JP2011042105A - ヘッド用液体、インクジェット記録装置、及び記録ヘッド表面のクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インクジェット記録において、インク及び反応液の吐出安定性を長期間維持させるヘッド用液体の提供。
【解決手段】アニオン性物質により分散された顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含むインク及び該インクと接触することで該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含む反応液を吐出させる吐出口が設けられた記録ヘッド表面に付与されるヘッド用液体であって、ヘッド用液体の液体収容部の液体導入口に位置する吸収体にワイパを当接させ、当接によって吸収体からヘッド用液体を滲出させることで、ワイパにヘッド用液体を転移させ、ワイパをインク及び反応液を吐出する吐出口が設けられた記録ヘッド表面に摺接させることで記録ヘッドに付与され、水とグリセリンと分子中に1個のカルボキシル基を有する塩を含み、該塩のモル数が、反応液が含有する多価金属のモル数の2倍以上であり、pHが7.0以上9.0未満であるヘッド用液体。
【選択図】なし
【解決手段】アニオン性物質により分散された顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含むインク及び該インクと接触することで該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含む反応液を吐出させる吐出口が設けられた記録ヘッド表面に付与されるヘッド用液体であって、ヘッド用液体の液体収容部の液体導入口に位置する吸収体にワイパを当接させ、当接によって吸収体からヘッド用液体を滲出させることで、ワイパにヘッド用液体を転移させ、ワイパをインク及び反応液を吐出する吐出口が設けられた記録ヘッド表面に摺接させることで記録ヘッドに付与され、水とグリセリンと分子中に1個のカルボキシル基を有する塩を含み、該塩のモル数が、反応液が含有する多価金属のモル数の2倍以上であり、pHが7.0以上9.0未満であるヘッド用液体。
【選択図】なし
Description
本発明は、インク及び反応液を吐出させる吐出口が設けられた記録ヘッド表面への付着物などを効率よく除去し、ワイピングによる付着物などの記録ヘッド表面への再付着を抑制するために用いられるヘッド用液体に関する。また、前記ヘッド用液体を用いるインクジェット記録装置、及び記録ヘッド表面のクリーニング方法に関する。
インクジェット記録方式は、液体であるインクを媒介として入力画像データを出力画像に変換するシステムであるため、インクを吐出する記録ヘッドの吐出口を有する記録ヘッド表面(以下、吐出口面ともいう)のクリーニング技術は、重要な要素のひとつである。
インク吐出用の記録ヘッドは、微細なノズルから記録媒体にインクを吐出するものである。したがって、吐出したインクが記録媒体に当たって跳ね返ったり、インクを吐出する際に、記録に関与する主なインク滴の他に微小なインク滴が吐出されて雰囲気中に漂ったりすることがある。そして、これらがミストとなって、記録ヘッドの吐出口の周りに付着することがある。また、吐出口の周りには空気中を漂っていた塵埃などが付着することもある。すると、吐出される主インク滴をこれらの付着物が引っ張ることで、インク吐出方向がよれること、すなわち主インク滴の直進性が妨げられることがある。そこで、従来のインクジェット記録装置では、クリーニング技術として、所定のタイミングで、ゴムなどの弾性材料からなる払拭部材(ワイパ)で記録ヘッドの吐出口面を掃き、付着物を除去するワイピングと呼ばれるものが採用されている。
一方、最近では、記録物の耐水性及び耐光性などを向上する目的で、色材として、従来の染料に変えて顔料を含有するインク(顔料インク)が使用されることが多くなってきている。顔料インクは、顔料を、分散樹脂(高分子分散剤)や界面活性剤などの分散剤や、顔料表面に官能基を導入するなどして、水性媒体中に分散させてなる。そのため、吐出口面に付着した顔料インクは、水分の蒸発に伴って乾燥し、固着する。そして、顔料インクの付着物は、染料が水性媒体中に分子として溶解している染料インクの付着物と比べて、吐出口面などに与えるダメージが大きい。また、分散樹脂の作用により水性媒体中に分散している所謂樹脂分散型顔料の場合、分散樹脂が吐出口面に対して吸着されやすいという傾向もある。
これらの課題に対し、前記した記録ヘッドのワイピング時に、ヘッド用液体を吐出口面に塗布することが行われている。このヘッド用液体の塗布によって、ワイパの磨耗が軽減され、記録ヘッド表面に蓄積した付着物が良好に除去される。さらに、ヘッド用液体の塗布により記録ヘッド上にヘッド用液体の薄膜が形成されて、記録ヘッドに対する異物の付着が抑制され、これによっても拭き取り性の向上が図られる。そして、上記したような効果が得られるワイピング時に用いるヘッド用液体は、インクジェット記録装置の内部に貯蔵する構成がとられている(特許文献1参照)。
一方、インクジェット記録方法では、画像の均一性や画像濃度の向上を達成させる手段として、以下の方法が提案されている。すなわち、多価金属イオンを含む液体組成物(以下、反応液ともいう)を予め記録媒体に付与した後、該液体組成物と反応するインクを記録する、所謂2液を用いた記録方法(以下、2液システムともいう)が提案されている(特許文献2参照)。
このような2液システムでは、顔料インク及び反応液の吐出の際に生じるミストなどが記録ヘッドの吐出口面で反応してしまうことがある。このため、顔料インク及び反応液のみならず、それらが接触することで生じる反応物も吐出口面に付着してしまい、吐出安定性が損なわれてしまう課題が認識されている。
このような課題に対し、予め吐出口面にインクと反応液の反応を阻害・抑制する液体を付与した後、ワイピングすることで、吐出口面を浄化するように構成したインクジェット記録装置が提案されている(特許文献3参照)。
本発明者は、上記した特許文献に開示されている方式で吐出口面のクリーニングを行って、その効果を確認したところ、インクと反応液との反応物が吐出口面に残存していることで、効果が不十分であることを認識した。さらに、本発明者が検討した結果、記録装置の内部に浮遊するミストや、吐出口面のワイピング動作により、ワイパが、インク、反応液、インクと反応液の反応により生成した反応物などで酷く汚染されてしまうことがわかった。そして、その汚染されたワイパによるワイピング動作が、むしろ吐出口面の再汚染や吐出口のエッジへの反応物の付着を引き起こし、吐出不良に至ってしまうことを新たに認識した。このような新たな課題も踏まえ、本発明者は、吐出口面の汚染を抑制するのみならず、ワイパの汚染も抑制する必要性を認識した。
したがって、本発明の目的は、アニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含有するインク(以下、アニオン性顔料インクともいう。)及び該インクと接触することにより該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含有する反応液とを使用して記録を行う2液システムにおける以下の課題を解決することにある。すなわち、ワイパに転移され、当該ワイパを前記インク及び前記反応液を吐出する吐出口が設けられた記録ヘッド表面に摺接させることで記録ヘッドに付与されるヘッド用液体により、吐出口面及びワイパの汚染を抑制することが目的である。つまりは、アニオン性顔料インク及び反応液の吐出安定性を長期にわたって維持することを可能とさせるヘッド用液体、インクジェット記録装置、及び記録ヘッド表面のクリーニング方法を提供することにある。
上記目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかるヘッド用液体は、アニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含有するインク及び該インクと接触することにより該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含有する反応液を吐出させる吐出口が設けられた記録ヘッド表面に付与されるヘッド用液体であって、該ヘッド用液体は、該ヘッド用液体を収容する液体収容部の液体導入口に位置する吸収体にワイパを当接させ、当該当接によって該吸収体から該ヘッド用液体を滲出させることで、該ワイパに該ヘッド用液体を転移させ、該ワイパを前記インク及び前記反応液を吐出する吐出口が設けられた記録ヘッド表面に摺接させることで、記録ヘッドに付与されるものであり、少なくとも水とグリセリンと分子中に1個のカルボキシル基を有する塩とを含有し、該分子中に1個のカルボキシル基を有する塩のモル数が、前記反応液が含有する多価金属のモル数の2倍以上であり、かつpHが7.0以上9.0未満であることを特徴とする。
本発明によれば、アニオン性顔料インク及び反応液を吐出させる記録ヘッドの吐出口面への付着物が効率よく除去され、ワイピングによる付着物などの吐出口面への再付着が抑制される。すなわち、インクジェット記録において、アニオン性顔料インク及び反応液の吐出安定性を長期にわたって維持することを可能とさせるヘッド用液体、インクジェット記録装置、及び記録ヘッド表面のクリーニング方法が提供される。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、多価金属塩や分子中に1個のカルボキシル基を有する塩などの塩は液体中においてその少なくとも一部が解離した状態となるが、本発明においては便宜上、この状態も含めて「塩」と記載する。
<ヘッド用液体>
本発明者は、上記課題を解決するために用いられるヘッド用液体は、以下の[1]〜[3]に示す特性を満たすことが必須と考えた。
[1]アニオン性顔料インクと、該インクと接触することにより該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含有する反応液との反応により生じる反応物の生成を抑制するものであること。
[2]ヘッド用液体と反応液、又はヘッド用液体とアニオン性顔料インクが接触した際に反応物が発生しないものであること。
[3]ヘッド用液体自身が、吐出口面及びワイパにて液体として存在し、流動性が保持されていること。
<ヘッド用液体>
本発明者は、上記課題を解決するために用いられるヘッド用液体は、以下の[1]〜[3]に示す特性を満たすことが必須と考えた。
[1]アニオン性顔料インクと、該インクと接触することにより該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含有する反応液との反応により生じる反応物の生成を抑制するものであること。
[2]ヘッド用液体と反応液、又はヘッド用液体とアニオン性顔料インクが接触した際に反応物が発生しないものであること。
[3]ヘッド用液体自身が、吐出口面及びワイパにて液体として存在し、流動性が保持されていること。
先ず、上記[1]に関して、説明する。
本発明でいう2液システムでは、画像の均一性、画像濃度の向上が主たる目的であるため、アニオン性顔料インクと反応液との間に該目的を達成するに見合うだけの反応性を持たせている。アニオン性顔料インクと反応液との間に持たせた反応性は、本来ならば記録媒体においてインクと反応液とが接触した際に初めて発現すればよい。しかし、実際は吐出したインクや反応液が記録媒体に当たって跳ね返ったり、インクや反応液を吐出する際に記録に関与する主なインクの他に微小なインク滴が吐出されて雰囲気中に漂ったりする。このため、記録ヘッドの吐出口面やワイパでの、アニオン性顔料インクと反応液の接触は避けられず、結果としてそれらの上で反応物が生成し、付着してしまう。また、このような状態、すなわち、反応物が付着したワイパにて、反応物が付着した吐出口面をワイピングすると、吐出口面がさらに汚染されてしまう。また、それだけでなく、それらがワイパにより吐出口面に押し付けられることで、より強固に反応物が付着したり、反応物が吐出口に混入したりし、吐出安定性の維持が難しくなる。
本発明でいう2液システムでは、画像の均一性、画像濃度の向上が主たる目的であるため、アニオン性顔料インクと反応液との間に該目的を達成するに見合うだけの反応性を持たせている。アニオン性顔料インクと反応液との間に持たせた反応性は、本来ならば記録媒体においてインクと反応液とが接触した際に初めて発現すればよい。しかし、実際は吐出したインクや反応液が記録媒体に当たって跳ね返ったり、インクや反応液を吐出する際に記録に関与する主なインクの他に微小なインク滴が吐出されて雰囲気中に漂ったりする。このため、記録ヘッドの吐出口面やワイパでの、アニオン性顔料インクと反応液の接触は避けられず、結果としてそれらの上で反応物が生成し、付着してしまう。また、このような状態、すなわち、反応物が付着したワイパにて、反応物が付着した吐出口面をワイピングすると、吐出口面がさらに汚染されてしまう。また、それだけでなく、それらがワイパにより吐出口面に押し付けられることで、より強固に反応物が付着したり、反応物が吐出口に混入したりし、吐出安定性の維持が難しくなる。
そこで、アニオン性顔料インクと反応液との反応を抑制させる機能をヘッド用液体に持たせることで、優れた画像の均一性、高画像濃度という性能を犠牲にすることなく、長期にわたって吐出安定性を維持できるという考えに至った。その具体的手段としては、ヘッド用液体中に、アニオン性顔料インクと反応液との反応を抑制でき、反応物を生成させない物質を含有させるというものである。
次に上記[2]について説明する。
本発明の目的を達成するヘッド用液体は、アニオン性顔料インクと反応液との間に持たせた反応性の発現を抑制するだけではなく、アニオン性顔料インク、又は、反応液との間でも反応物が発生しないようにしなければならない。なぜなら、このような反応物が、吐出口面に付着したり、吐出口内に析出したりしても、吐出性低下の要因となり得るからである。
本発明の目的を達成するヘッド用液体は、アニオン性顔料インクと反応液との間に持たせた反応性の発現を抑制するだけではなく、アニオン性顔料インク、又は、反応液との間でも反応物が発生しないようにしなければならない。なぜなら、このような反応物が、吐出口面に付着したり、吐出口内に析出したりしても、吐出性低下の要因となり得るからである。
本発明で用いられるアニオン性顔料インクは、アニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含有するものである。すなわち、イオン性基の作用により分散安定性を維持している。したがって、本発明のヘッド用液体は、アニオン性顔料インクの分散安定性を損なう要素を含んではならない。そして、このような分散安定性を損なう要素の1つとしては、インクのpHが酸性領域にあることが挙げられる。
一般的に、イオン性基は、酸やアルカリの作用によりイオン化することで、水性媒体への親和性が発現する。本発明で用いられるアニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料は、アルカリ成分の作用によりアニオン性基が解離しているため、インクのpH次第で分散安定性が変化する。例えば、インクのpHが酸性領域にある場合は、解離していたアニオン性基が非解離状態となりイオン性が失われるため、顔料の分散安定性が損なわれ、凝集してしまう。すなわち、ヘッド用液体とアニオン性顔料インクとの間に上述したような凝集反応が起こり、反応物(顔料の凝集物)が、吐出口面やワイパ表面に付着してしまうと、本発明の目的は達成されない。
一方、本発明に用いる反応液には、アニオン性顔料インクとの反応性を持たせるために、多価金属が含有されている。反応液中でこの多価金属はイオンとして存在しているが、反応液のpHが高アルカリ領域に達すると水酸化物へと変化する。多価金属種によるが、このような水酸化物は、反応液中で溶解しているものもあれば、不溶化して析出するものもある。さらに、この水酸化物は、空気中の二酸化炭素と反応し炭酸塩へと変化し、いずれ析出してしまう。すなわち、ヘッド用液体と反応液との間に上述したような反応が起こり、反応物(多価金属の水酸化物、炭酸塩)が吐出口面やワイパ表面に付着してしまうと、本発明の目的は達成されない。
以上より、本発明のヘッド用液体が有するpHの領域は、該ヘッド用液体とアニオン性顔料インクとの反応、かつ該ヘッド用液体と反応液との反応が、ともに起こらない範囲内に抑える必要がある。
次に上記[3]について説明する。
本発明のヘッド用液体は、以下のようにして記録ヘッドに付与される。すなわち、先ず、ヘッド用液体を収容する液体収容部の液体導入口に位置する吸収体にワイパを当接させ、当該当接によって該吸収体から該ヘッド用液体を滲出させることで、該ワイパに該ヘッド用液体を転移させる。そして、当該ワイパを前記インク及び前記反応液を吐出する吐出口が設けられた記録ヘッド表面に摺接させることで、記録ヘッドに付与される。
本発明のヘッド用液体は、以下のようにして記録ヘッドに付与される。すなわち、先ず、ヘッド用液体を収容する液体収容部の液体導入口に位置する吸収体にワイパを当接させ、当該当接によって該吸収体から該ヘッド用液体を滲出させることで、該ワイパに該ヘッド用液体を転移させる。そして、当該ワイパを前記インク及び前記反応液を吐出する吐出口が設けられた記録ヘッド表面に摺接させることで、記録ヘッドに付与される。
このように使用するヘッド用液体が固体状態に変化すると、ヘッド用液体を収容する液体収容部の液体導入口がワイパの固体物により塞がれることで、ワイパにヘッド用液体が供給されなくなり、結果として、ヘッド用液体を吐出口面に付与できなくなる。さらには、汚染されたワイパで吐出口面を拭くことで、ワイピングにより吐出口面が汚されてしまう。よって、本発明のヘッド用液体は、液体として存在し、流動性が保持されていなければならない。
以上述べてきたように、本発明の目的を達成するヘッド用液体は、上記[1]〜[3]に示す特性を併せ持たなければならないと本発明者は考えている。以下に上述した3つの特性を併せ持つ本発明のヘッド用液体についてより詳細な説明をする。
上記[1]の特性、すなわち、アニオン性顔料インクと反応液との反応を抑制させる機能をヘッド用液体に持たせるために、本発明のヘッド用液体は、アニオン性顔料インクと反応液との反応を抑制させる物質を含有する必要がある。そして、本発明者が検討した結果、このような物質として、分子中に1個のカルボキシル基を有する塩が適していることを見出した。具体的には、ギ酸、酢酸、のプロピオン酸などのアルカリ金属塩に代表される脂肪酸塩が好ましい。その中でも、ギ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのギ酸塩や酢酸塩が特に好ましい。勿論、分子中に1個のカルボキシル基を有する塩という条件を満たしていれば、アニオン性顔料インクと反応液との反応を抑制させることができるため、これらに限定されずにその他の塩であってもよい。
分子中に1個のカルボキシル基を有する塩をヘッド用液体中に含有させることにより、アニオン性顔料インクと反応液との反応を抑制できるのは、以下の理由にあると本発明者は考えている。すなわち、該塩の分子中のカルボキシル基が、反応液中の多価金属に効果的に配位することで、アニオン性顔料インク中のアニオン基と反応液中の多価金属との反応が抑制されるためであると考えている。なお、分子中に2個以上のカルボキシル基を有する塩でも同じような効果は期待できるが、これらの塩が多価金属に対しより効果的に配位するためには、ヘッド用液体を後述する特定のpH領域に維持する制約があるため、好ましいとはいえない。
より具体的に説明すると、その理由は詳細には後述するが、本発明のヘッド用液体は、pHが7.0以上9.0未満である必要がある。そして、本発明のヘッド用液体に含有させる塩として、分子中に1個のカルボキシル基を有する塩を選択すれば、上記のpH範囲内でも、ヘッド用液体中で安定的に溶解し、アニオン性顔料インクと反応液との反応性を十分に抑制することが可能である。一方、分子中に2個以上のカルボキシル基を有する塩が、多価金属に対しより効果的に配位するためには、ヘッド用液体のpHを10以上にする必要がある。このため、分子中に2個以上のカルボキシル基を有する塩は、本発明のヘッド用液体に含有させる塩としては適さない。また、本発明においては、ヘッド用液体が含有する分子中に1個のカルボキシル基を有する塩のモル数が、反応液が含有する多価金属のモル数の2倍以上であるときに本発明の効果が発揮される。なお、ヘッド用液体が含有する分子中に1個のカルボキシル基を有する塩のモル数は、反応液が含有する多価金属のモル数の7倍未満であることが好ましい。
また、後述するが、本発明のヘッド用液体は、グリセリンを含有することも特徴の一つである。本発明のヘッド用液体に含有させる塩は、グリセリンを含有するヘッド用液体中で安定な溶解状態を維持し、アニオン性顔料インクと反応液との反応を抑制する効果を発現する必要があるが、分子中に1個のカルボキシル基を有する塩はこの条件を満たす。
また、本発明のヘッド用液体は、上記[2]の特性、すなわち、反応液やアニオン性顔料インクとそれぞれ接触した際に、反応物が発生しない特性を有しなければならない。先ず、上述したように、本発明で用いられるアニオン性顔料インクは、pHが7.0未満の所謂酸性を呈する液体と接触した際、分散安定性が損なわれ、凝集物が生じてしまうことから、本発明のヘッド用液体は、pHが7.0以上である必要がある。
一方、本発明に用いる反応液においては、上述したように、接触するヘッド用液体のpH次第では、反応液に含有される多価金属由来の水酸化物が発生してしまう。すなわち、本発明で用いられる多価金属の具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+及びBa2+などの二価金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+などの三価金属イオンなどが挙げられる。そして、これらの多価金属は、反応液中ではイオンとして存在しているが、これらの多価金属イオンは、一般的に高pHの液体と接触すると、水酸化物へと変化してしまう。多価金属種によるが、本発明者は、pHが9.0以上の液体と接触すると、多価金属由来の水酸化物が生じると認識している。このように発生した水酸化物は、液体に溶解しているものもあれば、水に不溶のものもある。水に不溶の水酸化物は言うまでもないが、液体に溶解している水酸化物は、一見、吐出性の低下に対して影響を及ぼさないと思われる。しかし、これらが空気中に放置されると、空気中の二酸化炭素と反応し、炭酸塩へと変化し、ヘッド用液体中で不溶化してしまい、結果として吐出口面やノズル内に析出してしまう。したがって、本発明のヘッド用液体は、反応液中の多価金属が水酸化物化しない範囲のpH領域、すなわちpHが9.0未満である必要がある。以上より、本発明のヘッド用液体のpHは、7.0以上9.0未満でなければならない。
本発明において、前記範囲内にヘッド用液体のpHを調整する必要が生じた際、pHを上げる場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリを用いればよい。一方、pHを下げる場合には、ギ酸、酢酸、硝酸などの酸を用いればよい。また、本発明のヘッド用液体は、アニオン性顔料インク及び反応液と接することで、使用中に上記のpH範囲より逸脱する場合もあるため、本発明の効果発現を損なわない範囲で、pH緩衝剤を添加しても構わない。
また、本発明のヘッド用液体は、上記[3]の特性、すなわち、ヘッド用液体が、吐出口面及びワイパにて液体として存在し、流動性が維持されるものでなければならない。本発明のヘッド用液体の流動性を失わせる因子としては、ヘッド用液体中に含まれる水などの揮発性成分の蒸発や、該ヘッド用液体中に含まれている分子中に1個のカルボキシル基を有する塩の析出などが考えられる。これに対し、本発明者は、ヘッド用液体に不揮発性の水溶性有機溶剤であるグリセリンを含有させることで、上述した課題を解消できることを見出した。
より具体的に説明すると、先ず、本発明のヘッド用液体は、分子中に1個のカルボキシル基を有する塩を含有する構成をとるため、該塩を溶解する水を必須成分とする。しかしながら、ヘッド用液体の構成成分が、水及び塩のみであると、水分蒸発に伴い、塩、ヘッド用液体中で分散していた顔料などが析出して、流動性が失われてしまい、本発明の効果を発現できなくなってしまう。そこで、ヘッド用液体中に不揮発性の水溶性有機溶剤であるグリセリンを含有させたところ、長期にわたって分子中に1個のカルボキシル基を有する塩の溶解状態を維持しつつ、ヘッド用液体の流動性を維持することが可能となった。また、ヘッド用液体中のグリセリンの含有量は、ヘッド用液体全質量を基準として、30.0質量%以上とすることが好適である。これにより、ヘッド用液体は、上述したように流動性を失うことなく、液体の状態を保ちつづける。なお、ヘッド用液体中の水の含有量は、ヘッド用液体全質量を基準として、30.0質量%以上65.0質量%以下であることが好ましい。
また、ヘッド用液体中にグリセリンを含有させることで、ヘッド用液体は高粘度化する。そして、高粘度化したヘッド用液体と、アニオン性顔料インクや反応液が混合すると、ヘッド用液体が高粘度であるために、以下の効果が得られることが本発明者の検討によりわかった。すなわち、ヘッド用液体中で、アニオン性顔料インクと反応液が即座に接触することが抑制されるようになり、ヘッド用液体が有する、アニオン性顔料インクと反応液の反応抑制効果がより発揮され易くなるという効果も見出した。
本発明のヘッド用液体は、本発明の効果発現を損なわない範囲で、グリセリン以外の従来公知の水溶性有機溶剤を含有していても構わない。また、本発明のヘッド用液体には、上記の成分の他に、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐剤及び防黴剤などを添加しても構わない。
<インク>
本発明のヘッド用液体は、記録ヘッドの吐出口より吐出させるインクとして、アニオン性顔料インクを用いた場合の課題を解決するために開発されたものであるが、次に、このアニオン性顔料インクを構成する成分などについて説明する。アニオン性顔料インクは、アニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含有するが、先ず、使用できる顔料について詳細に説明する。
本発明のヘッド用液体は、記録ヘッドの吐出口より吐出させるインクとして、アニオン性顔料インクを用いた場合の課題を解決するために開発されたものであるが、次に、このアニオン性顔料インクを構成する成分などについて説明する。アニオン性顔料インクは、アニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含有するが、先ず、使用できる顔料について詳細に説明する。
(顔料)
用い得る顔料は、例えば、カーボンブラックなどの無機顔料や有機顔料などが挙げられ、従来公知のいずれのものも用いることができる。アニオン性顔料インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
用い得る顔料は、例えば、カーボンブラックなどの無機顔料や有機顔料などが挙げられ、従来公知のいずれのものも用いることができる。アニオン性顔料インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
[分散樹脂(高分子分散剤)]
色材として上記カーボンブラックや有機顔料などを用いるアニオン性顔料インクの場合には、アニオン性物質により顔料を分散する、すなわち、顔料と分散樹脂(高分子分散剤)を併用することが好ましい。分散樹脂としては、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散することのできるものが好適に用いられる。分散樹脂の具体例としては、スチレン、ナフタレン、エステル化合物などの疎水性モノマーと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの酸性モノマーと、を少なくとも用いて重合された共重合体やその塩などが含まれる。これらの分散樹脂は、重量平均分子量が1,000以上30,000以下の範囲のものが好ましく、特には3,000以上15,000以下の範囲のものが好ましく、また、酸価が30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の範囲のものが好ましい。なお、アニオン性顔料インク中において、顔料の含有量(質量%)は、分散樹脂の含有量(質量%)に対して(顔料の含有量/分散樹脂の含有量)、0.1倍以上3.0倍以下とすることが好ましく、さらには0.3倍以上0.9倍以下とすることがより好ましい。
色材として上記カーボンブラックや有機顔料などを用いるアニオン性顔料インクの場合には、アニオン性物質により顔料を分散する、すなわち、顔料と分散樹脂(高分子分散剤)を併用することが好ましい。分散樹脂としては、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散することのできるものが好適に用いられる。分散樹脂の具体例としては、スチレン、ナフタレン、エステル化合物などの疎水性モノマーと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの酸性モノマーと、を少なくとも用いて重合された共重合体やその塩などが含まれる。これらの分散樹脂は、重量平均分子量が1,000以上30,000以下の範囲のものが好ましく、特には3,000以上15,000以下の範囲のものが好ましく、また、酸価が30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の範囲のものが好ましい。なお、アニオン性顔料インク中において、顔料の含有量(質量%)は、分散樹脂の含有量(質量%)に対して(顔料の含有量/分散樹脂の含有量)、0.1倍以上3.0倍以下とすることが好ましく、さらには0.3倍以上0.9倍以下とすることがより好ましい。
なお、上記したような分散樹脂は、顔料を分散する効果の他に、普通紙などの記録媒体に記録した画像の耐擦過性や耐水性、さらには光沢性を有する記録媒体に記録した画像の光沢性を向上する効果を有するものである。このため、下記に述べる自己分散型顔料、着色微粒子、及びマイクロカプセル化顔料などを含有するインク中にアニオン性物質として添加することができる。
[自己分散型顔料]
本発明で用いるアニオン性顔料インクは、色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合することによって分散剤を用いることなく水性媒体に分散することのできる顔料、所謂、自己分散型顔料を用いることもできる。このような顔料としては、例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。自己分散型カーボンブラックは、例えば、アニオン性基がカーボンブラック表面に結合したアニオン性カーボンブラックを挙げることができる。
本発明で用いるアニオン性顔料インクは、色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合することによって分散剤を用いることなく水性媒体に分散することのできる顔料、所謂、自己分散型顔料を用いることもできる。このような顔料としては、例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。自己分散型カーボンブラックは、例えば、アニオン性基がカーボンブラック表面に結合したアニオン性カーボンブラックを挙げることができる。
アニオン性カーボンブラックは、カーボンブラックの表面に、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2から選ばれる少なくとも1つのアニオン性基を結合したものが挙げられる。上記式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。これらの中で特に−COOMや−SO3Mをカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックはインク中の分散性が良好なため、本発明に特に好適に用い得るものである。
上記したような種々の親水性基(アニオン性基)は、カーボンブラックの表面に直接結合してもよいが、他の原子団をカーボンブラック表面と該親水性基との間に介在させ、該親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合してもよい。ここで他の原子団の具体例は、例えば、炭素原子数1乃至12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、置換又は未置換のフェニレン基、置換又は未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基及びナフチレン基の置換基は、例えば、炭素数1乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、他の原子団と親水性基の組み合わせの具体例は、例えば、−C2H4COOM、−Ph−SO3M、−Ph−COOMなど(ただし、Phはフェニレン基を表す)が挙げられる。
本発明で使用するアニオン性顔料インクは、上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種又はそれ以上を適宜選択し、これらをインクの色材に用いたものであってもよい。また、アニオン性顔料インク中の自己分散型カーボンブラックの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、特には1.0質量%以上10.0質量%以下の範囲であることがより好ましい。この範囲とすることで自己分散型カーボンブラックはインク中で十分な分散状態を維持することができる。また、自己分散型カーボンブラックを色材として用いる場合には、画像の耐擦過性や耐水性、光沢性を向上するために、上記したような分散樹脂などをさらに用いることもできる。
[着色微粒子/マイクロカプセル化顔料]
本発明で使用するアニオン性顔料インクは、色材として上記したものの他に、樹脂などでマイクロカプセル化した顔料や樹脂粒子の周囲を色材で被覆した着色微粒子なども用いることができる。マイクロカプセルに関しては、本来的に水性媒体に対する分散性を有するが、分散安定性を高めるために上記したような分散樹脂をさらにインク中に共存させてもよい。また、着色微粒子を色材として用いる場合には、上記したような分散樹脂などをさらに用いることが好ましい。
本発明で使用するアニオン性顔料インクは、色材として上記したものの他に、樹脂などでマイクロカプセル化した顔料や樹脂粒子の周囲を色材で被覆した着色微粒子なども用いることができる。マイクロカプセルに関しては、本来的に水性媒体に対する分散性を有するが、分散安定性を高めるために上記したような分散樹脂をさらにインク中に共存させてもよい。また、着色微粒子を色材として用いる場合には、上記したような分散樹脂などをさらに用いることが好ましい。
(水性媒体)
上記したような色材を分散する水性媒体は、インク用として利用できるものであれば、特に限定されるものでない。インクジェット法(例えば、バブルジェット(登録商標)法など)で記録媒体に付着せしめる場合には、インクジェット吐出特性を有するようにインク所望の粘度及び表面張力を有するように調製することが好ましい。
上記したような色材を分散する水性媒体は、インク用として利用できるものであれば、特に限定されるものでない。インクジェット法(例えば、バブルジェット(登録商標)法など)で記録媒体に付着せしめる場合には、インクジェット吐出特性を有するようにインク所望の粘度及び表面張力を有するように調製することが好ましい。
本発明で使用するアニオン性顔料インクに用いられる水性媒体は、例えば、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶剤は、従来公知のいずれのものも用いることができ、単独でも又は混合物としても用いることができる。また、水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。アニオン性顔料インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、さらには5.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。アニオン性顔料インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、さらには70.0質量%以上85.0質量%以下であることがより好ましい。
(その他の成分)
さらに、本発明で使用するアニオン性顔料インクには、上記の成分の他に、必要に応じて保湿剤を添加することは勿論、所望の物性値を有するものとするために、消泡剤、防腐剤及び防黴剤などを添加しても構わない。また、所望の表面張力を有するアニオン性顔料インクとすることを目的として、界面活性剤を含有してなるものでも構わない。
さらに、本発明で使用するアニオン性顔料インクには、上記の成分の他に、必要に応じて保湿剤を添加することは勿論、所望の物性値を有するものとするために、消泡剤、防腐剤及び防黴剤などを添加しても構わない。また、所望の表面張力を有するアニオン性顔料インクとすることを目的として、界面活性剤を含有してなるものでも構わない。
<反応液>
本発明で使用する反応液は、前記したアニオン性顔料インクと共に画像記録に用いられるものであって、該インクと接触することにより、該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる機能を有する。ここで、本発明でいうインク中の顔料の分散状態の不安定化とは、該インクと反応液が接触した際に、当該混合物において、凝集やゲル化といった状態が引き起こされることを指す(以降「インクの不安定化」と表現する場合がある)。反応液は、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。可視域に吸収を示すとしても実質上画像に影響を与えない範囲であれば可視域に吸収を示すものであってもかまわない。
本発明で使用する反応液は、前記したアニオン性顔料インクと共に画像記録に用いられるものであって、該インクと接触することにより、該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる機能を有する。ここで、本発明でいうインク中の顔料の分散状態の不安定化とは、該インクと反応液が接触した際に、当該混合物において、凝集やゲル化といった状態が引き起こされることを指す(以降「インクの不安定化」と表現する場合がある)。反応液は、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。可視域に吸収を示すとしても実質上画像に影響を与えない範囲であれば可視域に吸収を示すものであってもかまわない。
(多価金属イオン)
インクの不安定化を生じさせるために反応液中に含有させる反応性成分としては、多価金属イオンを用いることが好ましい。反応液中の反応性成分に好適な多価金属イオン及びその塩について説明する。多価金属イオンの塩とは、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものである。多価金属イオンの具体例としては、前記に挙げたものなどがある。陰イオンの具体例としては、SO4 2-、Cl-、CO3 2-、NO3 -、I-、Br-、ClO3 -、CH3COO-及びHCOO-などが挙げられる。また、本発明にかかる効果を考慮すると、反応液中の多価金属イオンの含有量は、多価金属塩の形態で、反応液全質量を基準として、0.01質量%以上20.0質量%以下の範囲であることが好ましい。
インクの不安定化を生じさせるために反応液中に含有させる反応性成分としては、多価金属イオンを用いることが好ましい。反応液中の反応性成分に好適な多価金属イオン及びその塩について説明する。多価金属イオンの塩とは、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものである。多価金属イオンの具体例としては、前記に挙げたものなどがある。陰イオンの具体例としては、SO4 2-、Cl-、CO3 2-、NO3 -、I-、Br-、ClO3 -、CH3COO-及びHCOO-などが挙げられる。また、本発明にかかる効果を考慮すると、反応液中の多価金属イオンの含有量は、多価金属塩の形態で、反応液全質量を基準として、0.01質量%以上20.0質量%以下の範囲であることが好ましい。
(水性媒体)
上記反応液に用いられる水性媒体としては、例えば、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、具体的には、インクに一般的に使用可能ないずれのものも用いることができる。水溶性有機溶剤は、単独でも又は混合物としても使用することができる。また、水としては脱イオン水を使用することが好ましい。
上記反応液に用いられる水性媒体としては、例えば、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、具体的には、インクに一般的に使用可能ないずれのものも用いることができる。水溶性有機溶剤は、単独でも又は混合物としても使用することができる。また、水としては脱イオン水を使用することが好ましい。
反応液中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下が好ましい。また、反応液中の水の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下が好ましい。
(その他の成分)
さらに上記の成分のほかに必要に応じて所望の物性値を持つ反応液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤などを添加することができる。
さらに上記の成分のほかに必要に応じて所望の物性値を持つ反応液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤などを添加することができる。
<インクジェット記録装置>
図1は、インクジェット記録装置の主要部の模式的な斜視図である。キャリッジ100は無端ベルト5に固定され、かつガイドシャフト3に沿って移動可能になっている。無端ベルト5は一対のプーリ503に巻回され、一方のプーリ503にはキャリッジ駆動モータ(不図示)の駆動軸が連結されている。したがって、キャリッジ100は、モータの回転駆動に伴いガイドシャフト3沿って図1の左右方向に往復主走査される。キャリッジ100上には、インクカートリッジ2を着脱可能に保持する記録ヘッド1が搭載されている。ここで、記録ヘッド1は、吐出口列が記録媒体6と対向し、かつ上記配列方向が主走査方向と異なる方向(例えば記録媒体6の搬送方向である副走査方向)に一致するようにキャリッジ100に搭載される。なお、吐出口列及びインクカートリッジ2の組は、用いるインク色に対応した個数を設けることができ、図示の例では4色(例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)に対応して4組設けられている。
図1は、インクジェット記録装置の主要部の模式的な斜視図である。キャリッジ100は無端ベルト5に固定され、かつガイドシャフト3に沿って移動可能になっている。無端ベルト5は一対のプーリ503に巻回され、一方のプーリ503にはキャリッジ駆動モータ(不図示)の駆動軸が連結されている。したがって、キャリッジ100は、モータの回転駆動に伴いガイドシャフト3沿って図1の左右方向に往復主走査される。キャリッジ100上には、インクカートリッジ2を着脱可能に保持する記録ヘッド1が搭載されている。ここで、記録ヘッド1は、吐出口列が記録媒体6と対向し、かつ上記配列方向が主走査方向と異なる方向(例えば記録媒体6の搬送方向である副走査方向)に一致するようにキャリッジ100に搭載される。なお、吐出口列及びインクカートリッジ2の組は、用いるインク色に対応した個数を設けることができ、図示の例では4色(例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)に対応して4組設けられている。
記録媒体6は、キャリッジ100のスキャン方向と直交する方向に間欠的に搬送される。記録媒体6は搬送方向の上流側及び下流側にそれぞれ設けた一対のローラユニット(不図示)により支持され、一定の張力を付与されて吐出口に対する平坦性を確保した状態で搬送される。そして、キャリッジ100の移動に伴う記録ヘッド1の吐出口の配列幅に対応した幅の記録と、記録媒体6の搬送とを交互に繰り返しながら、記録媒体6全体に対する記録が行われる。また、図示の装置には、キャリッジの主走査方向上の移動位置を検出するなどの目的でリニアエンコーダ4が設けられている。
キャリッジ100は、記録開始時又は記録中に必要に応じてホームポジションで停止する。ホームポジション付近には、キャップや、図2を用いて後述するクリーニング装置を含む回復機構7が設置されている。キャップは昇降可能に支持されており、上昇位置では、記録ヘッド1の吐出口面をキャッピングし、非記録動作時などにおいてその保護を行うことや、又は吸引回復を行うことが可能である。記録動作時には記録ヘッド1との干渉を避ける下降位置に設定され、また、吐出口面との対向によって予備吐出を受けることが可能である。
図2は、本発明のインクジェット記録装置を構成するクリーニング機構の一例を示す模式的側面図であり、図1の矢印方向から見たものである。ゴムなどの弾性部材で構成されるワイパブレード9A及び9Bが、ワイパホルダ10に固定されており、ワイパホルダ10は、図2の左右方向(記録ヘッド1の主走査方向と直交する方向で、吐出口が配列された方向)に移動可能である。ワイパブレード9A及び9Bは厚さが異なっており、記録ヘッド1の吐出口面11との摺接時に、前者は比較的大きく屈曲して側部が、後者は比較的小さく屈曲して先端部が、それぞれ吐出口面11に当接するようになっている。
図2中の12は、ワイパブレードが接触することで、ワイパブレードへヘッド用液体を転移するためのヘッド用液体供給装置であり、本発明では、カートリッジ(容器)に、本発明のヘッド用液体を収納した形態とするとよい。また、所定量のヘッド用液体を保持する一方、ワイパブレードとの接触に応じてヘッド用液体を滲出する吸収体を、少なくとも当該接触部位に有したものとすることができる。さらに、ヘッド用液体成分の均一な混合状態を得るための攪拌装置などが付加されていてもよい。14は水補充手段であり、極端な環境変化によって水分蒸発が生じても、本発明のヘッド用液体が、好適な成分比率範囲に維持できるようにするために配置した構成とすることが好ましい。
吐出口面のクリーニング動作にあたっては、先ず記録ヘッド1をホームポジションから離れた位置で待機した状態、又はホームポジションに移動する前に、ヘッド用液体供給装置12にワイパブレードを接触することでヘッド用液体を転移する。そして、ワイパホルダ10を図示の位置に戻し、記録ヘッドをホームポジションに設定した後、再びワイパホルダ10を矢印方向に移動する。この移動の過程で、比較的長いワイパブレード9Aが先ず吐出口面11に摺接し、比較的短いワイパブレード9Bがこれに続くことになる。
図3は、この過程の説明図である。ワイパブレード9Aは比較的大きく屈曲してその側部が吐出口面11に摺接し、ヘッド用液体16を効率よく吐出口面11に転写してゆく。吐出口面1に付着物1104があっても、ヘッド用液体16の付与によって溶解する。この状態でワイパブレード9Bの先端部(エッジ)が吐出口面11に当接することで、付着物の溶解物を効率的に掻きとって行き、吐出口面11のクリーニングが行われる。
なお、上記ワイピングを行った結果、ワイパブレード上には付着物の溶解物が付着している。これが重力の作用にしたがいワイパブレードを伝って流れ落ちるようにする場合には、図示のワイパホルダ10の位置の下方においてこれを受容する部材を設けることができる。しかし、供給装置12の付近でワイパブレード9A及び9Bに当接することで溶解物をワイパブレードから積極的に受容し、ワイパブレードを清浄な状態にする手段(スポンジやスクレイパなど)又は工程を設けることが好ましい。ワイパブレードを清浄な状態としてからヘッド用液体を転移するようにすれば、直ちに次のワイピングに備えることができる。
このようなクリーニングを行う上でも、本発明のヘッド用液体の構成を採用することが好ましい。ワイパブレードは、ヘッド用液体供給装置12及び吐出口面11との摺接に伴い、所望の転移量(該供給装置からワイパブレードへの転移量及びワイパブレードから吐出口面への転移量)を得るべく、材質、形状、寸法及び摺接対象との相対位置を定めるべきである。この一方で、環境変化に起因したヘッド用液体の質量変動や物性変化が大きいと、所望の転移量が得られなくなり、クリーニング性が低下する場合があるからである。
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
[顔料分散液の調製]
以下に示す方法により、各顔料分散液を調製した。
カーボンブラック10部、酸価が100mgKOH/gで重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10%水酸化ナトリウム水溶液で中和した分散剤20部、及びイオン交換水70部を混合した。なお、前記カーボンブラックは、比表面積が210m2/gでDBP吸油量が74ml/100gである。その後、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、さらにポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行うことで、顔料濃度10%、分散樹脂濃度20%のBk顔料分散液を得た。
以下に示す方法により、各顔料分散液を調製した。
カーボンブラック10部、酸価が100mgKOH/gで重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10%水酸化ナトリウム水溶液で中和した分散剤20部、及びイオン交換水70部を混合した。なお、前記カーボンブラックは、比表面積が210m2/gでDBP吸油量が74ml/100gである。その後、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、さらにポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行うことで、顔料濃度10%、分散樹脂濃度20%のBk顔料分散液を得た。
使用する顔料をC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー74にそれぞれ変えた以外は、上記Bk顔料分散液の調製と同様の手順により、C顔料分散液、M顔料分散液、Y顔料分散液をそれぞれ調製した。
[アニオン性顔料インク、反応液、ヘッド用液体の調製]
下記表1、表2、表3に示す組成にしたがって各成分を混合し、十分撹拌することで、ヘッド用液体1〜10、及びブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各アニオン性顔料インク、反応液1、2をそれぞれ調製した。なお、ヘッド用液体のpHは、水酸化カリウム(KOH)又は酢酸にて所望のpHになるように調整した。
下記表1、表2、表3に示す組成にしたがって各成分を混合し、十分撹拌することで、ヘッド用液体1〜10、及びブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各アニオン性顔料インク、反応液1、2をそれぞれ調製した。なお、ヘッド用液体のpHは、水酸化カリウム(KOH)又は酢酸にて所望のpHになるように調整した。
[評価]
<ワイピング耐久試験>
上記で得られたブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各アニオン性顔料インクの組み合わせをインクセットとした。そして、該インクセットと、下記表4に示す組み合わせの反応液及びヘッド用液体とをそれぞれ使用して、ワイピング耐久試験を行った。実際にインクジェット記録装置を用いる環境を想定して、記録装置を用い、吐出口面のクリーニング動作を連続して5,000回行い、試験前後での記録状態の変化を確認した。この時点で、記録状態が試験前と同等のものは、引き続きさらに5,000回クリーニング動作を行い、再度記録状態の変化を確認した。(合計;10,000回のクリーニング動作を行った。)
<ワイピング耐久試験>
上記で得られたブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各アニオン性顔料インクの組み合わせをインクセットとした。そして、該インクセットと、下記表4に示す組み合わせの反応液及びヘッド用液体とをそれぞれ使用して、ワイピング耐久試験を行った。実際にインクジェット記録装置を用いる環境を想定して、記録装置を用い、吐出口面のクリーニング動作を連続して5,000回行い、試験前後での記録状態の変化を確認した。この時点で、記録状態が試験前と同等のものは、引き続きさらに5,000回クリーニング動作を行い、再度記録状態の変化を確認した。(合計;10,000回のクリーニング動作を行った。)
具体的には、インクジェット記録装置に内蔵されたノズルチェックパターンを、高品位専用紙(HR−101;キヤノン製)に記録し、ドット形成位置のずれ(ヨレ)を観察した。なお、インクジェット記録装置は、PIXUS860i(キヤノン製)の回復系を図1に示す構成を有するように改造したものを用いた(なお、該回復系には、図2に示す構成のクリーニング装置が設置されている)。また、ヘッド用液体を収容する容器は、インクカートリッジBCI−3eカラー(キヤノン製)を空にしたものを用いた。前記インクカートリッジは、ヘッド用液体をそのまま貯留する第1液室部分と、ヘッド用液体を含浸保持することで記録ヘッドのノズルに好ましい負圧を発生するための吸収体を収納する第2液室部分とを有するものである。ただし、ワイパブレードの摺接及びヘッド用液体の転移が良好となるように改造を施したものとした。温度は、実際のインクジェット記録装置を用いる環境を想定して、15℃として評価をそれぞれ行った。得られたノズルチェックパターンを目視で確認して、ワイピング耐久試験の評価を行った。ワイピング耐久試験の評価基準は、以下の通りである。評価結果を表4に示す。本発明においては、以下の評価基準で、A〜Cを許容できるレベル、D及びEを許容できないレベルとした。
[評価基準]
A:クリーニング動作を10,000回行った後でも、ノズルチェックパターンにヨレがない。
B:クリーニング動作を5,000回行った後で、ノズルチェックパターンにヨレがなく、10,000回行った後は、ノズルチェックパターンの一部にヨレが生じるが、許容できるレベルである。
C:クリーニング動作を5,000回行った後と、10,000回行った後において、共に、ノズルチェックパターンの一部にヨレが生じるが、許容できるレベルである。
D:クリーニング動作を5,000回行った後で、ノズルチェックパターンの全体にヨレが生じる。
E:クリーニング動作を5,000回行った後で、ノズルチェックパターンの一部が記録できない。
A:クリーニング動作を10,000回行った後でも、ノズルチェックパターンにヨレがない。
B:クリーニング動作を5,000回行った後で、ノズルチェックパターンにヨレがなく、10,000回行った後は、ノズルチェックパターンの一部にヨレが生じるが、許容できるレベルである。
C:クリーニング動作を5,000回行った後と、10,000回行った後において、共に、ノズルチェックパターンの一部にヨレが生じるが、許容できるレベルである。
D:クリーニング動作を5,000回行った後で、ノズルチェックパターンの全体にヨレが生じる。
E:クリーニング動作を5,000回行った後で、ノズルチェックパターンの一部が記録できない。
Claims (4)
- アニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含有するインク及び該インクと接触することにより該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含有する反応液を吐出させる吐出口が設けられた記録ヘッド表面に付与されるヘッド用液体であって、
該ヘッド用液体は、該ヘッド用液体を収容する液体収容部の液体導入口に位置する吸収体にワイパを当接させ、当該当接によって該吸収体から該ヘッド用液体を滲出させることで、該ワイパに該ヘッド用液体を転移させ、該ワイパを前記インク及び前記反応液を吐出する吐出口が設けられた記録ヘッド表面に摺接させることで、記録ヘッドに付与されるものであり、少なくとも水とグリセリンと分子中に1個のカルボキシル基を有する塩とを含有し、該分子中に1個のカルボキシル基を有する塩のモル数が、前記反応液が含有する多価金属のモル数の2倍以上であり、かつpHが7.0以上9.0未満であることを特徴とするヘッド用液体。 - ヘッド用液体中のグリセリンの含有量が、ヘッド用液体全質量を基準として、30.0質量%以上である請求項1に記載のヘッド用液体。
- アニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含有するインク及び該インクと接触することにより該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含有する反応液を吐出させる吐出口が設けられた記録ヘッドと、該記録ヘッド表面をヘッド用液体が転移されたワイパによりクリーニングするクリーニング機構とを有するインクジェット記録装置であって、前記ヘッド用液体が、請求項1又は2に記載のヘッド用液体であることを特徴とするインクジェット記録装置。
- アニオン性物質により分散されている顔料又は表面にアニオン性基を有する顔料を含有するインク及び該インクと接触することにより該インク中の顔料の分散状態を不安定化させる多価金属を含有する反応液を吐出させる吐出口が設けられた記録ヘッド表面をヘッド用液体が転移されたワイパによりクリーニングする方法であって、前記ヘッド用液体が、請求項1又は2に記載のヘッド用液体であることを特徴とする記録ヘッド表面のクリーニング方法。
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