JP2011061148A - 有機el素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】上部電極をスパッタ形成する際のダメージ緩和性能、および電子注入性能の優れた電子注入層を実現できる有機EL素子を提供する。
【解決手段】支持基板上に形成された陽極と、該陽極上に少なくとも、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極がこの順に設けられ、陰極を構成する主材料が導電性酸化物を有する有機EL素子であって、前記電子注入層が(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、フラットパネルディスプレイや照明用光源に応用可能な有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子という。)に関する。特に、高発光効率で、低消費電力な透明有機EL素子、トップエミッション型有機EL素子の提供、およびこれらを用いたアクティブマトリクス(AM)駆動有機ELディスプレイ、または有機EL照明を提供することを目的とする。
有機EL素子は低電圧で高い電流密度が実現できる優れた特徴を有するため、高い発光輝度および発光効率を実現することができ、近年、有機ELディスプレイのようなフラットパネルディスプレイへの応用が既に実用化され、また、カラー液晶表示器のバックライトその他照明用光源としても期待されている。
有機EL素子の発光は、発光層材料の最高占有分子軌道(HOMO、一般にイオン化ポテンシャルとして計測される。)へ注入された正孔と、最低非占有分子軌道(LUMO、一般に電子親和力として測定される。)へ注入された電子が再結合することによって生成された励起子の励起エネルギーが緩和するときに光を放出することによって得られるが、一般的に、発光層への正孔注入と電子注入を効率的に行うために、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層のいずれかまたは全てを用いた積層構造がとられている。
前記有機EL素子には、有機EL層を挟持する陽極および陰極が設けられており、光を取り出す側の電極は、発光層からのEL光に対し高透過率であることが求められている。このような電極材料として、通常、透明導電性酸化物(TCO)材料(例えば、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、インジウム−タングステン酸化物(IWO)等。)が用いられているが、これらの材料は、仕事関数が約5eVと比較的大きいので有機材料への正孔注入電極(陽極)として用いられる。
従来、透明な支持基板上に、下部電極としてITOからなる陽極を形成し、その上に有機機能層として正孔注入/輸送層、発光層、電子注入/輸送層を順次形成し、その上に上部電極としてAl等の金属膜からなる陰極を形成し、支持基板側から光と取り出すタイプ(ボトムエミッション型)の有機EL素子が一般的であった。
しかし、近年、フラットパネルディスプレイとしての応用においては、高輝度、低消費電力が見込めることから、画素毎にアモルファスシリコンやポリシリコンからなる薄膜トランジスタ(TFT)によるスイッチング素子を設けて、その上に有機EL素子を形成するAM駆動有機ELディスプレイが主流となってきている。この場合、スイッチング素子が不透明であることによる画素の開口率(発光面積)低下を防ぐ手段として、上部電極を透明にして光を成膜面側から取り出すタイプ(トップエミッション型)の有機EL素子を適用する方法が利用されている。
透明電極を上部電極とする場合、下部反射電極を陽極として、正孔注入/輸送層、発光層、電子注入/輸送層を順次形成して上部透明電極を陰極と成す場合(非特許文献1を参照。)、並びに従来と有機機能層の積層順を逆にして、下部反射電極を陰極として、その上に電子注入/輸送層、発光層、正孔注入/輸送層を順次形成し、上部透明電極を陽極とする場合(非特許文献2を参照。)があるが、特に、ポリシリコン−TFTをスイッチング素子として用いる場合は、スイッチング回路構成の点から下部電極を陽極とすることが一般的であり、上部透明電極を陰極とするニーズが多い。
上部透明電極(陰極)にはMg−Ag合金等の金属薄膜が用いられることがあるが、金属薄膜は、可視光を少なからず吸収するので発光強度が低下するため、あるいは高反射となるので強い微小共振器(マイクロキャビティ)効果を伴い、下部反射電極と上部金属薄膜間の距離を決める有機層の膜厚分布を非常に精巧に制御する必要が生じるため、従来陽極に用いてきた透明導電性酸化物を上部透明陰極に用いることが望まれている。
ところが、有機物からなる発光層材料あるいは電子注入輸送材料は、その上にスパッタリグ法等によって透明導電性酸化物の薄膜を形成する際に、容易に酸化されて、その機能が劣化し、発光効率を著しく損なうという問題を抱えている。前記有機層の酸化劣化問題を解決する手段として、透明酸化物電極と電子輸送層の間に、ダメージ緩和用電子注入層を設ける方法が従来用いられてきた。従来、ダメージ緩和用電子注入層として、陰極材料に用いられてきたMg−Ag合金を薄く形成した層(非特許文献1を参照。)、銅フタロシアニン(CuPc)薄膜、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)薄膜等(非特許文献3および特許文献1を参照。)が提案されている。
特許文献1によれば、ITO層と組合せて効率的な電子注入を生ずるように用いることができる半導体有機材料は、次の性質を持つことが好ましいとしている。
(1)ITO層の堆積中のスパッタリングによる僅かな限定された損傷だけを与えるのに充分な化学的および構造体安定性がある、フタロシアニン、ナフタロシアニン及びペリレンのような大きな平面状分子が代表的な例である。更に、広がった共役二重結合(例えば、付加的に融合したベンゾ−、ナフタ−、アントラ−、フェナントレン−、ポリアセン等の基。)を有するこれらの化合物の誘導体も用いることができる。重合体材料が存在していてもよい。
(2)電子輸送層としての機能を果たすのに充分な電子移動度すなわち少なくとも10-6cm2/V秒の値を有するキャリヤー移動度を有する電子輸送材料は、一般に該材料が電子輸送層としての機能を果たすのに充分であると考えられているが、実質的に一層高い値が一般に好ましい。この場合も、フタロシアニンおよびペリレンのような大きな平面状分子が代表的な例である。
(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物は、新規な発光材料として提案され(例えば非特許文献4および5を参照。)、その後、比較的大きな電界効果正孔移動度(〜10-2cm2/V秒)を持つ有機半導体として利用され、近年有機トランジスタ、または有機発光トランジスタへ用いることが提案されている(非特許文献6および7を参照。)が、前述のCuPc等と同様に、酸化物導電体陰極をスパッタ形成する際のダメージ緩和用電子注入層として適用することが可能である。
特表2001−520450号公報
Nature、 Vol. 380(1996年3月7日)29頁 Applied Physics Letters、Vol.70 Iss.22(1997年6月2日)2954頁 Applied Physics Letters、Vol.72 Iss.17(1998年4月27日)2138頁 Synthetic Metals, vol.101 Iss.1-3(1999年5月)551頁 Synthetic Metals, vol.106 Iss.1(1999年9月30日)39頁 Applied Physics Letters、Vol.86 Iss.9(2005年2月24日)093505 Applied Physics Letters、Vol.90 Iss.16(2007年4月18日)162108
金属薄膜をダメージ緩和用電子注入層に用いる方法においては、十分なダメージ緩和効果を得るためには、金属膜の膜厚を厚くする必要があるが、膜厚を厚くしていくと発光層からの光を吸収してしまい発光効率が低下するという課題が浮上してくる。さらに微小共振器効果が強くなるため、発光色、発光強度の視野角依存が有機層膜厚に敏感に変化するようになるので、有機層膜厚の表示面内の制御をより正確に行なう必要が生じる。一方、CuPcをダメージ緩和用電子注入層に用いる方法は、ダメージ緩和用電子注入層における光吸収の問題は軽減されるものの、非特許文献3によれば、電子輸送層への電子注入性はMg−Ag合金をダメージ緩和用電子注入層に用いた場合よりも劣っている。従って、光透過性能、上部電極スパッタ形成時のダメージ緩和性能、酸化物導電体陰極からの電子注入性能の全てに良好なダメージ緩和用電子注入層の実現が望まれている。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、光透過性、スパッタリング法による電極形成時のダメージ緩和性、酸化物導電体陰極からの電子注入性の全てに優れたダメージ緩和用電子注入層を提供し、結果として低駆動電圧で高効率なトップエミッション型有機EL素子、あるいは透明有機EL素子を提供することである。
本発明は、従来有機トランジスタや、有機発光トランジスタの活性層に利用されてきた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を電子注入層に適用することにより、光透過性、有機機能層への劣化および駆動電圧を犠牲にすることなく、透明酸化物陰極を形成することができることを見出したことに基づく。
すなわち、本発明では、有機EL素子において、支持基板上に形成された陽極と、該陽極上に少なくとも、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極がこの順に設けられ、陰極を構成する主材料が透明導電性酸化物からなる有機EL素子であって、前記電子注入層が(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含むことを特徴とする。更に、本発明では、有機EL素子の製造方法であって、支持基板上に少なくとも、陽極、発光層をこの順に形成する第1の工程と、前記発光層の上に少なくとも、電子輸送層、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層をこの順に形成する第2の工程と、前記電子注入層の上に、導電性酸化物からなる陰極を形成する第3の工程を備える有機EL素子の製造方法において、前記第2の工程で、前記(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層を真空蒸着法で形成し、続いて不活性環境においたまま、該電子注入層上にスパッタリング法によって前記導電性酸化物からなる陰極を形成することを特徴とする。
(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層とすることによって、上部陰極として透明導電性酸化物をスパッタ法により形成しても、発光層または電子輸送層の酸化劣化を防止することができる。また、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層が、透明導電性酸化物からなる上部陰極から電子を効率的に引抜くことができ、低電圧、高効率なトップエミッション型有機EL素子、あるいは透明型有機EL素子を実現することが可能となる。
本発明を実施して作製した有機EL素子の層構成を示す断面模式図である。 本発明の有機EL素子を形成する製造プロセスを示す図である。 本発明の実施例1の有機EL素子の層構成を示す断面模式図である。 本発明の実施例3の有機EL素子の層構成を示す断面模式図である。 電極形成する際のパターニング用ストライプ状マスクの模式図である。
以下において、図面を参照しながら本発明を説明する。
図1は本発明を実施して作製した有機EL素子の層構成の断面模式図である。図示されているものは、基板101上に陽極102、正孔注入層(HIL)103、正孔輸送層(HTL)104、発光層(EML)105、電子輸送層(ETL)106、電子注入層(EIL)107、陰極108を順次積層して得られる層構造を有するものであり、層構成としては従来技術と同様となる。ただし、本発明の有機EL素子は、トップエミッション型あるいは透明型有機EL素子であるため、陰極は光透過性であり、透明導電性酸化物からなる。トップエミッション型の場合、発光層から放射される光は、陰極を通して視認されるが、透明型有機EL素子の場合、陽極も光透過性となり、発光層から放射される光は、陽極側と陰極側の双方から視認される。
図1において、正孔注入層は、陽極から正孔輸送層への正孔注入を促進するために設けている。また、発光層に隣接する電子輸送層には、2つの機能すなわち(1)発光層へ電子を効率的に注入する機能、(2)発光層から陰極方向へ抜け出て行く正孔を阻止する機能、が求められており、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層と共に積層することによって、これらの機能を同時に満足することができる。従って、正孔注入層および電子輸送層を導入することによって、発光層内の電子と正孔のバランスを調整し、高効率な発光を得やすくできる利点がある。
以下、各層について詳細に順次説明する。先ず始めに電子注入層について、詳しく説明する。
[電子注入層]
本発明において、電子注入層に用いられる(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物は、一般に有機トランジスタ、有機発光トランジスタ等に応用されている材料を用いることができる。真空加熱蒸着、レーザー蒸発成膜(パルスレーザー堆積法、レーザアブレーション法とも言われる。)等の気相成長法で薄膜形成でき、形成された薄膜が多結晶質などの結晶性を持つことが好ましい。また、隣接する電子輸送層、または発光層への電子注入性に優れたものであることが好ましい。
そのような材料として、一般式(I)で示される構造を有するものが好ましい。
ここで、X1およびX2はそれぞれ、水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。例えば、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基のいずれかから選ばれる基であることが好ましい。これらのうち特に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、3−メチルペンチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、1,2−ジニトロエチル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3,5−テトラメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3,5−テトラメチルシクロヘキシル基である。
前記炭素数1〜20のハロアルキル基の例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。好ましくは、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基である。
前記炭素数1〜20のアルコキシ基の例としては、−OYと表される基が挙げられる。ここで、Yの具体例としては、上記のアルキル基で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
前記一般式(I)のnおよびmは、1〜5の整数を表す。好ましくは、nは1〜3であ
り、本発明のチオフェン−フェニレンコオリゴマー化合物は、チオフェン、ビチオフェン、ターチオフェンのうち、いずれかの構造と、フェニル、ビフェニルおよびターフェニルのうち、いずれかの構造を有することが好ましい。
また、一般式(II)で表される構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー
化合物も好ましく用いられる。
ここで、X1およびX2はそれぞれ、水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。例えば、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基のいずれかから選ばれる基であることが好ましい。これらのうち特に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基の具体例は上述したX1およびX2で例示したものと同様である。
nおよびmは1〜5の整数を表す。好ましくは、nは1〜3であり、本発明の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物は、チオフェン、ビチオフェン、ターチオフェンのうち、いずれかの構造と、フェニル、ビフェニルおよびターフェニルのうち、いずれかの構造を有することが好ましい。
また、一般式(III)で表される構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー
化合物も好ましく用いられる。
ここで、X1およびX2はそれぞれ、水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。例えば、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基のいずれから選ばれる基であることが好ましい。これらのうち特に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基の具体例は上述したX1およびX2で例示したものと同様である。nは1〜5の整数を表す。好ましくは、nは1〜3である。
また、一般式(IV)で表される構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー
化合物も好ましく用いられる。
ここで、X1およびX2はそれぞれ、水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。例えば、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基のいずれから選ばれる基であることが好ましい。これらのうち特に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基の具体例は上述したX1およびX2で例示したものと同様である。nは1〜5の整数を表す。好ましくは、nは1〜3である。
以下に、本発明の電子注入層に用いられる(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物の具体例を示す。
また、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層に、電子供与性を持つn型ドーパントとなる不純物を添加することが好ましい。該n型ドーパントを添加することによって、仕事関数の大きい透明導電性酸化物を陰極材料に用いても、良好な電子注入性を得ることができる。さらに、電子注入層の電気伝導度が向上し、厚膜化しても素子の駆動電圧上昇を防ぐことができる。これより、膜厚選択性の幅が広がり光学設計の自由度が広がる、あるいは陰極―陽極間短絡不良の防止を図ることができるといった効果を奏することができる。
n型ドーパントとしては、Li、Na、K、Rb、Csの中から選ばれる一つ以上のアルカリ金属、あるいはBe、Mg、Ca、Sr、Baの中から選ばれる一つ以上のアルカリ土類金属元素を用いることができる。
また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の、酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはキレート化合物も、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物と共蒸着することによって、アルカリまたはアルカリ土類金属単体を不純物としてドープした時と同様の効果を得ることができる。
具体的に、酸化物としては、例えば、Li2O、LiO、Na2O、K2O、Cs2O等のアルカリ金属酸化物、CaO、BaO、SrO、BeO等のアルカリ土類金属酸化物、が挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2、BaF2、SrF2、MgF2及びBeF2のフッ化物が挙げられる。また、好ましい炭酸塩としては、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3などのアルカリ炭酸塩が挙げられる。
電子注入層に用いる(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物の薄膜形成は、真空蒸着法、またはマイクロ波レーザーを用いた、パルスレーザー堆積(レーザーアブレーション)法が好適に用いられる。下層にある有機層(電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層など)が溶解するなどの悪影響が排除可能な場合、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物の分散液や溶液を作製し、スピンコート、インクジェット、各種印刷手法などの湿式成膜法を用いて成膜しても良い。
電子注入層へのn型ドープについては、蒸着等の真空堆積手法を用いて電子注入層を形成する場合は、n型ドーパント材料を(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物と同時に真空加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いて蒸着する共蒸着によって行なうことができる。電子注入層を湿式成膜法で形成する場合は、予め(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物の溶液または分散液にドーパントを所定濃度添加した材料液を用意し、それを用いて塗布形成することが出来る。
本発明における電子注入層は、その形成後、陰極となる透明導電性酸化物層のスパッタリング等による成膜時に有機層へ生じる、プラズマダメージ、成膜粒子衝撃、酸化といったダメージを緩和する機能を担っており、その膜厚は有機EL素子の性能を左右する重要なパラメータである。ダメージ緩和機能という点では、より厚く形成することによって、電子注入層より下部に形成されている有機層へのダメージ緩和能力が上がる。
一方、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物は、一般に可視光波長域に少なからず吸収帯を持っていることがしばしばあるため、膜厚を厚くすることによって、発光層からの発光を吸収してしまい、発光効率がかえって低下することもある。
このような観点から、電子注入層は5nm〜100nmの膜厚とすることが好ましく、より好ましい膜厚は、5nm〜50nmである。
上述のようにして形成された(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層は、緻密な多結晶構造をとるため、電荷移動度が大きくなるばかりでなく、透明酸化物陰極を形成する際に電子輸送層、発光層等の有機層をプラズマダメージ、成膜粒子衝撃から守り、酸化劣化を効果的に防止することが可能となる。
以下、他の各層に関して詳細を順次説明する。
[基板]
本発明に用いることのできる基板は、一般的にフラットパネルディスプレイで用いられているアルカリガラス基板、ノンアルカリガラス基板のほか、シリコン基板、ポリカーボネートなどのプラスチック基板、プラスチックフィルム、ステンレス箔上に絶縁膜を形成したものなどを用いることができる。トップエミッション型有機EL素子を作製する場合は、特に基板は透明である必要はないが、透明型有機EL素子を作製する場合は、用途に応じて光透過性の基板を用いる必要がある。
プラスチック材料などのガス透過性、特に水蒸気、酸素を透過する基板の場合には、その基板に別途ガスバリア機能を持った膜を形成することが必要となる。
[陽極]
本発明に用いられる陽極は、光透過性でも光反射性でもよいが、光透過性とする場合は、一般的に知られている、ITO(インジウム−スズ酸化物)、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)、IWO(インジウム−タングステン酸化物)、AZO(Alドープ亜鉛酸化物)、GZO(Gaドープ亜鉛酸化物)等の透明導電性酸化物材料を用いて形成することができる。また、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)などの高導電性高分子材料を用いることもできる。
トップエミッション型有機EL素子を作製する場合、陽極は光反射性の金属材料単体、あるいは前述の透明導電膜と光反射性金属材料の積層構造体とすることも出来る。また、基板上に金属膜による光反射層を形成し、その上に絶縁層を介して透明導電膜を形成し、光反射層と陽極を電気的に接続させない構成としてもよい。
光反射性の陽極または光反射層を形成する金属材料としては、高反射率の金属、アモルファス合金または微結晶性合金や、それらの積層体を用いることができる。高反射率の金属は、Al、Ag、Ta、Zn、Mo、W、Ni、Crなどを含む。高反射率のアモルファス合金は、NiP、NiB、CrPおよびCrBなどを含む。高反射率の微結晶性合金は、NiAl、銀合金などを含む。
透明導電性酸化物、高反射率の金属、アモルファス合金または微結晶性合金は、蒸着法、スパッタ法などの当該技術において知られている任意の方法で膜形成することができる。PEDOT:PSS等の導電性高分子材料は、スピンコート法、インクジェット法、印刷など当該技術で知られている任意の方法で膜形成することができる。
[正孔注入層]
本発明における有機EL素子の正孔注入層に用いることのできる材料としては、トリアリールアミン部分構造、カルバゾール部分構造、オキサジアゾール部分構造を有する材料など、一般に有機EL素子または有機TFT素子で用いられている正孔輸送材料を、そのような材料の例として挙げることができる。
具体的には、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−ベンジジン(MeO−TPD)、4,4’,4”−トリス{1−ナフチル(フェニル)アミノ}トリフェニルアミン(1−TNATA)、4,4’,4”−トリス{2−ナフチル(フェニル)アミノ}トリフェニルアミン(2−TNATA)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’−ビス{N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ}ビフェニル(NPB)、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(Spiro−TAD)、N,N’−ジ(ビフェニル−4−イル)−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(p−BPD)、トリ(o−ターフェニル−4−イル)アミン(o−TTA)、トリ(p−ターフェニル−4−イル)アミン(p−TTA)、1,3,5−トリス[4−(3−メチルフェニルフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(m−MTDAPB)、4,4’,4”−トリス−9−カルバゾリルトリフェニルアミン(TCTA)等を用いることができる。
また、これらの一般的な材料の他に、各有機電子材料メーカーが市販している正孔輸送性材料なども使用することが出来る。
また、正孔注入層に電子受容性ドーパントを添加(pタイプドーピング)してもよい。電子受容性ドーパントとしては、例えば、テトラシアノキノジメタン誘導体などの有機半導体、具体的には、2,3,5,6−テトラフロロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)等を用いることができる。また、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化バナジウム(V25)などの無機半導体も用いることができる。

[正孔輸送層]
本発明における有機EL素子の正孔輸送層に用いることのできる材料としては、前記正孔注入層で例示したような、有機EL素子または有機TFTの正孔輸送材料に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができるが、一般的には、発光層への正孔注入性を促進するという観点から、陽極の仕事関数(Wa)、正孔注入層のイオン化ポテンシャル(Ip(HIL))、正孔輸送層のイオン化ポテンシャル(Ip(HTL))、発光層のイオン化ポテンシャル(Ip(EML))が、次の関係を満たすことが好ましい。Wa≦Ip(HIL)<Ip(HTL)<Ip(EML)
[発光層]
発光層の材料は、所望する色調に応じて選択することが可能であり、例えば青色から青緑色の発光を得るためには、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリデイン系化合物などを使用することが可能である。具体的には、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)、4,4’−ビス(2、2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、2−メチル−9,10、ジ(2−ナフチル)アントラセン(MADN)、9,10−ビス−(9,9−ビス(n−プロピル)フルオレン−2−イル)アントラセン(ADF)、9−(2−ナフチル)−10−(9,9−ビス(n−プロピル)−フルオレン−2−イル)アントラセン(ANF)などが挙げられる。
発光層には、蛍光色素をドープしてもよく、ドーパントとして用いる色素材料は、所望の色調に応じて選ぶことができる。具体的には、従来から知られている、ペリレン、ルブレンなどの縮合環誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン660、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、4−(ジシアノメチレン)−6−メチル−2−[2−(ジュロリディン9−イル)エチル]−4H−ピラン(DCM2)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルユロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJT)、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルユロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJTB)などのジシアノメチレン誘導体、ペリノン、クマリン誘導体、パイロメタン誘導体、シアニン色素などが使用できる。
また、本発明において、発光色の色調を整えるために、同一発光層材料内に複数の発光ドーパントを添加することもできる。
[電子輸送層]
本発明において、発光層と電子注入層の間に設ける電子輸送層は素子の性能を引き出す上で重要となる。電子輸送層は一般的に知られている有機電子材料の中から、電子輸送性に優れたもので構成されていることが好ましい。また、その電子親和力は、発光層材料の電子親和力と電子注入材料の電子親和力の間の値を取ることが好ましい。さらに、電子輸送層のイオン化ポテンシャルは、発光層のイオン化ポテンシャルよりも大きいことが好ましい。
そのような電子輸送性材料として、具体的には、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール]フェニレン(OXD−7)、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、1,3,5−トリス(4−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)ベンゼン(TPOB)のようなオキサジアゾール誘導体、5,5’−ビス(ジメシチルボリル)−2,2’−ビチオフェン(BMB−2T)、5,5’−ビス(ジメシチルボリル)−2,2’:5’,2”−ターチオフェン(BMB−3T)のようなチオフェン誘導体、アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq3)のようなアルミニウム錯体、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BPhen)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)のようなフェナントロリン誘導体、2,5−ジ−(3−ビフェニル)−1,1,−ジメチル−3,4−ジフェニルシラシクロペンタジエン(PPSPP)、1,2−ビス(1−メチル−2,3,4,5−テトラフェニルシラシクロペンタジエニル)エタン(2PSP)、2,5−ビス−(2,2−ビピリジン−6−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシラシクロペンタジエン(PyPySPyPy)のようなシロール誘導体などを用いて形成することができる。
[陰極]
本発明に用いられる陰極は、光透過性が要求されるため、透明導電性酸化物が好適に用いられる。透明導電性酸化物材料としては、陽極材料で紹介した、ITO(インジウム−スズ酸化物)、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)、IWO(インジウム−タングステン酸化物)、AZO(Alドープ亜鉛酸化物)、GZO(Gaドープ亜鉛酸化物)等の材料を用いることができる。
前記の陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。好適には、液晶ディスプレイ製造技術やプラズマディスプレイ製造技術で確立されている、スパッタリング法、イオンプレーティング法、またはリアクティブプラズマ成膜法などが用いられる。
次に以下において、図2を利用して各層を形成する製造プロセスについて説明する。図2では、製造プロセスについて一例を挙げて説明するが、形成方法については記載内容のみに限定されるものではない。
まず、図2(a)に示すように、ガラス基板の上に陽極を形成する。該陽極を光透過性とする場合は、例えばIZOなどの透明導電性酸化物材料を用いてスパッタ法により形成することができる。また、陽極の形状にパターニングが必要な場合には、例えば一例として図5に示すようなマスクを利用してフォトリソグラフ法によりストライプ形状に加工して陽極を形成できる。次いで、図2(a)に示すように、陽極上に蒸着法などを用いて、正孔注入層を形成する。
次に、図2(b)に示すように、前記正孔注入層の上面に蒸着法などを用いて、正孔輸送層を形成する。次いで、図2(b)に示すように、正孔輸送層の上に発光層を形成する。成膜方法としては蒸着法などを用いることができる。
次に、図2(c)に示すように、前記発光層の上に蒸着法などを用いて、電子輸送層を形成する。次いで、図2(c)に示すように、電子輸送層の上に(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層を形成する。成膜方法としては真空蒸着法を用いて膜形成する。
次に、図2(d)に示すように、前記電子注入層の上に導電性酸化物からなる陰極を形成する。成膜方法としてはスパッタリング法を用いて膜形成する。また、陰極の形状にパターニングが必要な場合には、例えば一例として図5に示すような形状のメタルマスクを用いてスパッタ成膜することによりストライプ形状に陰極を形成できる。
以下、有機EL素子の実施例を用いて、さらに詳細に説明する。
本実施例では、透明型有機EL素子を図2の説明に準ずるプロセスに従って作製した。図3に本実施例の有機EL素子の層構成の断面模式図を示す。ガラス基板(縦50mm×横50mm×厚さ0.7mm、コーニング製イーグル2000ガラス)上に、IZOをDCマグネトロンスパッタ法(ターゲット:In23+10wt%ZnO、放電ガス:Ar+0.5%O2、放電圧力:0.3Pa、放電電力:1.45W/cm2、基板搬送速度162mm/min)にて成膜し、フォトリソグラフィ法により2mm幅のストライプ形状に加工することにより、膜厚150nm、幅2mmのIZO電極を形成した。
次にIZO電極上に抵抗加熱蒸着法にて、2−TNATAを、蒸着レート1Å/sとして成膜し、2−TNATA膜からなる正孔注入層を20nm成膜した。その上に、正孔輸送層として、NPBを抵抗加熱蒸着法にてレート1Å/sとして40nm成膜した。次いでADNを発光層ホストとし、4,4’−ビス(2−(4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル)ビニル)ビフェニル(DPAVBi)を発光ドーパントとした発光層を、ADNの蒸着レートを1Å/sおよびDPAVBiの蒸着レートを0.03Å/sとして発光層を30nm成膜した。発光層上に、電子輸送層としてAlq3を蒸着レート1Å/sにて30nm成膜した。
引き続き、Alq3電子輸送層上に、α,ω−ビス(ビフェニル−4−イル)−ターチオフェン(BP3T)を他の有機層と同様に真空蒸着法を用い、蒸着レート1Å/sにて膜厚20nm成膜し、電子注入層を形成した。全ての有機層の真空蒸着は、蒸着チャンバー内の到達真空度10-5Pa以下、蒸着中真空度10-5Pa台で行われた。
電子注入層上に幅1mmのスリットの開いたメタルマスクを通して、IZOをDCマグネトロンスパッタ法(ターゲット:In23+10wt%ZnO、放電ガス:Ar+0.5%O2、放電圧力:0.3Pa、放電電力:1.45W/cm2、基板搬送速度162mm/min)にて成膜して、膜厚140nm、幅2mmのIZO電極を形成した。メタルマスクを用いてIZOをスパッタ成膜する際に、メタルマスクと基板が密着していないことから、IZO成膜粒子がマスクと基板の間に回りこむため、IZOの成膜パターンがぼける恐れがあるので、これを回避するため、2mm幅の電極を形成するのに、1mm幅スリットのメタルマスクを用いた。正孔注入層以降の各工程は、真空を破らずに一貫して行った。
続いて、試料を窒素置換ドライボックスに移し、その中にて、封止用ガラス板(縦41mm×横41mm×厚さ0.7mm、日本電気硝子製OA−10)の4辺付近にエポキシ系接着剤に10μmのガラスビーズスペーサ混ぜたものを塗布し、有機EL層を覆うように試料に貼り付け、実施例1の透明型青色有機EL素子を得た。陰極形成後のドライボックスへ搬送時、試料は大気に触れることのないよう工程を行った。
Alq3からなる電子輸送層の膜厚を20nm、BP3Tからなる電子注入層の膜厚を30nmとしたこと以外、実施例1と同様にして透明型有機EL素子を作製した。
本実施例では、トップエミッション型有機EL素子を作製した。図4に本実施例の有機EL素子の層構成の断面模式図を示す。図2の説明に準ずるプロセスに従って作製した。長さ50mm×幅50mm×厚さ0.7mmの支持基板(コーニング製イーグル2000ガラス)を、アルカリ洗浄液にて洗浄し、純水にて十分にリンスした。続いて、洗浄済の支持基板上に、DCマグネトロンスパッタ法にて銀合金(フルヤ金属製、APC−TR)を付着させ、膜厚100nmの銀合金膜を成膜した。スピンコート法を用いて、銀合金膜上に、膜厚1.3μmのフォトレジスト(東京応化工業製、TFR−1250)膜を成膜し、80℃のクリーンオーブンにて15分間にわたって乾燥した。フォトレジスト膜に対して、2mm幅のストライプパターンのフォトマスクを通して高圧水銀ランプによる紫外光を照射し、現像液(東京応化工業製、NMD−3)にて現像することにより、銀合金薄膜上に2mm幅のフォトレジストパターンを作製した。
次いで、銀用エッチング液(関東化学製 SEA2)を用いてエッチングを行い、続いて剥離液(東京応化製、剥離液104)を用いてフォトレジストパターンを剥離し、線幅2mmのストライプ形状部分からなる金属反射層を作製した。該金属反射層上に、実施例1と同様にDCマグネトロンスパッタ法を用い、基板搬送速度を178mm/minとして、インジウム亜鉛酸化物(IZO)からなる膜厚100nmの透明導電膜を成膜し、銀合金薄膜と同様にフォトリソグラフィ法にてパターニングを行い、導電層のパターンに合致したストライプ形状部分からなる透明導電層を形成し、反射性陽極を得た。IZOのエッチングには、シュウ酸を用いた。
続いて、反射性陽極を形成した基板を、低圧水銀ランプを備えたUV/O3洗浄装置にて室温で10分間処理した後、正孔注入層以降、実施例2と同様にして形成し、BP3Tからなる電子注入層を備えたトップエミッション型青色有機EL素子を作製した。
電子注入層材料として、5−デシル−5’−[4−(5’−デシル−2,2’−ビチエン−5−イル)フェニル]−2,2’−ビチオフェン(Dec-2T-Ph-2T-Dec)を用いること以外、実施例3と同様にしてトップエミッション型青色有機EL素子を作製した。
電子注入層材料として、5,5’−ビス[4−(5−デシル−2−チエニル)フェニル]−2,2’−ビチオフェン(Dec-(TPhT)2-Dec)を用いること以外、実施例3と同様にしてトップエミッション型青色有機EL素子を作製した。
電子輸送材料に、1,3,5−トリス(2−N−フェニルベンズイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)を用いること以外、実施例5と同様にしてトップエミッション型青色有機EL素子を作製した。
(比較例1)
Alq3電子輸送層の膜厚を50nmにし、BP3Tの代わりに、ボトムエミッション素子で従来用いられているLiFによって電子注入層(1nm)を形成したこと以外、実施例3と同様にしてトップエミッション型青色有機EL素子を作製した。LiF層は粉末材料をMo製るつぼに入れて、抵抗加熱蒸着にて蒸着レート0.2Å/sで形成した。
(比較例2)
電子輸送層材料としてTPBIを用いること以外、比較例1と同様にしてトップエミッション型青色有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子の特性として、電流密度が10mA/cm2の時の電圧および電流効率を表1にまとめる。実施例1、2の透明有機EL素子の電流効率は、下部IZO電極/ガラス基板を通して観測される発光について測定された結果である。
電子注入層に1nmのLiFを用いた比較例1、比較例2は電子輸送材料にかかわらず、電流は流れるが発光は見られなかった。これは、上部IZO陰極のスパッタ形成時にAlq3層および発光層の劣化によるものと考えられる。
これに対して、本発明を適用して(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を電子注入層に用いた素子は、透明型素子、トップエミッション型素子共に良好な発光特性が得られた。
以上により、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を電子注入層に用いる本発明の有機EL素子の構成とすることにより、透明導電性酸化物を上部陰極としてスパッタ形成した場合でも、高発光効率で低駆動電圧の有機EL素子を提供できることが示された。
101、201 基板
102、202 陽極
103、203 正孔注入層
104、204 正孔輸送層
105、205 発光層
106、206 電子輸送層
107、207 電子注入層
108、208 陰極
209 金属反射層

Claims (9)

  1. 支持基板上に形成された陽極と、該陽極上に少なくとも、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極がこの順に設けられ、陰極を構成する主材料が導電性酸化物を有する有機EL素子であって、前記電子注入層がチオフェンとフェニレンの共重合体構造をもつ(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含むことを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物が、一般式(I)で表される請求
    項1に記載の有機EL素子。
    (式中、X1およびX2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nおよびmは、それぞれ1〜5の整数を表す。)
  3. 前記(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物が、一般式(II)で表される請求
    項1に記載の有機EL素子。
    (式中、X1およびX2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nおよびmは1〜5の整数を表す。)
  4. 前記(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物が、一般式(III)で表される請
    求項1に記載の有機EL素子。
    (式中、X1およびX2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
  5. 前記(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物が、一般式(IV)で表される請
    求項1に記載の有機EL素子。
    (式中、X1およびX2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
  6. 前記電子注入層が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物と、該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物に対して電子供与性を示す物質とを含むことを特徴とする請求項1乃至5に記載の有機EL素子。
  7. 前記電子供与性を示す物質が、Li、K、Na、Rb、Cs等のアルカリ金属、またはBe、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属を含むことを特徴とする請求項6に記載の有機EL素子。
  8. 前記電子供与性を示す物質が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の、酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはキレート化合物であることを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子。
  9. 支持基板上に、少なくとも陽極、発光層をこの順に形成する第1の工程と、前記発光層の上に、少なくとも電子輸送層、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層をこの順に形成する第2の工程と、前記電子注入層の上に、導電性酸化物からなる陰極を形成する第3の工程を備える有機EL素子の製造方法において、前記第2の工程で、前記(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー化合物を含む電子注入層を真空蒸着法で形成し、続いて不活性環境においたまま、該電子注入層上にスパッタリング法によって前記導電性酸化物からなる陰極を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
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