以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺および縦横の寸法比を、実物のそれらから適宜変更している。
また、本件において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、たとえば、「シート」は、フィルム、板などとも呼ばれ得るような部材や部分も含む概念である。
図1〜図16および図18は本発明による1つの実施形態を説明するための図である。図1はタッチパネル装置を表示装置とともに示す断面図であり、図2はタッチパネルセンサを示す上面図であり、図3はタッチパネルセンサの非アクティブ領域A2を示す断面図であり、図4はタッチパネルセンサの基材フィルムの構成例を示す断面図である。また、図5〜図16は、本実施形態のタッチパネルセンサの製造方法を説明するための図であり、図18は、図10の領域XVIIIの拡大断面図である。さらに、図17は、本発明のタッチパネルセンサの電極部の別の構成例を示す上面図である。
図1に示されたタッチパネル装置は、投影型の容量結合方式の装置として構成され、タッチパネル装置への外部導体(たとえば、人間の指)の接触位置を検出可能に構成されている。なお、投影型容量結合方式のタッチパネル装置の検出感度が優れている場合には、外部導体がタッチパネル装置に接近しただけで当該外部導体がタッチパネル装置のどの領域に接近しているかを検出することができる。このような現象に鑑みて、本明細書における「接触位置」とは、実際には接触していないが位置を検出され得る接近位置を含む概念とする。
図1に示すように、タッチパネル装置は、表示装置15(たとえば液晶表示装置)とともに組み合わせられて用いられ、入出力装置を構成する。表示装置15は、表示面を有した表示パネルと、表示パネルに接続された表示制御部とを有する。表示パネルは、映像を表示することができる表示領域と、表示領域を取り囲むようにして表示領域の外側に配置された非表示領域とを含む。表示制御部は、表示されるべき映像に関する情報を処理し、映像情報に基づいて表示パネルを駆動する。表示パネルは、表示制御部の制御信号により、所定の映像を表示面に表示するようになる。すなわち、表示装置15は、文字、図などの情報を映像として出力する出力装置として役割を担っている。
一方、タッチパネル装置20は、タッチパネルセンサ30と、タッチパネルセンサ30に接続された検出制御部とを有する。タッチパネルセンサ30は、表示装置の表示面上に配置される。たとえば、タッチパネルセンサ30は、表示装置の表示面上に接着層を介して接着される。上述したように、タッチパネル装置は、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成されており、情報を入力する入力装置としての役割を担っている。
また、図1に示すように、タッチパネル装置は、タッチパネルセンサ30の観察者側(すなわち、表示装置とは反対の側)に、誘電体として機能する透光性を有した保護カバー12をさらに有してもよい。保護カバー12は、タッチパネルセンサ30上に接着層14を介して接着されている。この保護カバー12は、タッチパネル装置への入力面(タッチ面、接触面)として機能するようになる。つまり、保護カバー12に導体(たとえば人間の指5)を接触させることにより、タッチパネル装置に対して外部から情報を入力することができる。また、保護カバー12は、入出力装置の観察者側の最表面をなしており、入出力装置において、タッチパネル装置および表示装置15を外部から保護するカバーとしも機能する。
なお、上述した接着層14および19は、種々の接着性を有した材料を用いて形成することができる。また、本明細書において、「接着(層)」は粘着(層)をも含む概念として用いる。
タッチパネル装置の検出制御部は、タッチパネルセンサ30に接続され、保護カバー12を介して入力された情報を処理する。具体的には、検出制御部は、保護カバー12へ導体(典型的には、人間の指5)が接触している際に、保護カバー12への導体の接触位置を特定し得るように構成された回路(検出回路)を含む。また、検出制御部を表示装置の表示制御部に接続して、処理した入力情報を表示制御部へ送信することもできる。この際、表示制御部は、入力情報に基づいた映像情報を作成し、入力情報に対応した映像を表示パネルに表示させることができる。
なお、「容量結合」方式および「投影型」の容量結合方式との用語は、タッチパネルの技術分野で用いられる際の意味と同様の意味を有するものとして、本明細書においても用いている。なお、「容量結合」方式は、タッチパネルの技術分野において「静電容量」方式または「静電容量結合」方式とも呼ばれている。本明細書では、「容量結合」方式の用語を、これらの「静電容量」方式および「静電容量結合」方式と同義の用語として取り扱う。典型的な静電容量結合方式のタッチパネル装置は導電体層を含んでおり、外部の導体(典型的には人間の指)がタッチパネルに接触することにより、外部の導体とタッチパネル装置の導電体層との間でコンデンサ(静電容量)が形成される。そして、このコンデンサの形成にともなった電気的な状態の変化に基づき、タッチパネル上において外部導体が接触している位置の位置座標が特定される。また、「投影型」の容量結合方式は、タッチパネルの技術分野において「投影式」の容量結合方式等とも呼ばれており、本明細書では、「投影型」および「投影式」の用語を、同義の用語として取り扱う。「投影型」の容量結合方式の装置は、典型的には格子状に配列された電極を有し、膜状の電極を有する「表面型」の容量結合方式の装置と対比され得る。
図1に示されているように、タッチパネルセンサ30は、基材フィルム32と、基材フィルム32の第1面(観察者側の面)32a上に設けられた第1電極部40と、基材フィルム32の第2面(表示装置15の側の面)32b上に設けられた第2電極部45とを有する。タッチパネルセンサ30は、表示装置15の表示パネル上に配置される。基材フィルム32、第1導電体41および第2導電体46は、透光性を有しており、観察者は、これらを介して、表示装置に表示された映像を観察することができる。
基材フィルム32は、タッチパネルセンサ20において誘電体として機能し、たとえば、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)から構成され得る。
本実施の形態において、基材フィルム32は、単一フィルムであることが好ましい。ここで「単一フィルム」とは、2以上に分離不可能なフィルムを意味している。したがって、単一フィルムとは、接着層を介して接合された複数枚の自立フィルムの接合体を含まない。その一方で、フィルム本体と、フィルム本体の一方または両方の面上に分離不可能(ただし、除去は可能)に形成された非自立性の機能膜とを含む基材フィルムは、本明細書における「単一フィルム」に該当する。機能膜は、たとえばスパッタ法によって形成することができる。図4(a)および図4(b)には、フィルム本体33と機能膜とからなる基材フィルム32の一例が示されている。
図4(a)に示す例において、基材フィルム32は、樹脂(たとえば、PET)からなるフィルム本体33と、フィルム本体33の一方または両方の面上に形成されたインデックスマッチング膜34とを有する。インデックスマッチング膜34は、交互に配置された複数の高屈折率膜34aおよび低屈折率膜34bを含んでいる。このインデックスマッチング膜34を設けることによって、基材フィルム32のフィルム本体33と第1電極部40および第2電極部45との屈折率が大きく異なっていたとしても、基材フィルム32上の電極部40,45が設けられている領域と設けられていない領域とで、反射率が大きく変化することを防止することができる。
また、図4(b)に示す例において、基材フィルム32は、樹脂(たとえば、PET)からなるフィルム本体33と、フィルム本体33の一方または両方の面上に形成された低屈折率膜35とを有する。この低屈折率膜35を設けることによって、基材フィルム32のフィルム本体33と第1電極部40および第2電極部45との屈折率が大きく異なっていたとしても、基材フィルム32上の第1電極部40および第2電極部45が設けられている領域と設けられていない領域とで、透過率のスペクトル特性が大きく変化することを防止し、各波長域で均一な透過率を実現することが可能となる。
図2に示すように、タッチパネルセンサ30は、基材フィルム32の第1面32a上に形成される第1電極部40と、基材フィルム32の第2面32b上に形成される第2電極部45とを有する。第1電極部40は、複数の第1導電体41と、第1導電体41と1対1の関係で接続される、複数の第1取出導電体43とを含む。同様に、第2電極部45は、複数の第2導電体46と、第2導電体46と1対1の関係で接続される、複数の第2取出導電体48とを含む。また、タッチパネルセンサ30は、外部導体の接触または接近を検知することができるアクティブ領域A1と、アクティブ領域A1を包囲し、外部取り出し配線などを収容する非アクティブ領域A2とを含む。アクティブ領域A1と非アクティブ領域A2との間に領域境界B1が存在する。
第1導電体41および第2導電体46は、導電性材料から形成され、外部導体5の保護カバー12への接触位置を検出するように構成された検出制御部の検出回路に電気的に接続されている。用いることができる導電性材料は、透明導電性金属酸化物を含む。用いることができる透明導電性金属酸化物は、酸化インジウムスズ(ITO)などを含む。図2に示すように、複数の第1導電体41は、基材フィルム32のフィルム面に沿った第1方向に並べて配列される。また、複数の第2導電体46は、基材フィルム32のフィルム面に沿った第2方向に並べて配列される。ここで、第2方向は、第1方向と交差する方向である。本実施の形態において、第1方向と第2方向とは、基材フィルム32のフィルム面上において直交している。
図2に示すように、第1電極部40に含まれる第1導電体41のそれぞれは、その配列方向(第1方向)と交差する方向に線状に延びている。同様に、第2電極部45に含まれる第2導電体46のそれぞれは、その配列方向(第2方向)と交差する方向に線状に延びている。特に図示する例において、第1電極部40に含まれる第1導電体41のそれぞれは、その配列方向(第1方向)と直交する方向(第2方向)に沿って直線状に延びており、第2電極部45に含まれる第2導電体46のそれぞれは、その配列方向(第2方向)と直交する方向(第1方向)に沿って直線状に延びている。
本実施形態において、第1電極部40に含まれる第1導電体41は、直線状に延びるライン部42aと、ライン部42aから拡張した拡張部42bとを有する。図示する例において、ライン部42aは、第1導電体41の配列方向(第1方向)と交差する方向に沿って直線状に延びている。拡張部42bは、基材フィルム32のフィルム面に沿ってライン部42aから拡張している部分である。したがって、第1導電体41の幅は、拡張部42bが設けられている部分において太くなっている。図2に示すように、本実施の形態において、第1導電体41は、上面視(すなわち、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合)において、略正方形形状の外輪郭を有する拡張部42bを有する。
第2電極部45に含まれる第2導電体46も、第1電極部40に含まれる第1導電体41と同様に構成されている。すなわち、第2電極部45に含まれる第2導電体46は、直線状に延びるライン部47aと、ライン部47aから拡張した拡張部47bとを有する。図示する例において、ライン部47aは、第2導電体46の配列方向(第2方向)と交差する方向に沿って直線状に延びている。拡張部47bは、基材フィルム32のフィルム面に沿ってライン部47aから拡張している部分である。したがって、第2導電体46の幅は、拡張部47bが設けられている部分において太くなっている。図2に示すように、本実施の形態において、第2導電体46は、略正方形形状の外輪郭を有する拡張部47bを有する。
なお、図2に示すように、上面視において、第1電極部40に含まれる第1導電体41のそれぞれは、第2電極部45に含まれる多数の第2導電体46と交差している。そして、図2に示すように、第1電極部40の拡張部42bは、第1導電体41と第2導電体46との交差点の隣接する2つの間に配置されている。同様に、上面視において、第2電極部45に含まれる第2導電体46のそれぞれは、第1電極部40に含まれる多数の第1導電体41と交差している。そして、第2電極部45の拡張部47bも、第2導電体46と第1導電体41との交差点の隣接する2つの間に配置されている。さらに、本実施形態において、第1電極部40に含まれる第1導電体41の拡張部42bと、第2電極部45に含まれる第2導電体46の拡張部47bとは、上面視において重ならないように配置されている。言い換えると、上面視において、第1電極部40に含まれる第1導電体41と第2電極部45に含まれる第2導電体46とは、各導電体41および46のライン部42aおよび47のみにおいて交差する。
また、図2に示すように、基材フィルム32の第1面32aおよび第2面32bに、導電性を有する第1取出導電体43および第2取出導電体48が形成されている。接触位置の検出方法に応じて、第1導電体41のそれぞれに対して1つまたは2つの第1取出導電体43を接続することができる。同様に、第2導電体46のそれぞれに対して1つまたは2つの第2取出導電体46を接続することができる。本発明において、第1取出導電体43および第2取出導電体48は、透明導電性材料および遮光導電性材料の積層構造を有する。好ましくは、第1取出導電体43および第2取出導電体48を構成する透明導電性材料は、第1導電体41および第2導電体46を構成する材料と同一である。第1取出導電体43および第2取出導電体48を構成する遮光導電性材料は、高い導電性を有する金属を含む。また、第1取出導電体43および第2取出導電体48は、外部導体の接触位置を検出するための検出制御部の検出回路に電気的に接続されている。すなわち、第1電極部40の第1導電体41および第2電極部45の第2導電体46は、それぞれ第1取出導電体43および第2取出導電体48を介して、検出回路に電気的に接続されている。なお、第1取出導電体43および第2取出導電体48は、基材フィルム32上の非アクティブエリアA2内に配置され、アクティブエリアA1内に存在しない。なお、図2においては、第1取出導電体43および第2取出導電体48の末端が基材フィルム32の上辺に配置される構成を示したが、これに限定されるものではない。たとえば、第1取出導電体43および第2取出導電体48の両方が屈曲部を含まず、第1取出導電体43の末端が基材フィルム32の上辺に配置され、第2取出導電体48の末端が基材フィルム32の左辺に配置されてもよい。その他の構成も可能である。
次に、以上のような構成からなるタッチパネルセンサ30の製造方法を、図5〜図16を参照しながら説明する。なお、図5〜図16の各図において、分図(a)は、作製中のタッチパネルセンサ(積層体)を、図2におけるV−V線に沿った断面に対応する断面において示している。また、図5〜図16の各図において、分図(b)は、作製中のタッチパネルセンサ(積層体)を、第1面32a側から観察した上面図である。
まず、図5に示すように、タッチパネルセンサ30を製造するための積層体(ブランクスとも呼ばれる)50を準備する。この積層体50に層の形成およびパターニングなどの処理(加工)を行っていくことにより、タッチパネルセンサ30を製造する。
図5(a)に示すように、本実施の形態において準備される積層体50は、透光性を有する基材フィルム32と、基材フィルム32の第1面32a上に積層され、透光性を有する第1透明導電層52aと、基材フィルム32の第2面32b上に積層され、透光性を有する第2透明導電層52bと、第1透明導電層52a上に積層され、遮光性を有する第1遮光導電層54aと、第2透明導電層52b上に積層され、遮光性を有する第2遮光導電層54bとを有する。
前述のように、基材フィルム32として、PETフィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。また、図4(a)および図4(b)に示すように、基材フィルムは、PETなどの樹脂製のフィルム本体33と、フィルム本体33の一方の面または両方の面上に形成された機能膜34または35とを含んでもよい。
第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bは、後述するように、それぞれパターニングされて、第1電極部40および第2電極部45を形成する。第1電極部40の第1導電体41および第2電極部45の第2導電体46に透明性を付与するために、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bは、透光性および導電性を有する材料から形成される。具体例として、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bは、ITOなどの透明導電性金属酸化物を用いて形成される。第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bは、スパッタ法によって基材フィルム32の第1面32aおよび第2面32bに透明導電性金属酸化物を堆積することによって、形成することができる。
また、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、後述する第1感光層56aおよび第2感光層56bのパターニングに用いられる光を遮断する層である。ただし、本実施形態においては、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、第1感光層56aおよび第2感光層56bのパターニング光に対してのみでなく、その他の波長域の光を遮断してもよい。より具体的には、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、自然光に含まれ得る可視光、紫外線、赤外線などを遮断してもよい。このような広い遮光性を有する材料を用ることによって、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bによるパターニング光のより確実な遮断を期待することができる。また、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bの材料は、透明導電性金属酸化物よりも高い導電性を有することが望ましい。材料のコストおよび加工容易性を考慮すると、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bの形成に用いることができる材料は、アルミニウム、モリブデン、銀、クロム、銅などの金属材料を含む。好ましくは、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、銅で形成される。第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、スパッタ法によって第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bの上に金属材料を堆積することによって、形成することができる。
積層体50は、枚葉状であってもよいし、細長いウェブ状であってもよい。あるいはまた、積層体50は、たとえばロールに巻き取られたウェブ状であってもよい。生産効率を考慮すると、ロールに巻き取られたウェブ状の積層体50を準備することが好ましい。なぜなら、ロールに巻き取られたウェブ状の積層体50は、以下の工程を行う場所とは異なる場所で作製することができるからである。また、ロールに巻き取られたウェブ状の積層体50を巻き戻すことによって供給されるウェブ状の積層体50を、以下の工程に用いることが可能となる。ここで、以下の工程のいくつかを適用したウェブ状の中間積層体を、一旦、ロールに巻き取り、改めてロールに巻き取られたウェブ状の中間積層体を巻き戻して、引き続く工程を適用してもよい。
次に、図6に示すように、積層体50の第1面50a上に第1感光層56aを形成するとともに、積層体50の第2面50b上に第2感光層56bを形成する。第1感光層56aおよび第2感光層56bは、特定波長域の光(たとえば紫外線)に対する感光性を有する。具体的には、積層体50の表面上にコーターを用いて感光性材料をコーティングすることによって、第1感光層56aおよび第2感光層56bを形成することができる。
その後、図7に示すように、第1感光層56aおよび第2感光層56bを同時に露光する。具体的には、まず、図7(a)に示すように、第1感光層56a上に第1マスク58aを配置するとともに、第2感光層56b上に第2マスク58bを配置する。図7(b)に示すように、第1マスク58aは、形成されるべき第1電極部40の第1導電体41のパターンに対応した所定のパターンを有し、第2マスク58bは、形成されるべき第2電極部45の第2導電体46のパターンに対応した所定のパターンを有する。また、第1マスク58aのパターンおよび第2マスク58bのパターンは、互いに異なるパターンとなっている。
次に、図7(a)に示すように、この状態で、第1感光層58aおよび第2感光層58bの感光特性に対応したパターニング光(たとえば、紫外線)を、第1マスク58aおよび第2マスク58bを通して、それぞれ、第1感光層56aおよび第2感光層56bに照射する。この結果、第1感光層56aおよび第2感光層56bが互いに異なるパターンで同時に露光される。
図示された例において、第1感光層56aおよび第2感光層56bは、ポジ型の感光層となっている。したがって、第1感光層56aにおいては、第1電極部40の第1導電体41を形成するためにエッチングで除去される領域がパターニング光に暴露される。第1感光層56aに照射されたパターニング光は、第1感光層56aを通過して、第1遮光導電層54aにおいて遮断される。よって、第1感光層56aを通過したパターニング光は、第2感光層56bには到達しない。
同様に、第2感光層56bにおいては、第2電極部45の第2導電体46を形成するためにエッチングで除去される領域がパターニング光に暴露される。第2感光層56bに照射されたパターニング光は、第2感光層56bを通過して、第2遮光導電層54bにおいて遮断される。よって、第2感光層56aを通過したパターニング光は、第1感光層56aには到達しない。この結果、本工程において、第1感光層56aおよび第2感光層56bのそれぞれを、所望の異なるパターンで精度良く同時に露光することができる。
次に、図8に示すように、露光された第1感光層56aおよび第2感光層56bを現像する。具体的には、第1感光層56aおよび第2感光層56bに対応した現像液に露光された積層体を浸漬することにより、第1感光層56aおよび第2感光層56bを現像する。これにより、図8(a)および(b)に示すように、第1感光層56aおよび第2感光層56bのうちの、第1マスク58aおよび第2マスク58bによって遮光されることなくパターニング光を照射された部分が除去され、第1感光層56aおよび第2感光層56bが所定のパターンにパターニングされる。
その後、図9に示すように、パターニングされた第1感光層56aおよび第2感光層56bをマスクとして、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bをエッチングする。図9(a)および図9(b)に示すように、このエッチングにより、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bが、それぞれ、第1感光層56aおよび第2感光層56bのパターンと略同一のパターンにパターニングされる。
第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bが銅からなる場合には、温度30℃の15%過硫酸アンモニウム水溶液を用いて、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bをエッチングすることができる。この条件でエッチングを行うことにより、本工程における第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bの水平方向のエッチング量を、引き続く第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bのエッチングにおける第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bの水平方向のエッチング量よりも小さくすることができる。
次に、図10に示すように、パターニングされた第1感光層56aおよび第1遮光導電層54aの積層体をマスクとして、第1透明導電層52aをエッチングする。同時に、パターニングされた第2感光層56bおよび第2遮光導電層54bの積層体をマスクとして、第2透明導電層52bをエッチングする。図10(a)および図10(b)に示すように、ITOからなる第1透明導電層52aが、第1感光層56aおよび第1遮光導電層54aのパターンと略同一のパターンにパターニングされるとともに、ITOからなる第2透明導電層52bが第2感光層56bおよび第2遮光導電層54bのパターンと略同一のパターンにパターニングされる。すなわち、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bが両面同時にエッチングされる。
本工程においては、1.3の比重、3.5質量%以上の遊離酸濃度および59℃の温度を有する塩化第二鉄(FeCl3)水溶液を用いる。このエッチング溶液を用いることによって、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bの垂直方向エッチング速度を、水平方向のエッチング速度よりも著しく大きくすることができる。言い換えると、本工程における第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bの水平方向のエッチング量を、無視できる程度に小さくすることができる。さらに、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bが銅からなる場合には、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bの水平方向エッチング速度を、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bの水平方向エッチング速度よりも小さくすることができる。本工程により得られる第1感光層56b、第1遮光導電層54a、および第1透明導電層52aの積層構造の拡大断面図を、図18に示す。ここで、第1透明導電層52aの膜厚Xと、第1透明導電層52aの側面から第1遮光導電層54aの側面までの水平方向の距離Yとは、10≦Y/X≦500の関係を満たす。第2面における第2遮光導電層54aおよび第2透明導電層52bも、この関係を満たす。この関係を満たすことによって、最終的に得られる第1取出導電体43および第2取出導電体48のそれぞれにおいて配置間隔を縮小することができ、非アクティブエリアの領域を縮小することができる。加えて、第1取出導電体43を構成する第1遮光導電層54aの幅、ならびに第2取出導電体48を構成する第2遮光導電層54bの幅を、第1取出導電体43および第2取出導電体48の電気抵抗値を低下させるのに充分な大きさに維持することが可能となる。さらに、第1感光層56aをマスクとして第1透明導電層52aおよび第1遮光導電層54aの両方のパターニングを実施できることから、高精細なレジストおよびフォトマスクを用いることなしに、第1取出導電体43の幅を小さくすることが可能となる。第2取出導電体48についても同様である。
その後、図11に示すように、第1遮光導電層54a上に残留している第1感光層56a、および第2遮光導電層54bに残留している第2感光層56bを除去する。図11(a)および図11(b)に示すように、たとえば2%水酸化カリウムなどのアルカリ性水溶液を用いることにより、第1感光層56aおよび第2感光層56bが除去され、パターニングされた第1遮光導電層54および第2遮光導電層54bが露出する。
次に、図12(a)および(b)に示すように、パターニングされた第1遮光導電層54aの上に第3感光層56cを形成し、第2遮光導電層54bの上に第4の感光層56dを形成する。第3感光層56cおよび第4感光層56dは、第1感光層56aおよび第2感光層56bと同様に、特定波長域の光(たとえば紫外線)に対する感光性を有する。また、第1感光層56aおよび第2感光層56bと同様に、積層体50の表面上にコーターを用いて感光性材料をコーティングすることによって、第3感光層56cおよび第4感光層56dを形成することができる。
その後、図13に示すように、第3感光層56cおよび第4感光層56dを同時に露光する。最初に、図13(a)および図13(b)に示すように、第3感光層56cおよび第4感光層56dの上に、それぞれ第3マスク58cおよび第4マスク58dを配置する。第3マスク58cは、第1取出導電体43を形成するために第1遮光導電層54aを除去するべき領域に対応した所定のパターンを有する。第4マスク58dは、第2取出導電体48を形成するために第1遮光導電層54aを除去するべき領域に対応した所定のパターンを有する。図示する例において、第3マスク58cは、外部導体の接触または接近の検出が可能な全領域(アクティブエリアA1)に対応して形成されたパターン、より詳細には、アクティブエリアA1よりも少し大きめに形成された透光領域を有する。また、図示する例において、第4マスク58dは、第3マスク58cと同一のパターンを有する。
なお、第3マスク58cの位置決めは、基材フィルム32上に形成されたアライメントマークを基準として実施することができる。基材フィルム32の第1面および第2面のそれぞれの上に、好ましくは2つ以上のアライメントマークを形成することができる。アライメントマークは、たとえば、前述の第1遮光導電層54aのパターニングの際に形成することができる。この場合、アライメントマークは、第1遮光導電層54aの材料で形成される。この方法によれば、第1遮光導電層54aおよび第1透明導電層52aのパターンに対して、第3マスク58cを高精度に位置決めすることができる。また、同様の位置決め方法を第4マスク58dの位置決めに採用することができる。これにより、第2遮光導電層54bおよび第2透明導電層52bのパターンに対して、第4マスク58dを高精度に位置決めすることができる。
次に、図13(a)に示すように、第3マスク58cおよび第4マスク58dを配置した状態で、第3感光層56cおよび第4感光層56dの感光特性に対応したパターニング光(たとえば、紫外線)を、第3および第4マスク58cおよび58dを通して第3感光層56cおよび第4感光層56dに照射する。この結果、第3感光層56cおよび第4感光層56dが同一のパターンで同時に露光される。図示された例においては、第3感光層56cおよび第3感光層56dがポジ型の感光層である。そして、第3マスク58cおよび第4マスク58dは、アクティブエリアA1に対面する領域を含む透光領域を有する。したがって、アクティブエリアA1およびその周囲領域において、第3感光層56cおよび第4感光層56dはパターニング光に暴露される。図13(a)に示すように、第3感光層56cに照射されるパターニング光のパターンは、第4感光層56dに照射されるパターニング光のパターンと同一である。したがって、第3感光層56cおよび第4感光層56dを予定したパターンで精度良く同時に露光することができる。
次に、図14(a)および図14(b)に示すように、露光された第3感光層56cおよび第4感光層56dを現像する。具体的には、第3感光層56cおよび第4感光層56dに対応した現像液を用いて、第3感光層56cおよび第4感光層56dを現像する。これにより、図14(a)および図14(b)に示すように、第3感光層56cおよび第4感光層56dの露光部分が除去される。すなわち、第3感光層56cおよび第4感光層56dのうちの、アクティブエリアA1およびその周囲領域が除去され、第3感光層56cおよび第4感光層56dは非アクティブエリアA2のみに残留するようになる。
その後、図15(a)および図15(b)に示すように、パターニングされた第3感光層56cおよび第4感光層56dをマスクとして、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bをエッチングする。この工程では、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bに対する浸食性を有し、かつ、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bに対する浸食性を有さない、または浸食性が弱いエッチング液を用いる。第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bを除去することによって露出する第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bのパターンを、損なわないようにするためである。すなわち、この工程で用いられるエッチング液は、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bのみを選択的にエッチングし得るように選択される。具体例として、図9で示す工程で用いられるエッチング液を用いることが好ましい。
この工程のエッチングにより、アクティブエリアA1およびその周囲領域内に位置する第1遮光導電層54aが除去される。同様に、アクティブエリアA1およびその周囲領域内に位置する第2遮光導電層54bが除去される。これにより、図15(b)に示すように、基材フィルム32および第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bのみがアクティブエリアA1に残留するようになり、アクティブエリアA1はその全領域にわたって透光性を有するようになる。
このようにして、第1遮光導電層54aのうちの第3感光層56cによって覆われていない部分が除去されることにより、第1透明導電層52aが露出する。露出した第1透明導電層52aは、アクティブエリアA1およびその周囲領域に位置している。アクティブエリアA1内に位置する第1透明導電層52aは、第1電極部40の第1導電体41を形成するアクティブエリアA1の周囲領域内(非アクティブエリアA2内である)に露出した第1透明導電層52aは、第1電極部40のライン部42aの一部分を形成する。
同様に、第2遮光導電層54bのうちの第4感光層56dによって覆われていない部分が除去されることにより、第2透明導電層52bが露出する。露出した第2透明導電層52bは、アクティブエリアA1およびその周囲領域に位置している。アクティブエリアA1内に位置する第2透明導電層52bは、第2電極部45の第2導電体46を形成する。アクティブエリアA1の周囲領域内(非アクティブエリアA2内である)に露出した第2透明導電層52bは、第2電極部45のライン部47aの一部分を形成する。
次に、図16(a)および図16(b)に示すように、第3感光層56cおよび第4感光層56bを除去する。たとえば、図11に示す工程で用いたアルカリ液によって、残留している第3感光層56cおよび第4感光層56bを除去して、非アクティブエリアA2内の第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bを露出させることができる。
露出した第1遮光導電層54aは、非アクティブエリアA2内で第1透明導電層52aと積層されており、第1取出導電体43を形成する。非アクティブエリアA2内の第1取出導電体43とアクティブエリアA1内の第1導電体41の拡張部42bとの間には、第1透明導電層52aからなる第1導電体41のライン部42aが形成されている。また、図3に示すように、非アクティブエリアA2において、第1遮光導電層54aは、第1透明導電層52aの上面のみに存在し、第1透明導電層52aの側面を覆っていない。言い換えると、第1遮光導電層54aは基材フィルム32の第1面32aに接触していない。同様に、露出した第2遮光導電層54bは、非アクティブエリアA2内で第2透明導電層52bと積層されており、第2取出導電体48を形成する。非アクティブエリアA2内の第1取出導電体48とアクティブエリアA1内の第2導電体46の拡張部との間には、第2透明導電層52bからなる第2導電体46のライン部47aが形成されている。また、非アクティブエリアA2において、第2遮光導電層54bは、第2透明導電層52bの上面のみに存在し、第2透明導電層52bの側面を覆っていない。言い換えると、第2遮光導電層54bは、基材フィルム32の第2面32bに接触していない
以上のようにして前述の構成のタッチパネルセンサ30を得ることができる。
なお、前述のように、基材フィルム32、積層体50、あるいは、中間積層体がロールに巻き取られたウェブ形態である場合には、完成されたウェブ状のタッチパネルセンサ30をロールに巻き取ってもよい。あるいはまた、取り扱い(搬送、出荷など)の便宜上、ウェブ状のタッチパネルセンサ30を保護用の合紙と重ね合わせて、ロールに巻き取ってもよい。必要に応じて、ロールに巻き取られたタッチパネルセンサ30を巻き戻して、枚葉状に断裁することができる。ウェブ状のタッチパネルセンサ30をロールに巻き取る際には、ウェブ状のタッチパネルセンサ30の両側に合紙を配置して巻き取ってもよい。あるいはまた、ウェブ状のタッチパネルセンサ30の片側だけに合紙を配置して巻き取ってもよい。
以上に説明した製造方法によれば、第1感光層56aおよび第2感光層56bが同時に露光される。これらの感光層の両面同時露光プロセスにおいては、第1マスク58aおよび第2マスク58bのそれぞれにアライメントマーク(不図示)を設けておくことにより、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して、極めて高い精度(たとえばミクロン単位のオーダー)で、かつ極めて容易に(したがって、短時間で)位置決めすることが可能となる。ここで、第1マスク58aおよび第2マスク58bのそれぞれに、2つ以上のアライメントマークを設けることが好ましい。この結果、タッチパネルセンサ30において、第1電極部40および第2電極部45の両方が、基材フィルム32上に極めて精度良く効率的に位置決めされるようになる。これに対して、第1感光層56aおよび第2感光層56bのそれぞれを別個に露光する場合には、高精度で位置決めされた第1電極部40および第2電極部45を容易に作製することができない。第1電極部40および第2電極部45の両方を高い精度で作製しようとすると、第1電極部40および第2電極部45の一方を形成する際にアライメントマークを基材フィルム32上に形成し、その後、この基材フィルム32上に形成されたアライメントマークに対し、第1電極部40および第2電極部45の他方の形成に用いられるマスクを位置決めすることになる。すなわち、少なくとも露光工程および現像工程を、第1感光層56aおよび第2感光層56bのそれぞれに対して別個に行う必要が生じる。このため、第1電極部40および第2電極部45を効率良く短時間で容易に形成することができない。また、アライメントマークを用いることなく、たとえば基材フィルム32の端部を基準として第1マスク58aおよび第2マスク58bを位置決めすることも可能である。この方法によれば、第1感光層56aおよび第2感光層56bに対する露光工程および現像工程を同時に行うことができる。しかしながら、第1電極部40および第2電極部45の位置決め精度は、基材フィルム32の外形の精度に依存する。一般的に、この方法によれば、第1電極部40および第2電極部45の位置決め精度は、最高でも数十ミクロンオーダーに過ぎない。
これらのことから、以上に説明してきた本実施の形態の製造方法によれば、第1電極部40および第2電極部45を互いに対して容易かつ精度良く位置決めすることができる。具体的には、本実施の形態によれば、タッチパネルセンサ30の上面視において、第1電極部40の略正方形形状からなる拡張部42bと、第2電極部45の略正方形形状からなる拡張部47bとの互いに平行な外輪郭の隙間G(パターンギャップとも呼ばれる、図2参照)を、安定して100μm以下とすることができた。その一方で、従来の2枚のフィルムを貼り合わせる方法では、このパターンギャップGは、200μm以上となってしまう。この結果、本実施の形態によれば、上面視において、アクティブエリアA1内で第1導電体41および第2導電体46の少なくとも一方が配置されている領域の面積のアクティブエリア総面積に対する比を、95%以上にすることができた。なお、本実施の形態にように、タッチパネルセンサ30が表示装置の表示面上に配置されて用いられる場合には、タッチパネルセンサ30のアクティブエリアA1は、通常、表示装置の表示領域に対面する領域として設定される。
以上のようにして得られたタッチパネルセンサ30を、接着層19を用いて表示装置に接合すること、および保護カバー12を、接着層1を用いてタッチパネルセンサ30に接合することにより、入出力装置が得られる。次に、この入出力装置を使用する際の作用について説明する。
まず、このような入出力装置においては、表示装置の表示パネルによって映像を表示することによって、観察者は、保護カバー12およびタッチパネルセンサ30を介して映像を観察することができる。
また、この入出力装置において、タッチパネルセンサ30および保護カバー12がタッチパネル装置の一部分を構成し、外部導体(典型的には人間の指5)が保護カバー12上に接触(接近)したこと、ならびにその接触(接近)位置を検出することができる。
具体的には、まず、外部導体(たとえば、人間の指5)が保護カバー12に接触すると、当該外部導体5と、外部導体5による保護カバー12への接触位置の近傍に位置する第1導電体41および第2導電体46が電極として機能し、電界が形成される。この際、外部導体5と第1導電体41および第2導電体46との間に位置する保護カバー12、基材フィルム32などは誘電体として機能する。すなわち、外部導体5が保護カバー12に接触することにより、外部導体5と第1電極部40および第2電極部45とを電極とするコンデンサが形成される。
タッチパネル装置の検出制御部の検出回路は、第1導電体41および第2導電体46に接続され、第1導電体41および第2導電体46と外部導体との間の静電容量を検出することができる。そして、検出制御部が、第1導電体41および第2導電体46と外部導体との間の静電容量の変化を検出することによって、外部導体の近傍に位置する第1導電体41および第2導電体46を特定することができる。すなわち、検出制御部の検出回路は、第1方向に並べて配列された第1導電体41のうちの外部導体の近傍に位置する線状導電体を特定することによって、第1方向に延びる座標軸上における外部導体の位置を特定することができる。同様に、検出制御部の検出回路は、第2方向に並べて配列された第2導電体46のうちの外部導体の近傍に位置する線状導電体を特定することによって、第2方向に延びる座標軸上における外部導体の位置を特定することができる。このようにして、タッチパネル装置(保護カバー12)への外部導体の接触位置を二つの方向において検出することにより、外部導体5のタッチパネル装置の表面への接触位置の位置座標を、タッチパネル装置の表面上で精度良く特定することができる。なお、投影型容量結合方式のタッチパネルにおいて接触位置を検出する様々な方法(原理)が、種々の文献に開示されており、本明細書では、これ以上の説明を省略する。
上述の製造方法にしたがって作製される本発明のタッチパネルセンサ30においては、第1電極部40および第2電極部45が、単一フィルムである基材フィルム32の両側に形成されている。すなわち、接着剤などによって接合された複数枚のフィルムの接合体などを基材フィルム32として用いていない。この結果、タッチパネルセンサ30全体としての透光率を向上させることができる。さらに、本発明のタッチパネルセンサ30は、表示装置によって表示される映像のコントラストを向上させることができる。なぜなら、本発明のタッチパネルセンサ30は、照明などの環境光(外光)および表示装置から発せられる映像光を反射し得る界面の数を減じることができるからである。これらにより、タッチパネルセンサ30を表示装置の表示面上に配置した場合に、表示装置の表示画像を大きく劣化させてしまうことを防止することができる。さらに、タッチパネルセンサ30および入出力装置の総厚みを減じることができる。
また、図1に示すように、タッチパネルセンサ30(保護カバー12)の法線方向において、第1電極部40および第2電極部45は、異なる深さに配置されている。具体的には、第2電極部45と保護カバー12との距離は、第1電極部40と保護カバー12との距離よりも、基材フィルム32の膜厚だけ大きい。しかしながら、本実施の形態において、基材フィルム32は単一フィルムである。そして、この基材フィルム32は、遠紫外線遮光機能などの特別な機能を要求されていないため、その膜厚を小さくすることができる。したがって、外部導体が保護カバー12へ接触した際に、当該外部導体5と第2電極部45の第2導電体46との間でコンデンサを安定して形成することができるようになる。これにより、外部導体の保護カバー12への接触(接近)位置を、第1電極部40の第1導電体41だけでなく、第2電極部45の第2導電体46によっても、極めて高い感度で正確に検出することが可能となる。
また、本実施形態によれば、図2に示すように、第1電極部40の第1導電体41はライン部42aと拡張部42bとを有し、第2電極部45の第2導電体46はライン部47aと拡張部47bとを有する。第1導電体41および第2導電体46において、拡張部42bおよび47bの幅は、ライン部42aおよび47aの幅よりも非常に大きい。そして、前述のように、第1導電体41の拡張部42bと、第2導電体46の拡張部47bとは、上面視において重ならないように配置されている。このため、外部導体5と第2電極部45の第2導電体46との間に、接触位置の検出精度に影響を与え得る程度の広い面積の第1導電体41が介在することはない。このことによって、外部導体と第2電極部45との間で、コンデンサを有効に形成することができる。
さらに、上述したように、表示装置15の表示制御部とタッチパネル装置の検出制御部とは接続されている。検出制御部は、外部導体が保護カバー12上の所定の位置に接触することによって入力された情報を、表示制御部へ送信することができる。表示制御部は、検出制御部で読み取られた入力情報に基づいて、当該入力情報に対応した映像を表示装置15の表示パネルに表示することもできる。すなわち、出力手段としての表示機能および入力手段としてのタッチ位置検出機能により、入出力装置の使用者(操作者)と当該入出力装置との間で、対話形式での情報の直接的なやりとり(たとえば、使用者の表示装置に対する指示および表示装置による当該指示の実行)を実現することができる。
そして、前述のように、第1電極部40および第2電極部45が同時露光プロセスを経て基材フィルム32上にパターニングされている場合、第1電極部40の第1導電体41のそれぞれと第2電極部45の第2導電体46のそれぞれとが、互いに対して高い精度で位置決めされる。結果として、第1電極部40の第1導電体41、および第2電極部45の第2導電体46の両方を、表示装置15に対しても高い精度で位置決めすることが可能となる。この場合、外部導体の保護カバー12への接触位置を表示装置15を基準として高い精度で検出することができる。この結果、表示装置15に表示される映像情報に対応した入力を高分解能かつ高精度で検出することができる。これにより、当該入出力装置とその使用者(操作者)との間での対話形式での情報交換を、極めて円滑に実施することができる。
以上のような本実施の形態によれば、第1感光層56aおよび第2感光層56bとの間に、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bが配置されている。したがって、第1感光層56aおよび第2感光層56bを、異なるパターンで高精度に露光することにより、互いに異なる所望のパターンで極めて高精度にパターニングすることができる。また、第1感光層56aおよび第2感光層56bの露光は、第1マスク58aを第1感光層56a上に配置するとともに第2マスク58bを第2感光層56b上に配置した状態で行われる。この場合、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して容易に精度良く位置決めすることができる。これにより、第1感光層56aのパターンおよび第2感光層56bのパターンを互いに対して極めて精度良く位置決めすることができる。結果として、得られたタッチパネルセンサ30の第1電極部40および第2電極部45を、高精度に位置決めされた所望のパターンで形成することができる。したがって、このタッチパネルセンサ30を用いることにより、外部導体が接近または接触した平面上の位置を精度良く検出することができる。
また、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して容易に位置決めすることができるとともに、第1感光層56aおよび第2感光層56bの露光および現像を同時に行うことができる。したがって、タッチパネルセンサ30を極めて効率的に製造することができ、これにより、タッチパネルセンサ30の製造コストを大幅に低下させることができる。
さらに、本発明においては、基材フィルム32に特別な機能(たとえば、特定波長域の光を遮断する機能)を要求しない。したがって、基材フィルム32として、表示装置等に用いられている通常の単一フィルムを用いることができる。基材フィルム32として、膜厚の大きなフィルム、および接着剤などを介して接合された複数枚のフィルムの積層体を用いる必要がない。これにより、第1電極部40と第2電極部45との距離が短くなるので、第1電極部40(第1導電体41)だけでなく、第2電極部45(第2導電体46)による接触位置または接近位置の検出感度を向上させることができる。また、タッチパネルセンサ30の透光率を向上させることができる。これにより、タッチパネルセンサ30を表示装置15の表示面上に配置した場合に、表示装置15の表示画像を大きく劣化させてしまうことを防止することができる。
さらに、前述の実施形態において、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52b上に配置され、同一のマスク(第1マスク58aおよび第2マスク58b)を用いてパターニングされる。続いて、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bのアクティブエリアA1内の部分を除去して、透光性を有する第1導電体41および第2導電体46がアクティブエリアA1内に形成される。非アクティブエリアA2内では、第1透明導電層52aと第1遮光導電層54aとの積層体が第1取出導電体43を構成し、第2透明導電層52bと第2遮光導電層54bとの積層体が第2取出導電体48を構成する。
このような方法で作製された第1取出導電体43および第2取出導電体48は、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bの存在によって、高い導電率を有する。また、スクリーン印刷などで作製された従来の取出配線とは異なり、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bの上面に配置され、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bの側面には存在しない。これにより、第1取出導電体43および第2取出導電体48の線幅を大幅に小さくすることができる。さらに、本実施形態によれば、スクリーン印刷などの従来の作製方法とは異なりフォトリソグラフィー技術を用いることによって、安定して高精度で所望のパターンの第1取出導電体43および第2取出導電体48を作製することが可能となる。これにより、エレクトロマイグレーションの可能性も大幅に低下させることができる。以上のことから、本実施形態によれば、細い線幅の第1取出導電体43および第2取出導電体48を短ピッチで並べて形成することが可能となり、これにより、第1取出導電体43および第2取出導電体48を配置するために必要となる領域の面積、すなわち、非アクティブエリアA2の面積を格段に小さくすることができる。
また、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、低い密着力しか呈し得ない基材フィルム32には接触しておらず、高い密着力を呈し得る第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bにしか接合していない。このため、タッチパネルセンサ30が使用中に変形したとしても、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bがタッチパネルセンサ30から剥離する起点が形成されにくくすることができる。また、アクティブエリアA1と非アクティブエリアA2との境界B1において、非アクティブエリアA2内の第1取出導電体43および第2取出導電体48は、ライン部42aおよび47を介して、アクティブエリアA1第1導電体41および第2導電体46と接続されている。ライン部42aおよび47が第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bのみで形成されているため、ライン部42aおよび47の変形に対する拘束は弱い。したがって、タッチパネル30の変形の際に、ライン部42aおよび47は、基材フィルム32の変形に追従して変形することができる。これによって、第1取出導電体43中の第1遮光導電層54aおよび第2取出導電体中の第2遮光導電層54bが基材フィルム32から剥離すること、ならびに、第1取出導電体43および第2取出導電体48とともにライン部42aおよび47が基材フィルム32から剥離することを効果的に抑制することができる。結果として、タッチパネルセンサ30の検出機能の信頼性を大幅に向上させることができる。
さらに、第1取出導電体43および第2取出導電体48の形成に用いられる第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、図7に示す両面同時露光工程において遮光層として用いられる。このような作製方法によれば、前述のように優れた性能を有するタッチパネルセンサ30を、極めて効率的かつ安価に作製することが可能となる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形のいくつかの例について説明する。
たとえば、前述の実施の形態において、図15に示す第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bの一部分を除去する工程において、アクティブエリアA1、およびアクティブエリアA1を取り囲むアクティブエリアA1の周囲領域全体において、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bが除去される例を示した。しかしながら、アクティブエリアA1の透光性を確保するために第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bを除去するといった観点からすれば、アクティブエリアA1内に位置する第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bのみを除去することができる。このような例によれば、タッチパネルセンサ30のアクティブエリアA1における透明性を確保すると同時に、第1取出導電体43および第2取出導電体48が配置される領域を拡大して、第1取出導電体43および第2取出導電体48の導電率を増大させることができる。ただし、第3感光層56cおよび第4感光層56dの露光および現像の寛容度を拡大し、タッチパネルセンサ30の信頼性を向上させるという観点からは、前述の実施形態の方が優れている。なお、当然に、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bの除去される部分を変更する場合には、第3マスク58cおよび第4マスク58dの透過領域のパターンを変更しなければならない。
また、上述した実施の形態において、図14に示す第3感光層56cおよび第4感光層56dを現像してパターニングする工程において、非アクティブエリアA2全体に、第3感光層56cおよび第4感光層56dを残す例を示した。しかしながら、第1取出導電体43および第2取出導電体に相当する領域のみに第3感光層56cおよび第4感光層56dを残すように、第3感光層56cおよび第4感光層56dをパターニングしてもよい。このような場合においても、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bが、異なる側から照射されるパターニング光を遮断するので、第3感光層56cおよび第4感光層56dを異なるパターンでの高精度に両面同時露光することができる。ただし、第3感光層56cおよび第4感光層56dの露光および現像の寛容度を拡大し、タッチパネルセンサ30の信頼性を向上させるという観点からは、前述の実施形態の方が優れている。
さらに、上述した実施の形態において、第1電極部40の第1導電体41はライン部42aと拡張部42bとを有し、第2電極部45の第2導電体46はライン部47aと拡張部47bとを有している例を示した。また、前述の実施形態において、拡張部42bおよび47bが上面視で略正方形形状に形成されている例を示した。しかしながら、拡張部42bおよび47bの形状は、略正方形形状に限定されるものではなく、上面視において、正方形以外の菱形等の四角形形状、多角形形状、円形状であってもよい。また、第1導電体41および第2導電対46が、拡張部42bおよび47bを有さず、直線状の輪郭を有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態において、第1電極部40の第1導電体41と、第2電極部45の第2導電体46とが、同一形状である構成される例を示した。しかしながら、たとえば、図17に示すように、第2電極部45の第2導電体46の線幅を、保護カバー12により近い第1電極部40の第1導電体41の線幅よりも大きくしてもよい。この線幅の拡大によって、外部導体が保護カバー12へ接触した際に、保護カバー12からより遠い第2電極部45の第2導電体46と当該外部導体5との間で、コンデンサを安定して形成することができる。また、外部導体と第1電極部40の第1導電体41との間で形成されるコンデンサの静電容量と比較して、外部導体と第2電極部45の第2導電体46との間で形成されるコンデンサの静電容量が小さくなることを防止できる。これにより、外部導体の保護カバー12への接触(接近)位置を、第1電極部40の第1導電体41だけでなく、第2電極部45の第2導電体46によっても、極めて高感度で、かつ正確に検出することが可能となる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。