集合住宅等の建物では、各住居における電力の使用量を計測するための電力量計が1箇所に集中して設置されている場合が多い。このような集合住宅等の建物では、電源配線が誤って配線されると、電力量計が、使用された電力量と異なる値を計測したり、ある住居の電力量と他の住居の電力量とを取り違えて計測したり、または、ある住居の電力量と他の住居の電力量とを重複して計測したりする。これにより、電力の使用料金の誤った課金が発生する。
そのため、集合住宅等の建物の施工者や電力の供給者等(以下、点検者と称することもある。)は、このような誤った課金が発生しないように、建物に張り巡らされた電源配線の経路を点検している。すなわち、点検者は、点検対象の電源配線が、誤りなく配線されているか否かを点検している。この点検では、様々な手法が用いられているが、近年では、点検の簡易化を図るために、以下のようなシステム(以下、「配線経路点検システム」と称する)を用いた方法が開発されており、この配線経路点検システムを用いた方法が試用されている(例えば、非特許文献1参照)。
<配線経路点検システムの詳細>
非特許文献1に開示されている配線経路点検システムは、計測器結線・配線点検装置である。以下、「電源配線の誤った配線例」、「配線経路点検システムの構成」、「配線経路点検システムの第1の使用例」、及び「配線経路点検システムの第2の使用例」の順番で、その詳細につき説明する。
(電源配線の誤った配線例)
以下、図13(A)及び(B)、並びに、図14を参照して、電源配線の誤った配線例につき説明する。図13(A)及び(B)は、それぞれ、結線誤りを説明するための図である。図13(A)は、各住居の電力量計Whに対して、電源配線Wiが正しく配線された状態を示しており、また、図13(B)は、各住居の電力量計Whに対して、電源配線Wiが誤って配線された状態を示している。
電力量計Whには、電源側の接続端子として1S、2S、3Sが設けられており、また、負荷側の接続端子として1L、2L、3Lが設けられている。また、電源側及び負荷側の電源配線WiはいずれもA線、C線、及びB線からなる。結線誤りが無い場合は、図13(A)に示すように、電源側の接続端子1S、2S、3Sは、それぞれ、電源側のA線、C線、及びB線に接続され、また、負荷側の接続端子1L、2L、3Lは、それぞれ、負荷側のA線、C線、及びB線に接続される。一方、結線誤りが有る場合は、図13(B)に示すように、電源側のA線、C線、及びB線に接続されるべき接続端子1S、2S、3Sが、それぞれ、負荷側のA線、C線、及びB線に接続され、また、負荷側のA線、C線、及びB線に接続されるべき接続端子1L、2L、3Lが、それぞれ、電源側のA線、C線、及びB線に接続される。なお、ここでは、電気方式が100/200ボルト(以下、「V」と称する)型単相3線式の場合を例にして説明している。この電源の電力供給方式では、A線とB線との間の電圧が200Vとなっており、A線とC線との間の電圧が100Vとなっており、B線とC線との間の電圧が100Vとなっている。
図13(B)に示すように、結線誤りがあると、電力量計Whは使用された電力量と異なる値を計測する。
図14は、配線誤りを説明するための図である。図14は、101号室用の電力量計Wh101と、102号室用の電力量計Wh102と、103号室用の電力量計Wh103とが1つの集合計器の中に設置されており、その中の電力量計Wh102と電力量計Wh103とが取り違えて配線された状態、すなわち、102号室用の電力量計Wh102が103号室用の電源配線Wiに接続され、かつ103号室用の電力量計Wh103が102号室用の電源配線Wiに接続された状態を示している。
図14に示すように、配線誤りがあると、電力量計Whがある住居の電力量と他の住居の電力量とを取り違えて計測する。
(配線経路点検システムの構成)
点検者は、これらのような誤った配線を見つけ出すために、例えば、以下のような配線経路点検システムを用いている。
以下、図15(A)及び(B)、図16、図17、図18(A)及び(B)、並びに、図19を参照して、配線経路点検システムの構成につき説明する。図15(A)及び(B)は、それぞれ、配線経路点検システムの構成を示す図である。図15(A)は配線経路点検システムに供する発信器の外部構成を示しており、また、図15(B)は配線経路点検システムに供する受信器の外部構成を示している。
図15(A)に示す発信器10は、周知の通り、操作者によって電源の投入または切断が選択される電源スイッチ12と、操作者によって任意のコードが入力される入力キー14と、情報を表示するディスプレイ(LCD)16と、電源配線Wiの終端であるコンセントに挿入されるプラグPLとを備えている。発信器10は、内部に、ダミー負荷を備えている。ダミー負荷は、トライアック等のスイッチ及びプラグPLを介して、電源配線Wiと電気的に接続される。なお、発信器10は、プラグPLが挿入されるソケットSCと、電圧端子クリップcl1及びcl2とを備えるケーブルCBを介して、電源配線Wiと電気的に接続することもできる。
この発信器10が、電源配線Wiと電気的に接続された状態で、操作者は入力キー14から複数の文字列からなる任意のコード(例えば、部屋番号)を入力する。このとき、発信器10は、50Hzまたは60Hzの商用周波数に同期して、操作者によって入力されたコードの文字に対応する切替パターンで内部のスイッチを断続的に切り替えることによって、ダミー負荷を流れるダミー負荷電流を符号化する。発振器10は、符号化されたダミー負荷電流を、点検に用いる信号(以下、「点検信号」と称する)として電源配線Wiに出力する。この点検信号は、点検信号の電流の一周期を1ビット区間として、文字に対応した数のビット区間の電流の信号として生成されている。なお、点検信号の電流の一周期は、商用周波数の逆数で与えられる。例えば、商用周波数が50Hzの場合、一周期は20ミリ秒である。
図16及び図17に、点検信号の電流波形の従来例を示す。図16は、一つの文字(ここでは、文字“7”)を表す点検信号の電流波形パターンの例を示している。この点検信号の1つのコードは、商用電源から供給される電流信号の1周期分の区間を1ビット区間と見立てて、文字“7”を1ビット区間のスタートビット(S)区間と8ビット区間の2進数で表現された文字ビット区間との組み合わせで構成されている。図17は、文字列の各桁のそれぞれが文字“7”となっている5桁のコード“77777”を表す点検信号の電流波形パターンの例を示している。図17に示すCH1は、点検信号“77777”の電流波形パターンを示しており、図17に示すCH2は、点検信号のビット有無の判定タイミングを示している。なお、図17に示す矢印よりも下のCH1及びCH2は、矢印よりも上のCH1及びCH2の一文字分を拡大して、さらに正規化した波形を示している。
図15(B)に示す受信器60は、周知の通り、操作者によって電源の投入または切断が選択される電源スイッチ62と、操作者によって操作される入力キー64と、情報を表示するディスプレイ(LCD)66と、電源配線Wiと電気的に接続する接続端子としての変流器(Current Transformer)CT1及びCT3並びに電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3とを備えている。変流器CT1及びCT3は、大きな電流を小さな電流に(例えば、100アンペアを5アンペアに)変換して、電源配線Wiに流れている電流を測定する。なお、変流器CT1及びCT3の構成を、図18(A)及び(B)、並びに、図19に示す。図18(A)及び(B)に示すように、変流器CT1及びCT3は、押しボタンCTpとクランプCTcとを備えている。クランプCTcは、周知の通り、ある透磁率を有する導体で形成されていて、図18(A)に示すように、操作者が押しボタンCTpを押下することによって開き、また、図18(B)に示すように、操作者が押しボタンCTpを放すことによって閉じる。操作者は、クランプCTcの中に電源配線Wiを通した状態で、クランプCTcを閉じる。このようにして、変流器CT1及びCT3は、それぞれ、電力量計Whの電源側に接続された電源配線WiのA線及びB線に接続される。なお、クランプCTcは、図19に示すように、ワイヤwiが巻かれており、中に通された電源配線Wiに電流I1が流れると、ワイヤwiの両端に電圧E0が発生し、ワイヤwiに電流I2が流れる。また、電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3は、それぞれ、電力量計Whの負荷側に接続された電源配線WiのA線、B線、及びC線に接続される。なお、発信器10の操作者と受信器60の操作者は、同一の人物であってもよいし、異なる人物であってもよい。ここでは、発信器10の操作者と受信器60の操作者は、同一の人物であるものとして説明する。
電源配線Wiに接続された受信器60は、受信待ちの状態になっている。この受信器60には、電源配線Wiを介して、発信器10から出力された点検信号が入力される。このとき、受信器60は、点検信号の電流波形パターンに基づいて、点検信号を、対応するコード(すなわち、操作者によって発信器10の入力キー14から入力された複数の文字列からなる任意のコード(例えば、部屋番号))に変換してディスプレイ66に表示する。
このような発信器10及び受信器60を用いた配線経路点検システムは、発信器10が発信した部屋番号等の任意のコードを含む点検信号を、建物に張り巡らされた電源配線Wiを介して、受信器60に取得させる。このとき、電源配線Wiの経路に誤りが無ければ、受信器60は、発信器10が出力したコードと同じコードをディスプレイ66に表示することができる。しかしながら、仮に、電源配線Wiの経路に誤りが有れば、受信器60は、発信器10が出力したコードと異なるコードをディスプレイ66に表示することになる。これにより、配線経路点検システムは、誤った配線の有無を検出することができる。
(配線経路点検システムの第1の使用例)
以下、図20(A)及び(B)を参照して、非特許文献1に開示された配線経路点検システムの第1の使用例につき説明する。図20(A)及び(B)は、それぞれ、結線誤りの有無を判定する場合の使用例を示す図である。図20(A)は、結線が正しい場合すなわち結線誤りが無い場合の例を示しており、図20(B)は、結線が誤っている場合すなわち結線誤りが有る場合の例を示している。
配線経路点検システムを用いて結線誤りの有無を判定する場合に、操作者は、受信器60及び発信器10を持って、電力量計Whの設置場所に行く。なお、建物が集合住宅となっている場合に、各住居の電力量計Whは1つの集合計器の中に設置されていることが多い。
操作者は、受信器60の変流器CT1及びCT3をそれぞれ電源側の電源配線WiのA線及びB線に接続し、かつ、電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3をそれぞれ負荷側の電源配線WiのA線、B線、及びC線に接続することにより、受信器60を、電力量計Whに接続された電源配線Wiに接続する。
次に、操作者は、発信器10のプラグPLをケーブルCBのソケットSCに挿入した後、ケーブルCBの電圧端子クリップcl1及びcl2をそれぞれ負荷側の電源配線WiのA線及びC線に接続する。これにより、発信器10は、電力量計Whの負荷側に接続された電源配線Wiに接続される。
操作者は、ケーブルCBの電圧端子クリップcl1及びcl2をそれぞれ負荷側の電源配線WiのA線及びC線に接続した後、発信器10の入力キー14から複数の文字列からなる任意のコード(例えば、部屋番号)を入力する。発信器10は、操作者によってコードが入力されると、既に説明したように、これに応答して、点検信号を生成する。発信器10は、生成した点検信号を、ケーブルCBの電圧端子クリップcl1及びcl2を介して負荷側の電源配線WiのA線、及びC線に、1文字分ずつ順次出力する。
電源配線Wiに接続された受信器60は、受信待ちの状態になっている。この受信器60は、電源配線Wiを介して、発信器10から出力された点検信号が入力される。受信器60は、点検信号の電流波形パターンに基づいて、点検信号を、対応するコードに変換してディスプレイ66に表示する。
図20(A)に示すように、結線が正しい場合すなわち結線誤りが無い場合に、受信器60は、発信器10が発信したコードと同じコードをディスプレイ66に表示する。
他方、図20(B)に示すように、結線が誤っている場合すなわち結線誤りが有る場合に、受信器60は、発信器10が発信したコードを受信することができない。そのため、ディスプレイ66には、何も表示されない。
したがって、操作者は、発信器10が発信したコードと受信器60のディスプレイ66に表示されたコードとが一致するか否かを確認することによって、結線誤りの有無を判定することができる。すなわち、操作者は、発信器10が発信したコードと受信器60のディスプレイ66に表示されたコードとが一致する場合に、結線に誤りが無いと判定し、それ以外の場合、つまり、発信器10が発信したコードと受信器60のディスプレイ66に表示されたコードとが一致しない場合または受信器60が、発信器10が発信したコードを受信しない場合に、結線に誤りが有ると判定することができる。
(配線経路点検システムの第2の使用例)
以下、図21及び図22を参照して、非特許文献1に開示された配線経路点検システムの第2の使用例につき説明する。図21及び図22は、それぞれ、配線誤りの有無を判定する場合の使用例を示す図である。図21は、発信器10と電源配線Wiとの接続及び受信器60と電源配線Wiとの接続の概要を示しており、図22は、発信器10と電源配線Wiとの接続及び受信器60と電源配線Wiとの接続の詳細を示している。
配線経路点検システムを用いて配線誤りの有無を判定する場合に、まず、操作者は、受信器60を持って、電力量計Whの設置場所に行く。なお、ここでは、建物が集合住宅となっており、かつ、各住居の電力量計Whが1つの集合計器の中に設置されているものとして、説明する。
操作者は、受信器60の変流器CT1及びCT3をそれぞれ電源側の電源配線WiのA線及びB線に接続し、かつ、電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3をそれぞれ負荷側の電源配線WiのA線、C線、及びB線に接続する。これにより、受信器60は、点検対象の住居に対応している電力量計Whに接続された電源配線Wiに接続される。なお、電源配線Wiに接続された受信器60は、受信待ちの状態になっている。
次に、操作者は、発信器10を持って、点検対象の住居に設置されているコンセントCNの設置場所に行く。そして、操作者は、発信器10のプラグPLをコンセントCNに挿入する。これにより、発信器10は、建物に張り巡らされた電源配線Wiに接続される。なお、コンセントCNは、主配線用遮断器及び分岐配線用遮断器が一箇所にまとめて配置された分電盤Bを介して、電源配線Wiによって、電力量計Whの負荷側の端子1L、2L、及び3Lに接続されている。
その結果、図21及び図22に示すように、発信器10は、プラグPL及びコンセントCNを介して、電源配線Wiと電気的に接続され、また、受信器60は、変流器CT1及びCT3を介して電力量計Whの電源側の電源配線WiのA線及びB線に接続され、かつ、電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3を介して電力量計Whの負荷側の電源配線WiのA線、C線、及びB線に接続される。
次に、操作者は、発信器10の入力キー14から複数の文字列からなる任意のコード(例えば、部屋番号)を入力する。発信器10は、操作者によってコードが入力されると、既に説明したように、これに応答して、点検信号を生成して、生成した点検信号を、ケーブルCBの電圧端子クリップcl1及びcl2を介して負荷側の電源配線WiのA線、及びC線に、1文字分ずつ順次出力する。
配線誤りが無い場合に、電力量計Whは対応の住居に正しく接続された状態となっている。受信器60は、電源配線Wiを介して、発信器10が出力した点検信号を受信すると、点検信号の電流波形パターンに基づいて、点検信号を、対応するコードに変換し、発信器10が出力したコードと同じコードをディスプレイ66に表示する。
他方、配線誤りが有る場合に、電力量計Whは、対応の住居と異なる住居に接続された状態となっているかまたは複数の住居に接続された状態となっている。この場合に、受信器60は、発信器10が出力したコードと異なるコードをディスプレイ66に表示するかまたは複数の発信器10が出力したコードを重複してディスプレイ66に表示する。これにより、操作者は、受信器60のディスプレイ66に表示されたコード(例えば、部屋番号)に基づいて、発信器10がコードを出力した部屋と受信器60がコードを取得した電源配線Wiとの対応関係を把握することができる。
したがって、操作者は、発信器10が発信したコードと受信器60のディスプレイ66に表示されたコードとが一致するか否かを確認することによって、電源配線の経路を容易に特定することができ、配線誤りの有無を判定することができる。
以上のようにして、集合住宅等の建物の施工者や電力の供給者等は、電源配線の経路を点検している。
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明を理解できる程度に、各構成要素を概略的に示してあるに過ぎない。よって、この発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。また、以下に説明する数値的条件は単なる例示にすぎない。
<実施の形態の配線経路点検システムの詳細>
以下、「システムの構成」、「システムの電源配線への取り付けと点検の概略」、「点検信号の詳細」、「合成電流の詳細」、「システムの動作」、及び、「システムの使用例」の順番で、実施の形態の配線経路点検システムの詳細につき説明する。
(システムの構成)
以下、図1を参照して、実施の形態の配線経路点検システムの構成につき説明する。なお、図1は、実施の形態のシステムの構成を示すブロック図である。
この配線経路点検システム1は、発信器10と受信器60とを備えている。
発信器10は、操作者によって任意のコードが入力される入力部例えばテンキー等の入力キー14と、点検信号を出力する点検信号生成部20の主要な構成要素の他に、操作者によって電源の投入または切断が選択される電源スイッチ12と、所要の情報を表示するディスプレイ(LCD)16と、電源配線Wiの終端であるコンセントに挿入されることによって電源配線Wiと電気的に接続するプラグPLとを備えている。発信器10は、プラグPLが各住居内に設置されたいずれかのコンセントCNに差し込まれることによって、電力量計Whの負荷側の電源配線Wiに接続されて商用電源Eから入力された電流を利用して電源配線Wiに点検信号を流すことができる。また、発信器10は、さらに、発信器10の各部に電源を供給する電源部26と、外部のコンピュータとの間でデータを入出力する入出力部28とを備えている。
点検信号生成部20は、各種の演算を実行する演算部22、各種のデータを格納する格納部24、プラグPL及びコンセントCNを介して接続された電源配線Wiに擬似的に負荷を与えるダミー負荷R、プラグPLとダミー負荷Rとの間の接続を断続的に切断して商用電源(例えば、100Vの交流電源)Eからの商用周波数の電流を流したり遮断したりする、トライアック等によって構成されたスイッチSW等を含んでいる。このスイッチSWの切断の制御については後述する「点検信号の評価」の章で説明する。
演算部22は、例えばCPUによって構成されており、所要のプログラムを読み込むことによって、内部に、各部の動作を制御する主制御部22a、スイッチSWの動作を制御してアナログ信号として点検信号を生成するスイッチ回路制御部22b、ディスプレイの動作を制御するディスプレイ制御部22c等の機能手段が構築されている。格納部24は、例えばRAMによって構成されており、点検信号を生成する際に参照される各種のデータを格納する参照データ格納部24a、発信器10の動作履歴等のデータを格納する動作データ格納部24b、操作者が入力キー14を操作することによって発信器10に入力されたコード(例えば、部屋番号)を格納する入力コード格納部24c等の格納領域が確保されている。これら演算部22及び格納部24は、周知の通り、デジタル信号で動作する。
なお、動作データ格納部24bに格納された発信器10の動作履歴や入力コード格納部24cに格納されたコード等の情報は、例えば、発信器10が正常に動作しているか否かをチェックする場合や、発信器10によって出力されたコードと受信器60によって検出されたコードとを対比して検証する場合等に活用される。例えば、操作者が発信器10の入力キー14を操作すると、これに応答して、ディスプレイ制御部22cが、動作データ格納部24bから発信器10の動作履歴を読み出したり、または、入力コード格納部24cから発信器10が過去に出力したコードを読み出したりして、ディスプレイ16に表示する。
他方、受信器60は、操作者によって電源の投入または切断が選択される電源スイッチ62と、操作者によって任意のコードや指示が入力される入力部例えばテンキー等の入力キー64と、所要の情報を表示するディスプレイ(LCD)66と、電源配線Wiと電気的に接続する接続端子としての変流器(Current Transformer)CT1及びCT3並びに電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3とを備えている。CT1及びCT3がそれぞれ電力量計Whの電源側の電源配線WiのA線及びB線に接続され、電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3がそれぞれ電力量計Whの負荷側の接続端子1L、2L、及び3Lに接続される。なお、電力の供給方式としては、単相3線式以外に、単相2線式や三相3線式等がある。電圧端子クリップCLは、電力の供給方式が単相2線式であれば2本必要となり、電力の供給方式が単相3線式または三相3線式であれば3本必要となる。
また、受信器60は、電源配線Wiを流れる電流をアナログの検出電流として検出し、この検出電流から点検信号を検出する点検信号検出部70と、受信器60の各部に電源を供給する電源部76と、外部のコンピュータとの間でデータを入出力する入出力部78とを備えている。なお、点検信号検出部70は、各種の演算を実行する演算部72、各種のデータを格納する格納部74、変流器CT1及びCT3並びに電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3を介して受信器60に入力される商用電圧の電流を任意の電圧に変圧する変電部TE、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部75等を含んでいる。演算部72は、例えばCPUによって構成されており、所要のプログラムを読み込むことによって、内部に、各部の動作を制御する主制御部72a、検出された検出電流が点検信号か否かを判定し、点検信号である場合に、この点検信号が表すコードに変換する判定部72b、ディスプレイの動作を制御するディスプレイ制御部72c等の機能手段が構築されている。格納部74は、例えばRAMによって構成されており、受信器60に電源配線Wiから入力された検出電流から点検信号を検出するとき及び点検信号が表すコードに変換するときに参照される各種のデータを格納する参照データ格納部74a、受信器60の動作履歴等のデータを格納する動作データ格納部74b、操作者が入力キー64を操作することによって受信器60に入力された指示(例えば、任意の受信回数時に受信されたコードの表示等)を格納する検出コード格納部74c等の格納領域が確保されている。なお、当然ながら、演算部72及び格納部74は、デジタル信号で動作するので、変電部TEで変換されたアナログ信号は、A/D変換部75でA/D変換されて演算部72や格納部74に入力される。
(システムの電源配線への取り付けと点検の概略)
以下、図1及び図2を参照して、実施の形態のシステムの電源配線への取り付けと点検の概略につき説明する。なお、図2は、実施の形態のシステムの電源配線への取り付け説明図である。
操作者によってプラグPLが建物のコンセントCNに挿入されることにより、発信器10は、図2に示すように、建物に張り巡らされた電源配線Wiと電気的に接続された状態となる。
発信器10の点検信号生成部20は、この接続状態で、操作者によって入力キー14から複数のすなわちM桁(但し、Mは整数)の文字で表される任意のコード(例えば、部屋番号)が入力された場合に、操作者によって入力されたコードを表す点検信号として信号電流を生成して電源配線Wiに出力する。点検信号は、M桁の各文字をそれぞれ表す一連の文字信号からなっている。各文字信号は、Nビット(但し、Nは整数)区間からなっている。Nビット区間の各ビット区間は、商用電源の周波数で定まる一周期分の区間に割り当てられている。従って、以下の説明では、ビット区間を周期区間と称することもある。
Nビット区間中の、Nより少数のQ個(但し、Qは整数)のビット区間のそれぞれに順次に単位電流が流される。単位電流が流されるQ個のビットのビット位置の組み合わせは、文字毎に異なっていて、文字とビット区間の位置の組み合わせとは一対一の関係となっている。単位電流は、50Hzまたは60Hzの商用周波数の正弦波の電流であって、商用周波数で定まる一周期単位で断続的に流れる。各ビット区間に流れる単位電流の振幅と波形は同一にしてある。したがって、上述した文字信号は、Q個のビット区間に流れる一連の単位電流を含む信号電流であり、各ビットに順次に流れるそれぞれの単位電流の電流波形の出現パターンが文字毎に異なっている。なお、点検信号の詳細については、「点検信号の詳細」の章で詳述する。
電源配線Wiに出力された点検信号すなわち信号電流は、電源配線Wiに流れる一般負荷電流と合成される。以下、信号電流と一般負荷電流とが合成された電流を、「合成電流」と称する。合成電流の詳細については、「合成電流の詳細」の章で詳述する。
他方、受信器60の接続端子(具体的には、変流器CT1及びCT3並びに電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3)が、操作者によって電力量計Whの電源側の電源配線Wiと負荷側の電源配線Wiに電気的に接続される。
電源配線Wiに接続された受信器60は、点検信号を検出するための受信待ちの状態になっており、接続端子を介して電源配線Wiを流れる電流が検出電流として入力される。なお、電源配線Wiから受信器60に入力される検出電流は、一般負荷電流及び点検信号としての信号電流の双方の成分が重畳してなる電流となっている場合もあれば、当該信号電流の成分を含まない、一般負荷電流の成分のみからなる電流となっている場合もある。以下の説明では、説明の便宜上、電源配線Wiから受信器60に入力されるどちらかの状態にある電流も、「検出電流」と称する。
受信器60の点検信号検出部70(図1参照)は、電源配線Wiから検出電流が入力されると、電圧変換及びA/D変換を行い、これに応答して、検出電流の平均値を算出する。検出電流の平均値の算出については、「合成電流の詳細」の章で詳述する。点検信号検出部70は、商用電源の一周期毎に、検出電流の平均値と閾値(後述の「上限閾値」)とを比較して、検出電流から一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流の区間と点検信号の成分を含まない一般負荷電流の成分のみからなる区間とを分離する。ここで、上限閾値は、検出電流が一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流であるか否かを判定するために予め定められている。これにより、点検信号検出部70は、一周期毎に、信号電流の部分すなわち単位電流が存在する場合には、その単位電流の波形パターンを検出する。以下、点検信号検出部70による一周期毎に単位電流の波形パターンを検出する動作を、「単位電流の検出」と称する。この単位電流が検出された一周期の区間は、上述の合成電流が流れている区間であり、また、この単位電流が検出されなかった一周期の区間は、一般負荷電流の成分のみからなる区間として判別される。
点検信号検出部70は、検出した一周期の区間毎の単位電流の波形パターンが1文字分に達すると、これに応答して、1文字分の単位電流の波形パターンの出現パターンに対応する文字の文字信号に変換する。点検信号検出部70は、この文字信号への変換動作を、変換された文字が操作者によって入力された文字数分に達するまで行い点検信号として検出する。これにより、点検信号検出部70は、この検出された点検信号から、操作者によって発信器10の入力キー14から入力されたM桁の文字のコードを取得する。そして、点検信号検出部70は、取得したコードをディスプレイ66に表示する。
操作者は、受信器60のディスプレイ66に表示されたコード(例えば、部屋番号)を確認することによって、電力量計Wh周辺のどの電源配線Wiがいずれの住居に配線された電源配線Wiであるのかをチェックすることができる。
なお、実施の形態では、点検信号検出部70は、検出電流の平均値を基準にして、閾値を新たな値の閾値に変更する。そして、点検信号検出部70は、閾値の変更後に検出された検出電流に対して、検出電流の平均値と新たな値に変更された閾値とを比較する。これにより、受信器60は、一周期の区間毎の単位電流の波形パターンの検出精度すなわち点検信号の検出精度を従来よりも向上させている。この点については、「システムの動作」の章で詳述する。
(点検信号の詳細)
以下、図3(A)及び(B)、並びに、図4(A)及び(B)を参照して、点検信号の詳細につき説明する。なお、図3(A)及び(B)は、点検信号の一例を示す図である。また、図4(A)及び(B)は、それぞれ、文字と単位電流の波形の出現パターンとの対応を示す図である。
点検信号は、発信器10の内部回路が通電状態または不通電状態となることにより、生成される電流である。点検信号は、発信器10の内部回路における通電状態と不通電状態の組み合わせパターンを表している。
例えば、図2に示す電気回路において、発信器10は、内部に、トライアック等によって構成されたスイッチSWを備えている。このスイッチSWは、ダミー負荷Rと100ボルトの交流電圧電源(図1の電源Eに対応する。)とに接続される。スイッチSWは、スイッチ回路制御部22b(図1参照)の制御にしたがって、開閉する。そして、スイッチ回路制御部22bは、50Hzまたは60Hzの商用周波数すなわち電源周波数に同期して、すなわち、一般負荷電流の正弦波が0点を通過するときに同期して、切替信号となるアナログ信号をスイッチSWに送り、スイッチSWを開閉させる。これにより、ダミー負荷Rに流れる電流が、断続的に切断され、その結果、電源周波数により定まる1周期単位で、断続的な電流が発生する。なお、スイッチSWの開閉パターンは、同一の文字同士で同一となり、異なる文字同士で異なるように、文字に対応して予め決められている。そのため、断続的な電流は、コードを表すM桁の文字に対応する波形パターンで出現する。また、このM桁の文字に対応する波形パターンで出現する断続的な電流が、点検信号である(図3参照)。したがって、点検信号は、文字毎に規定されたビット区間すなわち電源周波数により定まる1周期の期間にそれぞれ生成された一連の単位電流を含む信号電流となっている。
なお、この実施の形態では、スイッチSWの開閉パターンは、後述の表1及び図4(A)を参照して説明する11種類の文字に対応する文字信号の信号電流の構成パターンに一致する。これら11種類の文字に対応する文字信号の信号電流の構成パターンすなわちスイッチSWの開閉パターンは、それぞれ、格納部24の参照データ格納部24aに格納されており、スイッチ回路制御部22bがスイッチSWを開閉させる際に参照される。以下、11種類の文字に対応する文字信号の信号電流の構成パターンすなわちスイッチSWの開閉パターンを、「参照構成パターン」と称する。スイッチ回路制御部22bは、スイッチSWを開閉させる際に、参照データ格納部24aから各参照構成パターンを読み出し、読み出された各参照構成パターンに基づいて、切替信号をスイッチSWに送り、スイッチSWを開閉させる。
図3(A)及び(B)は、各桁のそれぞれが文字“6”となっている5桁のコード“66666”を表す点検信号の例を示している。図3(A)、及び図3(B)に示すCH1は、点検信号の電流波形を表しており、図3(B)に示すCH2は、点検信号の単位電流を測定するタイミングを表している。なお、図3(B)に示す矢印よりも下のCH1及びCH2は、矢印よりも上のCH1及びCH2を拡大して、さらに正規化した波形を示している。
なお、実施の形態では、扱われる文字の種類を、数字“0〜9”及びマイナス“−”の11種類に限定する。これら11種類の文字は、6ビットで表すことができ、その場合に、文字信号は例えばN=10とした10ビットの信号として表され、その場合には以下の表1に示す構成パターンとなる。
表1は、各文字に対する文字信号の、2値の値(ビット値)でのビット構成を示している。なお、表1におけるビット値「1」は単位電流の「振幅あり」の状態を示しており、ビット値「0」は単位電流の「振幅なし」の状態を示している。図4(A)は、表1の11種類の文字に対応する単位電流の波形パターンの出現パターンを示している。この11種類の文字について、文字“0”では、Qは5であって、第1、2、4、5及び10ビット目に単位電流が流れる。文字“1”では、Qは4であって、第1、4、5及び9ビット目に単位電流が流れる。文字“2”では、Qは5であって、第1、4、5、8及び10ビット目に単位電流が流れる。文字“3”では、Qは6であって、第1、2、4、5、8及び9ビット目に単位電流が流れる。文字“4”では、Qは5であって、第1、4、5、7及び10ビット目に単位電流が流れる。文字“5”では、Qは6であって、第1、2、4、5,7及び9ビット目に単位電流が流れる。文字“6”では、Qは7であって、第1、2、4、5、7、8及び10ビット目に単位電流が流れる。文字“7”では、Qは6であって、第1、4、5、7、8及び9ビット目に単位電流が流れる。文字“8”では、Qは5であって、第1、4、5、6及び10ビット目に単位電流が流れる。文字“9”では、Qは6であって、第1、2、4、5、6及び9ビット目に単位電流が流れる。また、記号“−”では、Qは6であって、第1、2、4、6、7及び9ビット目に単位電流が流れる。
これら11種類の文字の文字信号を構成する信号電流は、2進符号の表示で、それぞれ、第1ビット目が信号電流の先頭を表すスタートビットとなり、第4〜9ビット目が文字を表す文字ビットとなる(表1及び図4(B)参照)。また、第2ビット目は、第2ビット目から第9ビット目までのQが奇数個となるように付与するパリティビットとなる。そこで、以下、第2ビット目を「奇数パリティビット」と称する。
例えば、文字“7”の文字信号について、第8ビット目の「1」を受信できない場合、第2ビット目から第9ビット目までのQが4個、すなわち偶数個となるので、受信エラーと判定することができる。これに対し、奇数パリティビットを設けない場合は、文字“5”と誤表示することになる。このように、奇数パリティビットを設けることにより、データ受信の信頼性を高めることができる。
また、第10ビット目は、第9ビット目が「1」ならば「0」となり、第9ビット目が「0」ならば「1」となるように付与するパリティビットとなる。そこで、以下、第10ビット目を「反転パリティビット」と称する。
例えば、文字“3”の文字信号について、第8〜第10ビットを受信できない場合、第9ビット目及び第10ビット目がともに「0」となるので、受信エラーと判定することができる。これに対し、反転パリティビットを設けていないと、文字“0”と誤表示することになる。このように、反転パリティビットを設けることにより、データ受信の信頼性を高めることができる。
また、第3ビット目は、ビット値が必ず「0」となるので、スタートビットと文字ビットとの分離箇所を表すビットとして、用いることができる。そこで、以下、第3ビット目を「分離ビット」と称する。なお、この実施の形態では、文字信号ビットパターン中にスタートビットを含ませているが、文字信号のビットパターン中にスタートビットを含ませなくてもよい。
上述した11種類の文字の信号電流は、図4(B)に示すように、第1ビット目(スタートビット)及び第4ビット目(文字ビットの先頭ビット)のビット値が必ず「1」になり、よって単位電流が存在し、第3ビット目(分離ビット)のビット値が必ず「0」になり、よって単位電流が不存在であるという規則性を有する。以下、この規則性を、「信号電流の規則性」と称する。
なお、図3に示す例では、1つのコードが5桁の文字列によって構成されている。このように、実施の形態では、1つのコードが予め定められた文字数の文字列によって構成されているものとして説明する。なお、仮に、操作者によってキー入力された文字列が予め定められた文字数(ここでは、5桁)に満たない場合は、発信器10が、操作者によってキー入力された文字列の前に、「未入力」を意味する文字としてマイナス“−”を不足している桁数分だけ挿入するものとする。したがって、このような場合に、発信器10は、不足している桁数分のマイナス“−”と操作者によってキー入力された数字“0”〜“9”とを表す信号電流を生成して、電源配線Wiに出力する。電源配線Wiに出力された信号電流は、電源配線Wiに流れる一般負荷電流と合成された後、電源配線Wiから受信器60に入力される。
上述した発信器10及び受信器60は、単位信号の大きさを、点検対象の電源配線Wiを流れる一般負荷電流の大きさに応じて設定できるのが好ましい。その理由は、一般負荷すなわち電気製品の運転状況が一定であっても、一般負荷電流は電源電圧の変動等で多少変動するため、単位電流の大きさをその変動量よりも大きくしないと、受信器60で単位電流したがって信号電流を検出することができないからである。この理由について、以下に、詳述する。
例えば、一般負荷電流が5%変動し、かつ、単位電流の大きさが1.0アンペアである場合に、一般負荷電流の大きさが10アンペアであるときと50アンペアであるときとを比較する。一般負荷電流の大きさが10アンペアであるときは、一般負荷電流の変動量が10×0.05=0.5アンペアとなる。この変動量は、単位電流の大きさよりも小さい。そのため、受信器60は、検出電流から単位電流したがって信号電流を検出することができる。これに対して、一般負荷電流の大きさが50アンペアであるときは、一般負荷電流の変動量が50×0.05=2.5アンペアとなる。この変動量は、単位電流の大きさよりも大きい。そのため、受信器60は、検出電流から単位電流したがって信号電流を検出することができない。したがって、発信器10及び受信器60は、受信器60が検出電流から信号電流を必ず検出することができるように、単位電流の大きさを、点検対象の電源配線Wiを流れる一般負荷電流の大きさに応じて設定するのが好ましい。
(合成電流の詳細)
以下、図5を参照して、合成電流の詳細につき説明する。なお、図5は、電流の波形を示す図である。図5は、一般負荷電流の波形を「波形1」として示し、文字“6”を表す文字信号の信号電流の波形を「波形2」として示し、さらに、一般負荷電流と信号電流とが合成された合成電流の波形を「波形3」として示している。
例えば、図2に示す電気回路において、(平均値5アンペア)の一般負荷電流(図5の「波形1」参照)が、電源配線Wiに流れているものとする。なお、「平均値」とは、交流電流における波形の半周期分の面積を意味している。この「平均値」は、波形を任意数に分割して、分割された期間ごとに電流値を測定し、その総和を分割の任意数で除して求めた電流値とする。
ここで、図2に示す電気回路において、(平均値2アンペア)の文字“6”を表す信号電流(図5の「波形2」参照)が、発信器10から電源配線Wiに出力されたとする。なお、文字“6”を表す信号電流の構成は、以下の表2の通りとなっている。
この表2では、信号電流の構成を各ビット区間に流れる単位電流の有無で示してある。図5に示す例では、発信器10は、表2に示す文字“6”を表す信号電流を、ビット区間2〜11の10ビット分の区間で、電源配線Wiに出力している。図5では、ビット区間を丸囲み数字で示している。なお、発信器10は、最初の10ビットからなる1文字分の信号電流を電源配線Wiに出力した後は、所定の離間区間すなわち予め定められたビット区間だけ間隔を置いて、次の10ビットからなる1文字分の信号電流を電源配線Wiに出力している。なお、図5に示す例では、1文字列につき10周期の信号電流に対して、先行する文字とこれに続く文字との間に、2周期(ビット)の離間区間(具体的には、ビット区間12及び13の2周期(ビット)分の区間)を与えている。したがって、発信器10は、5桁の文字列のコードを出力する場合に、10周期×5+2周期×4=58周期に対応する時間で出力している。商用周波数50Hz又は60Hzなので、発振器10は、5桁の文字列のコードを1秒程度の時間で出力する。
電源配線Wiに出力された文字信号としての信号電流は、信号電流を構成する各単位電流が電源配線Wiを流れる一般負荷電流と合成される。その結果、合成電流(図5の「波形3」参照)が、生成される。この合成電流は、単位電流の波高値が発生していない区間(すなわち、ビット区間1、4、7、10、12、13、15)での平均値が5アンペアとなっている。また、この合成電流は、単位電流が発生している区間(すなわち、ビット区間2、3、5、6、8、9、11、14)で、一般負荷電流の平均値の5アンペアに信号電流の平均値の2アンペアが加算されることにより、これらの区間での平均値が7アンペアとなっている。
(システムの動作)
以下、システムの動作の概要につき説明する。
操作者は、実施の形態のシステムにこのような検出を行わせるために、発信器10と受信器60を以下のように操作する。
すなわち、操作者は、まず、受信器60及び発信器10を持って、電力量計Whの設置場所に行く。
そして、操作者は、受信器60の電源スイッチ62をONにして、受信器60の電源を入れる。受信器60は、電源が入ると、これに応答して、ディスプレイ66にメニュー画面を表示する。このメニュー画面には、例えば以下の表3に示す初期コードを入力する欄が含まれている。操作者は、受信器60の入力キー64を操作して任意の初期コードを入力する。
ここでは、操作者は、初期コードとして、100/200V型単相3線式の電力の供給方式に対応するコード(“2”)を入力したものとする。これにより、受信器60は、100/200V型単相3線式の電力の供給方式に対応した合成信号を受信するための待機状態となる。
次に、操作者は、電源配線Wiに一般負荷電流だけが流れている状態、すなわち、発信器10が点検信号を出力していない状態で、受信器60の変流器CT1及びCT3をそれぞれ電源側の電源配線WiのA線及びB線に接続し、かつ、電圧端子クリップCL1、CL2、及びCL3をそれぞれ負荷側の電源配線WiのA線、B線、及びC線に接続することにより、図1に示すように、受信器60を、電源配線Wiに接続する。
このとき、受信器60には、接続端子を介して電源配線Wiから、図5のビット区間1で流れる「波形3」の電流(すなわち、点検信号の単位電流の成分を含まない、一般負荷電流の成分だけからなる電流)が検出電流として入力される。
受信器60の点検信号検出部70の判定部72bのパターン検出手段73aは、図5のビット区間1で流れる「波形3」の検出電流が入力されると、これに応答して、入力された検出電流の平均値を取得して、その平均値を格納部74の動作データ格納部74bにデジタルデータとして格納する。これにより、受信器60は、一般負荷電流の平均値すなわち電源が入れられてから最初に測定した合成電流の平均値を格納部74の動作データ格納部74bに格納する。
次に、操作者は、図1に示すように、発信器10を、建物に張り巡らされた電源配線Wiに接続する。このとき、受信器60のCT1及びCT3が電源配線WiのA線及びB線に接続されている。そのため、操作者は、以下の第1及び第2の接続方法のいずれかの方法によって、発信器10を電源配線WiのA線及びB線に接続して、点検信号をアナログ信号として出力させる。
第1の接続方法として、操作者は、まず、発信器10を持って、点検対象の住居に設置されているコンセントCNの設置場所に行き、発信器10のプラグPLを電源配線WiのA線に繋がっている住居内のコンセントCNの一箇所に差し込んで点検信号を出力させる。続いて、発信器10のプラグPLを電源配線WiのB線に繋がっている住居内のコンセントCNの一箇所に差し込んで点検信号を出力させる。
あるいは、第2の接続方法として、操作者は、発信器10を持って、分電盤B(図22参照)の設置場所に行き、発信器10のプラグPLを図15に示すケーブルCBのソケットSCに挿入し、続いて、ケーブルCBの電圧端子クリップcl1及びcl2を電力量計の端子1Lに接続された電源配線WiのA線及び端子3Lに接続された電源配線WiのB線に接続して点検信号を出力させる。
なお、実際の作業では、住宅等に設置されているコンセントCNは、外観からは、A線及びB線のいずれに接続されているのかが判別できない。そのため、操作者は、第2の接続方法で発信器10を電源配線WiのA線及びB線に接続する場合が多い。
次に、操作者は、発信器10の入力キー14から複数の文字列からなる任意のコード(例えば、部屋番号)を入力する。ここでは、コードは、予め定められたM桁(例えば、5桁)の文字によって構成されているものとして説明する。発信器10の点検信号生成部20は、操作者によってコードが入力されると、これに応答して、格納部24の参照データ格納部24aから、文字信号のビットパターン単位で予め格納された、表1に規定された11種類の文字に対応する文字信号の信号電流の各参照構成パターンを読み出し、各参照構成パターンに基づいて、1文字ずつ、入力された文字に対応する各文字信号を、表1及び図4(A)を参照して説明したようなNビット区間(ここでは、10ビット区間)の信号電流として生成する。なお、操作者によってキー入力された文字列が予め定められたM桁に満たない、例えば(M−2)桁である場合に、発信器10の点検信号生成部20は、操作者によってキー入力された文字列の前に、「未入力」を意味する文字としてマイナス“−”を不足している2桁分だけ挿入して、1文字ずつ、信号電流を、50Hzまたは60Hzの電源の周期を単位にした、すなわち、商用周波数に同期したサイクルで生成する。
発信器10の点検信号生成部20は、点検信号を生成すると、これに応答して、生成した点検信号を、ケーブルCBの電圧端子クリップcl1及びcl2を介して負荷側の電源配線WiのA線、及びB線に、1文字分ずつ順次出力する。1ビット区間は1周期の区間としてあるので、1文字の信号電流は、1ビット区間に1つの単位電流の態様で10周期の区間に分けて出力される(図5のビット区間2〜11で流れる「波形2」参照)。なお、既に説明したように、実施の形態では、文字と文字の間には、信号電流が存在しない予め定められた間隔(ここでは、図5のビット区間12及び13の2周期分の区間)が設定されている。発信器10は、この2周期分の区間に続いて、2文字目の信号電流(図5のビット区間14以降の区間)を出力する。
図5を参照して既に説明したように、電源配線Wiに出力された信号電流は、電源配線Wiに流れている一般負荷電流と合成されて、図5のビット区間2〜11で流れる「波形3」の電流すなわち一般負荷電流及び信号電流(具体的には、単位電流の部分)の双方の成分からなる合成電流となる。なお、ここでは、一例として、図5のビット区間2〜11で流れる「波形3」の電流、すなわち一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流の平均値が“7アンペア”であるものとして説明する。
受信器60の点検信号検出部70の判定部72bのパターン検出手段73aは、図5のビット区間2〜11で流れる「波形3」の検出電流がA/D変換されてデジタル信号として入力されると、これに応答して、検出電流の平均値を取得する。検出電流が一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流であるか否かを判定するために、受信器60の判定部72bは、電源周波数で定まる1周期毎に、検出電流の平均値と予め定められたデジタル値としての閾値(後述の「上限閾値」)とを比較する。この比較により、検出電流の平均値が閾値を超過する値であるときに、合成電流に対して“信号電流あり”すなわち比較した1周期の区間に流れる単位電流が有ると判定する。一方、検出電流の平均値が閾値以下の値であるときに、検出電流に対して“信号電流なし”すなわち比較した1Hzの区間に流れる単位電流が無いと判定する。これにより、受信器60は、検出電流から一般負荷電流及び信号電流従って単位電流の双方の成分からなる合成電流の区間(以下、「“信号電流あり”の区間」と称する)と信号電流従って単位電流の成分を含まない一般負荷電流の成分のみからなる区間(以下、「“信号電流なし”の区間」と称する)とを分離して、1周期毎の単位電流の波形パターンを検出する。
この閾値と信号電流の一周期に対応するビット区間における一般負荷電流及び単位電流との関係は、以下の式(1)のようになる。
|(一般負荷電流の平均値)|≦閾値<|(一般負荷電流の平均値+単位電流の平均値)|=|(合成電流の平均値)| …(1)
例えば、閾値が6アンペアとなっているものとする。そして、受信器60の判定部72bは、図5に示す検出電流の平均値と閾値とを1周期の区間毎に比較するものとする。この場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、検出電流の平均値すなわち合成電流の平均値が6アンペア以下の値であるときに、検出電流に対して単位電流が無いので“信号電流なし”と判定し、また、検出電流の平均値すなわち合成電流の平均値が6アンペアを超過する値であるときに、検出電流に対して単位電流が有るので“信号電流あり”と判定する。判定部72bのパターン検出手段73aは、このような判定を順次行い、判定した結果をデジタルデータとして格納部74の動作データ格納部74bに一旦格納する。
判定部72bのパターン検出手段73aは、動作データ格納部74bに判定結果を格納するとき、“信号電流あり”のビット区間をビット値“1”とし、“信号電流なし”のビット区間をビット値“0”としたビットパターンにして格納する。このビットパターンは、単位電流の電流波形の出現パターンに対応している。
次に、このようにして順次に検出して得られた単位電流の波形パターンの出現パターンから、これら出現パターンに対応する文字の文字信号を特定する。
この特定は、次のようにして行う。判定部72bの文字信号特定手段73bは、判定結果の格納に応答して、動作データ格納部74bから単位電流の出現パターンを表すビットパターンを読み出すとともに、格納部74の参照データ格納部74aから参照データ格納部74aに文字信号のビットパターン単位で予め格納された表1に規定された11種類の文字に対応する文字信号の信号電流の各参照構成パターンを読み出し、単位電流の出現パターンと11種類の各文字の各参照構成パターンとを順次にビットパターン同士で比較する。
この比較において、単位電流の出現パターンを表すビットパターンが11種類の文字の各参照構成パターンのいずれかに合致していれば、このビットパターンは、合致している参照構成パターンが表す文字の信号電流であると判定されるので、判定された信号電流から文字信号を特定することができる。したがって、この比較において、11種類の全ての文字の文字信号が順次に特定されると、特定された順に文字信号を時間配列することにより、点検信号を得て、この点検信号をデジタルデータとして動作データ格納部74bに一旦格納する。このように、点検信号から単位電流の出現パターンを検出し、検出された単位電流の出現パターンから各文字に対応する文字信号を割り出すことによって、検出信号から点検信号を検出することができる。
次に、判定部72bのコード取得手段73cは、検出された点検信号から、コードを取得する。そのため、コード取得手段73cは、動作データ格納部74bから点検信号を読み出してきて、点検信号に含まれる各文字信号を構成している文字信号が各文字と対応関係にあるので、これらも次信号から各文字に変換する。
この変換の一例を、以下の表4に示す。
この表の例では、第1ビット目から第10ビット目までの各ビット区間に単位電流の有無が判定されていて、単位電流の出現パターンが形成されている。この出現パターンに対応する文字は「6」であることが示されている。
コード取得手段73cは、変換された文字を文字信号の信号電流の出現パターンと関連付けて、デジタルデータとして、格納部74の検出コード格納部74cに格納する。このようにして、検出コード格納部74cに予め定められた桁数の文字列がデジタルデータとして格納されることにより、操作者によってキー入力されたコードを取得する。
ディスプレイ制御部72cは、検出コード格納部74cに格納された文字列が予め定められた桁数(ここでは、5桁)揃うと、これに応答して、検出コード格納部74cから5桁の文字列を読み出し、読み出した5桁の文字列をディスプレイ66に出力して、操作者によってキー入力されたコードとしてディスプレイ66に表示させる。
なお、図4(B)を参照して既に説明したように、実施の形態によれば、扱われる文字の種類を数字“0〜9”及びマイナス“−”の11種類に限定することにより、第1ビット目(スタートビット)及び第4ビット目(文字ビットの先頭ビット)のビット値が必ず「1」になり、第3ビット目(分離ビット)のビット値が必ず「0」になるという信号電流の規則性を得ている。これにより、実施の形態によれば、受信器60の点検信号検出部70の判定部72bが、10周期分の区間の合成電流の波形とこの信号電流の規則性と比較することにより、1つの文字信号に相当する10周期分の区間の合成電流の波形が信号電流を含んでいるのか否かを容易に判定できる。その結果、受信器60が、合成電流から文字に対応する信号電流を容易かつ正確に検出することができる。
以下、図6、図7、図8及び図9を参照して、受信器60の動作の詳細につき説明する。なお、図6及び図7は、実施の形態のシステムの動作フローチャートである。また、図8及び図9は、閾値の説明図である。図8及び図9は、一般負荷電流の波形を「波形1」として示し、文字“6”を表す信号電流の波形を「波形2」として示し、さらに、一般負荷電流と信号電流とが合成された合成電流の波形を「波形3」として示している。
受信器60には、電源配線Wiから、図8に「波形3」として示す検出電流としての合成電流が1周期ずつ順次に連続して入力される。合成電流の平均値は、随時測定データとして格納部74の動作データ格納部74bに一旦格納される。そして、受信器60の点検信号検出部70は、図6及び図7にフローで示す一連の動作を行う。なお、既に説明している通り、信号電流は文字に対応して指定された箇所の1周期区間にそれぞれ流れる単位電流で形成されている。ここでは、一般負荷電流の大きさに対応する理論上の信号電流従って単位電流の平均値bがデジタルの参照データとして予め参照データ格納部74aに格納されているものとして説明する。また、参照データ格納部74aには、後述する各式が予め格納されており、以下説明する動作においては、受信器60の点検信号検出部70の判定部72bのパターン検出手段73aは、参照データ格納部74aから各式をそれぞれ読み出して、読み出した式にしたがってそれぞれの演算を行うものする。
すなわち、まず、判定部72bのパターン検出手段73aは、動作データ格納部74bに格納されたデジタルの測定データ(図8[波形3]参照)を読み出して、1周期目の検出電流を計測して平均値mを算出する(S105)。図8では、各周期が丸囲み数字で示されている。すなわち、1周期目の波形が丸囲み数字の1で示されている。
1周期目の検出電流は、図8に示すように、信号電流の成分を含まない、一般負荷電流の成分のみからなる電流となっている。したがって、1周期目の検出電流の平均値m(=a)は、一般負荷電流の平均値を表している。なお、図8に示す例では、1周期目の検出電流の平均値m(=a)は、5アンペアとなっている。したがって、図8に示す例では、判定部72bのパターン検出手段73aは、1周期目の検出電流の平均値m(=a)として、5アンペアを算出する。
判定部72bのパターン検出手段73aは、1周期目の検出電流の平均値m(=a)を算出すると、これに応答して、以下の式(2)にしたがって、受信器60に入力される電流を検出するための閾値(以下、「下限閾値」と称する)cをデジタルデータとして算出して、算出した下限閾値cを動作データ格納部74bに格納する(S110)。
c=a×1.0 …(2)
また、判定部72bのパターン検出手段73aは、参照データ格納部74aから信号電流従って単位電流の平均値bを読み出して、以下の式(3)にしたがって閾値(すなわち、「上限閾値」)eを算出する。この上限閾値eは、検出電流が一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流であるか否かを判定するために用いられる。パターン検出手段73aは、算出した上限閾値eをデジタルデータとして動作データ格納部74bに格納する(S110)。
e=(m+b×0.6) …(3)
以下、値を算出または特定して動作データ格納部74bに格納する動作を、「設定」と称する。
なお、図8に示す例では、1周期目の検出電流の平均値m(=a)は、5アンペアとなっている。そのため、式(2)の演算結果は5.0となる。したがって、図8に示す例では、判定部72bのパターン検出手段73aは、下限閾値cとして5.0アンペアを表すデジタル値を、動作データ格納部74bに設定する。
また、図8に示す例では、信号電流の平均値bは、2アンペアとなっている。そのため、式(3)の演算結果は6.2アンペアとなる。したがって、図8に示す例では、判定部72bのパターン検出手段73aは、上限閾値eとして6.2アンペアを表すデジタル値を設定する。
判定部72bのパターン検出手段73aは、下限閾値c及び上限閾値eを設定すると、これに応答して、動作データ格納部74bに格納された測定データ(図8[波形3]参照)を読み出して、2周期目の検出電流を計測して平均値m(=d)を算出する(S115)。図8に示すように、2周期目(図8中、丸囲み数字2で示す。)は、第1ビット目すなわちスタートビット区間となっている。このため、2周期目の検出電流は、一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流となっている。なお、図8に示す例では、2周期目の検出電流の平均値m(=d)は、7アンペアとなっている。したがって、図8に示す例では、判定部72bのパターン検出手段73aは、2周期目の検出電流の平均値dとして、7アンペアを算出する。
判定部72bのパターン検出手段73aは、2周期目の検出電流の平均値dを算出すると、これに応答して、動作データ格納部74bから下限閾値cを読み出し、2周期目の検出電流の平均値dが下限閾値cより大きいか否かを判定する(S120)。
S120の判定で、2周期目の検出電流の平均値m(=d)が下限閾値cより大きい(Yes)と判定された場合に、工程はS125に進む。一方、2周期目の検出電流の平均値dが下限閾値c以下である(No)と判定された場合に、工程はS130を経てS110に戻る。
すなわち、S120の判定で、2周期目の検出電流の平均値dが下限閾値cより大きいと判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、動作データ格納部74bから上限閾値eを読出し、2周期目の検出電流の平均値dが上限閾値eより大きいか否かを判定する(S125)。
他方、S120の判定で、2周期目の検出電流の平均値dが下限閾値c以下であると判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、2周期目の検出電流の平均値を、1周期目の検出電流の平均値mに設定し直して(S130)、再度、S110からS120の動作を繰り返す。この場合、パターン検出手段73aは、設定し直した1周期目の検出電流の平均値mに基づいて、下限閾値c及び上限閾値eを設定し(S110)、次の周期の検出電流を2周期目の検出電流として計測し、平均値mを算出する(S115)。
S125の判定で、2周期目の検出電流の平均値m(=d)が上限閾値eより大きい(Yes)と判定された場合に、工程はS140に進む。一方、2周期目の検出電流の平均値m(=d)が上限閾値e以下である(No)と判定された場合に、工程はS115に戻る。
すなわち、S125の判定で、2周期目の検出電流の平均値m(=d)が上限閾値eより大きいと判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第1ビット目(スタートビット区間)に対応するビット値として単位電流が有ることを表す“1”を設定、すなわち、信号電流の第1ビット目のビット値として“1”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S140)。
他方、S125の判定で、2周期目の検出電流の平均値dが上限閾値e以下であると判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、次の周期の検出電流を2周期目の検出電流として計測し、平均値mを算出する(S115)。
S140で、判定部72bのパターン検出手段73aが、信号電流の第1ビット目すなわちスタートビット区間に対応するビット値として“1”を設定すると、パターン検出手段73aは、これに応答して、動作データ格納部74bに格納された測定データ(図8[波形3]参照)を読み出して、3周期目の検出電流を計測して平均値m(=f)を算出する(S150)。図8に示すように、3周期目の検出電流は、一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなっている。なお、図8に示す例では、3周期目の検出電流の平均値m(=f)は、7アンペアとなっている。したがって、図8に示す例では、判定部72bのパターン検出手段73aは、3周期目の検出電流の平均値m(=f)として、7アンペアを算出する。
判定部72bのパターン検出手段73aは、3周期目の検出電流の平均値m(=f)を算出すると、これに応答して、動作データ格納部74bから上限閾値eを読み出し、3周期目の検出電流の平均値m(=f)が上限閾値eより大きいか否かを判定する(S155)。
S155の判定で、3周期目の検出電流の平均値m(=f)が上限閾値eより大きい(Yes)と判定された場合に、工程はS160を経てS170に進む。一方、S155の判定で、3周期目の検出電流の平均値m(=f)が上限閾値e以下である(No)と判定された場合に、工程はS165を経てS170に進む。
すなわち、S155の判定で、3周期目の検出電流の平均値m(=f)が上限閾値eより大きい(Yes)と判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第2ビット目(奇数パリティビット区間)に対応するビット値として単位電流があることを表す“1”を設定、すなわち、信号電流の第2ビット目のビット値として“1”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S160)。
他方、S155の判定で、3周期目の検出電流の平均値m(=f)が上限閾値e以下である(No)と判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第2ビット目(奇数パリティビット区間)に対応するビット値として単位電流が無いことを表す“0”を設定、すなわち、信号電流の第2ビット目のビット値として“0”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S165)。
S160またはS165で、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第2ビット目(奇数パリティビット区間)に対応するビット値を設定すると、これに応答して、動作データ格納部74bに格納された測定データ(図8[波形3]参照)を読み出して、4周期目の検出電流を計測して平均値gを算出する(S170)。4周期目の検出電流は、図8に示すように、一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流の第3ビット目すなわち分離ビット区間となっている。なお、図8に示す例では、4周期目の検出電流の平均値m(=g)は、5アンペアとなっている。したがって、図8に示す例では、判定部72bのパターン検出手段73aは、4周期目の検出電流の平均値m(=g)として、5アンペアを算出する。
判定部72bのパターン検出手段73aは、4周期目の検出電流の平均値m(=g)を算出すると、これに応答して、動作データ格納部74bから上限閾値eを読み出し、4周期目の検出電流の平均値m(=g)が上限閾値eより大きいか否かを判定する(S175)。
S175の判定で、4周期目の検出電流の平均値m(=g)が上限閾値e以下である(No)と判定された場合に、工程はS180を経てS190に進む。一方、S175の判定で、4周期目の検出電流の平均値m(=g)が上限閾値eより大きい(Yes)と判定された場合に、工程はS176に進む。
すなわち、S175の判定で、4周期目の検出電流の平均値m(=g)が上限閾値e以下である(No)と判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第3ビット目(分離ビット区間)に対応するビット値として“0”を設定、すなわち、信号電流の第3ビット目のビット値として“0”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S180)。
他方、S175の判定で、4周期目の検出電流の平均値m(=g)が上限閾値eより大きいと判定された(Yes)場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、現在検出している信号電流が、1文字目の信号電流であるか否かの判定を行う(S176)。この判定は、例えば、パターン検出手段73aが、格納部74の検出コード74cに格納されている文字列を参照して行う。
S176の判定で、1文字目でない(No)と判定された場合は、工程はS177を経てS190に進む。他方、S176の判定で、1文字目(Yes)と判定された場合は、工程はS178を経てS110に戻る。
すなわち、S176の判定で、1文字目でないと判定された場合は、信号電流の第3ビット目(分離ビット区間)に対応するビット値として“1”を設定、すなわち、信号電流の第3ビット目のビット値として“1”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S177)。
他方、S176の判定で、1文字目であると判定された場合は、判定部72bのパターン検出手段73aは、4周期目の検出電流の平均値を、1周期目の検出電流の平均値mに設定し直して(S178)、再度、S110からS175の動作を繰り返す。
S180又はS177で、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第3ビット目すなわち分離ビット区間に対応するビット値として“0” 又は“1”を設定すると、これに応答して、パターン検出手段73aは、動作データ格納部74bに格納された測定データ(図8[波形3]参照)を読み出して、5周期目の検出電流を計測して平均値m(=h)を算出する(S190)。5周期目の検出電流は、図8に示すように、一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流の第4ビット目すなわち文字ビットの先頭ビット区間となっている。なお、図8に示す例では、5周期目の検出電流の平均値m(=h)は、7アンペアとなっている。したがって、図8に示す例では、判定部72bのパターン検出手段73aは、5周期目の検出電流の平均値m(=h)として、7アンペアを算出する。
判定部72bのパターン検出手段73aは、5周期目の検出電流の平均値m(=h)を算出すると、これに応答して、動作データ格納部74bから上限閾値eを読み出し、5周期目の検出電流の平均値m(=h)が上限閾値eより大きいか否かを判定する(S195)。
S195の判定で、5周期目の検出電流の平均値m(=h)が上限閾値eより大きい(Yes)と判定された場合に、工程はS200を経てS210に進む。一方、S195の判定で、5周期目の検出電流の平均値m(=h)が上限閾値e以下である(No)と判定された場合に、工程はS196に進む。
すなわち、S195の判定で、5周期目の検出電流の平均値m(=h)が上限閾値eより大きいと判定された場合(Yes)に、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第4ビット目(文字ビットの先頭ビット区間)に対応するビット値として“1”を設定、すなわち、信号電流の第4ビット目のビット値として“1”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S200)。
他方、S195の判定で、5周期目の検出電流の平均値m(=h)が上限閾値e以下であると判定された(No)場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、現在検出している信号電流が、1文字目の信号電流であるか否かの判定を行う(S196)。S196の判定は、S176と同様に行われる。
S196の判定で、1文字目でない(No)と判定された場合は、工程はS197を経てS210に進む。他方、S196の判定で、1文字目(Yes)と判定された場合は、工程はS198を経てS110に戻る。
すなわち、S196の判定で、1文字目でないと判定された場合は、信号電流の第4ビット目(文字ビットの先頭ビット区間)に対応するビット値として“0”を設定、すなわち、信号電流の第4ビット目のビット値として“0”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S197)。
他方、S196の判定で、1文字目であると判定された場合は、判定部72bのパターン検出手段73aは、5周期目の検出電流の平均値を、1周期目の検出電流の平均値mに設定し直して(S198)、再度、S110からS195の動作を繰り返す。
S200又はS197で、信号電流の第4ビット目すなわち文字ビットの先頭ビット区間に対応するビット値として“1” 又は“0”が設定されると、判定部72bのパターン検出手段73aは、S210の文字変換の工程を行う。
S210で、判定部72bのパターン検出手段73aは、動作データ格納部74bに格納された測定データ(図8[波形3]参照)を読み出して、(5+n)周期目(ただし、nは1〜6の整数)の検出電流の平均値xを計測する。文字変換の工程について、図7を参照して説明する。
文字変換の工程では、判定部72bのパターン検出手段73aは、先ず、nを1に設定する(S215)。nを1に設定した後、パターン検出手段73aは、5+n周期目、すなわち、6周期目の検出電流を計測して平均値m(=x)を算出する(S220)。判定部72bは、6周期目の検出電流の平均値mを算出すると、これに応答して、動作データ格納部74bから上限閾値eを読み出し、6周期目の検出電流の平均値mが上限閾値eより大きいか否かを判定する(S225)。
S225の判定で、6周期目の検出電流の平均値mが上限閾値eより大きい(Yes)と判定された場合に、工程はS230を経てS240に進む。一方、S225の判定で、6周期目の検出電流の平均値mが上限閾値e以下である(No)と判定された場合に、工程はS235を経てS240に進む。
すなわち、S225の判定で、6周期目の検出電流の平均値mが上限閾値eより大きいと判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第4+nビット目、すなわち第5ビット目に対応するビット値として単位電流があることを表す“1”を設定、すなわち、信号電流の第5ビット目のビット値として“1”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S230)。
他方、S225の判定で、6周期目の検出電流の平均値mが上限閾値e以下であると判定された場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、信号電流の第4+nビット目、すなわち第5ビット目に対応するビット値として単位電流がないことを表す“0”を設定、すなわち、信号電流の第5ビット目のビット値として“0”を対応付けて格納部74の動作データ格納部74bに格納する(S235)。
S230またはS235で、信号電流の第5ビット目に対応するビット値が設定されると、これに応答して、判定部72bのパターン検出手段73aは、nに1を加算する(S240)。
判定部72bのパターン検出手段73aは、nに1を加算するとこれに応答して、1を加算した後の値nが6よりも大きいか否かを判定する(S245)。
S245の判定で、nが6より大きい(Yes)と判定された場合は、S250に進む。一方、nが6以下である(No)と判定された場合は、再び、S220を行う。S220〜S245は、nが6より大きくなるまで繰り返される。
第6〜11周期目の検出電流は、図8に示すように、一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流の第5〜10ビット目の区間となっている。なお、図8に示す例では、6、8、9、及び11周期目の区間の検出電流(すなわち、5、7、8、及び10ビット目の区間の信号電流の成分を含む合成電流)の平均値xが7アンペアとなり、7及び10周期目の検出電流(すなわち、6及び9ビット目の区間の信号電流の成分を含む合成電流)の平均値xが5アンペアとなっている。したがって、図8に示す例では、判定部72bのパターン検出手段73aは、6、8、9、及び11周期目の区間の検出電流(すなわち、5、7、8、及び10ビット目の区間の信号電流の成分を含む合成電流)の平均値xとして、7アンペアを計測し、7及び10周期目の検出電流(すなわち、6及び9ビット目の区間の信号電流の成分を含む合成電流)の平均値xとして、5アンペアを計測する。
S245の判定で、nが6より大きいと判定された場合に、判定部72bの文字信号特定手段73bは、これに応答して、奇数パリティチェックを行う(S250)。
S250では、文字信号特定手段73bは、第2ビット目から第9ビット目までのQの個数が、奇数であるか否かを判定する。Qが奇数の場合、すなわち、奇数パリティが正しい(Yes)場合は、S255に進む。他方、Qが偶数の場合、すなわち、奇数パリティが正しくない(No)場合は、S270に進む。
S250の判定で、奇数パリティが正しいと判定された場合に、判定部72bの文字信号特定手段73bは、これに応答して、反転パリティチェックを行う(S255)。
S255では、文字信号特定手段73bは、第9ビット目と第10ビット目の値が反転しているか否か、すなわち、いずれか一方が「1」で、他方が「0」であるか否かを判定する。値が反転している場合、すなわち、反転パリティが正しい(Yes)場合は、続いて、S260の工程に進む。他方、第9ビット目と第10ビット目が同じ値の場合、すなわち、反転パリティが正しくない(No)場合は、S270に進む。
S260の工程では、文字信号特定手段73bは、動作データ格納部74bから第3ビット目から第9ビット目の区間の信号電流のビット値を読み出し、読み出したビット値からなるビットパターンを、参照データ格納部74aから読み出した第3ビット目から第9ビット目の区間の参照構成パターンと照合して、対応する文字データ(以下、単に「文字」と称する)に変換する。この照合によって、信号電流のビットパターンが数字“0〜9”及びマイナス“−”のいずれかに合致するか否かについて判定されて、当該ビットパターンに対応付けられた文字が特定される。判定部72bの文字信号特定手段73bは、変換した文字と当該ビットパターンとを関連付けてデジタルデータとして動作データ格納部74bに格納する(S265)。
上述のS265の判定で、変換された文字が数字“0〜9”及びマイナス“−”のいずれかに合致する(Yes)と判定された場合に、工程はS275に進み、変換された文字が数字“0〜9”及びマイナス“−”のいずれかにも合致しないと判定された場合に、工程はS270を経てS275に進む。
すなわち、S265の判定で、変換された文字が数字“0〜9”及びマイナス“−”のいずれかに合致すると判定された場合に、判定部72bの文字信号特定手段73bは、変換された文字をデジタルデータとして格納部74の検出コード格納部74cに格納する(S275)。他方、S265の判定で、変換された文字が数字“0〜9”及びマイナス“−”のいずれかに合致しないと判定された場合に、判定部72bの文字信号特定手段73bは、変換された文字に対して不明文字を表す符号“?”を対応付ける(S270)。その後、不明文字を表す符号“?”をデジタルデータとして格納部74の検出コード格納部74cに格納する(S275)。
なお、この文字への変換処理は、上述した点検信号を構成するM個の文字の全てに関して文字信号の特定が行われて、M個の変換された文字からなる文字列として検出コード格納部74cに格納される。このとき、先に変換された文字列が存在する場合は、変換された文字がコードの2番目以降の文字列であるので、変換された文字を、先に変換された文字列の後に追加して格納部74の検出コード格納部74cに格納する。この後、工程はS280に進む。このようにして、上述の単位電流の出現パターンから、蓄積された文字列が、既に説明した点検信号に対応するデジタルデータとして、検出される。
S210(S215〜S275)で、文字変換が行われた後、判定部72bのコード取得手段73cは、検出コード格納部74cに格納された、M個のNビットの文字信号からなる点検信号のビットパターンを読み出すとともに、参照データ格納部74aから、入力コードを構成するM桁の文字に対応する文字参照ビットパターンを読み出してきて、双方のビットパターンを照合してM桁のコードを取得する。
判定部72bのコード取得手段73cは、変換された文字を格納部74の検出コード格納部74cに格納すると、これに応答して、検出コード格納部74cから格納された文字列を読み出し、読み出された文字列が5(M=5)桁か否かを上述のビットパターンの照合により判定する(S280)。
S280の判定で、読み出された文字列が5桁である(Yes)と判定された場合に、工程はS290を経てS105に戻り、読み出された文字列が5桁でない(No)と判定された場合に、工程は直接S105に戻る。
すなわち、S280の判定で、読み出された文字列が5桁であると判定された場合に、ディスプレイ制御部72cは、これに応答して、検出コード格納部74cから格納された文字列を読み出し、読み出した文字列を点検信号の受信回数とともにディスプレイ66に出力する。これにより、ディスプレイ66は、点検信号の受信回数に対応する文字列を表示する(S290)。この後、工程はS105に進む。
S280またはS290の後、判定部72bは、次の周期である12周期目の検出電流を1周期目の検出電流に設定し直して、再度、同様の動作、すなわち、S105〜S290の動作を繰り返す。
なお、S280の判定で、読み出された文字列が5桁でない場合は、以下のS281〜S283の工程を行う構成にしても良い。
S280の判定後、1周期分、すなわち、次の周期である12周期目の区間分を遅延させて、その次の周期である13周期目の検出電流を1周期目の検出電流として計測し、平均値mを算出する(S281)。判定部72bのパターン検出手段73aは、1周期目の検出電流の平均値mを算出すると、これに応答して、上記の式(2)及び(3)にしたがって、下限閾値c及び上限閾値eを設定する(S282)。
判定部72bのパターン検出手段73aは、下限閾値c及び上限閾値eの設定に応答して、動作データ格納部74bに格納された測定データを読み出して、2周期目の検出電流の平均値mを算出する。この2周期目の検出電流は、スタートビットに対応する区間であり、一般負荷電流及び信号電流の双方の成分を含んでいる。そこで、パターン検出手段73aは、2周期目の終端のゼロクロスを検索して、測定タイミングの微調整を行う(S283)。S283で、測定タイミングの微調整を行った後、S150の工程に進む。
このようにして、受信器60は、電源配線Wiを流れる合成電流からコードを取得して、ディスプレイ66に表示する。
ところで、従来の配線経路点検システムに係る受信器(以下、「従来の受信器」と称する)は、合成電流が信号電流の成分を含む電流であるにもかかわらず、合成電流に対して“信号電流なし”と判定するときがあるという不都合があった。以下、図9を参照して、この不都合につき説明する。
すなわち、一般負荷電流は、文字と文字との間の区間で減少する場合がある。例えば、図9に示す例では、「波形1」として示す一般負荷電流は、ビット区間1〜11では、平均値が5アンペアとなっているのに対して、ビット区間12以降では、平均値が3アンペアとなっている。そのため、「波形3」として示す合成電流は、ビット区間14以降において、信号電流の成分を含む電流であるにもかかわらず、平均値が5アンペアとなっている。このような場合に、従来の受信器であれば、合成電流の平均値の5アンペアは、閾値の6.2アンペア以下となっているので、合成電流に対して“信号電流なし”と判定する。したがって、このような場合に、従来の受信器は、合成電流が信号電流の成分を含む電流であるにもかかわらず、合成電流に対して“信号電流なし”と判定する。
そこで、この発明の実施の形態では、このような判定がなされることがないように、以下のような工夫を行い、これによって、受信器60の受信精度を向上させている。
すなわち、実施の形態では、判定部72bのパターン検出手段73aは、文字と文字との間の区間(図9に示す例では、ビット区間12及び13の2周期分の区間)で測定される一般負荷電流の平均値(ここでは、“3アンペア”)を基準にして、文字単位で、閾値(上限閾値)を新たな値(ここでは、“4アンペア”)に再設定すなわち変更する構成としている。
具体的には、実施の形態では、格納部74の参照データ格納部74aは、信号電流の仮想的な平均値(ここでは、“2アンペア”)を予め格納しておき、判定部72bのパターン検出手段73aは、文字と文字との間の区間(図9に示す例では、ビット区間12及び13の2周期分の区間)で一般負荷電流の平均値(ここでは、“3アンペア”)を測定したときに、参照データ格納部74aから信号電流の仮想的な平均値(“2アンペア”)を読み出し、測定された一般負荷電流の平均値の3アンペアに読み出した信号電流の仮想的な平均値の2アンペアを加算する。これにより、パターン検出手段73aは、一般負荷電流及び信号電流の双方の成分を含む合成電流の仮想的な平均値として“5アンペア”の値を算出し、一般負荷電流及び信号電流の双方の成分を含む合成電流の仮想的な平均値(ここでは、“5アンペア”)を算出すると、これに応答して、一般負荷電流の平均値(ここでは、“3アンペア”)と一般負荷電流及び信号電流の双方の成分を含む合成電流の仮想的な平均値(ここでは、“5アンペア”)との間で、新たな閾値を決定する。具体的には、一般負荷電流の波高値の“3アンペア”と一般負荷電流及び信号電流の双方の成分を含む合成電流の仮想的な平均値の“5アンペア”との中間値である“4アンペア”を、新たな閾値として決定する。パターン検出手段73aは、新たな閾値を決定すると、これに応答して、参照データ格納部74aに格納されている旧来の閾値(ここでは、“5アンペア”)に対して、決定した新たな閾値(ここでは、“4アンペア”)を上書きする。これにより、受信器60は、閾値を、新しい値に再設定して変更する。
このように、この実施の形態では、受信器60が、文字と文字との間の予め定められた間隔(ここでは、2周期分の区間)で測定される一般負荷電流の平均値(ここでは、“3アンペア”)を基準にして、文字単位で、閾値を新たな値(ここでは、“4アンペア”)に再設定する。これにより、受信器60は、平均値が前の文字の値よりも減少している一般負荷電流を含む合成電流(ここでは、図9に示すビット区間14以降の合成電流)に対しても、“信号電流あり”と判定することができる。したがって、この実施の形態は、受信エラーの発生頻度を低減することができ、よって、受信精度を向上させることができる。
なお、上述の説明では新しい閾値を4アンペアとして説明したが、判定部72bのパターン検出手段73aは、厳密には、新しい閾値を以下のように設定するとよい。
すなわち、判定部72bのパターン検出手段73aは、電源が入れられてから最初に測定した検出電流の平均値(ここでは、図9に示す1周期目の合成電流の電流値“5アンペア”)を一般負荷電流の平均値aとして格納部74の動作データ格納部74bに格納する。また、パターン検出手段73aは、下限閾値c=a×1.0=5.0アンペアを算出して、下限閾値cを格納部74(具体的には、動作データ格納部74b)に格納する。また、パターン検出手段73aは、上限閾値e=(a+b×0.6)=(5.0+2×0.6)=6.2アンペアを算出して、上限閾値eを格納部74の動作データ格納部74bに格納する。さらに、パターン検出手段73aは、最初の1文字分の合成電流の波形に対しては、これら、値を“5.0アンペア”とする下限閾値c及び値を“6.2アンペア”とする上限閾値eを用いて、一般負荷電流の成分のみからなる合成電流の区間と一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流の区間とを区分する。
ここで、文字と文字との間の区間で、一般負荷電流の平均値が減少して、一般負荷電流のみの成分からなる合成電流の平均値が下限閾値cである5.0アンペア以下となったとする。例えば、図9に示すように、ビット区間12及びビット区間13で、一般負荷電流のみの成分からなる合成電流の平均値が3アンペアになったとする。この場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、下限閾値cを再計算して新たな値(具体的には、c=3×1.0)=3.0アンペア)を格納部74の動作データ格納部74bに格納する。同様に、パターン検出手段73aは、上限閾値eも再計算して新たな値(具体的には、e=(3+2×0.6)=4.2アンペア)を格納部74の動作データ格納部74bに格納する。パターン検出手段73aは、次の1文字分の合成電流の波形に対しては、これら、値を“3.0アンペア”とする下限閾値c及び値を“4.2アンペア”とする上限閾値eを用いて、一般負荷電流の成分のみからなる合成電流の区間と一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流の区間とを区分する。
なお、ここで、文字と文字との間の区間で、一般負荷電流の平均値が増大して、一般負荷電流のみの成分からなる合成電流の平均値が上限閾値eである4.2アンペア以上となったとする。例えば、ビット区間12及びビット区間13で、一般負荷電流のみの成分からなる合成電流の平均値が6アンペアになったとする。この場合に、判定部72bのパターン検出手段73aは、下限閾値cを再計算して新たな値(具体的には、c=6×1.0)=6.0アンペア)を格納部74の動作データ格納部74bに格納する。同様に、パターン検出手段73aは、上限閾値eも再計算して新たな値(具体的には、e=(6+2×0.6)=7.2アンペア)を格納部74の動作データ格納部74bに格納する。パターン検出手段73aは、次の1文字分の合成電流の波形に対しては、これら、値を“6.0アンペア”とする下限閾値c及び値を“7.2アンペア”とする上限閾値eを用いて、一般負荷電流の成分のみからなる合成電流の区間と一般負荷電流及び信号電流の双方の成分からなる合成電流の区間とを区分する。
この実施の形態では、コードを取得するために、検出電流の平均値を用いて、単位電流の有無を判定している。単位電流の有無の判定には、検出電流の波高値(最大値)を用いることも可能であるが、負荷電流が大きく歪んだ場合など、単位電流の有無の判定ができない場合がある。これに対し、検出電流の平均値を用いると、負荷電流が大きく歪んでいる場合でも、単位電流の有無を正しく判定できる。
(実施の形態の配線経路点検システムの使用例)
以下に、図10、図11、及び図12を参照して、実施の形態に係る電源配線点検システムの使用方法につき説明する。なお、図10は、受信器60のディスプレイ66の表示の一例を示す図である。また、図11及び図12は、それぞれ、実施の形態のシステムの使用例を示す図である。
図10に示すように、受信器60は、電源配線Wiを流れる合成電流の検出電流から既に説明したようにしてコードを取得して、ディスプレイ制御部72cによってそのコードと点検信号の受信回数とをディスプレイ66に表示する。以下、その具体例につき説明する。
例えば、図10に示す例では、受信器60は、1回目に検出電流から点検信号を検出した場合に、1行目に、1回目の点検信号の受信回数として数字“1”と1回目の点検信号に対応するコードとして“101”を表示している。また、受信器60は、2回目に点検信号を検出した場合に、1行目に、1回目の点検信号の受信回数である“1”と1回目の点検信号に対応するコードである“101”を表示し、2行目に、2回目の点検信号の受信回数として数字“2”と2回目の点検信号に対応するコードとして“102”を表示している。また、受信器60は、3回目に点検信号を受信した場合に、1行目に、1回目の点検信号の受信回数である“1”と1回目の点検信号に対応するコードである“101”を表示し、2行目に、3回目の点検信号の受信回数として数字“3”と3回目の点検信号に対応するコードとして“103”を表示している。
操作者は、受信器60のディスプレイ66のこのような表示を確認することにより、図11または図12に示す、電源配線Wiの配線間違いを点検することができる。
図11は、配線間違いが存在する場合の例を示している。すなわち、図11は、101号室用電力量計Wh101が102号室用の電源配線Wiに接続され、かつ、102号室用電力量計Wh102が101号室用の電源配線Wiに間違って配線されている場合の例を示している。このような間違いに対しては、操作者が発信器10及び受信器60を以下のように使用することにより、検出することができる。
操作者は、まず、受信器60aを101号室用電力量計Wh101の電源配線Wiに取り付けて受信待ちの状態に設定し、同様に、受信器60bを102号室用電力量計Wh102の電源配線Wiに取り付けて受信待ちの状態に設定する。
次に、操作者は、101号室のコンセントCNに発信器10を接続して、発信器10の入力キー14を操作して、例えば部屋番号である「101」を入力する。これにより、発信器10が、コードとして「−−101」を出力する。このとき、102号室用電力量計Wh102の電源配線Wiに取り付けられた受信器60bには、電源配線Wiから、「−−101」というコードを表す信号成分を含む合成電流が入力される。したがって、受信器60bのディスプレイ66は、1行目に、1回目の点検信号の受信回数である“1”と1回目の点検信号に対応するコードである“101”を表示する。なお、101号室用電力量計Wh101の電源配線Wiに取り付けられた受信器60aには、信号成分を含む合成電流が入力されない。そのため、受信器60aのディスプレイ66は、何も表示しない。
次に、操作者は、102号室のコンセントCNに発信器10を接続して、発信器10の入力キー14を操作して、例えば部屋番号である「102」を入力する。これにより、発信器10が、コードとして「−−102」を出力する。このとき、101号室用電力量計Wh101の電源配線Wiに取り付けられた受信器60aには、電源配線Wiから、「−−102」というコードを表す信号成分を含む合成電流が入力される。したがって、受信器60aのディスプレイ66は、1行目に、1回目の点検信号の受信回数である“1”と1回目の点検信号に対応するコードである“102”を表示する。なお、102号室用電力量計Wh102の電源配線Wiに取り付けられた受信器60bには、信号成分を含む合成電流が入力されない。そのため、受信器60bのディスプレイ66は、1回目の点検信号の受信回数である“1”と1回目の点検信号に対応するコードである“101”を表示したままとなる。
次に、操作者は、各電力量計Wh101及びWh102に取り付けられた受信器60a及び60bのディスプレイ66の表示を確認する。図11に示す例では、受信器60a及び60bのディスプレイ66に表示されたコードすなわち部屋番号が異なる。したがって、操作者は、配線間違い(ここでは、配線の取り違え)が存在していることを検出することができる。
図12は、重複計量が存在する場合の例を示している。すなわち、図12は、102号室用電力量計Wh102の電源側の電源配線Wiが101号室用電力量計Wh101の負荷側の電源配線Wiに間違って接続されている場合の例を示している。このような間違いに対しては、操作者が発信器10及び受信器60を以下のように使用することにより、検出することができる。
操作者は、まず、受信器60aを101号室用電力量計Wh101の電源配線Wiに取り付けて受信待ちの状態に設定し、同様に、受信器60bを102号室用電力量計Wh102の電源配線Wiに取り付けて受信待ちの状態に設定する。
次に、操作者は、101号室のコンセントCNに発信器10を接続して、発信器10の入力キー14を操作して、例えば部屋番号である「101」を入力する。これにより、発信器10が、コードとして「−−101」を出力する。このとき、101号室用電力量計Wh101の電源配線Wiに取り付けられた受信器60aには、電源配線Wiから、「−−101」というコードを表す信号成分を含む合成電流が入力される。したがって、受信器60aのディスプレイ66は、1行目に、1回目の点検信号の受信回数である“1”と1回目の点検信号に対応するコードである“101”を表示する。なお、102号室用電力量計Wh102の電源配線Wiに取り付けられた受信器60bには、信号成分を含む合成電流が入力されない。そのため、受信器60bのディスプレイ66は、何も表示しない。
次に、操作者は、102号室のコンセントCNに発信器10を接続して、発信器10の入力キー14を操作して、例えば部屋番号である「102」を入力する。これにより、発信器10が、コードとして「−−102」を出力する。このとき、101号室用電力量計Wh101の電源配線Wiに取り付けられた受信器60aと102号室用電力量計Wh102の電源配線Wiに取り付けられた受信器60bには、電源配線Wiから、「−−102」というコードを表す信号成分を含む合成電流が入力される。したがって、受信器60aのディスプレイ66は、1行目に、1回目の点検信号の受信回数である“1”と1回目の点検信号に対応するコードである“101”を表示し、2行目に、2回目の点検信号の受信回数である“2”と2回目の点検信号に対応するコードである“102”を表示する。一方、受信器60bのディスプレイ66は、1行目に、1回目の点検信号の受信回数である“1”と1回目の点検信号に対応するコードである“102”を表示する。
次に、操作者は、各電力量計Wh101及びWh102に取り付けられた受信器60a及び60bのディスプレイ66の表示を確認する。図12に示す例では、受信器60aのディスプレイ66は、複数のコードすなわち部屋番号を表示している。したがって、操作者は、配線間違い(ここでは、配線の重複接続)が存在していることを検出することができる。
この発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、受信器60は、好ましくは、予め定められた回数(例えば、6回)だけ連続して受信することができ、かつ、ディスプレイ66に適宜表示することができる構成にするとよい。例えば、受信器60のディスプレイ66は、1行目に1回目に受信したコードを表示し、2行目に2回目以降に受信したコードを表示する。そして、操作者が途中の受信回数のコードを確認したい場合に、受信器60の入力キー64が操作(例えば、送りボタンが押下)されることにより、受信器60のディスプレイ66が、2行目に2回目から最後までに受信されたコードを繰り返し表示するものとする。そして、受信器60のディスプレイ66は、最後に受信されたコードが表示された後に、送りボタンが押下されることにより、例えば「Data_End」等のデータの終了を表示するものとする。さらに、受信器60のディスプレイ66は、データの終了が表示された後に、送りボタンが押下されることにより、最初の状態、すなわち、1行目に1回目に受信したコードを表示し、2行目に2回目以降に受信したコードを表示するものとする。また、受信器60のディスプレイ66は、受信器60の電源スイッチ62が切断されることで、表示されている受信回数と受信回数に対応するコードが消去されるものとする。
また、受信器60の検出コード格納部74cに格納されたデータすなわち受信回数に対応するコードは、好ましくは、例えばパーソナルコンピュータ等の図示せぬ外部装置を入出力部78に接続することにより、外部装置に出力することができるようにするとよい。
なお、この実施の形態に係る受信器の点検信号検出部は、好ましくは、文字と文字との間に、予め定められた周期(例えば、2周期)だけ、閾値変更のための信号電流が存在しない区間を設けるとよい。これにより、この実施の形態に係る配線経路点検システムは、文字単位に閾値を変更して、一般負荷電流の変化に伴う受信エラーを少なくすることができる。そのため、この実施の形態に係る配線経路点検システムによれば、さらに、信号電流の受信精度を高めることができる。