以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本件において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板等とも呼ばれ得るような部材や部分も含む概念である。
図1〜図6は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1はタッチパネル装置を表示装置とともに概略的に示す図であり、図2は図1のタッチパネル装置を表示装置とともに示す断面図であり、図3はタッチパネル装置のタッチパネルセンサを示す上面図であり、図4はタッチパネルセンサの具体例を説明するための図である。また、図5A〜図5Hは、図3のタッチパネルセンサを製造するための製造方法を説明するための図である。さらに、図6は、図3のタッチパネルセンサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図1〜図3に示されたタッチパネル装置20は、投影型の静電容量結合方式として構成され、タッチパネル装置への外部導体(例えば、人間の指)の接触位置を検出可能に構成されている。なお、静電容量結合方式のタッチパネル装置10の検出感度が優れている場合には、外部導体がタッチパネル装置に接近しただけで当該外部導体がタッチパネル装置のどの領域に接近しているかを検出することができる。このような現象にともなって、ここで用いる「接触位置」とは、実際には接触していないが位置を検出され得る接近位置を含む概念とする。
図1および図2に示すように、タッチパネル装置20は、表示装置(例えば液晶表示装置)15とともに組み合わせられて用いられ、入出力装置10を構成している。図示された表示装置15は、フラットパネルディスプレイとして構成されている。表示装置15は、表示面16aを有した表示パネル16と、表示パネル16に接続された表示制御部17と、を有している。表示パネル16は、映像を表示することができる表示領域A1と、表示領域A1を取り囲むようにして表示領域A1の外側に配置された非表示領域A2と、を含んでいる。表示制御部17は、表示されるべき映像に関する情報を処理し、映像情報に基づいて表示パネル16を駆動する。表示パネル16は、表示制御部17の制御信号により、所定の映像を表示面16aに表示するようになる。すなわち、表示装置15は、文字や図等の情報を映像として出力する出力装置として役割を担っている。
一方、タッチパネル装置20は、表示装置10の表示面16a上に配置されたタッチパネルセンサ30と、タッチパネルセンサ30に接続された検出制御部25と、を有している。図2に示すように、タッチパネルセンサ30は、表示装置10の表示面16a上に接着層19を介して接着されている。上述したように、タッチパネル装置20は、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成されており、情報を入力する入力装置としての役割を担っている。
また、図2に示すように、タッチパネル装置20は、タッチパネルセンサ30の観察者側、すなわち、表示装置10とは反対の側に、誘電体として機能する透光性を有した保護カバー12をさらに有している。保護カバー12は、タッチパネルセンサ30上に接着層14を介して接着されている。この保護カバー12は、タッチパネル装置20への入力面(タッチ面、接触面)として機能するようになる。つまり、保護カバー12に導体、例えば人間の指5を接触させることにより、タッチパネル装置20に対して外部から情報を入力することができるようになっている。また、保護カバー12は、入出力装置10の最観察者側面をなしており、入出力装置10において、タッチパネル装置20および表示装置15を外部から保護するカバーとしも機能する。
なお、上述した接着層14,19としては、種々の接着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、本明細書において、「接着(層)」は粘着(層)をも含む概念として用いる。
タッチパネル装置20の検出制御部25は、タッチパネルセンサ30に接続され、保護カバー12を介して入力された情報を処理する。具体的には、検出制御部25は、保護カバー12へ導体(典型的には、人間の指)5が接触している際に、保護カバー12への導体5の接触位置を特定し得るように構成された回路(検出回路)を含んでいる。また、検出制御部25は、表示装置15の表示制御部17と接続され、処理した入力情報を表示制御部17へ送信することもできる。この際、表示制御部17は、入力情報に基づいた映像情報を作成し、入力情報に対応した映像を表示パネル16に表示させることができる。
なお、「容量結合」方式および「投影型」の容量結合方式との用語は、タッチパネルの技術分野で用いられる際の意味と同様の意味を有するものとして、本件においても用いている。なお、「容量結合」方式は、タッチパネルの技術分野において「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等とも呼ばれており、本件では、これらの「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等と同義の用語として取り扱う。典型的な静電容量結合方式のタッチパネル装置は導電体層を含んでおり、外部の導体(典型的には人間の指)がタッチパネルに接触することにより、外部の導体とタッチパネル装置の導電体層との間でコンデンサ(静電容量)が形成されるようになる。そして、このコンデンサの形成にともなった電気的な状態の変化に基づき、タッチパネル上において外部導体が接触している位置の位置座標が特定されるようになる。また、「投影型」の容量結合方式は、タッチパネルの技術分野において「投影式」の容量結合方式等とも呼ばれており、本件では、この「投影式」の容量結合方式等と同義の用語として取り扱う。「投影型」の容量結合方式とは、典型的には、格子状に配列された電極を有し、膜状の電極を有する「表面型」の容量結合方式と対比され得る。
図2によく示されているように、タッチパネルセンサ30は、基材フィルム32と、基材フィルム32の一方の側(観察者側)の面32a上に設けられた第1電極部40と、基材フィルム32の他方の側(表示装置15の側)の面32b上に設けられた第2電極部45と、を有している。第1電極部40は、基材フィルム32の一方の側(観察者側)の面32a上に所定のパターンで配置された第1導電体41を有している。第2電極部45は、基材フィルム32の他方の側(表示装置15の側)の面32b上に所定のパターンで配置された第2導電体46を有している。タッチパネルセンサ30は、上述したように、表示装置15の表示パネル16上に配置されている。基材フィルム32、第1導電体41および第2導電体46は、透光性を有しており、観察者は、これらを介して、表示装置15に表示された映像を観察することができる。
基材フィルム32は、タッチパネルセンサ20において誘電体として機能し、例えば、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)から構成され得る。
本実施の形態において、基材フィルム32は、単一体としてフィルムによって形成されている。ここで「単一体」とは、二以上に分離不可能なことを意味している。したがって、単一体としてのフィルムとは、接着層を介して接合されてなる複数枚のフィルムの接合体を含まない。その一方で、フィルム本体と、フィルム本体の一方の面上または両方の面上に例えばスパッタリング等により分離不可能(ただし、除去は可能)に成膜された機能膜と、を含む基材フィルムは、ここでいう単一体からなるフィルムに該当する。図4(a)および図4(b)には、機能膜とフィルム本体とからなる基材フィルムの一例が示されている。
図4(a)に示す例において、基材フィルム32は、樹脂(例えば、PET)からなるフィルム本体33と、フィルム本体33の一方または両方の面上に形成されたインデックスマッチング膜34と、を有している。インデックスマッチング膜34は、交互に配置された複数の高屈折率膜34aおよび低屈折率膜34bを含んでいる。このインデックスマッチング膜34によれば、基材フィルム32のフィルム本体33と電極部40,45との屈折率が大きく異なっていたとしても、基材フィルム32上の電極部40,45が設けられている領域と、設けられていない領域と、で反射率が大きく変化してしまうことを防止することができる。
また、図4(b)に示す例において、基材フィルム32は、樹脂(例えば、PET)からなるフィルム本体33と、フィルム本体33の一方または両方の面上に形成された低屈折率膜35と、を有している。この低屈折率膜35によれば、基材フィルム32のフィルム本体33と電極部40,45との屈折率が大きく異なっていたとしても、基材フィルム32上の電極部40,45が設けられている領域と、設けられていない領域と、で透過率のスペクトル特性が大きく変化してしまうことを防止し、各波長域で均一な透過率を実現することが可能となる。
第1導電体41および第2導電体46は、導電性を有した材料(例えば、ITO(酸化インジウムスズ))から形成され、外部導体5の保護カバー12への接触位置を検出するように構成された検出制御部25の検出回路に電気的に接続されている。図3に示すように、第1導電体41は、基材フィルム32のフィルム面に沿った一方向に並べて配列された複数の線状導電体からなっている。また、第2導電体46は、前記一方向と交差する基材フィルム32のフィルム面に沿った他方向に並べて配列された複数の線状導電体からなっている。本実施の形態において、第1導電体41の配列方向である一方向と、第2導電体46の配列方向である他方向と、は基材フィルム32のフィルム面上において直交している。
図3に示すように、第1電極部40に含まれる多数の第1導電体41の各々は、その配列方向(前記一方向)と交差する方向に線状に延びている。同様に、第2電極部45に含まれる多数の第2導電体46の各々は、その配列方向(前記他方向)と交差する方向に線状に延びている。とりわけ図示する例において、第1電極部40に含まれる各第1導電体41は、その配列方向(前記一方向)と直交する方向(前記他方向)に沿って直線状に延びており、第2電極部45に含まれる各第2導電体46は、その配列方向(前記他方向)と直交する方向(前記一方向)に沿って直線状に延びている。
本実施の形態において、第1電極部40に含まれる第1導電体41は、直線状に延びるライン部42と、ライン部42から膨出した膨出部43と、を有している。図示する例において、ライン部42は、第1導電体41の配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部43は、基材フィルム32のフィルム面に沿ってライン部42から膨らみ出ている部分である。したがって、第1導電体41の幅は、膨出部43が設けられている部分において太くなっている。図3に示すように、本実施の形態において、第1導電体41は、膨出部43において平面視略正方形形状の外輪郭を有するようになっている。
第2電極部45に含まれる第2導電体46も、第1電極部40に含まれる第1導電体41と同様に構成されている。すなわち、第2電極部45に含まれる第2導電体46は、直線状に延びるライン部47と、ライン部47から膨出した膨出部48と、を有している。図示する例において、ライン部47は、第2導電体46の配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部48は、基材フィルム32のフィルム面に沿ってライン部47から膨らみ出ている部分である。したがって、第2導電体46の幅は、膨出部48が設けられている部分において太くなっている。図3に示すように、本実施の形態において、第2導電体46は、膨出部48において平面視略正方形形状の外輪郭を有するようになっている。
なお、図3に示すように、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合(すなわち、平面視において)、第1電極部40に含まれる各第1導電体41は、第2電極部45に含まれる多数の第2導電体46と交差している。そして、図3に示すように、第1電極部40の膨出部43は、第1導電体41上において、隣り合う二つの第2導電体46との交差点の間に配置されている。同様に、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合、第2電極部45に含まれる各第2導電体46は、第1電極部40に含まれる多数の第1導電体41と交差している。そして、第2電極部45の膨出部48も、第2導電体46上において、隣り合う二つの第1導電体41との交差点の間に配置されている。さらに、本実施の形態において、第1電極部40に含まれる第1導電体41の膨出部43と、第2電極部45に含まれる第2導電体46の膨出部48とは、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合に重ならないように配置されている。つまり、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合、第1電極部40に含まれる第1導電体41と第2電極部45に含まれる第2導電体46とは、各導電体41,46のライン部42、47のみにおいて交わっている。
また、図3に示すように、基材フィルム32の一方の側の面32aおよび他方の側の面32bに、導電性を有した外部取り出し線36が形成されている。外部取り出し線36は、電極部40,45の各導電体41,46のそれぞれに対し、接触位置の検出方法に応じて一つまたは二つ設けられる。外部取り出し線36は、導電性を有した材料から形成されている。そして、各導電体41,46の両端に、対応する外部取り出し線36の一端がそれぞれ電気的に接続されている(図3参照)。また、各外部取り出し線36は、その他端において、外部導体の表示面12への接触位置を検出するように構成された検出制御部25の検出回路に電気的に接続されている。つまり、電極部40,45の導電体41,46は、外部取り出し線36を介して、接触位置を検出する検出回路に電気的に接続されている。なお、外部取り出し線36は、基材フィルム32上において、非表示領域A2内を延びており、表示領域A1内を延びていない。したがって、外部取り出し線36は、透光性を有した材料から形成される必要はなく、高い導電性を有した金属、例えば銀や銅から形成され得る。
次に、以上のような構成からなるタッチパネルセンサ30を図6に示すフローチャートにしたがって製造していく方法について、図5A〜図5Hを参照しながら説明する。なお、図5A〜図5Hの各図において、図(a)は、作製中のタッチパネルセンサ(積層体)を、図3におけるV−V線に沿った断面に対応する断面において示している。また、図5A〜図5Hの各図において、図(b)は、作製中のタッチパネルセンサ(積層体)を、一方の側(各図(a)の紙面における上側)から示す上面図である。
まず、図6および図5Aに示すように、タッチパネルセンサ30を製造するための元材としての積層体(ブランクスとも呼ばれる)50を準備する(工程S1)。この積層体50に成膜やパターニング等の処理(加工)を行っていくことにより、タッチパネルセンサ30が得られるようになる。
図5A(a)に示すように、本実施の形態において準備される積層体50は、透光性を有する基材フィルム32と、基材フィルム32の一方の側の面32a上に積層され透光性を有する第1導電層52aと、基材フィルム32の他方の側の面32b上に積層され透光性を有する第2導電層52bと、第1導電層52a上に積層され遮光性を有する遮光層54と、を有している。
上述したように、基材フィルム32として、PETフィルム等の樹脂フィルムを用いることができる。また、図4(a)および図4(b)に示すように、PET等の樹脂製のフィルム本体33と、フィルム本体33の一方の面または両方の面上に形成された機能膜34,35と、を有する基材フィルム32を用いてもよい。
第1導電層52aおよび第2導電層52bは、後述するように、それぞれ、パターニングされて透光性を有した第1電極部40および第2電極部45を形成するようになる。したがって、第1導電層52aおよび第2導電層52bは、透光性および導電性を有した材料から形成される。具体例として、第1導電層52aおよび第2導電層52bは、スパッタリングによって基材フィルム32の表面32a,32bに成膜されたITO膜として構成され得る。
また、遮光層54は、後述する感光層56a,56bの露光に用いられる光に対する遮光性を有する層、つまり、当該露光光を透過させない性質を有する層である。ただし、本実施の形態においては、感光層56a,56bの露光光に対してのみでなくその他の波長域の光に対する遮光性を有した層、より具体的には、自然光に含まれ得る可視光、紫外線、赤外線等に対する遮光性を有した層として形成されている。このような層を遮光層54として用いれば、より確実に露光光を遮光することを期待することができる。このような遮光層54をなす材料としては、種々の材料が知られており、コスト面および加工の容易性等を考慮して、アルミニウム、モリブデン、銀、クロム、銅等の金属を用いることができる。金属からなる遮光層54は、スパッタリングによって第1導電層52aの一方の側(基材フィルム32とは反対の側)の面に成膜され得る。
なお、枚葉状の積層体50が準備されてもよいし、あるいは、細長いウェブ状の積層体50、例えばロールに巻き取られた積層体50が準備されてもよい。ただし、生産効率を考慮すると、異なる場所で作製されるとともにロールに巻き取られた積層体50が準備され、ロール状の積層体50を巻き戻していくことによってウェブ状の積層体50が供給されていき、以下に説明する各工程が供給されていくウェブ状の積層体50に対して施されていくことが好ましい。あるいは、基材フィルム32を巻き取ったロールから当該基材フィルム32が繰り出されていき、又は、基材フィルム32並びに第1および第2の導電層52a,52bからなる中間積層体を巻き取ったロールから当該中間積層体が繰り出されていき、当該基材フィルム32または当該中間積層体から積層体50が作製されていくとともに、作製された積層体50に対して以下に説明する各工程が施されていくことも好ましい。
次に、図6および図5Bに示すように、積層体50の一方の側の面50a上に第1感光層56aを形成するとともに、積層体50の他方の側の面50b上に第2感光層56bを形成する(工程S2)。第1感光層56aおよび第2感光層56bは、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有している。具体的には、積層体50の表面上にコーターを用いて感光性材料をコーティングすることによって、感光層56a,56bを形成することができる。
その後、図6および図5Cに示すように、第1感光層56aおよび第2感光層56bを同時に露光する(工程S3)。
具体的には、まず、図5C(a)に示すように、第1感光層56a上に第1マスク58aを配置するとともに、第2感光層56b上に第2マスク58bを配置する。第1マスク58aは、形成されるべき第1電極部40の第1導電体41のパターンに対応した所定のパターンを有し、第2マスク58bは、形成されるべき第2電極部45の第2導電体46のパターンに対応した所定のパターンを有している。また、第1マスク58aのパターンと第2マスク58bのパターンは、互いに異なるパターンとなっている。
次に、図5C(a)に示すように、この状態で、第1感光層58aおよび第2感光層58bの感光特性に対応した露光光(例えば、紫外線)を、マスク58a,58bをマスクとして感光層56a,56bに照射する。この結果、第1感光層56aおよび第2感光層56bが互いに異なるパターンで同時に露光される。
図示された例においては、第1感光層56aおよび第2感光層56bがポジ型の感光層となっている。したがって、第1感光層56aは、第1電極部40の第1導電体41を形成するためにエッチングで除去される部分のパターンに対応したパターンで露光光を照射され、第2感光層56bは、第2電極部45の第2導電体46を形成するためにエッチングで除去される部分のパターンに対応したパターンで露光光を照射される。図5C(a)に示すように、第1感光層56aに照射された露光光は第1感光層56aを透過して積層体(ブランクス)50に照射され、第2感光層56bに照射された露光光は第2感光層56bを透過して積層体50に照射される。
ただし、積層体50は露光光を遮光する遮光層54を有している。したがって、第1感光層56aを透過した露光光源からの光は遮光層54によって遮光され第2感光層56bに到達することはなく、同様に、第2感光層56bを透過した露光光源からの光は遮光層54によって遮光され第1感光層56aに到達することはない。つまり、第1感光層56aを露光するために所定のパターンで照射される露光光が遮光層54によって遮光されるため、当該所定のパターンの露光光が第2感光層56bに照射されることはない。同様に、第2感光層56bを露光するために所定のパターンで照射される露光光が遮光層54によって遮光されるため、当該所定のパターンの露光光が第1感光層56aに照射されることはない。この結果、この露光工程S3において、第1感光層56aおよび第2感光層56bを、それぞれ所望のパターンで精度良く同時に露光することができる。
次に、図6および図5Dに示すように、露光された第1感光層56aおよび第2感光層56bを現像する(工程S4)。具体的には、第1感光層56aおよび第2感光層56bに対応した現像液を用意し、この現像液を用いて、第1感光層56aおよび第2感光層56bを現像する。これにより、図5Dに示すように、第1感光層56aおよび第2感光層56bのうちの、第1マスク58aおよび第2マスク58bによって遮光されることなく露光光源からの光を照射された部分が除去され、第1感光層56aおよび第2感光層56bが所定のパターンにパターニングされる。
その後、図6および図5Eに示すように、パターニングされた第1感光層56aをマスクとして遮光層54をエッチングする(工程S5)。このエッチングにより、遮光層54が、第1感光層56aのパターンと略同一のパターンにパターニングされる。例えば、遮光層54がアルミニウムやモリブデンからなる場合には、燐酸、硝酸、酢酸、水を5:5:5:1の割合で配合してなる燐硝酢酸(水)をエッチング液として用いることができる。また、遮光層54が銀からなる場合には、燐酸、硝酸、酢酸、水を4:1:4:4の割合で配合してなる燐硝酢酸(水)をエッチング液として用いることができる。さらに、遮光層54がクロムからなる場合には、硝酸セリウムアンモニウム、過塩素酸、水を17:4:70の割合で配合してなるエッチング液を用いることができる。
次に、図6および図5Fに示すように、パターニングされた第1感光層56aおよび遮光層54をマスクとして、第1導電層52aをエッチングするとともに、パターニングされた第2感光層56bをマスクとして、第2導電層52bをエッチングする(工程S6)。例えば、塩化第二鉄をエッチング液として用いることにより、ITOからなる第1導電層52aが第1感光層56aおよび遮光層54のパターンと略同一のパターンにパターニングされるとともに、ITOからなる第2導電層52bが第2感光層56bのパターンと略同一のパターンにパターニングされる。すなわち、第1導電層52aおよび第2導電層52bが両面同時にエッチングされる。
その後、図6および図5Gに示すように、パターニングされて遮光層54上に残留している第1感光層56a、および、パターニングされて第2導電層52b上に残留している第2感光層56bを除去する(工程S7)。例えば、2%水酸化カリウム等のアルカリ液を用いることにより、残留している第1感光層56aが除去され、パターニングされた遮光層54が露出するとともに、残留している第2感光層56bが除去され、パターニングされた第2導電層52bが露出するようになる。露出した第2導電層52bは、所定のパターンを有し第2電極部45を構成する。
次に、図6および図5Hに示すように、パターニングされて第1導電層52a上に残留している遮光層54を除去する(工程S8)。遮光層54が除去されると、パターニングされた第1導電層52aが露出するようになる。露出した第1導電層52aは、所定のパターンを有し第1電極部40を構成する。これにより、基材フィルム32並びに第1および第2の電極部40,45を有するタッチパネルセンサ30が形成される。なお、遮光層54の除去には、上述の遮光層54をエッチングする工程S5において使用され得るエッチング液を用いることができる。
最後に、例えばスクリーン印刷によって、第1電極部40および第2電極部45と導通した外部取り出し線36を形成することにより、図3に示された外部取り出し線36を有するタッチパネルセンサ30が得られる。
なお、上述したように、基材フィルム32、積層体50、あるいは、基材フィルム32並びに第1および第2導電層52a,52bからなる中間積層体等の元材がウェブ状であるとともにロールに巻き取られた状態で準備される場合には、ロールからウェブ状の元材を繰り出すとともに、繰り出された元材に対して上述の各工程を施していくようにしてもよい。この場合、多数のタッチパネルセンサ30が基材フィルム32を介して互いに接続された状態で形成されていくようになる。そして、このようにして作製されたウェブ状のタッチパネルセンサ30は、取り扱い(搬送や出荷等)の便宜上、保護用の合紙と重ね合わせてロールに巻き取られるようにしてもよい。ロールに巻き取られたタッチパネルセンサ30は、必要に応じて、当該ロールから繰り出されるとともに枚葉状に断裁され得る。
なお、ウェブ状のタッチパネルセンサ30をロールに巻き取る際には、ウェブ状のタッチパネルセンサ30の両側に合紙を配置して巻き取ってもよいし、あるいは、ウェブ状のタッチパネルセンサ30の片側だけに合紙を配置して巻き取ってもよい。また、以上に説明した各工程のいくつかが施されていない状態、例えば、外部取り出し線36の形成が行われていない状態で、ウェブ状のタッチパネルセンサ30をロールに巻き取るようにしてもよい。この場合、必要に応じて、ウェブ状のタッチパネルセンサ30がロールから巻き戻され、当該巻き戻されたタッチパネルセンサ30に対して、未実施の処理(例えば、外部取り出し線36の形成)や断裁処理等が施されるようにしてもよい。
以上に説明した製造方法によれば、第1感光層56aおよび第2感光層56bが同時に露光される。この感光層の両面同時露光プロセスにおいては、第1マスク58aおよび第2マスク58bのそれぞれにアライメントマーク(位置決めマーク)58cを設けておくことにより、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して、例えばミクロン単位のオーダーで極めて精度良く、且つ、極めて容易に(したがって、短時間で)位置決めすることが可能となる。この結果、タッチパネルセンサ30において、第1電極部40および第2電極部45の両方が基材フィルム32上に極めて精度良く効率的に位置決めされるようになる。
その一方で、第1感光層56aおよび第2感光層56bを一つずつ順に露光する場合には、精度良く且つ容易に、第1電極部40および第2電極部45を作製することができない。第1電極部40および第2電極部45の両方を精度良く作製しようとすると、第1電極部40および第2電極部45の一方をアライメントマークとともに基材フィルム32上に形成し、その後、この基材フィルム32上に形成されたアライメントマークに対し、第1電極部40および第2電極部45の他方の形成に用いられるマスクを位置決めすることになる。すなわち、少なくとも露光工程および現像工程を、第1感光層56aおよび第2感光層56bのそれぞれに対して別個に行う必要が生じる。このため、第1電極部40および第2電極部45を効率良く短時間で容易に形成することができない。
また、アライメントマークを用いることなく、例えば基材フィルム32の端部を基準として第1マスク58aおよび第2マスク58bを位置決めしながら第1電極部40および第2電極部45を露光することも可能である。この方法によれば、第1感光層56aおよび第2感光層56bに対する露光工程および現像工程を同時に行うことができる。しかしながら、第1電極部40および第2電極部45の位置決め精度は、基材フィルム32の外形精度に依存してしまう。一般的に、この方法によれば、第1電極部40および第2電極部45の位置決め精度は、最高でも数十ミクロン単位でしか期待することができない。
これらのことから、以上に説明してきた本実施の形態の製造方法によれば、第1電極部40および第2電極部45を互いに対して容易かつ精度良く位置決めすることができる。具体的には、本実施の形態によれば、タッチパネルセンサ30の上面視において、つまり、タッチパネルセンサ30をその法線方向から観察した場合、第1電極部40の略正方形形状からなる膨出部43と、第2電極部45の略正方形形状からなる膨出部48と、の互いに平行な外輪郭の隙間G(パターンギャップとも呼ばれる、図3参照)を、安定して、100μm以下とすることができた。その一方で、従来の二枚のフィルムを貼り合わせる方法では、このパターンギャップGは、200μm以上となってしまう。この結果、本実施の形態によれば、接触(接近)位置を検出し得る全領域(アクティブエリアとも呼ばれる)に対する、タッチパネルセンサ30をその法線方向から観察した場合に第1導電体41および第2導電体46の少なくとも一方が配置されている領域の割合を、百分率で、95%以上にすることができた。なお、本実施の形態にように、タッチパネルセンサ30が表示装置15の表示面16a上に配置されて用いられる場合には、タッチパネルセンサ30のアクティブエリアは、通常、表示装置15の表示領域A1に対面する領域として設定される。
また、ITO等に代表される透明な導電体は、一般的に、基材フィルムに好適に用いられる安価な透明樹脂と比較して、非常に大きな屈折率を有するようになる。このため、基材フィルム上における透明導電体のパターンが視認されてしまうという不具合が生じ得る。
一方、以上に説明してきた本実施の形態の製造方法によれば、電極部40の導電体41の端部における輪郭が、基材32のフィルム面の法線方向に対して45°以上90°未満の角度をなすようにすることができる。すなわち、電極部40,45の導電体41は、基材フィルム32へなだらかに接続するようになる。これにより、電極部40の導電体41の存在を目立たなくさせることができる。とりわけ、上述のように基材32のフィルム面の法線方向に対してなす導電体41の端部における輪郭の傾斜角度が45°以上であると、極めて効果的に電極部40の導電体41を不可視化させることができる。この結果、表示装置10の表示面16a上にタッチパネル装置20のタッチパネルセンサ30を配置した場合に、表示装置10が表示する映像の画質を劣化させてしまうことを極めて効果的に抑制することが可能となる。
以下、上述した製造方法で電極部40を形成した場合に、端部における輪郭の傾斜角度θeが大きくなる推定メカニズムについて、主に図7Aを参照しながら、説明するが、本発明はこの推定メカニズムに限定されるものではない。
従来の二枚のフィルムを貼り合わせてタッチパネルセンサを作製する方法において、フォトリソグラフィー技術を用いてフィルム上に電極を形成する場合、電極をなす導電層上に感光層が直接配置されるようになる。一方、本実施の形態によれば、第1電極部40をなすようになる第1導電層52a上に遮光層54が配置されている。一般的に、透明導電層に用いられるエッチング液(例えば、塩化第二鉄)に対し、感光層(レジスト層)は高い耐浸食性を有する。そして、このエッチング液に対する耐浸食性は、通常、金属等からなる遮光層54よりも、感光層の方がより高くなる。したがって、導電層52aをエッチングする工程S6において、導電層52aが縦方向(基材フィルムの法線方向)にエッチングされるとともに、遮光層54が横方向(基材フィルム32のシート面に沿った方向)にエッチングされる。このような遮光層54の横方向への浸食にともない、導電層52aがエッチングされる領域もしだいに広がっていく。一方、感光層は、この工程S6で用いられるエッチング液に対して高い耐浸食性を有しているため、図7Aおよび図7Bに示すように、横方向へ大きくエッチングされることはない。以上のような理由から、本実施の形態の製造方法で作製されたタッチパネルセンサ30によれば、従来と比較して、電極部40の線状導電体41の輪郭の端部における傾斜角度を大きくすること、具体的には、45°以上にすることができる、ものと推測される。
なお、本明細書において、電極部の導電体の輪郭の端部における傾斜角度θeとは、線状導電体の長手方向に直交するとともに基材フィルムの法線方向へ平行な断面(図7Aに示された断面)において、導電体の外輪郭のうちの基材フィルムに接続する位置P1と厚みが減少し始める位置P2とを結ぶ直線Leと、基材フィルムのフィルム面に対する法線方向ndと、によってなされる角度とする。
以上のようにして得られたタッチパネルセンサ30を表示装置15に接着層19を介して接合するとともに、保護カバー12をタッチパネルセンサ30に接着層15を介して接合することにより、図1および図2に示された入出力装置10が得られる。次に、この入出力装置10を使用する際の作用について説明する。
まず、このような入出力装置10においては、表示装置15の表示パネル16によって映像を表示することによって、観察者は、保護カバー12およびタッチパネルセンサ30を介して映像を観察することができる。
また、この入出力装置10において、タッチパネルセンサ30および保護カバー12がタッチパネル装置20の一部分を構成し、外部導体5、典型的には人間の指5が保護カバー12上に接触(接近)したこと検知することができるとともに、保護カバー12上における外部導体5が接触(接近)した位置を検出することができる。
具体的には、まず、外部の導体(例えば、人間の指)5が保護カバー12に接触すると、当該外部導体5と、外部導体5による保護カバー12への接触位置の近傍に位置する電極部40,45の各導電体41,46と、が電極として機能し、電界が形成される。この際、外部導体5と各導電体41,46との間に位置する保護カバー12および基材フィルム32等は誘電体として機能する。すなわち、外部導体5が保護カバー12に接触することにより、外部導体5と電極部40,45とを電極とするコンデンサが形成される。
タッチパネル装置20の検出制御部25の検出回路は、各導電体41,46に接続され、各導電体41,46と外部導体5との間の静電容量を検出することができるようになっている。そして、検出制御部25が、各導電体41,46と外部導体5との間の静電容量の変化を検出することによって、外部導体5が第1電極部40のいずれの第1導電体41に対面しているか、並びに、外部導体5が第2電極部45のいずれの第2導電体46に対面しているかを特定することができる。
すなわち、検出制御部25の検出回路は、前記一方向に並べて配列された第1電極部40に含まれる第1導電体41のうちの外部導体5と対面している線状導電体を特定することによって、前記一方向に延びる座標軸上における外部導体5の位置を特定することができる。同様に、検出制御部25の検出回路は、前記他方向に並べて配列された第2電極部45に含まれる第2導電体46のうちの外部導体5と対面している線状導電体を特定することによって、前記他方向に延びる座標軸上における外部導体5の位置を特定することができる。このようにして、タッチパネル装置20(保護カバー12)への外部導体5の接触位置を二つの方向において検出することにより、外部導体5のタッチパネル装置20の表面への接触位置の位置座標を、タッチパネル装置20の表面上で精度良く特定することができる。なお、投影型容量結合方式のタッチパネルにおいて接触位置を検出する様々な方法(原理)が、種々の文献に開示されており、本明細書では、これ以上の説明を省略する。
上述の製造方法にしたがって作製されたタッチパネルセンサ30においては、第1電極部40および第2電極部45が単一体としての基材フィルム32の両側に形成されている。すなわち、接着剤等を介して接合された複数枚のフィルムの接合体等を基材フィルムとして用いていない。この結果、タッチパネルセンサ30全体としての透光率を向上させることができる。さらに、照明等の環境光(外光)や映像光等を反射し得る界面の数を減じることができるので、環境光の反射を抑制して表示装置15に表示される映像のコントラストを向上させることができる。これらにより、タッチパネルセンサ30を表示装置10の表示面16上に配置した場合に、表示装置10の表示画像を大きく劣化させてしまうことを防止することができる。さらに、タッチパネルセンサ30および入出力装置10の総厚みを減じることができる。
また、図2に示すように、第1電極部40および第2電極部45は、タッチパネルセンサ30(保護カバー12)の法線方向に沿って異なる位置に配置されている。具体的には、第2電極部45は、第1電極部40よりも保護カバー12から基材フィルム32の厚み分だけ離間した位置に配置されている。しかしながら、上述したように、本実施の形態において、基材フィルム32は単一体のフィルムとして構成されている。そして、この基材フィルム32は、上述した特許文献(特開平4−264613号公報)に開示された基材フィルムとは異なり、遠紫外線遮光機能等の特別な機能を要求されておらず、これにより、厚みの薄いフィルムから構成され得る。したがって、外部導体5が保護カバー12へ接触した際に、当該外部導体5と第2電極部45の第2導電体46との間でコンデンサを安定して形成することができるようになる。これにより、外部導体5の保護カバー12への接触位置(タッチ位置)を、第1電極部40の第1導電体41だけでなく、第2電極部45の第2導電体46によっても、極めて感度良く正確に検出することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、図3に示すように、第1電極部40の第1導電体41はライン部42と膨出部43とを有し、第2電極部45の第2導電体46はライン部47と膨出部48とを有している。各導電体41,46において、膨出部43,48における幅は、ライン部42,47における幅と比較して非常に太くなっている。そして、上述したように、第1電極部40に含まれる第1導電体41の膨出部43と、第2電極部45に含まれる第2導電体46の膨出部48とは、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合に重ならないように配置されている。このため、第1電極部40の第1導電体41が、接触位置の検出精度に影響を与え得る程度の広い面積で、外部導体5と第2電極部45の第2導電体46との間に介在することはない。この結果、外部導体5と第2電極部45との間で、コンデンサが有効に形成されなくなることを防止することができる。
さらに、上述したように、表示装置15の表示制御部17とタッチパネル装置20の検出制御部25とは接続されている。検出制御部25は、外部導体5が保護カバー12上の所定の位置に接触することによって入力された情報を、表示制御部17へ送信することができる。表示制御部17は、検出制御部25で読み取られた入力情報に基づいて、当該入力情報に対応した映像を表示装置15の表示パネル16に表示することもできる。すなわち、出力手段としての表示機能および入力手段としてのタッチ位置検出機能により、入出力装置10の使用者(操作者)と当該入出力装置10との間で、対話形式での情報の直接的なやりとり(例えば、使用者の表示装置10に対する指示および表示装置10による当該指示の実行)を実現することができる。
そして、上述したように、第1電極部40および第2電極部45が同時露光プロセスを経て基材フィルム32上にパターニングされている場合、第1電極部40の各第1導電体41および第2電極部45の各第2導電体46が互いに対して精度良く位置決めされるようになる。結果として、第1電極部40の各第1導電体41および第2電極部45の各第2導電体46の両方を、表示装置15に対しても精度良く位置決めすることが可能となる。この場合、外部導体5の保護カバー12への接触位置を表示装置15を基準として精度良く検出することができる。この結果、表示装置15に表示される映像情報に対応した入力を高分解能で高精度に検出することができ、これにより、入出力装置10の使用者(操作者)と当該入出力装置10との間での対話形式での情報交換が極めて円滑に進められるようになる。
以上のような本実施の形態によれば、感光性を有した第1感光層56aおよび第2感光層56bとの間に、遮光性を有した遮光層54が配置されている。したがって、第1感光層56aおよび第2感光層56bを、異なるパターンで、高精度に露光することができ、これにより、第1感光層56aおよび第2感光層56bを、互いに異なる所望のパターンで極めて精度良くパターニングすることができる。また、第1感光層56aの露光および第2感光層56bの露光は、第1マスク58aを第1感光層56a上に配置するとともに第2マスク58bを第2感光層56b上に配置した状態で行われる。この場合、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して容易に精度良く位置決めすることができ、これにより、第1感光層56aのパターンおよび第2感光層56bのパターンを互いに対して極めて精度良く位置決めすることができる。結果として、得られたタッチパネルセンサ30の第1電極部40および第2電極部45を所望のパターンで高精度に形成することができるとともに、第1電極部40および第2電極部45を互いに対して高精度に位置決めすることができる。したがって、このタッチパネルセンサ30を用いることにより、外部導体(典型的には、指)5が接近または接触した平面上の位置を精度良く検出することができる。
また、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して容易に位置決めすることができるとともに、第1感光層56aの露光および第2感光層56bの露光を同時に行うことができる。したがって、タッチパネルセンサ30を極めて効率的に製造することができ、これにより、タッチパネルセンサ30の製造コストを大幅に低下させることができる。
さらに、基材フィルム32に特別な機能(例えば、特定波長域の光に対する遮光機能)が要求されないことから、表示装置等に用いられている通常の単一体としてのフィルム材を基材フィルム32として用いることができる。したがって、厚さの厚いフィルムや、接着剤等を介して接合された複数枚のフィルムの積層体等を基材フィルムとして用いる必要がない。これにより、第1電極部40と第2電極部45との離間間隔が短くなるので、第1電極部40だけでなく、第2電極部45による接触位置または接近位置の検出感度を向上させることができる。また、タッチパネルセンサ30の透光率を向上させることができ、これにより、タッチパネルセンサ30を表示装置15の表示面16a上に配置した場合に、表示装置15の表示画像を大きく劣化させてしまうことを防止することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
例えば、上述した実施の形態において、タッチパネルセンサ30を製造するために用いられる元材としての積層体(ブランクス)50において、遮光層54が第1導電層52a上に形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、遮光層54が第2導電層52b上に形成されていてもよい。また、第1導電層52a上に第1遮光層が形成されるとともに、第2導電層52b上に第2遮光層が形成されていてもよい。この場合、上述の実施の形態で説明した遮光層をパターニングする工程S5において第1遮光層および第2遮光層の両方がパターニングされ、遮光層を除去する工程S8において第1遮光層および第2遮光層の両方が除去されるようになる。このような積層体を用いてタッチパネルセンサを製造する場合も、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、第1導電層52a上に第1遮光層が形成されるとともに、第2導電層52b上に第2遮光層が形成される場合には、第1電極部40の第1導電体41の外輪郭の端部における傾斜角度θeだけでなく、第2電極部45の第2導電体46の外輪郭の端部における傾斜角度θeも大きく、とりわけ45°以上90°未満にすることができる。このようなタッチパネルセンサ30によれば、極めて効果的に、第1電極部40および第2電極部45を不可視化することができる。
また、上述した実施の形態において、遮光層54が種々の金属から構成されている例を示したが、これに限られず、種々の遮光性を有した層から遮光層54を構成してもよい。一変形例として、カーボンブラックを含有させた樹脂層から遮光層54を形成してもよい。例えば、樹脂層をなす樹脂として、ポリアミック酸等のポリイミド前駆体から形成されるポリイミド樹脂を採用することができる。
カーボンブラック含有樹脂からなる遮光層54を用いた場合、上述したポジ型感光層56a,56bを現像する工程S4において、感光層56a,56bとともに遮光層54が現像液によってエッチングされ得る。すなわち、感光層56a,56bを現像してパターニングする工程S4と、遮光層54をパターニングする工程S5とが、並行して行われるようになる。
また、カーボンブラック含有樹脂からなる遮光層54を用いた場合、上述した感光層56a,56bを除去する工程S7において、アルカリ液を用いて、パターニングされた感光層56a,56bとともに、パターニングされた遮光層54も除去することができる。すなわち、この場合、感光層56a,56bを除去する工程S7と、遮光層54を除去する工程S8とが、並行して行われるようになる。ただし、上述した感光層56a,56bを除去する工程S7において、ジプロピレングリコール等をエッチング液として用いることによって、カーボンブラック含有樹脂からなる遮光層54を除去することなく、遮光層54上の感光層56a,56bのみを除去することも可能である。
さらに、上述した実施の形態において、第1電極部40の第1導電体41はライン部42と膨出部43とを有し、第2電極部45の第2導電体46はライン部47と膨出部48とを有している例を示した。また、上述した実施の形態において、膨出部43,48が平面視略正方形形状に形成されている例を示した。しかしながら、これに限られず、一例として、膨出部43,48が、平面視において、正方形以外の菱形等の四角形形状、さらには、多角形形状や円形状等であってもよい。また、導電体41,46が、膨出部43,48を有さず、直線状の輪郭を有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、第1電極部40の第1導電体41と、第2電極部45の第2導電体46とが、同一に構成される例を示したが、これに限られない。例えば、図8に示すように、第2電極部45の第2導電体46の線幅w2が、保護カバー12(観察者側面)からより近い位置に配置された第1電極部40の第1導電体41の線幅w1よりも太くなるようにしてもよい。このような例によれば、外部導体5が保護カバー12へ接触した際に、保護カバー12(観察者側面)から比較的に遠い位置に配置された第2電極部45の第2導電体46と、当該外部導体5と、の間でコンデンサを安定して形成することができるようになる。また、保護カバー12に接触する外部導体5と第1電極部40の第1導電体41との間で形成されるコンデンサの静電容量と比較して、保護カバー12に接触する外部導体5と第2電極部45の第2導電体46との間で形成されるコンデンサの静電容量が低くなってしまうことを防止することができる。これにより、外部導体5の保護カバー12への接触位置(タッチ位置)を、第1電極部40の第1導電体41の配列方向と平行な方向だけでなく、第2電極部45の第2導電体46の配列方向と平行な方向においても、極めて感度良く正確に検出することが可能となる。なお、図8に示す変形例において、その他の部分の構成については、上述した実施の形態と同様に構成され得る。図8において、上述した実施の形態と同一に構成され得る部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
さらに、上述した実施の形態において、外部取り出し線36がスクリーン印刷によって形成される例を示したが、これに限られない。例えば、第1電極部40および第2電極部45と同様にしてフォトリソグラフィー技術を用いて第1導電層52aおよび第2導電層52bをパターニングすることにより、第1電極部40および第2電極部45と一体的に外部取り出し線が形成されるようにしてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。