JP2011072248A - 狂犬病ウイルスに対するヒト抗体ならびにその組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防および/または治療を現実的なものとするために、中和活性を有する新規なヒト抗体を提供すること。
【解決手段】本発明は、狂犬病ウイルス(RV)に特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、Gタンパクの特定のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する抗狂犬病ウイルス抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は狂犬病ウイルス(Rabies virus:以下、RVと称する。)を代表とする狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防および/または治療に使用されるRVの糖タンパク質(以下、Gタンパクと称する。)に特異的に結合するヒトのモノクローナル抗体、ならびにその抗原結合断片に関する。
狂犬病ウイルスは、犬、コウモリ、猫、アライグマなどあらゆる温血動物に感染しうる人畜共通神経ウイルス感染症であり、一般には、感染した動物に咬まれた際、唾液と共にウイルスが伝播し感染する。発症するとほぼ100%死亡する致死性のウイルス感染症で、全世界における狂犬病による年間の死者数は約55,000人と推計されている。発症例の90%以上はアジアやアフリカに集中しており、特にインド、バングラデシュ、東南アジアなどがその大部分を占めている。
狂犬病ウイルスは、ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科リッサウイルス(Lyssavirus)属に分類され、ウイルス粒子は、70〜80×180nm の特徴的な弾丸状の形態を有する。ウイルスゲノムは、約12,000塩基の一本鎖のマイナス鎖RNAで、カプシドを形成するNucleoprotein (Nタンパク)、リン酸化タンパク質であるPhosphoprotein (Pタンパク)、ウイルスの出芽に関わるMatrix protein (Mタンパク)、エンベロープを形成する糖タンパク質であるGlycoprotein (Gタンパク)、そしてRNA依存性RNAポリメラーゼとして働くLarge protein (Lタンパク)から構成される。
リッサウイルス属は、遺伝子型および血清型の分析から、下記の7つの遺伝子型に分類される(非特許文献1)。
1) genotype 1 :狂犬病ウイルス(Rabies virus)
2) genotype 2 :ラゴスバットウイルス(Lagos bat virus)
3) genotype 3 :モコラウイルス(Mokola virus)
4) genotype 4 :ドーベンハーゲウイルス(Duvenhage virus)
5) genotype 5 : EBL1(European bat lyssavirus type 1)
6) genotype 6 : EBL2(European bat lyssavirus type 2)
7) genotype 7 : ABL (Australian bat lyssavirus)
これらのうち、genotype 2のラゴスバットウイルス以外のリッサウイルスは、ヒトに狂犬病様脳炎をおこすことが知られている。これまで狂犬病の報告が無かったオーストラリアでも、近年、リッサウイルスで発病したコウモリに咬まれた人が狂犬病と同じ症状で亡くなっている。また、モコラウイルスを除きこれらは、狂犬病ウイルス(RV)と血清学的に交差することより、狂犬病ワクチンにより防御することが出来ると考えられている(非特許文献1)。従って、狂犬病ウイルスのGタンパクに対するモノクローナル抗体(MAb)は、これらリッサウイルスに対しても結合し、活性を中和する可能性があると考えられる。
従って、本明細書では、狂犬病ウイルスのみならずこれら狂犬病様感染症を引き起こすリッサウイルスを、「狂犬病関連ウイルス」と称することとする。
ヒトにおける狂犬病の発生例は主に感染した犬に咬まれたことに起因するが、感染した犬に傷口や目・唇など粘膜部をなめられた場合も危険性が高い。咬傷などから侵入したRVは、アセチルコリン受容体(Nicotinic Acetylcholine Receptor: nAChR)などを介して末梢神経から神経軸索を逆行性に中枢へ輸送される。咬まれた部位により潜伏期間は様々であるが、ウイルスが脳神経組織に到達して発症するまでの期間は、顔をかまれるより足先を咬まれるほうが長くなる。脳に近い場合2週間程度、遠い場合で数ヶ月と言われている。発症後の死亡率はほぼ100%と、治療法はまだ確立されていない。
予防法としては、感染前(曝露前)であれば、ワクチン接種によって予防が可能であり、狂犬病発生国への渡航前の予防接種が有効である。ワクチンによる能動免疫の獲得は、犬でも同様であり、日本では狂犬病予防法によって、飼い犬の毎年1回の予防接種が義務付けられている。
曝露後の予防対策としては、咬まれたらまず傷口を石鹸などでよく洗うこと、消毒液や消毒用エタノールで消毒することにより、大半は死滅させることが可能である。そして、速やかにワクチン接種を開始することが望まれる。
WHOでは狂犬病動物から曝露を受けた場合、その曝露の重症度を3段階に区分している。このうちカテゴリーIIIに属する高度のRV曝露後には、ワクチン接種に加え抗狂犬病免疫グロブリン製剤 (RIG)の傷口周囲への投与が推奨されている。曝露後にこれらワクチンやRIGによる曝露後発症予防 (Post-exposure prophylaxis:以下、PEPと称する。) の対象となる人は、狂犬病死亡者数のおおよそ1,000倍、毎年世界中で5,000万人にもおよぶと推測されている。
現在、RIGとしてウマ血清 (ERIG)とヒト免疫グロブリン (HRIG)とが使用可能である。しかし、ERIGは、異種であるウマに対する抗体の出現する可能性があること、アナフィラキシーを引き起こす可能性があることなど問題点も多い。また、HRIGにおいても、1回の投薬量が非常に多く、安定的な供給が困難で高価であること、及びヒト由来の未知の病原体の混入の可能性があることなど、種々の問題点が挙げられる。
近年、狂犬病ウイルスの感染および狂犬病の発症の予防には、RVのGタンパクに対する中和抗体が一つの選択肢として考えられている。Hanlon らの報告(非特許文献2)においても、RVに対するヒトのモノクローナル抗体は、曝露後発症予防(PEP)において、将来HRIGに取って代わる存在になることを示唆されている。一方、狂犬病ウイルスなどのRNAウイルスは、遺伝子変異を起こしやすく、種々の野生株が認められるのみならず、生体に感染した後の潜伏期間中にも変異株の形成が生じやすい。従って、異なるエピトープに対する複数のモノクローナル抗体(以下、MAbと称する)をカクテルで使用する方法が試されている(非特許文献3および4)。
一方、狂犬病感染の診断方法としては、感染したヒトまたは動物の脳組織を用いた蛍光抗体法がWHOの認める国際標準とされている。しかし、それには特別な設備を必要とすること、およびそのコストが非常に高いことなどから、狂犬病が流行している発展途上国においては、現実的ではない。また、近年、欧州において狂犬病ウイルスに曝露されていた臓器提供者からの臓器移植が行われ、移植者が感染したという事件があった。このような事件が発生した一因として、感度の高い迅速診断検査の不在があげられている。世界中の狂犬病の撲滅のためにも迅速・高感度検査法の開発が待たれている。
尚、日本においても、2006年には、ヒトの輸入狂犬病が京都と横浜で続けて2例発生した。この2例の輸入狂犬病が示唆することは、交通網の発達した現在、発生が希少ではあるが、輸入感染症の対策として正しい疫学情報の収集と分析のもと、疑いが濃厚となった患者に対する迅速かつ正確な診断のための技術の早期開発の必要性である。
また、狂犬病関連ウイルスの曝露後の発症予防/感染抵抗性に関しては、被曝者におけるRVのGタンパクに対する中和抗体の抗体価が重要なファクターで、0.5 IU/ml以上の中和抗体価の存在が望ましいとされている。それを達成するには、中和抗体価の安価で迅速な定量法と、その結果に基づくワクチンの繰り返し投与、もしくは中和抗体などの投与が必要である。現在、世界的に使用されWHOが推薦している中和抗体の測定法は、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)もしくは蛍光抗体ウイルス中和試験(FAVN)の2つの方法であるが、これらの方法は、生きたウイルスを使用すること、蛍光顕微鏡が必要なこと、十分訓練を受けた者が必要なこと、および数日の時間が必要なことなどRV流行国での実施には問題がある。最近、西園らがマウス由来のモノクローナル抗体を用い免疫クロマトグラフィーの原理を応用した迅速測定法を開発したが(非特許文献5)、これにおいても使用するモノクローナル抗体を選別し、更なる感度アップ、精度アップの必要性がある。
源 宣之、狂犬病とリッサ(狂犬病関連)ウイルス.2004; 54:p213-222 Hanlon, C.A.,et al.,Experimental utility of rabies virus-neutralizing human monoclonal antibodies in post-exposure prophylaxis.,Vaccine. 2001;19:p3834-3842 Prosniak, M. et al., Development of a cocktail of recombinant-Expressed human rabies virus-neutralizing monoclonal antibodies for postexposure prophylaxis of rabies. J. Infect. Diseases, 2003; 188: 53-56 Bakker, A.B.H., et al., First administration to humans of a monoclonal antibody cocktail against rabies virus: Safety, tolerability, and neutralizing activity. Vaccine, 2008; 26: 5922-5927 Shiota, S. et al. Development and evaluation of a rapid neutralizing antibody test for rabies. 2009; 161: 58-62
このような状況下、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防および/または治療を現実的なものとするためには、中和活性のある新規な抗体の発見が強く望まれる。
RVのGタンパクに特異的に結合し、その生物活性を十分に阻害するヒト抗体又は抗原結合断片は、幅広い狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防および/または治療に有用であるのみならず、特に、狂犬病ウイルスの曝露後発症予防(PEP)の治療戦略上有用であると考えられる。
現在、狂犬病の曝露後発症予防(PEP)としては、ワクチン接種に加え抗狂犬病免疫グロブリン製剤 (RIG)の傷口周囲への投与が推奨されている。現在、RIGとしてウマ血清 (ERIG)とヒト免疫グロブリン (HRIG)とが使用されているが、ERIGは、異種であるウマに対する抗体の出現する可能性があること、アナフィラキシーを引き起こす可能性があることなど問題点も多い。また、HRIGは、高価であり、かつヒト由来の未知の病原体の混入の危険性があり大きな問題を抱えている。そのような中RVに中和活性のある、ヒト由来のモノクローナル抗体の更なる提案が望まれている。
また、モノクローナル抗体は、狂犬病ウイルスおよびその中和抗体価の迅速・高感度診断にも使用可能である。特に、血中・髄液中のRV抗原の迅速検査法や、RV中和抗体価を測定する際に使用する迅速測定法などでは、それに適した新規な抗体が待ち望まれている。
本発明者らは、上記のような抗体を取得するために鋭意努力した結果、RVに対して、高い中和能を有するヒトモノクローナル抗体を取得することに成功し、その抗体がRVの糖タンパク質(以下、Gタンパクと称する。)上に存在する198番目のアミノ酸(リジン)を含むエピトープ(立体構造性のエピトープ)に特異的に結合する抗体であること、および相補性決定領域(CDR)が新規であることを確認し、本発明を完成した。
本発明は、幅広く狂犬病関連ウイルスおよびその中和抵抗性変異株にも有効で、かつ、RVのGタンパクの198番目のアミノ酸(リジン)を含む立体構造性のエピトープを特異的に認識するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供するもので、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防および/または治療に使用される医薬組成物、特に、狂犬病ウイルスによる曝露後発症を予防するために有益な医薬組成物、およびRV発症予防のための高感度・迅速診断薬のための組成物を提供するものである。
即ち、本発明は、以下に記載する狂犬病ウイルスのGタンパクを認識するヒトの抗RVモノクローナル抗体またはその結合性断片、その抗体又は結合性断片をコードするDNA(ポリヌクレオチド)、そのDNAを含有するベクター、そのベクターを含有する宿主細胞などに関する。
(1)狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号:9、10および11のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される軽鎖CDR1、2および3のいずれか一つ以上のアミノ酸配列、及び
(b)配列番号:12、13および14のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖CDR1、2および3のいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
(2)狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号:9、10および11のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される軽鎖CDR1、2および3のアミノ酸配列、及び
(b)配列番号:12、13および14のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖CDR1、2および3のアミノ酸配列を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
(3)狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号:9、10および11のアミノ酸配列(軽鎖CDR1、2および3)、及び
(b)配列番号:12、13および14のアミノ酸配列(重鎖CDR1、2および3)
を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
(4)狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号:7のアミノ酸配列;配列番号:7のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:7のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(LCVR)、及び
(b)配列番号:8のアミノ酸配列;配列番号:8のアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:8のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(HCVR)
を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
(5)狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号:7のアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(LCVR)、及び
(b)配列番号:8のアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(HCVR)
を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
(6)狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号:2のアミノ酸配列;配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:2のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖(L鎖)、及び
(b)配列番号:4または6のアミノ酸配列;配列番号:4または6のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:4または6のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される重鎖(H鎖)
を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
(7)狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
配列番号:2のアミノ酸配列で示される軽鎖(L鎖)、及び
配列番号:4または6のアミノ酸配列で示される重鎖(H鎖)
を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
(8)上記モノクローナル抗体が、狂犬病ウイルスGタンパク上の198番目のアミノ酸(リジン)を含むエピトープを認識する、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
(9)上記モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体を含む、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の治療に使用される組成物。
(11)狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗RVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするDNAであって、配列番号:2、4および6〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするDNA、および当該DNAと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAから選択される単離されたDNA。
(12)配列番号:7及び8のアミノ酸配列をコードする、上記(11)に記載のDNA。
(13)配列番号:2及び4、または配列番号:2及び6のアミノ酸配列をコードする、上記(12)に記載のDNA。
(14)上記(11)〜(13)のいずれかに記載のDNAを組込んだベクター。
(15)上記(14)記載のベクターが導入された宿主細胞。
(16)上記(15)記載の宿主細胞を培養する工程を含む、上記(1)〜(9)のいずれかの抗体または抗原結合断片の作製方法。
(17)被験者由来のサンプルと上記(1)〜(9)のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片、または狂犬病関連ウイルス抗原を接触させる工程;および
上記サンプル中の狂犬病関連ウイルス抗原又は狂犬病関連ウイルスに対する中和抗体を検出または測定する工程、
を含む、狂犬病関連ウイルス抗原又は狂犬病関連ウイルスに対する中和抗体の検出方法。
(18)酵素免疫測定法または放射性免疫測定法に従う、上記(17)に記載の方法。
(19)上記サンプルが、狂犬病関連ウイルスに曝露された患者または狂犬病関連ウイルスに感染していると疑われる被験者又は動物に由来する、上記(17)または(18)に記載の方法。
(20)上記サンプルが、被験者又は動物由来の組織、髄液、血漿、血清、唾液、または尿である、上記(17)〜(19)のいずれかに記載の方法。
(21)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断又は発症予防のためのモニタリングのための薬剤。
(22)狂犬病関連ウイルスに曝露された患者における、当該ウイルスに対する中和抗体価の測定のために使用する、(21)に記載の薬剤。
(23)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、又は発症予防のためのモニタリングのためのキット。
(24)狂犬病関連ウイルスに曝露された患者における、当該ウイルスに対する中和抗体価の測定のために使用する、(23)に記載のキット。
本発明に係る抗RV抗体又はその抗原結合断片は、狂犬病の原因となるRVのGタンパクに特異的に結合しその生物活性を喪失(中和)させることより、感染動物もしくはヒトでの発症を予防に使用することが可能である。更に、ヒトのモノクローナル抗体であるものは、ヒトに対して過剰な免疫反応も生じない。従って、例えば、狂犬病関連ウイルスの曝露後発症予防(PEP)に単独もしくは、エピトープの異なる他のヒトMAbsとのカクテルで使用する際、当該抗体または抗原結合断片の併用は、現行の抗狂犬病免疫グロブリン製剤での処置と比較し有効性の向上が期待できる。また、本発明に係る抗RV抗体又はその抗原結合断片は、RVのGタンパクの198番目のアミノ酸を含む立体構造性エピトープ(抗原決定部位II)を認識することより、RV抗原の測定およびRVに対する中和抗体価の測定にも利用できる。
以上の性質より、本発明に係る抗RV抗体又はその抗原結合断片は、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防および/または治療に使用される医薬組成物として有用である。
EV5034の狂犬病ウイルスGタンパクの認識部位をウエスタンブロット法で解析した結果を示す電気泳動写真である。BHK-21細胞 (1×106cell)にCVS-11株 (1×107FFU)を接種後、37℃、5 % CO2インキュベーター内で2日間培養し、感染細胞を回収した。感染細胞、及び非感染細胞はウエスタンブロット法により.EV5034 (200倍希釈)と4℃で一晩反応させ、TBS-Tで洗浄後、それぞれ二次抗体 (ヤギ抗ヒトPOD, 2000倍希釈, Cappel #55220、又はヤギ抗ヒトIgA+G+M, 100倍希釈, フナコシ #04-10-07)と4℃で4時間反応させた。CVS-11株の感染細胞、及び非感染細胞のいずれにおいても、抗体と変性・還元状態のGタンパクとの特異的な結合は認められなかった。 EV5034の50%蛍光フォーカス抑制濃度(50%FR)を求める試験で、図はインビトロでの培養細胞に対する狂犬病ウイルスの感染率とEV5034による濃度依存的感染抑制との関係を示している。単層培養したNA細胞に100 FFUのCVS-11とMAbとを1時間反応した反応液を加え、1時間ウイルスを吸着させた。反応液を除去しPBSで洗浄後、1%メチルセルロース重層培地にて37℃、5 % CO2インキュベーター内で3日間培養した。パラホルムアルデヒドで固定後、RVのNタンパクに対するFITC標識抗体と反応させ感染フォーカス数を測定し、感染フォーカス数を50%に減じる抗体濃度として50%FRを表した。 CVS-11感染マウスに対するEV5034の予防効果を調べたものである。CVS-11株250LD50投与群はウイルス接種後,約4日目から生存率の低下が観察されるようになり。接種8日目には生存率が10%にまで低下し,10日目にはすべてのマウスが斃死した。しかし,1 IUのWHO標準血清 (QSMI)とCVS-11株を接種した群では,接種後8日目から生存率が低下したものの,最終的には70%のマウスが生存した (図3A)。また,標準血清の濃度が高い程,より多くのマウスが生存した。1 IUのNo. 254-034とCVS-11株を接種した群では,接種7日目までは,100 %の生存を示し,8日目に1匹目,9日目に2匹目,12日目にはさらに2匹,14日目にさらに1匹の死亡が確認された (図3B)。最終的な生存率は50 %であったが,標準血清と同様に抗体濃度に依存しマウス生存数の維持が確認された。
1.本発明に係る抗体またはその抗原結合断片
本発明は、一つの実施形態において、狂犬病ウイルス(Rabies Virus:RV)を含む狂犬病関連ウイルス)に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗狂犬病ウイルスモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(以下、「本発明の抗体」と呼ぶ。)を提供する。典型的には、本発明の抗体は、狂犬病ウイルスのGタンパクの198番目のアミノ酸(リジン)を含むエピトープ(立体構造性のエピトープ)に結合する抗狂犬病ウイルスモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
狂犬病ウイルスの全ゲノム配列の情報は、GenBankのような公にアクセス可能な配列データベースにおいて、例えば、アクセッション番号M13215.1の配列を参照することによって入手することができる。また狂犬病ウイルスGタンパク(または糖タンパク質:Glycoprotein)のアミノ酸配列の情報は、GenBankの配列データベースにおいて、例えば、アクセッション番号AAA47218.1、AAA47213.1、AAP81751.1等の配列を参照することによって入手することができる。また、狂犬病ウイルスGタンパクをコードするヌクレオチド配列の情報は、GenBankの配列データベースにおいて、例えば、M13215.1、M32751.1、AF406694.1等の配列を参照することによって入手することができる。なお、上記アクセッション番号で特定される狂犬病ウイルスGタンパクのアミノ酸配列のN末端の19アミノ酸残基は、シグナルペプチドに相当する(例えば、Prehaud C et al.,Antigenic site II of the rabies virus glycoprotein: structure and role in viral virulence. J Virol. 1988 ;62:p1-7.;Marissen WE et al., Novel rabies virus-neutralizing epitope recognized by human monoclonal antibody: fine mapping and escape mutant analysis. J Virol. 2005;79:p4672-4678.を参照。)。
本発明の抗体の好ましい例としては、例えば、狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、(a)配列番号:9、10および11のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、更に好ましくは3つ)の軽鎖CDR、および(b)配列番号:12,13および14のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、更に好ましくは3つ)の重鎖CDRを含有する、抗RVモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体のより好ましい例としては、狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号:9のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
(b)配列番号:10のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、
(c)配列番号:11のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
(d)配列番号:12のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
(e)配列番号:13のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
(f)配列番号:14のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含有する、抗RVモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体のさらにより好ましい例としては、狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、(a)配列番号:9、10および11のアミノ酸配列(軽鎖CDR1、2および3)及び (b)配列番号:12,13および14のアミノ酸配列(重鎖CDR1、2および3)を含有する、抗RVモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体のさらにより好ましい例としては、狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、(a)配列番号:7のアミノ酸配列、配列番号:7のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/もしくは付加の変異を有するアミノ酸配列、または配列番号:7のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(LCVR)、ならびに、(b)配列番号:8のアミノ酸配列、配列番号:8のアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/もしくは付加の変異を有するアミノ酸配列、または配列番号:8のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(HCVR)を含有する、抗RVモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体のさらにより好ましい例としては、狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、(a)配列番号:7のアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(LCVR)、及び(b)配列番号:8のアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(HCVR)を含有する、抗RVモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体のさらにより好ましい例としては、狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、(a)配列番号:2のアミノ酸配列、配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/もしくは付加の変異を有するアミノ酸配列、または配列番号:2のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖(L鎖)、ならびに、(b)配列番号:4または6のアミノ酸配列、配列番号:4または6のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/もしくは付加の変異を有するアミノ酸配列、または配列番号:4または6のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される重鎖(H鎖)を含有する、抗RVモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体のさらにより好ましい例としては、狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、配列番号:2のアミノ酸配列で示される軽鎖(L鎖)、及び配列番号:4または6のアミノ酸配列で示される重鎖(H鎖)を含有する、抗RVモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
好ましくは、上記抗RVモノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。
本明細書で使用される「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリンもしくは抗体(またはその抗原結合フラグメント)が特異的に結合する抗原の部位を指す。エピトープは、1またはそれ以上のアミノ酸残基を含み、例えば、連続的アミノ酸、もしくはタンパク質の三次元フォールディングにより並置される非連続的アミノ酸の双方から形成され得る。本発明の抗体が特異的に認識するRV上のエピトープは、立体構造依存性のエピトープである。
本明細書で使用される「抗体」という用語は、4本のポリペプチド鎖、すなわち、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖であってジスルフィド結合によって相互接続されたものからなる免疫グロブリン分子を指すものとする。本願発明におけるモノクローナル抗体も、各々2本の軽鎖(L鎖)及び重鎖(H鎖)を含む免疫グロブリン分子からなる。各H鎖は、H鎖可変部領域(「HCVR」または「V」と称す場合がある)とH鎖不変部領域(H鎖不変部領域は3つのドメインからなり、それぞれ「C1」、「C2」、「C3」と称す場合がある(総称:C))からなる。各L鎖は、L鎖可変部領域(「LCVR」または「V」と称す場合がある)とL鎖不変部領域(L鎖不変部領域は1つのドメインからなり、「C」と称す場合がある)からなる。
特にHCVRおよびLCVRは、抗体の結合特異性に関与する点で重要である。抗体はLCVR及びHCVRのアミノ酸残基を主に通じて標的抗原と相互作用するので、可変部領域内のアミノ酸配列は可変部領域の外にある配列よりも個々の抗体間の違いが大きい。更に、HCVR及びLCVRにおいても、各種抗体間でより一定に保たれたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域と相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。HCVR及びLCVRは、それぞれ3つのCDRおよび4つのFRからなり、これらはFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列している。
抗体の「抗原結合断片」(又は単に「抗体断片」)という用語は、抗原(例えばRV)に特異的に結合する能力を持つ1つ又は複数の抗体のフラグメントを指す。なお、そのフラグメントには抗原に特異的に結合する最小限のアミノ酸配列を有するペプチドも含むものとする。また抗原に特異的に結合する抗体の可変領域や相補性決定領域を有する1本鎖抗体(scFV)や二重特異性抗原、多特異性抗原なども「抗原結合断片」に含まれる。なお、本明細書においては、簡略化のために、「抗体又は抗原結合断片」のことを単に「抗体」ともいう。
「RVの生物活性を中和し得る抗体」とは、RVに結合することによってRVの生物学的活性を阻害する抗体を指すものとする。
本明細書で使用される、「阻害効果」、「阻害」、「抑制」、「阻害し得る」等々の用語は、抗原(RV)に起因する生物活性を約5〜100%、好ましくは10〜100%、より好ましくは20〜100%、より好ましくは30〜100%、より好ましくは40〜100%、より好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜100%、より好ましくは70〜100%、さらに好ましくは80〜100%、低減させることをいう。
可変部領域のアミノ酸配列は、大半の抗体−抗原相互作用を担っているため、特定の天然発生型の抗体を由来とする可変部領域配列またはCDR部分の配列を、異なる性質を持った異なる抗体由来の不変部領域またはフレームワーク配列に移植した状態で含有するような発現ベクターを構築すると、特定の天然発生型抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現させることができる。
そのために、もとの抗体のものと同様な結合特性を有するインタクト組換え抗体を作り直す際に、特定の抗体の配列全体を得る必要はない。その抗体の重鎖及び軽鎖の可変部領域配列若しくはCDR部分の配列があれば、この目的にとって充分な場合もある。
配列番号:9,10及び11は、それぞれ、軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3に対応するアミノ酸配列である。また配列番号:12、13及び14は、それぞれ、重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3に対応するアミノ酸配列である。したがって、本発明の好ましい抗体は、配列番号:9〜14(軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3、ならびに、重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3)をすべて含む。しかし、RVに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体であれば、配列番号:9〜14のすべてのアミノ酸配列を含む必要はない。また、上記中和活性を有する限り、CDR配列は、配列番号:9〜14のアミノ酸配列において、1〜数個(具体的には、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個または1個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列であってもよい。
CDR以外のアミノ酸配列は特に限定されず、CDR以外のアミノ酸配列が他の抗体、特に、他種の抗体由来である、いわゆるCDR移植抗体も本発明の抗体に包含される。この内、CDR以外のアミノ酸配列もヒト由来であるヒト化抗体が好ましいが、必要に応じてフレームワーク領域(FR)に1ないし数個(具体的な数は上記と同様)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異があってもよい。ヒト化抗体の作製方法は公知の方法を用いることができる(Riechmann L, et al., Reshaping human antibodies for therapy. Nature, 332:323-327, 1988)。本発明においては、勿論、完全ヒト抗体が好ましい。
本発明のタンパク質のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加があることを意味し、欠失、置換、挿入及び付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン; B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸; C群:アスパラギン、グルタミン; D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸; E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン; F群:セリン、スレオニン、ホモセリン; G群:フェニルアラニン、チロシン。
本発明において、好ましい抗体は、(a)配列番号:7のアミノ酸配列;配列番号:7のアミノ酸配列において、1〜数個(具体的には、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個または1個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:7のアミノ酸配列と95%以上(好ましくは、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または99.5%以上)の相同性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(LCVR)と、(b)配列番号:8のアミノ酸配列;配列番号:8のアミノ酸配列中1〜数個(具体的な数は上記と同様)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:8のアミノ酸配列と95%以上(具体的な%は上記と同様)の相同性を有するアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(HCVR)を含有する。
なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268, 1990; Proc. Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGappedBLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
本発明において、さらに好ましい抗体は、(a)配列番号:7のアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(LCVR)と、(b)配列番号:8のアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(HCVR)を含有する。
本発明において、さらに好ましい抗体は、(a)配列番号:2のアミノ酸配列;配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜数個(具体的な数は上記と同様)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:2のアミノ酸配列と95%以上(具体的な%は上記と同様)の相同性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖(L鎖)、及び(b)配列番号:4または6のアミノ酸配列;配列番号:4または6のアミノ酸配列において、1〜数個(具体的な数は上記と同様)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:4または6のアミノ酸配列と95%以上(具体的な%は上記と同様)の相同性を有するアミノ酸配列で示される重鎖(H鎖)を含有する。
上述した本発明に係る抗RV抗体又はその抗原結合断片は、狂犬病の原因となる狂犬病ウイルスのGタンパクに特異的に結合しその生物活性を中和させることを特徴とする。
ここで「特異的に結合する」とは、他の任意の抗原に対して所定の抗原を特に認識してそれに結合することを言う。本発明の抗体におけるRV(特に、ヒトRV)との解離定数(Kd値)は、好ましくは1×10−5M以下、更に好ましくは1×10−6M以下である。抗体とRVとの解離定数を測定するには、公知の方法を用いることができる。例えば、チップ上に固定化した抗RV抗体を用いてBIACORE3000(登録商標)のような蛋白質相互作用解析装置により測定することができる。
抗RV抗体の中和能については、例えば、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)(文献:Smith J., Yager P., Baer G. 1973. A rapid reproducible test for determining rabies neutralizing antibody. Bull. World Health Organ. 48, 535-541)を用いることが出来る。中和抗体価は抗体の示す50 %蛍光フォーカス抑制濃度(50%FR)とWHO 標準血清の50%FRとの比較により国際単位 (IU/ ml)で示される。本発明に係る抗RV抗体又はその抗原結合断片の単位タンパク当たりの中和力価(RFFIT IU/mg)としては、好ましくは、10 IU/mg以上、より好ましくは、25 IU/mg以上の活性を有する。
なお、本願発明の抗体は、完全長の抗体若しくはその抗原結合断片、又は可変部領域を示す配列番号:7及び8や、相補性決定領域(CDR)を示す配列番号:9〜14のアミノ酸配列をもとにすれば、当該技術分野における周知の技術によって、RVに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る組換えヒトモノクローナル抗体、モノクローナル抗体(キメラ抗体、ヒト化抗体も含む)、又はそれらの抗原結合断片を得ることができる。それら抗体のFab、F(ab')、F(ab')2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)フラグメント、単鎖抗体(scFv)、二価の単鎖抗体、単鎖ファージ抗体、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体(triabody)、四重特異性抗体(tetrabody)、および狂犬病関連ウイルスまたはそのフラグメントに特異的な抗原結合を形成するのに十分な免疫グロブリンの断片を少なくとも含む(ポリ)ペプチド、などは、本願発明の抗原結合断片に属するものである。
重鎖及び軽鎖リーダー配列はタンパク質成熟の過程で切断され、最終的な抗体の特性には寄与しないが、欠けている配列を追加するためには、例えば、クローン化されたcDNA配列を、ライゲーション又はPCR増幅法により、合成オリゴヌクレオチドに組み合わせることができる。代替的には、可変領域全体を一組の短い、重複のあるオリゴヌクレオチドとして合成し、PCR増幅法で組み合わせて、完全に人工的な可変領域クローンを作製することもできる。
2.本発明に係るDNA
本願発明の別の態様は、RVのGタンパクの198番目のアミノ酸(リジン)を含むエピトープに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗RVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするDNAであって、配列番号:2、4及び6〜12からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするDNA、および当該DNAと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAから選択される単離されたDNAに関する。RVに結合し、その生物活性を中和し得る抗RVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするDNAであれば、前記DNAと高い相同性があれば、その単離されたDNAも本願発明に含まれる。
「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である(例えば、J.SambrookらのMolecular Cloning, A Laboratory Manual 2nded.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989), 特に11.45節"Conditions for Hybridization of Oligonucleotide Probes"参照)。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
上記高ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号:2、4、6、7、8、9、10、11,12,13または14のアミノ酸配列をコードするDNAと、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上の相同性を有するDNAが含まれる。
塩基配列の相同性は、上述した相同性検索アルゴリズムなどを利用して決定することが出来る(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 872264-2268, 1990; Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)。
なお、本発明でより好ましいDNAは、配列番号:7及び8のアミノ酸配列をコードするDNAである。
3.本発明に係るベクター、宿主細胞および抗体の作製方法
本発明は、上記DNAを組込んだベクターおよびそのベクターが導入された宿主細胞、これらを用いる抗体の作製方法にも関する。
本発明の抗体は、公知の方法を用いた組換えヒト抗体としても作製できる(Nature,312:643,1984 、Nature,321:522,1986など参照)。例えば、本発明の抗体は、本発明に係るベクターを導入した宿主細胞を培養し、培養上清などから、産生された抗体を精製することによって作製することができる。より具体的には、VおよびVをコードするcDNAを同一細胞又は別のヒト細胞より作製したヒト抗体Cおよび/またはヒト抗体Cをコードする遺伝子を含有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入し発現させることにより製造することができる。
本発明の抗体のVまたはVをコードする核酸を組み込むベクターとしては、必ずしも限定されないが、蛋白質遺伝子等の発現に汎用され、特に抗体遺伝子の発現に適合するベクターまたは高発現用ベクターが好ましい。好適な例としては、EFプロモーター及び/またはCMVエンハンサーを含有するベクターが挙げられる。また、通常VまたはVをコードする核酸を組み込んだ発現ベクターをそれぞれ作製し、宿主細胞にコトランスフェクトするが、単一の発現ベクターに組み込んでも良い。
発現ベクターを導入する宿主細胞としては、必ずしも限定されないが、蛋白質遺伝子等の発現に汎用され、特に抗体遺伝子の発現に適合する細胞が好ましい。例えば、細菌(大腸菌等)、放線菌、酵母、昆虫細胞(SF9等)、哺乳類細胞(COS-1、CHO、ミエローマ細胞等)が挙げられる。
組換抗体を工業的に生産するためには、一般的には当該抗体を安定して高生産する組換動物細胞株、例えば、CHO細胞株が利用される。そのような組換細胞株の作製、クローン化、高発現のための遺伝子増幅及びスクリーニングは公知の方法を用いることができる(例えば、Omasa T.: J. Biosci. Bioeng., 94, 600-605, 2002等参照)。
本発明は重鎖2本と軽鎖2本からなる抗体のほかに、本発明の抗体の抗原結合断片も含まれる。抗原結合断片としては、例えばFab (fragment of antigen binding )、Fab'、F(ab')があり、抗体の活性断片をリンカー等で結合したものとして例えば一本鎖抗体(single chain Fv : scFv )やジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv :dsFv)があり、抗体の活性断片を含むペプチドとして例えばCDR を含有するペプチドが挙げられる。これらは、本発明の抗体を適当な蛋白分解酵素で処理する方法または遺伝子組換技術等、公知の方法で製造することができる。
抗体の精製は、塩析法、ゲル濾過法、イオン交換クロマト法またはアフィニティークロマト法等の公知の精製手段を用いて行うことができる。
その他、近年開発された、遺伝子工学技術を活用して組み換え抗体(リコンビナント抗体)をファージ表面に発現させる、ファージディスプレイ抗体技術により、人工的にV、V遺伝子をシャッフリングさせ多様化したscFv(singlechain Fragment of variable region)抗体をファージ融合タンパクとして発現させ、特異抗体を得ることもできる。この技術は、免疫を回避でき、さらに細胞融合法に変わるヒト化抗体作製技術として高く評価されている。この技術を用いて、本願明細書における配列番号:2及び4〜12のアミノ酸配列を参考に作製した特異抗体又はその抗原結合断片であれば、本願発明の技術的範囲内に属する。
また更には、近年開発された抗体の糖鎖部分の修飾により抗体のADCC活性を大幅に改善するポテリジェント(Potellegent)技術を本願発明の抗体に応用して得られた抗体(文献:Niwa R., et al, Clin.Cancer Res., 10,6248-6255(2004)参照)や、CDC活性を改善するコンプリジェント(Complegnent)技術を本願発明の抗体に応用して得られた抗体(文献:Kanda S., et al, Glycobiology, 17, 104-118(2007)参照)も、本発明の技術範囲に属する。
なお、抗体作製の手法として、通常はマウス、ウサギ、ヤギ等の実験動物を利用してポリクローナル抗体や、モノクローナル抗体を取得することが行われているが、このようにして得られる抗体は用いた動物種に特徴的な配列を有しているので、そのままヒトに投与するとヒト免疫系により異物として認識され、ヒト抗動物抗体応答が起こる(即ち、抗体の抗体を作ってしまう)ことがある。
本発明に係る抗RVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、例えば、RVワクチンの接種経験のある健常人などの血液由来の抗体産生細胞から得ることができ、それは完全ヒト抗体である。この完全ヒト抗体は、抗体医薬として人体に投与したとしても、免疫原性を有さず、免疫反応は見られないものと考えられる。
4.本発明に係る抗体を含有する組成物
次に、本発明は、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防の組成物および/または治療に使用される組成物、特に、狂犬病関連ウイルスの曝露後発症予防に用いる医薬組成物で、上記抗体又はその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体を含む物を提供する。
本発明に係る抗RV抗体又はその抗原結合断片は、RVのGタンパクに特異的に結合し、RVの中和活性を有することより、単独もしくは他の抗RV抗体とのカクテルとして狂犬病関連ウイルスの曝露後発症予防に有用であり、また、高感度・迅速診断にも使用されることが期待できる。
本明細書で使用される「医薬品として許容される担体」には、生理学的に適合可能な任意の、または全ての溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。
医薬品として許容される担体の例には、水、塩類溶液、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1種または複数、並びにこれらの組合せが含まれる。注射剤などとして使用される場合、pH調節剤や等張剤、例えば糖や、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。医薬品として許容される担体には、さらに、湿潤剤や乳化剤、防腐剤、緩衝剤、安定化剤など、抗体又は抗原結合断片の保存性または有効性を増大させる少量の補助物質を含めることができる。
本発明の組成物は、様々な剤型にすることができる。そのような組成物には、例えば、溶液(例えば注射可能であり輸液可能な溶液)や分散液、懸濁液、錠剤、カプセル、トローチ、ピル、粉末、リポソーム、坐剤など、液体、半固体、固体の剤型が含まれる。好ましい形は、意図される投与形態および治療の適用例により異なる。一般に好ましい組成物は、他の抗体でヒトを受動免疫化するために使用されるものと同様の組成物など、注射可能または輸液可能な溶液の形にあるものである。好ましい投与形態は、非経口的なもの(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内から)である。好ましい実施形態では、抗体は、静脈輸液または静脈注射によって投与される。別の好ましい実施形態では、抗体は筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
本発明の抗体および抗原結合断片は、非経口投与に適する医薬品組成物に組み込むことができる。抗体又は抗原結合断片は、単独種類を使用する場合には、0.1〜250mg/mLの抗体を含有する注射可能な製剤として調製することが好ましい。一方、複数種類の抗体を同一製剤中に混合して使用する場合には、それぞれ0.001〜100mg/mLの抗体を含有する注射可能な製剤として調製することが好ましい。なお、その複数種類(カクテル)の抗体の混合割合は、適宜設定することができる。
注射可能な製剤は、有効成分を液体に溶解したものまたは有効成分を凍結乾燥させたものを、フリントまたはアンバーバイアル、アンプル、またはプレフィルドシリンジに入れたもので構成することができる。緩衝剤は、pH5.0〜7.0(最適な場合、pH6.0)のL−ヒスチジン(1〜50mM)、最適な場合は5〜10mMのL−ヒスチジンにすることができる。その他の適切な緩衝剤には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。濃度0〜300mMの溶液(液体剤型に関しては、最適な場合、150mM)の浸透圧を変えるために、塩化ナトリウムを使用することができる。凍結乾燥させた剤型には、凍結保護物質、主に0〜10%(最適な場合、0.5〜5.0%)のスクロースを含めることができる。その他の適切な凍結保護物質にはマンニトール、トレハロースおよびラクトースが含まれる。凍結乾燥させた剤型には、増量剤、主に1〜10%のマンニトール(最適な場合、2〜4%)を含めることができる。液体および凍結乾燥させた剤型の両方には、安定剤、主に1〜50mM(最適な場合、5〜10mM)のL−メチオニンを使用することができる。その他の適切な安定剤にはグリシン、アルギニンおよびポリソルベート80等が含まれ、ポリソルベート80の場合、0〜0.05%(最適な場合、0.005〜0.01%)を含めることができる。他の界面活性剤には、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
本医薬組成物は、一般に、製造および貯蔵の条件下で無菌または安定でなければならない。この組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に適するその他のオーダーされた構造として、処方することができる。無菌の注射可能な溶液は、必要とされる量の活性化合物(すなわち抗体又は抗原結合断片)を、必要な場合には上述の成分の1つまたは組合せと共に適切な溶媒に混ぜ、その後、濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、活性化合物を、基本的な分散媒および上記列挙したものから必要とされるその他の成分を含有する無菌ビークル(vehicle)に混ぜることによって、分散液を調製する。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末製剤の場合、好ましい調製方法は、前に述べたその滅菌濾過溶液の凍結真空乾燥および噴霧乾燥であり、それによって、活性成分の粉末に加え、任意の他の所望の成分を含んだ組成物が得られる。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、また、分散液の場合には必要とされる粒度を維持することによって、また、界面活性剤を使用することによって、維持することができる。注射可能な組成物の長期にわたる吸収は、その組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩やゼラチンを含めることによって行うことができる。
本医薬組成物には、補助的な活性化合物も組み入れることができる。ある実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、狂犬病のPEPに有効な1種または複数の他の治療薬と一緒に処方し、またはそのような他治療薬と同時に投与する。例えば、本発明の抗RV抗体又は抗原結合断片は、他のエピトープに結合する1つまたは複数の他の抗RV抗体とのカクテル製剤として、またはそのような他の抗体と同時に投与することができる。さらに、本発明の1つまたは複数の抗体は、前述の治療薬のうち2種またはそれ以上の種類を組み合わせて使用することができる。そのような組合せによる療法は、狂犬病のエスケープウイルスが出現する確立を大幅に抑えることが可能である。
本発明の抗体又は抗原結合断片、またはそれを含む組成物は、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防および/または治療に使用される際、それらは、試験管内、生体外、及び生体内で使用可能であり、他の有効成分、例えばワクチンなどとの併用などもありうる。また、対象患者としても、曝露前の場合、曝露後の場合、もしくは発症後の場合もありうるのは、当業者には明らかである。
次に、本発明に係る抗RVモノクローナル抗体およびその抗原結合断片を得た工程について説明するが、本発明に係る抗体等を得る手法はこれらの記載に何ら限定されるものではなく、上述したとおり、当該技術分野における通常の変更ができることは言うまでもない。
本発明に係る抗RVモノクローナル抗体およびその抗原結合断片は、狂犬病のワクチン接種の経験がある健常人の血液から種々の工程を経て、当該抗体を産生する細胞クローンを分離し、得られた抗体産生細胞ライブラリから抗体陽性細胞を選択する工程を経、前記抗体陽性細胞上清より得られた抗体について、アフィニティー精製を行うことによって得ることができる。
・ 狂犬病ウイルス(RV)に対する完全ヒト抗体産生細胞クローンの分離
RVワクチンの接種を経験した成人から採血、その末梢血からBリンパ球を分離し、該Bリンパ球の増殖を誘導する。増殖誘導の方法自体は公知であり、例えばガンの誘因因子となる「エプスタイン・バールウイルス(EBウイルス)」(Epstein−Barr virus)(以下、EBVと称す)を用いたトランスフォーム法(D.Kozborら)により、行うことができる。
即ち、上記Bリンパ球をEBVに感染させて増殖誘導し、増殖させた細胞を抗体産生細胞ライブラリとする。
2)抗体産生細胞ライブラリからモノクローナル抗体の回収
増殖誘導させた細胞からモノクローナル抗体を回収する方法はモノクローナル抗体の作製において常用されている周知の方法により行うことができる。
前記抗体産生細胞ライブラリの中からRVに結合する抗体を作り出すリンパ球を選別、抗体を取り出す。即ち、前記抗体産生細胞ライブラリから限界希釈法によりRVに結合する抗体を産生する細胞集団(クローン)を選択する。
RVと結合する画分の検出には、RV及び標識マウス抗ヒトIgG抗体を用いたELISAを採用するのが好ましい。
選択された抗体陽性細胞集団を培養し、スクリーニングを繰り返すことによって、目的とする抗体のみを産生する細胞集団(クローン)を得ることができる。
3)ProteinAもしくはGを用いたアフィニティー精製
抗RV抗体を精製するには、選抜された細胞を、ローラ瓶、2リットル入りスピナー・フラスコ、又は他の培養系で成長させることができる。
上清を濾過し、濃縮してからプロテインAあるいはプロテインG−セファロース(ニュージャージー州ピスカタウェイ、ファルマシア社)などによるアフィニティ・クロマトグラフィにかけて当該タンパク質を精製することができる。緩衝液をPBSに交換し、OD280又は好ましくはネフェロメータ分析により、濃度を判定できる。
アイソタイプはアイソタイプ抗原に特異的な方法で調べることができる。
このようにして得られた抗RV抗体は、ヒト体内で感作されたBリンパ球から作製した完全ヒト抗体であるので、抗体に対する免疫反応の可能性が低い。
又、抗体産生細胞クローン作製に関して、Bリンパ球に感染して増殖誘導させる活性があるEBウイルスを利用している点も特徴である。
EBウイルス法の利点は、ヒトの体内で作られるナチュラルな抗体を作製できる点及び親和性の高い抗体が得られる点である。例えば、RVに対するヒト抗体は、マウスを人工的に免疫して作られた抗体より約10〜100倍親和性が高いことが判明している。
EBウイルス感染で増殖したBリンパ球集団は抗体産生細胞のライブラリとなる。
このライブラリから特定の抗体産生細胞クローンを分離しヒト抗体を得ることができる。
5.本発明の狂犬病関連ウイルスに起因する疾患の診断剤、診断方法、および診断用キット
本発明の抗RV抗体およびその抗原結合断片は、狂犬病または狂犬病関連ウイルスに感染したことに起因して現れる疾患の診断に使用することができる。また本発明の抗体は、試料中の狂犬病関連ウイルスの有無および抗体価を検出および/または測定するために使用することができる。
したがって、本発明の一つの実施形態によれば、本発明の抗RV抗体またはその抗原結合断片を含む狂犬病または狂犬病関連ウイルスへの感染の診断剤または診断用キットが提供される。さらに、本発明の一つの実施形態によれば、本発明の抗RV抗体またはその抗原結合断片を使用する、RVの検出方法が提供される。さらに別の形態によれば、本発明の抗RV抗体またはその抗原結合断片を使用する、狂犬病または狂犬病関連ウイルスへの感染の診断方法が提供される。
(RV検出または抗体価測定のためのアッセイ)
本発明の実施に有用な免疫測定法の1つの態様では、被験者由来の生体試料と抗RV抗体またはRVとを接触させ、次いで、それぞれ生体試料中のRVまたは抗RV抗体との間に形成される免疫複合体が検出される。
本発明の上記態様の免疫アッセイには、ウエスタンブロット法のような手法を用いた測定システムに限らず、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、サンドイッチ免疫測定法、蛍光免疫測定法(FIA)、時間分解蛍光免疫測定法(TRFIA)、酵素免疫測定法(EIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、ラテックス凝集法、免疫沈降アッセイ、沈降素反応法、ゲル拡散沈降素反応法、免疫拡散検定法、凝集素検定法、補体結合検定法、免疫放射分析検定法、蛍光免疫検定法、プロテインA免疫検定法等が使用され得る。このような手法では、通常、抗RV抗体は標識されており、標識の種類としては、例えば、蛍光基、発光基、フリーラジカル基、粒子、バクテリオファージ、細胞、金属、酵素、補酵素、ラジオアイソトープなどが挙げられる。
あるいは、例えば、狂犬病抗原迅速診断キット(Nishizono A. et al. A simple and rapid immunochromatographic test for rabies diagnosis. Microbiol and Immunol. 2008; 52(4): 243-9)、中和抗体測定のための迅速診断系(Shiota S. et al. Develp,ment and evaluation of a rapid neutralizing antibody test for rabies. 2009 161(1): 58-62)等の診断キットまたは診断系などを用いるアッセイにおいても、本発明の抗体またはその抗原結合断片を使用することができる。これらの文献は、その全てが本明細書中で参考として援用される。
さらに、例えば、RVタンパク質に特異的に結合するポリペプチドのような抗体以外の薬剤がRVタンパク質のレベルを測定するために使用され得る。
RVのレベルまたはRV中和抗体価を測定するための免疫測定は、代表的には、狂犬病に罹患したまたは狂犬病関連ウイルスに感染したと疑われるか、そのような危険性を有する被験体から採取した生体試料(例えば、血清、髄液)を、特異的抗原−抗体結合を生じさせる条件下で抗RV抗体またはRVと接触させ、次いで、抗原−抗体による免疫特異的結合量を測定することを包含する。特定の態様において、例えば、このような抗原−抗体の結合を使用して、RVタンパク質または抗RV抗体の存在が検出される。この場合、RVタンパク質の検出または検出量の上昇が疾病状態の指標となる。必要に応じて、生体試料中のRVタンパク質のレベルを、狂犬病を有しない健常者のレベルと比較してもよい。また、RV中和抗体価レベルは、暴露者に対し発症予防のために実施するワクチン接種や抗血清接種の量および/または間隔を決定する際に重要である。RVのレベルまたはRV抗体価の測定は、狂犬病関連ウイルスへの感染の診断、予防措置の決定のために、それぞれ単独でまたは組合せて利用されうる。
上記免疫測定法の1つの態様では、血清試料などの生体試料を、試料中に存在する全部のタンパク質を固定する目的で、ニトロセルロースなどの固相支持体または担体と接触させる。次いで、この支持体を緩衝液で洗浄し、続いて検出可能に標識した抗RV抗体により処理する。次いで、この固相支持体を緩衝液で2回洗浄し、未結合抗体を除去する。固相支持体上の結合した抗体の量を、周知の方法に従って測定する。各測定に適する検出条件は、慣用的な試験方法を使用して当業者により適宜決定され得る。
抗RV抗体を検出可能に標識する方法の1つにおいて、当該抗体を、酵素、例えば、酵素イムノアッセイ(EIA)に使用されるもののような酵素に結合させる[Voiler,A.による「酵素標識した免疫吸着アッセイ」(“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay)(ELISA),1978,Diagnostic Horizons,2:1〜7,Microbiological Associates Quarterly Publication,Walkersville.MD; Voiler,A.によるJ.Clin.Pathol.,31:507〜520,1978:Butier,J.E.によるMeth.Enzymol.,73:482〜523,1981]。抗体に結合する酵素を、例えば分光光度測定により、可視手段による蛍光測定により検出することができる化学分子が生成されるような方法で、適当な基質、好ましくは色素原性基質と反応させる。抗体に検出可能な標識を付けるために使用することができる酵素は、ペルオキシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼを包含するが、これらに限定されない。この検出はまた、酵素に対する色素原性基質を用いる比色法により達成することができる。
抗RV抗体の検出はまた、その他の種々の方法を用いて行うことができる。一例として、抗体または抗体断片を放射性物質で標識することによって、放射線イムノアッセイ(RIA)の使用によりRVタンパク質レベルを検出することができる[例えば、Weintrsub,B.による放射線免疫検定の原理、ラジオリガンド検定技術に関する第7回トレーニング コース(Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques),The Endocrine Society,1986年3月参照]。放射性同位元素は、ガンマカウンターまたはシンチレーションカウンターのような手段の使用により、もしくはオートラジオグラフイにより検出することができる。
抗体はまた、蛍光化合物により標識することができる。最も慣用の蛍光標識化合物の中には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリンおよびフルオレスカミンがある。同様に、生体発光性化合物を用いて、抗体RV抗体を標識することもできる。生体発光性タンパク質の存在は、蛍光の存在を検出することによって測定される。この標識目的に重要な生体発光性化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびイエクオリンである。
本発明の特定の態様において、生体試料中のRVタンパク質のレベル(または量)は、二次元電気泳動法により分析することができる。二次元ゲル電気泳動法は、当業者に公知である。血清などの生体試料を、第一段階で電荷に基づいてタンパク質を分離する等電点焦点化分離用電気泳動用ゲル上に装填する。不動化した勾配に基づく分離用のゲルストリップまたは担体両性電解質に基づく分離用の管状ゲルを包含する多数の第一段階ゲル標本を使用することができる。第一次分離後、タンパク質を第二段階ゲル上に移し、次いで平衡化し、次いでタンパク質をその分子量に基づいて分離するSDS−PAGEを用いて分離する。異なる被験者から採取した血清試料を比較する場合、複数のゲルを各血清試料から調製する。
分離後、この第二段階ゲルからウエスタンブロティッング法に慣用の膜上にタンパク質を移す。ウエスタンブロティッング法および引き続くタンパク質の可視化はまた、当業者に周知である[Sambrookらによる「分子クローニング。実験指針」(Molecular Cloning.A laboratory manual),第2版、第3巻、1989,Cold Spring Harbor]。標準的方法を用いることができ、またはこの方法を特定の種類のタンパク質、例えば高度に塩基性または酸性、もしくは脂質可溶性などの種類のタンパク質の同定にかかわり当該技術で知られているように修正することもできる[例えば、Ausubelらによる「分子生物学における現在の方法」(Current Protocols in Molecular Biology),Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.参照]。本発明の抗RV抗体を、ウエスタンブロッティング分析法におけるようなインキュベーション工程に用いる。第一の抗体に対して特異性の第二の抗体をウエスタンブロッティング分析法で使用し、第一抗体と反応するタンパク質を可視化する。
被験者由来の生体試料(例えば、血清、髄液)中の抗体価は、より具体的には、例えばEIA法では、RV抗原を吸着させた固相(例えばマイクロプレート)に血清を添加し、よく洗ったあと、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗RV関連ウイルス免疫グロブリン抗体等を加え、洗浄した後に発色反応を行って固相に結合した抗原に結合する抗体を検出することができる。血清中の抗体のRV抗原に対する中和活性は血清より、抗体画分を例えばイオン交換カラムクロマトグラフィー、プロテインAカラムクロマトグラフィー、プロテインGカラムクロマトグラフィー等の方法によって分画したのちに測定すると好都合である。このうちプロテインAカラムあるいはプロテインGカラムは特に簡便で好ましい。
(キット)
本発明はまた、1つの態様において、抗RV抗体を含有する、被験者の生体試料中の狂犬病関連ウイルス抗原(例:RVタンパク質またはその断片)として検出および/または定量するためのキットを提供する。本発明はまた、別の態様において、狂犬病関連ウイルスに曝露された患者において、ワクチン投与などに伴う中和抗体価上昇のモニタリングのためのキットを提供する。これらのキットは、上述の免疫学的手法により、狂犬病関連ウイルス抗原または抗狂犬病関連ウイルス中和抗体を検出するために用いられる。抗体はそれ自体で検出可能なように放射能、蛍光、比色、または酵素標識で標識されていてもよい。別法として、キットは、標識された二次抗体を含有していてもよい。
本発明のキットは、抗RV抗体またはRVタンパク質等の他に、代表的には、容器およびラベルを含んでいてもよい。容器上のまたは容器に伴うラベルには、薬剤が狂犬病関連ウイルス抗原の検出に使用されることが示されていてもよい。また、他のアイテム、例えば、使用説明書がさらに含まれていてもよい。
上述のとおり、本発明を特定の態様について特記したが、変化、変形をなし得るものであり、これらは本発明の技術的範囲内に属するものである。
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、この発明の組換え抗体、またはその抗体結合部分を発現するための核酸、ベクター及び宿主細胞も又この発明に包含される。
なお、本明細書中に現れるヌクレオチドまたはアミノ酸配列と配列番号との関係は以下のとおりである。
配列番号:1
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5022及びEV5034)L鎖ヌクレオチド配列を表す。
配列番号:2
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5022及びEV5034)L鎖アミノ酸配列を表す。
配列番号:3
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5022)H鎖ヌクレオチド配列を表す。
配列番号:4
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5022)H鎖アミノ酸配列を表す。
配列番号:5
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)H鎖ヌクレオチド配列を表す。
配列番号:6
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)H鎖アミノ酸配列を表す。
配列番号:7
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)L鎖可変領域アミノ酸配列を表す。
配列番号:8
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)H鎖可変領域アミノ酸配列を表す。
配列番号:9
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)L鎖CDR1アミノ酸配列を表す。
配列番号:10
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)L鎖CDR2アミノ酸配列を表す。
配列番号:11
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)L鎖CDR3アミノ酸配列を表す。
配列番号:12
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)H鎖CDR1アミノ酸配列を表す。
配列番号:13
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)H鎖CDR2アミノ酸配列を表す。
配列番号:14
抗ヒト狂犬病ウイルス抗体(EV5034)H鎖CDR3アミノ酸配列を表す。
(注)配列番号1,2及び7〜14の配列は、EV5022及びEV5034において共通である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
本実施例において使用する手順は、特に言及しない限り、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Third Edition) (Sambrookら、Cold Spring Harbour Laboratory Press,2001)を参照することができる。
1.RVに対する完全ヒト抗体産生細胞クローンの分離
業務上年1回のワクチン接種を受けている健常人男性において、採血1ヶ月前に狂犬病ワクチンの追加接種を行い、充分な抗体価の上昇を確認したのち末梢血を採取した。分離した末梢血リンパ球にEBウイルスを感染させ96穴マルチウェル培養プレートに撒き、2〜3週間培養し、培養上清を用いて迅速蛍光フォーカス抑制試験により狂犬病ウイルスCVS-11株に対する中和活性を測定し、陽性クローンを得た。さらに、このようなクローニング操作を繰り返すことにより、目的抗体を産生している細胞クローンを得た。尚、使用したCVS-11株は、すべて2 % ウシ胎児血清を含むイーグルの最小必須培地でBHK-21細胞にて増殖させ、-80℃保存したものを使用した。
2.抗RV抗体をコードするDNAのクローニング
抗体産生細胞のtotal−RNAから、Oligo-dTプライマーを用いて逆転写し、得られたcDNAを鋳型としてPCR法による抗体遺伝子の増幅を行った。PCRに使用したプライマーは、ヒトIgG抗体のH鎖およびL鎖をコードするcDNAのデータベースをもとに設計した。完全長のH鎖cDNAおよびL鎖cDNAを増幅するため、5’末端側プライマーは翻訳開始点を、3’末端側プライマーは翻訳終止点を有している。
3.塩基配列に基づく抗体のアミノ酸配列の決定
PCR法により増幅した抗体H鎖およびL鎖のcDNAをプラスミドベクターに挿入し、ABIシークエンサーによりそれぞれの塩基配列を確認した。得られた塩基配列より、抗体H鎖およびL鎖のアミノ酸配列及び抗体のアイソタイプを決定した。得られたEV5022は、IgG3・λであったため、医薬品としてより適しているIgG1抗体(EV5034)へ変換した(文献:Jochen G. Salfeld, Nature Biotechnol. 2007; 25: 1369-1372 参照)。
また、抗体の相補性決定領域(CDR)の解析には、Kabatの方法を用いた(文献:www.bioinf.org.uk:Dr.andrew C.R. Martin’s Group, Antibodies: General Information参照)。得られたEV5034の6つのCDRを配列番号:9〜14に示す。具体的にはL鎖CDR1、L鎖CDR2、L鎖CDR3、H鎖CDR1、H鎖CDR2、およびH鎖CDR3のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号:9、10、11、12、13及び14に示す。
4.得られた抗体遺伝子が抗RV抗体をコードしていることの確認
得られたH鎖およびL鎖のcDNAをそれぞれ発現ベクターに挿入し、293T細胞に同時に導入した。遺伝子導入はリポフェクタミン(Invitrogen社)とプラス試薬(Invitrogen社)により、メーカー推奨条件で行った(Invitrogen社 のカタログ:Cat.No.18324-111, Cat.No.18324-012,又はCat.No.18324-020を参照)。2日後に培養上清を回収し、迅速蛍光フォーカス抑制試験によりCVS-11株に対する中和活性があることを確認した。
5.抗体タンパクの産生
5.1 ヒト抗RV抗体遺伝子のCHO細胞への導入
得られた抗RV抗体(EV5022及びEV5034)発現プラスミドをCHO細胞に導入し、適切なセレクションマーカー存在下で培養することにより、抗体を恒常的に発現するCHO細胞クローンを得た。
同抗体安定発現CHO細胞を無血清培地中で培養し、培養上清を回収した。
5.2 抗狂犬病ヒト型MAbの樹立
健常人男性から得られた血清からスクリーニングし、抗狂犬病ヒト型モノクローナル抗体EV5022およびEV5034を確立することができた。EV5022およびEV5034のCVS-11株に対する中和能力は、それぞれ33.3 IU/mgおよび25.05 IU/mgであった。
6.中和耐性変異株の塩基配列による抗狂犬病ヒト型MAbの認識エピトープの決定
6.1 中和耐性変異株の選別
CVS-11株と抗狂犬病ヒト型MAb(1-3 IU)をそれぞれ0.5 mlずつ混合し、37℃で1.5時間反応させた。反応液をChick embryo-related cell (CER)に接種し、37℃で1時間ウイルスを吸着させた後、反応液を除きPBSで洗った。そこに、10 %FCS- EMEM/ 1 %アガロースゲルを重層し、5 %CO2インキュベーター−内で4日間培養した。形成された独立プラークをそれぞれ採取し、BHK-21にて3日間拡大培養した。さらに、RFFIT法によりそれぞれのヒト型抗体による中和反応に対して抵抗を示す株を、その抗体に対する中和耐性変異株として同定した。
6.2 中和耐性変異株のアミノ酸配列の決定
同定した中和耐性変異株のmRNAをISOGEN (Nippongene社)により抽出し、OligodT primer (Invitrogen社)によりcDNA合成し、GタンパクをN末端から3つのフラグメントに分けPCRにて増幅した。PCR及びシーケンスプライマーは以下のものを用いた [N terminal fragment; Sense primer: 5'-ATCACTTGTTTACCTCTGGAG-3'(配列番号:13) / Antisense primer: 5'-ACTTATACAGGCCTCTTTCATC-3'(配列番号:14), Internal fragment; Sense primer: 5’- TATAACTGGAAGATGGCCGGTG-3’(配列番号:15) / Antisense primer: 5’- ACTCCATATGTTGCTGGAG-3’(配列番号:16), C terminal fragment; 5’- CCATCATGACCACCAAGTC-3’(配列番号:17) / Antisense primer: 5’- CCATCATGACCACCAAGTC-3’(配列番号:18) / 5’-GGCCTTCACAGTCTGATCTC-3’(配列番号:19)]。PCR産物はQIAquick PCR Purification Kit (QIAGEN社)を用いて精製した。精製後のフラグメントはそれぞれ、BigDye(R)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit (Applied biosystems社)を用いてサイクルシークエンス反応を行い、Applied Biosystems 3130 genetic analyzer (Applied biosystems社) にてヌクレオチド配列を解析した。そして、中和耐性変異ウイルス株と親株ウイルスのアミノ酸配列とを比較し、変異が導入された部位、すなわち抗体の認識結合部位を決定した。
6.3抗狂犬病ヒト型MAbの認識エピトープの決定
中和耐性変異株(EV5034es株)の塩基配列を決定したところ、198番目がLys(AAG)からGlu (GAG)に変異していることが示された。
また、ウエスタンブロット法による検討の結果、CVS-11株の感染細胞においてEV5034は、変性・還元状態のGタンパクに対して特異的な結合を示さなかった(図1)。また、非感染細胞と比較しても同様の傾向であった。即ち、EV5034はCVS-11株のGタンパクの立体構造 (conformational)を認識していることが示唆された。これらの結果は、EV5034およびEV5021のエピトープが、抗原認識部位II(Gタンパク上の34-42アミノ酸残基および198-200アミノ酸残基)に位置していることを示している(文献:Prehaud, C., J.Virol. 1988; 62: 1-7 参照)。
7.抗RV抗体の迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)を用いた中和活性評価
7.1 迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)
RVに対する中和抗体価はRFFIT法にて測定した。それぞれの血清サンプルは96穴プレートにて、2 % ウシ胎児血清を含むイーグルの最小必須培地を使用することで2倍段階希釈を行った。すべてのサンプルは2連にて測定され、段階希釈した抗狂犬病ヒト型MAbに30‐100 TCID50 (50 % tissue culture infectious dose)のCVS-11株を接種し37℃、5 % CO2存在下にて90分インキュベートした。その後BHK-21細胞(1.0× 106 cells/ ml)をそれぞれのwellに加え、再度24時間37℃にてインキュベートした。その後プレートを90 %アセトンで固定し、FITC‐標識抗RVウイルス抗体(Fujirebio Diagnostics社, Malvern社)と37℃で45分反応させた。50 %蛍光フォーカス抑制濃度はSpeerman-Karber法にて計算した。中和抗体価はWHO 標準血清との比較により国際単位(IU/ ml)で求められ、単位重量あたりの中和力価を求めると、EV5034のCVS-11株に対する中和力価 (IU)は、25.05 IU/mgであった。
7.2 ヒト型抗狂犬病MAbのin vitro中和試験
CVS-11株と抗狂犬病ヒト型MAbを37℃で90分間反応させ、24穴プレートにて3日間前培養したC1300 (NA)細胞1.5× 105 cell/ wellを準備しPBSで2回洗浄後、反応液を接種し37 ℃で1時間ウイルスを吸着させた。接種後、上清のウイルス液を吸引し、PBSで1回洗浄し、1 %メチルセルロースを含む10%FCS-EMEM培地にてさらに3日間培養した。4 %パラホルムアルデヒドを加え室温で1時間反応させ細胞を固定し、PBSで2回洗浄後、さらにメタノールを加え5分間置きPBSで洗浄したのちにFITC-標識抗狂犬病ウイルス抗体と37℃で45分反応させ、50 % フォーカス抑制濃度(50 % FR)として表した。MAbを加えていない細胞では約100 FFU程の感染フォーカスが確認できた。EV5034では5-5希釈でおおよそ80 %抑制となり、最終的な50 %FRは320 ng/mlであった(図2)。
7.3 マウスチャレンジ試験
EV5034及び狂犬病ウイルスに対する標準血清(ERIG)をそれぞれ段階希釈し,CVS-11株乳飲み子マウス脳乳剤 (500 LD50相当)と混合し,37℃で1.5時間反応させた (最終濃度0.04- 1 IU/ 250 LD50)。その後,反応液を0.03 mlずつエーテル麻酔下のddyマウス (6週齢,雌性,各群n= 10)に脳内接種し,24時間毎の生存率を14日間観察し記録,評価した。また本実験は大分大学医学部倫理委員会の承認の元行われた。最終的な生存率は50 %であったが,標準血清と同様に抗体濃度に依存しマウス生存数の維持が確認された。EV5034はERIGと同程度の生存率を示した。このことはヒトに対する曝露後治療が,現在より安定的で安全性のあるものになる可能性を示唆している (図3)。
本発明の抗狂犬病ウイルス抗体、およびその抗体を含む医薬組成物は、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断、予防および/または治療に用いることができる。本抗体は、これまでの抗RV抗体とは、そのエピトープが異なり、特に、狂犬病ウイルスの曝露後発症予防(PEP)に有用であると期待できる。

Claims (24)

  1. 狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
    (a)配列番号:9、10および11のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される軽鎖CDR1、2および3のいずれか一つ以上のアミノ酸配列、及び
    (b)配列番号:12、13および14のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖CDR1、2および3のいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
  2. 狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
    (a)配列番号:9、10および11のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される軽鎖CDR1、2および3のアミノ酸配列、及び
    (b)配列番号:12、13および14のアミノ酸配列、並びにそれらのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される重鎖CDR1、2および3のアミノ酸配列を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
  3. 狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
    (a)配列番号:9、10および11のアミノ酸配列(軽鎖CDR1、2および3)、及び
    (b)配列番号:12、13および14のアミノ酸配列(重鎖CDR1、2および3)
    を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
  4. 狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
    (a)配列番号:7のアミノ酸配列;配列番号:7のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:7のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(LCVR)、及び
    (b)配列番号:8のアミノ酸配列;配列番号:8のアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:8のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(HCVR)
    を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
  5. 狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
    (a)配列番号:7のアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(LCVR)、及び
    (b)配列番号:8のアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(HCVR)
    を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
  6. 狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
    (a)配列番号:2のアミノ酸配列;配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:2のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖(L鎖)、及び
    (b)配列番号:4または6のアミノ酸配列;配列番号:4または6のアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列;または配列番号:4または6のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で示される重鎖(H鎖)
    を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
  7. 狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得るモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片であって、
    配列番号:2のアミノ酸配列で示される軽鎖(L鎖)、及び
    配列番号:4または6のアミノ酸配列で示される重鎖(H鎖)
    を含有する、抗体またはその抗原結合断片。
  8. 前記モノクローナル抗体が、狂犬病ウイルスGタンパク上の198番目のアミノ酸(リジン)を含むエピトープを認識する、請求項1〜7のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
  9. 前記モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体である、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体を含む、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の治療に使用される組成物。
  11. 狂犬病関連ウイルスに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗RVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするDNAであって、配列番号:2、4および6〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするDNA、および当該DNAと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAから選択される単離されたDNA。
  12. 配列番号:7及び8のアミノ酸配列をコードする、請求項11に記載のDNA。
  13. 配列番号:2及び4、または配列番号:2及び6のアミノ酸配列をコードする、請求項12に記載のDNA。
  14. 請求項11〜13のいずれかに記載のDNAを組込んだベクター。
  15. 請求項14記載のベクターが導入された宿主細胞。
  16. 請求項15記載の宿主細胞を培養する工程を含む、請求項1〜9のいずれかの抗体または抗原結合断片の作製方法。
  17. 被験者由来のサンプルと請求項1〜9のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片、または狂犬病関連ウイルス抗原を接触させる工程;および
    前記サンプル中の狂犬病関連ウイルス抗原または狂犬病関連ウイルスに対する中和抗体を検出または測定する工程、
    を含む、狂犬病関連ウイルス抗原または狂犬病関連ウイルスに対する中和抗体の検出方法。
  18. 酵素免疫測定法または放射性免疫測定法に従う、請求項17に記載の方法。
  19. 前記サンプルが、狂犬病関連ウイルスに曝露された患者または狂犬病関連ウイルスに感染していると疑われる被験者又は動物に由来する、請求項17または18に記載の方法。
  20. 前記サンプルが、被験者又は動物由来の組織、髄液、血漿、血清、唾液、または尿である、請求項17〜19のいずれかに記載の方法。
  21. 請求項1〜9のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断又は発症予防のためのモニタリングのための薬剤。
  22. 狂犬病関連ウイルスに曝露された患者における、当該ウイルスに対する中和抗体価の測定のために使用する、請求項21に記載の薬剤。
  23. 請求項1〜9のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、狂犬病関連ウイルスに起因する症状の診断又は発症予防のためのモニタリングのためのキット。
  24. 狂犬病関連ウイルスに曝露された患者における、当該ウイルスに対する中和抗体価の測定のために使用する、請求項23に記載のキット。
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JP2016529881A (ja) * 2013-07-03 2016-09-29 イムノキュア アーゲーImmunoqure Ag ヒト抗il−32抗体
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