JP2011077497A - Iii族窒化物半導体基板、エピタキシャル基板及び半導体デバイス - Google Patents

Iii族窒化物半導体基板、エピタキシャル基板及び半導体デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】半導体デバイスの発光強度を向上させることが可能なIII族窒化物半導体基板、エピタキシャル基板及び半導体デバイスを提供する。
【解決手段】半導体デバイス100では、表面10aが特定の面方位を有した上で、S換算で30×1010個/cm〜2000×1010個/cmの硫化物、及び、O換算で2at%〜20at%の酸化物が表面層12に存在することにより、エピタキシャル層22とIII族窒化物半導体基板10との界面においてCがパイルアップすることを抑制できる。これにより、エピタキシャル層22とIII族窒化物半導体基板10との界面における高抵抗層の形成が抑制される。したがって、半導体デバイス100の発光強度を向上させることができる。
【選択図】図9

Description

本発明は、III族窒化物半導体基板、エピタキシャル基板及び半導体デバイスに関する。
近年、化合物半導体を始めとする半導体は、その種々の特性を活かして応用範囲が更に広がっている。例えば、化合物半導体は、エピタキシャル層を積層するための下地基板として有用であり、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)等の半導体デバイスに用いられている。
下地基板として半導体基板を用いる場合、半導体基板の表面をひずみのない鏡面とする必要がある。そのため、半導体の単結晶インゴットに前加工(例えば、切断、ラッピング、エッチング)を施して半導体基板を得た後、半導体基板の表面に対して鏡面研磨が施されている。
半導体基板としては、例えば下記特許文献1〜3に記載されたものが知られている。特許文献1では、気相エピタクシー(VPE)によって結晶成長させた結晶性III−V族窒化物(例えば(Al、Ga、In)−N)を切断した後に前加工を施して得られる半導体基板が開示されている。特許文献1では、前加工として、半導体基板の表面を機械的研磨した後に、機械的研磨により生じた表面損傷を除去するために化学的研磨(CMP)を施すことが開示されている。
特許文献2には、AlGaInN(0<y≦1、x+y+z=1)ウェハの表面をCMPにより研磨してRMS基準の表面粗さを0.15nm未満とすることにより、表面の欠陥や汚染が低減された半導体基板が開示されている。特許文献2では、CMPを行うに際し、砥粒としてAl又はSiOを用いることや、研磨液に酸化剤を添加してpHを調整することが開示されている。
特許文献3には、エピタキシャル層と半導体基板との界面にパイルアップ(蓄積)されたSiがデバイスの特性を低下させているとの推測のもとに、エピタキシャル層と半導体基板との界面におけるSi濃度を8×1017cm−3以下とした半導体基板が開示されている。
米国特許6596079号明細書 米国特許6488767号明細書 特許第3183335号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載された半導体基板の上にエピタキシャル層(井戸層)を配置してなる積層体を用いた半導体デバイスでは、発光強度を向上させるには限界がある。そのため、半導体デバイスの発光強度を向上させることが可能な半導体基板の開発が強く切望されている。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、半導体デバイスの発光強度を向上させることが可能なIII族窒化物半導体基板、エピタキシャル基板及び半導体デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の末に、半導体基板の表面にC(炭素)等の不純物が存在すると、半導体基板の表面上にエピタキシャル層を形成した際にCが界面にパイルアップし、エピタキシャル層/半導体基板界面に電気抵抗の高い層(以下、「高抵抗層」という)が形成されてしまうことを見出した。また、高抵抗層が形成されることにより、エピタキシャル層/半導体基板界面の電気抵抗が増加してしまい、発光強度が低下してしまうことを見出した。
更に、本発明者らは、半導体デバイスに用いられるIII族窒化物半導体基板において、基板表面が特定の面方位を有した上で、特定量の硫化物及び酸化物が基板表面に存在することにより、エピタキシャル層と半導体基板との界面においてCがパイルアップすることを抑制可能であることを見出した。このようにCのパイルアップを抑制することで、エピタキシャル層と半導体基板との界面における高抵抗層の形成が抑制される。これにより、エピタキシャル層と半導体基板との界面における電気抵抗を低減することができると共に、エピタキシャル層の結晶品質を向上させることができる。したがって、半導体デバイスの発光強度を向上させることができる。
すなわち、本発明は、半導体デバイスに用いられるIII族窒化物半導体基板であって、III族窒化物半導体基板の表面に表面層を有し、表面層が、S換算で30×1010個/cm〜2000×1010個/cmの硫化物、及び、O換算で2at%〜20at%の酸化物を含み、c軸に対する表面の法線軸の傾斜角度は10°〜81°である。ここで、表面層は、S換算で30×1010個/cm〜2000×1010個/cmの硫化物がTXRF(全反射蛍光X線分析)によって計測され、O換算で2at%〜20at%の酸化物がAES(オージェ電子分光分析)によって計測され得る厚みを有する層である。
また、表面層はS換算で40×1010個/cm〜1500×1010個/cmの硫化物を含むことが好ましい。この場合、エピタキシャル層と半導体基板との界面における高抵抗層の形成を更に抑制し、半導体デバイスの発光強度を更に向上させることができる。
また、表面層はO換算で3at%〜16at%の酸化物を含むことが好ましい。この場合、エピタキシャル層と半導体基板との界面における高抵抗層の形成を更に抑制し、半導体デバイスの発光強度を更に向上させることができる。
更に、本発明者らは、特定量の塩化物、又は、特定量のシリコン化合物が基板表面に存在することにより、エピタキシャル層と半導体基板との界面における高抵抗層の形成を更に抑制し、半導体デバイスの発光強度を更に向上させることができることを見出した。
すなわち、表面層はCl換算で120×1010個/cm〜15000×1010個/cmの塩化物を含むことが好ましい。また、表面層はSi換算で100×1010個/cm〜12000×1010個/cmのシリコン化合物を含むことが好ましい。
更に、本発明者らは、基板表面における炭素化合物の含有量を特定量以下とすることにより、エピタキシャル層と半導体基板との界面における高抵抗層の形成を更に抑制し、半導体デバイスの発光強度を更に向上させることができることを見出した。
すなわち、表面層における炭素化合物の含有量はC換算で22at%以下であることが好ましい。
また、本発明者らは、基板表面における銅化合物が高抵抗層の形成に寄与することを見出した。更に、基板表面における銅化合物の含有量を特定量以下とすることにより、エピタキシャル層と半導体基板との界面における高抵抗層の形成を更に抑制し、半導体デバイスの発光強度を更に向上させることができることを見出した。
すなわち、表面層における銅化合物の含有量はCu換算で150×1010個/cm以下であることが好ましい。
また、表面層の表面粗さはRMS基準で5nm以下であることが好ましい。この場合、エピタキシャル層の結晶品質を更に向上させることが可能であり、半導体デバイスの発光強度を更に向上させることができる。
また、表面層の転位密度は1×10個/cm以下であることが好ましい。この場合、エピタキシャル層の結晶品質を更に向上させることができるため、半導体デバイスの発光強度を更に向上させることができる。
また、表面の面方位は、{20−21}面、{20−2−1}面、{10−11}面、{10−1−1}面、{11−22}面、{11−2−2}面、{22−43}面、{22−4−3}面、{11−21}面、{11−2−1}面のいずれかであることが好ましい。この場合、発光の半値幅を低減することができる。
本発明に係るエピタキシャル基板は、上記III族窒化物半導体基板と、III族窒化物半導体基板の表面層上に形成されたエピタキシャル層とを有し、エピタキシャル層がIII族窒化物半導体を含む。
本発明に係るエピタキシャル基板では、上記III族窒化物半導体基板を有しているため、エピタキシャル層と半導体基板との界面においてCがパイルアップすることを抑制可能である。したがって、エピタキシャル層と半導体基板との界面における高抵抗層の形成を抑制し、半導体デバイスの発光強度を向上させることができる。
また、エピタキシャル基板は、エピタキシャル層が量子井戸構造を有する活性層を有し、活性層が波長430nm〜550nmの光を発生するように設けられていることが好ましい。
本発明に係る半導体デバイスは、上記エピタキシャル基板を備える。
本発明に係る半導体デバイスでは、上記エピタキシャル基板を備えているため、エピタキシャル層と半導体基板との界面においてCがパイルアップすることを抑制可能である。したがって、エピタキシャル層と半導体基板との界面における高抵抗層の形成を抑制し、半導体デバイスの発光強度を向上させることができる。
本発明によれば、半導体デバイスの発光強度を向上させることが可能なIII族窒化物半導体基板、エピタキシャル基板及び半導体デバイスが提供される。
第1実施形態に係るIII族窒化物半導体基板を示す概略断面図である。 ドライエッチングに用いることが可能な装置を示す図である。 ポリシングに用いることが可能な装置を示す図である。 第1実施形態に係るエピタキシャル基板を示す概略断面図である。 第2実施形態に係るエピタキシャル基板を示す概略断面図である。 第3実施形態に係るエピタキシャル基板を示す平面図である。 第3実施形態に係るエピタキシャル基板を作製する手順を示した図である。 第3実施形態に係るエピタキシャル基板の変形例を示す平面図である。 第1実施形態に係る半導体デバイスを示す概略断面図である。 第2実施形態に係る半導体デバイスを示す概略断面図である。 実施例で用いた半導体デバイスを示す概略断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るIII族窒化物半導体基板、エピタキシャル基板及び半導体デバイスの好適な実施形態について詳細に説明する。
(III族窒化物半導体基板)
図1は、第1実施形態に係るIII族窒化物半導体基板10を示す概略断面図である。III族窒化物半導体基板10(以下、「窒化物基板10」という)は、図1に示すように、互いに対向する表面10a及び裏面10bを有しており、表面10aには、表面層12が形成されている。
窒化物基板10の構成材料としては、ウルツ鉱型構造を有する結晶が好ましく、例えば、GaN、AlN、InN、AlGaN、InGaNが挙げられる。GaNからなる窒化物基板10は、HVPE法、フラックス法等によって作製できる。AlNからなる窒化物基板10は、HVPE法、昇華法等によって作製できる。InN、AlGaN、InGaNからなる窒化物基板10は、HVPE法等によって作製できる。
窒化物基板10は、表面10a上に所望の半導体層(エピタキシャル層)をエピタキシャル成長させることが可能である。表面10aの品質は、エピタキシャル層の形成に適していることが好ましい。表面10aの品質は、基板内部のバルク部分における結晶品質とは異なり、表面組成や粗さ、加工変質層により影響を受けやすい。
ここで、加工変質層とは、結晶の研削又は研磨によって結晶の表面側領域に形成される結晶格子が乱れた層をいう。加工変質層は、結晶を劈開面で破断した断面をSEM観察やTEM観察、CL(カソードルミネセンスセンス)観察することにより、その存在及びその厚さを確認できる。加工変質層の厚さは、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。加工変質層の厚さが厚いと、エピタキシャル層のモフォロジー及び結晶性が低下する傾向がある。
CL観察とは、III窒化物半導体結晶に励起光として電子線を入射させて、III窒化物半導体結晶から放出される可視光又は可視波長領域に近い波長の光を観察することをいう。III族窒化物半導体結晶のCL観察を行うと、表面状態が良好な結晶領域では光が観察され、結晶が乱れた加工変質層の領域では光が観察されず、黒い直線状の陰影として観察される。
窒化物基板10を半導体デバイスに用いる場合には、窒化物基板10とエピタキシャル層との界面に高抵抗層が形成されることを抑制することが好ましい。高抵抗層の存在に起因して上記界面の電気抵抗が高くなってしまうと、半導体デバイスの発光効率が低下してしまう。特に、半導体デバイスに大きな電流を注入した場合には、発光効率は著しく低下してしまう。
このような高抵抗層の形成を抑制する観点から、表面層12は硫化物及び酸化物を含む。
表面層12は、S換算で30×1010個/cm〜2000×1010個/cmの硫化物、及び、O換算で2at%〜20at%の酸化物を含む。硫化物の含有量は、S換算で120×1010個/cm〜1500×1010個/cmが好ましく、100×1010個/cm〜500×1010個/cmがより好ましい。酸化物の含有量は、O換算で3at%〜16at%が好ましく、4at%〜12at%がより好ましい。硫化物の含有量が30×1010個/cm未満、又は、酸化物の含有量が2at%未満であると、半導体基板とエピタキシャル層との界面に高抵抗層が形成し、界面の高抵抗化により半導体デバイスの発光強度が低下する。硫化物の含有量が2000×1010個/cmを超える、又は、酸化物の含有量が20at%を超えると、エピタキシャル層の結晶品質が低下し、半導体デバイスの発光強度が低下する。
表面層12は、Cl換算で120×1010個/cm〜15000×1010個/cmの塩化物を含むことが好ましい。塩化物の含有量は、Cl換算で350×1010個/cm〜10000×1010個/cmがより好ましく、1000×1010個/cm〜5000×1010個/cmが更に好ましい。塩化物の含有量が120×1010個/cm未満であると、半導体基板とエピタキシャル層との界面に高抵抗層が形成され易く、界面の高抵抗化により半導体デバイスの発光強度が低下する傾向がある。塩化物の含有量が15000×1010個/cmを超えると、エピタキシャル層の結晶品質が低下し易く、半導体デバイスの発光強度が低下する傾向がある。
表面層12は、Si換算で200×1010個/cm〜12000×1010個/cmのシリコン化合物を含むことが好ましい。シリコン化合物の含有量は、Si換算で500×1010個/cm〜8000×1010個/cmがより好ましく、1000×1010個/cm〜5000×1010個/cmが更に好ましい。シリコン化合物の含有量が200×1010個/cm未満であると、半導体基板とエピタキシャル層との界面に高抵抗層が形成され易く、界面の高抵抗化により半導体デバイスの発光強度が低下する傾向がある。シリコン化合物の含有量が12000×1010個/cmを超えると、エピタキシャル層の結晶品質が低下し易く、半導体デバイスの発光強度が低下する傾向がある。
表面層12は、炭素化合物を含んでいてもよい。表面層12における炭素化合物の含有量は、C換算で22at%以下が好ましく、18at%以下がより好ましく、15at%以下が更に好ましい。炭素化合物の含有量が22at%を超えると、エピタキシャル層の結晶品質が低下し易く、半導体デバイスの発光強度が低下する傾向があると共に、半導体基板とエピタキシャル層との界面に高抵抗層が形成され易く、界面の高抵抗化により半導体デバイスの発光強度が低下する傾向がある。
表面層12は、銅化合物を含んでいてもよい。表面層12における銅化合物の含有量は、Cu換算で150×1010個/cm以下が好ましく、100×1010個/cm以下がより好ましく、50×1010個/cm以下が更に好ましい。銅化合物の含有量が150×1010個/cmを超えると、エピタキシャル層の結晶品質が低下し易く、半導体デバイスの発光強度が低下する傾向があると共に、半導体基板とエピタキシャル層との界面に高抵抗層が形成され易く、界面の高抵抗化により半導体デバイスの発光強度が低下する傾向がある。
表面層12の組成は、S、Si、Cl及びCuについては、TXRF(全反射蛍光X線分析)で定量することができる。TXRFは、X線の進入深さから、表面から5nm程度までの組成を評価する。O及びCについては、AES(オージェ電子分光分析)で定量することができる。AESは、0.1%の分解能がある。AESは、オージェ電子の脱出深さから表面から5nm程度の組成を評価する。なお、表面層12は、含有成分をTXRFやAESによって計測され得る厚みを有する層であり、例えば5nm程度の厚さを有する。
表面層12と窒化物基板10内部のバルク部分との組成の違いは、SIMS(二次イオン質量分析)により深さ方向の分析を行うことで評価することができる。また、窒化物基板10内部、窒化物基板10とエピタキシャル層との界面、及び、エピタキシャル層内部の組成の違いについてもSIMSで評価することができる。
窒化物基板10における表面層12の表面粗さは、エピタキシャル層の結晶品質を更に向上させ、素子発光の積分強度を更に向上させることができる観点から、RMS基準で5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましく、1nm以下が更に好ましい。また、優れた生産性とエピタキシャル層の結晶品質とを両立させる観点からは、表面粗さは1nm〜3nmが好ましい。ここで、RMS基準の表面粗さ(二乗平均粗さ)は、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて、表面10aの10μm角の領域を基準面積として測定することができる。
表面層12の転位密度は、1×10個/cm以下が好ましく、1×10個/cm以下がより好ましく、1×10個/cm以下が更に好ましい。転位密度が1×10個/cmを超えると、エピタキシャル層の結晶品質が低下し易く、半導体デバイスの発光強度が低下する傾向がある。一方、結晶作製時の優れたコスト・生産性の観点から、転位密度は1×10個/cm以上が好ましい。転位密度は、CL観察を行い、表面層12の10μm角領域内の非発光となる点の数をカウントして算出することができる。
窒化物基板10の表面10aは半極性面であり、表面10aの面方位は、ウルツ鉱型構造の{20−21}面、{20−2−1}面、{10−11}面、{10−1−1}面、{11−22}面、{11−2−2}面、{22−43}面、{22−4−3}面、{11−21}面、{11−2−1}面のいずれかであることが好ましい。この場合、エピタキシャル層のインジウム(In)の取り込み効率を向上させることもできるため、良好な発光特性が得られる。表面10aの面方位は、例えばX線回折装置を用いて測定することができる。
c軸に対する表面10aの法線軸の傾斜角度(オフ角)は10°〜81°であり、17°〜80°が好ましく、63°〜79°がより好ましい。傾斜角度が10°以上であることにより、ウルツ鉱型構造の自発分極によるピエゾ電界が抑制されるため、発光デバイスのPL強度を向上させることができる。傾斜角度が81°以下であることにより、エピタキシャル層(井戸層)の転位密度を低減し、半導体デバイスの発光強度を向上させることができる。
次に、窒化物基板10の製造方法について説明する。
まず、HVPE法等によりIII族窒化物半導体結晶をc軸方向やm軸方向に成長させた後に、その結晶に外周加工を施して成形し、III族窒化物半導体のインゴットを得る。次に、得られたインゴットを所望の角度でワイヤーソーやブレードソーを用いて切断して、表面10aが所望のオフ角を有する窒化物基板10を得る。なお、下地基板として半極性基板を用い、半極性基板の上にIII族窒化物半導体の結晶を成長させて、表面が所望のオフ角を有するインゴットを用いてもよい。
次に、基板表面を平坦化するため、グラインディング加工(研削)やラッピング加工等の機械加工を行う。研削には、硬質砥粒としてダイヤモンド、SiC、BN、Al、Cr、ZrO等を含む砥石を用いることができる。ラッピング加工には、硬質砥粒としてダイヤモンド、SiC、BN、Al、Cr、ZrO等を含む一般的な研磨剤を用いることができる。
砥粒は、機械的な作用や特性を考慮して適宜選定される。例えば、研磨レートを上げる観点から、高硬度で粒径の大きな砥粒が使用される。表面を平滑にする観点や、加工変質層の形成を抑制する観点から、低硬度で粒径の小さな砥粒が使用される。また、研磨時間を短縮し、かつ、平滑な表面を得る観点から、研磨処理の進行に伴い粒度の大きな砥粒から小さな砥粒へ変化させる多段階の研磨が好適である。
窒化物基板10に研削やラッピング加工を施した後、窒化物基板10の表面10aの表面粗さの低減や加工変質層の除去のため、表面10aに対してドライエッチングやCMP等の表面仕上げを行う。なお、ドライエッチングは、研削やラッピング加工の前に行ってもよい。
ドライエッチングとしては、RIE(反応性イオンエッチング)、誘導結合プラズマRIE(ICP−RIE)、ECR(電子サイクロトロン共鳴)−RIE、CAIBE(化学アシストイオンビームエッチング)、RIBE(反応性イオンビームエッチング)等が挙げられ、中でも反応性イオンエッチングが好ましい。反応性イオンエッチングには、例えば、図2に示すドライエッチング装置16を用いることができる。
ドライエッチング装置16は、チャンバ16aを備えている。チャンバ16a内には、平行平板型の上部電極16b及び下部電極16cと、上部電極16bと対向するように下部電極16c上に配置された基板支持台16dとが設けられている。チャンバ16a内には、ガス源に接続されたガス供給口16eと、真空ポンプに接続されたガス排気口16fとが設けられている。チャンバ16aの外部には、下部電極16cに接続された高周波電源16gが配置されている。
ドライエッチング装置16では、ガス供給口16eからガスをチャンバ16a内に供給し、高周波電源16gから高周波電力を下部電極16cに供給することにより、チャンバ16a内にプラズマを発生させることができる。基板支持台16d上に窒化物基板10を配置することで、窒化物基板10の表面10aをドライエッチングすることができる。
ガス供給口16eから供給されるエッチングガスとして硫黄系ガスを用いることにより、高いエッチングレートが得られると共に、表面層12の硫化物の含有量を調整することができる。硫黄系ガスとして、例えば、HS、SO、SF、SF等を用いることができる。同様に、エッチングガスとして塩素系ガスを用いることにより、高いエッチングレートが得られると共に、表面層12の塩化物の含有量を調整することができる。塩素系ガスとしては、例えば、Cl、HCl、CCl、BCl、SiCl、SiHClを用いることができる。表面層12のシリコン化合物、炭素化合物の含有量は、エッチングガスとして、例えばSiCl、SiHCl、CH、Cを用いることで調整することができる。なお、ガスの種類、ガス流量、チャンバ内の圧力、エッチングのパワーを調整することで、表面層12の含有成分の含有量を制御することもできる。
反応性イオンエッチングでは、チャンバ内の圧力をP(Pa)、ガス流量をQ(sccm)、チャンバ容積をV(L)としたときに、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0.05≦PV/Q≦3.0 …(1)
PV/Qが0.05よりも小さい場合には、表面粗さが増加する傾向がある。PV/Qが3.0よりも大きい場合には、表面改質の効果が小さくなる傾向がある。
CMPには、例えば、図3に示すポリシング装置18を用いることができる。ポリシング装置18は、定盤18a、ポリシングパッド18b、結晶ホルダ18c、重り18d、及び、スラリー液供給口18eを備えている。
ポリシングパッド18bは、定盤18a上に載置されている。定盤18a及びポリシングパッド18bは、定盤18aの中心軸線X1を中心に回転可能である。結晶ホルダ18cは、窒化物基板10をその下面に支持するための部品である。窒化物基板10には、結晶ホルダ18cの上面に載置された重り18dによって荷重が加えられる。結晶ホルダ18cは、軸線X1と略平行であり、且つ、軸線X1から変位した位置に中心軸線X2を有しており、この中心軸線X2を中心に回転可能である。スラリー液供給口18eは、ポリシングパッド18b上にCMP溶液のスラリーSを供給する。
このポリシング装置18によれば、定盤18a及びポリシングパッド18bと、結晶ホルダ18cとを回転させ、スラリーSをポリシングパッド18b上に供給し、窒化物基板10の表面10aをポリシングパッド18bに接触させることによって、表面10aのCMPを行うことができる。
表面層12の含有成分の含有量は、CMP溶液の添加物、pH、酸化還元電位により調整することができる。CMP溶液には砥粒を添加することができる。砥粒の材質としては、ZrO、SiO、CeO、MnO、Fe、Fe、NiO、ZnO、CoO、Co、GeO、CuO、Ga、Inからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を用いることができる。Si、Cu、Cu−Zn合金、Cu−Sn合金、Si、SiAlON、等の化合物を用いることもできる。砥粒の材質は、洗浄性を高める観点から、イオン化傾向の高い材質が好ましく、Hよりもイオン化傾向が高い材質であると、洗浄による除去効率を特に向上させることができる。なお、砥粒を含まないCMP溶液を用いてもよい。砥粒として、Si、Si、SiAlON、等を用いることにより、表面層12のシリコン化合物の含有量を調整することができる。Cu、Cu−Zn合金、Cu−Sn合金、等を用いることにより、表面層12の銅化合物の含有量を調整することができる。
CMP後に表面10aに砥粒が残存することを十分に抑制する観点から、CMP溶液には界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、第4級アンモニウム塩型、アルキルアミン塩型、エステル型、エーテル型が挙げられる。
CMP溶液の溶媒としては、非極性溶媒が好ましい。非極性溶媒としては、炭化水素、四塩化炭素、ジエチルエーテル等が挙げられる。非極性溶媒を用いることにより、金属酸化物である砥粒と基板との固体接触を促進させることができるため、効率よく基板表面の金属組成を制御することができる。
CMP溶液の半導体基板に対する化学的な作用(メカノケミカル効果)は、CMP溶液のpHや酸化還元電位により調整することができる。CMP溶液のpHは、1〜6又は8.5〜14が好ましく、1.5〜4又は10〜13がより好ましい。pH調整剤としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸等の有機酸、KOH、NaOH、NHOH、有機アルカリ、アミン等のアルカリの他に硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩等の塩を用いることができる。pH調整剤として有機酸を使用することにより、無機酸、無機塩と比較して、同じpHでも不純物の除去効果を向上させることができる。有機酸としてはジカルボン酸(2価カルボン酸)が好ましい。
pH調整剤及び酸化剤として、硫酸等の硫黄原子を含む酸、硫酸ナトリウム等の硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩を用いることにより、表面層12の硫化物の含有量を調整することができる。塩酸等の塩素原子を含む酸、塩化カリウム等の塩、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩、トリクロロイソシアヌル酸等の塩素化イソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素化イソシアヌル酸塩、を用いることにより、表面層12の塩化物の含有量を調整することができる。炭酸、炭酸塩、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸等の有機酸、有機酸塩等を用いることにより、表面層12の炭素化合物の含有量を調整することができる。
CMP溶液の酸化還元電位は、酸化剤を用いて調整することができる。CMP溶液に酸化剤を添加して酸化還元電位を増加させることにより、砥粒の除去効果を高く維持しつつ研磨レートを向上させると共に、表面層12の酸化物の含有量を調整することができる。酸化剤としては、特に制限はないが、酸化還元電位を十分に高める観点から、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩、トリクロロイソシアヌル酸等の塩素化イソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素化イソシアヌル酸塩等の塩素系酸化剤、硫酸、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩等の硫黄系酸化剤、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩、ニクロム酸カリウム等のニクロム酸塩、臭素酸カリウム等の臭素酸塩、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、硝酸、過酸化水素水、オゾン等が好ましく用いられる。これらの中でも、硫黄系酸化剤や塩素系酸化剤を用いることにより、研磨レートを向上させることや、研磨後の表面層12の硫化物や塩化物の含有量を上記好適な含有量に調整することができる。
ここで、CMP溶液のpHの値をxとし、酸化還元電位の値をy(mV)としたときに、x及びyの関係は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
−50x+1400≦y≦−50x+1900 …(2)
yが式(2)の上限値を超えると、ポリシングパッドや研磨設備への腐食作用が強くなり、安定した状態で研磨することが困難となる傾向があると共に、基板表面の酸化が過度に進行する傾向がある。yが式(2)の下限値未満であると、基板表面の酸化作用が弱くなり易く、研磨レートが低下する傾向がある。
CMP溶液の粘度を制御することにより、表面層12の含有成分の含有量を調整することができる。CMP溶液の粘度は、2mPa・s〜30mPa・sが好ましく、5mPa・s〜10mPa・sがより好ましい。CMP溶液の粘度が2mPa・sより低いと、表面層12の含有成分の含有量が上述した所望の値よりも高くなる傾向があり、30mPa・sを超えると、表面層12の含有成分の含有量が上述した所望の値よりも低くなる傾向がある。なお、CMP溶液の粘度は、エチレングリコール等の高粘度の有機化合物やベーマイト等の無機化合物を添加することで調整できる。
CMP溶液の硫酸イオンの濃度や接触係数Cにより、表面層12の硫化物の含有量を調整することができる。接触係数Cとは、CMP溶液の粘度η(mPa・s)、研磨時の周速度V(m/s)、研磨時の圧力P(kPa)を用いて、「C=η×V/P」で定義される。接触係数Cは、1.0×10−6m〜2.0×10−6mが好ましい。接触係数Cが1.0×10−6m未満であると、CMPにおける半導体基板への負荷が強くなり易く、表面層12の硫化物の含有量が過剰量となる傾向があり、2.0×10−6mを超えると、研磨レートが低下する傾向があると共に、表面層12の硫化物の含有量が小さくなる傾向がある。
研磨時の圧力は、3kPa〜80kPaが好ましく、10kPa〜60kPaがより好ましい。圧力が3kPa未満であると、研磨レートが実用上不十分となる傾向があり、80kPaを超えると、基板の表面品質が低下する傾向がある。
窒化物基板10によれば、表面10aが上記特定の面方位を有した上で、S換算で30×1010個/cm〜2000×1010個/cmの硫化物、及び、O換算で2at%〜20at%の酸化物が表面層12に存在することにより、エピタキシャル層と窒化物基板10との界面においてCがパイルアップすることを抑制することができる。このようにCのパイルアップを抑制することで、エピタキシャル層と窒化物基板10との界面における高抵抗層の形成が抑制される。これにより、エピタキシャル層と窒化物基板10との界面における電気抵抗を低減することができると共に、エピタキシャル層の結晶品質を向上させることができる。したがって、半導体デバイスの発光強度を向上させることができる。
(エピタキシャル基板)
図4は、第1実施形態に係るエピタキシャル基板20を示す概略断面図である。エピタキシャル基板20は、図4に示すように、ベース基板としての上記窒化物基板10と、窒化物基板10の表面10a上に積層されたエピタキシャル層22とを有している。
エピタキシャル層22は、例えばIII族窒化物半導体を含む。III族窒化物半導体としては、ウルツ鉱型構造を有する結晶が好ましく、例えば、GaN、AlN、InN、AlGaN、InGaNが挙げられる。エピタキシャル層22は、HVPE法、MOCVD法、VOC法、MBE法、昇華法等の気相成長法により形成することができる。窒化物基板10上にエピタキシャル層22を設けることにより、半導体デバイスの発光強度を向上させることができる。
図5は、第2実施形態に係るエピタキシャル基板30を示す概略断面図である。エピタキシャル基板30は、図5に示すように、窒化物基板10の表面10a上に、複数層により構成されたエピタキシャル層32が形成されている。窒化物基板10上にエピタキシャル層32を設けることにより、半導体デバイスの発光強度を向上させることができる。
エピタキシャル層32は、第1の半導体領域32aと、第2の半導体領域32bと、第1の半導体領域32a及び第2の半導体領域32bの間に設けられた活性層32cとを備える。第1の半導体領域32aは、一又は複数のn型半導体層を有し、例えば、厚さ1μmのn型GaN層32d、及び、厚さ150nmのn型Al0.1Ga0.9N層32eを有する。第2の半導体領域32bは、一又は複数のp型半導体層を有し、例えば、厚さ20nmのp型Al0.2Ga0.8N層32f、及び、厚さ150nmのp型GaN層32gを有する。エピタキシャル層32では、n型GaN層32d、n型Al0.1Ga0.9N層32e、活性層32c、p型Al0.2Ga0.8N層32f、及び、p型GaN層32gが窒化物基板10上にこの順序で積層されている。
活性層32cは、例えば、波長430nm〜550nmの光を発生するように設けられている。活性層32cは、例えば、4層の障壁層と3層の井戸層とを有し、障壁層及び井戸層が交互に積層された多重量子井戸構造(MQW)を有する。障壁層は、例えば、厚さ10nmのGaN層である。井戸層は、例えば、厚さ3nmのGa0.85In0.15N層である。
エピタキシャル層32は、例えば、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法により、n型GaN層32d、n型Al0.1Ga0.9N層32e、活性層32c、p型Al0.2Ga0.8N層32f及びp型GaN層32gを窒化物基板10上に順次エピタキシャル成長させて形成することができる。
図6は、第3実施形態に係るエピタキシャル基板40を示す平面図である。エピタキシャル基板40は、図6に示すように、窒化物基板10の表面10a上に配置されたエピタキシャル層42を有する。
エピタキシャル層42は、所定の転位密度より小さい転位密度を有する複数の低転位密度領域44Aと、該所定の転位密度より大きい転位密度を有する複数の高転位密度領域44Bとを有する。この所定の転位密度は、例えば8×10cm−2である。
低転位密度領域44A及び高転位密度領域44Bの各々は、窒化物基板10の表面10aの平面方向(図6中のY方向)に互いに略平行にストライプ状に伸びており、エピタキシャル層42の裏面から表面にかけて形成されている。エピタキシャル層42は、低転位密度領域44A及び高転位密度領域44Bが交互に並ぶストライプ構造を有している。エピタキシャル層42は、例えばGaNにより構成されており、上記ストライプ構造により結晶内の転位密度が低減されている。低転位密度領域44A及び高転位密度領域44Bは、走査型電子顕微鏡(例えば、日立製作所製S−4300)を用いてCL観察することにより確認することができる。
次に、図7を用いてエピタキシャル基板40の製造方法について説明する。まず、図7(a)に示すように、下地基板となる窒化物基板10の表面10a上に、例えば図7(a)のY方向に伸びるようにストライプ状のマスク層46をパターニング形成する。マスク層46は、例えばSiO2により形成されている。
次に、図7(b)に示すように、上記マスク層46が形成された表面10a上に、気相成長法によりエピタキシャル層42をファセット成長させる。気相成長法としては、HVPE法、MOCVD法、VOC法、MBE法、昇華法等を用いることができる。エピタキシャル層42をファセット成長によって厚膜成長させていくと、マスク層46がエピタキシャル層42によって覆われ、マスク層46上に位置する部分に高転位密度領域44Bが形成される。
高転位密度領域44Bは、上記ストライプ構造だけでなく、図8(a)に示すように、ストライプ状の高転位密度領域44Bが互いに直交したスクエア構造や、図8(b)に示すように、ドット状の高転位密度領域44Bが互いに所定間隔をおいて規則的に配列されたドット構造であってもよい。このようなスクエア構造やドット構造の高転位密度領域44Bは、ストライプ構造同様、マスク層46を用いたエピタキシャル層42のパターニング形成により得ることができる。
(半導体デバイス)
図9は、第1実施形態に係る半導体デバイス100を示す概略断面図である。半導体デバイス100は、図9に示すように、エピタキシャル基板20と、エピタキシャル層22の表面23全体を覆って形成された電極90Aと、窒化物基板10の裏面10b全体を覆って形成された電極90Bとを有する。電極90A,90Bは、例えば金属蒸着により形成される。電極90A,90Bの形成位置は、必要に応じて適宜変更可能であり、電極90Bが窒化物基板10に電気的に接続されており、電極90Aがエピタキシャル層22に電気的に接続されていればよい。
図10は、第2実施形態に係る半導体デバイス200を示す概略断面図である。半導体デバイス200は、図10に示すように、エピタキシャル基板30と、エピタキシャル層32の表面33の全体を覆って形成された第1の電極(p側電極)92Aと、窒化物基板10の裏面10bの一部を覆って形成された第2の電極(n側電極)92Bとを有する。半導体デバイス200のサイズは、例えば400μm角や2mm角である。導電体91Aは、はんだ層93を介して電極92Aに電気的に接続されている。導電体91Bは、ワイヤ94を介して電極92Bに電気的に接続されている。
半導体デバイス200は、以下の手順により製造することができる。まず、上述した方法により窒化物基板10を得る。次に、窒化物基板10の表面10a上にエピタキシャル層32を積層する。更に、エピタキシャル層32の表面33上に電極92Aを形成すると共に窒化物基板10の裏面10b上に電極92Bを形成する。続いて、電極92Aをはんだ層93により導電体91Aに電気的に接続すると共に電極92Bをワイヤ94により導電体91Bに電気的に接続する。
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。上記の説明に記載された{20−21}面、M面、A面等の面方位は、その記載自体により特定されるものだけでなく、結晶学的に等価な面及び方位を含む。例えば、{20−21}面とは、{20−21}面のみならず、(02−21)面、(0−221)面、(2−201)面、(−2021)面、(−2201)面を含む。
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)GaN基板の作製
まず、n型GaN結晶(ドーパント:O)をHVPE法によりc軸方向に成長させた。次に、GaN結晶をc軸に垂直又は平行にスライスし、直径50mm×厚さ0.5mmのGaN基板をそれぞれ得た。また、GaN結晶をc軸からm軸方向に傾斜、又は、c軸からa軸方向に傾斜させてスライスし、直径50mm×厚さ0.5mmのGaN基板をそれぞれ得た。
続いて、GaN基板の表面、及び、表面と反対側の裏面にドライエッチングを施し加工変質層を除去した。ドライエッチングには、図2と同様の構成を有するRIE装置を用いた。真空チャンバの容積(V)は20Lとした。基板支持台の材質はSiCとした。エッチングガスにはCl、CHを用い、ガス流量(Q)は30sccmとした。圧力(P)4.0Pa、パワー50W〜200Wでドライエッチングを行った(PV/Q=2.67)。
(2)GaN基板表面のラッピング
GaN基板の裏面をセラミックス製の結晶ホルダにワックスで貼り付けた。ラップ装置に直径380mmの定盤を設置し、ダイヤモンドの砥粒が分散されたスラリーをスラリー供給口から定盤に供給しながら、定盤をその回転軸を中心にして回転させた。次に、結晶ホルダ上に重りを載せることによりGaN基板を定盤に押し付けながら、GaN基板を結晶ホルダの回転軸を中心にして回転させることにより、n型GaN結晶の表面のラッピングを行った。
ラッピングは以下の条件で行った。定盤としては銅定盤、錫定盤を用いた。砥粒としては砥粒径が9μm、3μm、2μmの3種類のダイヤモンドの砥粒を準備し、ラッピングの進行と共に、砥粒径が小さい砥粒を段階的に用いた。研磨圧力は100g/cm2〜500g/cm2とし、GaN基板及び定盤の回転数はいずれも30回/min〜60回/minとした。以上のラッピングによりGaN結晶基板の表面は鏡面となったことを確認した。
(3)GaN基板表面のCMP
図3と同様の構成を有するポリシング装置を用いて、GaN基板の表面のCMPを行った。CMPは以下の条件で行った。ポリシングパッドとしては、ポリウレタンのスウェードパッド(ニッタ・ハース株式会社製、Supreme RN-R)を用いた。定盤としては、直径380mmの円形のステンレス鋼定盤を用いた。GaN基板とポリシングパッドとの接触係数Cは、1.0×10−6m〜2.0×10−6mとした。ポリシング圧力は10kPa〜80kPaとし、GaN基板及びポリシングパッドの回転数はいずれも30回/min〜120回/minとした。スラリー(CMP溶液)には、砥粒として粒径200nmのシリカ粒子を水に20質量%分散させた。スラリーにはpH調整剤としてクエン酸、HSOを添加し、酸化剤としてジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを添加して、スラリーのpH及び酸化還元電位を下記式(3)の範囲に調整した(x:pH、y:酸化還元電位(mV))。
−50x+1400≦y≦−50x+1900 …(3)
ドライエッチング、CMPの条件を適宜変更することにより、表面組成が異なるGaN基板を作製した。GaN基板の表面の硫化物の含有量の評価はTXRFにより行い、酸化物の含有量の評価はAESにより行った。TXRFはX線の線源にW封入型X線管球を用い、X線出力は電圧40kV、電流40mAとし、入射角度0.05°で測定を行った。AESは、加速電圧10keVで測定を行った。GaN基板の表面の面方位及び表面組成を表1〜4に示す。
(4)GaN基板を含むレーザダイオードの作製
図11に示す構成を有するレーザダイオードを以下の手順により作製した。まず、GaN基板10をMOCVD炉内のサセプタ上に配置した後、表面10a上にエピタキシャル層52を形成し、エピタキシャル基板50を得た。
エピタキシャル層52は、MOCVD法により以下の成長手順で作製した。まず、GaN基板10上に厚さ1000nmのn型GaN52aを成長した。次に、厚さ1200nmのn型InAlGaNクラッド層52bを成長した。引き続き、厚さ200nmのn型GaNガイド層52c及び厚さ65nmのアンドープInGaNガイド層52dを成長した後に、GaN厚さ15nm/InGaN厚さ3nmから構成される3周期MQW(活性層)52eを成長した。続いて、厚さ65nmのアンドープInGaNガイド層52f、厚さ20nmのp型AlGaNブロック層52g及び厚さ200nmのp型GaNガイド層52hを成長した。次に、厚さ400nmのp型InAlGaNクラッド層52iを成長した。最後に、厚さ50nmのp型GaNコンタクト層52jを成長した。なお、エピタキシャル層52の作製に際しては、原料としてトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)、シクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いた。
SiOの絶縁膜95をコンタクト層52j上に成膜した後に、フォトリソグラフィを用いて幅10μmのストライプ窓をウェットエッチングにより形成した。c軸を基板表面に投影した方向に平行となるようにレーザストライプを設けた。
ストライプ窓を形成した後に、Ni/Auからなるp側電極96Aと、Ti/Alからなるパッド電極とを蒸着した。次いで、GaN基板10の裏面10bをダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、裏面10bが鏡面(ミラー)状態の基板生産物を作製した。このとき、接触式膜厚計を用いて基板生産物の厚みを測定した。なお、厚みの測定は、試料断面の顕微鏡観察により行っても良い。顕微鏡には、光学顕微鏡や、走査型電子顕微鏡を用いることができる。更に、GaN基板10の裏面(研磨面)10bには、Ti/Al/Ti/Auからなるn側電極96Bを蒸着により形成した。
レーザストライプに対する共振器ミラーの作製には、波長355nmのYAGレーザを用いるレーザスクライバを用いた。レーザスクライバを用いてブレイクした場合には、ダイヤモンドスクライブを用いた場合と比較して、発振チップ歩留まりを向上させることが可能である。スクライブ溝は、以下の条件で形成した:レーザ光出力100mW;走査速度5mm/s。スクライブ溝は、長さ30μm、幅10μm、深さ40μmの溝であった。800μmピッチで基板の絶縁膜の開口箇所を通してエピタキシャル層の表面に直接レーザ光を照射することによって、スクライブ溝を形成した。共振器長は600μmとした。
ブレードを用いて、共振ミラーを割断により作製した。基板裏側に押圧によりブレイクすることによって、レーザバーを作製した。レーザバーの端面に真空蒸着法によって誘電体多層膜をコーティングした。誘電体多層膜は、SiOとTiOを交互に積層して構成した。膜厚はそれぞれ、50〜100nmの範囲で調整して、反射率の中心波長が500〜530nmの範囲になるように設計した。片側の反射面を10周期とし、反射率の設計値を約95%に設計した。もう片側の反射面を6周期とし、反射率の設計値を約80%とした。
以上により得られたLDについて、通電による評価を室温にて行った。電源には、パルス幅500ns、デューティ比0.1%のパルス電源を用い、表面電極に針を落として通電した。電流密度は100A/cmとした。LEDモード光を観測する際には、光ファイバをレーザバー表面側に配置することで、表面から放出される発光スペクトルを測定した。LEDモード光の積分強度、及び、スペクトル測定の発光ピークから算出された半値幅を表1〜5に示す。なお、表1〜3は、GaN結晶をc軸からm軸方向に傾斜させてスライスしたGaN基板を用いたLDの評価結果である。表4,5は、GaN結晶をc軸からa軸方向に傾斜させてスライスしたGaN基板を用いたLDの評価結果である。レーザ光を観測する際には、光ファイバをレーザバー端面側に配置することで、端面から放出される発光スペクトルを測定した。LEDモード光の発光波長は、500nm〜550nmであった。レーザの発振波長は500nm〜530nmであった。
Figure 2011077497
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表1〜5に示されるように、実施例1−1〜1−14及び実施例2−1〜2−10は、表面の法線軸がc軸に対して特定の傾斜角度を有した上で、硫化物の含有量がS換算で30×1010個/cm〜2000×1010個/cmの範囲であると共に、酸化物の含有量がO換算で2at%〜20at%の範囲であるため、良好な発光強度が得られた。また、表面の面方位が、{20−21}面、{20−2−1}面、{10−11}面、{10−1−1}面、{11−22}面、{11−2−2}面、{22−43}面、{22−4−3}面、{11−21}面、{11−2−1}面のいずれかである場合には、スペクトル測定の発光ピークから算出された半値幅が小さく、発光波長の広がりが小さいことが確認された。特に、{20−21}面、{20−2−1}面、{11−21}面、{11−2−1}面では、高い積分強度と小さい半値幅が得られた。
一方、比較例1−1、1−3、1−4、1−6、2−1、2−3、2−4及び2−6では、酸化物の含有量が上記範囲から外れているため、発光強度が減少することが確認された。比較例1−2、1−5、2−2及び2−5では、表面が上記特定の面方位を有していないため、発光強度が減少することが確認された。比較例1−7〜1−10では、酸化物の含有量、もしくは硫化物の含有量が上記範囲から外れているため、発光強度が減少することが確認された。
更に、実施例1−15及び実施例1−16として、実施例1−5と同等の面方位、酸化物、硫化物の含有量で、塩化物、シリコン化合物、炭素化合物及び銅化合物の含有量、並びに、表面粗さ、転位密度の異なる基板を作製し、同様にレーザ特性の評価を行った。実施例1−15は、Cl濃度が5000×1010個/cm、Si濃度が2000×1010個/cm、炭素濃度が12at%、銅濃度が50×1010個/cm 表面粗さが1.5nm、転位密度が1×10個/cmであった。実施例1−16は、Cl濃度が18000×1010個/cm、Si濃度が15000×1010個/cm、炭素濃度が25at%、銅濃度が200×1010個/cm 表面粗さが6nm、転位密度が1×10個/cmであった。実施例1−15は、積分強度が17.3、半値幅が47nmであった。実施例1−16は、積分強度が14.9、半値幅が50nmであった。実施例1−15では、酸化物、硫化物、塩化物、シリコン化合物、炭素化合物及び銅化合物の含有量、並びに、表面粗さ、転位密度が上記特定の範囲であるため、特に良好な特性が得られた。
10…窒化物基板(III族窒化物半導体基板)、10a…表面、12…表面層、20,30,40,50…エピタキシャル基板、22,32,42,52…エピタキシャル層、32c,52e…活性層、100,200…半導体デバイス。

Claims (13)

  1. 半導体デバイスに用いられるIII族窒化物半導体基板であって、
    前記III族窒化物半導体基板の表面に表面層を有し、
    前記表面層が、S換算で30×1010個/cm〜2000×1010個/cmの硫化物、及び、O換算で2at%〜20at%の酸化物を含み、
    c軸に対する前記表面の法線軸の傾斜角度が10°〜81°である、III族窒化物半導体基板。
  2. 前記表面層がS換算で40×1010個/cm〜1500×1010個/cmの前記硫化物を含む、請求項1に記載のIII族窒化物半導体基板。
  3. 前記表面層がO換算で3at%〜16at%の前記酸化物を含む、請求項1又は2に記載のIII族窒化物半導体基板。
  4. 前記表面層がCl換算で120×1010個/cm〜15000×1010個/cmの塩化物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板。
  5. 前記表面層がSi換算で100×1010個/cm〜12000×1010個/cmのシリコン化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板。
  6. 前記表面層における炭素化合物の含有量がC換算で22at%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板。
  7. 前記表面層における銅化合物の含有量がCu換算で150×1010個/cm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板。
  8. 前記表面層の表面粗さがRMS基準で5nm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板。
  9. 前記表面層の転位密度が1×10個/cm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板。
  10. 前記表面の面方位が、{20−21}面、{20−2−1}面、{10−11}面、{10−1−1}面、{11−22}面、{11−2−2}面、{22−43}面、{22−4−3}面、{11−21}面、{11−2−1}面のいずれかである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板と、前記III族窒化物半導体基板の前記表面層上に形成されたエピタキシャル層とを有し、前記エピタキシャル層がIII族窒化物半導体を含む、エピタキシャル基板。
  12. 前記エピタキシャル層が量子井戸構造を有する活性層を有し、
    前記活性層が波長430nm〜550nmの光を発生するように設けられている、請求項11に記載のエピタキシャル基板。
  13. 請求項11又は12に記載のエピタキシャル基板を備える、半導体デバイス。
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