JP2011062927A - インクジェット記録媒体 - Google Patents

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渉 小野
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Abstract

【課題】インクジェット記録時におけるコックリング及びブロンジングの発生が抑えられ、印画濃度が高く、且つ画像の滲みが抑制されたインクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成される支持体上に、該支持体側から順に無機微粒子、バインダー、及び層中の全固形分質量に対して1質量%以下の媒染剤を含むインク溶媒吸収層と、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含むインク受容層とを有するインクジェット記録媒体。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクをインクジェット法で吐出して記録するのに好適なインクジェット記録媒体に関する。
カラー画像を記録する画像記録方法としては、近年、様々な方法が提案されているが、いずれにおいても画像の品質、風合い、記録後のカールなど、記録物の品位に対する要求は高い。
例えばインクジェット法を利用した記録方法としては、インクを受容する記録層が多孔質構造に構成されたインクジェット記録媒体を用いた方法が実用化されている。その一例として、無機顔料粒子及び水溶性バインダーを含み、高い空隙率を有する記録層が耐水性の支持体上に設けられたインクジェット記録媒体があり、多孔質構造を有するためにインクの速乾性に優れ、高い光沢を有する等、写真ライクな画像の記録が可能になってきている。
このようなインクジェット記録媒体に用いられる耐水性の支持体としては、原紙上に樹脂層等の耐水層を設けた支持体等が用いられる。
インクジェット記録方法は、オフィスプリンター、ホームプリンター等の分野での適用のみならず、近年では、商業印刷分野での応用がなされつつある。この商業印刷分野では、インク溶媒の支持体への浸透を完全に遮断する写真のような表面を有するものではなく、汎用の印刷紙のような印刷の風合い、質感を有するインクジェット記録媒体が要求されている。ところが、記録媒体を構成しているインク受容層が20〜30μmと厚くなると、記録媒体の表面光沢、質感等が制限されてしまうため、商業印刷分野でのインクジェット技術の適用は、記録媒体に対する表面光沢、質感等の制限が許容されるポスター、帳票印刷等に留まっている。
例えば、画像を高速に又は一度に多数枚を印画したり、あるいは両面に画像を記録する等の商業用プリントなどの用途に対する要求がある。このような用途では、インクを打滴して画像記録するにあたり、画像をより高速に記録できるだけでなく、記録材料としての品質上、記録画像の光沢性や画像の精細さ等の品質が安定していることが求められる。
ところが、高品質化ないし高性能化が進む状況では、両面記録、あるいは多数枚処理や高速処理等などを行なう場合において、インクを打滴することによって、いわゆるコックリングが発生して、記録材料が波打ち状に変形してしまったりして、画像品質に与える影響を無視できない傾向にある。
このような課題に対応するため、形状記憶樹脂と繊維状物を含有する記録材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、上記のような記録材料は、樹脂層で被覆されていることから、古紙として再利用が難しく、汎用の印刷物の記録材料として適用できないものである。一方、環境負荷の低減のために、記録材料の再利用を考慮した技術として、生分解性樹脂で原紙に塗布または含浸する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)が、前記したコックリングに加えて、画像品質が不十分であった。
このように、高速化、汎用化のためのインクジェット用記録材料として、コックリングが発生せず、印画濃度が高く、ブロンジングがなく、且つ滲みがない鮮明な画像が記録できる記録材料が待ち望まれている。
特開2002−219851号公報 特開2005−153241号公報
本発明は、インクジェット記録時におけるコックリング及びブロンジングの発生が抑えられ、印画濃度が高く、且つ画像の滲みが抑制されたインクジェット記録媒体を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成される支持体上に、該支持体側から順に無機微粒子、バインダー、及び層中の全固形分質量に対して1質量%以下の媒染剤を含むインク溶媒吸収層と、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含むインク受容層とを有するインクジェット記録媒体。
<2> 前記インク受容層に含まれる無機微粒子が、気相法シリカである<1>に記載のインクジェット記録媒体。
<3> 前記媒染剤が、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物である<1>または<2>に記載のインクジェット記録媒体
<4> 前記支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂が、生分解性樹脂である<1>から<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
<5> 前記支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂の含有量が、支持体の全質量に対し1.0質量%〜10質量%の範囲である<1>から<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
<6> 樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成される支持体上に、該支持体側から順に無機微粒子、バインダー、及び層中の全固形分質量に対して1質量%以下の媒染剤を含むインク溶媒吸収層を設け、さらに無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含むインク受容層を設けるインクジェット記録媒体の製造方法。
本発明においては、支持体に含まれる繊維が樹脂で被覆されることによって、インクジェット記録時において、支持体のインク吸収性が良好になるとともに、コックリングの発生が防止される。特に本発明では、無機粒子、バインダー、及び層中の全固形分質量に対して1質量%以下の媒染剤を含むインク溶媒吸収層と、無機微粒子、バインダー、及び媒染剤を含むインク受容層とを樹脂被覆された支持体上に形成することで、よりインク吸収性、コックリングが改良され、さらに印画濃度、ブロンジング、滲み耐性が良好となり、高速化、汎用化に対応する印画性能の向上したインクジェット記録媒体が得られたものと考えられる。
本発明によれば、インクジェット記録時におけるコックリング及びブロンジングの発生が抑えられ、印画濃度が高く、且つ画像の滲みが抑制されたインクジェット記録媒体を提供することができる。
本発明のインクジェット記録媒体は、樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成される支持体上に、白色顔料である無機微粒子およびバインダーを含むインク溶媒吸収層と、該インク溶媒吸収層上に無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含むインク受容層を有することを特徴とする。
以下、本発明のインクジェット記録媒体を構成する層をそれぞれの構成成分を含めて説明する。
<支持体>
本発明における支持体は、樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成された支持体である。樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成された支持体は、下記に示す方法等によって得られる。本発明に用いる支持体は、これらの方法のいずれでもよく、他の方法で得られる樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成された支持体であればよい。
(1)原紙を抄紙した後に、樹脂を含浸させ、繊維の表面を被覆する方法。
(2)繊維に樹脂を被覆し、被覆された繊維を原紙に抄紙する方法。
(3)原紙に各種処理をした支持体を用いて、支持体に樹脂を含浸させ、支持体の繊維を被覆する方法。
具体的には、例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に用いられるバライタ紙等の各種支持体が挙げられ、表面がカレンダー処理を施されていてもよい。
支持体の厚みについては、特に制限はないが、取扱い易さの点で、50〜300μmが好ましい。
また、上記支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用するのが好ましい。
本発明のインクジェット記録媒体の支持体に用いる原紙としては、例えばセルロース繊維原料で好適に構成される。セルロース繊維原料としては、例えば、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、又は、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、新聞古紙、印刷古紙、ダンボール古紙、包装紙古紙、オフィス古紙等の古紙を原料とする脱墨パルプ(DIP)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
原紙は、必要に応じて、一般に紙に用いられる各種の顔料、例えば、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、無定形シリケート、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機顔料や、スチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂並びにそれらの微小中空粒子等の有機顔料をさらに含有することも可能である。
本発明における原紙は、セルロース繊維原料を含む紙料を調製し、その紙料を抄紙することにより得られる。その際使用される抄紙機としては、例えば、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などが挙げられる。また、紙料中には、必要に応じて、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、内添サイズ剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜添加できる。
原紙には、ロジン系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物、アルキルケテンダイマー等に代表されるサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などの表面サイズ剤を内添或いは外添することができる。
本発明のインクジェット記録媒体の支持体に用いられる原紙の坪量は、コックリング抑制、紙腰、及び画質の観点から、30〜300g/mであることが好ましく、30〜180g/mであることがより好ましい。
また、支持体には、バックコート層を設けることもできる。このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に用いられる白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、チタンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に用いられるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
本発明においては、前記した支持体に含まれる繊維は樹脂で表面が被覆される。
前記樹脂としては、支持体の繊維表面を被覆して、インク溶媒が繊維中に浸透するのを抑制できるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、ジアリルフタレート、エポキシ樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、尿素−アクリル酸エステルコポリエステル、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミンフェノールホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。
−生分解性樹脂−
また、支持体に含まれる繊維の表面を被覆する樹脂としては、環境負荷の面からは、生分解性樹脂が好ましい。前記生分解性樹脂としては、生分解性を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然物系及び化学合成系から選択される生分解性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、画像記録材料用支持体の光沢性、平面性及び剛性を向上させる観点から天然物系の生分解性樹脂を単独で使用することが好ましい。
前記天然物系の生分解性樹脂としては、天然物又はその誘導体である限り特に制限はなく、例えば、多糖類系、ポリアミノ酸系、ポリエステル系、ポリエン系、木質系、などが挙げられる。
前記多糖類系の生分解性樹脂としては、例えば、澱粉、エステル化澱粉(市販品として、日本コーンスターチ社製、コーンポール)、セルロース、酢酸セルロース(市販品として、ダイセル化学工業社製、セルグリーンPCA)、キチン、キトサン、プルラン、デキストラン、カードラン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、などが挙げられる。
前記ポリアミノ酸系生分解性樹脂としては、グルテン、グリニシン、コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、エラスチン、カゼイン、アルブミン、フィブロイン、セリシン、ポリ(γ−グルタミン酸)、ポリ(ε−リジン)、などが挙げられる。
前記ポリエステル系生分解性樹脂としては、例えば、PAHなどが挙げられる。
前記ポリエン系生分解性樹脂としては、例えば、シス型のポリイソプレンなどが挙げられる。
前記化学合成系の生分解性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族・芳香族ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリ酸無水物樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオルトエステル樹脂、ポリアミド樹脂、生分解性樹脂とのブレンド、などが挙げられる。
前記脂肪族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシブチレート(PHB)系、ポリカプロラクトン(PCL)系、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート系、ポリブチレンサクシネート(PBS)系、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)系、ポリブチレンサクシネートカーボネート系、ポリエチレンテレフタレートサクシネート系、ポリブチレンアジペートテレフタレート系、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート系、ポリブチレンアジペートテレフタレート系、ポリエチレンサクシネート(PES)系、ポリグリコール酸(PGA)系、ポリ乳酸(PLA)系、脂肪族ポリエステルのカーボネート共重合体、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体などが挙げられる。
前記生分解性樹脂とのブレンドとしては、例えば、デンプンを基材とするものなどが挙げられる。
前記ポリ乳酸(PLA)系の脂肪族系ポリエステル樹脂としては、例えば、乳酸、りんご酸、グルコース酸等のオキシ酸の重合体、これらの共重合体などが挙げられる。
支持体に含まれる繊維の表面を被覆する塗布液としては、前記生分解性樹脂を含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水分散液、水溶液などが挙げられ、これらの中でも水分散液が好ましい。
前記水分散液としては、例えば、生分解性樹脂エマルジョンを含むもの等が好適に挙げられる。
前記生分解性樹脂エマルジョンとしては、前記生分解性樹脂を含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エステル化澱粉エマルジョン(市販品として、ミヨシ油脂社製、ランディCP−100)などが好適に挙げられる。前記生分解性樹脂エマルジョンは、1種単独で使用してもよく、2種以を併用してもよい。
なお、前記生分解性エマルジョンにおける固形分含有量、平均粒子径、粘度、イオン性及び最低造膜温度などの諸物性は、目的に応じて適宜選択することができる。
支持体に含まれる繊維の樹脂による被覆の方法としては、溶剤に溶解した樹脂を支持体に塗布する方法、或いは樹脂溶液を含浸させる方法などが挙げられるが、樹脂溶液を含浸させる方法が好ましい。
また、支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂の含有量としては、支持体の全質量に対し1.0質量%〜10質量%の範囲であることが好ましく、2質量%〜8質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲内とすることで、コックリング、インク吸収性が良好となる。
<インク溶媒吸収層>
本発明においては、支持体とインク受容層との間に更にインク溶媒を吸収するインク溶媒吸収層が配置されており、このインク溶媒吸収層は、無機微粒子とバインダーと層中の全固形分質量に対して1質量%以下の媒染剤とを含むので、インクジェットインクの溶媒が無機微粒子に吸着・保持され、インクジェット記録時における支持体の変形(例えばコックリング、カール等)が発生するのを効果的に抑制することができる。また、インクの吸収容量、吸収速度が高まり、高速記録性が付与されると共に、支持体の表面を覆って平坦性が与えられることで光沢が向上し、記録媒体全体の腰(こわさ)も得られ、滲みの発生が抑制された高画質の画像を記録することができる。
なお、インク溶剤吸収層の役割として、インク量が少ない場合、着色剤はインク受容層のみに定着されることが考えられ、インク量が多くなると、着色剤の一部はインク溶媒吸収層に定着される。さらに、不透明度を上げる目的で、インク溶媒吸収層を設けることができる。
(無機微粒子)
本発明におけるインク溶媒吸収層は、白色顔料である無機微粒子を少なくとも一種含有する。白色顔料である無機微粒子としては、具体的には、多孔質シリカ、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)又は合成非晶質シリカ等のシリカ、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、ハイドロタルサイト等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料が使用できる。
また、前述のバックコート層の項で述べた白色顔料のうちの無機微粒子も、インク溶媒吸収層に用いる無機微粒子として好ましい。
これらの中でも、溶媒吸収性の高いシリカ(特に非晶質シリカ)、酸化アルミニウム、炭酸カルシウムが好ましい。
また、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメントなどの有機微粒子を無機微粒子に併用することもできる。
また、無機微粒子は2種以上を使用してもよい。
これらの無機微粒子の平均粒子径(凝集顔料の場合は凝集粒径)は100μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは0.3〜20μmである。平均粒子径を、上記範囲とすることでインク吸収性、コックリング、印画濃度、ブロンジング、滲みの十分な改良効果が得られ、さらにインク受容層の平滑性や光沢がより良好になる。ただし、インク吸収性を調整したり、インク溶媒吸収層上に塗布する塗料の浸透を制御したりする目的で、さらに、副成分として粒子径の小さい顔料を配合することができる。この様な顔料としてはコロイダルシリカ、アルミナゾル、又はシリカ微粒子等が挙げられる。
(バインダー)
本発明におけるインク溶媒吸収層は、バインダーの少なくとも一種を含有する。
バインダーとしては、例えば、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等、一般に塗工紙用として用いられている従来公知のバインダーが単独、あるいは併用して用いられる。
本発明におけるインク溶媒吸収層に用いられるバインダーとしては、上記のバインダーの内、水溶性高分子であり、具体的には、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体などが好ましく、特にポリビニルアルコール、或いは変性ポリビニルアルコールが好ましい。
インク溶媒吸収層における無機微粒子とバインダーとの含有割合は、その種類にもよるが、一般に無機微粒子100質量部に対して、バインダー1〜100質量部、好ましくは2〜70質量部の範囲で調節される。
その他、一般塗工紙の製造において使用される架橋剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。インク溶媒吸収層中には蛍光染料、着色剤をさらに添加することもできる。
−架橋剤−
前記インク溶媒吸収層は、無機微粒子、バインダー、及び層中の全固形分質量に対して1質量%以下の媒染剤とを含み、更に該バインダーを架橋し得る架橋剤を含んでもよい。
前記バインダー、特にポリビニルアルコール系樹脂の架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO、二硼酸塩(例えば、Mg、Co)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四硼酸塩(例えば、Na・10HO)、五硼酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
前記バインダーの架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
前記架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の使用量は、バインダーに対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
インク溶媒吸収層中には、媒染剤を配合することもでき、これによりインクジェット記録用インク中の着色剤(染料又は着色顔料)成分を定着することができる。カチオン性化合物としては、インク受容層に配合する媒染剤として例示したものが適宜使用できる。しかし、インクの定着は、インク溶媒吸収層よりもインク受容層で定着する方が、記録濃度が高く、鮮明な画像が得られるので、インク溶媒吸収層中の媒染剤の量は、インク溶媒吸収層中の全固形分質量に対して1質量%以下であり、媒染剤を含有しないことがより好ましい。媒染剤の含有量が、溶剤吸収層中の全固形分質量に対して1質量%以下であることで、経時滲みに対しての優れた抑制効果が発揮される。
インク溶媒吸収層用塗布液は、一般に固形分濃度を5〜50質量%の範囲に調製し、支持体上に乾燥質量が2g/m〜100g/m、好ましくは5g/m〜50g/m、更に好ましくは5g/m〜20g/mとなるように塗布するとよい。塗布量が乾燥質量で2g/m以上となることで、溶媒吸収性改良効果がより良好になる。また、塗布量が乾燥質量で100g/m以下となることで、表面の光沢が良好になる。
インク溶媒吸収層は、インク溶媒吸収層用塗布液を、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知公用の塗布装置により塗布、乾燥される。さらに、必要に応じてインク溶媒吸収層の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
(インク受容層)
本発明のインクジェット記録媒体は、前記支持体上に設けたインク溶媒吸収層の上にインク受容層を有する。インク受容層は、2以上の層から構成されていてもよい。インク受容層は、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含む。
本発明において、インク受容層はインク溶媒吸収層の上に設けられていればよく、支持体の両方の面にインク溶媒吸収層が設けられていれば、インク受容層は両方の面のインク溶媒吸収層上にインク受容層を設けることができる。その場合、それぞれの面上に異なる構成のインク受容層が設けられていてもよい。
インク受容層に用いられる無機微粒子は、バックコート層の項で述べた無機微粒子、およびインク溶媒吸収層の項で述べた無機微粒子と同じものを用いることができる。
インク受容層に用いられる無機微粒子で好ましいものは、シリカ粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、又は擬ベーマイトで、気相法シリカがより好ましい。
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって合成されたシリカ(無水シリカ微粒子)を意味する。気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。中でも、シリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なえばインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。インク受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用媒体に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
気相法シリカの平均一次粒子径としては、30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3nm〜10nmが最も好ましい。気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。このうち、アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al・nHO)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1nm〜30nmが好ましく、2nm〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3mL/g〜2.0mL/gが好ましく、0.5mL/g〜1.5mL/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が、その比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
無機微粒子のインク受容層中における含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対し、50質量%〜90質量%が好ましく、60質量%〜80質量%がより好ましい。
(水溶性樹脂)
インク受容層は、水溶性樹脂の少なくとも1種を含有する。水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
中でも、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号、特開昭58−181687号、特開平10−259213号、特開2001−72711号、特開2002−103805号、特開2000−63427号、特開2002−308928号、特開2001−205919号、特開2002−264489号等に記載されたものなどが挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11-165461号公報の[0011]〜[0012]に記載の化合物、特開2001−205919号公報、特開2002−264489号公報に記載の化合物なども挙げられる。
水溶性樹脂の含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対して、9質量%〜40質量%が好ましく、12質量%〜33質量%がより好ましい。
インク受容層を主として構成する水溶性樹脂と無機微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。層の透明性を保持する観点からは、無機微粒子、特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。気相法シリカを用いる場合、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を組み合わせるのが好ましく、より好ましくは、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂であり、特に好ましくは、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂である。
ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層が形成されると考えられる。インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂は、その他の水溶性樹脂を併用してもよい。他の水溶性樹脂とポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
無機微粒子(p)と水溶性樹脂(b)との含有比(p/b;PB比(質量比)〕を最適化することで、インク受容層の層構造及び層強度をより向上させることが可能である。前記PB比(p/b)としては、PB比が大き過ぎることに起因する膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つPB比が小さ過ぎることによって空隙が樹脂で塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
本発明においては、インク受容層に用いる無機微粒子としては、高い空隙率を得る点で気相法シリカが好ましく、この場合に特に50%以上の高い空隙率を得る観点から、インク受容層中の気相法シリカの含有比率を60質量%以上とし、気相法シリカ(p)と水溶性樹脂(b)との含有比(p/b;PB比)を質量基準で3〜7の範囲とすることが好ましい。中でも、同様の理由から、インク受容層中の気相法シリカの含有比率が60質量%以上80質量%以下であって、気相法シリカと水溶性樹脂とのPB比が3〜7の範囲であるのがより好ましく、更に好ましくは、インク受容層中の気相法シリカの含有比率が60質量%以上75質量%以下であって、気相法シリカと水溶性樹脂とのPB比が質量基準で3.5〜6.5の範囲である。
インク受容層は、例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子とポリビニルアルコール系樹脂とを、前記比率p/bで水溶液中に分散した塗布液を支持体上に塗布し、塗布形成された塗布膜を乾燥させることにより、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成される。
(媒染剤)
インク受容層は、上記の無機微粒子及び水溶性樹脂に加え、更に媒染剤を含有する。媒染剤としては、例えば、水溶性金属化合物等の無機媒染剤及びカチオン性ポリマー等の有機媒染剤が挙げられ、水溶性多価金属塩や含窒素有機カチオンポリマーが好適に用いられる。
前記水溶性金属化合物としては、例えば、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。なお、水溶性金属化合物の「水溶性」は、20℃の水に1質量%以上が溶解することをいう。
水溶性金属化合物の中でも、3価以上の金属化合物が好ましく、アルミニウム化合物、又は周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)を含む化合物が好ましく、ジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物はより好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。
水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、塩化アルミニウム又はその水和物(例:塩化アルミニウム六水和物)、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物(以下、「塩基性ポリ塩化アルミニウム」、「ポリ塩化アルミニウム」ともいう。)が知られており、好ましく用いられる。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記式1、式2又は式3で表され、例えば、[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等の、塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含む水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n ・・・式1
[Al(OH)AlCl ・・・式2
Al(OH)Cl(3n−m) 〔0<m<3n〕 ・・・式3
これらは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名称で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名称で、また、(株)理研グリーンよりHAP−25の名称で、大明化学(株)よりアルファイン83の名称で、さらに他のメーカーからも同様の目的で上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
アルミニウム化合物以外の水溶性金属化合物の具体例としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、が挙げられる。
周期表4A族金属を含む化合物としては、チタン又はジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性金属化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性金属化合物としては、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、乳酸ジルコニル、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、炭酸ジルコニル・アンモニウム、炭酸ジルコニル・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、硫酸ジルコニル、フッ化ジルコニル等が挙げられる。
水溶性金属化合物(好ましくはジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物、より好ましくは水溶性アルミニウム化合物)のインク受容層中における含有量としては、印画濃度・耐水性の点で、無機微粒子に対して、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜8質量%がより好ましい。
また、媒染剤としては、カチオンポリマーも好ましい。カチオンポリマーとしては、例えば含窒素有機カチオンポリマーが好適であり、第1級〜第3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好適である。含窒素有機カチオンポリマーとしては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(含窒素有機カチオンモノマー)の単独重合体である含窒素有機カチオンポリマー、前記含窒素有機カチオンモノマーと他の単量体との共重合体又は縮重合体として得られる含窒素有機カチオンポリマー、ウレタン結合を有するウレタン系ポリマー等に、カチオン基を含む化合物を用いてカチオン化修飾して得られる含窒素有機カチオンポリマー等を挙げることができる。
上記のカチオンポリマー中でも、滲み抑制の観点からは、カチオン性ポリウレタン、特開2004−167784号公報等に記載のカチオン性ポリアクリレートが好ましく、カチオン性ポリウレタンがより好ましい。カチオン性ポリウレタンとしては、市販品として例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス650」、「F−8564D」、「F−8570D」、日華化学(株)製の「ネオフィックスIJ−150」などを挙げることができる。
本発明においては、印画濃度・耐水性の点から、媒染剤は、水溶性アルミニウム化合物、水溶性ジルコニウム化合物、又はカチオン性ポリウレタンが好ましい。
本発明においては、インク溶媒吸収層は0.3〜20μmの非晶質シリカ、Al、およびCaCOからなる群から選ばれた少なくとも1種とバインダーとを含み(媒染剤の含有量が1質量%以下)、インク受容層は、3〜10nmの気相法シリカと水溶性樹脂と媒染剤とを含む場合が好ましい。
<光沢発現層>
本発明におけるインクジェット記録媒体は、インク受容層上に、顔料及び接着剤を含有する塗布液を塗布してもよく、例えば該塗布液が湿潤状態又は再湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げてなる光沢発現層を備える方法が挙げられる。
光沢発現層に用いる顔料としては、平均粒子径(凝集体顔料の場合は、凝集粒径平均値)が1μm以下のシリカ、アルミノシリケート、アルミナ、ゼオライトより選ばれる微細粒子顔料を使用する。好ましくはシリカ、アルミノシリケートであり、より好ましくはシリカである。粒子径は小さいほど透明性に優れるため、光沢を示し、且つインク受容層に形成したインクの濃度を低下することがないので好ましい。微細粒子顔料として更に好ましくはコロイダルシリカであり、特に好ましいのはアニオン性コロイダルシリカであり、真球状のものがとりわけ好ましい。
光沢発現層は、光沢を発現するためにインク受容層上に形成する薄い厚み(インク受容層に比べて薄い)の層で、インク受容層の表面の微細な凹凸を無くすことにより乱反射を防ぎ、より高い光沢性を発現する層である。従って、微細粒子の使用が好ましく、シリカの一次粒子の分散体であるコロイダルシリカの使用が好ましい。特にアニオン性コロイダルシリカは、アニオン性であるため、インクの定着能を有さない光沢発現層が形成でき、好ましい。なお、カチオン性コロイダルシリカやカチオン性化合物を配合して、インク定着性を付与することもできるが、光沢性がやや低下する傾向にある。
コロイダルシリカの平均粒子径は、0.01〜0.15μmであり、好ましくは0.015〜0.12μmであり、更に好ましくは0.02〜0.10μmである。平均粒子径が0.01μm以上であることで、インクの吸収性が低下することを抑制できる。また、平均粒子径が0.15μm以下であることで、光沢性及び記録画像の発色の鮮明性が向上する。
光沢発現層に含有される接着剤は、例えば、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル系重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が単独あるいは併用して使用される。
中でも、カゼインの使用は、光沢発現層を形成する際のキャストドラムからの離型性が優れるので好ましい。また、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョンは、記録画像の鮮明性と光沢感がすぐれるので好ましい。これらを併用することも可能である。
光沢発現層の接着剤として、エマルジョンを用いる場合、好ましい重量平均分子量は、1000〜1000万であり、より好ましくは5000〜500万である。分子量が低い光沢発現層の強度が不十分となりやすく、分子量が高いとエマルジョンの安定性が不十分となりやすい。
また、エマルジョンの平均粒子径は、0.02〜0.15μm程度が好ましい。0.02μm以上であることでインク吸収性能がより良好になる。また0.15μm以下であることで、光沢性や記録像の鮮明性がより向上する。
更に、エマルジョンのガラス転移温度は、50〜150℃が好ましい。ガラス転移温度が50℃以上であることで、乾燥の際の光沢発現層の成膜が進み過ぎることを抑制し、表面の多孔性が低下することを抑制でき、インクの吸収速度がより向上する。またガラス転移温度が150℃以下であることで、乾燥の際の成膜性が良好となり、より良好な光沢性が得られる。
光沢発現層の顔料と接着剤との組成比(固形分質量比)は、顔料100質量部に対して3〜150質量部であることが好ましく、7〜100質量部であることがより好ましく、10〜70質量部であることが更に好ましい。接着剤の比率が150質量部以下であることで、記録画像の発色の鮮明性がより向上する。また3質量部以上とすることで、より良好な光沢性が得られる。
光沢発現層には、製造時に光沢発現層と鏡面ドラムの剥離をスムーズに行なうために、離型剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。
離型剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモミウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物が挙げられる。
離型剤の含有量は、顔料100質量部に対し0.1〜50質量部、好ましくは0.3〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部の範囲で調節される。含有量を前記下限値以上とすることで、離型性がより改善される。また前記上限値以下とすることで、光沢が低下することを抑制し、インクのハジキや記録濃度の低下を抑制することができる。
光沢発現層用を形成するための塗布組成物中には、白色度、粘度、流動性等を調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。
光沢発現層用塗布液をインク受容層上に塗布する場合、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗布装置が使用できる。本発明において、光沢発現層はキャスト方式により形成された光沢発現層であることが好ましい。キャスト方式とは、塗布層を、平滑性を有する鏡面ドラム(キャストドラム)上で乾燥し、平滑面を塗布層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある塗布層表面を得る方法である。
鏡面ドラムを用いて光沢発現層を設ける方法としては、上記の光沢発現層用塗布液をインク受容層上に塗布して塗布層を形成し、該塗布層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト法)、該塗布層を一旦乾燥後、再湿潤し、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト法)、該塗布層を流動性はないが変形可能なゲル状態に凝固させ、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥する方法(ゲル化キャスト法)等が例示できる。また加熱された鏡面ドラムに直接光沢発現層用塗布液を塗布した後、紙支持体側のインク受容層面に圧接、乾燥して積層仕上げる方法(プレキャスト法)も採用することができる。
尚、鏡面ドラムの表面温度は40〜200℃程度が好ましく、70〜150℃がより好ましい。40℃以上とすることで、速やかに乾燥することができ、成膜がより良好な状態となりやすく、光沢がより向上する。また200℃以下とすることで、成膜が進みすぎることを抑制し、表面の多孔性が低下を抑制し、インクの吸収速度がより向上する。さらに、インクジェット記録媒体の表面が荒れたり光沢が低下することを抑制できる。
光沢発現層用塗布液をインク受容層上に塗布して、インク受容層及び光沢発現層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる場合、光沢発現層用塗布液のインク受容層への浸透を抑える目的で、光沢発現層用塗布液の不動化を促進する方法を採ることもできる。
この方法としては例えば、(1)インク受容層中に光沢発現層用塗布液の不動化を促進するようなゲル化剤を配合しておく、(2)インク受容層上に光沢発現層用塗布液の不動化を促進するようなゲル化剤を塗布・含浸させる、(3)光沢発現層用塗布液を塗布した後、光沢発現層用塗布液の不動化を促進するようなゲル化剤を表面に塗布・含浸させる、(4)光沢発現層用塗布液中に塗布液が乾燥する過程で不動化が促進されるようなゲル化剤を配合しておくことが挙げられる。
このようなゲル化剤としては、光沢発現層用塗布液中の接着剤の架橋剤である、ホウ酸、ギ酸等及びそれらの塩、アルデヒド化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。上記の方式の内、ウェットキャスト法を採用する場合、インキ受容層上に光沢発現層用塗布液を塗布し、鏡面ドラム上に圧接し乾燥するまでの時間をなるべく短くした方が、塗布液の浸透が抑えられるため、光沢が発現しやすい。
さらに、インキ受容層面がドラムに圧接される直前に、圧接ロール(プレスロール)上のインキ受容層面と鏡面ドラム間に光沢発現層用塗布液を付与して直ちに圧接する方式(ニップキャスト方式と称する)が、塗布液の浸透が極力抑えられ、少ない塗布量で良好な光沢、印画品位が得られ易く、特に好ましい。
光沢発現層の塗布量は、乾燥固形分で0.1〜20g/m程度、好ましくは0.2〜10g/m、より好ましくは0.5〜5g/mである。この塗布量は、0.1g/m以上とすることでより良好な光沢が得られ、20g/m以下とすることで、印画の際のにじみが発生することを抑制し、高い印画濃度が得られ易くなる。キャスト仕上げにより設けた後で、さらにスーパーカレンダー等により平滑化処理を行うこともできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
〔実施例1〕
<支持体の作製>
−原紙A−
カナダ標準濾水度(CSF)が450mLである広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)スラリーに、前記水和ケイ酸塩を、原紙の固形分100部あたり5部になるよう添加し、さらに絶乾パルプ100部当たり、澱粉1.0部、アルキルケテンダイマー0.03部、及び硫酸バンドを0.5部、歩留向上剤0.02部(DR−1500、ハイモ社製)となるように添加して紙料を調製した。その紙料を、角型手抄き装置を用いて目標坪量が風乾で175g/mとなるように抄造し、プレスにより脱水後、シリンダードライヤーを用いて乾燥し、シートを作製した。その後、線圧25kg/cmでキャレンダー処理を施して原紙Aを得た。
−原紙の樹脂被覆−
下記組成の樹脂液Aに60秒間原紙を含浸した後、100℃で乾燥処理を行い、支持体を得た。含浸前と乾燥後の支持体の質量差から、支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂量を算出した。被覆する樹脂の量は、支持体に対し質量換算で5重量%であった。
[樹脂液A]
・スチレン-ブタジエン共重合体樹脂 5部
(アサフレックス815、旭化成工業(株)製)
・溶媒(トルエン) 95部
<インク溶媒吸収層>
−インク溶媒吸収層用塗布液の調製−
合成非晶質シリカ(商品名:サイロジェットP412、グレースデビソン社製、平均粒子径12.0μm、平均細孔容積2.0mL/g)100部に、分散剤として、ポリアクリル酸ソーダ(商品名:キャリボンL−400、三洋化成工業(株)社製)0.2部を添加し、カウレス分散機で固形分濃度が20.0%の顔料スラリーを調製した。得られた顔料スラリーに、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、(株)クラレ製)20部とエチレン−酢酸ビニル(商品名:スミカフレックスS−401、住友化学工業(株)製、不揮発分55%))30部を添加、攪拌・分散し、さらに水を添加し、固形分濃度が20%のインク溶剤吸収層用塗布液Aを得た。
<インク溶剤吸収層の形成>
インク溶剤吸収層用塗布液Aを、上記の原紙の片面に、乾燥後の塗布量が10g/mとなるようにエアーナイフコーターで塗布し、エアドライヤーで熱風乾燥し、インク溶剤吸収層を形成した。
<受容層>
−インク受容層用塗布液の調製−
下記組成に示した、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)分散剤:含窒素有機カチオンポリマーと、(4)酢酸ジルコニルと、を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散した後、得られた分散液を45℃に加熱し20時間保持した。その後、分散液に、(5)ホウ酸と、(6)ポリビニルアルコール溶解液と、(7)カチオン変性ポリウレタンと、を30℃で加え、インク受容層用塗布液Aを調製した。
塗布液におけるシリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(6))は、4.9:1であった。また、塗布液のpHは、3.4で酸性を示した。
〜インク受容層用塗布液Aの組成〜
(1)無機微粒子:気相法シリカ微粒子 8.9部
(AEROSIL300SF75、平均一次粒子径7nm、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 47.3部
(3)分散剤:含窒素有機カチオンポリマー(51.5%水溶液) 0.78部
(「シャロールDC−902P」、第一工業製薬(株)製)
(4)酢酸ジルコニル 0.48部
(「ZA−30」、第一稀元素化学工業(株)製)
(5)ホウ酸(7.5%水溶液) 4.38部
(6)下記組成のポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液 26.0部
(7)カチオン変性ポリウレタン 1.8部
(スーパーフレックス650−5(25%溶液)、第一工業製薬(株)製)
〜ポリビニルアルコール溶解液の組成〜
・ポリビニルアルコール 1.81部
(JM-33、Mw:3300 (株)クラレ製)
・イオン交換水 23.04部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル 0.55部
(ブチセノール20P:協和発酵ケミカル(株))
・界面活性剤 0.6部
(エマルゲン109P、花王(株)製)
<インク受容層の形成>
上記で得られた片面にインク溶剤吸収層が設けられた原紙のインク溶剤吸収層が設けられた面に、以下のようにして、インク受容層用塗布液Aをエクストルージョンダイコーターにて塗布して塗布層を形成した。
具体的には、インク受容層用塗布液Aに75g/mで、下記組成のインライン液を5g/mの速度でインライン混合した後、上記インク溶剤吸収層を形成した原紙上に塗布した。インク受容層用塗布液Aとインライン液とが配管中で均一に混合され、塗布液の組成は流速の比による。
〜インライン液の組成〜
(1)ポリ塩化アルミニウム(アルファイン83、大明化学工業(株)製) 2.0部
(2)イオン交換水 8.0部
上記塗布により形成された塗布層を、熱風乾燥機にて80℃で(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が36%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この間は恒率乾燥速度を示した。その直後、上記により塗布層を塗布した原紙を、下記組成の塩基性化合物を含む液に3秒間浸漬して塗布層上に、塩基性化合物を7g/mを付着させ、更に72℃下で10分間乾燥させた。これにより、実施例1のインクジェット記録媒体を作製した。
〜塩基性化合物を含む液の組成〜
(1)ホウ酸 0.65部
(2)炭酸アンモニウム(試薬1級:関東化学(株)製) 5.0部
(3)イオン交換水 88.35部
(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 6.0部
(花王(株)製「エマルゲン109P」(10%水溶液)、HLB値13.6)
〔実施例2〕
実施例1において、支持体に含浸させる樹脂液Aを、下記組成の樹脂液Bに変更し、それ以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を得た。支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂の量は、支持体に対し質量換算で5質量%であった。
〜樹脂液B〜
・澱粉脂肪酸エステル系樹脂エマルジョン 12部
(ミヨシ油脂社製、ランディCP−100)
・水 88部
〔実施例3〕
実施例2において、樹脂液Bの澱粉脂肪族エステル系樹脂エマルジョンをセルロース系樹脂エマルジョン(ダイセル化学工業社製、セルグリーンPCA)に変更し、樹脂の固形分濃度が同じになるように水で希釈した樹脂液Cを使用した。これ以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を得た。支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂の量は、支持体に対し質量換算で5質量%であった。
〔実施例4〕
実施例2において、支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂の量を0.5質量%に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
〔実施例5〕
実施例2において、支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂の量を11質量%に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
〔比較例1〕
表1に記載のように、支持体の繊維を樹脂で被覆していない支持体を用いる以外は、実施例2と同様にして、比較例1のインクジェット記録媒体を得た。
〔比較例2〕
実施例2において、インク溶媒吸収層を設けなかった以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
〔比較例3〕
実施例2において、インク受容層に媒染剤である酢酸ジルコニル(ZA-30)、ポリ塩化アルミニウム(アルファイン83)を添加しなかった以外は、実施例2と同様にしてインク受容層用塗布液を調製し、実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
〔比較例4〕
実施例2において、合成非晶質シリカ100部に対して媒染剤である酢酸ジルコニル(ZA-30、第一稀元素化学工業(株)製)を1.8部(インク溶媒吸収層中の全固形分質量に対して1.2質量%)となるようにインク溶媒吸収層用塗布液を調製し、塗布した以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
〔比較例5〕
実施例2において、インク受容層を設けなかった以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
〔比較例6〕
実施例2において、支持体を下記の支持体に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
<支持体の作製>
秤量186g/mのアート紙(OK金藤;王子製紙(株)製)にコロナ放電処理をおこなった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層にさらにコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)と二酸化ケイ素(スノーテックスO、日産化学工業(株)製)とを1:2の比(質量比)で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/mとなるように塗布した。
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、および蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを溶融押出機を用いて、厚み24μmとなるように溶融押し出しし、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。なお、支持体のオモテ面は塗布液を塗布する前にコロナ放電処理をして使用した。
このようにして得た実施例1〜5、および比較例1〜6のインクジェット記録媒体を用いて、下記のような評価方法で、それぞれのインクジェット記録媒体を評価した。結果をまとめて表1に示した。
(評価方法)
<インク吸収性>
各インクジェット記録媒体に対して、インクジェットプリンタA700(エプソン(株)製)にて、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクをそれぞれ最大インク吐出量にて吐出し、ベタ画像を記録し、印画直後にPPC用紙を印画部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。評価は、以下の基準で行った。
−評価基準−
A:ほとんど転写が見られない。
B:転写するが、実用上問題ないレベル。
C:転写が実用上問題となるレベル。
<コックリング>
各インクジェット記録媒体に対して、インクジェットプリンタA700(エプソン(株)製)にて、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクをそれぞれ最大インク吐出量にて吐出し、ベタ画像を記録し、印画後の各インクジェット記録媒体の外観を目視で観察した。評価は、以下の基準で行った。
−評価基準−
A:ほとんどコックリングは見られない。
B:コックリングは見られるが、実用上問題ないレベル。
C:コックリングが実用上問題となるレベル。
<印画濃度>
各インクジェット記録媒体に対して、インクジェットプリンタA700(エプソン(株)製)にて、ブラック(K)インクを最大インク吐出量にて吐出し、ベタ画像を記録し、グレタグスペクトロリノSPM−50を用いて、視野角2°、光源D50、フィルターなしの条件で計測した。評価は、以下の基準で行った。
−評価基準−
A:印画濃度が2.2以上
B:印画濃度が2.1以上2.2未満
C:印画濃度が2.1未満
<ブロンジング>
各インクジェット記録媒体を35℃80%RHの環境で24時間調湿し、インクジェットプリンタA700(エプソン(株)製)にて、シアン(C)インクを最大インク吐出量にて吐出し、ベタ画像を記録し、目視による観察を行った。評価は、以下の基準で行った。
−評価基準−
A:ほとんどブロンジングは見られない。
B:ブロンジングは見られるが、実用上問題ないレベル。
C:ブロンジングが、実用上問題となるレベル。
<滲み>
各インクジェット記録媒体に対して、インクジェットプリンタA700(エプソン(株)製)にて、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グリーン、およびブラックのそれぞれのベタ画像内に、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グリーン、ブラック、ホワイトの細線が盛り込まれた画像を印画し、印画後に23℃50%RHの環境に24時間放置した。次に、40℃85%RHの環境に24時間放置した後サンプルを取り出し、サンプルの境界部分で滲みが発生しているかどうかを、下記基準にて目視評価した。
−評価基準−
A:ほとんど滲みは見られない。
B:滲みは見られるが実用上問題ないレベル。
C:滲みが実用上問題となるレベル。
Figure 2011062927
表1から、本発明のインク溶媒吸収層を設けた実施例1〜5は、インクジェット記録において、インク吸収性が良好で、コックリング、およびブロンジングが見られず、印画濃度が高く、且つ滲みの発生しないインクジェット記録媒体が得られた。これに対し本発明の構成を有しない比較例1〜6はいずれも、上記性能に劣るものであった。

Claims (6)

  1. 樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成される支持体上に、該支持体側から順に無機微粒子、バインダー、及び層中の全固形分質量に対して1質量%以下の媒染剤を含むインク溶媒吸収層と、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含むインク受容層とを有するインクジェット記録媒体。
  2. 前記インク受容層に含まれる無機微粒子が、気相法シリカである請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
  3. 前記媒染剤が、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録媒体
  4. 前記支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂が、生分解性樹脂である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
  5. 前記支持体に含まれる繊維を被覆する樹脂の含有量が、支持体の全質量に対し1.0質量%〜10質量%の範囲である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
  6. 樹脂で表面が被覆された繊維を含んで構成される支持体上に、該支持体側から順に無機微粒子、バインダー、及び層中の全固形分質量に対して1質量%以下の媒染剤を含むインク溶媒吸収層を設け、さらに無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含むインク受容層を設けるインクジェット記録媒体の製造方法。
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