JP2011036744A - 植物への重金属吸収促進剤および土壌の浄化方法 - Google Patents

植物への重金属吸収促進剤および土壌の浄化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環境問題を生じるおそれが少なく、かつ低コストで土壌中の重金属を多量に植物に吸収させる効率の良い、植物への重金属吸収促進剤、ならびにそれを用いた土壌の浄化方法を提供する。
【解決手段】アルギン酸もしくはその塩またはそれらの分解物を含有してなり、重金属含有土壌に添加するための、植物への重金属吸収促進剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、植物への重金属吸収促進剤、それを用いて土壌中の重金属の植物への吸収を促進させて、重金属を含む土壌を浄化する方法に関する。
環境汚染の中でも、鉛、ヒ素、六価クロム、カドミウム、銅等の重金属等の有害物質による土壌の汚染が特に問題となっており、これらの汚染された土壌を浄化するために種々の技術が開発されている。たとえば、汚染土壌を洗浄して有害物質を除去する土壌洗浄法、汚染土壌を加熱することで汚染物質を脱着、分解あるいは溶解して封じ込める熱処理法などがある。これらの処理法は、工期が短い利点があるが、高コストで、土壌に与える負荷が大きい点等にも難がある。そこで、重金属で汚染された土壌から重金属を除去する方法のひとつとして、播種または植栽した植物が有害物質を吸収する性質を利用した環境浄化技術であるファイトレメディエーション(Phytoremediation)がある。これは植物が生育する際に土壌中の水分、養分を吸収すると同時に重金属を吸収し、土壌中の重金属濃度を低下させ、植物を収穫して後処理することにより重金属を回収する土壌浄化方法である。
汚染土壌に植物を播種または植栽すれば、低コストで、環境に与える負荷も少ないため、汚染された土壌からの重金属の除去に加え、廃棄物処理場の周辺土壌等の汚染予防、等への利用が期待されている。そのために、重金属の吸収効率の大きい植物種を探索し、それを育成する検討が行われている。
しかしながら、上記の植物種には、温度、水分、土質等の生育環境に制約があるものも多く、栽培できる汚染土壌の地域も制限される等の課題がある。
そこで、クエン酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミントリクロロ酢酸(EDTA)等のキレート剤をpH調整して、植物を植栽した土壌に添加して、植物への重金属の吸収を促進する方法(特開2004−290820号公報)も提案されている。
しかし、キレート剤を土壌に添加する方法では、キレート剤は使用中の環境への負荷に難があり、コストにも難点があること、またキレート剤が自然環境中の微生物や酵素によって分解され難い難分解性の場合、植物に吸収されなかったキレート剤が土壌中に残存し、植物が生育障害を受けるだけでなく、土壌に固定されていた重金属が溶出し続け、地中深くまで浸透して二次汚染を生じるおそれも指摘されている。
この観点から、キレート剤としてメチルグリシン二酢酸(MGDA)、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、L−グルタミン酸二酢酸(GLDA)およびL−アスパラギン酸二酢酸(ASDA)ならびにそれらの塩のような生分解性キレート剤を用いて、上記のような二次汚染を防止する方法も提案されている(特開2006−75777号公報)。しかしながら、生分解性がこれらの生分解性キレート剤と同等以上であって、かつコストの点からも有利に、植物への重金属の吸収を促進する方法の開発がさらに望まれている。
特開2004−290820号公報 特開2006−75777号公報
本発明は、環境問題を生じるおそれが少なく、かつ低コストで土壌中の重金属を多量に植物に吸収させる効率の良い、植物への重金属吸収促進剤、それを土壌に添加して植物を生育させて、土壌中の重金属の植物への吸収を促進させて、重金属を含む土壌を浄化する方法を提供する。
本願発明は、上記の課題を解決するために以下の発明を提供する。
(1)アルギン酸、その塩もしくはエステルまたはそれらの分解物を含有してなり、重金属含有土壌に添加するための、植物への重金属吸収促進剤;
(2)塩がアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはアルギン酸アンモニウムである上記(1)に記載の植物への重金属吸収促進剤;
(3)分解物が、微生物が産生したアルギン酸分解酵素を作用させる方法、これらの微生物等を用いる方法、酸を用いて分解する方法または放射線を照射する方法で得られる上記(1)または(2)に記載の植物への重金属吸収促進剤;
(4)植物が、アブラナ科、アオイ科、マメ科、アカザ科、ナス科、キク科、タデ科、 およびイネ科からなる群から選ばれる少なくとも1種の植物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の植物への重金属吸収促進剤;
(5)重金属が、カドミウム、亜鉛、鉛、クロム、銅、水銀、ヒ素、スズおよびセレンならびにそれらの金属化合物の一種以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の植物への重金属吸収促進剤;
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の、植物への重金属吸収促進剤を用いて土壌中の重金属の植物への吸収を促進させて、重金属を含む土壌を浄化する方法;
(7)重金属を含む土壌に重金属吸収促進剤を添加し、該土壌で植物を生育させる上記(6)に記載の方法;
(8)土壌中の重金属含有量が0.5%以下である(6)または(7)に記載の方法;
(9)重金属吸収促進剤が、アルギン酸、その塩もしくはエステルまたはそれらの分解物の量として、土壌1mあたり、1〜2,000g用いられる上記(6)〜(8)のいずれかに記載の方法、
である。
本発明によれば、環境問題を生じるおそれが少なく、かつ低コストで土壌中の重金属を多量に植物に吸収させる効率の良い、植物への重金属吸収促進剤、それを用いて土壌中の重金属の植物への吸収を促進させて、重金属を含む土壌を浄化する方法を提供し得る。
本発明の植物への重金属吸収促進剤は、アルギン酸、その塩もしくはエステルまたはそれらの分解物を含有してなり、植物を生育する重金属含有土壌に添加して用いられる。
アルギン酸は、褐藻類に特有な多糖類であり、含有量は乾燥藻体の30%〜60%を占め、海中に含まれる種々のミネラルと塩を形成し、ゆるやかなゼリー状態で細胞壁および細胞間を充填している。アルギン酸を褐藻類から得るには、常法によることができる。例えば、褐藻類を十分に乾燥し、扱いやすい大きさに解砕し、水を含ませ膨潤させ洗浄する。褐藻類としては特に限定されず、例えば、コンブ、ワカメ、ヒジキ、カジメ、スジメ、アイヌワカメ、ホンダワラ、ウガノモク等が挙げられ、廃棄褐藻類でもよく、ダシを取った後の廃棄コンブ等でもよい。
藻体中のアルギン酸の多くはCaカチオンと不溶性の塩を形成しているので、これをNaとイオン交換させ水溶性のアルギン酸ナトリウムとして、藻体外へ抽出させるのが一般的である。 得られるアルギン酸ナトリウムは、酸添加により不溶性のアルギン酸として凝固析出させ、乾燥後に目的の粒度に粉砕される。アルギン酸は、β−1,4−結合のD−マンヌロン酸(M)とα−1,4結合のL−グルロン酸(G)が連なった鎖状構造を有する直鎖型高分子多糖類であり、分子量は通常約15,000〜200,000(重合度約80〜1,100)である。M/G比は原料である褐藻類の種類により、さらには季節により異なる。
アルギン酸塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム等が挙げられる。アルギン酸塩としては、水溶性のアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸アンモニウムが好適である。
アルギン酸エステルとしては、たとえば、プロピレングリコールエステル、エチレングリコールエステル、エチルエステル、メチルエステル等が挙げられるが、プロピレングリコールエステルが好適である。
本発明において、アルギン酸またはその塩もしくはエステルは、植物への重金属吸収促進効果を向上させるために、さらに低分子化した分解物として好適に用いられる。アルギン酸の重合度は特に限定されないが、例えば、80〜600程度が好適である。
アルギン酸またはその塩もしくはエステルとしては、上記のように抽出処理されたもの、または褐藻自体、を用いることもできるが、粗もしくは精製アルギン酸、アルギン酸塩等として市販されているものであってもよく、褐藻自体を用いる場合は廃棄物であってもよい。
アルギン酸もしくはその塩の分解方法としては、微生物が産生したアルギン酸分解酵素を作用させる方法、これらの微生物等を用いる方法、酸を用いて分解する方法、および放射線を照射する方法が挙げられる。
微生物が産生したアルギン酸分解酵素を作用させる方法において、微生物としてはアルテロモナス属、シュウドモナス属、バチルス属等に属するものがよく知られている。
微生物等を用いる方法としては、褐藻類を放置してこれらの微生物の力で分解させる堆肥化処理が挙げられる。処理温度は、通常20〜80℃、1〜4ヶ月程度である。褐藻類に付着する塩分は、植物成長阻害作用を有するので、除去するのが好ましい。
酸を用いて分解する方法においては、酸としてリン酸、硫酸等が好適に使用され得る。たとえば、リン酸を用いる場合、アルギン酸またはその塩を、50〜90重量%程度の濃度のリン酸を用い、室温で加水分解するのが好適である。
放射線を照射する方法においては、線量50kGy〜500kGy程度の放射線が用いられ、その線源としては、60Coからのγ線による照射、低エネルギー電子加速器等を用いた照射等が用いられる。
本発明においては、アルギン酸、その塩もしくはエステルまたはそれらの分解物を含有してなる、上記の重金属吸収促進剤を、重金属を含有する土壌に添加して、植物を生育させて土壌中の重金属の植物への吸収を促進させて、重金属を含む土壌を浄化する。
重金属吸収促進剤に吸収させる重金属としては、たとえばカドミウム、亜鉛、鉛、クロム、銅、水銀、ヒ素、スズおよびセレンならびにそれらの金属化合物、たとえば酸化物、塩類、硫化物、有機金属化合物等、の一種以上が挙げられる。これらの重金属の、土壌中の含有量としては、植物が生育する範囲であれば特に限定されない。具体的には、対象とする重金属が法定の環境基準値を超える場合のように人の健康に影響があると思われる値を超える場合であり、通常、0.5%以下、好ましくは含有量が0.1〜1000ppmである場合が挙げられる。0.5%を超える濃度で含まれる場合には、あらかじめ化学的処理法等の適当な方法により濃度を低下させてから植物を生育させることが望ましい。
これらの重金属を含有する土壌としては、特に制限されず、水田、畑地等の農業用地、工業用地、住宅地等の土壌が挙げられる。
本発明の重金属吸収促進剤によれば、植物が取り込みやすい形態に土壌中の重金属をキレート化すると推測され、このため植物種を限定されないが、本発明に用いられる植物としては、重金属を吸収する効果があるとされているものが好適である。たとえば、カラシナ、ナタネ、ノザワナ、コマツナ、ハクサンハタザオ、スズシロソウ等のアブラナ科;ケナフ、オクラ等のアオイ科;クロタラリア、セスバニア等のマメ科;ビート、テンサイ、フダンソウ等のアカザ科;タバコ等のナス科;ヒマワリ、ベニバナ等のキク科;ソバ、ミゾソバ、イタドリ、イヌタデ等のタデ科;アマランサス等のヒユ科;サトウキビ、イネ、ムギ、シバ、ススキ、ソルガム等のイネ科;コンニャク、サトイモ等のサイトモ科;ツメクサ等のナデシコ科;セリ、アシタバ等のセリ科;ハラン等のユリ科;アイリス等のアヤメ科;アオジソ等のシソ科;ユキノシタ、アスチルベ等のユキノシタ科;ゴマノハグサ、ベロニカ等のゴマノハグサ科;アサガオ、サツマイモ等のヒルガオ科;トクサ等のトクサ科;ハクチョウゲ等のアカネ科;ドクダミ、ハンゲショウ等のドクダミ科;アマ等のアマ科;ヒガンバナ、スイセン等のヒガンバナ科;テイカズラ、マンデビラ、ニチニチソウ等のキョウチクトウ科;センリョウ等のセンリョウ科;ヒペリカム等のオトギリソウ科、サルナシ、キウイ等のマタタビ科;トケイソウ科;トウダイグサ、ベニヒモノキ等のトウダイグサ科;ニワトコ、タニウツギ等のスイカズラ科;ノウゼンカズラ科;ツルシダ科、オシダ科、ウラジロ科等に属するシダ類;センブリ等のリンドウ科;ならびにゼラニューウム等のフクロウソウ科、等の植物が重金属を吸収し得ることが知られている。これらは気候、地形、土質、重金属の種類等に合わせて適宜選択することができるが、たとえばアブラナ科、アオイ科、マメ科、アカザ科、ナス科、キク科、タデ科、イネ科、 等の植物が特に好適に使用される。
これらのうち、生育の早いもの、葉・茎・根の乾燥重量が大きいもの、重金属を高濃度で吸収できるもののほうが、重金属吸収、蓄積量が大きいため効率的であり、たとえばヒマワリ、ケナフ、ソバ、カラシナ、ススキ、シダ、オクラ、フダンソウ、コマツナ、イネ、ソルガム、ミゾソバ、ハクサンハタザオ、スズシロソウ等が特に好適である。
さらに、植物として、これらを含む選抜した植物種に重金属の吸収蓄積を促進させる遺伝子を導入した組換え植物を用いることもできる。
重金属を含む土壌に植物を生育させるためには、直接播種する方法、または苗床による苗、セル苗、ポット苗等の、別の場所で生育させた植物を移植して栽培する方法等、それ自体は常法によることができるが、コストの点から直接播種が好適である。播種の密度は、植物の種類等によって適宜選択し得るが、たとえばソバの場合、土壌1mあたり1〜10g程度の種子が用いられるのが通常である。
植物を生育させる土壌のpHは3〜10が適切であり、たとえばソバの場合、pH4〜8、好ましくは6程度である。土壌条件によりpHの値が重金属の吸収性に大きく関与するので栽培条件によりpHを調整するのが好適である。必要に応じ土壌酸性化剤、あるいは肥料等を施用することもできる。
本発明の植物への重金属吸収促進剤は、主成分であるアルギン酸もしくはその塩またはそれらの分解物以外に、適宜pH調節剤、肥料成分等を配合することができる。
連作障害がなければ重金属吸収能に最も優れた植物を必要に応じて毎年栽培することができるが、そうでない場合には複数の植物を順次に組み合わせて栽培してもよい。土壌中に含まれる重金属の種類、濃度等に合わせて植物種を適宜選択することができる。また、土壌条件、気候条件なども考慮することが好ましい。
本発明の方法においては、重金属吸収促進剤を水溶液、粉体またはバルクとして土壌表面に散布、または土壌と混和して添加する。植物の播種前の土壌に添加し、さらに播種後所定期間添加し得るが、通常、植物がある程度生育した後又は移植後に土壌に添加する。添加は、土壌に均一に、または植物の根元付近の土壌に、散布(噴霧)することもできる。使用量は、土壌中の重金属量、植物種、土壌の種類(保水性等)等により異なるが、アルギン酸、その塩もしくはエステルまたはそれらの分解物の量として、通常、土壌1mあたり、1〜2,000g程度、好ましくは2〜1,000g程度が用いられる。好適には、本発明の重金属吸収促進剤は、水溶液として10〜100倍に希釈して用いられる。
植物の収穫は、茎、葉を含む植物体地上部、もしくは根を含む植物体地下部、またはそれらの両方を対象とし得、収穫時期は、植物種により適宜選択し得る。収穫した植物は除草剤処理、乾燥処理、堆肥化処理、圧搾処理、破砕・粉砕処理等により軽量化して重金属を濃縮した後、公知の方法により、植物から重金属を回収するか、またはコンクリート等で固化し無害化することができる。
重金属の回収方法としては、一般的な焼却法以外に、たとえば、公知の凝集沈澱法、イオン交換法、溶媒抽出法等から、重金属の種類に応じて選ぶことができるが、重金属がカドミウム、ヒ素または鉛である場合、溶媒抽出法、イオン交換法を使用することが好ましい。
溶媒抽出法による場合、酸を添加した水を用いるのが好適である。すなわち、収穫した植物を破砕・粉砕処理し、この植物の重量の2〜50倍量程度の水に投入する。水は常温でも加熱されていてもよいが、酸が添加されることが好ましい。酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、または酢酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸等の有機酸が挙げられる。土壌中の重金属の種類に応じて、酸の種類を選択することが好ましく、たとえばカドミウム、水銀の場合には濃硫酸に溶解し易く、鉛は酢酸または硝酸に溶解し易い。酸の濃度は、通常0.01〜3モル/L程度から選ばれる。また、水中には、重金属と共に錯体を形成することが可能なキレート剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、を添加することによって、水に溶解した重金属が錯化合物となるため、重金属の溶解度を高くして濾別することができる。この場合、キレート剤の濃度は、水中に0.05〜2重量%程度含まれていることが好ましい。ついで、この抽出液を、植物と共にフィルタープレス等の濾過機にかけ、固液分離を行う。錯体中の重金属は、公知の方法、例えば分離液をアルカリ性にpH調整した後、これに硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等の硫化物等の重金属不溶化剤を加える方法を用いることで、不溶性物質として沈殿させ、回収し得る。
さらに、残渣植物からは、常法によりアルコール原料の糖質、またはリグニン等を副生物として回収することもできる。たとえば、硫酸を用いる加水分解により、セルロース等の多糖類を抽出することができる。
本発明の重金属吸収促進剤を用いると、含有量として5,000mg/kg程度までの重金属類を含む土壌を効率よく浄化でき、たとえば深さ50cm程度までの土壌中の重金属含有量を環境基準値以下まで低減するのに有効である。
本発明の重金属吸収促進剤は、重金属吸収促進剤の微生物、酵素等により生分解され易く、土壌中に残存されにくいので、2次汚染のおそれがほとんどない。また、本発明の重金属吸収促進剤は、化学合成によらないで、基本的に単純な抽出により原料を確保し得るので、コスト的に有利である。
栽培ポット(上径8.5cm×下径6.5cm×高さ7.5cm)にpH6.0となるように石灰を添加したカドミウム汚染畑土壌(5mgCd/kg)200gを入れ(対照)、さらにアルギン酸アンモニウム((株)キミカ製)溶液を、土壌100gあたり、5mg、10mg、25mgおよび50mgとなるように添加して、植物としてグリーンマスタード(サカタのタネ(株)製)およびフダンソウ(サカタのタネ(株)製)の栽培試験を各濃度4連で行なった。これらの種子を播種してポットあたり3本立てとして、25℃、15時間の明条件(自然光+育成用蛍光灯)下に40日間栽培した。水分量が最大容水量の60%となるように毎日給水し、2週間毎に2000倍希釈した液肥(商標「ハイポネックス」)20mlを与えた。栽培終了後、ポット毎に地上部の乾燥重量(70℃、24時間乾燥)を測定し、これをメノウ乳鉢で粉砕し、硝酸分解(110℃、5時間)を行った。この試料液のCd濃度を高周波プラズマ発光分光分析計(「島津ICP−7510」)で測定し、植物中に吸収されたカドミウム量を求めた。その結果を次に示す。
(グリーンマスタード)
乾燥質量は、アルギン酸アンモニウム無添加区が約0.03gであったのに対し、10mg添加区が約0.05gの最高値を示した。一方、カドミウム含有量は、アルギン酸アンモニウム無添加区が約0.9μg/ポットであったのに対し、10mg添加区が約1.5μg/ポットの最高値を示した。
(フダンソウ)
乾燥質量は、アルギン酸アンモニウム無添加区が約0.06gであったのに対し、5mg添加区が約0.12gの最高値を示した。一方、カドミウム含有量は、アルギン酸アンモニウム無添加区が約3.2μg/ポットであったのに対し、5mg添加区が約6.9μg/ポットの最高値を示した。
褐藻廃棄物を粉砕し、生ゴミ堆肥を質量比12kg:4kgで混合した後、この混合物をコンポスト製造機に投入した。混合物の温度を2日に2回計測し、水分量が30%以下にならないように1週間に1回の割合で水を添加し、4ヶ月間で堆肥化した(シードバッグ根伸長試験で堆肥化終了を確認した。)。
樹脂製ポット(内径11.3cm、高さ6.5cm)を用い、土壌として黒ボク土(ビニールハウス栽培跡地、全Cd濃度1.22±0.0221mg/kg)を用い、500g/ポット充填した。上記の堆肥を1.88g/ポットおよび7.52g/ポット添加した2つの処理区ならびに無添加の処理区を反復数4で、インキュベーターを用いて、設定温度30℃、日照時間24h/日でコマツナを栽培した。すなわち、コマツナをポットあたり25粒播種し、水分はイオン交換水を最大容水量の50%になるように適宜添加し、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(KO)を土壌500gに対し、それぞれ硫酸アンモニウム、過リン酸石灰、塩化カリを25mg(5kg/10a相当)になるように化成肥料を施用した。
給水は毎日、最大容水量の50%になるように行った。21日目に、ポットごとに地上部を、地際からハサミで刈り取り、80℃の乾熱機で、24時間乾燥後、乾質量を測定し、硝酸−過塩素酸分解し、植物体中のCd含量を測定した。その結果を次に示す。
(乾質量)
無添加区 約1.7g/ポット;1.88g添加区 約2.1g/ポット;7.52g添加区 約2.3g/ポット
(Cd吸収量)
無添加区 約0.19μg/ポット;1.88g添加区 約3.2μg/ポット;7.52g添加区 約3.5μg/ポット
本発明によれば、環境問題を生じるおそれが少なく、かつ低コストで土壌中の重金属を多量に植物に吸収させる効率の良い、植物への重金属吸収促進剤、それを用いて土壌中の重金属の植物への吸収を促進させて、重金属を含む土壌を浄化する方法を提供し得る。

Claims (9)

  1. アルギン酸、その塩もしくはエステルまたはそれらの分解物を含有してなり、重金属含有土壌に添加するための、植物への重金属吸収促進剤。
  2. 塩がアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはアルギン酸アンモニウムである請求項1に記載の植物への重金属吸収促進剤。
  3. 分解物が、微生物が産生したアルギン酸分解酵素を作用させる方法、これらの微生物等を用いる方法、酸を用いて分解する方法または放射線を照射する方法で得られる請求項1または2に記載の植物への重金属吸収促進剤。
  4. 植物が、アブラナ科、アオイ科、マメ科、アカザ科、ナス科、キク科、タデ科、およ
    びイネ科からなる群から選ばれる少なくとも1種の植物である請求項1〜3のいずれ
    かに記載の植物への重金属吸収促進剤。
  5. 重金属が、カドミウム、亜鉛、鉛、クロム、銅、水銀、ヒ素、スズおよびセレンならびにそれらの金属化合物の一種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の植物への重金属吸収促進剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の、植物への重金属吸収促進剤を用いて土壌中の重金属の植物への吸収を促進させて、重金属を含む土壌を浄化する方法。
  7. 重金属を含む土壌に重金属吸収促進剤を添加し、該土壌で植物を生育させる請求項6に記載の方法。
  8. 土壌中の重金属含有量が0.5%以下である請求項6または7に記載の方法。
  9. 重金属吸収促進剤が、アルギン酸、その塩もしくはエステルまたはそれらの分解物の量として、土壌1mあたり、1〜2,000g用いられる請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
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