JP2011085392A - 超音波撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波映像装置によって検査を行う際に、半導体チップ内の欠陥の有無の弁別度を向上させる。
【解決手段】欠陥部の前後の二か所以上にゲートを設定して、ゲート内での信号振幅もしくは信号積分値比を検査し、この信号比を正常な部分でのリファレンスデータと比較することで、欠陥の有無や、空間的な分布を画像として提示する。このエコー信号比と、正常な部位でのエコー信号比と比較した値を二次元画像として表示することにより、視覚的に欠陥の分布を画像として提示する。欠陥がある場合とない場合の信号の弁別度が向上することで、欠陥分布画像の精度が向上する。また、弁別比が向上することにともない、超音波ビームが欠陥位置を正確に重なった場合と、そうでない場合の信号の変化が大きくなることで、方位方向の空間分解能が向上する。
【選択図】図1
【解決手段】欠陥部の前後の二か所以上にゲートを設定して、ゲート内での信号振幅もしくは信号積分値比を検査し、この信号比を正常な部分でのリファレンスデータと比較することで、欠陥の有無や、空間的な分布を画像として提示する。このエコー信号比と、正常な部位でのエコー信号比と比較した値を二次元画像として表示することにより、視覚的に欠陥の分布を画像として提示する。欠陥がある場合とない場合の信号の弁別度が向上することで、欠陥分布画像の精度が向上する。また、弁別比が向上することにともない、超音波ビームが欠陥位置を正確に重なった場合と、そうでない場合の信号の変化が大きくなることで、方位方向の空間分解能が向上する。
【選択図】図1
Description
本発明は、超音波を半導体素子に対して送受信することにより、その内部を撮像する超音波技術に係り、特に半導体素子内のクラックなどの欠陥部位を検出するために用いられる超音波撮像技術に関する。
電子機器の小型軽量化,高機能化を実現する実装技術の中で,基板上に形成された素子を複数枚重ねて、基板垂直方向に素子間の電気的な接続を行うフリップチップ技術は,近年大きな発展をとげており,その重要性が増大している。フリップチップ接続では直径約80〜130 μmの球形導体からなるバンプを用いて、半導体基板間を基板に垂直な方向に接続する。バンプ内のクラックなどの欠陥検出に関しては,表面からの光学的な検出が難しく,超音波映像装置(SAT:Scanning Acoustic Tomography)への期待が大きい。
欠陥検出の目的は二つある。第一の目的はチップ内のバンプ1つ1つについて欠陥の有無を調べることである。これには検出感度が重要である。第二の目的は、欠陥の分布や形状などから,欠陥の原因を推定する手掛かりとすることである。この第二の目的の欠陥の分布を調べるためには、特定の深さに対応した超音波トモグラフィーが用いられている。超音波トモグラフィーは、特許文献1に示されるような、超音波送受信によって得られた信号に対して,特定の時間,すなわち,特定の深さに対応したエコー信号にゲートをかけ,ゲート内の信号強度を輝度信号に変換して断層像を提示する方法である。このトモグラフィー上で、周囲とコントラストのつく部分を、欠陥と見なしてきた。特に、ゲート内の信号の最大値と最小値の比からゲート内の信号の位相回転を調べる方法などが用いられている。
しかし、ゲート内の信号強度の違いや位相情報を観察しているだけでは、正確にゲートを掛けた部位の性状を反映しているのか、ゲートを掛けた部位に超音波が伝搬してくるまでの過程での減衰、屈折、散乱などの影響によるものかを判別することが困難であった。つまり素子表面からL0の距離にある面のトモグラフィーは、L0>Lとなる距離Lにおける様々な減衰、屈折、散乱などの影響を受けている可能性がある。
本発明の提案する方法では、特定の深さでの信号だけではなく,欠陥部を透過した後の信号も使う。欠陥部の前後の二か所以上にゲートを設定して、ゲート内での信号振幅もしくは信号積分値比を検査し、この信号比を正常な部分でのリファレンスデータと比較することで、断面位置以外で生じる、超音波の伝搬の過程の影響を極力抑えたトモグラフィー像を形成することが可能となる。この結果、欠陥の有無や、空間的な分布を画像として提示する。
この観察深さ前後のエコー信号比を二次元画像として表示することにより、視覚的に欠陥の分布を画像として提示することが可能となる。特に欠陥がある場合とない場合の信号の弁別度が向上することで、欠陥分布画像の検出感度が向上する。また、弁別比が向上することにともない、超音波ビームが欠陥位置に正確に重なった場合と、そうでない場合の信号の変化が大きくなることで、方位方向の空間分解能が向上する。
以下、本発明の実施例について図を参照して説明する。
まず図2に本発明の実施例1の概念図を示す。図2のaとbはエコー信号から断層像を描画する方法を示している。エコー信号の時間tが大きくなると,バンプのより深い場所からのエコー信号が得られる。エコー信号には主に2つのピークがある。これらは,バンプ上面とバンプ下面からのエコーである。従来のトモグラフィーはaの信号を基にした画像提示であり,エコー信号中のゲートAの信号のみを使用して,断層像を描画していた。これに対し、bに示すように欠陥より深い位置においては,欠陥があると超音波が伝搬せずに,信号強度が小さくなることに着目して,ゲートAとゲートBの2つの信号の強度比を使う信号処理を行うのが本発明である。
次に具体的な装置構成を説明しながら、本発明の実施方法を説明する。図1は、本発明による超音波撮像装置の例を示すブロック図である。まず超音波プローブ8はオペレータにより、対象物100に対して所望の位置に設置され、モータ10の走査範囲の設定がなされる。超音波プローブ8は、送受切り替えスイッチ3を介して、送波回路2と受信回路4に接続されている。送波回路2では、制御部1による制御に従って、図示しない送波波形メモリから読み出された波形信号が生成される。もちろん、パルサなど波形メモリを使わない送波方法でも構わない。この信号が、超音波プローブ8により超音波パルスに変換されて対象物100に送信される。対象物中で反射あるいは散乱されて戻ってきた超音波エコー信号は、超音波プローブ8にて電気信号に変換される。受信回路4では、例えばサンプリングレート1GHz、10bitのA/D変換素子によりデジタルデータに変換され、受信波形データが深さ毎にここには図示しないメモリに蓄えられる。この受信波形データに対して、入力部9を介してオペレータが、欠陥があると想定される着目部位を挟む、二か所にゲート部の設定を行うと、ゲート部抽出部5によってゲートA部の波形信号SAとゲート部Bの波形信号SBの抽出がおこなわれる。受信波形と、ゲート、SAとSBは図10に示す。ゲート部の設定は典型的な受波波形データを表示部に表示し、入力部を介してオペレータが手でゲート範囲を設定しても良いし、測定対象によって、複数のパターンを装置が記憶しておき、オペレータは測定対象を選ぶことによってゲートの設定を行っても良い。ゲート部での波形の抽出がおこなわれると、ゲート間信号演算部6によって、SA/SBの計算がおこなわれ、表示部にモータのポジションに対応した輝度情報として表示される。このあとはモータの位置を変え、上記のプロセスを繰り返すことで、二次元画像が表示される。
以下、実際の数値解析による結果を用いて説明する。シミュレーションに使用したバンプの構造を図3に示す。バンプは鉛系の半田(95Pb-5Sn)であり,バンプの上下には銅電極が接続してある。上部と下部の銅電極の厚さはそれぞれ10 μm,30μmであり,幅は,70μmである。また,バンプの周辺はアンダーフィル樹脂で充填されている。
シミュレーションに使用した超音波の周波数は200 MHzである。また,グリッド幅は1 μm,半田の材料定数は,密度8500 Kg/m3,縦波音速2140 m/s,横波音速972 m/sとした。シミュレーションでは,焦点距離を9.2 mm、口径幅を2 mmとした。
図3にシミュレーションによる提案方式の説明図を示す。超音波ビームをシリコン内で発生させ,バンプからのエコー信号を音圧の振幅波形をヒルベルト変換し、得られた複素信号とその複素共役信号を掛けた包絡線波形が図3の下のような波形で表わされる。(包絡線検波手段の一つとしてヒルベルト変換を用いたが、直交検波など他の方法で代用しても良い)ここで,3つのピークに注目する。ピークはそれぞれa上の銅電極表面からのエコー,b下の銅電極表面からのエコー,c上の銅電極裏面からのエコーである。これらの特徴量として,ビーム照射位置と反射位置との距離から,以下の値とする。
ピークa: ゲート0.08 〜 0.10 [μsec]内の最大値
ピークb: ゲート0.17 〜 0.19 [msec]内の最大値
ピークc: ゲート0.20 〜 0.22 [msec]内の最大値
3つのピークの最大値を用いて,今回は特に欠陥が起こりやすい電極とバンプの接合付近の2つの欠陥について検討した。1つ目はバンプの上方,2つ目はバンプの下方とした。上下の欠陥検出アルゴリズムを以下に示す。
(A) 上の欠陥検出:ピークaとピークbとの比
(B) 下の欠陥検出:ピークbとピークcとの比
(C) 欠陥位置とビームの焦点が水平方向にずれた場合
ただし,(A),(B)については欠陥の厚さと幅を変化させて検討した。
図4(a)〜(c)及び図5(a)〜(c)に,シミュレーション結果として,上部もしくは下部に欠陥がある場合における,エコー信号のピーク値a,b,cを示す。超音波ビームはバンプの中心線上に沿って照射され,バンプ表面で集束する。また,欠陥の位置もバンプの中心線上に置かれている。欠陥の幅を10, 20, 30, 40, 50, 60, 70 μm(グラフの横軸),欠陥の厚さを0.1 , 0.5, 1.0, 2.0, 5.0 μm(グラフ中の各線に対応)と変化させて計算した。
ピークa: ゲート0.08 〜 0.10 [μsec]内の最大値
ピークb: ゲート0.17 〜 0.19 [msec]内の最大値
ピークc: ゲート0.20 〜 0.22 [msec]内の最大値
3つのピークの最大値を用いて,今回は特に欠陥が起こりやすい電極とバンプの接合付近の2つの欠陥について検討した。1つ目はバンプの上方,2つ目はバンプの下方とした。上下の欠陥検出アルゴリズムを以下に示す。
(A) 上の欠陥検出:ピークaとピークbとの比
(B) 下の欠陥検出:ピークbとピークcとの比
(C) 欠陥位置とビームの焦点が水平方向にずれた場合
ただし,(A),(B)については欠陥の厚さと幅を変化させて検討した。
図4(a)〜(c)及び図5(a)〜(c)に,シミュレーション結果として,上部もしくは下部に欠陥がある場合における,エコー信号のピーク値a,b,cを示す。超音波ビームはバンプの中心線上に沿って照射され,バンプ表面で集束する。また,欠陥の位置もバンプの中心線上に置かれている。欠陥の幅を10, 20, 30, 40, 50, 60, 70 μm(グラフの横軸),欠陥の厚さを0.1 , 0.5, 1.0, 2.0, 5.0 μm(グラフ中の各線に対応)と変化させて計算した。
グラフの横軸は欠陥の幅,縦軸はピーク値のデシベル表示を示す。欠陥の幅が0のときは,欠陥がないことを意味する。従来の方法では,上部の欠陥検出には図4(a),下部の欠陥検出には図5(b)の値を検査する。欠陥がない場合とある場合を比較すると,図4(a)については最大5 dBの差があることがわかる。また,下の欠陥については,図5(b)より10 dB程度の差があることがわかる。この結果、従来方法の欠陥検出法を用いると上部の欠陥幅40〜50 μm程度,下部の欠陥幅20〜30 μm程度まで検出できることが示唆される。
上と下の欠陥に対する本発明における信号処理の結果を図6と図7にそれぞれ示す。
上と下の欠陥に対する本発明における信号処理の結果を図6と図7にそれぞれ示す。
まず,図6の上の欠陥に関して検討する。グラフの横軸は欠陥の幅,縦軸はピーク値の比のデシベル表示を示す。ピークaとbの比は欠陥が無い場合に8dBであり、欠陥の幅の拡大に伴い最大で42 dBまで拡大する。つまり、従来(図4(a))は欠陥の有無による信号の変化が最大で5dBであったのに対して、提案手法では変化が34dBに拡大している。
次に、欠陥の検出限界を比較する。これは、測定装置のダイナミックレンジにも依存するので、シミュレーション結果だけでは評価できないが、従来手法の欠陥の有無による信号の違い(クラック幅30〜40μm以上)である5dBを欠陥判定の閾値とすれば、提案手法では欠陥幅10 μmのときの信号の変化が既に10dBとなっている。この結果より、提案手法の方が、より細かい欠陥まで検出出来る可能性を示している。
次に,図7の下部の欠陥に関して検討する。図6の結果と比較すると,比の値にばらつきがあることがわかる。これらは,欠陥部からのエコーの他,バンプ境界面での回折や屈折などの波形があることや,ピークaとピークbに比べて,ピークbとピークcの距離が近いためだと考えられる。ピーク比は欠陥がない場合には−5dBであり、欠陥の幅の拡大に伴い、最大で30dBまで大きくなる。つまり、従来(図5(b))は欠陥の有無による信号の変化が最大で8dBであったのに対して、提案手法では変化が35dBに拡大している。図6の場合と同様に検出限界を考えると従来手法の欠陥の有無による信号の違い(クラック幅40μm以上)である8dBを欠陥判定の閾値とすれば、提案手法では欠陥幅10 から20μmのときの信号の変化が8dB以上となっている。この結果より、提案手法の方が、より細かい欠陥まで検出出来る可能性を示している。
次に、図8に欠陥の位置がバンプ中心からずれた場合の検討結果を示す。これにより、本発明の方位方向の空間分解能を数値計算によって検討を行う。ビームの集束位置はバンプの中心と欠陥が存在する位置の2種類について検討した。また,このときの欠陥の幅は20 μm,欠陥の厚みは0.1 μmと固定した。図8のピーク位置での信号強度に関して、結果を表1にまとめる。ピークaとピークbの比に着目し,下方に欠陥がある場合はピークbとピークcの比に着目する。表1の結果から、焦点位置が中心の場合と、欠陥位置の場合それぞれについて、欠陥の有無による信号強度の相違を表2にまとめた。(つまり、表1のバンプ中心のピークaとbの比の欠陥有無での差が、表2の欠陥上のバンプ中心のピークaとbの比の欄に対応、以下同じ)これらの表から分かることを以下にまとめる。
・欠陥がある位置に超音波ビームを集束させた場合,すなわちビームの集束する方向と欠陥の存在する位置が一致する場合では,上方と下方の欠陥でそれぞれ+21dB, +7 dBである。
・バンプの中心に超音波ビームを集束させた場合,すなわち欠陥の存在する位置から水平方向にずれた個所にビームが集束する場合では,上方の欠陥については+3dB,下方の欠陥については-3dBとなる。
・ビームが欠陥に向けて照射された場合とそうでない場合で,上部欠陥では約18dB、下部欠陥では10 dB以上の差がある。
以上より,バンプの水平方向の位置に対して,少なくともバンプ中央であるか,端であるかの違いを検知することが可能であると示唆される。
ここまでの説明では,試料の形状や材質などに依存する測定結果のバラツキや電気的なノイズの影響を考慮していない。図9にクラックが存在するときと、存在しない時のピークa、b、cの信号と、ノイズやバラツキの影響を模式的に示す。誤差要因としては、主として以下のAからDまで4つの要因が考えられる。
A:モールド材での超音波減衰や散乱の影響:
モールド材は樹脂とフィラの混合物からなり、この厚みが試料ごとに異なると、測定領域までに伝搬する過程で超音波が減衰する量が異なる。また局所的なフィラの混合率や粒径によって散乱の程度も異なるため、モールド材は信号強度に大きな影響を与える。
A:モールド材での超音波減衰や散乱の影響:
モールド材は樹脂とフィラの混合物からなり、この厚みが試料ごとに異なると、測定領域までに伝搬する過程で超音波が減衰する量が異なる。また局所的なフィラの混合率や粒径によって散乱の程度も異なるため、モールド材は信号強度に大きな影響を与える。
従来方法にあるような5dBのピーク強度の違いでクラック有無を判定するときに、この誤差要因による信号強度のバラつきは大きな影響を与える。一方、本発明では、この誤差要因はピークa、b、cに同じ影響を与えるので、ピークの比をとるときに、誤差の影響は除去できる。
B:試料とトランスデューサの走査面の平行度
超音波トランスデューサを二次元走査してトモグラフィー化する時に、試料の設置面と走査面の平行度を完全に合わせる事は難しい。すなわち、アライメントのずれによって、走査位置毎に、ピークa、b、cの位置がずれてくる。
B:試料とトランスデューサの走査面の平行度
超音波トランスデューサを二次元走査してトモグラフィー化する時に、試料の設置面と走査面の平行度を完全に合わせる事は難しい。すなわち、アライメントのずれによって、走査位置毎に、ピークa、b、cの位置がずれてくる。
このピーク位置のずれは、ピーク強度を計測するときに、ピーク位置のシフトも考慮して、強度を計測するアルゴリズムにすれば、誤差の影響を小さくすることが可能である。ただし、深度方向の超音波ビーム強度の分布が急峻な場合には、アライメントのずれがピーク強度のずれとしても現れる可能性があるので、ロバストなシステムの設計をするには、深度方向の超音波ビーム幅は広い設計とした方が良い。また、このアライメントの補正は信号処理の方だけでなく、測定装置に距離測定センサなどを組み込み、アライメント調整機構を備える方法も有効である。
C:バンプ形状のばらつき
半田などの材料からなるバンプは周囲の材料に比べ柔らかいため、個々のバンプ毎に接着時に形状に歪みが生じる可能性がある。バンプ形状にバラツキが生じると、ピークbとcの位置にバラツキが生じるので、やはり誤差要因Bの時と同様に、ピーク強度を推定するときにロバストになるようなアルゴリズムを採用するべきである。また形状バラツキが激しい場合にはピークbとcの比をとる時にも影響を与える可能性がある。バンプ形状バラツキを画像化するには、ピークaとbの距離(つまり時間差)をトモグラフィ像とすることで、画像化出来る可能性がある。
D:電気ノイズ
典型的なオシロスコープのA/D変換器のbit分解能は8bit程度であるので、ノイズの影響なくダイナミックレンジとして使える場合は48dB程度になる。これに電気ノイズが加わるので、実際のダイナミックレンジとしては48dB以下となる。クラックの存在によってピークbもしくはcが小さくなると、図9に示すように、ピークbもしくはcがノイズレベル以下となる場合がある。このようなときには、ピーク比をa/bのように求めると、極めて不安定な推定結果となってしまう。
C:バンプ形状のばらつき
半田などの材料からなるバンプは周囲の材料に比べ柔らかいため、個々のバンプ毎に接着時に形状に歪みが生じる可能性がある。バンプ形状にバラツキが生じると、ピークbとcの位置にバラツキが生じるので、やはり誤差要因Bの時と同様に、ピーク強度を推定するときにロバストになるようなアルゴリズムを採用するべきである。また形状バラツキが激しい場合にはピークbとcの比をとる時にも影響を与える可能性がある。バンプ形状バラツキを画像化するには、ピークaとbの距離(つまり時間差)をトモグラフィ像とすることで、画像化出来る可能性がある。
D:電気ノイズ
典型的なオシロスコープのA/D変換器のbit分解能は8bit程度であるので、ノイズの影響なくダイナミックレンジとして使える場合は48dB程度になる。これに電気ノイズが加わるので、実際のダイナミックレンジとしては48dB以下となる。クラックの存在によってピークbもしくはcが小さくなると、図9に示すように、ピークbもしくはcがノイズレベル以下となる場合がある。このようなときには、ピーク比をa/bのように求めると、極めて不安定な推定結果となってしまう。
一方、ピーク比をb/aとして定義すると、ピークbやcがノイズレベル以下となっても、クラックの存在は推定できる。つまり、ノイズレベルと同等なピーク比に対応する大きさ以上のクラックが存在するため、ピークbもしくはcが消失したことが推定出来るからである。このように提案手法によれば、電気ノイズの影響を極力抑えて、クラックの推定が可能である。
本発明と従来方法の比較をまとめると、
(1)従来方法で上部欠陥の有無による信強度の変化は5dBであったのに対して、本発明では欠陥の有無によって34dBの差があった。
(2)従来方法で下部欠陥の有無による信強度の変化は8dBであったのに対して、本発明では欠陥の有無によって35dBの差があった。
(3)欠陥位置が端にある場合、超音波ビームの位置が欠陥に一致した場合と、超音波ビームがバンプの中心にある場合では、上部欠陥では20dB、下部欠陥では20dBの信号差があった。
以上の結果から、本発明の検出限界は以下のように考えることができる。
(1)従来方法で欠陥の有無が判定出来る5dBを提案手法の欠陥判定の閾値とした場合,厚さ0.1 μm以上,幅10〜20 μmの上部欠陥を検出することが可能であり、従来方法での幅40〜50μmに比べて検出感度が改善される。
(2)(1)と同様厚さ0.1 μm以上,幅10〜20 μmの下部欠陥を検出することが可能であり、やはり従来手法での幅20〜30μmに比べて検出感度が改善される。
(3)提案手法は、バンプ内の欠陥の位置に関する情報を取得することが可能となる。
(4)また、提案手法の原理から考察すると、本研究のシミュレーションでは考慮していない,実際の測定におけるサンプルやアライメントのバラつきに対して、従来方法より影響を小さくすることができる。
(1)従来方法で上部欠陥の有無による信強度の変化は5dBであったのに対して、本発明では欠陥の有無によって34dBの差があった。
(2)従来方法で下部欠陥の有無による信強度の変化は8dBであったのに対して、本発明では欠陥の有無によって35dBの差があった。
(3)欠陥位置が端にある場合、超音波ビームの位置が欠陥に一致した場合と、超音波ビームがバンプの中心にある場合では、上部欠陥では20dB、下部欠陥では20dBの信号差があった。
以上の結果から、本発明の検出限界は以下のように考えることができる。
(1)従来方法で欠陥の有無が判定出来る5dBを提案手法の欠陥判定の閾値とした場合,厚さ0.1 μm以上,幅10〜20 μmの上部欠陥を検出することが可能であり、従来方法での幅40〜50μmに比べて検出感度が改善される。
(2)(1)と同様厚さ0.1 μm以上,幅10〜20 μmの下部欠陥を検出することが可能であり、やはり従来手法での幅20〜30μmに比べて検出感度が改善される。
(3)提案手法は、バンプ内の欠陥の位置に関する情報を取得することが可能となる。
(4)また、提案手法の原理から考察すると、本研究のシミュレーションでは考慮していない,実際の測定におけるサンプルやアライメントのバラつきに対して、従来方法より影響を小さくすることができる。
なお、ここまでの実施例では、一つのトモグラフィを提示する方法に関して説明を行ってきたが、以下のように複数のトモグラフィ像を並べたり、重畳して表示することにより、より情報量を増やすことも、欠陥の診断には有効な方法である。これまでの説明で述べてきたように、深部からエコーは、それ以前の伝搬過程での影響を受けている。例えばバンプ下の欠陥を調べるために図3のピークbとcの比だけでトモグラフィの例で説明する。ピークbとcの比はバンプ上面の欠陥が有ると、bもcも小さな値同士の割り算となり、精度が低下してしまう。このとき、ピークaとbの割り算で、バンプ上面に欠陥があり、それより先に超音波が伝搬していないと判断された場合には、bとcの比をむしろ表示しない方が良いことも考えうる。つまり、信号処理アルゴリズムとしては、以下のようになる。
1.欠陥を検出する深さをオペレータが設定。
2.上記の設定位置より浅い部分に欠陥が想定される部位が無いかを調べ、ある場合は、その浅部の欠陥想定部位を挟む二か所のゲートを設定。
3.上記2の二か所のピーク信号(最大値でも、信号の絶対値の積分値でも良い)の比を計算。
4.上記3のトモグラフィ上で欠陥があると推定される、欠陥分布マップを作成
5.1のオペレータが一番最初に設定した部位を挟む二つのゲートを設定。
6.上記5の二か所のピーク信号(最大値でも、信号の絶対値の積分値でも良い)の比を計算、トモグラフィを計算。
7.上記6のトモグラフィに対して、4の欠陥マップを重ねる。上記6のトモグラフィのうち、4の欠陥マップで欠陥でないと判定された部位のみを画面に表示。
なお、この7の操作は上記で説明したように、マスキングした結果を表示しても良いし、二つの画面を並べたり、カラーコードを変えて重ねて表示することも、有効な方法である。
1.欠陥を検出する深さをオペレータが設定。
2.上記の設定位置より浅い部分に欠陥が想定される部位が無いかを調べ、ある場合は、その浅部の欠陥想定部位を挟む二か所のゲートを設定。
3.上記2の二か所のピーク信号(最大値でも、信号の絶対値の積分値でも良い)の比を計算。
4.上記3のトモグラフィ上で欠陥があると推定される、欠陥分布マップを作成
5.1のオペレータが一番最初に設定した部位を挟む二つのゲートを設定。
6.上記5の二か所のピーク信号(最大値でも、信号の絶対値の積分値でも良い)の比を計算、トモグラフィを計算。
7.上記6のトモグラフィに対して、4の欠陥マップを重ねる。上記6のトモグラフィのうち、4の欠陥マップで欠陥でないと判定された部位のみを画面に表示。
なお、この7の操作は上記で説明したように、マスキングした結果を表示しても良いし、二つの画面を並べたり、カラーコードを変えて重ねて表示することも、有効な方法である。
これまでの説明では、二か所の離れた部位の信号の振幅比を画像化する方法に関して説明を行ってきた。しかし、超音波ビームは深さ方向に感度分布があることは知られている。このため、前記のバンプ形状が場所によって異なり、設定ゲート位置間の距離にばらつきがある場合には、ビームの深さ方向の強度分布が結果に影響を与えてしまう可能性がある。これを補正するには、二つの設定ゲート間でのピーク位置間の距離を計測し、ピーク位置間距離のバラつきから、ビーム強度分布を考慮した、補正を行うことで回避できる、もしくは精度の低下を極力抑えることが出来る。
また、今回の発明方法では、欠陥と思われる部位を挟んだ、二か所の離れた部位の信号の振幅比を画像化する方法に関して説明を行ってきた。つまり、欠陥を疑われる場所が広く存在する場合には、まずゲート間の距離を広くとり、欠陥の有無を調べながら、ゲート間隔を段々せまくしていく方法が有効である。例えば初期ゲート中心位置(ゲート開始位置と終了位置の平均値)をL1、L2とした時に、本発明の方法とL1とL2の間に欠陥があると分かった場合には、L3=(L1+L2)/2となるL3を設定する。次にL1とL3、L3とL2の二組のゲートのペアに関して、前述のL1とL2に対して行ったのと同様な方法で欠陥に有無を調べる。この結果、もしL1とL3の間に欠陥があると判定された場合には、今度はL4=(L1+L3)/2となるL4を設定、L1とL4の間なのか、L4とL3の間なのかを調べる。このような二分法に類似した絞り込みを行うことで、一度のスキャンデータから広い範囲で欠陥の有無を絞り込んでいくことが出来る。もちろん、二分法で絞り込んでいく以外にも、L1とL2で欠陥を調べたらL1’=L1+Δt、L2’=L2+Δtのように、ゲート位置をΔtだけシフトさせて欠陥を調べ、再度Δtシフトを繰り返すというような探索方法などを使うことも出来る。
また、今回の発明方法では、欠陥と思われる部位を挟んだ、二か所の離れた部位の信号の振幅比を画像化する方法に関して説明を行ってきた。つまり、欠陥を疑われる場所が広く存在する場合には、まずゲート間の距離を広くとり、欠陥の有無を調べながら、ゲート間隔を段々せまくしていく方法が有効である。例えば初期ゲート中心位置(ゲート開始位置と終了位置の平均値)をL1、L2とした時に、本発明の方法とL1とL2の間に欠陥があると分かった場合には、L3=(L1+L2)/2となるL3を設定する。次にL1とL3、L3とL2の二組のゲートのペアに関して、前述のL1とL2に対して行ったのと同様な方法で欠陥に有無を調べる。この結果、もしL1とL3の間に欠陥があると判定された場合には、今度はL4=(L1+L3)/2となるL4を設定、L1とL4の間なのか、L4とL3の間なのかを調べる。このような二分法に類似した絞り込みを行うことで、一度のスキャンデータから広い範囲で欠陥の有無を絞り込んでいくことが出来る。もちろん、二分法で絞り込んでいく以外にも、L1とL2で欠陥を調べたらL1’=L1+Δt、L2’=L2+Δtのように、ゲート位置をΔtだけシフトさせて欠陥を調べ、再度Δtシフトを繰り返すというような探索方法などを使うことも出来る。
本発明は、超音波撮像装置分野に適応可能である。
1…制御部、2…送波回路、3…送受切替スイッチ、4…受信回路、5…ゲート部抽出部、6…ゲート間信号演算部、7…表示部、8…超音波プローブ、9…入力部、10…モータ
Claims (10)
- 測定対象の関心部位に超音波を送受波する超音波探触子と、前記測定対象の関心部位からのエコーを測定するための超音波の送受信を切り替える送受切り替えスイッチと、前記送受切替スイッチを介して前記超音波探触子に駆動信号を印加する送波回路と、前記超音波探触子で検出された超音波信号の信号処理を行う受信回路と、前記受波回路の出力信号を蓄えるメモリと、前記メモリに蓄えられたエコー信号中の受信時間の異なる二か所の位置にゲートを設定し、そのゲート部での信号を抽出するゲート部抽出部と、前記二つのゲート信号の比を計算する振幅比計算部と、前記超音波探触子から送波される超音波ビームと前記測定対象の相対位置を動かすための機構と、前記の振幅比の計算結果を画像として表示する表示部とを有する超音波撮像システム
- 前記ゲート間信号演算部において、各ゲート信号の最大値の比、もしくは積分値の比を表示することを特徴とする請求項1記載の超音波撮像システム
- 前記超音波探触子から送波される超音波ビームと前記測定対象の相対位置を動かすための機構は、モータによって二次元面内を走査することを特徴とする請求項1記載の超音波撮像システム
- 前記超音波探触子から送波される超音波ビームと前記測定対象の相対位置を動かすための機構は、前記超音波探触子を構成する複数の振動子アレイとこれを駆動する送波ビームフォーマと、前記振動子アレイの各素子からの信号を受けてビームフォーミングする受波ビームフォーマによって電子的に二次元面内を走査することを特徴とする請求項1記載の超音波撮像システム
- 前記測定対象は半導体素子中のクラックなどの欠陥であり、欠陥の無い部位の標準データをリファレンスとして、標準データと各測定位置でのデータの差異を画像として表示することを特徴とする請求項1記載の超音波撮像システム
- 前記測定対象を装置内に設定したあと、プリスキャンによって、走査面と測定対象中の関心領域が配列される面の傾きを測定し、前記関心領域が配列される面が前記走査面と並行になるようにアライメントの補正を機械的にもしくは信号処理として行うことを特徴とする請求項1記載の超音波撮像システム
- 前記測定対象中に三ヵ所の位置にゲートを設定し、前記超音波探触子側から順にゲート信号を信号1,信号2,信号3と名付けたと時に、信号2と信号3の比及び信号1と信号2の比の二つの画像を表示することを特徴とする請求項1に記載の超音波撮像システム
- 請求項7に記載の超音波撮像システムにおいて、前記信号2と信号3の比からなる画像1に対して、信号1と信号2の比からなる画像に対して閾値処理をしたマスクを掛けて表示することを特徴とする超音波撮像システム
- 前記ゲート間信号演算部において、ゲート信号内の信号が最大値をとる位置間の距離もしくは時間差を断層像として表示することを特徴とする請求項1記載の超音波撮像システム
- 前記複数のゲート信号間の信号が最大値をとる位置間の距離および、前記超音波探触子の送波ビーム形状から、前記ゲート信号間の強度を補正した、各ゲート信号の最大値の比、もしくは積分値の比を表示することを特徴とする請求項9記載の超音波撮像システム
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- 2009-10-13 JP JP2009235878A patent/JP2011085392A/ja active Pending
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