JP2011084754A - スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

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秀隆 矢ヶ部
Katsunori Iwasaki
克典 岩崎
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Abstract

【課題】 酸化物を一定量含んだCu系スパッタリングターゲットについて、Cu酸化物の凝集を抑制し、Cu酸化物の微細分散を実現できる製造方法を提供する。
【解決手段】 Cu粉末を酸素含有雰囲気中で加熱処理して得た7.0原子%以上の酸素を導入した酸素含有Cu粉末を、不活性ガス雰囲気中で加圧焼結して酸素含有Cu焼結体とし、該酸素含有Cu焼結体を500〜1080℃の温度範囲において熱間塑性加工を行なうスパッタリングターゲットの製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば、平面表示装置に用いられるCu系配線膜の下地膜形成に使用される酸素を一定量含有するCuからなるスパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
近年、平面表示装置に使用される薄膜トランジスタ等の半導体電子部品においては、電子回路の高集積化や表示装置の大型化による応答速度の高速化の進展に伴い、配線層の低抵抗化が求められている。現在、低抵抗化の配線層としては、主にAl系の材料(純AlやAlを主成分とした合金)が用いられているが、更なる低抵抗化が要求されているため、Cu系の材料(純CuやCuを主成分とした合金)の採用が検討されている。
薄膜トランジスタ等の半導体電子部品において、Cu系配線は基板上に形成されるが、基板に対する密着性が弱いと言った問題がある。そこで、基板に対する密着性を向上させるために、酸素を含んだCu膜が検討されており、そのCu膜を成膜するためのスパッタリングターゲットとして、酸素を0.4〜6原子%含有し残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成で、素地中にCuOが均一に分散している組織を有する酸素含有銅ターゲットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−280545号公報
特許文献1に開示される一定量の酸素を含有しCuOが均一に分散した組織を有する銅ターゲットは、基板との密着性が優れた銅膜をスパッタリングにより形成する上で有効である。この特許文献1に具体的に記載されるのは、無酸素銅の溶湯中に酸素源となるCuO粉末を添加して溶解鋳造したインゴットを熱間圧延しターゲットを得る方法である。溶解鋳造法によってCu酸化物を有するターゲットを作製する場合には、組織制御が困難であるため、Cu酸化物が凝集し、偏在組織となりやすい。そして、このような組織となると塑性加工中に酸化物を起点とした加工欠陥が生じやすい、あるいはスパッタ中に異常放電を生じやすいという課題がある。
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、酸化物を一定量含んだCu系スパッタリングターゲットについて、Cu酸化物の凝集を抑制し、Cu酸化物の微細分散を実現できる製造方法を提供することである。
本発明はCu粉末を酸素含有雰囲気中で加熱処理して得た7.0原子%以上の酸素を導入した酸素含有Cu粉末を、不活性ガス雰囲気中で加圧焼結して酸素含有Cu焼結体とし、該酸素含有Cu焼結体を500〜1080℃の温度範囲において熱間塑性加工を行なうスパッタリングターゲットの製造方法である。
本発明によれば、基板に対して高い密着性を有するCu系配線膜を形成するための酸素を含有したスパッタリングターゲットにおいて、Cu酸化物を微細分散させることが可能となるため、安定して高い密着性を有するCu系配線膜を形成することが可能となる。
実施例におけるスパッタリングターゲット素材の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例における酸素含有Cu焼結体の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1におけるスパッタリングターゲット素材の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明の重要な特徴は、Cu粉末を酸素含有雰囲気中での加熱処理によって酸素導入した酸素含有Cu粉末を使用して加圧焼結することでCu酸化物が微細分散した焼結体とすることができ、さらにこの焼結体を所定の熱間塑性加工によって大型化すれば、加工欠陥の発生を抑制しつつ、Cu酸化物の微細分散した組織状態を維持できることを見出したことにある。以下に本発明を詳しく説明する。
まず、本発明においては、Cu粉末を酸素含有雰囲気中で加熱処理して得た酸素導入Cu粉末を用いることが重要である。加熱処理によりCu粉末中に酸素を導入する場合は、Cu粉末の表面からCu粉末の酸化が進むため、1つの粒子にCu酸化物相とCu相が存在する粉末となる。この粉末を用いれば、1粒子に2つの相があるため酸素の分散性が良く、またCu酸化物粉末とCu粉末とを混合する場合の比重差による偏析をも防止できる。
そして、酸素導入Cu粉末を用いて加圧焼結により得られる焼結体は、Cu酸化物が微細分散した組織となり、熱間加工時の加工欠陥の発生を抑制することができ、得られたスパッタリングターゲットも、Cu酸化物が微細分散した組織を確保できる。
なお、酸素含有Cu粉末中の酸素量は、酸素含有雰囲気中での加熱温度や加熱時間を調整することで制御することが可能であり、これにより、ターゲット中に含有させる酸素量を制御することが可能となる。
本発明においては酸素含有雰囲気中で加熱処理して得られるCu粉末の酸素含有量は、Cuと酸素の総和を100原子%とした時に、酸素を7.0原子%以上含むとしている。
スパッタリングにより得られる配線膜と基板の密着性は、酸素含有雰囲気中で加熱処理して得られるCu粉末の酸素含有量が増えるにつれて向上し、加熱処理したCu粉末中のCuと酸素の総和を100原子%とした時に、酸素量を7.0原子%以上含むことで、十分な密着性を確保できる。なお、加熱処理して得られるCu粉末の酸素含有量が7.0原子%に満たない場合は、配線膜と基板の密着性が十分でない。そのため、加熱処理して得られるCu粉末の酸素量の下限を7.0原子%とした。
なお、酸素含有雰囲気中での加熱処理に用いるCu粉末は、典型的には純度99.9%以上、酸素含有量500質量ppm以下のCu粉末が利用できる。また、加熱処理の際の雰囲気中の酸素量としては、大気中以上の酸素濃度を有する雰囲気であることが望ましい。また、加熱温度としては、高温であるほど酸化は進行するが、Cu粉末が溶融しない範囲である100〜900℃で行うことが望ましい。また、加熱時間は長いほど酸化は進行するが、生産性を考慮して加熱時間は、10分〜6時間となるように加熱温度とのバランスで調整するのが望ましい。また、使用するCu粉末としては、加熱処理による酸素量の制御がしやすいため、粒度分布(d50)が5〜200μmのものを用いるのが好ましい。
本発明では、加圧焼結して酸素含有Cu焼結体とする。この理由は、加圧焼結は固相状態における粉末同士の拡散接合であるため、酸素含有Cu粉末中の酸素の拡散距離は比較的小さく、酸素が凝集することなく酸素含有Cu焼結体を得ることができるからである。
また、加圧焼結は、不活性ガス雰囲気中で行う。これは、加圧焼結に際し、酸素含有Cu焼結体中に雰囲気中のガスが取り込まれて、焼結体と雰囲気ガスが反応することを防止するためである。不活性ガスとしてはArガスを使用することが望ましい。また、酸素がCu粉末から解離しない真空度の範囲であれば、真空雰囲気で加圧焼結しても良い。
加圧焼結としては、例えば、熱間静水圧プレス(HIP)やホットプレスによる焼結が適用できる。なお、スパッタリングターゲットとして安定して使用可能な相対密度98%以上を得るため、焼結時の加圧圧力は20MPa以上、焼結温度は800℃〜1000℃とすることが望ましい。
本発明では、上記で得られた酸素含有Cu焼結体を、500〜1080℃の温度範囲において熱間塑性加工を行なう。酸素含有Cu焼結体は延性に乏しいため、塑性加工に際して加熱することにより延性が向上し、塑性加工が可能になる。酸素含有Cu焼結体は、高温になる程延性が向上するため、加工温度は高温になる程望ましいが、酸素含有Cu焼結体が溶融しない範囲で加工する必要があるため、熱間塑性加工の温度の上限はCuの溶融温度である1080℃とした。また、酸素含有Cu焼結体の熱間塑性加工温度が500℃に満たない場合は、酸素含有Cu焼結体の延性が不足するため、塑性加工中に割れが発生する。そのため、熱間塑性加工の加熱温度の下限を500℃とした。
また、熱間塑性加工の方法としては、熱間鍛造や熱間圧延を適用でき、熱間鍛造のみで行ってもよいし、熱間圧延のみで行ってもよい。また、熱間鍛造と熱間圧延の両方を行ってもよい。
純度99.9%、酸素含有量360質量ppm、粒度分布(d50)が100μmのCu粉末を、体積百分率で酸素濃度19%の酸素含有雰囲気中(大気中)で、表1に示す各加熱温度、加熱時間で加熱処理した酸素含有Cu粉末である粉末A,Bを作製した。得られた各粉末の酸素含有量を非分散赤外吸引法で測定した結果を表1に示す。
得られた粉末Aを65質量%、粉末Bを35質量%の割合で混合し、軟鋼製の加圧容器に充填した後、加圧圧力120MPa、加熱温度950℃、保持時間1時間で熱間静水圧プレス(HIP)による加圧焼結を施して長さ310mm×幅110mm×厚さ50mmの酸素含有Cu焼結体を作製した。次に、得られた酸素を含有するCu焼結体を900℃に加熱後、総圧下率50%で圧延による熱間塑性加工を施して長さ590mm×幅115mm×厚さ25mmのスパッタリングターゲット素材を作製した。
上記で得られたスパッタリングターゲット素材から10×10×5mmの試験片を採取し、走査型電子顕微鏡を用いてミクロ観察を行なった。この実施例のミクロ組織の観察例を図1に示す。
また、上記の酸素含有Cu焼結体から10×10×5mmの試験片を採取し、走査型電子顕微鏡を用いてミクロ観察をした観察例を図2に示す。
(比較例1)
比較例1として、大気中で6.8kgの無酸素Cuをアルミナ坩堝に入れて高周波溶解し、得られた溶湯にCuO粉末(d50=20μm)を1.2kg添加した後、溶湯を1250℃に保持した。その後、鋳鉄製鋳型に鋳込み、60mm×60mm×150mmの酸素含有Cuインゴットを作製した。このインゴットを温度900℃に加熱し、鍛造により長さ300mm×幅110mm×厚さ14mmに加工した後、さらに温度900℃に加熱して、総圧下率50%の圧延による熱間塑性加工を施して、長さ560mm×幅110mm×厚さ7mmのスパッタリングターゲット素材を作製した。
また、上記で得られたターゲット素材から10×10×5mmの試験片を採取し、走査型電子顕微鏡を用いてミクロ観察を行なった。この実施例のミクロ組織の観察例を図3に示す。
図1に示すように、本発明の製造方法で作製したスパッタリングターゲット素材では、薄灰色で示されるCu中に濃灰色で示されるCu酸化物が均一微細に分散していることから、酸素を均一に分散させることが可能であることが分かる。
また、図2と図1の比較から、酸素含有Cu焼結体の酸化物の分散が、熱間塑性加工後も維持されていることが分かる。
一方、図3に示すように、比較例1の製造方法で作製した試料では薄灰色で示されるCu中に濃灰色で示されるCu酸化物が凝集し、写真中の左右方向に伸びていることから、酸素が均一に分散していないことが分かる。

Claims (1)

  1. Cu粉末を酸素含有雰囲気中で加熱処理して得た7.0原子%以上の酸素を導入した酸素含有Cu粉末を、不活性ガス雰囲気中で加圧焼結して酸素含有Cu焼結体とし、該酸素含有Cu焼結体を500〜1080℃の温度範囲において熱間塑性加工を行なうことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015170534A1 (ja) * 2014-05-08 2015-11-12 三井金属鉱業株式会社 スパッタリングターゲット材
WO2018159753A1 (ja) * 2017-03-01 2018-09-07 三菱マテリアル株式会社 スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法
JP2018145523A (ja) * 2017-03-01 2018-09-20 三菱マテリアル株式会社 スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法

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