JP2011042636A - カルシウム結晶化阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】カルシウムの腸管内での吸収を促進する成分として有効なカルシウム結晶化阻害剤の提供。
【解決手段】魚卵タンパク質の酵素分解物を有効成分とする体内でのカルシウムの結晶化を抑制し、カルシウムの腸管内での吸収を促進するカルシウム結晶化阻害剤、ならびにこれを含有してなる飲食物並びに飼料。魚卵タンパク質の酵素分解物を有効成分とするカルシウム吸収促進用添加剤。食品用添加剤であるカルシウム吸収促進用添加剤。飼料用添加剤であるカルシウム吸収促進用添加剤。医薬品用添加剤であるカルシウム吸収促進用添加剤。
【選択図】 図1
【解決手段】魚卵タンパク質の酵素分解物を有効成分とする体内でのカルシウムの結晶化を抑制し、カルシウムの腸管内での吸収を促進するカルシウム結晶化阻害剤、ならびにこれを含有してなる飲食物並びに飼料。魚卵タンパク質の酵素分解物を有効成分とするカルシウム吸収促進用添加剤。食品用添加剤であるカルシウム吸収促進用添加剤。飼料用添加剤であるカルシウム吸収促進用添加剤。医薬品用添加剤であるカルシウム吸収促進用添加剤。
【選択図】 図1
Description
本発明は、カルシウム吸収促進剤として用いることができるカルシウム結晶化阻害剤に関する。本発明のカルシウム吸収促進剤は、カルシウム吸収促進用添加剤として、食品、飼料、医薬品などに使用される。
近年ミネラルの栄養的重要性が明らかになっている。その中で今後高年令化社会をむかえるにあたり最も重要なカルシウムを例にとると、我が国の厚生省が発表した平成3年度国民栄養調査によると、日本人の平均的なカルシウム摂取量は1日当たり平均540ミリグラムであり所容量の600ミリグラムを大きく下回っている。近年、カルシウムの摂取量不足は、骨粗鬆症、高血圧、大腸癌などの重大な疾病を引き起こすことが知られるようになった。特に骨粗鬆症については、骨折を容易に引き起こし、特に老人が大腿骨頸部骨折、腰椎圧迫骨折を起こした場合には寝たきりとなる確率が高く、老人が寝たきりになる原因の第2位は骨折によるものである。骨粗鬆症の患者は500万人とも伝えられており、今後、高齢者社会を向かえるにあたり、患者数は増加し大きな社会問題となると言われている。
このような事態を改善するために第一に必要なことは、カルシウム摂取量を増し、常に十分なカルシウムを体内に供給することにある。しかしながら、日本人の1日当たりのカルシウム摂取量は、厚生省が毎年調査する統計によると過去に一度も所容量(600ミリグラム)を越えたことはなく、食事より十分なカルシウムを摂取するのは困難である。また、カルシウムを含む医薬品、栄養補助食品は一般的な食品とは異なり、特別に意識をする必要があり、常時服用するのは難しい。
カルシウムの吸収を促進する成分としては、ビタミンD、乳糖が食品、医薬品の分野で一般的に利用されているが、ビタミンDは生体内でも合成されるため、体内で十分なビタミンDが合成されている人に対しては、効果はあまり期待できない。また、乳糖は、乳糖不耐症の人に対しては、下痢などの副作用があり好ましくない場合もある。
カルシウム結晶化阻害作用をメカニズムとすると考えられているものとして、カゼインホスホペプチド(CPP)がある。CPPは、カゼインにトリプシンを作用させ、加水分解した分解物中に得られるホスホペプチドであり、カルシウムと結合して可溶性複合体を形成する。このため、水溶液中でカルシウムが沈殿するのを抑制することでカルシウムを可溶化し、カルシウムの吸収率を高めると考えられている(特許文献1、2)。また、ポリ−L−グルタミン酸も腸管内でカルシウムの吸収率を高める作用(非特許文献1)を有することが知られているが、これは合成品であるため食品添加物として許可されておらず、安全性等のため利用されていない。また、微生物により産生されるポリ−γ−グルタミン酸(特許文献3)は、カルシウム結晶化抑制活性が低く、かつ溶液の粘度が極めて高いため、取扱いが不便である。これら以外にもカルシウムの吸収を促進する成分として、骨由来のペプチド(特許文献4)、酪酸を基本成分とするもの(特許文献5)などがあるが、いずれも製造上、利用上の問題があり実用化はされていない。特許文献6には微生物由来タンパク質を有効成分とするカルシウム結晶化抑制剤が記載されている。
カルシウム結晶化阻害作用をメカニズムとすると考えられているものとして、カゼインホスホペプチド(CPP)がある。CPPは、カゼインにトリプシンを作用させ、加水分解した分解物中に得られるホスホペプチドであり、カルシウムと結合して可溶性複合体を形成する。このため、水溶液中でカルシウムが沈殿するのを抑制することでカルシウムを可溶化し、カルシウムの吸収率を高めると考えられている(特許文献1、2)。また、ポリ−L−グルタミン酸も腸管内でカルシウムの吸収率を高める作用(非特許文献1)を有することが知られているが、これは合成品であるため食品添加物として許可されておらず、安全性等のため利用されていない。また、微生物により産生されるポリ−γ−グルタミン酸(特許文献3)は、カルシウム結晶化抑制活性が低く、かつ溶液の粘度が極めて高いため、取扱いが不便である。これら以外にもカルシウムの吸収を促進する成分として、骨由来のペプチド(特許文献4)、酪酸を基本成分とするもの(特許文献5)などがあるが、いずれも製造上、利用上の問題があり実用化はされていない。特許文献6には微生物由来タンパク質を有効成分とするカルシウム結晶化抑制剤が記載されている。
カルシウムは健康維持に重要である一方、体内の臓器中で不必要に結晶化すると各種結石となり、悪影響を及ぼす。カルシウム結晶化阻害剤はこれらカルシウム結石の予防、治療に利用できるとされている。
K. Yamamoto, et al., Biosci. Biotech. Biochem.、第58巻、第1662〜1665頁、1994年
本発明は、カルシウムの腸管内での吸収を促進する成分として有効なカルシウム結晶化阻害作用を有する成分を提供することを課題とする。特に、食品由来の成分で、安全性にすぐれた組成物を提供することを課題とする。
本発明は、天然物、特に食品素材を原料とする機能性組成物を探求する中で見出されたものである。発明者らは、各種魚介類のタンパク質の酵素分解物のカルシウム結晶化阻害作用を検討したところ、魚卵タンパク質の酵素分解物にCPPと同程度のカルシウム結晶化阻害作用があることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下(1)〜(9)の魚卵タンパク質の酵素分解物を有効成分とする添加剤を要旨とする。
(1)魚卵タンパク質のタンパク質分解酵素による分解物を有効成分とすることを特徴とするカルシウム結晶化阻害用添加剤。
(2)魚卵がタラコである(1)のカルシウム結晶化阻害用添加剤。
(3)酵素分解に用いる酵素がAspergillus属に属する微生物由来のタンパク質分解酵素である(1)又は(2)のカルシウム結晶化阻害用添加剤。
(4)魚卵タンパク質のタンパク質分解酵素による分解物を有効成分とすることを特徴とするカルシウム吸収促進用添加剤。
(5)魚卵がタラコである(4)のカルシウム吸収促進用添加剤。
(6)酵素分解に用いる酵素がAspergillus属に属する微生物由来のタンパク質分解酵素である(4)又は(5)のカルシウム吸収促進用添加剤。
(7)食品用添加剤である(1)ないし(6)いずれかの添加剤。
(8)飼料用添加剤である(1)ないし(6)いずれかの添加剤。
(9)医薬品用添加剤である(1)ないし(6)いずれかの添加剤。
(1)魚卵タンパク質のタンパク質分解酵素による分解物を有効成分とすることを特徴とするカルシウム結晶化阻害用添加剤。
(2)魚卵がタラコである(1)のカルシウム結晶化阻害用添加剤。
(3)酵素分解に用いる酵素がAspergillus属に属する微生物由来のタンパク質分解酵素である(1)又は(2)のカルシウム結晶化阻害用添加剤。
(4)魚卵タンパク質のタンパク質分解酵素による分解物を有効成分とすることを特徴とするカルシウム吸収促進用添加剤。
(5)魚卵がタラコである(4)のカルシウム吸収促進用添加剤。
(6)酵素分解に用いる酵素がAspergillus属に属する微生物由来のタンパク質分解酵素である(4)又は(5)のカルシウム吸収促進用添加剤。
(7)食品用添加剤である(1)ないし(6)いずれかの添加剤。
(8)飼料用添加剤である(1)ないし(6)いずれかの添加剤。
(9)医薬品用添加剤である(1)ないし(6)いずれかの添加剤。
本発明により、カルシウム結晶化阻害活性を有する組成物が提供され、この組成物を含むカルシウム結晶化阻害作用及び/又はカルシウム吸収促進作用を有する添加剤を提供することができる。このカルシウム結晶化阻害・吸収促進剤を含有してなる飲食物、飼料を利用して、体内でのカルシウムの結晶化を抑制し、カルシウムの腸管内での吸収を促進する方法が提供される。
本発明において、魚卵とは魚類の卵巣または産卵された卵のいずれでもよい。魚類の卵であれば何でも使用可能であるが、大量に入手しやすいタラコ(タラ類の卵)、イクラ(サケ、マス類の卵)などが好ましい。本発明においてタラコとはスケソウダラ、マダラ、ミナミダラなどタラ類の魚の卵(魚卵)である。本発明の活性成分は、これらタラコのタンパク質をタンパク質分解酵素で分解したペプチドである。
本発明のタラコのタンパク質の酵素分解物は、タラコを酵素処理に適するように前処理したうえで、蛋白質分解酵素処理しペプチドを生成させ、これを必要に応じて、分離、濾過、濃縮、殺菌処理することによって得ることができる。
本発明のタラコのタンパク質の酵素分解物は、タラコを酵素処理に適するように前処理したうえで、蛋白質分解酵素処理しペプチドを生成させ、これを必要に応じて、分離、濾過、濃縮、殺菌処理することによって得ることができる。
本発明の組成物は魚卵を原料として製造するものであるが、先ず、酵素処理に適するように前処理する。主な処理は、卵巣膜を除去してバラ子とし、卵粒の膜(卵膜)が酵素処理の邪魔になるので物理的あるいは化学的に破壊する。すなわち、ホモジナイザー、エマルダーというような均質化する装置で卵膜を壊して液状にしたり、化学的に卵膜を壊したりする。卵膜を破壊したタラコ原料を好ましくは脱脂してから、酵素処理に付す。
酵素処理は、原料重量に対して1/2量〜20倍量、好ましくは等量〜10倍量の加水を行った後、アンモニア水、水酸化ナトリウム(カリウム)水溶液等アルカリ剤を加えて、使用する蛋白分解酵素の適値にpHを調整し、温度も酵素適温(使用酵素によって異なるが、20〜65℃、室温でも十分に反応する)に加温し、蛋白分解酵素を加えて30分〜30時間(好ましくは1〜10時間)処理する。
蛋白分解酵素としては、中性又はアルカリ性条件下で蛋白質を分解し得る酵素であればすべての酵素が単独で又は混合して使用し得る。その起源は、動植物のほかに微生物に求めることができ、ペプシン、レニン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、ブロメレインのほか、細菌プロテアーゼ、糸状菌プロテアーゼ、放線菌プロテアーゼ等も広く利用できる。これらの酵素は、通常、市販されているものが使用されるが、未精製の酵素、酵素を含有した培養液、麹といった固体又は液体の酵素含有物も、目的により必要に応じて使用することができる。酵素の添加量としては0.1%〜5.0%程度でよい。
好ましい蛋白分解酵素としては、Aspergillus oryzae属菌株由来プロテアーゼ、Bacillus subtilis属菌株由来プロテアーゼ、Aspergillus oryzae属菌株由来プロテアーゼ、Aspergillus melleus属菌株由来プロテアーゼ、Bacillus stearothermophilus属菌株由来プロテアーゼ、Bacillus subtilis属菌株由来プロテアーゼ、Rhizopus oryzae属菌株由来ペプチダーゼ、Aspergillus oryzae属菌株由来ペプチダーゼなどが例示される。
好ましい蛋白分解酵素としては、Aspergillus oryzae属菌株由来プロテアーゼ、Bacillus subtilis属菌株由来プロテアーゼ、Aspergillus oryzae属菌株由来プロテアーゼ、Aspergillus melleus属菌株由来プロテアーゼ、Bacillus stearothermophilus属菌株由来プロテアーゼ、Bacillus subtilis属菌株由来プロテアーゼ、Rhizopus oryzae属菌株由来ペプチダーゼ、Aspergillus oryzae属菌株由来ペプチダーゼなどが例示される。
酵素処理後、必要あれば中和処理を行った後、70℃(好適には80℃)以上の温度に2〜60分間(好適には5〜30分間)保持し、酵素を失活させるとともに後に行う分離を良好ならしめる。加熱失活処理後、ハイブロスクリーン等による濾過によって粗分離し、必要によりジェクター処理した後、遠心分離処理して、浮遊物、沈殿物を除去する。そのままでもアンジオテンシン転換酵素阻害活性を有するのでそのまま用いてもよいが、原料由来の独特の味や臭いがあるので、使用目的によってはさらに濾過、活性炭処理などにより、脱臭、脱色、精製する。殺菌、噴霧乾燥、凍結乾燥なども必要に応じて行う。
本発明の魚卵のタンパク質の蛋白質酵素分解物は実施例に示すようにすぐれたカルシウム結晶化阻害活性を有することが確認されたので、カルシウム結晶化阻害剤、あるいは、カルシウム吸収促進を目的とした医薬品、健康食品、特に特定保健用食品としても使用することができる。食品として使用する場合には、酵素分解物をそのまま添加したり、他の食品ないしは食品成分と併用したりして適宜常法にしたがって使用できる。常法にしたがい、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、散剤とすることができる。
本発明のカルシウム結晶化阻害剤である魚卵タンパク質酵素分解物の使用のめやすは、約0.1〜6000mg/日であり、1日に1〜2回経口投与するのが好ましい。また必要ある場合には、他の薬剤との併用も可能である。本発明の魚卵タンパク質の蛋白質酵素分解物は食品として長い食経験のある魚卵の酵素分解物であり、安全性が高く、安心して使用できる。
本発明のカルシウム結晶化阻害剤である魚卵タンパク質酵素分解物の使用のめやすは、約0.1〜6000mg/日であり、1日に1〜2回経口投与するのが好ましい。また必要ある場合には、他の薬剤との併用も可能である。本発明の魚卵タンパク質の蛋白質酵素分解物は食品として長い食経験のある魚卵の酵素分解物であり、安全性が高く、安心して使用できる。
本発明において、カルシウム結晶化阻害活性とは、炭酸カルシウム結晶やリン酸カルシウム結晶の析出を抑制する効果のことをいい、例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合した際に炭酸カルシウムが析出する反応を抑制する程度を測定する方法で判定できる(Biochem.Biophys.Res.Comm., 110(1)、p69〜74、1983年)。本発明では、pHスタットの反応槽に0.15M NaCl 2.91 ml、1 M CaCl2 30 μl、及び被験物質溶液100 μl を加え、20℃で10 分間攪拌後、60 μl の0.4 M NaHCO3 を添加して過飽和炭酸カルシウム溶液とし、炭酸カルシウム塩結晶の生成反応を開始した。反応溶液をpH8.5 ± 0.1 に維持するよう0.1 M NaOH を用いて自動滴定し、その適定量から炭酸カルシウム塩結晶化阻害活性を測定する方法で行った。多くのタンパク質分解物では、被験物質をいれないブランクと比較して2倍程度の活性が認められるが、カルシウム結晶化阻害活性を有する物質として周知物質であるCCPと同程度の活性があるものをカルシウム結晶化阻害作用を有する物質とした。
本発明のカルシウム結晶化抑制・吸収促進剤を含有してなる飲食物としては、本発明のタンパク質酵素分解物が味に影響を与えない飲食物であれば何でもよい。特にカルシウムを含有する食品に共存させることでカルシウム吸収を促進するので好ましい。例えば、清涼飲料水、果汁飲料、醗酵飲料並びに牛乳等の飲料、チューインガム、キャンディ、錠菓、グミゼリー、ビスケット並びにチョコレート等の菓子、アイスクリーム、氷菓等の冷菓、ヨーグルト、チーズ等の乳製品、ハム、ソーセージ等の畜肉製品、カマボコ、チクワ等の魚肉練り製品、パン、ホットケーキ、各種惣菜類、プリン、スープ等が例示される。
本発明のカルシウム結晶化抑制・吸収促進剤を含有してなる飼料とは、ペットや家畜(牛、豚、鶏等)用の飼料であって、上記カルシウム吸収促進剤、リン酸カルシウム結晶成長剤を含有してなる飼料である。本発明のカルシウム結晶化抑制・吸収促進剤は、上記飲食物、飼料中に、約0.1〜6000mg/日摂取できるように添加するのが好ましい。
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
各種魚介類の酵素分解物の調製
オキアミむき身乾燥物、スケトウダラすり身乾燥物、スケトウダラ卵巣(タラコ)の脱脂乾燥物、各々2.5 g を50 ml 容プラスチック遠心管にとり、蒸留水に懸濁して50 ml にフィルアップした後、希HCl 水溶液を用いて酵素(天野エンザイム株式会社製、プロテアーゼP「アマノ」3G(Aspergillus melleus属菌株由来プロテアーゼ剤))の最適pH 8.0に調整した。酵素添加前の溶液を5 ml 分取した。各タンパク質溶液にプロテアーゼP を22.5mg ずつ、ペプシンは11.25mg を加え、穏やかに撹拌した。酵素の最適温度45℃に保ち、酵素反応を行った。反応開始から0.5、1、2、4、8、24 時間後に反応液を5 ml ずつ採取した。採取した反応液を沸騰水で10 分間処理して酵素反応を停止させた後に、pH 7.0 に調整して凍結乾燥した。
オキアミむき身乾燥物、スケトウダラすり身乾燥物、スケトウダラ卵巣(タラコ)の脱脂乾燥物、各々2.5 g を50 ml 容プラスチック遠心管にとり、蒸留水に懸濁して50 ml にフィルアップした後、希HCl 水溶液を用いて酵素(天野エンザイム株式会社製、プロテアーゼP「アマノ」3G(Aspergillus melleus属菌株由来プロテアーゼ剤))の最適pH 8.0に調整した。酵素添加前の溶液を5 ml 分取した。各タンパク質溶液にプロテアーゼP を22.5mg ずつ、ペプシンは11.25mg を加え、穏やかに撹拌した。酵素の最適温度45℃に保ち、酵素反応を行った。反応開始から0.5、1、2、4、8、24 時間後に反応液を5 ml ずつ採取した。採取した反応液を沸騰水で10 分間処理して酵素反応を停止させた後に、pH 7.0 に調整して凍結乾燥した。
炭酸カルシウム塩結晶化阻害活性
pHスタットの反応槽に0.15M NaCl 2.91 ml、1 M CaCl2 30 μl、及び実施例1で調製した各タンパク質分解物溶液100 μl を加え攪拌した。オキアミ及びスケトウダラのタンパク質の酵素分解物溶液は600 μg/ml に、タラコのタンパク質の酵素分解物溶液及びCPP は225 μg/ml になるように蒸留水に溶解し、終濃度が7.5μg/mlとなるように調整して用いた。20℃で10 分間攪拌後、60 μl の0.4 M NaHCO3 を添加して過飽和炭酸カルシウム溶液とし、結晶の生成反応を開始した。反応溶液をpH8.5 ± 0.1 に維持するよう0.1 M NaOH を用いて自動滴定し、その適定量から炭酸カルシウム塩結晶化阻害活性を測定した。
また、カゼイン1 g を50 ml 容プラスチック遠心管にとり、蒸留水に懸濁して50 ml にフィルアップした後、NaOH 水溶液を用いてpH8.0 に調整した。この懸濁液にトリプシンを5 mg加え、37℃で24 時間反応を行った。沸騰水に10 分間浸して酵素反応を停止させた後、pH7.0 に調整して凍結乾燥し、これを陽性対照、カゼインホスホペプチド(CPP)として使用した。
pHスタットの反応槽に0.15M NaCl 2.91 ml、1 M CaCl2 30 μl、及び実施例1で調製した各タンパク質分解物溶液100 μl を加え攪拌した。オキアミ及びスケトウダラのタンパク質の酵素分解物溶液は600 μg/ml に、タラコのタンパク質の酵素分解物溶液及びCPP は225 μg/ml になるように蒸留水に溶解し、終濃度が7.5μg/mlとなるように調整して用いた。20℃で10 分間攪拌後、60 μl の0.4 M NaHCO3 を添加して過飽和炭酸カルシウム溶液とし、結晶の生成反応を開始した。反応溶液をpH8.5 ± 0.1 に維持するよう0.1 M NaOH を用いて自動滴定し、その適定量から炭酸カルシウム塩結晶化阻害活性を測定した。
また、カゼイン1 g を50 ml 容プラスチック遠心管にとり、蒸留水に懸濁して50 ml にフィルアップした後、NaOH 水溶液を用いてpH8.0 に調整した。この懸濁液にトリプシンを5 mg加え、37℃で24 時間反応を行った。沸騰水に10 分間浸して酵素反応を停止させた後、pH7.0 に調整して凍結乾燥し、これを陽性対照、カゼインホスホペプチド(CPP)として使用した。
<結果>
3種類の魚介類由来タンパク質をタンパク質分解酵素で4時間又は8時間行った分解した分解物のカルシウム結晶化阻害活性を図1に示した。3種類のタンパク質分解物中でタラコ・タンパク質の酵素分解物が最も強い活性を示し、CPP の活性と比較しても遜色のないものであった。タラコ・タンパク質のプロテアーゼP により4 時間及び8 時間分解した分解物がいずれもブランクの5.5 倍を超える活性を示したのに対し、オキアミ・タンパク質とスケトウダラ・タンパク質の分解物の活性は全て1.7 倍以下であった。また、CPP の活性は約4.9 倍であり、タラコ・タンパク質分解物はCPP と同等の活性をもつことが分かった。
3種類の魚介類由来タンパク質をタンパク質分解酵素で4時間又は8時間行った分解した分解物のカルシウム結晶化阻害活性を図1に示した。3種類のタンパク質分解物中でタラコ・タンパク質の酵素分解物が最も強い活性を示し、CPP の活性と比較しても遜色のないものであった。タラコ・タンパク質のプロテアーゼP により4 時間及び8 時間分解した分解物がいずれもブランクの5.5 倍を超える活性を示したのに対し、オキアミ・タンパク質とスケトウダラ・タンパク質の分解物の活性は全て1.7 倍以下であった。また、CPP の活性は約4.9 倍であり、タラコ・タンパク質分解物はCPP と同等の活性をもつことが分かった。
本発明の魚卵タンパク質の酵素分解物はカルシウム結晶化阻害作用を示す。したがって、カルシウム吸収促進剤として利用できる。また、体内における結石の予防効果が期待できる。本発明の添加剤を医薬、飲食品、飼料に添加して用いることができる。食品由来の成分であり、安全性が高く、食品成分として違和感なく利用できるものである。
Claims (9)
- 魚卵タンパク質のタンパク質分解酵素による分解物を有効成分とすることを特徴とするカルシウム結晶化阻害用添加剤。
- 魚卵がタラコである請求項1のカルシウム結晶化阻害用添加剤。
- 酵素分解に用いる酵素がAspergillus属に属する微生物由来のタンパク質分解酵素である請求項1又は2のカルシウム結晶化阻害用添加剤。
- 魚卵タンパク質のタンパク質分解酵素による分解物を有効成分とすることを特徴とするカルシウム吸収促進用添加剤。
- 魚卵がタラコである請求項4のカルシウム吸収促進用添加剤。
- 酵素分解に用いる酵素がAspergillus属に属する微生物由来のタンパク質分解酵素である請求項4又は5のカルシウム吸収促進用添加剤。
- 食品用添加剤である請求項1ないし6いずれかの添加剤。
- 飼料用添加剤である請求項1ないし6いずれかの添加剤。
- 医薬品用添加剤である請求項1ないし6いずれかの添加剤。
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