JP2011062743A - 回転工具及び焼結体 - Google Patents
回転工具及び焼結体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2011062743A JP2011062743A JP2009217396A JP2009217396A JP2011062743A JP 2011062743 A JP2011062743 A JP 2011062743A JP 2009217396 A JP2009217396 A JP 2009217396A JP 2009217396 A JP2009217396 A JP 2009217396A JP 2011062743 A JP2011062743 A JP 2011062743A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sintered body
- phase
- rotary tool
- thermal conductivity
- hard component
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Pressure Welding/Diffusion-Bonding (AREA)
- Ceramic Products (AREA)
Abstract
【課題】熱伝導率が低く、摩擦撹拌接合のプローブに好適に利用できる焼結体と、同焼結体を用いた摩擦撹拌接合用の回転工具を提供する。
【解決手段】摩擦撹拌接合のプローブ12に用いられる回転工具1である。この工具1は、50〜80vol%の第一相を含み、残部が第二相及び不可避的不純物で構成される焼結体からなる。第一相は、WCからなる。第二相は、Y2O3、CeO2、及びMgOから選択される少なくとも一種を安定化剤とする部分安定化ジルコニアである。そして、この工具1の熱伝導率が10W/mK未満である。
【選択図】図1
【解決手段】摩擦撹拌接合のプローブ12に用いられる回転工具1である。この工具1は、50〜80vol%の第一相を含み、残部が第二相及び不可避的不純物で構成される焼結体からなる。第一相は、WCからなる。第二相は、Y2O3、CeO2、及びMgOから選択される少なくとも一種を安定化剤とする部分安定化ジルコニアである。そして、この工具1の熱伝導率が10W/mK未満である。
【選択図】図1
Description
本発明は、摩擦撹拌接合のプローブに利用される回転工具と、同工具を構成することに好適な焼結体に関するものである。特に、回転工具自体からの摩擦熱の放散を抑制して、摩擦撹拌接合の接合対象に摩擦熱を十分に伝達できる回転工具に関するものである。
従来、自動車、鉄道車両といった各種車両や航空機などの輸送機器、建築材などを含む構造物、その他、家庭用電気製品などでは、金属材料からなる種々の部材(例えば、車両のボディなど)を備える。これら金属材料からなる部材同士を接合する場合、リベットを用いたり、抵抗スポット溶接といった点接合方法が広く利用されている。
その他の接合方法として、特許文献1,2に記載される摩擦撹拌接合(Friction Stir Spot Welding)と呼ばれる方法が近年検討されてきている。摩擦撹拌接合は、工具の先端に設けられたプローブを回転させながら、突き合せた接合対象の突き合せ部分に押し込み、このときの摩擦熱により軟化した接合対象の構成材料を撹拌(塑性流動)することで接合する。この摩擦撹拌接合は、固相接合であることから、接合時、接合対象への入熱が少ないため、接合対象の軟化や歪みの程度が少ない上に、抵抗スポット溶接やリベットによる接合よりも継手品質がよく、良好な接合状態が安定して得られる。
この摩擦撹拌接合に用いられるプローブ(回転工具)には、耐摩耗性に優れることが望まれる。そこで、プローブの構成材料として、特許文献1では、工具鋼といった鋼を挙げており、特許文献2では、更に耐摩耗性に優れる超硬合金を挙げている。超硬合金は、硬質相をWC(炭化タングステン)とし、結合相をCo(コバルト)とするWC-Co系超硬合金が代表的である。
しかし、WC-Co系超硬合金は一般に熱伝導率が高く、摩擦撹拌接合用の回転工具として用いた場合、必ずしも満足できる性能が得られるとは限らない。
摩擦撹拌接合では、プローブと接合対象である金属との摺接に伴う摩擦熱により、金属を撹拌して流動させなければならない。ところが、熱伝導率の高い回転工具を用いると、発生した摩擦熱が回転工具を通して接合対象から逃げてしまい、金属が十分に塑性流動しないため、接合不良に通じる虞がある。
また、WC-Co系超硬合金では、一般的なセラミックスよりも硬度が低い金属(Co)を含むことで回転工具のヤング率や硬度が低くなり易く、同工具の剛性や耐摩耗性の更なる向上が難しい。
その他、Coは、近年、希少金属となっており、その使用は回転工具の製造コストの増加を招く。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、熱伝導率が低く、摩擦撹拌接合のプローブに好適に利用できる焼結体と、同焼結体を用いた摩擦撹拌接合用の回転工具を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、さらに剛性、曲げ強度、破壊靱性、硬度及び導電性の一つ以上に優れる焼結体と、同焼結体を用いた摩擦撹拌接合用の回転工具を提供することにある。
本発明者らは、第一相と第二相とを含む複合セラミックスの焼結体において、第一相の主たる成分であるWCと組み合わせる第二相の材質について種々の検討を行った。その結果、所定の酸化物を第二相に利用すれば、熱伝導率に優れるWCが比較的多く含まれた焼結体であっても、焼結体の熱伝導率を低く抑えられるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
本発明の回転工具は、摩擦撹拌接合のプローブに用いられる回転工具である。この工具は、50〜80vol%の第一相を含み、残部が第二相及び不可避的不純物で構成される焼結体からなる。前記第一相は、WCからなる。前記第二相は、Y2O3、CeO2、及びMgOから選択される少なくとも一種を安定化剤とする部分安定化ジルコニアである。そして、この工具の熱伝導率が10W/mK未満であることを特徴とする。
一方、本発明の焼結体は、第一相と、残部が第二相及び不可避的不純物で構成される焼結体である。前記第一相は、WCからなって、焼結体中に50〜80vol%含有される。前記第二相は、Y2O3、CeO2、及びMgOから選択される少なくとも一種を安定化剤とする部分安定化ジルコニアである。そして、この焼結体の熱伝導率が10W/mK未満であることを特徴とする。
本発明の回転工具によれば、特定の部分安定化ジルコニアを第二相に用いることで、焼結体の熱伝導率を効果的に低減することができる。そのため、この焼結体で摩擦撹拌接合のプローブに用いられる回転工具を構成すれば、工具を通じての摩擦熱の放散を抑制して、接合対象に摩擦熱を効率的に伝達することができる。
本発明の焼結体によれば、特定の部分安定化ジルコニアを第二相に用いることで、焼結体の熱伝導率を効果的に低減することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る回転工具及び焼結体を詳しく説明する。この回転工具及び焼結体は、第一相、第二相及び不可避的不純物からなる焼結体で構成される。この焼結体の第一相・第二相はいずれもセラミックスで構成される。そして、この2つの相を用いた複合焼結体とすることで、熱伝導率を10W/mK未満という低い値としている。なお、後述するWCの平均粒径、ヤング率、四点曲げ強度、破壊靭性、硬度、電気抵抗率、相対密度といった物理的特性は、単独で備えていてもよいが、複数の特性を兼備していることが好ましい。
<第一相>
第一相は、焼結体を構成する2相のセラミックスのうち、一方の層を構成する。この第一相はWの化合物を含有する。具体的には、第一相が、主硬質成分となるWの化合物のみからなる場合と、主硬質成分と併存される副硬質成分が含まれる場合とがある。主硬質成分となるWの化合物としては、WCのみの場合、Ti、Nb、Ta、Cr、Zr及びVから選ばれた少なくとも一種が固溶されたWC(固溶型WC)のみの場合、WCと固溶型WCの両者が混在される場合がある。副硬質成分はTi、Nb、Ta、Cr、Zr又はVの炭化物、窒化物、炭窒化物及びそれらの固溶体から選ばれた少なくとも一種である。
第一相は、焼結体を構成する2相のセラミックスのうち、一方の層を構成する。この第一相はWの化合物を含有する。具体的には、第一相が、主硬質成分となるWの化合物のみからなる場合と、主硬質成分と併存される副硬質成分が含まれる場合とがある。主硬質成分となるWの化合物としては、WCのみの場合、Ti、Nb、Ta、Cr、Zr及びVから選ばれた少なくとも一種が固溶されたWC(固溶型WC)のみの場合、WCと固溶型WCの両者が混在される場合がある。副硬質成分はTi、Nb、Ta、Cr、Zr又はVの炭化物、窒化物、炭窒化物及びそれらの固溶体から選ばれた少なくとも一種である。
主硬質成分を構成するWC自体は、硬度や剛性に優れるが、熱伝導率の高い材料である。このWCを第一相に用いることで、焼結体の機械的特性を確保し、後述する第二相との複合により、焼結体の熱伝導率を低減する。すなわち、第一相を50体積%以上含有することで、焼結体の硬度や剛性を十分に確保できる。逆に、第一相を80体積%以下とすることで、熱伝導率を所定の値に制御しやすくできる。より好ましい第一相の含有量は、60〜80体積%である。この範囲であれば、特に高い機械的特性(硬度、剛性、破壊靭性など)と低い熱伝導率とをバランスよく両立した回転工具又は焼結体を構成できる。
一方、主硬質成分を構成する固溶型WCや副硬質成分は、WCに比べて熱伝導率が大幅に低く、後に詳述するように、焼結体の熱伝導率を低減させることに寄与する。この明細書では、固溶型WCを含む焼結体を「固溶型焼結体」といい、さらに副硬質成分を含む焼結体を「併存型焼結体」という。
<第二相>
第二相は、焼結体を構成する2相のセラミックスのうち第一相と異なるセラミックス相で、第一相の粒界結合相として機能する。この第二相には、部分安定化ジルコニア(PSZ)を用いる。PSZはセラミックスの中では熱伝導率が非常に低いため、焼結体中の第二相の含有量をある程度多くすることで、効果的に焼結体の熱伝導率を低減できる。第二相の含有量が多いほど、焼結体の熱伝導率を低減できる傾向にある。また、PSZは金属であるCoに比べて硬度や剛性に優れ、第一相と複合することで、耐摩耗性や機械的特性に優れた複合焼結体を構成できる。
第二相は、焼結体を構成する2相のセラミックスのうち第一相と異なるセラミックス相で、第一相の粒界結合相として機能する。この第二相には、部分安定化ジルコニア(PSZ)を用いる。PSZはセラミックスの中では熱伝導率が非常に低いため、焼結体中の第二相の含有量をある程度多くすることで、効果的に焼結体の熱伝導率を低減できる。第二相の含有量が多いほど、焼結体の熱伝導率を低減できる傾向にある。また、PSZは金属であるCoに比べて硬度や剛性に優れ、第一相と複合することで、耐摩耗性や機械的特性に優れた複合焼結体を構成できる。
一般にジルコニア(ZrO2)は、安定化剤となる所定の酸化物を固溶させることで温度変化に伴う相転移が抑制され、安定化ジルコニア(SZ)となる。SZのうち、PSZは温度変化に伴って部分的に相転移が生じるものの、熱膨張率は完全安定化ジルコニアに比べると小さく、焼結時の温度変化に伴う割れの発生は十分に抑制できる。また、PSZは応力誘起相変態強化機構により高い破壊靭性を示す点で好ましい。すなわち、焼結体に応力が作用した場合、その部分が瞬時に正方晶から単斜晶に相変態する。この相変態は体積膨張を伴い、その際の圧力で亀裂の進展を阻害する。この亀裂の進展の阻害により、PSZは高い破壊靭性を備えることができる。
PSZの安定化剤としては、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム(CeO2)、及び酸化マグネシウム(MgO)から選択される一種以上が利用できる。その他、酸化カルシウム(CaO)、酸化アルミニウム(Al2O3)や、希土類酸化物(但し、Y2O3とCeO2を除く)を安定化剤として用いることが期待できる。特に、酸化イットリウム(Y2O3)で安定化したイットリア安定化ジルコニア(YSZ)は高温での安定性が高く、好ましい。安定化剤の含有量は、ジルコニアに対して2〜3mol%程度とすることが好適である。この範囲の含有量とすることで、結晶を適切に安定化させ、かつ破壊靭性に優れたPSZを得ることができる。
<固溶型焼結体>
主硬質成分として固溶型WCを含む焼結体とすることにより、主硬質成分がWCのみの場合に比べて焼結体の熱伝導率を顕著に低下させることができる。Ti、Nb、Ta、Cr、Zr及びVから選ばれた少なくとも一種の金属(固溶金属)は、WCに炭化物、窒化物、又は炭窒化物として固溶することができる。この固溶によりWC中のフォノン散乱が大きくなり、固溶型WCの熱伝導率がWCに比べて顕著に低下するため、焼結体の熱伝導率は大きく低下する。特に、WCに固溶される金属がTi、Nb及びTaの少なくとも1種である場合、これらを固溶した固溶型WCを含む焼結体は耐摩耗性にも優れる。そのため、この固溶型WCを含む焼結体を摩擦撹拌接合のプローブに利用した場合、接合対象が鋼などの比較的高強度な材料から構成されていても、摩耗し難い。この耐摩耗性の向上効果は、Ta>Nb>Tiの順に高い。また、上記固溶型WCは、焼結体中の第一相に対する存在割合が高いほど、焼結体の熱伝導率が低下するため、WCの実質的に全てが固溶型WCであることが好ましい。一方、固溶型WCにおける固溶金属の固溶量(固溶金属が複数の場合は合計固溶量)は、WCに対して最大で50mol%程度である。固溶限界まで所定の金属を固溶させることが固溶型WCの熱伝導率低下には好ましい。固溶限界を上回ると、固溶できない成分が別の相として析出する。この別の相は次述する併存型焼結体の副硬質成分として利用できる場合がある。固溶型WCを焼結体中に存在させるには、例えば、原料として、WCの粉末と、副硬質成分の粉末とを用意し、焼結時に、WC中に当該副硬質成分の固溶金属を固溶させたり、原料として、WC中に固溶金属が予め固溶したものを利用することが挙げられる。
主硬質成分として固溶型WCを含む焼結体とすることにより、主硬質成分がWCのみの場合に比べて焼結体の熱伝導率を顕著に低下させることができる。Ti、Nb、Ta、Cr、Zr及びVから選ばれた少なくとも一種の金属(固溶金属)は、WCに炭化物、窒化物、又は炭窒化物として固溶することができる。この固溶によりWC中のフォノン散乱が大きくなり、固溶型WCの熱伝導率がWCに比べて顕著に低下するため、焼結体の熱伝導率は大きく低下する。特に、WCに固溶される金属がTi、Nb及びTaの少なくとも1種である場合、これらを固溶した固溶型WCを含む焼結体は耐摩耗性にも優れる。そのため、この固溶型WCを含む焼結体を摩擦撹拌接合のプローブに利用した場合、接合対象が鋼などの比較的高強度な材料から構成されていても、摩耗し難い。この耐摩耗性の向上効果は、Ta>Nb>Tiの順に高い。また、上記固溶型WCは、焼結体中の第一相に対する存在割合が高いほど、焼結体の熱伝導率が低下するため、WCの実質的に全てが固溶型WCであることが好ましい。一方、固溶型WCにおける固溶金属の固溶量(固溶金属が複数の場合は合計固溶量)は、WCに対して最大で50mol%程度である。固溶限界まで所定の金属を固溶させることが固溶型WCの熱伝導率低下には好ましい。固溶限界を上回ると、固溶できない成分が別の相として析出する。この別の相は次述する併存型焼結体の副硬質成分として利用できる場合がある。固溶型WCを焼結体中に存在させるには、例えば、原料として、WCの粉末と、副硬質成分の粉末とを用意し、焼結時に、WC中に当該副硬質成分の固溶金属を固溶させたり、原料として、WC中に固溶金属が予め固溶したものを利用することが挙げられる。
<併存型焼結体>
主硬質成分と副硬質成分とを併存させることで、焼結体の熱伝導率の低下に一層寄与することが期待される。この副硬質成分はWCよりも熱伝導率が低く、さらに固溶型WCよりも熱伝導率が低い場合が多い。そのため、副硬質成分の含有量も、多いほど焼結体の熱伝導率を低減できる傾向がある。特に、第一相の含有量が多い場合に、副硬質成分を併存させれば、相対的に主硬質成分の含有量、特にWCの含有量を低減できるため、焼結体の熱伝導率の低下に効果的である。具体的には、第一相の含有量が60vol%以上、特に、70vol%以上の場合に、副硬質成分を併存させることが好ましい。副硬質成分の具体例として、TiC、NbC、TaC、TaN、CrN、VC、TiCNが挙げられる。また、これらの副硬質成分は、WCの粒成長抑制効果があることから、副硬質成分と併存されるWC(固溶型WC)は微粒になり易く、後述するように、WCの微細化による熱伝導率の低減効果も期待できる。この粒成長抑制効果は、V>Cr>Ta>Nb>Tiの順に高いと言われる。従って、粒成長の抑制をより効果的に図る場合、焼結体にはVやCrの化合物を含有することが好ましいと考えられ、硬度(耐摩耗性)の向上をより効果的に図る場合、焼結体にはTa、Nb、又はTiの化合物を含有することが好ましいと考えられる。このような副硬質成分の第一相に占める含有量は、20〜40vol%、特に25〜35vol%が好適である。この下限を下回ると、焼結体の熱伝導率の低下効果が少なく、上限を超えると焼結体の剛性が低下する傾向にある。
主硬質成分と副硬質成分とを併存させることで、焼結体の熱伝導率の低下に一層寄与することが期待される。この副硬質成分はWCよりも熱伝導率が低く、さらに固溶型WCよりも熱伝導率が低い場合が多い。そのため、副硬質成分の含有量も、多いほど焼結体の熱伝導率を低減できる傾向がある。特に、第一相の含有量が多い場合に、副硬質成分を併存させれば、相対的に主硬質成分の含有量、特にWCの含有量を低減できるため、焼結体の熱伝導率の低下に効果的である。具体的には、第一相の含有量が60vol%以上、特に、70vol%以上の場合に、副硬質成分を併存させることが好ましい。副硬質成分の具体例として、TiC、NbC、TaC、TaN、CrN、VC、TiCNが挙げられる。また、これらの副硬質成分は、WCの粒成長抑制効果があることから、副硬質成分と併存されるWC(固溶型WC)は微粒になり易く、後述するように、WCの微細化による熱伝導率の低減効果も期待できる。この粒成長抑制効果は、V>Cr>Ta>Nb>Tiの順に高いと言われる。従って、粒成長の抑制をより効果的に図る場合、焼結体にはVやCrの化合物を含有することが好ましいと考えられ、硬度(耐摩耗性)の向上をより効果的に図る場合、焼結体にはTa、Nb、又はTiの化合物を含有することが好ましいと考えられる。このような副硬質成分の第一相に占める含有量は、20〜40vol%、特に25〜35vol%が好適である。この下限を下回ると、焼結体の熱伝導率の低下効果が少なく、上限を超えると焼結体の剛性が低下する傾向にある。
<主硬質成分の平均粒径>
主硬質成分(WC・固溶型WC)の平均粒径は、0.05μm以上、2.4μm以下であることが好ましい。本発明の焼結体は、PSZ のマトリクス中に第一相の粒子が分散した構造に近似した構造を有する。従って、焼結体の主硬質成分の粒径が小さい場合、主硬質成分の粒子とマトリクスのPSZとの界面の面積が増加すると共に、焼結体中に点在する主硬質成分により熱伝導の方向が散乱される。その結果、焼結体全体としての熱伝導率が低下し、焼結体には熱が伝わり難くなる。この熱伝導率の低減効果は、焼結体中の第一相の平均粒径が小さいほど顕著になる。また、主硬質成分の粒子が微細であると焼結体の硬度が向上する。主硬質成分WCの平均粒径は、0.3μm未満が好ましく、順次、0.1μm以下、0.08μm以下、0.06μm以下と微細にするほどより好ましい。焼結体中の主硬質成分の平均粒径を上記のように微細にするには、例えば、十分な粉砕を行うことで平均粒径を微細にしたWC粉末を原料粉末として利用したり、原料粉末に粒成長抑制効果がある副硬質成分を添加して焼結することが挙げられる。また、短時間で焼結が終了する放電プラズマ焼結法等を用いることが有効である。
主硬質成分(WC・固溶型WC)の平均粒径は、0.05μm以上、2.4μm以下であることが好ましい。本発明の焼結体は、PSZ のマトリクス中に第一相の粒子が分散した構造に近似した構造を有する。従って、焼結体の主硬質成分の粒径が小さい場合、主硬質成分の粒子とマトリクスのPSZとの界面の面積が増加すると共に、焼結体中に点在する主硬質成分により熱伝導の方向が散乱される。その結果、焼結体全体としての熱伝導率が低下し、焼結体には熱が伝わり難くなる。この熱伝導率の低減効果は、焼結体中の第一相の平均粒径が小さいほど顕著になる。また、主硬質成分の粒子が微細であると焼結体の硬度が向上する。主硬質成分WCの平均粒径は、0.3μm未満が好ましく、順次、0.1μm以下、0.08μm以下、0.06μm以下と微細にするほどより好ましい。焼結体中の主硬質成分の平均粒径を上記のように微細にするには、例えば、十分な粉砕を行うことで平均粒径を微細にしたWC粉末を原料粉末として利用したり、原料粉末に粒成長抑制効果がある副硬質成分を添加して焼結することが挙げられる。また、短時間で焼結が終了する放電プラズマ焼結法等を用いることが有効である。
<焼結体のヤング率>
焼結体のヤング率は、300GPa以上であることが好ましい。第一相に金属化合物の中でもヤング率が高い材料であるWC(固溶型WC)を用いることで、WC(固溶型WC)の持つ高剛性を焼結体にも発現させることができる。加えて、第二相にPSZを用い、このPSZがWCの粒界結合相として機能することで、焼結体の剛性を高めることに寄与している。焼結体の高いヤング率は、摩擦撹拌接合時の工具の剛性を高くでき、高精度の接合を可能にすることが期待できる。より好ましいヤング率は330GPa以上、さらに好ましくは340GPa以上である。
焼結体のヤング率は、300GPa以上であることが好ましい。第一相に金属化合物の中でもヤング率が高い材料であるWC(固溶型WC)を用いることで、WC(固溶型WC)の持つ高剛性を焼結体にも発現させることができる。加えて、第二相にPSZを用い、このPSZがWCの粒界結合相として機能することで、焼結体の剛性を高めることに寄与している。焼結体の高いヤング率は、摩擦撹拌接合時の工具の剛性を高くでき、高精度の接合を可能にすることが期待できる。より好ましいヤング率は330GPa以上、さらに好ましくは340GPa以上である。
<焼結体の四点曲げ強度>
焼結体の四点曲げ強度は、2100MPa以上であることが好ましい。硬度・剛性に優れるWC(固溶型WC)を主硬質成分とし、やはり剛性や破壊靭性に優れるPSZを用いることで、四点曲げ強度が高い焼結体とすることができる。より好ましい四点曲げ強度は2200MPa以上、さらに好ましくは2400MPa以上である。
焼結体の四点曲げ強度は、2100MPa以上であることが好ましい。硬度・剛性に優れるWC(固溶型WC)を主硬質成分とし、やはり剛性や破壊靭性に優れるPSZを用いることで、四点曲げ強度が高い焼結体とすることができる。より好ましい四点曲げ強度は2200MPa以上、さらに好ましくは2400MPa以上である。
<焼結体の破壊靭性>
焼結体の破壊靭性は、7.8MPa・m0.5以上であることが好ましい。剛性に優れるWC(固溶型WC)に加え、破壊靭性に優れるPSZを用いた複合焼結体とすることで、破壊靭性の高い焼結体とすることができる。この破壊靭性は、WC(固溶型WC)の平均粒径とも関連している。WC(固溶型WC)の粒径が小さすぎるとPSZの第二相が薄くなり易く、焼結体が外部から応力を受けた際、WC(固溶型WC)とPSZとの結晶粒界近傍で発生する応力を緩和することが難しくなる。その結果、PSZの粒子が脱落したり破壊され易くなり、焼結体の破壊靭性が低くなる。結果として、粒子の脱落が支配するチッピングや破損が焼結体に生じやすくなる。一方、WC(固溶型WC)の平均粒径が大きすぎると、結晶粒子が粗大化しやすく、粗大なWC(固溶型WC)粒子が破壊の起点となって破壊靭性が低くなる。そのため、高い破壊靭性を得るには、WC(固溶型WC)の平均粒径を0.05μm以上、2.4μm以下とすることが好ましい。WC(固溶型WC)の平均粒径がこの範囲にあれば、低熱伝導率と耐チッピング・耐破損性が両立できる。より好ましい破壊靭性は、8.0MPa・m0.5以上である。
焼結体の破壊靭性は、7.8MPa・m0.5以上であることが好ましい。剛性に優れるWC(固溶型WC)に加え、破壊靭性に優れるPSZを用いた複合焼結体とすることで、破壊靭性の高い焼結体とすることができる。この破壊靭性は、WC(固溶型WC)の平均粒径とも関連している。WC(固溶型WC)の粒径が小さすぎるとPSZの第二相が薄くなり易く、焼結体が外部から応力を受けた際、WC(固溶型WC)とPSZとの結晶粒界近傍で発生する応力を緩和することが難しくなる。その結果、PSZの粒子が脱落したり破壊され易くなり、焼結体の破壊靭性が低くなる。結果として、粒子の脱落が支配するチッピングや破損が焼結体に生じやすくなる。一方、WC(固溶型WC)の平均粒径が大きすぎると、結晶粒子が粗大化しやすく、粗大なWC(固溶型WC)粒子が破壊の起点となって破壊靭性が低くなる。そのため、高い破壊靭性を得るには、WC(固溶型WC)の平均粒径を0.05μm以上、2.4μm以下とすることが好ましい。WC(固溶型WC)の平均粒径がこの範囲にあれば、低熱伝導率と耐チッピング・耐破損性が両立できる。より好ましい破壊靭性は、8.0MPa・m0.5以上である。
<焼結体の硬度>
焼結体のHRA硬度(ロックウェル硬度、Aスケール)が93以上であることが好ましい。硬度に優れるWC(固溶型WC)を主硬質成分としているため、焼結体にWC(固溶型WC)の特性が顕著に現れ、高硬度の焼結体を構成することができる。
焼結体のHRA硬度(ロックウェル硬度、Aスケール)が93以上であることが好ましい。硬度に優れるWC(固溶型WC)を主硬質成分としているため、焼結体にWC(固溶型WC)の特性が顕著に現れ、高硬度の焼結体を構成することができる。
<焼結体の電気抵抗率>
焼結体の電気抵抗率は、10-3Ωcm以下であることが好ましい。導電性を有するWCを50vol%以上含有することで、焼結体の電気抵抗率を低減し、高い導電性を確保している。このような導電性を備える焼結体とすることで、加工精度に優れた高い電気加工性を有することになる。そのため、放電加工により、所定の形状の部材に焼結体を容易かつ高精度に加工することができる。
焼結体の電気抵抗率は、10-3Ωcm以下であることが好ましい。導電性を有するWCを50vol%以上含有することで、焼結体の電気抵抗率を低減し、高い導電性を確保している。このような導電性を備える焼結体とすることで、加工精度に優れた高い電気加工性を有することになる。そのため、放電加工により、所定の形状の部材に焼結体を容易かつ高精度に加工することができる。
<焼結体の相対密度>
本発明の回転工具及び焼結体は、上述した第一相と第二相を用いることで、相対密度の高い焼結体とすることができる。具体的には、相対密度99%以上の焼結体とすることができる。相対密度を求める前提として、理論密度を求める必要があるが、この理論密度は焼結体の組成から求めることができる。
本発明の回転工具及び焼結体は、上述した第一相と第二相を用いることで、相対密度の高い焼結体とすることができる。具体的には、相対密度99%以上の焼結体とすることができる。相対密度を求める前提として、理論密度を求める必要があるが、この理論密度は焼結体の組成から求めることができる。
<製造方法>
本発明回転工具は、WC-Co系超硬合金の製造に利用される一般的な製造方法、具体的には、原料の準備→原料の混合・粉砕→乾燥→成形→焼結という工程で製造することができる。上記焼結後に、更にHIP(熱間静水圧焼結)を行うと、緻密な焼結体を得ることができる。
本発明回転工具は、WC-Co系超硬合金の製造に利用される一般的な製造方法、具体的には、原料の準備→原料の混合・粉砕→乾燥→成形→焼結という工程で製造することができる。上記焼結後に、更にHIP(熱間静水圧焼結)を行うと、緻密な焼結体を得ることができる。
原料には、WC粉末(又は副硬質成分の固溶されたWC粉末)、PSZ粉末、その他、上述した副硬質成分を添加する場合は、その物質の粉末を利用するとよい。これらの原料粉末は、平均結晶粒径を選定し、粉砕混合工程で粉砕能力をコントロールすることによって所定の組織を得ることができる。
焼結は、ArやN2といった不活性ガス雰囲気や真空雰囲気とし、焼結温度を1700℃以上1850℃以下とすることが好ましい。焼結温度が下限値未満では、緻密化が不十分となり、上限値を超えると、粒成長しやすい傾向がある。焼結方法には、通電加圧焼結法、放電プラズマ焼結法、ホットプレス焼結法などの加圧焼結法を好適に利用することができる。特に、通電加圧焼結法は、焼結時間が短く温度制御が容易であり、焼結体の生産性に優れる。放電プラズマ焼結法(PAS(Plasma Activated Sintering)法)における好適な圧力は、30〜50MPa程度である。焼結条件がWC(固溶型WC)の粒径に及ぼす影響として、焼結温度が低いほど、昇温速度が速いほど、或いは保持時間が短いほど、粒成長し難い傾向にある。
<回転工具>
本発明の回転工具の一例を図1に示す。この回転工具1は、図1に示すように、軸部10の先端から突出したプローブ12を備える。軸部10は、図示しない回転駆動機構に支持される棒状部である。回転機構を駆動することで、工具1を回転させながら所定の水平方向に移動させることができる。一方、プローブ12は、摩擦撹拌接合を行う際に、接合対象の接合界面に圧接される個所で、接合対象との摩擦熱により接合対象を塑性流動させて接合する。この工具は、少なくとも接合対象と接する個所が本発明の焼結体で構成されていればよい。もちろん、軸部を含む工具全体が本発明の焼結体で構成されてもよい。
本発明の回転工具の一例を図1に示す。この回転工具1は、図1に示すように、軸部10の先端から突出したプローブ12を備える。軸部10は、図示しない回転駆動機構に支持される棒状部である。回転機構を駆動することで、工具1を回転させながら所定の水平方向に移動させることができる。一方、プローブ12は、摩擦撹拌接合を行う際に、接合対象の接合界面に圧接される個所で、接合対象との摩擦熱により接合対象を塑性流動させて接合する。この工具は、少なくとも接合対象と接する個所が本発明の焼結体で構成されていればよい。もちろん、軸部を含む工具全体が本発明の焼結体で構成されてもよい。
この工具で摩擦撹拌接合を行う場合、図2(A)に示すように、まず、一対の接合対象20を並列状態に隣接して突き合わせる。ここでは、各接合対象20を板状体としている。接合対象20を突き合わせたら、回転工具1を回転させながら接合箇所に圧接し、接合対象20の突き合わせ界面に沿って回転工具1を移動させる。この回転工具1の回転と移動に伴って、突き合わせ箇所近傍の接合対象20が塑性流動され、両接合対象20が溶接される。
本発明の焼結体及び回転工具を作製して、その特性評価を行った。
(1)原料
原料として、以下の粉末を用意した。これらの原料粉末は、いずれもピクノメーター法により比重を測定しておく。
WC粉末:平均粒径が0.02μmで、純度が99.99%のWC
副硬質成分粉末:平均粒径が0.04μmのTiC、TaC、NbC、CrC、VC又はZrCの粉末
PSZ粉末:平均粒径が0.08μmで2.8mol%のY2O3、又はCeO2で部分安定化したZrO2
原料として、以下の粉末を用意した。これらの原料粉末は、いずれもピクノメーター法により比重を測定しておく。
WC粉末:平均粒径が0.02μmで、純度が99.99%のWC
副硬質成分粉末:平均粒径が0.04μmのTiC、TaC、NbC、CrC、VC又はZrCの粉末
PSZ粉末:平均粒径が0.08μmで2.8mol%のY2O3、又はCeO2で部分安定化したZrO2
(2)混合・成形・焼結
これらの原料粉末を所定の配合に組み合わせ、メタノール溶媒中で焼結体の純度が99%のZrO2ボールを入れたポリアミド製ポット中にて28時間分散混合を行った。
得られたスラリーを取り出してアルコール系のバインダーを添加し、クローズドスプレードライヤーにて窒素雰囲気中で造粒乾燥を行った。得られた調製造粒粉から4×5×45mmの曲げ試験片と、Φ15×2.5mmの熱伝導率測定用試料とを金型プレスで作製し、それらを真空雰囲気中450℃の温度で0.5時間保持して脱脂を行った。その後、脱脂した成形品を、放電プラズマ焼結装置を用い、圧力が50MPa、Arガス中、昇温速度、焼結温度、保持時間を変えて焼結させた。そのうち、焼結温度は1700〜1800℃の間で変えている。
これらの原料粉末を所定の配合に組み合わせ、メタノール溶媒中で焼結体の純度が99%のZrO2ボールを入れたポリアミド製ポット中にて28時間分散混合を行った。
得られたスラリーを取り出してアルコール系のバインダーを添加し、クローズドスプレードライヤーにて窒素雰囲気中で造粒乾燥を行った。得られた調製造粒粉から4×5×45mmの曲げ試験片と、Φ15×2.5mmの熱伝導率測定用試料とを金型プレスで作製し、それらを真空雰囲気中450℃の温度で0.5時間保持して脱脂を行った。その後、脱脂した成形品を、放電プラズマ焼結装置を用い、圧力が50MPa、Arガス中、昇温速度、焼結温度、保持時間を変えて焼結させた。そのうち、焼結温度は1700〜1800℃の間で変えている。
(3)物性評価
得られた試料について、組成の分析を行い、さらにWC平均粒径、硬度、ヤング率、相対密度、破壊靭性、曲げ強度、電気抵抗率、熱伝導率の測定を行った。組成の分析は、試料をSEM-EDXで分析することで行った。「WC平均粒径」は、試料の断面をSEM観察して、50個の主硬質成分(WC又は固溶型WC)を抽出し、その断面における面積の円相当径を各主硬質成分の粒径とし、50個の粒子の平均とした。「硬度」はロックウェル硬度計を用い、Aスケールにて測定した。「ヤング率」は探触子が5MHzの高温動弾性率測定装置を用い、超音波パルス法により縦波の音速と横波の音速を測定して求めた。「相対密度」は、原料粉末の設計組成から理論密度を算出し、アルキメデス法により測定した焼結体の密度を利用して求めた。なお、理論密度は、焼結体の成分を分析することで、推定することができる。「破壊靭性」は、硬度測定時の圧子の圧痕からインデンテーション法を用いて測定した。「曲げ強度」は、四点曲げ試験(JIS R 1601 ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法)にて測定した。「電気抵抗率」は接触抵抗計により測定した。「熱伝導率」は、レーザーフラッシュ法にて測定した。
得られた試料について、組成の分析を行い、さらにWC平均粒径、硬度、ヤング率、相対密度、破壊靭性、曲げ強度、電気抵抗率、熱伝導率の測定を行った。組成の分析は、試料をSEM-EDXで分析することで行った。「WC平均粒径」は、試料の断面をSEM観察して、50個の主硬質成分(WC又は固溶型WC)を抽出し、その断面における面積の円相当径を各主硬質成分の粒径とし、50個の粒子の平均とした。「硬度」はロックウェル硬度計を用い、Aスケールにて測定した。「ヤング率」は探触子が5MHzの高温動弾性率測定装置を用い、超音波パルス法により縦波の音速と横波の音速を測定して求めた。「相対密度」は、原料粉末の設計組成から理論密度を算出し、アルキメデス法により測定した焼結体の密度を利用して求めた。なお、理論密度は、焼結体の成分を分析することで、推定することができる。「破壊靭性」は、硬度測定時の圧子の圧痕からインデンテーション法を用いて測定した。「曲げ強度」は、四点曲げ試験(JIS R 1601 ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法)にて測定した。「電気抵抗率」は接触抵抗計により測定した。「熱伝導率」は、レーザーフラッシュ法にて測定した。
(4)摩擦撹拌接合時の工具性能評価
得られた試料を加工し、図1に示すような形状の回転工具1を製作した。200×500×厚さ1.5mmの軟鉄板(接合対象20)を2枚隣接して並べた後、その界面に沿って前記回転工具を用いて500mm長さに沿って摩擦撹拌接合した(図2)。回転工具の回転速度は3000rpm、回転工具の移動速度は25mm/minとした。
得られた試料を加工し、図1に示すような形状の回転工具1を製作した。200×500×厚さ1.5mmの軟鉄板(接合対象20)を2枚隣接して並べた後、その界面に沿って前記回転工具を用いて500mm長さに沿って摩擦撹拌接合した(図2)。回転工具の回転速度は3000rpm、回転工具の移動速度は25mm/minとした。
この工程を3回繰り返し、加工後の工具のプローブを観察し、チッピングの有無を確認した。チッピング無し、又はチッピングサイズが50μm以下の場合を◎、50〜100μmの場合を△、100μmを超える場合を×とした。
次に、接合対象の撹拌部の断面を観察し、巣の発生の有無を確認して接合性を評価した。巣が無い、または巣の直径が1μm未満を◎、1〜10μmを△、10μmを超える場合を×とした。
得られた焼結体の組成、WC平均粒径などの条件を表1に、評価結果を表2に示す。表1において、「WCへの固溶種」は、括弧外が固溶金属種を、括弧内が固溶金属の供給源となった原料粉末種を示している。また、「WC(vol比)」は、第一相が主硬質成分のみからなる場合は、焼結体における主硬質成分の含有比を、第一相が主硬質成分と副硬質成分とからなる場合は、焼結体における主硬質成分と副硬質成分の合計量の含有比を示す。さらに、「併存量(vol%)」は、主硬質成分と副硬質成分の合計に対する副硬質成分の体積比を示す。
表1、表2において、試料No.4〜7、10〜12、14、17〜20が実施例である。これらの表から明らかなように、基本的には、破壊靭性が高く、熱伝導率が低いほど回転工具としての性能が優れることがわかる。
まず、試料No.1〜9の結果を比較して見ると、第一相の含有量が50vol%以上60vol%未満、特に55vol%以下程度であれば、(A)主硬質成分の平均粒径を0.1μm未満とする、(B)主硬質成分を固溶型WCとする、の少なくとも一方を満たせばよいと考えられる。その際、条件(A)、(B)の双方を満たす方が好ましいと考えられる。
次に、試料No.8〜20の結果を比較して見ると、第一相の含有量が60vol%以上の場合には、主硬質成分の平均粒径が2.4μm以下であれば、原則として、(B)主硬質成分を固溶型WCとする、(C)併存型焼結体とする、の双方を満たせばよいと考えられる。但し、試料No.13に示すように、ZrO2の含有量が30vol%未満と低く、かつ副硬質成分の併存量も30vol%未満と低い場合は、条件(B)、(C)を満たしても好結果が得られない。また、試料No.20に示すように、熱伝導率が小さな固溶型WCを主硬質成分に用いる場合は、その平均粒径が0.1μm以下であれば、条件(B)のみを満たせばよいと考えられる。
なお、上記実施例は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、本発明の範囲は上記の実施例に限定されるものではない。
本発明の回転工具は、摩擦撹拌接合のプローブとして好適に利用できる。また、本発明の焼結体は前記プローブの他、各種耐摩耗部材、摺動部材であって、熱伝導性の低い方が好ましい分野に好適に利用できる。
1 回転工具
10 軸部
12 プローブ
20 接合対象
10 軸部
12 プローブ
20 接合対象
Claims (12)
- 摩擦撹拌接合のプローブに用いられる回転工具であって、
50〜80vol%の第一相を含み、残部が第二相及び不可避的不純物で構成される焼結体からなり、
前記第一相は、WCからなり、
前記第二相は、Y2O3、CeO2、及びMgOから選択される少なくとも一種を安定化剤とする部分安定化ジルコニアであり、
熱伝導率が10W/mK未満であることを特徴とする回転工具。 - 前記第一相は、さらにTi、Nb、Ta、Cr、Zr及びVから選ばれた少なくとも一種が前記WCに固溶されていることを特徴とする請求項1に記載の回転工具。
- 前記第一相は、さらにTi、Nb、Ta、Cr、Zr及びVのいずれかの元素の炭化物、窒化物、炭窒化物及びそれらの固溶体から選ばれた少なくとも一種が前記WCと併存していることを特徴とする請求項2に記載の回転工具。
- 前記WCの平均粒径が0.05μm以上、2.4μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転工具。
- 前記焼結体のヤング率が300GPa以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転工具。
- 前記焼結体の四点曲げ強度が2100MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転工具。
- 前記焼結体の破壊靭性が7.8MPa・m0.5以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転工具。
- 前記焼結体のHRA硬度が93以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転工具。
- 前記焼結体の電気抵抗率が10-3Ωcm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転工具。
- 第一相と、残部が第二相及び不可避的不純物で構成される焼結体であって、
前記第一相は、WCからなって、焼結体中に50〜80vol%含有され、
前記第二相は、Y2O3、CeO2、及びMgOから選択される少なくとも一種を安定化剤とする部分安定化ジルコニアであり、
熱伝導率が10W/mK未満であることを特徴とする焼結体。 - 前記第一相は、さらにTi、Nb、Ta、Cr、Zr及びVのいずれかの元素の炭化物、窒化物、及び炭窒化物から選ばれた少なくとも一種が前記WCに固溶されていることを特徴とする請求項10に記載の焼結体。
- 前記第一相は、さらにTi、Nb、Ta、Cr、Zr及びVのいずれかの元素の炭化物、窒化物、炭窒化物及びそれらの固溶体から選ばれた少なくとも一種が前記WCと併存していることを特徴とする請求項11に記載の焼結体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009217396A JP2011062743A (ja) | 2009-09-18 | 2009-09-18 | 回転工具及び焼結体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009217396A JP2011062743A (ja) | 2009-09-18 | 2009-09-18 | 回転工具及び焼結体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011062743A true JP2011062743A (ja) | 2011-03-31 |
Family
ID=43949561
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009217396A Pending JP2011062743A (ja) | 2009-09-18 | 2009-09-18 | 回転工具及び焼結体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2011062743A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014527124A (ja) * | 2011-08-03 | 2014-10-09 | コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー | 摩擦攪拌接合ツール用タングステンカーバイド焼結体の製造方法 |
JP2016064419A (ja) * | 2014-09-24 | 2016-04-28 | 日本特殊陶業株式会社 | 摩擦攪拌接合用工具、および、摩擦攪拌接合用工具の製造方法 |
JP2016132004A (ja) * | 2015-01-20 | 2016-07-25 | 日本特殊陶業株式会社 | 摩擦攪拌接合用工具 |
JP2017076024A (ja) * | 2015-10-14 | 2017-04-20 | 日本特殊陶業株式会社 | ペリクル枠およびペリクル枠の製造方法 |
CN107827463A (zh) * | 2017-11-15 | 2018-03-23 | 上海电力学院 | 一种高性能wc纳米硬质合金及其制备方法 |
-
2009
- 2009-09-18 JP JP2009217396A patent/JP2011062743A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014527124A (ja) * | 2011-08-03 | 2014-10-09 | コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー | 摩擦攪拌接合ツール用タングステンカーバイド焼結体の製造方法 |
JP2016064419A (ja) * | 2014-09-24 | 2016-04-28 | 日本特殊陶業株式会社 | 摩擦攪拌接合用工具、および、摩擦攪拌接合用工具の製造方法 |
JP2016132004A (ja) * | 2015-01-20 | 2016-07-25 | 日本特殊陶業株式会社 | 摩擦攪拌接合用工具 |
JP2017076024A (ja) * | 2015-10-14 | 2017-04-20 | 日本特殊陶業株式会社 | ペリクル枠およびペリクル枠の製造方法 |
CN107827463A (zh) * | 2017-11-15 | 2018-03-23 | 上海电力学院 | 一种高性能wc纳米硬质合金及其制备方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6193207B2 (ja) | セラミック部材および切削工具 | |
JP5519875B1 (ja) | セラミックス焼結体及び接合体 | |
JP5822997B2 (ja) | 切削工具 | |
JP7376050B2 (ja) | 摩擦攪拌接合方法 | |
WO2011129422A1 (ja) | 被覆cBN焼結体 | |
WO2006104004A1 (ja) | 超硬合金および切削工具 | |
JP2011116597A (ja) | 焼結体および回転工具 | |
JP2011062743A (ja) | 回転工具及び焼結体 | |
JP2008274439A (ja) | W−Ti−C系複合体及びその製造方法 | |
WO2007037431A1 (ja) | 焼結体とその製造方法とその焼結体を用いた摺動部材、成膜用材料並びに熱間押出成形用ダイスとその熱間押出成形用ダイスを用いた熱間押出成形装置及び熱間押出成形方法 | |
JP2011098842A (ja) | 焼結体とその製造方法、ならびに回転工具 | |
WO2010104094A1 (ja) | サーメットおよび被覆サーメット | |
JP6048522B2 (ja) | 焼結体および切削工具 | |
JP2018070987A (ja) | 硬質材料および摩擦撹拌接合用ツール | |
KR20170122103A (ko) | 소결체 및 절삭 공구 | |
JP2008254159A (ja) | 表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具 | |
KR101807629B1 (ko) | 서멧 공구 | |
JP2011062742A (ja) | 回転工具 | |
JP2008105091A (ja) | 熱間押出成形用ダイス | |
JP5969363B2 (ja) | Wc基超硬合金及び切削工具 | |
JP2009007615A (ja) | 超硬合金およびそれを用いた切削工具 | |
Kim et al. | Mechanical properties of binderless tungsten carbide by spark plasma sintering | |
JPH10310840A (ja) | 超硬質複合部材とその製造方法 | |
JP2020033597A (ja) | TiN基焼結体及びTiN基焼結体製切削工具 | |
JP2009209022A (ja) | WC−SiC−Mo2C系焼結体及びその製造方法 |