JP2011057700A - 神経変性を処置するためのα2Bまたは2B/2Cアドレナリン受容体アゴニスト - Google Patents

神経変性を処置するためのα2Bまたは2B/2Cアドレナリン受容体アゴニスト Download PDF

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Abstract

【課題】ニューロンの変性を防止または遅延し、また、アルツハイマー病またはパーキンソン病を処置する。
【解決手段】ニューロンの変性を防止または遅延する方法、また、アルツハイマー病またはパーキンソン病を処置する方法であって、選択的α2Bまたはα2B/2C受容体アゴニストを投与することを含む方法を開示する。
【選択図】なし

Description

本発明は、神経細胞(特に哺乳動物の中枢神経系の神経細胞)を、グルタミン酸毒性やアポトーシスなどの有害な傷害による損傷から保護する方法に関する。本発明の方法では、α2アドレナリン作動性受容体選択的アゴニストを使って、例えばパーキンソン病およびアルツハイマー病などで観察されるような神経細胞損傷および神経細胞死を防止する。
本発明は医薬組成物に関し、特にα2アドレナリン作動性受容体に影響を及ぼす能力を持つ化合物が組み込まれている医薬組成物に関する。また、本発明は、多種多様な状態および障害、特に中枢神経系の機能不全に関係する状態および障害を処置するための方法に関する。
ヒトアドレナリン作動性受容体は内在性膜タンパク質であり、大きく分けて2種類、すなわちαアドレナリン作動性受容体とβアドレナリン作動性受容体とに分類されている。どちらのタイプも、カテコールアミン類であるノルエピネフリンおよびエピネフリンの結合により、末梢交感神経系の作用を媒介する。
ノルエピネフリンはアドレナリン作動性神経終末によって産生され、一方、エピネフリンは副腎髄質によって産生される。これらの化合物に対するアドレナリン作動性受容体の結合親和性は、分類の一つの根拠になっている。すなわち、α受容体は、ノルエピネフリンをエピネフリンよりも強く結合し、また、ノルエピネフリンを合成化合物イソプロテレノールよりもはるかに強く結合する傾向を持っている。これらのホルモンの選択的結合親和性はβ受容体では逆転する。多くの組織では、α受容体の活性化によって誘発される平滑筋収縮などの機能的応答は、β受容体結合によって誘発される応答と対立する。
その後に、α受容体とβ受容体との機能的差異は、さまざまな動物源および組織源に由来するこれら受容体の薬理学的特徴づけによって、さらに強調され、精密化された。その結果、αアドレナリン作動性受容体とβアドレナリン作動性受容体は、α1、α2、β1およびβ2サブタイプに、さらに細分された。
さらにその後、これらの受容体はそれぞれに数多くのサブタイプを持つことが認識されるようになった。例えばヒトα2受容体は、さらにα2A、α2Bおよびα2C受容体サブタイプに分類することができる。
α1受容体とα2受容体との機能的相違が認識されており、これら2つのサブタイプ間で選択的結合を示す化合物が文献に記載されている。
例えば、WO92/00073では、α1サブタイプのアドレナリン作動性受容体に選択的に結合するという、テラゾシンのR(+)エナンチオマーの能力が報告された。この化合物のα1/α2選択性は重要であると開示された。その理由として、α2受容体のアゴニスト刺激はエピネフリンおよびノルエピネフリンの分泌を阻害するとされ、一方、α2受容体のアンタゴニスト作用はこれらのホルモンの分泌を増加させるとされた。したがって、フェノキシベンザミンやフェントラミンなどの非選択的αアドレナリン受容体遮断剤の使用は、α2アドレナリン作動性受容体が媒介する血漿カテコールアミン濃度の増加の誘導およびそれに伴う生理学的結果(心拍数の増加および平滑筋収縮)による制約を受けるとされた。「α1選択的」または「α2選択的」と呼ばれる化合物の選択性は、伝統的にKDデータに基づいており、それが受容体に対する結合親和性の比較に限定され、比較対象受容体における実際の生物学的活性を比較していないことは、重大である。
これに対して、α受容体アゴニストの選択性を測定するための一方法は、Messier ら「High Throughput Assays Of Cloned Adrenergic, Muscarinic, Neurokinin And Neurotrophin Receptors In Living Mammalian Cells(生きた哺乳類細胞におけるクローン化アドレナリン作動性、ムスカリン性、ニューロキニンおよびニューロトロフィン受容体の高スループットアッセイ)」Pharmacol. Toxicol. 76:308-11 (1995) に記載のRSAT(Receptor Selction and Amplification Technology)アッセイを含み、α2受容体用に改造されている。この刊行物は参照により本明細書に組み込まれる。このアッセイでは、コンフルエント細胞の混合集団における受容体含有細胞の選択的増殖をもたらす、接触阻止の受容体媒介性喪失を測定する。細胞数の増加は、96穴形式で容易に測定することができる活性を持つ適当な導入マーカー遺伝子、例えばb−ガラクトシダーゼを使って評価される。Gタンパク質Gqを活性化する受容体はこの応答を引き出す。通常、Giと共役しているα2受容体は、Gq/i52と呼ばれるGi受容体認識ドメインを持つハイブリッドGqタンパク質と同時発現させると、RSAT応答を活性化する。Conklin ら「Substitution Of Three Amino Acids Switches Receptor Specificity Of G q a To That Of G i a(3アミノ酸の置換によりGqaの受容体特異性がGiaの受容体特異性に転換される)」Nature 363:274-6 (1993) を参照されたい。この参考文献は、この記載をもって、参照により本明細書に組み込まれる。
さまざまなαアドレナリン作動性受容体アゴニストが、多種多様な状態および障害の処置に有用であると報告されている。例えば、クロニジンなどのαアドレナリン作動性受容体アゴニストは、全身的および眼降圧剤として、喫煙や薬物濫用などの嗜癖行為からの禁断症状の処置に役立つ薬剤として、そして抗月経困難症剤として、文献記載され、使用されている。もう一つのαアドレナリン作動性受容体アゴニスト、チザニジンは、筋緊張を減少させることによる、多発性硬化症患者における痙縮症状の処置に、使用されている。これらの薬剤は多少の鎮痛活性を持つとも報告されている。
これらの薬剤は有用ではあるが、鎮静、血圧低下や心拍数減少などの心血管作用、および眩暈を含む、時として重篤な副作用がつきまとい、一部の適応症に対するこれらの薬剤の利用可能性は、そのような副作用によって制限されてきた。特に、これらの薬剤は、治療用量反応曲線と鎮静用量反応曲線とが部分的に重なる傾向があり、そのために、生体内では、治療(例えば降圧または鎮痛)活性の出現と同じ用量で、鎮静活性が顕著になり始める。
例えば、限定はしないが、クロニジン、チザニジンおよびデクスメデトミジンなどの化合物は、文献では、おおむね結合研究に基づいて、「α2アドレナリン作動性受容体アゴニスト」であると特徴づけられている。Hieble ら, J. Med Chem. 38:3415 (September 1, 1995) と、Ruffolo ら, J. Med. Chem. 38:3681 (September 15, 1995) も、参照されたい。これらの論文は、この記載をもって、参照により本明細書に組み込まれる。これらの薬剤がα2受容体アゴニストであることは間違いないが、これらの薬剤がかなりの程度のα1受容体アゴニスト活性も有することは、一般的には、あまり認識されていない。また、そのようなα1受容体活性がα2活性に及ぼす影響も、一般には知られていないか、あまり認識されていない。
対照的に、化合物ブリモニジンと、その機能的に類似する2-イミダゾリン-2-イルイミノ誘導体(後述)は、α2受容体に対して、α1受容体サブタイプに対する活性よりも著しく高いアゴニスト活性を示す、α2アゴニストである。
さらに、そのような化合物は現在、α2「汎アゴニスト」であること、すなわちα2A、α2Bおよびα2C受容体サブタイプの刺激において機能的選択性を殆どまたは全く示さないことが知られている。
最近、α2Bおよび/またはα2C受容体サブタイプに選択的または特異的な化合物、並びにそのような化合物のある種の利点が開示された。すなわち例えば米国特許第6,329,369号および第6,313,172号ならびに同じ出願人の係属中米国特許出願第09/778975号、第09/794874号および第10/153328号に、そのような化合物が開示され、それを、痛み、筋肉痙直;痛み;神経変性疾患、脊髄虚血および卒中;記憶および認知障害;精神病、不安および抑鬱;高血圧;鬱血性心不全;心虚血および鼻閉を包含する状態に対して使用することが開示されている。これら文献はいずれも、この記載をもって、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。これら特許において、α2A受容体サブタイプと比較したα2Bまたは2B/2C受容体サブタイプのアゴニストとしての活性の差が、ある化合物について0.3を越え、α2A受容体サブタイプにおけるその活性がα2Bおよび/またはα2C受容体サブタイプにおける活性の約10分の1以下である場合、その化合物は選択的α2Bまたはα2B/2Cアゴニストであるとされている。
CNS障害は神経障害の一タイプである。いくつかのCNS障害は、コリン作用欠乏、ドーパミン作用欠乏、アドレナリン作用欠乏および/またはセロトニン作用欠乏に起因すると考えることができる。比較的よく発生するCNS障害としては、初老期痴呆(早期発症型アルツハイマー病)、老年痴呆(アルツハイマー型痴呆)、およびパーキンソン病を含むパーキンソニズムが挙げられる。
アルツハイマー病に関する現在の理解の土台は、罹患者の脳の一定領域、例えば海馬や大脳皮質などに、神経細胞の喪失を示す証拠が認められたという観察結果に基づいている。1970年代以降、研究者は、これらの瀕死ニューロンの一部がコリン作動性であること、すなわち、それらが、最終的にはアセチルコリンエステラーゼと呼ばれる酵素によって分解される神経伝達物質アセチルコリンを使って情報交換していることを知っていた。Jones, ら, Intern. J. Neurosci. 50:147 (1990)、Perry, Br. Med. Bull. 42: 63 (1986)、および Sitaram ら, Science 201:274 (1978) を参照されたい。
この10年間で利用できるようになったタクリンやドネペジルなどの薬物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。これらの化合物は、アセチルコリンの分解を防止することによって、初期アルツハイマー病の進展を遅らせる。しかし、コリン作動性ニューロンが完全に変性して、アセチルコリン神経伝達物質をもはや産生することができなくなると、これらの薬物は役に立たなくなる。
神経細胞の喪失が認められることの他に、アルツハイマー病を患っている患者の脳は、特徴的に、タンパク質の塊を含んでいる。この蓄積は2つの形式で起こる。すなわち、ニューロンの内部に見いだされるものと、細胞間隙に見いだされるものとがある。細胞内の塊は神経原線維変化と呼ばれ、互いにらせん状に絡み合った線維の対のように見える。分析により、このもつれは、タウタンパク質からなることがわかっている。タウは、微小管形成を担うチューブリンに結合するので、重要である。神経原線維変化の数はこの疾患の重症度と相関するようである。
細胞間タンパク質塊または細胞間タンパク質斑は、β−アミロイドタンパク質の沈着物からできている。近傍のニューロンはしばしば膨潤し変形しているように見え、アミロイド斑は通常、炎症性小膠細胞を伴っている。脳の免疫系の一部である小膠細胞は、損傷を受けたニューロンあるいは斑そのものを分解し除去しようとして、存在しているのだろう。
斑の密度は痴呆の重症度とは弱い相関関係しか示さないので、これらの斑の中または近傍にあるニューロンが正常に機能しているかどうかは不明である。また、そのような斑は、アルツハイマー病の有無とは無関係に、大半の高齢者に存在する。とは言え、それらが海馬および大脳皮質に広範に存在することはアルツハイマー病患者に特異的であり、それらは、神経原線維変化が現れるずっと前に現れる。
β−アミロイド斑は、β−アミロイド前駆体タンパク質(BAPP)と呼ばれる内在性膜タンパク質の42アミノ酸断片を含んでいる。この断片はBAPPタンパク質の2段階切断(最初はβセクレターゼと呼ばれるプロテアーゼよる切断、次はγセクレターゼによる切断)によって生成する。βセクレターゼおよびγセクレターゼの正常切断産物は40アミノ酸ペプチドであるが、これは42アミノ酸誘導体とは異なり、アルツハイマー病の発生または進行には関与しないようである。
パーキンソン病(PD)は、振戦および筋固縮を特徴とする消耗性神経変性疾患であり、その病因はまだわかっていない。この疾患の特徴には、ドーパミン作動性ニューロン(すなわちドーパミンを分泌するもの)の変性、特に中脳の黒質および腹側被蓋領域におけるドーパミン作動性ニューロンの変性が関係しているようである。Rinne ら, Brain Res. 54:167 (1991)および Clark ら, Br. J. Pharm. 85:827(1985) を参照されたい。黒質は、運動および姿勢に関する神経シグナルの調整に関与している。中脳の腹側被蓋野(VTA)は、高次認知機能と関係する脳の領域である前前頭皮質を含む部位に投射するニューロンを含んでいる。
PDを処置するためにいくつかの試みがなされてきた。提案されたPD処置剤の一つはSINEMET(登録商標)である。これはカルビドパとレボドパの混合物を含有する徐放性錠剤であり、DuPont Merck Pharmaceutical Co.から入手することができる。もう一つの提案されたPD処置剤はELDEPRYL(登録商標)である。これは塩酸セレギリンを含有する錠剤であり、Somerset Pharmaceuticals Inc.から入手することができる。もう一つの提案されたPD処置剤はPARLODEL(登録商標)である。これはメシル酸ブロモクリプチンを含有する錠剤であり、Sandoz Pharmaceuticals Corporationから入手することができる。Berliner らの米国特許第5,210,076号では、メラニン療法によってPDおよび他のさまざまな神経変性疾患を処置するもう一つの方法が提案されている。しかし、これらの処置はいずれも、ニューロンを細胞死から保護しないようである。
(発明の概要)
神経損傷部位に局所適用または注射した場合に、ある種の化合物(ブリモニジンのようなある種のαアドレナリン作動性アゴニストを含む)が、視細胞または網膜細胞および脊椎の神経細胞に神経保護活性を提供できることは知られているが、そのような薬剤がアルツハイマー病やパーキンソン病などの脳神経変性状態の処置に有効な薬剤であるだろうとは、今まで考えられたことがなかった。なぜなら、α2Bおよび/またはα2C受容体が脳のそのような領域に豊富に存在するとは、これまで考えられていなかったからである。また、αアドレナリン作動性受容体アゴニストは、局所的処置のために投与される場合、有用な神経保護活性を示すことがわかっていたが、そのような化合物の治療用量での鎮静活性は、非局所外用薬剤または全身性薬剤としてのそれらの有用性を、実際問題として著しく制限してきた。
本出願人は驚くべきことに、ある種のαアドレナリン作動剤が、全身的投与時に、脳の黒質および腹側被蓋野の神経細胞を保護できることを発見した。さらに、そのような薬剤は、その神経保護活性とその鎮静活性との間に、今までに特徴づけられた大半のαアドレナリン作動性アゴニストよりも劇的に広い治療濃度域を持っている。
この薬剤群の中には、α2アゴニスト活性を持つキノキサリン誘導体があり、これは、Danielewicz らの米国特許第3,890,319号および第4,029,792号に初めて治療剤として記載された。これらの特許は、化合物を、以下の式を持つ心血管系の調節剤として開示している。
Figure 2011057700
[式中、2-イミダゾリン-2-イルアミノ基は、キノキサリン核の5位、6位、7位または8位のどこにあってもよい。x、yおよびzは、残っている5位、6位、7位または8位のどこにあってもよく、水素、ハロゲン、C1-5アルキル、C1-5アルコキシまたはトリフルオロメチルから選択することができる。Rは、キノキサリン核の2位または3位にある随意の置換基であり、水素、C1-5アルキルまたはC1-5アルコキシであることができる]。
現時点で有用な化合物は、特許第3,890,319号および特許第4,029,792号に記載の手法に従って製造することができる。
J. A. Burke ら「Ocular Effects of a Relatively Selective Alpha-2 Agonist (UK-14,304-18) in Cats, Rabbits and Monkeys(ネコ、ウサギおよびサルにおける比較的選択的なα2アゴニスト(UK−14,304−18)の眼効果)」Current Eye Rsrch., 5, (9), pp. 665-676 (1986) には、ブリモニジンという一般名を持つ下図のキノキサリン誘導体が、ウサギ、ネコおよびサルにおいて、眼内圧を低下させるのに有効であることが示された。この研究における化合物は実験動物の角膜に局所投与された。
Figure 2011057700
α2受容体アゴニストであるブリモニジンは、局所的または全身的投与した場合に、光受容器および網膜神経節細胞を含む網膜神経細胞を、緑内障、網膜色素変性および加齢黄斑変性などの状態における損傷から保護できることが知られている。
第1の側面として、本発明は、脳の神経変性状態を処置する方法であって、その必要がある哺乳動物の脳に、処置有効量の選択的α2アドレナリン作動性受容体アゴニストを投与することを含む方法に向けられる。
本発明において、「選択的α2アドレナリン作動性受容体アゴニスト」または「選択的α2アゴニスト」とは、α1受容体における効力に対するα2受容体における効力の比が、デクスメデトミジンのそれよりも大きい剤を意味しうる。効力は好ましくはα1受容体よりもα2受容体において少なくとも12倍大きく、より好ましくは25倍大きい。
一態様において、選択的α2アゴニストは、上記式Iの構造を有する2-イミダゾリン-2-イルアミノ化合物である。好ましい態様においては、選択的α2アゴニストはブリモニジンまたはその塩である。
別の一態様において、選択的α2アゴニストはまた、選択的α2Bまたは選択的α2B/2Cアゴニストである。本発明において、「選択的α2Bまたは2B/2Cアゴニスト」または「選択的α2Bまたは2B/2Cアドレナリン作動性受容体アゴニスト」とは、α2B受容体、またはα2Bおよびα2C受容体サブタイプの両方において、α2A受容体サブタイプにおけるよりも少なくとも10倍(好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍)高い効力を示す化合物を意味する。
好ましくは、「選択的」化合物は「特異的」である、すなわち、ある受容体または受容体サブタイプにおけるその化合物の効力が、比較する受容体または受容体サブタイプにおける効力よりも少なくとも100倍(好ましくは少なくとも500倍、より好ましくは少なくとも1000倍)大きい。
本発明においては、与えられた受容体または受容体サブタイプの効力は、上述のRSATアッセイ法を使って決定される。
選択的α2Bおよび2B/2Cアゴニストは、本発明の方法において特に有用である。選択的α2アゴニストは、α1受容体活性を有する同様の化合物と比較して、鎮静用量反応曲線に違いはないがEC50が小さい故に、改善された治療指数を示す(より低い薬剤濃度で治療効果をもたらす)。選択的α2Bまたは2B/2Cアゴニストはさらに、α2A受容体(α2A受容体は、鎮静ならびに心拍数および血圧の低下のような心血管作用をもたらすことを本発明者は見出している)活性が低い故に鎮静活性が低い。このような効果は、化合物が特定の標的に対してただ選択的であるよりも特異的である場合に特に大きい。
もう一つの側面として、本発明は、黒質、青斑および腹側被蓋野から成る群より選択されるを含む脳の一領域にまたは脳の一領域から投射している神経細胞の死または変性を防止する方法であって、前記細胞に選択的α2アドレナリン作動性受容体アゴニストを投与することを含む方法に向けられる。一態様において、選択的αアゴニストはまた、選択的α2Bまたは選択的α2B/2Cアゴニストである。好ましくは、該剤は、特定の標的に対して特異的である。
さらに別の側面として、本発明は、脳の神経変性状態を処置する方法であって、それを必要とする哺乳動物の脳に、処置有効量のα2アドレナリン作動性受容体アゴニストおよびα1受容体アンタゴニストを投与することを含む方法に向けられる。α受容体アンタゴニストをα2受容体アゴニストと組み合わせて使用すると、選択的α2活性を有する組み合わせ処置剤をもたらすことができ、すなわち単一の選択的α2アゴニストとして使用する利点を達成することができる。米国特許出願第10/152,424号(この記載をもって、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
この新しい方法は、予防的処置として施されると、すなわち神経への損傷が起こってしまう前に、またはアルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患状態の長期にわたる進行が起こってしまう前に施されると、とりわけ有効である。本発明の化合物が神経保護に果たす役割に関して特定の理論に束縛されることは望まないが、ここに記載する化合物および方法は、bcl−2ファミリーに属する一定の因子の産生を刺激しうるという仮説を、出願人は立てている。そのような因子の発現量の増加は、それらの産生をコードするmRNAの発現量の増加によって測定されている。これらの因子(bcl−2およびbcl−XL)は、アポトーシスプログラムを抑制することができる。これらの因子は、神経細胞に対する有害な刺激の結果として産生されうるbadやbaxなどのbcl−2アポトーシス因子の存在または誘導を相殺することができる。したがって、神経に細胞生存シグナルを与える本発明の化合物は、細胞死を阻害する化合物と、有利に併用することができると考えられる。そのような細胞死阻害化合物には、過剰なグルタミン酸の興奮毒作用を遮断するNMDAアンタゴニスト、特にメマンチン、一酸化窒素シンテターゼ阻害剤、フリーラジカル捕捉剤およびカルシウムチャネル遮断剤などがある。
処置する哺乳動物に、本発明に有用な化合物を投与する適切な方法は、どれでも使用することができる。どの方法でも、好ましい哺乳動物はヒトである。選択される特定の投与方法は、好ましくは、有用化合物が有効な形で(例えば低い有効濃度および低い副作用発生率で)所望の処置効果を持ちうるような方法である。
本発明の方法に有用な化合物の投与としては、経口投与、非経口投与、静脈内投与、皮下投与および他の全身的投与様式などを挙げることができるが、これらに限るわけではない。化合物は単独で、または医薬的に許容できる適切な担体もしくは賦形剤と組み合わせて、処置有効量で投与される。
意図する投与様式に応じて、例えば錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、溶液剤、注入剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル剤などの医薬的に許容できる任意の剤形に、好ましくは正確な投与量の一回投与に適した剤形、または持続的制御投与用の徐放性剤形に、有用化合物を組み込むことができる。この剤形は、好ましくは、医薬的に許容できる賦形剤と、現時点で有用な化合物または化合物群とを含みうる。また、この剤形はさらに、他の薬、医薬品、担体、佐剤などを含んでもよい。
固形剤形の場合、無毒性固形担体には、例えば医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、ポリアルキレングリコール、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖および炭酸マグネシウムなどがあるが、これらに限るわけではない。本発明を実施するための固形剤形の一例は、担体としてプロピレングリコールを含有する坐剤である。
液状の医薬的に投与可能な剤形は、例えば1つ以上の現時点で有用な化合物と、随意の医薬佐剤とを、例えば水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどの担体に溶解または懸濁することにより、溶液または懸濁液を形成させたものを含むことができる。所望により、投与される医薬組成物は、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などといった少量の無毒性補助物質も含有することができる。そのような補助剤の典型例は、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンなどである。そのような剤形を製造する実際の方法は、当業者には知られているか、明らかであるだろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれる「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン、第16版、1980)を参照されたい。いずれによせ、投与される製剤の組成は、所望の処置効果を与えるのに有効な量の、現時点で有用な化合物の1つ以上を含有する。
非経口投与は、一般的には、皮下注射、筋肉内注射または静脈内注射を特徴とする。注射可能剤は通常の剤形で、液状の溶液剤もしくは懸濁剤として、注射前に液体に溶解もしくは懸濁するのに適した固形剤形として、または乳剤もしくは注入剤として、製造することができる。好適な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。また、所望により、投与される注射可能または注入可能な医薬組成物は、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などといった少量の無毒性補助物質も含有することができる。
投与される有用化合物の量は、もちろん、所望する1つまたは複数の処置効果の詳細、処置対象である哺乳動物、その哺乳動物の状態の重症度および性質、投与方法、使用する1つまたは複数の特定化合物の力価および薬力学、ならびに処方医の判断に依存する。一般的には、処置有効投与量は、好ましくは、約0.5または約1〜約100mg/kg/日の範囲にある。
(発明の詳細な説明)
一側面として、本発明は、脳の神経変性状態を処置する方法であって、その必要がある哺乳動物の脳に、処置有効量の選択的α2アドレナリン作動性受容体アゴニストを投与することを含む方法に向けられる。
これに関連して本出願人は、選択的または特異的α2受容体アゴニストが、α1受容体アゴニスト活性を持つ化合物よりも予想外に高い効力を持つことを発見した。α1アドレナリン作動性受容体の刺激は、当該薬剤の神経保護活性の妨害をもたらすと、本出願人は考えている。例えば、そのような薬剤が持ちうる鎮静効果はいずれも、当該化合物の神経保護活性と同等か、約3倍範囲以内のEC50を持ちうる。したがって、そのような非選択的薬剤がもたらす神経保護活性はいずれも、患者を鎮静させる傾向または患者にとって毒性である傾向を持つであろう濃度で、認められる。これが理由の一つとなって、αアドレナリン作用剤は一般に、神経保護剤としては、薬剤が概して全身的投与されない局所適用(例えば眼科適用)の場合を除いて、過去に使用されたことはなかった。
直接に、または参照により組み込まれる開示によって本明細書中に記載される化合物に加えて、選択的または特異的α2Bまたはα2B/2C活性を有する化合物種は他にも、本出願人の米国特許出願第09/794,874号および第10/153,328号にも記載されている。これら特許出願は、この記載をもって、参照により本明細書中に組み込まれる。
理論に束縛されることは望まないが、本発明の薬剤の神経保護効果はその大半がまたはその全てが、α2Bおよび/またはα2C受容体の刺激によってもたらされると、本出願人は考えている。一般的には、脳は、α2Bまたは2C受容体が豊富であるとは、考えられてこなかった。しかし本出願人は、本発明の薬剤および方法が、脳の黒質および腹側被蓋野から投射するニューロンまたはそこに投射するニューロンに対して、神経保護効果を提供できることを見いだした。そして本出願人は、そのような効果は青斑(皮質に投射する)のニューロンにおいても見られうると考えている。したがって、本明細書に記載の薬剤は、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの状態の処置に有用である。
方法:
オープンフィールド試験
水平(すなわち移動距離)運動と垂直(すなわち「立ち上がり(rear)」)運動とを識別するために2列の光ビームが側面に搭載されている透明なプラスチック製のオープンフィールド箱に、各動物を入れる。周囲条件は低騒音および薄明かりである。箱内での動物の運動を5分間測定し、「ビーム遮断」またはフォトビーム交差の回数およびタイプの記録から計算する。最後のオープンフィールド試験時には、立ち上がりだけを計数し、「サポート有り」または「サポートなし」に分類する。サポート有りの立ち上がりとは、立ち上がりが記録された時に、動物が少なくとも一方の前肢を箱の側壁に置いている場合である。サポートなしの立ち上がりでは、マウスは後肢だけで支えられている。これらの立ち上がりはビデオ記録によって識別される。サポートなしの立ち上がりの回数は、この試験におけるドーパミンニューロン喪失の最も信頼できる尺度である。
尾懸垂試験
マウスを、3回ずつ、毎回約10秒間にわたって、その尾でぶら下げる。各マウスは、机の表面から約30cmの高さに、その尾の根元で、そのマウスが左か右に回転するまでぶら下げる。左回転には0のスコアを与え、右回転には1のスコアを与える。
尾懸垂中の前肢の位置にも注目する。肢の位置に4段階評価のスコアを与える。肢を伸ばしているか頭より上に置いている場合は、0のスコアを与える。肢を抱えているか、体に密着させている場合は、3のスコアを与える。1または2のスコアは、上記の両極の間の相対的段階に割り当てる。後肢の位置も後述のように点数化する。
巣作り
1つの群から得た同じ性別のマウス4匹を1つのプラスチック桶に入れる。紙タオルの条片を8本、きちんと重ねて桶の前におく。その紙タオルからの巣作りを、処置の24時間、48時間、72時間および96時間後に点数化する。スコアは以下のように割り当てる。0=紙が細断され、頭上の覆いを持つ完全な巣に形造られている。1=紙が細断され、頭上の覆いを持たない完全な巣に形造られている。2=紙はわずかに細断されるか噛まれており、一箇所に大雑把に集められている、3=紙はわずかに噛まれているが、集められているようには見えない、4=集められているようには見えない。
ニューロン計数
MPTP注射の55〜60日後の間に、ナトリウムネンブトールを使ってマウスを屠殺する。マウス脳にリン酸緩衝食塩水を灌流した後、ラナ(Lana)の固定液(パラホルムアルデヒドおよびピクリン酸)を灌流する。脳を取り出し、7〜10日間、ラナの固定液中に置く。次に、ビブラトームを使って、脳を50マイクロメーターずつ冠状に切片化する。そして、それらの切片を、ドーパミン合成の律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼに対する抗体で染色する。次に切片を100倍の倍率で検鏡した。SNおよびVTAでの細胞計数のために、組織薄片(ブレグマ後方−2.9mmおよび−3.6mm)を選択した。これらの切片は、それぞれSNの吻側半分の中点および尾側半分の中点にある。2〜6本の神経突起を持つ明瞭に見える各TH標識細胞をニューロンとみなす。各動物の総合平均計数値を、4つの切片(吻側、尾側、左および右)から計算する。4つの切片について平均を求める。SNおよびVTAからのニューロン数について個別の解析を行う。これらの数を反復測定ANOVAを使って解析した後、フィッシャーのHSD法を使って群間効果の検定を行う。
実験手順
ピリジン系毒素、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)の全身性注射を受けたマウスは、黒質(SN)および腹側被蓋野(VTA)中の多数のドーパミン作動性ニューロンを選択的に失う。SNにおけるドーパミン細胞の喪失は、パーキンソン病に見られる臨床状態を模倣している。VTAにおけるそのような細胞の喪失は、これらのニューロンが前頭皮質に投射していることから、パーキンソン病およびアルツハイマー病に見られる認知障害の一因となりうる。
50匹のC57B1/B6型マウス(8〜12週齢)を実験使用前に12〜14日間馴化させる。次にマウスを以下の群に無作為に割り当てる。MPTP+DMSO賦形剤、賦形剤のみ、MPTP+ブリモニジン(3mg/kg/日)、MPTP+AGN197075(3mg/kg/日)、およびMPTP+AGN196923(3mg/kg/日)。
197075の構造は次のとおりである:
Figure 2011057700
この化合物の合成については、米国特許第6,313,172号に記載されている。
196923の構造は次のとおりである:
Figure 2011057700
この化合物の合成については、本出願人の米国特許出願第09/815,362号に記載されている。米国特許第6,313,172号および米国特許出願第09/815,362号は、この記載をもって、参照により本願の一部として組み込まれる。
今説明しているアッセイでは、次に、各マウスを初回オープンフィールド試験および尾懸垂試験にかける。オープンフィールド試験は、最もよく使用されるMPTP処置マウスの行動アッセイであり、黒質からのドーパミン作動性入力の喪失に鋭敏なようである。尾懸垂試験は直接的な線条体損傷に鋭敏である。巣作り試験は前頭皮質からの線条体入力の喪失に鋭敏である。
5つのマウス群のうちの4群に、試験化合物(または化合物を含まない賦形剤)を注入する。これらの注入液は、皮下移植した浸透圧ミニポンプから、0.25マイクロリットル/時間の流速で14日間にわたって投与する。ポンプの移植から3日後に、これらのマウスを、ミニポンプを移植していない対照マウス群と共に、オープンフィールド試験および尾懸垂試験にかける。試験直後に、ポンプ含有マウスには、40mg/kgのMPTPを皮下注射した。次に、すべての群を、MPTP処置の10〜12日後および30〜40日後に、オープンフィールド試験および尾懸垂試験にかける。オープンフィールド試験および尾懸垂試験を、MPTP処置の50〜55日後に行う。
全ての行動試験について、最初に反復測定ANOVAを使って結果を解析した後、フィッシャーのHSD法を使って群間効果の検定を行う。
結果
オープンフィールド試験
MPTP処置の前には、移動距離または立ち上がり回数に関して、5つの群間に有意差はない。
賦形剤群は、MPTP処置後10日および30日で、対照群よりも有意に活動的である。ブリモニジン処置マウスでは、この高い活動性に違いが見られない。したがって、この群と賦形剤群との間に有意差はない。AGN196923は、(賦形剤との比較として)活動量の有意な低下をもたらし、その群のマウスは対照群と区別がつかない。AGN197075群も同方向に同様の傾向を示す。MPTP処置後30日で、AGN化合物はいずれも、賦形剤との有意な差を示さない。
MPTP処置は、MPTPの10日後に、総立ち上がり回数の減少を引き起こすようである。30日後に、総立ち上がり回数に対するMPTP効果はなく(賦形剤群と比較)、対照群に対して立ち上がり回数がわずかに減少するだけである。
MPTP処置後50〜60日で、AGN197075投与マウスのサポートなしの立ち上がりは、賦形剤投与マウスよりも有意に多い。賦形剤群ではサポートなしの立ち上がりが正常マウスより少ない。サポート有りの立ち上がりに対するMPTPまたは化合物の効果はない。
尾懸垂試験
尾懸垂試験において、MPTP処置の前に有意な群差は観察されず、MPTP後も後肢には認められなかった。MPTPOは、障害後の3時点の全てで、前肢の伸長を有意に損なった。したがってこの障害は時間と共に回復しない。AGN197075は、該化合物が投与されている期間中にこの障害を減少させる。AGN196923およびブリモニジンは、そのような傾向を示さない。しかし3化合物はいずれも、投与後(すなわち14日間の化合物投与後)に測定すると、障害を減少させる傾向がある。
ニューロン数
MPTP処置動物は、黒質に、無処置動物よりも58%少ないニューロンを持つ。しかし、ブリモニジン、AGN196923またはAGN197075を投与した動物ではニューロン喪失が有意に少ない。
Figure 2011057700
腹側被蓋野では、MPTPは、対照群と比べてニューロンに28%の平均減少をもたらすことがわかった。各試験化合物(AGN197075、AGN196923およびブリモニジン)はこの喪失を平均で約10%減少させた。
上記の実施例は本発明の好ましい態様を例示するものであって、本発明の範囲を制限しようとするものではない。本発明は特許請求の範囲によって定義される。

Claims (15)

  1. 脳の神経変性状態を処置する方法であって、その必要がある哺乳動物の脳に、選択的α2Bまたは選択的α2B/2Cアドレナリン作動性受容体アゴニストを処置有効量で投与することを含む方法。
  2. 選択的α2Bまたは選択的α2B/2Cアドレナリン作動性受容体アゴニストを、前記哺乳動物の脳に全身的送達によって投与する請求項1に記載の方法。
  3. 前記選択的α2Bまたは選択的α2B/2Cアドレナリン作動性受容体アゴニストの投与が、腹側被蓋野および黒質からなる群より選択される前記哺乳動物の脳の一領域にまたは一領域から投射しているニューロンの死または変性を防止するのに有効である請求項2に記載の方法。
  4. 前記神経変性状態がパーキンソン病である請求項1に記載の方法。
  5. 前記神経変性状態がアルツハイマー病である請求項1に記載の方法。
  6. 前記化合物が、イミダゾリン、チオ尿素、チオン、キノキサリンおよびイミダゾロンからなる群より選択される、置換されていてもよい化合物である請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記選択的α2Bまたは選択的α2B/2Cアドレナリン作動性受容体アゴニスト化合物が、特異的α2Bまたは特異的α2B/2Cアドレナリン作動性受容体アゴニストである請求項1に記載の方法。
  8. 前記化合物が、イミダゾリン、チオ尿素、チオン、キノキサリンおよびイミダゾロンからなる群より選択される、置換されていてもよい化合物である請求項7に記載の方法。
  9. ある程度の処置効力をもたらす前記薬剤の投与に伴う鎮静が、同程度の処置効力をもたらす用量のデクスメデトミジンの投与に伴う鎮静よりも軽い請求項1に記載の方法。
  10. 黒質、青斑および腹側被蓋野からなる群より選択される脳の一領域にまたは一領域から投射している神経細胞の死または変性を防止する方法であって、その必要がある哺乳動物の前記細胞に、選択的α2Bまたは2B/2Cアドレナリン作動性受容体アゴニストを投与することを含む方法。
  11. 選択的α2アドレナリン作動性受容体アゴニストが、デクスメデトミジンよりも、α1受容体との比較において、2Bまたは2B/2Cアドレナリン作動性受容体に少なくとも約12倍選択的である請求項10に記載の方法。
  12. 前記選択的α2受容体アゴニストが、イミダゾリン、チオ尿素、チオン、キノキサリンおよびイミダゾロンからなる群より選択される化合物である請求項11に記載の方法。
  13. 前記選択的α2Bまたはα2B/2C受容体アゴニストが、特異的α2受容体アゴニストである請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 前記選択的α2Bまたはα2B/2C受容体アゴニストが、特異的α2Bまたはα2B/2C受容体アゴニストである請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
  15. 前記特異的α2Bまたはα2B/2C受容体アゴニストが、特異的α2受容体アゴニストである請求項14に記載の方法。
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