JP2011058819A - Memsセンサーおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 可動錘部の質量の増大による検出感度の向上を、Q値をほぼ一定に維持しつつ達成すること。
【解決手段】 基板上に形成された多層構造を加工して形成されるMEMSセンサーは、弾性変形部130によって固定枠部110に連結され、周囲に空洞部111,113が形成されている可動錘部120と、固定枠部に固定された固定電極部150(150a,150b)と、可動錘部に接続され、固定電極部に対向して配置される可動電極部140(140a,140b)と、を有する容量部145(145a,145b)と、固定枠部に固定されたダミー固定電極部153(153a,153b)と、可動錘部に接続され、ダミー固定電極部に対向して配置されるダミー可動電極部(143a,143b)と、を有し、検出信号を出力しないダミー容量部147(147a,147b)と、を含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、MEMSセンサー(Micro Electro Mechanical Sensor:マイクロエレクトロメカニカルセンサー)およびその製造方法等に関する。
例えば、静電容量型MEMSセンサーは、可動錘部、可動電極部および固定電極部は、例えば、複数層の膜(絶縁膜や導電性材料膜等を含む)を積層して構成される多層構造(階層が異なる複数の層が積層された積層構造体)を加工して形成される。多層構造の加工(必要な場合には基板の加工を含む)には、例えば、半導体集積回路(IC)の製造技術を使用することができる。
例えば特許文献1には、CMOS集積回路一体型のシリコンMEMS加速度センサーが開示されている。また、特許文献2には、「半導体力学量センサーにおいて、電極が形成された構造体の全領域に対向するように半導体基板を支持する支持体を設けて、ダンピング係数を増大させてQ値を低減させる技術」が開示されている。特許文献2に開示されるセンサーでは、可動体の上下に意図的に構造体(支持体)を設けて、通常構造ではほとんど発生しないスライドダンピングを生じさせてダンピング係数を増大させる。
特開2006−263902号公報 特開2004−286649号公報
一般的な静電容量型のMEMS加速度センサーでは、櫛歯電極(櫛の歯状に配列された電極のことであり、具体的には、例えば、互いに対向する一組の電極が複数組、所定方向に配置された電極である)で構成される容量の変化を検出することによって、物理量としての加速度の変化を求める。
MEMS加速度センサーにおいて、ノイズの低減は特に重要な課題である。静電容量型のMEMS加速度センサーのノイズ低減(すなわち、検出感度の向上)のためには、可動錘部の質量を大きくすることが有効である。但し、可動錘部の質量は、可動錘部における振動のQ値にも影響を及ぼす。
例えば、可動錘部(可動構造体)の自由振動は振動の運動方程式で表現することができ、可動錘部のQ値および共振周波数(固有振動数)は、好ましい値に設計される必要がある。粘性減衰のある自由振動を行う可動錘部(可動構造体)の共振周波数(固有振動数)ωは、例えば、可動錘部の質量(M)と、可動錘部を支持するバネ(弾性変形部)のバネ定数Kから一義的に決まり、また、共振の鋭さを表すQ値(振動のQ値)は、さらにダンピング係数(粘性係数:D)を加えた計算式から決まる。可動錘部の質量(M)を大きくすればQ値も大きくなり、また、ダンピング係数(D)が増大すれば、Q値が小さくなるという関係が成立する。
例えば、検出感度の向上のために可動錘部の質量(M)を増大させたときに、その質量(M)の増大に伴ってQ値も増大し、そのQ値が適切な範囲を逸脱して大きくなり過ぎる場合もあり得る。この場合には、センサーが不要な振動を検出してしまい、検出信号のS/Nが低下する場合がある。また、センサーが搭載された電子機器に、落下等に起因して急激な衝撃が生じたときに、センサーに損傷が生じる危険性が増大する場合もある。
Q値の増大を抑制する手法としては、上記の特許文献2に記載されるように、ダンピング係数(D)を増大させる方法がある。なお、ダンピング(ここではスクイズダンピングとする)とは、可動電極部が振動する際に、可動電極部と固定電極部とに挟まれた空間にある気体が、例えば上下に動き、その際に、気体の粘性によって生じる、可動電極の動きを止めようとする働きのことであり、ダンピング係数(粘性係数)とは、ダンピングの程度を示す指標としての係数である。しかし、特許文献2に開示されるセンサーでは、可動体の上下に意図的に構造体(支持体)を設けて、スライドダンピングを生じさせている。よって、支持体を設ける分だけセンサーのサイズが増大し、また、センサーの構造も複雑化するのは否めない。
また、ダンピング係数(D)を増大させる手法としては、櫛歯電極における電極間の距離(ギャップ)を狭めることも有効ではある。しかし、この場合には、電極間ギャップを狭めたことによってコンデンサーの容量値が増し、電気バネ(電極間の静電引力に起因するバネ力)が増大し、可動錘部を支持する弾性変形部(バネ部)の実効的なバネ特性が、非線形になるといった不都合が生じる場合がある。つまり、機械的なバネ特性(線形特性)に、非線形性の電気バネ特性が加わることによってバネ特性が、一般的な線形特性の式(F=kx:kはバネ定数、xは振動量、Fは力)が成立しなくなる場合がある。
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、可動錘部の質量の増大による検出感度の向上を、Q値をほぼ一定に維持しつつ達成することができる。また、例えば、弾性変形部(バネ部)のバネ特性に悪影響が生じないようにすることもできる。
(1)本発明のMEMSセンサーの一態様は、基板上に形成された多層構造を加工して形成されるMEMSセンサーであって、弾性変形部によって固定枠部に連結され、周囲に空洞部が形成されている可動錘部と、前記固定枠部に固定された固定電極部と、前記可動錘部に接続され、前記固定電極部に対向して配置される可動電極部と、を有する容量部と、前記固定枠部に固定されたダミー固定電極部と、前記可動錘部に接続され、前記ダミー固定電極部に対向して配置されるダミー可動電極部と、を有し、検出信号を出力しないダミー容量部と、を含む。
ダミー容量部(ダミー構造体またはダミー電極部)を設けることによって、ダンピング係数を意図的に増大させることができる。よって、MEMSセンサーの構造設計が容易化される。例えば、可動錘部の質量をΔMだけ増大させたとし、そのΔMの質量増加に伴ってQ値がΔQだけ増加するものとする。この場合において、ダミー容量部を設けることによるダンピング係数(粘性係数)の増大の効果により、Q値を−ΔQだけ低下させることができれば、可動錘部の質量を大きくした後のQ値を、大きくする前のQ値と同じ(ほぼ同じ、実質的に同じ)にすることができる。つまり、Q値を一定に維持しつつ、可動錘部の質量増大による物理量の検出感度の向上の効果を得ることが可能となる。
ダミー容量部は、検出信号を出力しない見かけ上の容量である。つまり、ダミー容量部は、検出信号を受ける検出回路から電気的に分離され、実際の物理量検出に寄与しない容量であり、例えば、主としてダンピング係数の調整のために用いられる(但し、ダミー可動電極部は可動錘部と一体であることから、ダミー可動電極部が可動錘部の質量調整の機能も有すると考えることができ、ダンピング係数の調整用のみならず、可動錘部の質量調整用にも使用される場合も有り得る。また、主として可動錘部の質量調整用に使用する場合もあり得る)。
一般に容量は、両電極間の電位差に応じた電荷を蓄積するが、ダミー容量部は正規の容量ではないことから、電荷の蓄積機能を有さなくてもよい(但し、これに限定されるものではなく、電荷の蓄積機能を有するように設計することも可能である)。つまり、ダミー容量部は、例えば、電極となり得る導電体(導体層)が設けられないことにより、あるいは例えば、電極となり得る導電体(導体層)は存在するが、少なくとも一方の導体層に所定のバイアス電圧が印加されないこと等により、電荷を蓄積する機能をもたないこともあり得る。
この場合、ダミー容量部を構成する両電極部間には静電引力が生じず、電気的なバネ特性が発生しない。よって、弾性変形部(バネ部)のバネ特性が非線形となる心配がなく、自由な設計(例えば、ダンピング係数の調整にのみ特化した設計)が可能である。例えば、ダミー可動電極部とダミー固定電極部との間の距離(ギャップ)を自由に調整することができる。例えば、ダンピング係数の調整のために、ダミー容量における電極間の距離(ギャップ)を、正規の容量とは異なる距離(ギャップ)に設定することもできる。
また、ダミー容量部に、コンデンサーとしての機能(電荷蓄積機能)を持たせることもでき、この場合には、両極間の電位差(バイアス電圧)を、正規の容量部における電極間の電位差と異ならせることもできる。また、ダミー容量部を正規の容量部に切り換えるためのスイッチ部を設けることもできる。
また、上述の多層構造(あるいは積層構造)は、例えば、半導体製造プロセス(フォトリソグラフィ)を用いて形成することができる。但し、これに限定されるものではなく、立体的な構造であればどのような製造方法によって製造される構造であってもよい。多層構造は、例えば、積層された絶縁層および導体層(つまり、絶縁層上に積層された導体層、あるいは、導体層上に積層された絶縁層)を含むことができる。絶縁層は、例えば、基板表面を覆う表面保護層、異なる階層の導体層間の絶縁を確保するための層間絶縁層、あるいは最終保護層等である。導体層は、基板上の表面保護絶縁層上に形成される第1層目導体層や、2層目以上の階層の各導体層を含むことができる。例えば、MEMSセンサーが、CMOS集積回路等の半導体集積回路と同じ製造プロセスによって製造される場合には、多層構造として、集積回路装置における多層配線構造を使用することができる。
(2)本発明のMEMSセンサーの他の態様では、前記ダミー容量部はダンピング係数の調整部としての機能を有し、前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部の少なくとも一方における前記多層構造は、積層された複数層の絶縁層のみから構成される。
本態様では、ダミー容量部を構成する多層構造(階層が異なる複数の層が積層された積層構造)には、電極となり得る導電体層(導体層)が設けられない。つまり、本態様のダミー容量部は、例えば、ダンピング係数調整機能をもつ、互いに対向して配置される一対の絶縁構造体を含むことができる。例えば、可動錘部から突出する、積層された絶縁層からなるダミー可動電極部(絶縁材料のみからなる積層構造体)と、固定枠部から可動錘部に向けて突出する、積層された絶縁層からなるダミー固定電極部(絶縁材料のみからなる積層構造体)と、が対向されて配置される。正規の電極となり得る導体層がないことから、本態様のダミー容量部は電荷の蓄積機能を持たない。一方、可動錘部が振動すると、ダミー可動電極部も可動錘部と一体となって振動することから、ダミー可動電極部とダミー固定電極部との間のギャップが変化して空気の移動が生じ、スクイズダンピングが発生する。よって、ダミー容量を配置することによって、可動錘部(可動構造体)のQ値を小さくする効果を得ることができる。本態様では、上述のとおり、ダミー容量部を構成する両電極部間には静電引力が生じず、電気的なバネ特性が発生しないことから、弾性変形部(バネ部)のバネ特性が非線形となる心配がなく、自由な設計が可能である。
なお、本態様のダミー固定電極部およびダミー可動電極部は、電極として機能する導体層をもたないが、本明細書では、正規の固定電極部および正規の可動電極部と対比して説明できるようにするために、便宜上「電極部」という用語を使用する。また、検出信号を出力する「容量部」を、「ダミー容量部」と対比して説明するために「正規の容量部」と記載する場合がある。
(3)本発明のMEMSセンサーの他の態様では、前記ダミー容量部はダンピング係数の調整部としての機能を有し、前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部の前記多層構造は、積層された複数層の導体層を含み、かつ、前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部の前記多層構造における前記積層された複数層の導体層はいずれも、前記MEMSセンサーからの前記検出信号を受ける検出回路部の信号入力ノードに接続されない。
本態様のダミー容量部を構成する多層構造には、電極となり得る導電体(導体層)は存在する。つまり、本態様のダミー容量部は、ダンピング係数調整機能をもつ、互いに対向して配置される一対の導電構造体を含む。正規の容量部の、いずれか一方の電極部から出力される物理量の検出信号(例えば微小な電荷信号)は、MEMSセンサーからの検出信号を受ける検出回路部の信号入力ノードに入力されるが、本態様のダミー容量部は、電極部となり得る導体層は有してはいるものの、いずれの電極部も検出回路部の信号入力ノードに接続されない。したがって、本態様におけるダミー容量部の、少なくとも出力側の電極部(正規の容量部であるならば検出信号を出力する電極部)は、検出回路部から電気的に分離された孤立導体層である。
本態様では、例えば、ダミー固定電極部およびダミー可動電極部の各々を構成する各導体層間には所定の電位差が生じないようにすることができる。例えば、少なくとも一方の導体層に所定のバイアス電圧が印加されないようにすれば、ダミー容量部は、電荷を蓄積する機能をもたないことになる。但し、可動錘部が振動すると、ダミー可動電極部も可動錘部と一体となって振動することから、ダミー可動電極部とダミー固定電極部との間のギャップが変化して空気の移動が生じ、スクイズダンピングが発生する。よって、ダミー容量を配置することによって、可動錘部(可動構造体)のQ値を小さくする効果を得ることができる。
また、ダミー容量部が電荷蓄積機能を有さない場合(電極となり得る導体層がない、あるいは、導体層があってもバイアス電圧が印加されないことによってコンデンサーの両極に正規の電位差が生じないような場合)には、ダミー容量部を構成する両電極部間には静電引力が生じず、電気的なバネ特性が発生しない。よって、弾性変形部(バネ部)のバネ特性が非線形となる心配がなく、自由な設計が可能である。
(4)本発明のMEMSセンサーの他の態様では、前記可動電極部と前記固定電極部との間の距離と、前記ダミー可動電極部と前記ダミー固定電極部との間の距離と、が異なる。
ダミー容量部は、正規の検出信号を検出回路に出力しないため、正規の容量部とは異なる設計値を採用することも可能である。そこで、本態様では、ダミー容量部(ダミーコンデンサー)の電極間ギャップを、正規の容量部(正規のコンデンサー)の電極間ギャップとは異なる値に設定する。すなわち、本態様では、例えば、ダンピング係数の調整を主目的として、ダミー容量における電極間の距離(ギャップ)を、正規の容量とは異なる距離(ギャップ)に設定する。このようにすれば、ギャップの調整によって可動構造体のダンピング係数(粘性係数)を変化させることができ、設計時におけるダンピング係数の調整(例えば、ダミー容量部における電極間ギャップの最適化)が容易化される。
例えば、上述のとおり、ダミー容量部が電荷蓄積機能を有さない場合(電極となり得る導体層がない、あるいは、導体層があってもバイアス電圧が印加されないことによってコンデンサーの両極に正規の電位差が生じないような場合)には、ダミー容量部を構成する両電極部間には静電引力が生じず、電気的なバネ特性が発生しないことから、弾性変形部(バネ部)のバネ特性が非線形となる心配がなく、ダミー容量部の電極間ギャップは、より自由に設計することができる(但し、これは一例であり、ダミー容量部の両電極間に電位差が発生し、ダミー容量部において電気的バネ特性が生じる場合もあり得る。この場合は、ダミー容量部のギャップ値の決定に際しては、ダンピング係数の他、電気的バネ定数も考慮して行われることになる)。
(5)本発明のMEMSセンサーの他の態様では、前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部間の第1の電位差は、前記固定電極部および前記可動電極部間の第2の電位差とは独立に設定される。
本態様では、ダミー容量部は、コンデンサーの両電極となり得る導体層を有し、各電極には、例えば、基準電圧(接地電位を含む)や適切な直流バイアス電圧が印加されていて、コンデンサーとしての機能をもつ。そして、さらに、ダミー容量部における両電極間の電位差(第1の電位差)は、正規の容量部における両電極間の電位差(第2の電位差)とは独立に設定することが可能である。例えば、ダミー容量部における電位差を、正規の容量部の電位差とは独立に設定するための電位設定端子が設けることができ、例えば、その電位設定端子に、正規の容量部のバイアス電圧とは異なる値のバイアス電圧を印加することができる。本態様では、ダミー容量部における蓄積電荷を電位差の独立設定によって制御することができる。例えば、正規の容量部は必然的に電気的バネ特性をもつことから、バランスをとるために、ダミー容量部においてもコンデンサーの機能を付与して電気的バネ特性を生じさせ、かつ、そのダミー容量部における電気的バネ定数を積極的に調整し、これによって、可動構造体全体の電気的バネ定数を微調整する、というような場合に、本態様の構成を利用することができる。
(6)本発明のMEMSセンサーの他の態様では、前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部の前記多層構造は、積層された複数層の導体層を含み、かつ、前記ダミー固定電極部または前記ダミー可動電極部の前記多層構造における前記積層された複数層の導体層と、前記MEMSセンサーからの前記検出信号を受ける検出回路部の信号入力ノードとの電気的な接続/非接続を切り換えるスイッチ部を、さらに有する。
本態様では、ダミー容量部を正規の容量部に切り換えるためのスイッチ部を設ける。上述のとおり、ダミー容量部(の出力電極部)は、検出回路部の入力ノードに接続されないが、本態様では、スイッチ部の制御によって、ダミー容量部の出力電極部と検出回路部の入力ノードとの非接続/接続を切り換えることを可能とする。スイッチ部が閉状態(オン状態)となると、ダミー容量部は検出回路部の入力ノードと電気的に接続されることになる。正規の容量部も検出回路部の入力ノードと接続されていることから、スイッチ部がオン状態のときは、ダミー容量部が、正規の容量部に電気的に接続されることになり、この結果、ダミー容量部は正規の容量部の一部となる。つまり、ダミー容量部は、正規の容量部に切り換えられたことになる。
ダミー容量部が正規の容量部に転換されることによって、櫛歯電極のペア数(対向配置された一対の電極の数)が増加し、正規の容量部に蓄積可能な電荷量が増える。このことは、可動錘部の振動に伴う容量変化によって移動する電荷量が増えることを意味し、よって、検出信号のS/N(つまり、検出感度)が向上する。スイッチ部のオン/オフ(開閉)は、例えば、MEMSセンサーの用途や設計仕様(要求される検出感度、要求される構造特性等)に応じて、設計段階で切り換えることができる。したがって、本態様によれは、共通のMEMSセンサーを使用して、幅広い要求に対応することが容易となる。
(7)本発明のMEMSセンサーの他の態様では、前記可動錘部の、可動方向に沿う中心線を基準として、前記中心線に直交する第1方向の側に配置される、前記容量部としての第1容量部と、前記中心線を基準として、前記第1方向とは反対の方向である第2方向の側において、前記中心線に対して前記第1容量部と線対称の位置に配置される、前記容量部としての第2容量部と、前記中心線を基準として、前記第1方向の側に配置される、前記ダミー容量部としての第1ダミー容量部と、前記中心線を基準として、前記第1方向とは反対の方向である前記第2方向の側において、前記中心線に対して前記第1ダミー容量部と線対称の位置に配置される、前記ダミー容量部としての第2ダミー容量部と、を有する。
可動構造体の設計の際、ダミー容量部が設けられたことによって、可動構造体(可動錘部および可動錘部に一体化された可動電極部およびダミー可動電極部を含む)が振動する際に不要なモーメント(回転やねじれを生じさせる力の作用)が生じないように配慮することが好ましい。そこで、本態様では、可動構造体が、可動構造体の可動方向(変位方向:例えば加速度センサーの場合には検出すべき加速度の方向であり、検出方向ということもできる)に沿う中心線に対して線対称の構造となるように、容量部(正規の容量部)およびダミー容量部を配置する。線対称の配置とすることによって、可動構造体の中心線を基準として、可動構造体の重さのバランス(均衡)が確保され、同様にダンピング作用の均衡も確保され、不要なモーメントが生じない。よって検出感度への悪影響(検出誤差や、S/N低下等)が抑制される。
本態様では、例えば、可動錘部の、可動方向に沿う中心線を基準として、その中心線に直交する第1方向の側(例えば可動構造体を平面的に見た場合において、中心線が上下方向に延びているとしたとき、その中心線の左方向の側)に正規の容量部としての第1容量部が配置された場合には、可動構造体の重さのバランス(均衡)を確保するために、その中心線を基準として、第1方向とは反対の方向である第2方向の側(例えば可動構造体を平面的に見た場合の、中心線の右方向の側)であって、その中心線に対して第1容量部と線対称の位置に、正規の容量部としての第2容量部が配置される。
同様に、その中心線を基準として第1方向の側(であって、正規の容量部である第1容量部と重ならない位置)に、ダミー容量部としての第1ダミー容量部が配置される場合には、可動構造体の重さのバランス(均衡)を確保するめに、その中心線を基準として、第1方向とは反対の方向である第2方向の側であって、その中心線に対して第1ダミー容量部と線対称の位置において、ダミー容量部としての第2ダミー容量部が配置される。
(8)本発明のMEMSセンサーの他の態様は、基板上に形成された多層構造を加工して形成され、弾性変形部によって固定枠部に連結され、周囲に空洞部が形成されている可動錘部と、前記固定枠部に固定された固定電極部と、前記可動錘部に接続され、前記固定電極部に対向して配置される可動電極部と、を有する容量部と、前記固定枠部に固定されたダミー固定電極部と、前記可動錘部に接続され、前記ダミー固定電極部に対向して配置されるダミー可動電極部と、を有し、検出信号を出力しないダミー容量部と、を含むMEMSセンサーの製造方法であって、前記基板上に前記多層構造を形成し、前記多層構造を異方性エッチングによってパターニングして、前記基板の表面が露出する開口部である第1空洞部を形成し、前記第1空洞部を介して、等方性エッチング用のエッチャントを前記基板に到達させて前記基板を等方性エッチングして、前記第1空洞部に連通する第2空洞部を形成し、これによって前記空洞部を形成する。
本態様によれば、半導体集積回路装置(IC)の製造技術を用いて、MEMSセンサーを効率的に製造することができる。すなわち、多層構造(複数層の積層構造)の異方性エッチングと、基板(シリコン基板等)の等方性エッチングとを組み合わせて使用することによって、効率的にMEMSセンサーを製造することができる。また、ICとMEMSセンサーとを、共通の製造技術を用いて、併行的に形成することもできる。よって、ICを内蔵したセンサーモジュール等を容易に形成することができる。
第1実施形態のMEMSセンサー(静電容量型MEMS加速度センサー)の構造の一例を示す図 図2(A)および図2(B)は、正規の容量部およびダミー容量部の断面構造の一例を示す図 第1実施形態の加速度センサーモジュール(センサー部と集積回路部を含む)の構成の一例を示すブロック図 図4(A)〜図4(C)は、検出回路部の構成と動作について説明するための図 第2実施形態にかかる静電容量型MEMS加速度センサーの平面図 第3実施形態にかかる静電容量型MEMS加速度センサーの要部の平面図 第4実施形態にかかる静電容量型MEMS加速度センサーの要部の平面図 第5実施形態にかかる静電容量型MEMS加速度センサーの要部の平面図 図9(A)〜図9(C)は、容量電極(ダミー容量電極を含む)として使用することが可能な電極構造(多層構造)の一例を示す図 図10(A)および図10(B)は、第1工程における加速度センサーデバイスの平面図およびI−I線に沿う断面図 第2工程における加速度センサーデバイスの平面形状、I−I線に沿う断面構造、ならびにII−II線に沿う断面構造を示す図 第3工程における加速度センサーデバイスの平面形状、I−I線に沿う断面構造、ならびにII−II線に沿う断面構造を示す図 静電容量型MEMSセンサーの設計パラメータについて説明するための図
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明のMEMSセンサー(ここでは静電容量型MEMS加速度センサーとする)の構造の一例を示す図である。
(全体構成)
以下の説明において、多層構造(あるいは積層構造)は、例えば、半導体製造プロセス(フォトリソグラフィ)を用いて形成することができる。但し、これに限定されるものではなく、立体的な構造であれば、どのような製造方法によって製造される構造であってもよい。例えば、絶縁材料のバルク(これも一つの層とみなすことができる場合がある)上に、導体材料層を形成した構造も、本実施形態における多層構造に含めて考えることができる。多層構造は、例えば、積層された絶縁層および導体層(つまり、絶縁層上に積層された導体層、あるいは、導体層上に積層された絶縁層)を含むことができる。絶縁層は、例えば、基板表面を覆う表面保護層、異なる階層の導体層間の絶縁を確保するための層間絶縁層、あるいは最終保護層等である。導体層は、基板上の表面保護絶縁層上に形成される第1層目導体層や、2層目以上の階層の各導体層を含むことができる。例えば、MEMSセンサーが、CMOS集積回路等の半導体集積回路と同じ製造プロセスによって製造される場合には、多層構造として、集積回路装置における多層配線構造を使用することができる。
図1に示される、MEMSセンサーとしての静電容量型MEMS加速度センサー(以下、単に加速度センサーという場合がある)100は、例えばCMOSICプロセスで形成された集積回路部102(検出回路部を含む)を有しており、可変容量(コンデンサー)C1、C2を含むセンサー部103は、集積回路部102の製造プロセス技術を用いて、同時並行的に形成される。
センサー部103は、半導体製造プロセスを用いて形成される多層構造体(積層構造体)を加工して形成される。すなわち、センサー部103は、複数層の絶縁層および所定方向に延在する配線として機能する導体層L1aを含んで構成される可動錘部120と、可動錘部120の4隅を支持すると共に、引き出し配線L1bを有する弾性変形部(バネ部)130と、基板(例えばシリコン基板)および基板上に形成された配線(例えばGND配線)L1cを有する固定枠部110と、容量部(正規の容量部)145(145aおよび145b)と、ダミー容量部147(147aおよび147b)と、を有する。容量部(正規の容量部)145には、容量C1,C2が含まれる。
可動錘部120の周囲には、空洞部(基板および基板上の積層構造体が部分的に除去された部分)111,113が形成されている。また、可動錘部120においても、下地の半導体基板を除去する必要があることから、部分的に空洞部115が形成されている。
したがって、可動錘部120は、可動方向(紙面の左右方向)に可動自在に、弾性変形部130によって空気中において4点支持されていることになる。可動錘部120は、測定対象の物理量である加速度が加わると、図中の太い矢印で示される可動方向(紙面の左右方向)に振動する。これによってコンデンサーC1,C2の容量値が変化し、この容量値の変化を電気信号の変化に変換して検出することによって(C/V変換)、加わった加速度の大きさ(およびその方向)を、検出することが可能である。
なお、図1では、容量部(正規の容量部)145における電極ペア(対向配置される一対の電極部)の数は、説明の便宜を考慮して「2」となっているが、実際には、数多くの電極ペア(例えば数10〜数百)が櫛歯状に設けられて櫛歯電極(櫛歯構造,櫛歯電極構造,あるいは正規の櫛歯構造)が形成される。また、ダミー電極部についても同様であり、実際の設計では、多数のダミー電極ペアが櫛歯状に配置されて櫛歯ダミー電極(ダミー櫛歯構造,櫛歯ダミー構造)が構成される場合がある。
(正規の容量部の構成と動作について)
まず、容量部(正規の容量部)145(145a,145b)について説明する。容量部(正規の容量部)145(145aおよび145b)は、可動電極部140(140aおよび140b)と、可動電極部140に対向して配置された固定電極部150(150aおよび150b)と、により構成される。
つまり、可動電極部140aおよび固定電極部150aの各々は、複数の導体層が積層されて構成される壁状の面をもつ容量電極(図中、黒い太線で示されている)を有しており、各容量電極が所定のギャップ(距離,間隔)をもって対向配置されることによって、コンデンサーC1が構成される。コンデンサーC1の可動電極の電位は、基準電位VX(ここではGNDとする)に接続されている。つまり、コンデンサーC1の可動電極は、配線L1a、引き出し配線L1bおよび接続配線L1daを経由して集積回路部(検出回路)102内の接地配線に接続されており、一連の配線は電位VX(=GND)に固定されている。
同様に、可動電極部140bおよび固定電極部150bの各々は、複数の導体層が積層されて構成される壁状の面をもつ容量電極(図中、黒い太線で示されている)を有しており、各容量電極が所定のギャップ(距離,間隔)をもって対向配置されることによって、コンデンサーC2が構成される。コンデンサーC2の可動電極の電位は、基準電位VX(=GND)に接続されている。つまり、コンデンサーC2の可動電極は、配線L1a、引き出し配線L1bおよび接続配線L1dbを経由して集積回路部(検出回路部)102内部の接地配線に接続されており、一連の配線は電位VX(=GND)に固定されている。
加速度が加わることによって可動錘部120が、例えば紙面の左方向に振動したとき、コンデンサーC1における電極間ギャップは拡大し、一方、コンデンサーC2における電極間ギャップは縮小する。この結果、コンデンサーC1の容量値はΔCだけ減少し、コンデンサーC2の容量値はΔCだけ増加し、これによって、絶対値が同じで、極性が異なる2系統の検出信号(微小な電荷の移動によって生じる電流信号)が得られる。2系統の検出信号の各々は、検出出力配線L2aおよびL2bの各々を経由して集積回路部102内の検出回路部に入力される。検出回路部は、入力された検出信号に対して、電荷(電流)/電圧変換および電圧増幅を行う。電圧振幅から加速度の大きさを検出することができ、また、2系統の検出信号の各極性によって、加速度の方向(紙面の左方向か右方向か)を検出することができる。
なお、以上の例では、可動電極を基準電位VX(例えばグランド)に接続し、固定電極から検出信号を取り出す構成を採用しているが、これに限定されるものではなく、固定電極を基準電位VX(例えばグランド)に接続し、可動電極から検出信号を取り出す構成を採用してもよい。この場合も、上記の例と同様の効果を得ることができる。
(ダミー容量部の構成と動作について)
図1に示されるダミー容量部147(147a,147b)は、ダミー可動電極部143(143aおよび143b)と、ダミー可動電極部143に対向して配置されたダミー固定電極部153(153aおよび153b)と、により構成される。ダミー容量部は、検出信号を出力しない見かけ上の容量である。つまり、ダミー容量部は、検出信号を受ける検出回路から電気的に分離され、実際の物理量検出に寄与しない見かけ上の容量であり、換言すれば、互いに対向する側面をもつ、ダンピング係数等の調整用の構造体である。ダミー容量が電極となり得る導体層を有さない場合もあり、このような場合には、ダミー容量部は電気的には何らの機能(コンデンサーとしての機能や各電極としての機能等)を発揮しないが、本明細書では、「正規の容量部」と対比する用語として、上記の場合も含めて「ダミー容量部」という用語を使用して説明する。
ダミー容量部は、上述のとおり、主としてダンピング係数の調整のために用いられる。但し、ダミー可動電極部143(143a,143b)は可動錘部120と一体化されていることから、ダミー可動電極部143(143a,143b)が、可動錘部120の質量(M)の調整の機能も有すると考えることができる。つまり、ダミー容量部147(147a,147b)が、ダンピング係数(D)の調整用のみならず、可動錘部120の質量(M)の調整用にも使用される場合も有り得る。また、設計の都合上、主として可動錘部120の質量(M)の調整用に使用する場合もあり得る。また、ダミー容量部147(147a,147b)が、設計の都合上、その他の特性(例えば、電気的バネ定数)の調整のためにも使用されることがあり得る。
ダミー容量部147(147a,147b)の態様としては、例えば、電極となり得る導体層を含まず、絶縁層のみの構成される場合(図1に示される第1態様)と、電極となり得る導体層は有するが、電極間に所定の電位差が発生せずにコンデンサーとしての機能を有さない場合(第2態様)と、電極となり得る導体層は有し、電極間に所定の電位差が発生してコンデンサーとしての機能を有するが、そのコンデンサーは検出回路から孤立していて、コンデンサーからの信号出力がない場合、つまり孤立コンデンサーとして機能する場合(第3態様)等が、考えられる。いずれの態様も、ダミー容量部147(147a,147b)が、集積回路部102に配置される検出回路部に対して、物理量(ここでは加速度)の検出信号を出力しない点(換言すれば、検出回路部と電気的に分離されている点)で共通している。どの態様を採用するかは、設計時の実情に応じて、適宜、決定される。例えば、導体層としてはアルミや銅等の、絶縁材料に比べて比重の重い金属材料が使用され、ダミー電極部に導体層を設ける構造を採用すると、ダミー電極部の重さを増大させる効果がある。よって、例えば、可動錘部の質量を重くする必要がある場合等には、ダミー電極部に導体層を設ける構造を採用することが有効である。
図1に示されるダミー容量部147(147a,147b)は、ダミー可動電極部143aおよびダミー固定電極部153aにより構成されるダミー構造体C1’と、ダミー可動電極部143bおよびダミー固定電極部153bにより構成されるダミー構造体C2’と、を含む。ダミー構造体C1’およびダミー構造体C2’は各々、集積回路部102の製造に使用される多層構造を加工して形成される。但し、図1の例の場合、ダミー構造体C1’およびダミー構造体C2’の各々における各電極部の構造体は、積層された複数層の絶縁層のみを有し、導体層は設けられない。但し、この例は一例であり、変形例としては、対向する2つのダミー電極部のうち、いずれか一方には導体層が設けられ(つまり、導体層と絶縁層からなる積層構造体となっていて)、他方には導体層が設けられずに、絶縁構造体となっている、という例もあり得る。
上記の2つの場合を含むように表現すれば、「ダミー容量部147(147a,147bの各々)に関して、ダミー固定電極部(153a,153b)およびダミー可動電極部(143a,143b)の少なくとも一方における多層構造(積層構造)は、積層された複数層の絶縁層のみから構成される」ということになる。
図1に示される例では、ダミー容量部147(147a,147b)は、ダンピング係数調整機能をもつ、互いに対向して配置される一対の絶縁構造体により構成される。つまり、図1の例では、可動錘部120から突出する、積層された絶縁層からなるダミー可動電極部143a,143b(つまり、絶縁材料のみからなる積層構造体)と、固定枠部110から可動錘部120に向けて突出する、積層された絶縁層からなるダミー固定電極部153a,153b(絶縁材料のみからなる積層構造体)と、が対向されて配置される。図1の例では、正規の電極となり得る導体層がないことから、ダミー容量部147(147a,147b)は電荷の蓄積機能を持たず、コンデンサーとして機能することができない。
一方、可動錘部120が振動すると、ダミー可動電極部143a,143bも可動錘部120と一体となって変位(振動)することから、ダミー可動電極部とダミー固定電極部との間のギャップが変化して空気の移動が生じ、スクイズダンピングが発生する。よって、ダミー容量部147(147a,147b)を配置することによって、可動錘部120(あるいは可動構造体)のQ値を小さくする効果を得ることができる。この例では、ダミー容量部147(147a,147b)を構成する両電極部間には静電引力が生じず、電気的なバネ特性が発生しない。よって、弾性変形部(バネ部)130のバネ特性が非線形となる心配がなく、自由な設計が可能である。
図2(A)および図2(B)は、正規の容量部およびダミー容量部の断面構造の一例を示す図である。図2(A)は、図1の可動構造体(ダミー容量部に導体層が設けられない構造をもつ)のI−I線に沿う断面構造(上記の第1態様)を示しており、図2(B)は、変形例としての、ダミー容量部に孤立導体層が設けられた断面構造(上記の第2態様および第3態様)を示している。
図2(A)に示されるように、基板(例えばシリコン基板)BS上に多層構造(複数層の積層構造)が形成されている。その多層構造(積層構造)ならびに基板BSを、選択的なエッチング等により加工することによって、図示されるような断面構造が形成される。基板BSには集積回路部(検出回路部を含む)102が形成されている。集積回路部102が、例えばCMOS製造プロセス技術により形成されるのであれば、上述の積層構造体も同じ製造工程を経て形成される。
多層構造(積層構造)は、表面絶縁層INS0と、第1層目導体層ML1と、第1層間絶縁層INS1と、第1層間絶縁層INS1を貫通するコンタクトホール(ビアホール)に埋め込まれた第1コンタクトプラグ層(第1プラグ層)MP1と、第2層目導体層ML2と、第2層間絶縁層INS2と、第2層間絶縁層INS21を貫通するコンタクトホール(ビアホール)に埋め込まれた第2コンタクトプラグ層(第2プラグ層)MP2と、第3層目導体層ML3と、第3層間絶縁層INS3と、第3層間絶縁層INS3を貫通するコンタクトホール(ビアホール)に埋め込まれた第3コンタクトプラグ層(第3プラグ層)MP3と、第4層目導体層ML4と、保護絶縁層(例えば最終保護絶縁層)INS4と、を有している。
表面絶縁層INS0は、例えば、シリコン基板の局所酸化によって形成されるフィールド酸化膜である。層間絶縁層INS1〜INS3および保護絶縁層INS4としては、例えば、CVD法による酸化膜を使用することができる。また、第1層目導体層(第1層目配線層)の材料としては、例えば、ポリシリコンや、アルミニュウムや銅等の金属材料を使用することができる。第2層目導体層(第2層目配線層)〜第4層目導体層(第4層目配線層)の材料としては、例えば、アルミニュウムや銅等の金属材料を使用することができる。また、第1コンタクトプラグ層MP1〜第3コンタクトプラグ層MP3の材料としては、例えば、タングステン(W)を使用することができ、スルーホール内に埋め込む際のバリアメタルとしては、例えばチタン(Ti)を使用することができる。
図2(A)の断面構造では、容量部(正規の容量部)145bは、第1層目導体層ML1と、第1コンタクトプラグ層MP1と、第2層目導体層ML2と、第2コンタクトプラグ層MP2と、第3層目導体層ML3と、第3コンタクトプラグ層MP3と、第4層目導体層ML4とが積層されており、これによって、可変容量C2の可動電極と固定電極として機能する導体層(多層の導体層)が形成されている。
一方、ダミー容量部147bにおいては、電極としての導体層が形成されない。ダミー容量部147bは正規の容量ではないことから、電荷の蓄積機能を有さなくてもよいため、図2(A)の構造では、電極となり得る導体層そのものを設けない構造を採用するものである。なお、導体層(比重の重い金属材料からなる)を設けないことによって、ダミー電極部147bの重さを軽くする効果も得られる。図2(A)の例では、ダミー容量部147bを構成する両電極部間には静電引力が生じず、電気的なバネ特性が発生しない。よって、弾性変形部(バネ部)のバネ特性が非線形となる心配がなく、自由な設計が可能である。例えば、両極間のギャップ(電極間の距離、間隔)を最適化することも適宜、なし得る。
また、図2(A)に示される断面構造中の、左上および右上に示される導体層L1cは、固定枠部110上に配設される基準電位配線(ここではグランド配線)である。図示されるように、グランド配線L1cは、第4層目配線ML4により形成される(但し、これは一例であり、他の階層の配線層を使用することもでき、また、多層配線とすることもできる)。
図2(B)では、ダミー容量部147bにおいても、正規の容量部145bと同様の多層の導体層が形成される。但し、この導体層は、集積回路部102に含まれる検出回路には電気的に接続されず、したがって、ダミー容量部147bから検出信号は出力されない。上述のとおり、ダミー容量部147bにおいて導体層が存在する態様としては、例えば2つの態様(第1態様および第2態様)が考えられる。すなわち、ダミー容量部147bを構成する電極間に所定の電位差が発生せず(つまり、所定のバイアス電圧が与えられず)、コンデンサーとしての機能を有さない場合(第2態様)と、電極間に所定の電位差が発生してコンデンサーとしての機能を有するが、そのコンデンサーは検出回路から電気的に分離されている(孤立している)ことから、コンデンサーからの信号出力がない場合(第3態様)がある。第2態様の場合は、先に説明した第1態様(導体層がない態様)と同様に、ダミー容量部147bを構成する両電極部間には静電引力が生じず、電気的なバネ特性が発生しない。よって、弾性変形部(バネ部)のバネ特性が非線形となる心配がなく、自由な設計が可能である。例えば、ダミー可動電極部とダミー固定電極部との間の距離(ギャップ)を自由に調整することができる。例えば、ダンピング係数の調整のために、ダミー容量における電極間の距離(ギャップ)を、正規の容量とは異なる距離(ギャップ)に設定することもできる。
(加速度センサーモジュールの構成例)
図3は、本実施形態の加速度センサーモジュール(センサー部と集積回路部を含む)の構成の一例を示すブロック図である。加速度センサー100は、少なくとも2対の可動・固定電極ペアを有する。なお、ダミー容量部は検出信号を出力しないため、図3では、正規の容量部のみを示している。
図3に示される加速度センサーは、第1可動電極部140aと、第2可動電極部140bと、第1固定電極部150aと、第2固定電極部150bと、を有する。第1可動電極部140aと第1固定電極部150aによってコンデンサーC1が構成される。第2可動電極部140bと第2固定電極部150bによってコンデンサーC2が構成される。コンデンサーC1,C2の各々における一極(例えば、可動電極部)の電位は、基準電位(例えば接地電位GND)に固定されている。なお、固定電極部の電位を接地電位に固定することもできる。
例えばCMOSプロセスによって形成される集積回路部102は、例えば、検出回路部(例えば、Q/V(電荷/電流)変換回路および増幅回路を含む)24と、アナログ校正およびA/D変換回路ユニット26と、中央演算ユニット(CPU)28およびインターフェース(I/F)回路30と、を含んでいる。但し、この構成は一例であり、この構成に限定されるものではない。例えば、CPU28は制御ロジックに置き換えることができ、また、A/D変換回路は、検出回路部24の出力段に設けることも可能である。なお、アナログ/デジタル変換回路、中央演算ユニットは、場合によっては、集積回路部102とは異なる集積回路部に形成してもよい。
可動錘部120が止まっている状態から可動錘部120に加速度が作用すると、可動錘部120には加速度による力が作用して、一対の可動電極と固定電極との間の間隔(ギャップ)が変化する。図3の矢印方向(平面視において、紙面の右方向)に可動錘部120が移動したとすると、第1可動電極部140aと第1固定電極部150aとの間のギャップが大きくなり、第2可動電極部140bと固定電極部150bとの間のギャップが小さくなる。ギャップと静電容量とは反比例の関係にあるので、可動電極部140aと固定電極部150aとで形成されるコンデンサーC1の静電容量値C1は小さくなり、可動電極部140bと固定電極部150bとで形成されるコンデンサーC2の静電容量値C2は大きくなる。
コンデンサーC1,C2の容量値の変化に伴って電荷の移動が生じる。検出回路部24は、初段に、例えばスイッチトキャパシタを用いたチャージアンプ(Q/V変換アンプ)を有している。このチャージアンプは、サンプリング動作および積分(増幅)動作によって、電荷(Q)の移動によって生じる微小な電流信号(つまり検出信号)を、電圧信号(V)に変換し、さらに、オペアンプや差動増幅器を用いて電圧信号を増幅する。検出回路部24から出力される電圧信号(すなわち、静電容量型MEMSセンサーによって検出された物理量信号(例えば加速度検出信号))は、アナログ校正およびA/D変換回路ユニット26によって、キャリブレーション処理(例えば位相や信号振幅の調整等であり、さらにローパスフィルタ処理が行われてもよい)を受けた後、アナログ信号からデジタル信号に変換される。
ここで、図4(A)〜図4(C)を用いて、検出回路部24の構成と動作について説明する。図4(A)は、スイッチトキャパシタを用いたチャージアンプの基本構成を示す図であり、図4(B)は、図4(A)に示されるチャージアンプの各部の電圧波形を示す図である。
図4(A)に示すように、基本的なスイッチトキャパシタアンプは、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2(可変容量C1(またはC2)と共に入力部のスイッチトキャパシタを構成する)と、オペアンプ(OPA)1と、帰還容量(積分容量)Ccと、帰還容量Ccをリセットするための第3スイッチSW3と、オペアンプ(OPA)1の出力電圧Vcをサンプリングするための第4スイッチSW4と、ホールディング容量Chと、を有する。第1スイッチSW1の一端には、可変容量C1(C2)の信号出力側の電極をバイアスするための電位(ここでは−Vd)が接続される。
図4(B)に示すように、第1スイッチSW1および第3スイッチSW3は同相の第1クロックでオン/オフが制御され、第2スイッチSW2は、第1クロックとは逆相の第2クロックでオン/オフが制御される。第4スイッチSW4は、第2スイッチSW2がオンしている期間の最後において短くオンする。第1スイッチSW1がオンすると、可変容量C1(C2)の両端には、所定の電圧Vdが印加されて、可変容量C1(C2)に電荷が蓄積される。このとき、帰還容量Ccは、第3スイッチがオン状態であることから、リセット状態(両端がショートされた状態)である。次に、第1スイッチSW1および第3スイッチSW3がオフし、第2スイッチSW2がオンすると、可変容量C1(C2)の両端は共に接地電位となるため、可変容量C1(C2)に蓄積されていた電荷が、オペアンプ(OPA)1に向けて移動する。このとき、電荷量が保存されるため、Vd・C1(C2)=Vc・Ccが成立し、よって、オペアンプ(OPA)1の出力電圧Vcは、(C1/Cc)・Vdとなる。すなわち、チャージアンプのゲインは、可変容量C1(あるいはC2)の容量値と帰還容量Ccの容量値との比によって決定される。次に、第4スイッチ(サンプリングスイッチ)SW4がオンすると、オペアンプ(OPA)1の出力電圧Vcが、ホールディング容量Chによって保持される。保持された電圧がVoであり、このVoがチャージアンプの出力電圧となる。
図3に示されるとおり、実際の検出回路部24は、2つのコンデンサーC1,C2の各々からの差動信号(極性が逆である2系統の信号)を受ける。この場合には、検出回路部24として、例えば、図4(C)に示されるような、差動構成のチャージアンプを使用することができる。図4(C)に示されるチャージアンプでは、入力段において、可変容量C1からの信号を増幅するための第1のスイッチトキャパシタアンプ(SW1a,SW2a,OPA1a,Cca,SW3a)と、可変容量C2からの信号を増幅するための第2のスイッチトキャパシタアンプ(SW1b,SW2b,OPA1b,Ccb,SW3b)と、が設けられる。そして、オペアンプ(OPA)1aおよび1bの各出力信号(差動信号)は、出力段に設けられた差動アンプ(OPA2,抵抗R1〜R4)に入力される。この結果、増幅された出力信号Voが、オペアンプ(OPA)2から出力される。差動アンプを用いることによりベースノイズを除去できるという効果が得られる。
なお、以上説明した検出回路部の構成例は一例であり、この構成に限定されるものではない。また、図4(C)においては、説明の便宜上、2対の可動・固定電極ペアのみ図示しているが、この形態に限ったものではなく、必要とされる容量値に応じて電極ペアの数は増やすことができる。実際には、例えば、数十から数百の電極ペアが設けられる。また、上記の例では、コンデンサーC1,C2において、電極間のギャップが変化して各コンデンサーの容量が変化しているが、これに限定されるものではなく、一つの基準電極に対する2つの可動電極の各々の対向面積が変化し、2つのコンデンサーC1,C2の容量が変化する構成も採用することができる(この構成は、例えば、Z軸方向(基板に垂直な方向)に作用する加速度を検出する場合に有効である)。
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態にかかる静電容量型MEMS加速度センサーの平面図である。図5において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付している。
本実施形態の加速度センサーでは、可動構造体の可動方向(変位方向、検出軸方向)に沿う中心線CL1に対して線対称の構造となるように、容量部(正規の容量部)145(145aおよび145b)ならびにダミー容量部147(147aおよび147b)を配置する。
なお、容量部(正規の容量部)145(145aおよび145b)は、図3を用いて説明したように、極性が異なる検出信号を出力する第1のコンデンサーC1と第2のコンデンサーC2とを有する。ダミー容量部147(147aおよび147b)の構造としては、上述したように、例えば、電極となり得る導体層が設けられない態様と、導体層が設けられるが電位差が生じないためにコンデンサーとして機能しない態様と、検出回路から分離された孤立したコンデンサーとして機能する態様とがあるが、いずれの態様の構造を使用することができる。
具体的には、図5の加速度センサーは、可動錘部120の、可動方向(図中の太い矢印で示される方向)に沿う中心線CL1を基準として、その中心線CL1に直交する第1方向の側(ここでは紙面の左方向の側とする)に配置される、容量部(正規の容量部)としての第1容量部145aと、その中心線CL1を基準として、第1方向とは反対の方向である第2方向の側(ここでは紙面右方向の側とする)において、その中心線CL1に対して第1容量部145aと線対称の位置に配置される、容量部(正規の容量部)としての第2容量部145bと、その中心線CL1を基準として、第1方向の側に配置される、ダミー容量部としての第1ダミー容量部147aと、その中心線CL1を基準として、第1方向とは反対の方向である第2方向の側において、中心線CL1に対して第1ダミー容量部147aと線対称の位置に配置される、ダミー容量部としての第2ダミー容量部147bと、を有する。
すなわち、可動錘部120の、可動方向に沿う中心線CL1を基準として、その中心線に直交する第1方向の側に正規の容量部としての第1容量部145aが配置された場合には、可動構造体の重さ等のバランス(均衡)を確保するために、その中心線CL1を基準として、第1方向とは反対の方向である第2方向の側であって、その中心線CL1に対して第1容量部145aと線対称の位置に、正規の容量部としての第2容量部145bが配置する、というレイアウト設計を採用する。
同様に、その中心線CL1を基準として第1方向の側であって、正規の容量部である第1容量部145aと重ならない位置に、ダミー容量部としての第1ダミー容量部147aが配置される場合には、可動構造体の重さ等のバランス(均衡)を確保するめに、その中心線CL1を基準として、第1方向とは反対の方向である第2方向の側であって、その中心線CL1に対して第1ダミー容量部147aと線対称の位置において、ダミー容量部としての第2ダミー容量部147bが配置される。
可動構造体の設計の際、ダミー容量部147(147aおよび147b)が設けられたことによって、可動構造体(可動錘部および可動錘部に一体化された可動電極部を含む)が振動する際に不要なモーメント(回転やねじれを生じさせる力の作用)が生じないように配慮することが好ましい。そこで、上述のとおり、本実施形態では、可動構造体が、可動構造体の可動方向(変位方向:加速度センサーの場合には検出すべき加速度の方向であり、検出方向ということもできる)に沿う中心線に対して線対称の構造となるように、容量部(正規の容量部)145(145aおよび145b)と、ダミー容量部147(147aおよび147b)とを配置する。
線対称の配置とすることによって、可動構造体の中心線CL1を基準として、可動構造体の重さのバランス(均衡)が確保され、また、ダンピング作用に関する均衡が確保されて、可動錘部120が移動する際に、不要なモーメントが生じない。よって検出感度への悪影響(検出誤差や、S/N低下等)が抑制される。なお、可動構造体のバランスを確保する観点からは、容量部145(145a,145b)およびダミー容量部147(147a,147b)は、可動方向に垂直な方向の中心線CL2に対しても線対称になるように配置することが好ましい。
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態にかかる静電容量型MEMS加速度センサーの要部の平面図である。図6において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付している。本実施形態においても、第2実施形態と同様に線対称の配置が採用されていることから、図6では、加速度センサーの右半分のみを記載している。
本実施形態の加速度センサーでは、容量部(正規の容量部)145(145a,145b)における、可動電極部140(140a,140b)と固定電極部150(150a,150b)との間の距離(ギャップ)が“d1”に設定され、一方、ダミー容量部147(147a,147b)における、ダミー可動電極部143(143a,143b)とダミー固定電極部153(153a,153b)との間の距離(ギャップ)が“d2”に設定されている。d1とd2は異なる値に設定される。図6の例では、d1<d2に設定されている(これに限定されるものではない)。
すなわち、ダミー容量部147bは、正規の検出信号を検出回路に出力しないため、正規の容量部145とは異なる設計値を採用することも可能である。そこで、本実施形態では、ダミー容量部(ダミーコンデンサー)147における電極部間のギャップを、正規の容量部(正規のコンデンサー)145の電極部間のギャップとは異なる値に設定する。例えば、ダンピング係数の調整を主目的として、ダミー容量部147における各電極部間の距離(ギャップ)を、正規の容量とは異なる距離(ギャップ)に設定する。このようにすれば、ギャップの調整によって可動構造体のダンピング係数(粘性係数)を変化させることができ、設計時におけるダンピング係数の調整(例えば、ダミー容量部147における電極部間のギャップの最適化)を容易に、かつより自由に行うことができる。
例えば、ダンピングの大きさを示すダンピング係数(D)は、電極ペア数(固定電極と可動電極とによって構成される一対の電極ペアの数)をn、気体の粘性係数をμとすると、D=n・μ・r(h/d0)[N・sec/m]と表すことができる。つまり、ダンピング係数(D)は、ギャップの3乗の逆数に比例する。よって、例えば、ギャップ値(d0)を大きくすれば、ダンピング係数(D)が小さくすることができる。つまり、ギャップ(d0)の調整によって、可動構造体のダンピング係数(D)を変化させることが可能である。
例えば、上述のとおり、ダミー容量部147(147a,147b)が電荷蓄積機能を有さない場合(電極となり得る導体層がない、あるいは、導体層があってもバイアス電圧が印加されないことによってコンデンサーの両極に正規の電位差が生じないような場合)には、ダミー容量部147(147a,147b)を構成する両電極部間には静電引力が生じず、電気的なバネ特性が発生しないことから、弾性変形部(バネ部)130のバネ特性が非線形となる心配がなく、ダミー容量部147(147a,147b)の電極部間ギャップは、より自由に設計することができる。但し、これは一例であり、ダミー容量部147(147a,147b)の両電極部間に電位差が発生し、ダミー容量部において電気的バネ特性が生じる場合もあり得る。この場合には、ダミー容量部147(147a,147b)のギャップ値の決定に際しては、ダンピング係数の他、電気的バネ定数も考慮して行われることになる。
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態にかかる静電容量型MEMS加速度センサーの要部の平面図である。図7において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付している。本実施形態においても、第2実施形態と同様に線対称の配置が採用されていることから、図7では、加速度センサーの右半分のみを記載している。また、図中、電極となる導体層を太い実線で示している。また、図7の加速度センサーでは、容量部(正規の容量部)145(145a,145b)は櫛歯電極構造を有し、この櫛歯電極構造によって、絶対値が同じで極性が異なる検出信号を出力する2つのコンデンサーC1,C2が構成される。よって、検出回路部24においては、図4(C)に示した差動構成の回路が使用される。
本実施形態では、ダミー容量部147(147a,147b)におけるダミー固定電極部153(153a,153b)とダミー可動電極部143(143a,143b)との間の電位差(第1の電位差とする)は、容量部(正規の容量部)145(145a,145b)における固定電極部(150a,150b)と可動電極部(140a,140b)との間の電位差(第2の電位差とする)とは独立に設定される。
電位の独立設定を可能とするために、本実施形態の加速度センサーでは、固定枠部110の角部に、2系統の独立した電位設定端子TA(TA1,TA2)およびTB(TB1,TB2)が設けられている。電位設定端子TA(第1端子とする)は、ダミー容量部147bにおける固定電極部153bの導体層(電極)に第1バイアス電圧VAを印加するために設けられている。電位設定端子TB(第2端子とする)は、容量部(正規の容量部)145bにおける固定電極部150bの導体層(電極)に第2バイアス電圧VBを印加するために設けられている。この第2バイアス電圧VBは、図4(A),図4(B)の回路において示される−Vdに相当する。また、ダミー可動電極部143bおよび可動電極部(正規の可動電極部)140bにおける導体層(電極)は、共に接地電位(GND)に接続されている。
つまり、本実施形態では、ダミー容量部147(147a,147b)は、コンデンサーの両電極となり得る積層構造をもつ導体層を有し、ダミー可動電極部143(143a,143b)は、基準電位としての接地電位GNDに接続され、また、ダミー固定電極部153(153a,153b)には、適切な直流バイアス電圧(第1バイアス電圧)VAが印加されていて、コンデンサーとしての機能をもつ。そして、ダミー容量部147(147a,147b)における両電極部間の電位差(第1の電位差VA)は、正規の容量部145(145a,145b)における両電極部間の電位差(第2の電位差VB)とは独立に設定することが可能である。例えば、VA≠VBに設定することができる。
本実施形態では、ダミー容量部147bにおける蓄積電荷を、第1電位差VAの独立設定によって可変に制御することができる。例えば、容量部(正規の容量部)145bは、必然的に電気的バネ特性(両極間の静電引力に起因するバネ特性)をもつことから、バランスをとるために、ダミー容量部147bにおいてもコンデンサーの機能を付与して電気的バネ特性を生じさせ、かつ、そのダミー容量部147bにおける電気的バネ定数を積極的に調整し、これによって、可動構造体全体の電気的バネ定数を微調整する、というような場合に、本実施形態の構成を利用することができる。
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5実施形態にかかる静電容量型MEMS加速度センサーの要部の平面図である。図8において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付している。本実施形態においても、第2実施形態と同様に線対称の配置が採用されていることから、図8では、加速度センサーの右半分のみを記載している。また、図中、電極となる導体層を太い実線で示している。
本実施形態では、ダミー容量部を、正規の容量部に切り換えるためのスイッチ部を設ける。すなわち、図8に示される加速度センサーは、例えばダミー電極部147bにおけるダミー固定電極部153bおよびダミー可動電極部143bを構成する多層構造(積層構造)は、コンデンサーの電極となり得る導体層(積層された複数層の導体層)を含む。そして、ダミー固定電極部153bまたはダミー可動電極部143bのいずれかの多層構造における積層された複数層の導体層(つまり、コンデンサーの出力電極となり得る方の電極部)と、加速度センサーからの検出信号を受ける検出回路部24の信号入力ノード(図4(A)におけるノードN10)との電気的な接続/非接続を切り換えるスイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)を、有する。
上述のとおり、ダミー容量部147bの出力電極部(ここではダミー固定電極部153bにおける導体層)は、検出回路部24の入力ノードN10に接続されないが、本実施形態では、スイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)の切り換え制御によって、ダミー容量部147bの出力電極部153b(の電極となり得る導体層)と検出回路部24の入力ノードN10との間の非接続/接続を切り換えることを可能とする。
なお、スイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)の切り換え制御は、例えば、図3に示されるCPU28によって実行することができ、また、設計段階で、設計者によるプログラミングにより実行することもできる。スイッチ部としては、CMOS構成のトランスファースイッチ(電気的にオン/オフ自在なスイッチ)を使用することができ、また、1回だけのプログラムでよい場合には、ヒューズスイッチを使用することもできる。なお、ダミー容量部147bを、ダミー容量として使用する場合には、スイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)はすべてオフ状態とされ、また、ダミー容量部147bを、正規の容量に切り換えて使用する場合には、スイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)はすべてオン状態とされる。図7では、スイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)がすべてオンしている状態が記載されている。
なお、図8の加速度センサーでは、電位の混合が生じないように、固定枠部110において、アイソレーション領域173(例えば、基板に形成された溝によるアイソレーション領域)が形成されている。同様に、ダミー固定電極部153bおよび正規の固定電極部150bの各々と、固定枠部110との境界の領域にも、アイソレーション領域170が設けられている。
図8に示される加速度センサーにおいて、スイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)が閉状態(オン状態)となると、図8に示されるように、ダミー容量部147bにおける固定電極部153bは、検出回路部24の入力ノードN10と電気的に接続されることになる。この結果、ダミー容量部147bにおける固定電極部153bには、バイアス電圧VB(=−Vd)が印加されることになり、ダミー容量部147bにおける両電極間に電位差VBが生じる。
容量部(正規の容量部)145bも検出回路部24の入力ノードN10と接続されていることから、スイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)がオン状態のときは、ダミー容量部147bが、容量部(正規の容量部)145bに電気的に接続されることになり、この結果、ダミー容量部147bは、正規の容量部145bの一部となる。つまり、ダミー容量部147bは、正規の容量部145bに切り換えられた(転換された)ことになる。
ダミー容量部147bが正規の容量部145bに転換されることによって、櫛歯電極のペア数(対向配置された一対の電極の数)が増加し、正規の容量部145bに蓄積可能な電荷量が増える。つまり、2つのコンデンサーC1,C2の容量値が増加する。このことは、可動錘部120の振動に伴う容量変化によって移動する電荷量が増えることを意味し、したがって、検出信号のS/N(つまり、検出感度)が向上する。
スイッチ部SW1(SW1a,SW1b)ならびにSW2(SW2a,SW2b)のオン/オフ(開閉)は、例えば、MEMSセンサーの用途や設計仕様(要求される検出感度、要求される構造特性等)に応じて、例えば、設計段階で切り換えることができ、また、場合によっては、実際に使用されている途中において切り換えることも有り得る。したがって、本実施形態によれは、共通の加速度センサー(MEMSセンサー)を使用して、多様な要求に対応することが容易となる。
(第6の実施形態)
本実施形態では、容量電極(ダミー容量電極を含む)として使用することが可能な電極構造(多層構造)の例について説明する。
図9(A)〜図9(C)は、容量電極(ダミー容量電極を含む)として使用することが可能な電極構造(多層構造)の一例を示す図である。容量電極部(つまり、コンデンサーを構成する、所定面積の対向面を有する可動電極と固定電極)を、半導体集積回路装置の製造に用いられる多層構造を用いて形成する場合の断面構造の例が図9(A)および図9(B)に示されている。なお、図9(A)および図9(B)は、固定電極部150(ならびにダミー固定電極部153)の断面構造を示している。
図9(A)では、図2(A)および図2(B)を参照して先に説明したものと同じ積層構造をもつ、1つの導体層が形成されており、この導体層が1つの容量電極となり得る。図9(B)では、電気的に独立している、2つの積層構造をもつ導体層DAおよびDBが形成されており、各導体層DAおよびDBの各々が、容量電極となり得る。つまり、図9(B)の容量電極構造によれば、一本の固定電極部150において、電気的に分離された2つの電極部DA,DBを形成することができる。この図9(B)の容量電極構造は、先に説明した、図7および図8に示される加速度センサーにおける固定電極部150b(あるいはダミー固定電極部153b)の構造として採用されている。
図9(B)の容量電極構造を用いると、異なる電位でバイアスされた2つのコンデンサー(C1,C2)を容易に形成することもでき、構造設計が容易化される。例えば、図9(C)に示されるように、可動電極部140A,140Bと、固定電極部150(独立した電極DA,DBをもつ)とを配置し、電極DA(第1導体層)には第1固定電極電位VC1を印加し、電極DB(第2導体層)には、第2固定電極電位VC1(≠VC2)を印加することによって、電気的に独立し、かつ、異なる電圧でバイアスされた2つのコンデンサーC1,C2を無理なく、かつ省スペースで構成することができる。なお、この例は一例であり、この例に限定されるものではない。
(第7の実施形態)
本実施形態では、静電容量型MEMS加速度センサーの製造方法の例について、図10〜図12を参照して説明する。
(第1工程)
図10(A)および図10(B)は、第1工程における加速度センサーデバイスの平面図およびI−I線に沿う断面図である。図10(A)および図10(B)において、前掲の図面と共通する箇所には共通の参照符号を付している(このことは、以下の図面についても同様である)。
図示されるように、基板(ここではシリコン基板とする)BS上に多層構造(複数層の積層構造体)200が形成されている。上述のとおり、集積回路部102が、例えばCMOS製造プロセス技術により形成されるのであれば、上述の積層構造体も同じ製造工程を経て形成される。
図示されるように、基板BSの裏面の、少なくともセンサー形成領域に対応する部分には、凹所(凹部)95が設けられ、基板BSの厚みがあらかじめ調整されている。この凹所95は、ドライエッチングを用いて形成することができる。また、基板BSの裏面の結晶面を例えば(100)面とし、アルカリエッチング(ウエットエッチング)によって凹所95を形成することができる。凹所95が設けられることによって、基板BSの接触面積が減少してハンドリングが容易になるという効果も得られる。但し、凹所95は必須ではなく、基板BSの厚み調整が不要であるといった場合には、設けなくてもよい。また、凹所95は、多層構造の形成前に、予め基板に設けておくことができ、また、多層構造の形成後に設けることもできる。
また、多層構造(積層構造)200は、先に説明したように、表面絶縁層INS0と、第1層目導体層ML1と、第1層間絶縁層INS1と、第1層間絶縁層INS1を貫通するコンタクトホール(ビアホール)に埋め込まれた第1コンタクトプラグ層(第1プラグ層)MP1と、第2層目導体層ML2と、第2層間絶縁層INS2と、第2層間絶縁層INS21を貫通するコンタクトホール(ビアホール)に埋め込まれた第2コンタクトプラグ層(第2プラグ層)MP2と、第3層目導体層ML3と、第3層間絶縁層INS3と、第3層間絶縁層INS3を貫通するコンタクトホール(ビアホール)に埋め込まれた第3コンタクトプラグ層(第3プラグ層)MP3と、第4層目導体層ML4と、保護絶縁層(例えば最終保護絶縁層)INS4と、を含む。
表面絶縁層INS0は、例えば、シリコン基板の局所酸化によって形成されるフィールド酸化膜である。層間絶縁層INS1〜INS3および保護絶縁層INS4としては、例えば、CVD法による酸化膜を使用することができる。また、第1層目導体層(第1層目配線層)の材料としては、例えば、ポリシリコンや、アルミニュウムや銅等の金属材料を使用することができる。第2層目導体層(第2層目配線層)〜第4層目導体層(第4層目配線層)の材料としては、例えば、アルミニュウムや銅等の金属材料を使用することができる。また、第1コンタクトプラグ層MP1〜第3コンタクトプラグ層MP3の材料としては、例えば、タングステン(W)を使用することができ、スルーホール内に埋め込む際のバリアメタルとしては、例えばチタン(Ti)を使用することができる。
なお、図9(B)では、容量部(正規の容量部)145aにおける可動電極部140aの断面構造と、容量部(正規の容量部)145bにおける固定電極部150bの断面構造と、が示されている。
(第2工程)
図11は、第2工程における加速度センサーデバイスの平面形状、I−I線に沿う断面構造、ならびにII−II線に沿う断面構造を示す図である。
第2工程では、多層構造(複数層の積層構造)を選択的に異方性エッチングして、シリコン基板BSの表面を露出する開口部である第1空洞部(111a,113a,115a)を形成する。なお、111a,113a,115aの各参照符号は、説明の便宜上、第1空洞部が形成される位置に応じて使い分けている(いずれも、多層構造が選択的にパターニングにされて形成された開口部である)。
多層構造の異方性エッチングは、例えば、開口径D(例えば1μm)に対するエッチング深さ(例えば4〜6μm)の比(H/D)が高アスペクト比となる絶縁膜異方性エッチングとなる。この異方性エッチングにより、多層構造(多層の積層構造体)を、固定枠部110、可動錘部120および弾性変形部130に区画することができる(但し、基板BSは加工されていない)。この異方性エッチングの条件は、例えば、CMOSICにおける配線層間の層間絶縁膜をエッチングする条件と同じでよい。例えばCF,CHF等の混合ガスを用いたドライエッチングによって加工することができる。
可動電極部140aおよび固定電極部150bには、所定面積の壁状面(壁部)をもつ導体層(複数の導電材料層が積層されて形成された積層導体層)が形成されており、その壁状面(壁部)が、コンデンサーを構成する各電極の対向面(電極面)となる。
また、図10の右側の図に示されるように、ダミー容量部147bにおける各電極部には、導体層が設けられていない(つまり、ダミー容量部における積層構造として、図2(A)に示される構造が採用されている。但し、これは一例である)。
なお、図11の右側の図に示されるように、弾性変形部130を構成する多層構造においては、最上層の金属配線により構成され、正規の容量部145(145a,145b)の可動電極部140a,140bに一端が接続される引き出し配線LQ(ここではGND配線とする)が設けられている。
(第3工程)
図12は、第3工程における加速度センサーデバイスの平面形状、I−I線に沿う断面構造、ならびにII−II線に沿う断面構造を示す図である。
第2工程では、基板BSに、第1空洞部(111a,113a,115a)に連通する第2空洞部(111b,113b,115b)を設ける。これによって、可動構造体(可動錘部120、可動電極部140、ダミー可動電極部143)ならびに弾性変形部130の周囲に空洞部(111,113,115)を形成する。この結果、可動構造体は、空気中(空洞部中)において、弾性変形部130によって支持され、可動方向に可動自在の状態となる。
すなわち第3工程では、多層構造(多層の積層構造)に形成された第1空洞部(開口部)111a,113a,115aの各々を介して、等方性エッチング用のエッチャントをシリコン基板BSの表面に到達させ、シリコン基板BSを等方性エッチングして除去する。これによって、図12の下側の図に示されるように、可動錘部120、弾性変形部130および可動電極部140の下方に、第1空洞部(111a,113a,115a)に連通する第2空洞部(111b,113b,115b)が形成される。なお、図12の下側の図において、第2空洞部(111b,113b,115b)は一部、点線で示されている。第1空洞部と第2空洞部が連通する結果として、空洞部(111,113,115)が形成され、可動構造体(可動錘部120、可動電極部140、ダミー可動電極部143)が固定枠部110から分離される。つまり、可動構造体は、空気中(空洞部中)において、弾性変形部130によって支持され、可動方向に可動自在の状態となる。
この等方性のシリコンエッチング方法としては、エッチングチャンバー内に配置されたウエハにエッチングガスXeFを導入するエッチング方法を採用することができる。このエッチングガスはプラズマ励起する必要がなく、ガスエッチングが可能である。例えば、特開2002−113700号公報に一例が記載される通り、XeFは圧力5kPaのエッチング処理が可能である。また、XeFは蒸気圧が4Torr程度で、蒸気圧以下にてエッチング可能であり、エッチングレートとしても3〜4μm/minが期待できる。この他、ICPエッチングを用いることもできる。例えばSFとOとの混合ガスを用い、チャンバー内圧力を1〜100Paとし、RFパワー100W程度を供給すると、2〜3μmのエッチングは数分で完了する。
可動錘部120(例えば略正方形)のI−I線方向に沿う一辺の長さは、例えば700μmである。正規の可動電極部140(140a,140b)、正規の固定電極部150(153a,153b)、ダミー可動電極部143(143a,143b)ならびにダミー固定電極部153(153a,153b)の各々の電極幅Wは例えば3μmであり、各電極部の長さ(突出長)は、例えば150μmであり、各電極間のギャップは例えば1.5μmである。
なお、各電極部の電極幅Wが、例えば3μm程度であれば、等方性エッチング時には、各電極部の下の基板BSは、各電極部の両サイドから同時にエッチングされて、短時間で除去可能である。
このように、半導体集積回路装置(IC)の製造技術を用いて、MEMSセンサー(ここでは、静電容量型MEMSセンサー)を効率的に製造することができる。つまり、多層構造(複数層の積層構造)200の異方性エッチングと、基板(シリコン基板等)BSの等方性エッチングとを組み合わせて使用することによって、効率的にMEMSセンサー(静電容量部型加速度センサー)を製造することができる。また、集積回路部(IC)102とMEMSセンサーとを、共通の製造技術を用いて、併行的に形成することもできる。よって、ICを内蔵した、小型のセンサーモジュール等を、容易にかつ低価格で形成することができる。
(第7の実施形態)
本実施形態では、ダミー容量部(ダミー構造体,ダミー電極部あるいはダミー電極ということもできる)147と、可動構造体のQ値との好ましい関係について考察する。ここでは、可動構造体のQ値を3より小さくなるようにする場合を想定する。理想的にはQ<1であるが、現実の設計を考慮すると、Q値が3程度までは使用可能範囲であるため、ここでは、Q値を3未満に設定した場合における、好ましい構造設計について考察する。ここでは、可動構造体のQ値を示す式を利用して、以下の関係を満足するように、容量型MEMSセンサーの構造設計を行うのが好ましい。すなわち、正規の容量電極(検出電極)ペアの数をNeとし、ダミー電極ペアの数をNmとすると、(Ne+Nm)は、以下の関係を満たすことが望ましい。但し、これは好ましい設計の一例であり、この例に限定されるものではない。
Figure 2011058819
(静電容量型MEMSセンサーの設計パラメータ等についての説明)
以下、参考のために、静電容量型MEMSセンサーの設計パラメータについて、簡単に説明しておく。
センサーの感度Sは、電極コンデンサーの全容量をC0、弾性変形部130のばね定数をK、電極間ギャップをd0とすると、S=C0/d0・(M/K)[F/(m/sec)]となる。つまり、可動錘部120の質量が大きければ感度は向上する。
次に、図13を参照する。図13において、可動電極部140と固定電極部150は対向して配置されており、その高さをh、横方向の長さをr、電極間ギャップをd0とする。可動電極部140が動くことによって、コンデンサーのギャップd0が変化するとき、電極間の気体が上下に動き、その際に、気体(空気)の粘性によって可動電極部140の移動に関してダンピング(可動電極部の振動(移動)を止めようとする働き)が生じる。ダンピングの大きさを示すダンピング係数(D)は、電極ペア数(固定電極と可動電極とによって構成される一対の電極ペアの数)をn、気体の粘性係数をμとすると、D=n・μ・r(h/d0)[N・sec/m]と表すことができる。
つまり、ダンピング係数(D)は、電極部の高さ(h)の3乗に比例し、また、ギャップd0の3乗の逆数に比例する。
なお、気体のブラウン運動によって可動電極部に力が働き、それが加速度透過ブラウンノイズとなる。このブラウンノイズ(BNEA)は、BNEA=(√(4kBTD))/M[(m/sec2)/√Hz]となり、この式の分子は可動電極部の高さ(h)の三乗に比例するダンピング係数(D)の平方根に比例する。
また、静電容量型MEMSセンサーは、粘性減衰のある自由振動の運動方程式(例えば、下記(1)式参照)で表現される構造体であるため、構造体のQ値および共振周波数(固有振動数)は、好ましい値に設計される必要がある。粘性減衰のある自由振動を行う構造体の共振周波数(固有振動数)ωは、可動錘部の質量Mと、可動錘部を支持するバネ(弾性変形部)のバネ定数Kから一義的に決まり(例えば、下記(2)式参照)、また、共振の鋭さを表すQ値は、さらにダンピング定数Dを加えた計算式から決まる(例えば、下記(3)式参照)。なお、(3)式において、ξは臨界減衰係数である。
Figure 2011058819
(3)式から明らかなように、可動錘部の質量Mを大きくすればQ値が大きくなり、また、ダンピング係数Dが増大すれば、Q値が小さくなる。
また、弾性変形部(バネ部)におけるバネ定数の値を適正な範囲に収めることも必要である。実効的なバネ定数は、弾性変形部(バネ部)130の機械的なバネ定数だけで定まるのではなく、固定電極部150と可動電極部140との間に作用する静電気力(クーロン力)に起因する電気的なバネ定数も考慮して総合的に決定される。すなわち、実効的なバネ定数は、(機械的バネ定数−電気的バネ定数)によって決定される。電気的なバネ定数は距離(変位量)に対して非線形な値を取る。
よって、電気的バネ定数が、機械的バネ定数に比べて十分に小さくなるように設計しないと、F=kX(Fは力、kはバネ定数、Xは変位量)で表わされる線形のバネ特性の式が成立しなくなる。このように、可動錘部、電極部、弾性変形部の各々の特性を総合的に勘案しつつ、容量型MEMSセンサーの設計を行う必要がある。
先に説明した少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、ダミー電極部を設けてダンピング係数を調整することによって、例えば、可動錘部の質量の増大による検出感度の向上を、Q値をほぼ一定に維持しつつ達成することができる。また、例えば、弾性変形部(バネ部)のバネ特性に悪影響が生じないようにすることもできる。以上、本発明をいくつかの実施形態を用いて説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
例えば、本発明に係るMEMSセンサーは、必ずしも静電容量型加速度センサーに適用されるものに限らず、ピエゾ抵抗型の加速度センサーにも適用することが可能である。また、可動錘部の移動により静電容量の変化を検出する物理センサーであれば適用が可能である。たとえばジャイロセンサー、圧力センサー等に適用が可能である。例えば、キャビティ(中空室)の空気圧によってシリコンダイヤフラムを変形させ、その変形による静電容量の変化を検出する圧力センサーにおいて、シリコンダイヤフラムの一部にダミー容量部を設けて、ダイヤフラムのダンピング特性等を調整することができる。
また、物理量の検出軸は上述した一軸や二軸に限らず、三軸以上の多軸とすることができる。また、コンデンサーの電極間の対向面積の変化によって、物理量を検出する方法を採用することもできる。
24 検出回路部(例えばQ/V変換回路および増幅回路)、
26 アナログ校正およびA/D変換部、28 CPU、
30 インターフェース回路(I/F)、
100 静電容量型MEMS加速度センサー、102 集積回路部、
BS シリコン基板、110 固定枠部、120 可動錘部、
111,113 115 空洞部、130 弾性変形部(バネ部)、
140(140a,140b) 可動電極部(正規の可動電極部)、
143(143a,143b) ダミー可動電極部(ダミー可動構造体)、
145(145a,145b) 容量部(正規の容量部、正規の電極部、正規の電極または検出電極)、
147(147a,147b) ダミー容量部(ダミー構造体、ダミー電極部またはダミー電極)、
150(150a,150b) 固定電極部(正規の固定電極部)、
153(153a,153b) ダミー固定電極部(ダミー固定構造体)

Claims (8)

  1. 基板上に形成された多層構造を加工して形成されるMEMSセンサーであって、
    弾性変形部によって固定枠部に連結され、周囲に空洞部が形成されている可動錘部と、
    前記固定枠部に固定された固定電極部と、前記可動錘部に接続され、前記固定電極部に対向して配置される可動電極部と、を有する容量部と、
    前記固定枠部に固定されたダミー固定電極部と、前記可動錘部に接続され、前記ダミー固定電極部に対向して配置されるダミー可動電極部と、を有し、検出信号を出力しないダミー容量部と、
    を含むことを特徴とするMEMSセンサー。
  2. 請求項1記載のMEMSセンサーであって、
    前記ダミー容量部はダンピング係数の調整部としての機能を有し、前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部の少なくとも一方における前記多層構造は、積層された複数層の絶縁層のみから構成されることを特徴とするMEMSセンサー。
  3. 請求項1記載のMEMSセンサーであって、
    前記ダミー容量部はダンピング係数の調整部としての機能を有し、前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部の前記多層構造は、積層された複数層の導体層を含み、
    かつ、前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部の前記多層構造における前記積層された複数層の導体層はいずれも、前記MEMSセンサーからの前記検出信号を受ける検出回路部の信号入力ノードに接続されないことを特徴とするMEMSセンサー。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のMEMSセンサーであって、
    前記可動電極部と前記固定電極部との間の距離と、前記ダミー可動電極部と前記ダミー固定電極部との間の距離と、が異なることを特徴とするMEMSセンサー。
  5. 請求項3記載のMEMSセンサーであって、
    前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部間の第1の電位差は、前記固定電極部および前記可動電極部間の第2の電位差とは独立に設定されることを特徴とするMEMSセンサー。
  6. 請求項1記載のMEMSセンサーであって、
    前記ダミー固定電極部および前記ダミー可動電極部における前記多層構造は、積層された複数層の導体層を含み、
    かつ、前記ダミー固定電極部または前記ダミー可動電極部の前記多層構造における前記積層された複数層の導体層と、前記MEMSセンサーからの前記検出信号を受ける検出回路部の信号入力ノードとの電気的な接続/非接続を切り換えるスイッチ部を、さらに有することを特徴とするMEMSセンサー。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載のMEMSセンサーであって、
    前記可動錘部の、可動方向に沿う中心線を基準として、前記中心線に直交する第1方向の側に配置される、前記容量部としての第1容量部と、
    前記中心線を基準として、前記第1方向とは反対の方向である第2方向の側において、前記中心線に対して前記第1容量部と線対称の位置に配置される、前記容量部としての第2容量部と、
    前記中心線を基準として、前記第1方向の側に配置される、前記ダミー容量部としての第1ダミー容量部と、
    前記中心線を基準として、前記第1方向とは反対の方向である前記第2方向の側において、前記中心線に対して前記第1ダミー容量部と線対称の位置に配置される、前記ダミー容量部としての第2ダミー容量部と、
    を有することを特徴とするMEMSセンサー。
  8. 基板上に形成された多層構造を加工して形成され、弾性変形部によって固定枠部に連結され、周囲に空洞部が形成されている可動錘部と、前記固定枠部に固定された固定電極部と、前記可動錘部に接続され、前記固定電極部に対向して配置される可動電極部と、を有する容量部と、前記固定枠部に固定されたダミー固定電極部と、前記可動錘部に接続され、前記ダミー固定電極部に対向して配置されるダミー可動電極部と、を有し、検出信号を出力しないダミー容量部と、を含むMEMSセンサーの製造方法であって、
    前記基板上に前記多層構造を形成し、
    前記多層構造を異方性エッチングによってパターニングして、前記基板の表面が露出する開口部である第1空洞部を形成し、
    前記第1空洞部を介して、等方性エッチング用のエッチャントを前記基板に到達させて前記基板を等方性エッチングして、前記第1空洞部に連通する第2空洞部を形成し、これによって前記空洞部を形成する、
    ことを特徴とするMEMSセンサーの製造方法。
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