JP2011037714A - 新規フィコエリスリンおよびその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】これまでに知られていない励起波長で蛍光を発するフィコエリスリンを提供すること。
【解決手段】次の性質(1)〜(3)、
(1)496±5nm、539±5nmおよび566±5nmに吸収極大波長を有する
(2)496±5nmおよび539±5nmの励起波長で573±5nmの蛍光を発す
る
(3)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動で測定される分子量が9
5,000±5,000である
を有することを特徴とするオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリン。
【選択図】なし
【解決手段】次の性質(1)〜(3)、
(1)496±5nm、539±5nmおよび566±5nmに吸収極大波長を有する
(2)496±5nmおよび539±5nmの励起波長で573±5nmの蛍光を発す
る
(3)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動で測定される分子量が9
5,000±5,000である
を有することを特徴とするオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリン。
【選択図】なし
Description
本発明は、新規フィコエリスリンおよびその利用に関する。
海藻は、その生息する水深に応じてクロロフィル以外の補助的光合成色素を含有している。特に藍藻類、紅藻類等の海藻ではフィコエリスリン、フィコシアニン等のフィコビリプロテインが主である。
これらフィコビリプロテインは、色素とタンパク質とが共有結合した複合体であり、可視光線を吸収し、強い蛍光を発するという性質および色素と結合するタンパク質の種類によって蛍光色が異なる性質が知られている。
しかしながら、これまでフィコビリプロテインとしては、スピルリナ等の藍藻類の海藻、チノリモ、サンゴモ等の紅藻類の海藻由来のものが実用化されているものの、上記したように、フィコビリプロテインは色素と結合するタンパク質の種類によって励起波長や蛍光色が異なるため、多種のフィコビリプロテインが要求されてきている。
従って本発明は、これまでに知られていない励起波長で蛍光を発するフィコエリスリンを提供することをその課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、紅藻綱(Rhodophyceae) オゴノリ目(Gracilariales)オゴノリ科(Gracilariaceae)オゴノリ属(Gracilaria)の海藻からこれまでに知られていない励起波長で蛍光を発するフィコエリスリンが得られることを見出した。また、オゴノリ属の海藻から粉砕、攪拌、遠心分離、ろ過等の簡単な手段で上記フィコエリスリンを得る方法を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は次の性質(1)〜(3)、
(1)496±5nm、539±5nmおよび566±5nmに吸収極大波長を有する
(2)496±5nmおよび539±5nmの励起波長で573±5nmの蛍光を発す
る
(3)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動で測定される分子量が9
5,000±5,000である
を有することを特徴とするオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリンである。
(1)496±5nm、539±5nmおよび566±5nmに吸収極大波長を有する
(2)496±5nmおよび539±5nmの励起波長で573±5nmの蛍光を発す
る
(3)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動で測定される分子量が9
5,000±5,000である
を有することを特徴とするオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリンである。
また、本発明は上記フィコエリスリンを封入した透明の容器と、照明とを組み合わせてなることを特徴とする発光オブジェである。
更に、本発明は上記フィコエリスリンで標識した抗体である。
また更に、本発明は以下の工程(a)〜(b)、
(a)オゴノリ属の海藻を粉砕した後、水と混合し、当該混合物を攪拌する工程
(b)工程(a)で得られた混合物を遠心分離し、その上清を得る工程
を含むことを特徴とするオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリンの抽出方法である。
(a)オゴノリ属の海藻を粉砕した後、水と混合し、当該混合物を攪拌する工程
(b)工程(a)で得られた混合物を遠心分離し、その上清を得る工程
を含むことを特徴とするオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリンの抽出方法である。
本発明のオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリン(以下、単に「フィコエリスリン」ということもある)は、これまでに知られていない励起波長で蛍光を発する新規の蛍光色素である。
このフィコエリスリンは、従来の蛍光色素と同様に、着色料、発光オブジェ、抗体等への標識等として利用できる他、フィコエリスリンの蛍光波長がクロロフィルの利用可能な波長であることを利用して植物の成長促進装置等に利用することができる。
更に、本発明のフィコエリスリンの抽出方法によれば、従来よりも簡便な方法で上記フィコエリスリンを得ることができる。特に、この抽出方法に用いる原料として海洋深層水で養殖されたオゴノリ属の海藻を用いることで、効率良く大量に上記フィコエリスリンを得ることができる。
本発明のオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリンは、フィコエリスロビリンとタンパク質が共有結合したものであり、次の性質(1)〜(3)、好ましくは(1)〜(7)を有するものである。
(1)496±5nm、539±5nmおよび566±5nmに吸収極大波長を有し
、好ましくは496±2nm、539±3nmおよび566±1nmに吸収極
大波長を有する
(2)496±5nmおよび539±5nmの励起波長で573±5nmの蛍光を発し
、好ましくは496±2nmおよび539±3nmの励起波長で573±1nm
の蛍光を発する
(3)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動で測定される分子量が9
5,000±5,000である
(4)pH5〜7で安定である
(5)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の存在下で安定である。
(6)0.05%のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(商品名:Trit
on X−100(ナカライテスク製)、NP40(ナカライテスク製))等の
界面活性剤存在下で安定である。
(7)0.01mMの塩酸、0.1mMの水酸化ナトリウムまたは0.1M塩化ナトリウ
ム存在下で安定である。
(1)496±5nm、539±5nmおよび566±5nmに吸収極大波長を有し
、好ましくは496±2nm、539±3nmおよび566±1nmに吸収極
大波長を有する
(2)496±5nmおよび539±5nmの励起波長で573±5nmの蛍光を発し
、好ましくは496±2nmおよび539±3nmの励起波長で573±1nm
の蛍光を発する
(3)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動で測定される分子量が9
5,000±5,000である
(4)pH5〜7で安定である
(5)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の存在下で安定である。
(6)0.05%のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(商品名:Trit
on X−100(ナカライテスク製)、NP40(ナカライテスク製))等の
界面活性剤存在下で安定である。
(7)0.01mMの塩酸、0.1mMの水酸化ナトリウムまたは0.1M塩化ナトリウ
ム存在下で安定である。
上記フィコエリスリンは、オゴノリ属の海藻、好ましくはオゴノリ(Gracilaria tikvahiae)またはクビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)から得られるものである。この海藻は、天然のものでも養殖のものでもよいが、施肥をした通常の表層海水(表層水)または海洋深層水(水深200M以深から取水された海水)で養殖したものが好ましく、特に海洋深層水で養殖したものが好ましい。施肥した表層水で海藻を養殖する場合には、その条件については特に制限されず、公知の海藻の養殖の条件を用いることができる。また、海洋深層水で海藻を養殖する場合には、その条件は、例えば、須藤ら(「平成14年度補正 沖縄産学間共同研究推進事業『沖縄海洋深層水の生理効果の検証と機能性資源としての開発業務』成果報告書、平成16年3月、沖縄県管理法人 財団法人南西地域産業活性化センター発行、73−79ページ)の文献等に記載の条件を用いることができる。
なお、上記海藻は施肥した表層水または海洋深層水で養殖すると、天然のものや表層水のみで養殖した海藻と比べて成長が早く、フィコエリスリンの量が多くなり、特に上記海藻を海洋深層水で養殖すると海藻の収量と比較してフィコエリスリンの量が多くなる。
上記海藻からフィコエリスリンを得る方法は、例えば、サンら(Sun L, et al., Protein Expr. and Purif. 2009 Apr;64(2):146-54.)、ジアンら(Jian-Feng Niu, et al., Protein Expr. and Purif. 49 (2006) 23-31 )、ルーら(Lu-Ning Liu, et al., J. Biotechnol. 2005 Mar 2;116(1):91-100)、ベルメジョら(R. Bermejo Roman a, et al., J. of Biotechnol. 93 (2002) 73-85およびJ. Chromatogr. A. 2001 May 11;917(1-2):135-145)の文献等に記載の方法で行うことができるが、特に以下の工程(a)〜(b)を含む工程で行うことが好ましい。
(a)オゴノリ属の海藻を粉砕した後、水と混合し、当該混合物を攪拌する工程
(b)工程(a)で得られた混合物を遠心分離し、その上清を得る工程
(a)オゴノリ属の海藻を粉砕した後、水と混合し、当該混合物を攪拌する工程
(b)工程(a)で得られた混合物を遠心分離し、その上清を得る工程
より具体的に工程(a)は、オゴノリ属の海藻15g(湿重量)をミルサー等の粉砕機で粉砕した後、0.15Lの水と混合し、さらにミルサーで5分間の条件で粉砕して水と海藻の混合物を得る。
工程(b)は、工程(a)で得られた混合物を、遠心分離機で10,000gの条件で遠心分離し、上清を得る。なお、フィコエリスリンの抽出原料として海洋深層水で養殖したオゴノリ属の海藻を原料とした場合には、この工程まででも十分な量のフィコエリスリンを得ることができる。
上記工程(a)〜(b)の後には更にフィコエリスリンを精製するため工程(c)を行ってもよい。
(c)工程(b)で得られた上清に硫酸アンモニウムを添加し、沈殿物を回収後、再溶
解によりフィコエリスリンを得る工程
(c)工程(b)で得られた上清に硫酸アンモニウムを添加し、沈殿物を回収後、再溶
解によりフィコエリスリンを得る工程
この工程(c)は、工程(b)で得られた上清を撹拌しながら、硫酸アンモニウムを徐々に添加してその濃度を40飽和%にし、さらに1時間攪拌を続ける。次に、この混合液を遠心分離機で10,000g、20分間の条件で遠心分離し、沈殿物を得る。この沈殿物を少量の蒸留水で再溶解し、蒸留水で透析することで、沈殿物中の硫酸アンモニウムを除く。この透析後の再溶解液は、フィコエリスリンを豊富に含有するものであり、そのまま各種用途に使用できるものであるが、更に、クロマトグラフィー等の公知の手段により精製してもよい。
斯くして得られる本発明のフィコエリスリンは、従来の蛍光色素と同様に、着色料、発光オブジェ、抗体等への標識等として利用できる他、フィコエリスリンの蛍光波長がクロロフィルの利用可能な波長であることを利用して植物の成長促進装置等に利用することができる。
具体的に本発明のフィコエリスリンを着色料として利用する場合には、例えば、清涼飲料、炭酸飲料等の飲料に本発明のフィコエリスリンを1〜5質量%程度含有させればよい。この飲料は、白色LED等の照明の元ではオレンジ色の蛍光色を有する飲料となり、照明を落とした室内で、テーブルに設置した白色LEDにより、グラスに入れた飲料が蛍光を発する等の楽しみ方ができる。
また、本発明のフィコエリスリンを発光オブジェとして利用する場合には、フィコエリスリンの水溶液を封入した透明の容器と、照明とを組み合わせればよい。この発光オブジェに用いられる透明の容器とは、プラスチック、ガラス等で作製されたものが挙げられる。また、この透明の容器に封入されるフィコエリスリンの水溶液におけるフィコエリスリンの濃度は特に限定されないが、5〜20質量%程度が好ましい。更に、照明としては、白熱灯、蛍光灯、ブラックライト、白色LED、有機EL等が挙げられるが、特にフィコエリスリンの励起波長に近いことから白色LEDが好ましい。
上記発光オブジェは、これに封入されているフィコエリスリンにより光の波長を光合成の主体であるクロロフィルが利用しやすい波長域に変換することができる。そのためこの発光オブジェは、植物の光合成の効率を上げることができ、その生長を促進することができる。将来的には、宇宙での食用野菜の栽培への、放射線のエネルギー利用が考えられる。宇宙には大量の放射線が飛び交っている。放射線をフィコエリスリンに当てて、クロロフィルが利用可能な波長の蛍光に転換することで、あえて人工光源を用いる必要のない食用野菜の栽培が可能となる。また、人体に悪影響のある宇宙線を人体に無害な人工照明に変換するのに利用可能である。
更に、本発明のフィコエリスリンを抗体への標識として利用する場合には、ロニックら(Kronick M. N., et al., Clinical chemistry 29: 1582-1586(1983))およびオイブら(Oi V. T., et al., Stryer L., Journal of Cell Biology 93: 981-986(1982))の文献等に記載の方法に基づいてフィコエリスリンを抗体に結合させればよい。このフィコエリスリンで標識した抗体は、励起光条件下で抗原をオレンジ色の蛍光により識別可能となる。そのためこの標識抗体は細胞レベルやインビトロ系での特定分子のイメージング解析に応用できる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、この実施例により本発明は何ら制約されるものではない。
参 考 例 1
沖縄県産のクビレオゴノリの海洋深層水による養殖:
容量1トンの円形キャンパス水槽(FRP製)に、沖縄県産のクビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)の母藻(クビレオゴノリの成体の先端をちぎって5cm程度にしたもの)1kgを入れ、久米島の沖合い2,300m、水深612mから取水した約10℃の海洋深層水を19.9±1.2℃にした後、1日4回の割合で換水し、34日間養殖した。養殖後に得られたクビレオゴノリの量は5.25kgであった。また、クビレオゴノリの生体は概ね24cm程度の大きさであった。このクビレオゴノリは天然物および海で養殖したものと比べて生育が盛んであり、赤みも強かった。
沖縄県産のクビレオゴノリの海洋深層水による養殖:
容量1トンの円形キャンパス水槽(FRP製)に、沖縄県産のクビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)の母藻(クビレオゴノリの成体の先端をちぎって5cm程度にしたもの)1kgを入れ、久米島の沖合い2,300m、水深612mから取水した約10℃の海洋深層水を19.9±1.2℃にした後、1日4回の割合で換水し、34日間養殖した。養殖後に得られたクビレオゴノリの量は5.25kgであった。また、クビレオゴノリの生体は概ね24cm程度の大きさであった。このクビレオゴノリは天然物および海で養殖したものと比べて生育が盛んであり、赤みも強かった。
参 考 例 2
フロリダ原産のオゴノリの海洋深層水による養殖:
沖縄県産のクビレオゴノリの母藻1kgをフロリダ原産のオゴノリ(Gracilaria tikvahiae)の母藻(オゴノリの成体の先端をちぎって5cm程度にしたもの)1kgに代える以外は参考例1と同様にして養殖した。養殖後に得られたオゴノリ量は 25.55kgであった。また、オゴノリの生体は概ね30cm程度の大きさであった。このオゴノリは天然物および海で養殖したものと比べて生育が盛んであり、赤みも強かった。
フロリダ原産のオゴノリの海洋深層水による養殖:
沖縄県産のクビレオゴノリの母藻1kgをフロリダ原産のオゴノリ(Gracilaria tikvahiae)の母藻(オゴノリの成体の先端をちぎって5cm程度にしたもの)1kgに代える以外は参考例1と同様にして養殖した。養殖後に得られたオゴノリ量は 25.55kgであった。また、オゴノリの生体は概ね30cm程度の大きさであった。このオゴノリは天然物および海で養殖したものと比べて生育が盛んであり、赤みも強かった。
参 考 例 3
神奈川県産のオゴノリの海洋深層水による養殖:
沖縄県産のクビレオゴノリの母藻1kgを神奈川県産のオゴノリ(種類未同定)の母藻(オゴノリの成体の先端をちぎって5cm程度にしたもの)1kgに代える以外は参考例1と同様にして養殖した。養殖後に得られたオゴノリの量は5.25kgであった。また、オゴノリの生体は概ね24cm程度の大きさであった。このオゴノリは天然物および海で養殖したものと比べて生育が盛んであり、赤みも強かった。
神奈川県産のオゴノリの海洋深層水による養殖:
沖縄県産のクビレオゴノリの母藻1kgを神奈川県産のオゴノリ(種類未同定)の母藻(オゴノリの成体の先端をちぎって5cm程度にしたもの)1kgに代える以外は参考例1と同様にして養殖した。養殖後に得られたオゴノリの量は5.25kgであった。また、オゴノリの生体は概ね24cm程度の大きさであった。このオゴノリは天然物および海で養殖したものと比べて生育が盛んであり、赤みも強かった。
実 施 例 1
沖縄県産のクビレオゴノリからの蛍光物質の抽出:
参考例1で得られた沖縄県産のクビレオゴノリの15g(湿重量)に、蒸留水を150ml添加し、ミルサー(ミルサー700G:岩谷産業製)で5分間粉砕した。その後粉砕物を遠心分離機(himac CR20E:日立製作所製)で10,000g、20分の条件で遠心し、上清を回収した(約150ml)。この上清は濃いピンク色であり、フィコエリスリンの存在が示唆された。
沖縄県産のクビレオゴノリからの蛍光物質の抽出:
参考例1で得られた沖縄県産のクビレオゴノリの15g(湿重量)に、蒸留水を150ml添加し、ミルサー(ミルサー700G:岩谷産業製)で5分間粉砕した。その後粉砕物を遠心分離機(himac CR20E:日立製作所製)で10,000g、20分の条件で遠心し、上清を回収した(約150ml)。この上清は濃いピンク色であり、フィコエリスリンの存在が示唆された。
次にこの上清の50mlをビーカーに入れ、スターラー(SR200:ADVANTEC製)に載せて撹拌しながら硫酸アンモニウムを40飽和%まで徐々に添加し、さらに1時間撹拌を続けた。その後、この混合液を遠心分離機で10,000g、20分の条件で遠心し、沈殿物を得た。この沈殿物を8mlの蒸留水に再溶解し、透析チューブに封入後、含有する硫酸アンモニウムを除くために2Lの蒸留水中で5時間透析した。透析終了後、封入液を回収し、そのタンパク量をブラッドフォード(Bradford)法で測定したところ、9.7mgであった。以下、この液を10倍に希釈したものをサンプル1として以下の測定を行った。
(吸収スペクトル測定)
サンプル1の吸収スペクトルの測定を分光光度計(UV1600:島津製作所製)を用い波長210〜900nmで行った。その結果を図1および図2に示した。また、この測定においてピーク検出された波長と吸光度を表1に示した。
サンプル1の吸収スペクトルの測定を分光光度計(UV1600:島津製作所製)を用い波長210〜900nmで行った。その結果を図1および図2に示した。また、この測定においてピーク検出された波長と吸光度を表1に示した。
サンプル1の吸収スペクトルは、277nm付近にはタンパクに由来するなだらかな吸収を有することおよび495nmに吸収極大を有することが分かった。
(蛍光スペクトル測定)
サンプル1の蛍光スペクトルの測定を分光蛍光光度計(RF−1500:島津製作所製)用い、励起波長494nmまたは573nmで行った。その結果を図3および図4に示した。
サンプル1の蛍光スペクトルの測定を分光蛍光光度計(RF−1500:島津製作所製)用い、励起波長494nmまたは573nmで行った。その結果を図3および図4に示した。
サンプル1は494nmおよび539nmの励起波長で573nmの蛍光を発することが分かった。
(分子量測定)
サンプル1中に含まれるタンパクの分子量をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)で測定した。その結果、タンパクの分子量は約95,000±5,000であった。また、SDS−PAGEの結果より、サンプル1にはほぼ単一のタンパクしか含まれていないことが分かった。
サンプル1中に含まれるタンパクの分子量をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)で測定した。その結果、タンパクの分子量は約95,000±5,000であった。また、SDS−PAGEの結果より、サンプル1にはほぼ単一のタンパクしか含まれていないことが分かった。
以上の測定結果から、サンプル1中に含まれるタンパクはフィコエリスリンと同定された。
実 施 例 2
フロリダ原産のオゴノリからの蛍光物質の抽出:
参考例2で養殖して得られたフロリダ原産のオゴノリについて、実施例1と同様にしてろ液を調製した。このろ液に含まれるタンパク量は10.3mgであった。以下このろ液を30倍に希釈したものをサンプル2とし、これについて実施例1と同様にして吸光スペクトル、蛍光スペクトルおよび分子量の測定を行った。その結果を以下に示した。
フロリダ原産のオゴノリからの蛍光物質の抽出:
参考例2で養殖して得られたフロリダ原産のオゴノリについて、実施例1と同様にしてろ液を調製した。このろ液に含まれるタンパク量は10.3mgであった。以下このろ液を30倍に希釈したものをサンプル2とし、これについて実施例1と同様にして吸光スペクトル、蛍光スペクトルおよび分子量の測定を行った。その結果を以下に示した。
(吸光スペクトル測定)
サンプル2の吸光スペクトル測定においてピーク検出された波長と吸光度を表2に示した。なお、サンプル2の吸収スペクトルの形状はサンプル1とほぼ同じであり、278nm付近にはタンパクに由来するなだらかな吸収を有することおよび498nmに吸収極大を有することが分かった。
サンプル2の吸光スペクトル測定においてピーク検出された波長と吸光度を表2に示した。なお、サンプル2の吸収スペクトルの形状はサンプル1とほぼ同じであり、278nm付近にはタンパクに由来するなだらかな吸収を有することおよび498nmに吸収極大を有することが分かった。
(蛍光スペクトル測定)
サンプル2は498nmおよび542nmの励起波長で572nmの蛍光を発することが分かった。
サンプル2は498nmおよび542nmの励起波長で572nmの蛍光を発することが分かった。
(分子量測定)
サンプル2中に含まれるタンパクの分子量をSDS−PAGEで測定したところ、分子量は約95,000±5,000であり、ほぼ沖縄産クビレオゴノリ由来のフィコエリスリンと同程度であったが、やや大きい分子量を示した。
サンプル2中に含まれるタンパクの分子量をSDS−PAGEで測定したところ、分子量は約95,000±5,000であり、ほぼ沖縄産クビレオゴノリ由来のフィコエリスリンと同程度であったが、やや大きい分子量を示した。
以上の結果から、サンプル2中に含まれるタンパクはフィコエリスリンと同定された。
実 施 例 3
神奈川県産のオゴノリからの蛍光物質の抽出:
参考例3で養殖して得られた神奈川県産のオゴノリについて、実施例1と同様にしてろ液を調製した。このろ液に含まれるタンパク量は23.5mgであった。以下このろ液を30倍に希釈したものをサンプル3とし、これについて実施例1と同様にして吸光スペクトル、蛍光スペクトルおよび分子量の測定を行った。その結果を以下に示した。
神奈川県産のオゴノリからの蛍光物質の抽出:
参考例3で養殖して得られた神奈川県産のオゴノリについて、実施例1と同様にしてろ液を調製した。このろ液に含まれるタンパク量は23.5mgであった。以下このろ液を30倍に希釈したものをサンプル3とし、これについて実施例1と同様にして吸光スペクトル、蛍光スペクトルおよび分子量の測定を行った。その結果を以下に示した。
(吸光スペクトル測定)
サンプル3の吸光スペクトル測定においてピーク検出された波長と吸光度を表3に示した。なお、サンプル3の吸収スペクトルの形状はサンプル1とほぼ同じであり、278nm付近にはタンパクに由来するなだらかな吸収を有することおよび494nmに吸収極大を有することが分かった。
サンプル3の吸光スペクトル測定においてピーク検出された波長と吸光度を表3に示した。なお、サンプル3の吸収スペクトルの形状はサンプル1とほぼ同じであり、278nm付近にはタンパクに由来するなだらかな吸収を有することおよび494nmに吸収極大を有することが分かった。
(蛍光スペクトル測定)
サンプル3は494nmおよび539nmの励起波長で573nmの蛍光を発することが分かった。
サンプル3は494nmおよび539nmの励起波長で573nmの蛍光を発することが分かった。
<分子量>
サンプル3中に含まれるタンパクの分子量をSDS−PAGEで測定したところ、分子量は約約95,000±5,000であった。
サンプル3中に含まれるタンパクの分子量をSDS−PAGEで測定したところ、分子量は約約95,000±5,000であった。
以上の結果から、サンプル3中に含まれるタンパクはフィコエリスリンと同定された。
実 施 例 4
フィコエリスリンの安定性の検討:
実施例2で得られたサンプル2中に含まれるフィコエリスリンの各種物質に対する安定性を以下の方法で検討した。
フィコエリスリンの安定性の検討:
実施例2で得られたサンプル2中に含まれるフィコエリスリンの各種物質に対する安定性を以下の方法で検討した。
(アルカリ条件下での安定性)
実施例2で得られたサンプル2の1mlを容量が1.5mlのマイクロチューブ入れ、これに水酸化ナトリウム溶液を、最終濃度0.01mM、0.1mM、1mM、10mM、30mMおよび100mMになるように添加した。それらの液のpHは、5、6、6.5、8、11、11および11であった。次に、これに紫外線(波長:310nm)を照射し、蛍光の度合いを観察した。紫外線を照射した結果を図5に示した。
実施例2で得られたサンプル2の1mlを容量が1.5mlのマイクロチューブ入れ、これに水酸化ナトリウム溶液を、最終濃度0.01mM、0.1mM、1mM、10mM、30mMおよび100mMになるように添加した。それらの液のpHは、5、6、6.5、8、11、11および11であった。次に、これに紫外線(波長:310nm)を照射し、蛍光の度合いを観察した。紫外線を照射した結果を図5に示した。
この結果より、サンプル2中に含まれるフィコエリスリンはpH5〜6.5で安定であり、また、pH8以上では蛍光を発しないことが分かった。
(酸性条件下での安定性)
実施例2で得られたサンプル2の1mlを容量が1.5mlのマイクロチューブ入れ、これに塩酸溶液を、最終濃度0.01mM、0.1mM、1mM、10mM、30mMおよび100mMになるように添加した。それらの液のpHは、5、4.5、4、4、3、2であった。次に、これに紫外線(波長:310nm)を照射し、蛍光の度合いを観察した。紫外線を照射した結果を図6に示した。
実施例2で得られたサンプル2の1mlを容量が1.5mlのマイクロチューブ入れ、これに塩酸溶液を、最終濃度0.01mM、0.1mM、1mM、10mM、30mMおよび100mMになるように添加した。それらの液のpHは、5、4.5、4、4、3、2であった。次に、これに紫外線(波長:310nm)を照射し、蛍光の度合いを観察した。紫外線を照射した結果を図6に示した。
この結果より、サンプル2中に含まれるフィコエリスリンはpH5で安定であり、pH4.5以下では蛍光を発しないことが分かった。
(各種試薬存在下での安定性)
実施例2で得られたサンプル2の0.5mlを容量が1.5mlのマイクロチューブ入れ、これに10倍濃度のPBS、10%のTrinton X−100(ナカライテスク製)、10%のNP−40(ナカライテスク製)および5Mの塩化ナトリウム溶液を、それぞれ最終濃度が1倍(100%)、0.05%、0.05%および0.1Mになるように添加し、これに紫外線(波長:310nm)を照射した。その結果を図7に示した。
実施例2で得られたサンプル2の0.5mlを容量が1.5mlのマイクロチューブ入れ、これに10倍濃度のPBS、10%のTrinton X−100(ナカライテスク製)、10%のNP−40(ナカライテスク製)および5Mの塩化ナトリウム溶液を、それぞれ最終濃度が1倍(100%)、0.05%、0.05%および0.1Mになるように添加し、これに紫外線(波長:310nm)を照射した。その結果を図7に示した。
この結果より、サンプル2中に含まれるフィコエリスリンは100%PBS、0.05%のTritonX−100、0.05%のNP40および0.1Mの塩化ナトリウムの何れの条件下でも安定であることが分かった。また、PBSにおける沈殿物の量が少なかったことから、Triton X−100やNP−40といった非イオン性界面活性剤よりも、フィコエリスリンを可溶化しやすいのは塩化ナトリウム含有のリン酸緩衝液であるPBSであることが分かった。
実 施 例 5
発光オブジェの作製:
実施例1で得られたサンプル1の50mlを、容量100mlのガラス製の容器に封入した。この容器を水槽に入れ、蛍光灯と組み合わせて発光オブジェを作製した。発光オブジェの容器を蛍光灯で照明したところ、容器中のサンプル1はオレンジ色の蛍光を発した。また、照明を蛍光灯から白色LEDに代えたところサンプル1はより強いオレンジ色の蛍光を発した(図8)。更に、この発光オブジェは3ヶ月以上経った時点でも白色LEDでオレンジ色の蛍光を発する程度の安定性を示した。また更に、このサンプル1から発せられるオレンジ色は、植物のクロロフィルが利用できる波長の光のため、水槽内の水草の成長を促進し得る。
発光オブジェの作製:
実施例1で得られたサンプル1の50mlを、容量100mlのガラス製の容器に封入した。この容器を水槽に入れ、蛍光灯と組み合わせて発光オブジェを作製した。発光オブジェの容器を蛍光灯で照明したところ、容器中のサンプル1はオレンジ色の蛍光を発した。また、照明を蛍光灯から白色LEDに代えたところサンプル1はより強いオレンジ色の蛍光を発した(図8)。更に、この発光オブジェは3ヶ月以上経った時点でも白色LEDでオレンジ色の蛍光を発する程度の安定性を示した。また更に、このサンプル1から発せられるオレンジ色は、植物のクロロフィルが利用できる波長の光のため、水槽内の水草の成長を促進し得る。
参 考 例 4
沖縄県産のクビレオゴノリの表層水による養殖:
容量10トンの円形キャンパス水槽(FRP製)に、沖縄県産のクビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)の母藻(クビレオゴノリの成体の先端をちぎって5cm程度にしたもの)20kgを入れ、海岸より2,300m沖の水深15mから取水した表層水を1日4回の割合で換水し、34日間養殖した。養殖後に得られたクビレオゴノリの量は37.7kgであった。また、クビレオゴノリの生体は概ね15〜20cm程度の大きさであった。このクビレオゴノリは海洋深層水で養殖したものと比べて生育が遅く藻体の色も薄かった。
沖縄県産のクビレオゴノリの表層水による養殖:
容量10トンの円形キャンパス水槽(FRP製)に、沖縄県産のクビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)の母藻(クビレオゴノリの成体の先端をちぎって5cm程度にしたもの)20kgを入れ、海岸より2,300m沖の水深15mから取水した表層水を1日4回の割合で換水し、34日間養殖した。養殖後に得られたクビレオゴノリの量は37.7kgであった。また、クビレオゴノリの生体は概ね15〜20cm程度の大きさであった。このクビレオゴノリは海洋深層水で養殖したものと比べて生育が遅く藻体の色も薄かった。
参 考 例 5
沖縄県産のクビレオゴノリの施肥した表層水による養殖:
リン酸アンモウム(セントラルリン安1146:セントラル化成)1kgと塩化カリウム0.5kgを水道水10lに混合したものを肥料とし、これを朝と夕刻に1回500mlの条件で表層水に施肥を行う以外は、参考例4と同様にして沖縄県産のクビレオゴノリを養殖した。養殖後に得られたクビレオゴノリの量は77.8kgであった。また、クビレオゴノリの生体は概ね25cm程度の大きさであった。このクビレオゴノリは天然物および海で養殖したものと比べて生育が盛んであり、赤みも強かった。
沖縄県産のクビレオゴノリの施肥した表層水による養殖:
リン酸アンモウム(セントラルリン安1146:セントラル化成)1kgと塩化カリウム0.5kgを水道水10lに混合したものを肥料とし、これを朝と夕刻に1回500mlの条件で表層水に施肥を行う以外は、参考例4と同様にして沖縄県産のクビレオゴノリを養殖した。養殖後に得られたクビレオゴノリの量は77.8kgであった。また、クビレオゴノリの生体は概ね25cm程度の大きさであった。このクビレオゴノリは天然物および海で養殖したものと比べて生育が盛んであり、赤みも強かった。
実 施 例 6
各養殖で得られた沖縄県産のクビレオゴノリに含まれるフィコエリスリン量
の測定:
参考例1(海洋深層水で養殖)、参考例4(表層水で養殖)および参考例5(施肥した表層水で養殖)で得られたクビレオゴノリから実施例1と同様にして上清を得た。その上清に含まれるフィコエリスリン量を平田ら(平田ら、日本食品工業学会誌、25巻、p584−586、1978年)の文献に記載の吸光光度法で測定した。その結果を以下に示した。
各養殖で得られた沖縄県産のクビレオゴノリに含まれるフィコエリスリン量
の測定:
参考例1(海洋深層水で養殖)、参考例4(表層水で養殖)および参考例5(施肥した表層水で養殖)で得られたクビレオゴノリから実施例1と同様にして上清を得た。その上清に含まれるフィコエリスリン量を平田ら(平田ら、日本食品工業学会誌、25巻、p584−586、1978年)の文献に記載の吸光光度法で測定した。その結果を以下に示した。
表4より、どのような条件で養殖をしたクビレオゴノリにもフィコエリスリンが含まれていることが分かった。また、クビレオゴノリは、施肥した表層水または海洋深層水で養殖すると、表層水のみで養殖したものと比べて成長が早く、フィコエリスリンの量が多かった。また、クビレオゴノリの養殖後の収量に対するフィコエリスリンの量は、海洋深層水で養殖したものが一番多かった。
本発明のフィコエリスリンは、これまでに知られていない励起波長でオレンジ色の蛍光を発するものである。そしてこのフィコエリスリンは、従来公知の蛍光物質同様に、抗体等への標識、光の波長変換等、飲料等の着色料等の用途に利用できる。
以 上
以 上
Claims (7)
- 次の性質(1)〜(3)、
(1)496±5nm、539±5nmおよび566±5nmに吸収極大波長を有する
(2)496±5nmおよび539±5nmの励起波長で573±5nmの蛍光を発す
る
(3)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動で測定される分子量が9
5,000±5,000である
を有することを特徴とするオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリン。 - オゴノリ属の海藻が、オゴノリまたはクビレオゴノリである請求項1記載のフィコエリスリン。
- 請求項1または2記載のフィコエリスリンの水溶液を封入した透明の容器と、照明とを組み合わせてなることを特徴とする発光オブジェ。
- 植物の成長促進用である請求項3記載の発光オブジェ。
- 請求項1または2記載のフィコエリスリンで標識した抗体。
- 以下の工程(a)〜(b)、
(a)オゴノリ属の海藻を粉砕した後、水と混合し、当該混合物を攪拌する工程
(b)工程(a)で得られた混合物を遠心分離し、その上清を得る工程
を含むことを特徴とするオゴノリ属の海藻由来のフィコエリスリンの抽出方法。 - オゴノリ属の海藻が、海洋深層水を用いて培養されたものである請求項6記載のフィコエリスリンの抽出方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009183399A JP2011037714A (ja) | 2009-08-06 | 2009-08-06 | 新規フィコエリスリンおよびその利用 |
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JP (1) | JP2011037714A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015049227A (ja) * | 2013-09-04 | 2015-03-16 | 独立行政法人国立高等専門学校機構 | 大型藻類の生育診断装置及び大型藻類の生育診断方法 |
CN107827962A (zh) * | 2017-11-30 | 2018-03-23 | 广西天峨县果然美食品有限公司 | 一种从紫菜中提取藻红蛋白的方法 |
-
2009
- 2009-08-06 JP JP2009183399A patent/JP2011037714A/ja active Pending
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