定される。また、スパウト部6においてスパウト側開口部9の開口端面となる下端面6aは、略水平面として形成される。
第二継手部12が固定されるスパウト側開口部9には、スパウト4に形成される通水路4aが連通する。通水路4aは、水栓本体部3から第一継手部11の通水孔11bを介して流れ込む水を吐水口5に導く。つまり、前記のとおり本体部側開口部8に導かれた水は、第一継手部11の通水孔11bを通ってスパウト側開口部9を介して通水路4aに流れ込み、吐水口5から吐出される。なお、第一継手部11の先端部には、縮径部11eが形成されており、この縮径部11eに、断面視略U字状のパッキン15が外嵌される。パッキン15は、水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態において第一継手部11の外周面とスパウト側開口部9の内周面との間をシールする。
以上のように第一継手部11および第二継手部12を含む構成においては、水栓本体部3に固定された状態の第一継手部11、および第一継手部11に外嵌されるとともにスパウト部6に固定された状態の第二継手部12を介して、水栓本体部3とスパウト部6とが連結される。すなわち、第一継手部11が本体部側開口部8において水栓本体部3にねじ込み固定されること、第一継手部11に第二継手部12が上下方向の抜けが規制されて外嵌された状態で支持されること、および第一継手部11に支持された状態の第二継手部12がスパウト側開口部9においてスパウト部6にねじ込み固定されることにより、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が得られる。
水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態においては、前記のとおりいずれも略水平面として形成される水栓本体部3の上端面3aおよびスパウト部6の下端面6aが合わせ面となる。水栓本体部3の上端面3aおよびスパウト部6の下端面6aは、いずれも円環状の面であり、略同じ外径寸法を有する。上端面3aと下端面6aとの間には、これらの面と略同じ外径寸法を有する円環板状の部材であるリング16が挟み込まれる。また、水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態においては、第一継手部11の縮径部11eが、パッキン15を介してスパウト側開口部9の奥側の部分に挿入された状態となる。
また、本実施形態に係るスパウト連結構造においては、第二継手部12は、第一継手部11に外嵌された状態で、第一継手部11に対して相対回転可能かつ上下方向に相対移動可能に支持される。つまり、第二継手部12は、第一継手部11に外嵌された状態において、内周面12bを第一継手部11に対する摺動面として、第一継手部11に対して上下方向を回転軸方向として回転可能、かつ上下方向に移動可能に支持される。そして、第二継手部12の第一継手部11に対する上下方向の移動範囲は、前述したように第二継手部12の第一継手部11からの抜けを規制する止め輪14および第一継手部11の拡径部11dによって規定される。
また、第二継手部12は、第一継手部11に外嵌された状態でのスパウト部6へのねじ込み固定に際してスパウト部6に対してねじ込み方向に相対的に回転するための作用を受ける掛かり部12cを有する。掛かり部12cは、第二継手部12の下端部に、第二継手部12と一体的に形成される。本実施形態では、掛かり部12cは、略円筒状の第二継手部12における径方向に垂直な平面を周方向に等間隔に六面有する(図4参照)。つまり、掛かり部12cは、第二継手部12の筒軸方向視で面取りされた略六角形となるボルトの頭部のような形状を有する。
掛かり部12cは、第二継手部12のスパウト側開口部9に対するねじ込み固定に際して、レンチ等の工具が掛かる部分である。第二継手部12のねじ込み固定に際して、スパウト部6側が回転させられる場合は、掛かり部12cが工具等により固定されることで、第二継手部12のスパウト部6との共回りが規制される。また、第二継手部12のねじ込み固定に際して、第二継手部12側が回転させられる場合は、固定された状態のスパウト部6に対して、掛かり部12cが工具等によって回転させられる。
このように、第二継手部12が有する掛かり部12cは、第二継手部12がスパウト部6に対してねじ込み方向に相対的に回転するための作用として、回転するスパウト部6との共回りを規制するための固定作用や、固定された状態のスパウト部6に対して回転するための回転作用を受ける。したがって、掛かり部12cの形状は、前記のような作用を工具等によって受けることができるような形状であれば特に限定されない。掛かり部12cとしては、四角ボルトの頭部のような形状や、二面幅を形成する形状や、工具等が差し込まれる穴部等であってもよい。
そして、第二継手部12は、第一継手部11に対する上下方向の相対移動によってスパウト側開口部9に対してセットされた状態から、掛かり部12cによって前記のようにスパウト部6に対して相対的に回転するための作用を受けることでスパウト部6に固定される。
すなわち、第二継手部12は、スパウト側開口部9に対する固定に際し、第一継手部11に外嵌された状態で、第一継手部11とともにスパウト側開口部9に挿入され、第一継手部11に対する上方向への相対移動によってネジ部12aがスパウト側開口部9のネジ部9aに下側から当接する状態でセットされる。かかる状態から、第二継手部12は、レンチ等の工具が用いられて掛かり部12cによってスパウト部6に対して相対回転させられることでねじ込み固定される。
このようにして第二継手部12がスパウト部6に固定される構成において、第一継手部11が水栓本体部3に固定され、かつ、第一継手部11に外嵌された状態の第二継手部12がスパウト部6に固定された状態から、スパウト部6が水栓本体部3に対して上下方向に沿って近接移動することで、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が得られる。
第一継手部11および第二継手部12のうち一方の継手が水栓本体部3またはスパウト部6に固定された状態からの残りの他方の継手の水栓本体部3またはスパウト部6に対する固定は、水栓本体部3とスパウト部6との間のスペースが用いられて行われる。したがって、第一継手部11および第二継手部12のうち後に固定される方の継手が固定された時には、第一継手部11および第二継手部12がそれぞれ水栓本体部3およびスパウト部6に固定され、かつ、水栓本体部3とスパウト部6との間に隙間がある状態(上端面3aと下端面6aとが離れた状態)となる。
そして、第一継手部11および第二継手部12がそれぞれ固定された水栓本体部3とスパウト部6との間に隙間がある状態から、スパウト部6が水栓本体部3に対して上下方向に沿って近接する方向、つまり下方向に移動することで、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が得られる。すなわち、スパウト部6が下方向に移動することで、第一継手部11の先端の縮径部11eは、パッキン15を介してスパウト側開口部9の奥側の部分に差し込まれた状態となり、また、水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとが、リング16を介して合わさった状態となる。このような連結状態が得られるに際し、第二継手部12が固定されたスパウト部6の、第一継手部11が固定された水栓本体部3に対する近接移動は、第二継手部12が第一継手部11に対して下方向に摺動移動することによって許容される。
以上のような構成を備える本実施形態の連結構造によれば、第二継手部12が第一継手部11に対して相対回転可能であることから、第二継手部12に固定されるスパウト部6が、第一継手部11に固定される水栓本体部3に対して回転可能となる。つまり、スパウト部6は、第二継手部12および第一継手部11を介して水栓本体部3に対して回転可能に連結される。
これにより、スパウト4は、設置面2に固定された状態で設けられる水栓本体部3に対して、上下方向を回転軸方向として回転可能に支持される(図1参照)。かかる構成においては、水栓本体部3とスパウト部6との間に介装されるリング16がスリップ部材として機能する。このようにスパウト4が水栓本体部3に対して回転可能に支持されることで、水栓装置1の使用者は、所望の位置に吐水口5を移動させることができる。
また、第二継手部12が掛かり部12cを有することから、第二継手部12のスパウト部6に対する固定および取外しのための作業が容易となる。これにより、水栓本体部3に対するスパウト部6の着脱を容易に行うことができる。
また、本実施形態に係るスパウト連結構造においては、第二継手部12が、ボールジョイント機構を介して第一継手部11に支持される。このため、第二継手部12は、第一継手部11とともにボールジョイント機構を構成するボール部材21を有する。
ボール部材21は、球状の部材であり、第二継手部12が第一継手部11に外嵌された状態で第一継手部11の外周面11fに押し付けられる方向に付勢されるように保持される。ボール部材21は、略円筒状の第二継手部12において周壁部を貫通するように形成される保持孔12dに嵌った状態で支持される。保持孔12dは、第二継手部12においてボール部材21が内周側へ抜け出ることを規制するとともに、ボール部材21が外周側へ抜け出ることを許容するように形成される。
保持孔12dは、ボール部材21の大きさとの関係において、第二継手部12の内周側および外周側のいずれについても保持孔12dから一部突出可能に形成される。つまり、保持孔12dは、保持孔12dにおけるボール部材21の位置によって、第二継手部12の内周面12bおよび外周面12eの少なくともいずれかからボール部材21の一部が突出するように形成される。本実施形態では、第二継手部12は、第二継手部12の径方向に対向する二箇所の位置に保持される二個のボール部材21を有する。ただし、第二継手部12が有するボール部材21の数は限定されるものではない。
第二継手部12におけるボール部材21の外周側への抜けは、押え板22によって規制される。押え板22は、矩形板状の部材が略筒状に湾曲形成されたものであり、第二継手部12において保持孔12dが開口する外周面12eの部分を覆うように、弾性変形によって第二継手部12に外嵌される。押え板22によって第二継手部12の外周側から押さえられるボール部材21は、第二継手部12の外周側に抜け出ようとすることの反作用として、押え板22から押え板22の弾性による付勢力を受ける。
したがって、第二継手部12が第一継手部11に外嵌された状態となることで、第二継手部12の内周面12bから一部突出するボール部材21は外周側に押されて押え板22に作用し、第一継手部11の外周面11fに押し付けられる方向に付勢された状態となる。かかる状態において、ボール部材21は、押え板22の弾性変形によって、第二継手部12の径方向の移動が許容される。
一方、第一継手部11は、その外周面11fにおける、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態でボール部材21に対応する位置に、ボール部材21が嵌る溝部である嵌合溝11gを有する。図4に示すように、嵌合溝11gは、第一継手部11において水平方向(筒軸方向に対して垂直な方向)に外周面11fの全周にわたって形成される外周溝である。嵌合溝11gは、第一継手部11の筒軸方向(上下方向)について、水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態、つまり水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとが合わさった状態においてボール部材21が嵌り込む位置に形成される。
このように、第一継手部11と第二継手部12の嵌合部分において構成されるボールジョイント機構によれば、ボール部材21が嵌合溝11gに嵌ることにより、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態における第一継手部11と第二継手部12の上下方向の相対的な移動が規制される。
具体的には、第一継手部11に外嵌された状態の第二継手部12は、押え板22による付勢によってボール部材21を第一継手部11の外周面11fに押し付けた状態で、第一継手部11に対して上下方向に相対移動可能に支持される。したがって、ボール部材21が嵌合溝11gに嵌る位置に第二継手部12が達すると、押え板22により内周側に付勢されるボール部材21の嵌合溝11gに対する嵌合作用によって、第二継手部12の第一継手部11に対する上下方向の相対移動が規制される。
このように、ボールジョイント機構によって、第二継手部12の第一継手部11に対する上下方向についての位置決めおよび移動の規制が行われることで、スパウト部6の上方への移動が規制され、スパウト部6が水栓本体部3から浮き上がったりすることなく、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が保持される。そして、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態において、例えばスパウト部6が引っ張り上げられること等により、水栓本体部3とスパウト部6とが離間する方向に、ボール部材21が嵌合溝11gから抜け出ることができる大きさの力が作用することで、ボールジョイント機構による第二継手部12の第一継手部11に対する上下方向の相対移動の規制が解除される。
以上のような構成を備える本実施形態の連結構造によれば、ボール部材21を含むボールジョイント機構によって第二継手部12の第一継手部11に対する上下方向の移動が規制されるので、水栓装置1の通常の使用状態において、水栓本体部3とスパウト部6とが離れることを防止することができる。また、簡単な構成により、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態を維持することができる。また、ボール部材21を含むボールジョイント機構によれば、ボール部材21が嵌合溝11gに嵌る際に得られるクリック感によって水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が認識できるので、水栓本体部3とスパウト部6との連結作業について良好な作業性が得られる。
本実施形態に係るスパウト連結構造による水栓本体部3とスパウト部6との連結手順の一例について、図5を用いて説明する。図5(a)に示すように、本例に係る水栓本体部3とスパウト部6との連結に際しては、まず、第一継手部11が水栓本体部3にねじ込み固定される。つまり、第一継手部11のネジ部11aが本体部側開口部8のネジ部8aに係合することで、第一継手部11が本体部側開口部8に対して固定される。ここで、第一継手部11を回転させるため、第一継手部11の外周面11fに形成される平面部11hが工具掛かりとして用いられる(図4参照)。平面部11hは、第一継手部11の外周面において互いに平行な一対の平面によって二面幅を形成する。
第一継手部11が水栓本体部3に固定されることで、第一継手部11の拡径部11dの外周面と本体部側開口部8の内周面とが第一継手部11に外嵌されるOリング13によってシールされ、水栓本体部3の内部に形成される通水路が連通する本体部側開口部8から第一継手部11の通水孔11bにかけての通水経路が形成される。また、第一継手部11が水栓本体部3に固定された後、水栓本体部3とスパウト部6との合わせ面に介装されるリング16が、第一継手部11を貫通させて上端面3a上にセットされる。
次に、図5(b)に示すように、ボール部材21を保持する第二継手部12が、第一継手部11に対して上側から嵌め込まれ、第二継手部12の第一継手部11からの上側への抜けを規制する止め輪14が外周溝11cに取り付けられる。また、第一継手部11の先端の縮径部11eには、パッキン15が取り付けられる。
続いて、図5(c)に示すように、第一継手部11に支持された状態の第二継手部12がスパウト部6にねじ込み固定される。つまり、第二継手部12のネジ部12aがスパウト側開口部9のネジ部9aに係合することで、第二継手部12がスパウト側開口部9に対して固定される。第二継手部12のねじ込み固定は、次のようにして行われる。
すなわち、第一継手部11に外嵌された状態の第二継手部12は、第一継手部11に対する上方向への相対移動により、拡径部11dから浮いた状態とされ、ボール部材21が嵌合溝11gよりも上側に位置する状態で支持される。そして、第二継手部12を支持する第一継手部11に対して上方からスパウト部6がスパウト側開口部9の側から被せられ、第二継手部12のネジ部12aがスパウト側開口部9のネジ部9aに下側から当接し、セットされた状態となる。
かかる状態から、レンチ等の工具が用いられて掛かり部12cによって第二継手部12の共回りが規制されながらスパウト部6が回転させられ、第二継手部12がスパウト側開口部9にねじ込まれる。なお、ボール部材21が嵌合溝11gに嵌ってない状態においては、ボール部材21が第一継手部11の外周面11fに押し付けられることにより、第二継手部12の自重による落下が規制される。
そして、第二継手部12がスパウト部6に固定された後、スパウト部6が押し下げられることで、図5(d)に示すように、水栓本体部3とスパウト部6との連結が完了する。すなわち、スパウト部6の押し下げにともなって第二継手部12も押し下げられることで、第一継手部11が第二継手部12に対して相対的に上方に突出し、縮径部11eがパッキン15を介してスパウト側開口部9の奥側の部分に差し込まれた状態となり、また、水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとによってリング16が挟み込まれる。また、第二継手部12の第一継手部11に対する下方向への移動により、ボール部材21が嵌合溝11gに達することで、ボール部材21が嵌合溝11gに嵌り込む。このように、本実施形態のスパウト連結構造においては、水栓本体部3とスパウト部6との連結完了に際して、ボール部材21が嵌合溝11gに嵌ることによるクリック感が得られる。水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態においては、通水孔11bがスパウト4の通水路4aに連通した状態となり、水栓本体部3からスパウト部6への通水経路が確保される。
なお、水栓本体部3とスパウト部6との連結手順は、本例に係る手順に限定されるものではない。例えば、先に第二継手部12が第一継手部11に外嵌され、第二継手部12が外嵌された状態の第一継手部11が水栓本体部3に固定される手順や、第一継手部11が水栓本体部3に固定されるよりも先に、第一継手部11に支持された状態の第二継手部12がスパウト部6に固定される手順が採用されてもよい。
以上のような本実施形態に係るスパウト連結構造によれば、互いに連結される水栓本体部3とスパウト4とを備える構成において、水栓本体部3とスパウト4とを連結するための機構が外観に現れることがない。すなわち、第一継手部11が固定される本体部側開口部8および第二継手部12が固定されるスパウト側開口部9は、水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとがリング16を介して合わさった状態において、水栓本体部3とスパウト部6との連結部分において内部空間を形成する。
そして、第一継手部11および第二継手部12は、本体部側開口部8およびスパウト側開口部9のそれぞれに対して固定されるとともに互いに連結された状態で、本体部側開口部8とスパウト側開口部9とにより形成される内部空間に収容される。したがって、第一継手部11および第二継手部12は、水栓本体部3とスパウト部6との連結部分において外観に現れることなく、水栓装置1の内部にて、水栓本体部3とスパウト部6とを連結する。これにより、水栓本体部3とスパウト部6との連結部分において一体感のあるフォルムを実現することができる。
また、本実施形態に係るスパウト連結構造によれば、第一継手部11および第二継手部12の少なくともいずれかを水栓本体部3またはスパウト部6から取り外すことによって水栓本体部3とスパウト部6との連結状態を解除することができる。これにより、水栓装置1のメンテナンスを容易に行うことができる。さらに、本実施形態に係るスパウト連結構造によれば、カバー部材等を別途用いることなく、水栓本体部3とスパウト部6とを連結するための機構を外部に露出させないことができるので、カバー部材等による水栓装置1の大型化を容易に回避できる。
本発明の第二実施形態について説明する。なお、本発明の第一実施形態と共通する部分については、同一の符号を用いる等して適宜説明を省略する。図6〜図8に示すように、本実施形態に係るスパウト連結構造は、第一実施形態と同様に、第一継手部31と、第一継手部31に外嵌される第二継手部32とを備える。そして、本実施形態では、第二継手部32は、第一継手部31に外嵌された状態で、同じく第一継手部31に外嵌されるバネ部材としての巻きバネ41によって下向きに付勢された状態で支持される。
第一継手部31は、第一実施形態と同様に、全体として略円筒状の外形を有し、本体部側開口部8にねじ込まれることで水栓本体部3に固定される。すなわち、第一継手部31の下端部における外周面には、ネジ部31aが形成されており、第一継手部31は、ネジ部31aを本体部側開口部8のネジ部8aに係合させることで、水栓本体部3にねじ込み固定される。また、第一継手部31は、第一実施形態と同様に、本体部側開口部8に対して固定された状態で水栓本体部3からスパウト4への通水を確保する通水部としての通水孔31bを有する。なお、第一継手部31の下端部には、Oリング33が外嵌される。また、本実施形態では、第一継手部31は、水栓本体部3に対してねじ込み固定される水栓本体部3とは別体の部材であるが、これに限定されない。第一継手部31と水栓本体部3との固定方法は、ビス等の締結具による固定や、ロー付けによる固定等であってもよい。また、第一継手部31は、例えば鋳造からの機械加工等によって水栓本体部3の一部として水栓本体部3と一体的に構成される部分であってもよい。つまり、第一継手部31は、水栓本体部3の上側(スパウト部6側)の端部に突出するように設けられるものであればよい。
第二継手部32は、第一実施形態と同様に、略筒状に構成され、第一継手部31に対して同軸心状に配置された姿勢で上側から嵌め込まれることで、第一継手部31に外嵌される。また、第二継手部32は、第一実施形態と同様に、第一継手部31に外嵌された状態で、上下方向の抜けが規制された状態で支持される。第二継手部32の上方向への抜けは、第一継手部31の上部に形成される外周溝31cに嵌め込まれた状態で支持される止め輪34によって規制される。第二継手部32の下方向への抜けは、第一継手部31の下端部に形成される拡径部31dによって規制される。このように、第二継手部32は、略筒状の形状を有し第一継手部31に対して通水孔31bによる通水方向に沿う方向である上下方向に抜けが規制された状態で外嵌される。
第二継手部32は、第一実施形態と同様に、スパウト側開口部9にねじ込まれることでスパウト部6に固定される。すなわち、第二継手部32の外周面には、ネジ部32aが形成されており、第二継手部32は、ネジ部32aをスパウト側開口部9のネジ部9aに係合させることで、スパウト部6にねじ込み固定される。なお、第一継手部31の先端部には、縮径部31eが形成されており、この縮径部31eに、断面視略U字状のパッキン35が外嵌される。
以上のように第一継手部31および第二継手部32を含む構成においては、第一実施形態と同様に、水栓本体部3に固定された状態の第一継手部31、および第一継手部31に外嵌されるとともにスパウト部6に固定された状態の第二継手部32を介して、水栓本体部3とスパウト部6とが連結される。そして、水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとの間には、これらの面と略同じ外径寸法を有する円環板状の部材であるリング36が挟み込まれる。また、水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態においては、第一継手部31の縮径部31eが、パッキン35を介してスパウト側開口部9の奥側の部分に挿入された状態となる。
また、本実施形態に係るスパウト連結構造においては、第一実施形態と同様に、第二継手部32は、第一継手部31に外嵌された状態で、第一継手部31に対して相対回転可能かつ上下方向に相対移動可能に支持される。つまり、第二継手部32は、第一継手部31に外嵌された状態において、内周面32bを第一継手部31に対する摺動面として、第一継手部31に対して上下方向を回転軸方向として回転可能、かつ上下方向に移動可能に支持される。
また、第二継手部32は、第一実施形態と同様に、第一継手部31に外嵌された状態でのスパウト部6へのねじ込み固定に際してスパウト部6に対してねじ込み方向に相対的に回転するための作用を受ける掛かり部32cを有する。そして、第二継手部32は、第一継手部31に対する上下方向の相対移動によってスパウト側開口部9に対してセットされた状態から、掛かり部32cによってスパウト部6に対して相対的に回転するための作用を受けることでスパウト部6に固定される。
このようにして第二継手部32がスパウト部6に固定される構成において、第一実施形態と同様に、第一継手部31が水栓本体部3に固定され、かつ、第一継手部31に外嵌された状態の第二継手部32がスパウト部6に固定された状態から、スパウト部6が水栓本体部3に対して上下方向に沿って近接移動することで、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が得られる。
そして、本実施形態に係るスパウト構造においては、第二継手部32が、前記のとおり第一継手部31において巻きバネ41によって下向きに付勢された状態で支持される。つまり、本実施形態では、第二継手部32は、第一継手部31に外嵌された状態で、第一継手部31に外嵌される巻きバネ41によって第一継手部31に対して上下方向における水栓本体部3側に付勢される。
巻きバネ41の上端は、第一継手部31に支持される止め輪34の下面34aに当接し、巻きバネ41の下端は、第一継手部31の第二継手部32の上面32dに当接する。つまり、第一継手部31に外嵌される巻きバネ41は、止め輪34と第二継手部32との間に挟まれた状態で支持される。これにより、巻きバネ41は、第一継手部31に外嵌された状態の第二継手部32を下向きに付勢する。
このように、第二継手部32が巻きバネ41によって下向きに付勢された状態で第一継手部31に支持される構成によれば、スパウト部6に固定された状態の第二継手部32が水栓本体部3に固定された状態の第一継手部31に対して巻きバネ41から受ける付勢力により、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態における第二継手部32の第一継手部31に対する上下方向におけるスパウト部6側(上側)への移動が規制される。
具体的には、第一継手部31に外嵌された状態の第二継手部32は、巻きバネ41によって下方に押圧付勢された状態で、第一継手部31に対して上下方向に相対移動可能に支持される。したがって、止め輪34によって上方への移動が規制される巻きバネ41の付勢力によって、第二継手部32の第一継手部31に対する上方向の相対移動が規制される。
このように、巻きバネ41によって、第二継手部32の第一継手部31に対する上方向の移動の規制が行われることで、スパウト部6の上方への移動が規制され、スパウト部6が水栓本体部3から浮き上がったりすることなく、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が保持される。
以上のような構成を備える本実施形態の連結構造によれば、巻きバネ41によって第二継手部32の第一継手部31に対する上方向の移動が規制されるので、水栓装置1の通常の使用状態において、水栓本体部3とスパウト部6とが離れることを防止することができる。また、簡単な構成により、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態を維持することができる。
本実施形態に係るスパウト連結構造による水栓本体部3とスパウト部6との連結手順の一例について、図9を用いて説明する。図9(a)に示すように、本例に係る水栓本体部3とスパウト部6との連結に際しては、まず、リング36、第二継手部32、および巻きバネ41が、第一継手部31に対して上側から嵌め込まれ、そして、巻きバネ41を介して第二継手部32の第一継手部31からの上側への抜けを規制する止め輪34が外周溝31cに取り付けられる。また、第一継手部31の先端の縮径部31eには、パッキン35が取り付けられる。
次に、図9(b)に示すように、第二継手部32を支持した状態の第一継手部31が、スパウト側開口部9に挿入され、第二継手部32がスパウト部6にねじ込み固定される。つまり、第二継手部32のネジ部32aがスパウト側開口部9のネジ部9aに係合することで、第二継手部32がスパウト側開口部9に対して固定される。第二継手部32のねじ込み固定は、次のようにして行われる。
すなわち、第一継手部31に外嵌された状態の第二継手部32は、第一継手部31に対する上方向への相対移動により、巻きバネ41による付勢力に抗して拡径部31dから浮いた状態とされることで、第二継手部32のネジ部32aがスパウト側開口部9のネジ部9aに下側から当接し、セットされた状態となる。かかる状態から、レンチ等の工具が用いられて掛かり部32cによって第二継手部32の共回りが規制されながらスパウト部6が回転させられ、第二継手部32がスパウト側開口部9にねじ込まれる。なお、スパウト側開口部9に挿入される第一継手部31については、先端部がパッキン35を介してスパウト側開口部9の奥側の部分に差し込まれた状態となる。
続いて、図9(c)に示すように、第一継手部31が水栓本体部3にねじ込み固定される。つまり、第一継手部31のネジ部31aが本体部側開口部8のネジ部8aに係合することで、第一継手部31が本体部側開口部8に対して固定される。ここで、第一継手部31を回転させるため、第一継手部31の外周面に形成される平面部31hが工具掛かりとして用いられる(図8参照)。平面部31hは、第一継手部31の外周面において互いに平行な一対の平面によって二面幅を形成する。そして、第一継手部31の水栓本体部3への固定に際しては、平面部31hに掛かる工具のスペース確保のため、第一継手部31からスパウト部6が浮いた状態、つまり第一継手部31が巻きバネ41の付勢力に抗して引き下げられた状態とされる。
第一継手部31が水栓本体部3に固定されることで、第一継手部31の拡径部31dの外周面と本体部側開口部8の内周面とが第一継手部31に外嵌されるOリング33によってシールされ、水栓本体部3の内部に形成される通水路が連通する本体部側開口部8から第一継手部31の通水孔31bにかけての通水経路が形成される。また、第一継手部31が水栓本体部3に固定された後、水栓本体部3とスパウト部6との合わせ面に介装されるリング36が、上端面3a上にセットされる。
そして、第一継手部31が水栓本体部3に固定された後、巻きバネ41の付勢力によってスパウト部6が押し下げられることで、図9(d)に示すように、水栓本体部3とスパウト部6との連結が完了する。すなわち、スパウト部6が、第二継手部32を介して巻きバネ41の付勢力によって水栓本体部3に固定された状態の第一継手部31に対して押し下げられることで、水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとによってリング36が挟み込まれる。水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態においては、通水孔31bがスパウト4の通水路4aに連通した状態となり、水栓本体部3からスパウト部6への通水経路が確保される。
なお、水栓本体部3とスパウト部6との連結手順は、本例に係る手順に限定されるものではない。例えば、第一継手部31が水栓本体部3に固定された後に、第二継手部32等が第一継手部31に外嵌される手順や、第一継手部31に支持された状態の第二継手部32がスパウト部6に固定されるよりも先に、第一継手部31が水栓本体部3に固定される手順が採用されてもよい。以上のような本実施形態に係るスパウト連結構造によっても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
本発明の第三実施形態について説明する。なお、本発明の第一実施形態と共通する部分については、同一の符号を用いる等して適宜説明を省略する。図10および図11に示すように、本実施形態に係るスパウト連結構造は、第一実施形態と同様に、第一継手部51と、第一継手部51に外嵌される第二継手部52とを備える。そして、本実施形態では、第二継手部52は、第一継手部51に外嵌された状態で、第一継手部51に対する上下方向の移動を規制するための突起部52hを有する。
第一継手部51は、第一実施形態と同様に、全体として略円筒状の外形を有し、本体部側開口部8にねじ込まれることで水栓本体部3に固定される。すなわち、第一継手部51の下端部における外周面には、ネジ部51aが形成されており、第一継手部51は、ネジ部51aを本体部側開口部8のネジ部8aに係合させることで、水栓本体部3にねじ込み固定される。また、第一継手部51は、第一実施形態と同様に、本体部側開口部8に対して固定された状態で水栓本体部3からスパウト4への通水を確保する通水部としての通水孔51bを有する。なお、第一継手部51の下端部には、Oリング53が外嵌される。また、本実施形態では、第一継手部51は、水栓本体部3に対してねじ込み固定される水栓本体部3とは別体の部材であるが、これに限定されない。第一継手部51と水栓本体部3との固定方法は、ビス等の締結具による固定や、ロー付けによる固定等であってもよい。また、第一継手部51は、例えば鋳造からの機械加工等によって水栓本体部3の一部として水栓本体部3と一体的に構成される部分であってもよい。つまり、第一継手部51は、水栓本体部3の上側(スパウト部6側)の端部に突出するように設けられるものであればよい。
第二継手部52は、第一実施形態と同様に、略筒状に構成され、第一継手部51に対して同軸心状に配置された姿勢で上側から嵌め込まれることで、第一継手部51に外嵌される。また、第二継手部52は、第一実施形態と同様に、第一継手部51に外嵌された状態で、上下方向の抜けが規制された状態で支持される。
第二継手部52の上方向への抜けは、第一継手部51の上部に形成される鍔部51cによって規制される。鍔部51cは、第一継手部51の外周面51fから第一継手部51の径方向外側に向けて突出する円形状の外形を有する板状の部分である。
第二継手部52は、第一継手部51の鍔部51cに係止される部分として、係止片52eを有する。係止片52eは、図11および図12に示すように、第二継手部52の上端開口部において、略筒状の第二継手部52の周壁の一部が切り出されたように形成される突片部分である。係止片52eは、下側の辺部が繋がった状態で略矩形板状に切り出された形状を有する。本実施形態の第二継手部52は、二つの係止片52eを有する。二つの係止片52eは、第二継手部52の周方向について、第二継手部52の径方向に対向する位置に設けられる。
係止片52eは、第二継手部52の内周側に向けて突出する係止突部52fを有する。係止突部52fは、第二継手部52の内周面52bから内側に突出する部分である。具体的には、係止突部52fを含む係止片52eは、第二継手部52の軸心位置を通る断面視で、上端側かつ第二継手部52の径方向外側を直角部分とする略直角三角形状を有する。
第二継手部52は、係止片52eの上端面52gを、第一継手部51の鍔部51cの下面51jに接触させることで、第一継手部51に係止される。つまり、第二継手部52の係止片52eが第一継手部51の鍔部51cに下側から接触することで、第二継手部52の第一継手部51からの上方向への抜けが規制される。前記のとおり第二継手部52の径方向に対向する二箇所の位置に係止片52eを有する第二継手部52は、二つの係止片52eによって第一継手部51を径方向の両側から挟む位置で、第一継手部51の鍔部51cに係止される。
図12(a)に示すように、第二継手部52が第一継手部51に対して上側から嵌め込まれる過程においては、第二継手部52の内周面52bから突出する係止突部52fを有する係止片52eが、第一継手部51の上端縁部に当接する。第二継手部52の係止片52eが第一継手部51の上端縁部に当接した状態から、第二継手部52がさら嵌め込まれる方向に移動すると、図12(b)に示すように、係止片52eが弾性変形によって第二継手部52の径方向外側に湾曲し、第二継手部52に対する第一継手部51の貫通が許容される。このような第二継手部52の第一継手部51に対する相対移動による係止片52eの弾性変形は、前述したように断面視で略直角三角形状を有する係止片52eの斜面部の作用によって得られる。また、このような第二継手部52の第一継手部51に対する相対移動による係止片52eの弾性変形は、第一継手部51の鍔部51cの位置でも同様に生じる。
そして、図12(c)に示すように、第二継手部52の第一継手部51に対する下向きの相対移動によって係止片52eの係止突部52fが鍔部51cを乗り越えると、係止片52eが弾性変形から復帰して、係止片52eの上端面52gが鍔部51cの下面51jに対向する状態となる。このように係止片52eが鍔部51cの下側に位置する状態においては、第二継手部52は、係止片52eを鍔部51cに当接させることで、第一継手部51に対する相対的な上側への移動が規制される。
以上のように、第二継手部52の上方向への抜けは、第一継手部51の鍔部51cおよび第二継手部52に形成される係止片52eによって規制される。また、第二継手部52の下方向への抜けは、第一継手部51の下端部に形成される拡径部51dによって規制される。このように、第二継手部52は、略筒状の形状を有し第一継手部51に対して通水孔51bによる通水方向に沿う方向である上下方向に抜けが規制された状態で外嵌される。
第二継手部52は、第一実施形態と同様に、スパウト側開口部9にねじ込まれることでスパウト部6に固定される。すなわち、第二継手部52の外周面には、ネジ部52aが形成されており、第二継手部52は、ネジ部52aをスパウト側開口部9のネジ部9aに係合させることで、スパウト部6にねじ込み固定される。なお、第一継手部51の先端部には、縮径部51eが形成されており、この縮径部51eに、断面視略U字状のパッキン55が外嵌される。
以上のように第一継手部51および第二継手部52を含む構成においては、第一実施形態と同様に、水栓本体部3に固定された状態の第一継手部51、および第一継手部51に外嵌されるとともにスパウト部6に固定された状態の第二継手部52を介して、水栓本体部3とスパウト部6とが連結される。そして、水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとの間には、これらの面と略同じ外径寸法を有する円環板状の部材であるリング56が挟み込まれる。また、水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態においては、第一継手部51の縮径部51eが、パッキン55を介してスパウト側開口部9の奥側の部分に挿入された状態となる。
また、本実施形態に係るスパウト連結構造においては、第一実施形態と同様に、第二継手部52は、第一継手部51に外嵌された状態で、第一継手部51に対して相対回転可能かつ上下方向に相対移動可能に支持される。つまり、第二継手部52は、第一継手部51に外嵌された状態において、内周面52bを第一継手部51に対する摺動面として、第一継手部51に対して上下方向を回転軸方向として回転可能、かつ上下方向に移動可能に支持される。
また、第二継手部52は、第一実施形態と同様に、第一継手部51に外嵌された状態でのスパウト部6へのねじ込み固定に際してスパウト部6に対してねじ込み方向に相対的に回転するための作用を受ける掛かり部52cを有する。掛かり部52cは、略筒状の第二継手部52の下端部において二面幅を形成する。そして、第二継手部52は、第一継手部51に対する上下方向の相対移動によってスパウト側開口部9に対してセットされた状態から、掛かり部52cによってスパウト部6に対して相対的に回転するための作用を受けることでスパウト部6に固定される。
このようにして第二継手部52がスパウト部6に固定される構成において、第一実施形態と同様に、第一継手部51が水栓本体部3に固定され、かつ、第一継手部51に外嵌された状態の第二継手部52がスパウト部6に固定された状態から、スパウト部6が水栓本体部3に対して上下方向に沿って近接移動することで、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が得られる。
また、本実施形態に係るスパウト連結構造においては、第二継手部52が、突起部52hによって第一継手部51に係止される。突起部52hは、略筒状の第二継手部52の一部として形成される。
突起部52hは、第二継手部52が第一継手部51に外嵌された状態で第一継手部51の外周面51fに当接するとともに外周面51fに押し付けられる方向に付勢されるように形成される。突起部52hは、第二継手部52が有する突起片52jに設けられる。
突起片52jは、第二継手部52の上部において、略筒状の第二継手部52の周壁の一部が切り出されたように形成される片部である。突起片52jは、下側の辺部が繋がった状態で略矩形板状に切り出された形状を有する(図12(a)参照)。本実施形態の第二継手部52は、二つの突起片52jを有する。二つの突起片52jは、第二継手部52の周方向について、第二継手部52の径方向に対向する位置に設けられる。二つの突起片52jは、上述した二つの係止片52eとの関係において、略筒状の第二継手部52の軸心方向視で、二つの係止片52eが対向する方向と略直交する方向に対向する。
このように第二継手部52に形成される突起片52jの上端辺部に、突起部52hが形成される。突起部52hは、第二継手部52の内周面52bから内側に向けて突出する部分であり、第二継手部52の軸心位置を通る断面視で、略半円形状を有する。突起部52hは、略筒状の第二継手部52の円周形状に沿って形成される。
一方、第一継手部51は、その外周面51fにおける、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態で突起部52hに対応する位置に、突起部52hが嵌る溝部である嵌合溝51gを有する。嵌合溝51gは、第一継手部51において水平方向(筒軸方向に対して垂直な方向)に外周面51fの全周にわたって形成される外周溝である。嵌合溝51gは、第一継手部51の筒軸方向(上下方向)について、水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態、つまり水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとが合わさった状態において突起部52hが嵌り込む位置に形成される。
このように、本実施形態のスパウト連結構造においては、第二継手部52の突起部52hが第一継手部51の嵌合溝51gに嵌ることにより、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態における第一継手部51と第二継手部52の上下方向の相対的な移動が規制される。
具体的には、第一継手部51に外嵌された状態の第二継手部52は、突起部52hを第一継手部51の外周面51fに接触させた状態で、第一継手部51に対して上下方向に相対移動可能に支持される。したがって、突起部52hが嵌合溝51gに嵌る位置に第二継手部52が達すると、突起片52jの弾性により第二継手部52の内側に付勢される突起部52hの嵌合溝51gに対する嵌合作用によって、第二継手部52の第一継手部51に対する上下方向の移動が規制される。
詳細には、第一継手部51は、外周面51fに、第一継手部51の上側から下側に向けて緩やかに隆起する拡径部51kを有し、この拡径部51kに、嵌合溝51gが形成される。拡径部51kは、第二継手部52の第一継手部51に対する下方向への相対移動にともない、突起部52hを外周面51fに接触させるとともに、突起部52hを有する突起片52jを、第二継手部52の径方向外側に湾曲するように弾性変形させる。これにより、突起部52hは、第二継手部52が第一継手部51に外嵌された状態で第一継手部51の外周面51fに当接するとともに外周面51fに押し付けられる方向に付勢される。このように突起片52jの弾性変形によって突起部52hが外周面51fに押し付けられた状態から、第二継手部52の第一継手部51に対する下方向への相対移動によって突起部52hが嵌合溝51gに達すると、突起片52jが弾性変形から復帰して、突起部52hが嵌合溝51gに嵌合する。
このように、第二継手部52の突起部52hおよび第一継手部51の嵌合溝51gによって、第二継手部52の第一継手部51に対する上下方向についての位置決めおよび移動の規制が行われることで、スパウト部6の上方への移動が規制され、スパウト部6が水栓本体部3から浮き上がったりすることなく、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態が保持される。そして、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態において、例えばスパウト部6が引っ張り上げられること等により、水栓本体部3とスパウト部6とが離間する方向に、突起部52hが嵌合溝51gから抜け出ることができる大きさの力が作用することで、突起部52hおよび嵌合溝51gによる第二継手部52の第一継手部51に対する上下方向の相対移動の規制が解除される。
以上のような構成を備える本実施形態の連結構造によれば、巻きバネ41によって第二継手部32の第一継手部31に対する上方向の移動が規制されるので、水栓装置1の通常の使用状態において、水栓本体部3とスパウト部6とが離れることを防止することができる。また、簡単な構成により、水栓本体部3とスパウト部6との連結状態を維持することができる。また、上述した実施形態との比較において、ボール部材21や巻きバネ41等が不要であるため、第二継手部52の第一継手部51に対する上下方向の移動を規制するための機構を設けるに際し、部品点数を増加させる必要がなく、良好な組立性が得られ、コストの面でも優れている。
本実施形態に係るスパウト連結構造による水栓本体部3とスパウト部6との連結手順の一例について、図13および図14を用いて説明する。図13(a)に示すように、本例に係る水栓本体部3とスパウト部6との連結に際しては、まず、第一継手部51および第二継手部52を含む継手ユニットの組立てが行われる。具体的には、第二継手部52が第一継手部51に対して上側から嵌め込まれ、第一継手部51の先端の縮径部51eにパッキン55が取り付けられ、第一継手部51の下端部にOリング53が取り付けられる。ここで、第一継手部51に嵌め込まれる第二継手部52は、上述したように、第一継手部51を挿入させる過程で、係止片52eの弾性変形をともなう(図12参照)。
次に、図13(b)に示すように、継手ユニットを構成する第一継手部51が、水栓本体部3にねじ込み固定される。つまり、第一継手部51のネジ部51aが本体部側開口部8のネジ部8aに係合することで、第一継手部51が本体部側開口部8に対して固定される。ここで、第一継手部51を回転させるため、第一継手部51の外周面に形成される平面部51hが工具掛かりとして用いられる(図14(a)参照)。平面部51hは、第一継手部51の外周面51fにおいて互いに平行な一対の平面によって二面幅を形成する。また、第一継手部51の水栓本体部3への固定に際しては、平面部51hに掛かる工具のスペース確保のため、第一継手部51に外嵌された状態の第二継手部52は、その下端位置が平面部51hよりも上に位置するまで浮かせた状態とされる。
第一継手部51が水栓本体部3に固定されることで、第一継手部51の拡径部51dの外周面と本体部側開口部8の内周面とが第一継手部51に外嵌されるOリング53によってシールされ、水栓本体部3の内部に形成される通水路が連通する本体部側開口部8から第一継手部51の通水孔51bにかけての通水経路が形成される。また、第一継手部51が水栓本体部3に固定された後、水栓本体部3とスパウト部6との合わせ面に介装されるリング56が、上端面3a上にセットされる(図13(c)参照)。
続いて、図13(c)および図14(a)に示すように、リング56が継手ユニットを挿入させて本体部側開口部8にセットされた後、第二継手部52を支持した状態の第一継手部51が、スパウト側開口部9に挿入され、第二継手部52がスパウト部6にねじ込み固定される。つまり、第二継手部52のネジ部52aがスパウト側開口部9のネジ部9aに係合することで、第二継手部52がスパウト側開口部9に対して固定される。第二継手部52のねじ込み固定は、次のようにして行われる。
すなわち、前記のとおり浮いた状態とされる第二継手部52を支持する第一継手部51に対して上方からスパウト部6がスパウト側開口部9の側から被せられ、第二継手部52のネジ部52aがスパウト側開口部9のネジ部9aに下側から当接し、セットされた状態となる。かかる状態から、レンチ等の工具が用いられて掛かり部52cによって第二継手部52の共回りが規制されながらスパウト部6が回転させられ、第二継手部52がスパウト側開口部9にねじ込まれる。なお、スパウト側開口部9に挿入される第一継手部51については、先端部がパッキン55を介してスパウト側開口部9の奥側の部分に差し込まれた状態となる。
そして、第二継手部52がスパウト部6に固定された後、スパウト部6が押し下げられることで、図13(d)および図14(b)に示すように、水栓本体部3とスパウト部6との連結が完了する。すなわち、スパウト部6の押し下げにともなって第二継手部52も押し下げられることで、第一継手部51が第二継手部52に対して相対的に上方に突出し、縮径部51eがパッキン55を介してスパウト側開口部9の奥側の部分に差し込まれた状態となり、また、水栓本体部3の上端面3aとスパウト部6の下端面6aとによってリング56が挟み込まれる。また、第二継手部52の第一継手部51に対する下方向への移動により、突起部52hが嵌合溝51gに達することで、突起部52hが嵌合溝51gに嵌り込む。このように、本実施形態のスパウト連結構造においては、水栓本体部3とスパウト部6との連結完了に際して、突起部52hが嵌合溝51gに嵌ることによるクリック感が得られる。水栓本体部3とスパウト部6とが連結された状態においては、通水孔51bがスパウト4の通水路4aに連通した状態となり、水栓本体部3からスパウト部6への通水経路が確保される。
また、メンテナンス時等に第一継手部51および第二継手部52を取り外す場合は、図14(a)に示すように、まず、第二継手部52の第一継手部51に対する抜け止め位置、つまり係止片52eの上端面52gが鍔部51cの下面51jに接触する位置まで、スパウト部6が引き上げられる。このようにスパウト部6が引き上げられた状態で、掛かり部52cが用いられて第二継手部52のスパウト部6に対する締結が緩められ、スパウト部6が外される。そして、第二継手部52が第一継手部51において浮かせられた状態のまま、第一継手部51の水栓本体部3に対する締結が緩められ、第一継手部51が水栓本体部3から外される。
なお、水栓本体部3とスパウト部6との連結手順は、本例に係る手順に限定されるものではない。例えば、第一継手部51が水栓本体部3に固定された後に、第二継手部52等が第一継手部51に外嵌される手順や、第一継手部51が水栓本体部3に固定されるよりも先に、第一継手部51に支持された状態の第二継手部52がスパウト部6に固定される手順が採用されてもよい。以上のような本実施形態に係るスパウト連結構造によっても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。