JP2011036191A - 青果物又は花卉類の鮮度保持材 - Google Patents
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Abstract
【課題】収穫後の保存と流通過程における青果物又は花卉類からの水分の蒸散による萎れと、自らが排出するエチレンやアセトアルデヒドによる追熟・老化を同時に効率よく抑制できる鮮度保持材の提供を目的とする。
【解決手段】全細孔容積が0.1〜0.8ml/g、比表面積100m2/g以上の珪質頁岩を主材としてなる青果物又は花卉類の鮮度保持材。また、当該珪質頁岩にエチレン除去触媒を添着した青果物又は花卉類の鮮度保持材。
【選択図】なし
【解決手段】全細孔容積が0.1〜0.8ml/g、比表面積100m2/g以上の珪質頁岩を主材としてなる青果物又は花卉類の鮮度保持材。また、当該珪質頁岩にエチレン除去触媒を添着した青果物又は花卉類の鮮度保持材。
【選択図】なし
Description
本発明は、収穫後のフィルム包装による青果物又は花卉類の貯蔵や輸送中における水分蒸散に伴う鮮度の低下と、自らが排出して老化を促進するエチレンやアセトアルデヒドによる成熟・老化等の抑制に優れた効果を発揮する鮮度保持材に関する。
近年、栽培技術の進歩によって多くの青果物又は花卉類が周年栽培されるようになり、収穫後の貯蔵や輸送中における鮮度保持技術も多岐にわたって検討が進められている。
一般的に青果物又は花卉類は、相対湿度80〜95%程度の高湿度雰囲気下での保存が良いとされている。このため、輸送又は貯蔵の際には、青果物等から蒸散される水分の飛散をフィルム包装によって抑制し、保存雰囲気が高湿度に保持されるようにしているが、逆に過湿状態になるとフィルム包装内に結露が発生して微生物や黴、悪臭等の発生の温床となり鮮度低下の主要な原因になる。従って、青果物等の保存は、フィルム包装内が過湿状態になると過剰な水分を吸湿する一方、フィルム包装内の湿度が低湿状態になると吸湿した水分を放出して適度に調湿するのが鮮度保持のポイントである。
また、青果物又は花卉類の多くは、収穫後も呼吸作用を行っており、正常な呼吸反応では水分の蒸散や自らが排出するエチレンやアセトアルデヒドによって萎れや追熟・老化等が進み、やがては品質低下を招いて商品価値が失われる。中でもアセトアルデヒドは、特異な臭気を持つ有害性ガスであるため、食の安全の観点からこれまで以上に対策が求められている。
このように、青果物や花卉類の鮮度保持技術の基本は、水分や糖、ビタミンなどの成分を消耗する蒸散と呼吸を抑えることであり、具体的には低温で貯蔵・流通させて蒸散と呼吸を抑える方法や、フィルム包装して萎れや目減りを抑えたり、包装内の酸素と二酸化炭素の濃度を調整して呼吸を抑える方法、更にエチレン等を除去する方法などが採られている。しかしながら、低温で貯蔵・流通する方法は設備コストが高くつき汎用性に乏しいため、フィルム包装によって萎れや呼吸を抑えるか、エチレン等の老化促進ガスを積極的に除去する取り組みが一般的である。
かかる萎れやエチレンガスによる追熟・老化を抑える従来方法として、特開昭54−138146号公報(特許文献1)、特開平7−163293号公報(特許文献2)、特開平7−289888号公報(特許文献3)、特開2007−229559号公報(特許文献4)等が知られている。しかしながら、これらは活性炭やゼオライト等の担体に、過マンガン酸カリウムや臭素化合物、塩化パラジウム等の触媒を担持した鮮度保持材に関するものであり、いずれの鮮度保持材もエチレンを分解・除去することに主眼を置いたもので、エチレンの除去には一定の効果を奏するものの、フィルム包装内の湿度調整、すなわち青果物又は花卉類からの水分の蒸散による鮮度保持効果を狙ったものでない。
本発明は、収穫後の青果物又は花卉類からの水分の蒸散による萎れと、自らが排出するエチレンやアセトアルデヒドによる追熟・老化を同時に効率よく抑制できる鮮度保持材の提供を目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために、これまでほとんど検討されてこなかったフィルム包装内の水分や湿度を自己調整することでの鮮度保持効果について鋭意検討したところ、特定の全細孔容積と比表面積を持った珪質頁岩が高い調湿機能を有すると共に、アセトアルデヒド等の水溶性ガスを効率よく吸着し、青果物や花卉類の鮮度保持に高い効果を奏すること、またこの珪質頁岩にエチレン除去触媒を添着すれば追熟・老化が抑制されて保存効果が更に高くなること等を突き止め、本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、本発明のうちの第1の発明は、全細孔容積が0.1〜0.8ml/g、比表面積100m2/g以上の珪質頁岩を主材としてなることを特徴とする青果物又は花卉類の鮮度保持材であり、第2の発明は上記第1発明記載の珪質頁岩に、更にエチレン除去触媒を添着してなることを特徴とする青果物又は花卉類の鮮度保持材である。
本発明の鮮度保持材を、収穫後の青果物等のフィルム包装中に内在させれば、青果物等から蒸散された水分が、袋内の湿度に応じて珪質頁岩の細孔に吸着あるいは放出され、袋内が適度な湿度に保たれるため、青果物等の萎れや目減りが抑制されると共に、青果物等から排出されたアセトアルデヒドが吸着されることで外観劣化や品質低下が緩和され、鮮度保持期間が大幅に伸びるほか、更にこの珪質頁岩にエチレン除去触媒を添着すれば追熟・老化も同時に抑えられるという数々の優れた効果を奏するものである。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で使用する珪質頁岩は、珪藻質泥を根源とした堆積物であるが、結晶化による硬質化が進んだ固くて割れやすい頁岩であり、通常の珪藻土と呼ばれている珪藻泥岩に属しながらも、特有の性状を有することから区別して扱われるケースが多い。中でも、北海道天北地方から産出される稚内層珪質頁岩は、細孔直径7〜15nmにシャープな細孔径分布を持ち、全細孔容積が0.08〜1.0ml/g、比表面積が80〜180m2/gであり、平均細孔直径が9nm程度の極めて微細な細孔を多数持つという特有の性質を有している。かかる稚内層珪質頁岩は、後述する表1に例示するように通常の珪藻土に比べて5〜8倍もの比表面積と全細孔容積を有し、しかも細孔直径7〜15nmでの細孔容積が極めて大きいことから、近年、調湿機能材として主に建材分野への利用が提案され、その吸放湿特性は25%に及ぶ高い水分吸収力に加えて、相対湿度を60〜90%に自立的に制御するという特有の性質を持つもので、こうした特性はこの種の材料として常用されている活性炭の5倍以上、ゼオライトの10倍以上、一般珪藻土の3〜5倍にも相当する。
また、この稚内層珪質頁岩は、アンモニアやアセトアルデヒド等の水溶性ガスに対して高い吸着能を有する。この珪質頁岩の高いガス吸着能は、通常の細孔表面へのガス吸着効果に加えて、珪質頁岩の前記した高い水分吸収力によって蓄えられた細孔内の凝縮水へのガス溶解によって引き起こされているものと考えられ、とりわけアンモニアやアセトアルデヒド等の水溶性ガスに対する高い吸着能は、極めて微細な細孔を多数有し高い水分吸収能を持つ本発明の珪質頁岩特有のものである。
本発明で用いる珪質頁岩は、上記稚内層珪質頁岩のうち全細孔容積が0.1〜0.8ml/g、好ましくは0.2〜0.6ml/gで、比表面積が100m2/g以上、好ましくは110m2/g以上のものを主材としてなるものである。全細孔容積と比表面積が本発明の範囲外になると、水分やアセトアルデヒドの吸着能が不十分となる。これは全細孔容積と比表面積が小さいと吸着容量が絶対的に不足し、水分やアセトアルデヒド等の吸着能が不十分となるのに対し、全細孔容積が大きくなりすぎると細孔径が小さくなる関係で、特に高湿度域での水分吸着が悪化することによるもので、これらは細孔径と吸着できる水分量の関係を示すケルビンの毛細管凝集理論とも概ね一致する。
本発明の珪質頁岩は、原石を粉砕した後に得られる粉体を、必要により500〜900℃の温度で焼成することにより得られる。原石の粉砕は、ハンマークラッシャーやジョークラッシャー、ロールクラッシャーなどで行われる。珪質頁岩の平均粒径は、0.001〜5mm程度のものが鮮度保持材製造段階でのハンドリング性などの点で良好であるが、エチレン除去触媒を添着する場合は、添着効率や作業性などの点で0.05〜3mm、好ましくは0.1〜2.5mmの粒径のものが80wt%以上を占めるものが好適である。
また本発明では、上記珪質頁岩の細孔内の少なくとも一部にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、塩化物、炭酸塩及び珪酸塩等から選ばれる少なくとも1種のアルカリ化合物を担持することで、吸放湿特性を向上させたものでも差し支えなく、更に珪質頁岩にその性能を大きく阻害しない範囲内で、活性炭やゼオライト、セピオライト、シリカ、活性白土、大谷石、タルク等の多孔質鉱物を適宜添加してもよい。
本発明の鮮度保持材は、上記珪質頁岩に更にエチレンガス除去触媒を添着したものが好ましい。エチレンガス除去触媒としては、過マンガン酸カリウムや塩化パラジウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、臭素、臭化カリウム、臭化アンモニウム等から選ばれる少なくとも1種が使用可能である。中でも、性能とコストを重視すれば過マンガン酸カリウムが、また機能と安全性を重視すれば塩化パラジウムや塩素酸カリウム、過塩素酸カリウムが好ましい。珪質頁岩にエチレンガス除去触媒を添着する方法は、上記例示のエチレンガス除去触媒の水溶液中に所定量の珪質頁岩を浸漬した後乾燥するか、所定量のエチレンガス除去触媒水溶液と珪質頁岩を混合・乾燥するなどいかなる方法でも差し支えない。またエチレンガス除去触媒の添着量は、使用する触媒により異なるが、鮮度保持材としての効果を発現させるには0.001〜20wt%程度とするのがよい。
本発明の青果物又は花卉類の鮮度保持材は、通常、パルプ紙や合成紙、不織布、有孔の合成樹脂等で作られた通気性の袋又は容器に入れた形で、フィルム包装やダンボールケース、冷蔵庫等の中で青果物又は花卉類等と共存させて使用するのが一般的である。また、本発明の鮮度保持材を貯蔵庫等の密閉容器内で使用する場合は、板状やハニカム状、ギヤ形状ペレット、ハニカム形状ペレット等の任意の形状に成形した形で使用することも可能であることは言うまでもない。
また本発明の鮮度保持材は、全ての青果物又は花卉類に使用することができ、青果物として例えばリンゴ、メロン、柿、梨、桃、バナナ、キウイ、サクランボ、スダチ等の果物類や、ブロッコリー、竹の子、ホウレン草、レタス、グリーンアスパラ、キャベツ等の野菜類が、また花卉類としてカーネーション、スイートピー、ユリ、バラ、菊等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
本発明において、比表面積と全細孔容積、平均細孔直径は、ガス吸着法による表面積、細孔分布測定装置(日本ベル(株)製Belsorp2)で測定し、比表面積はBET法とした。
また吸放湿率のうちの吸湿率は、試験体を25℃、相対湿度50%の恒温恒湿器に入れ、48時間経過後に測定した上記試験体の重量と、その後25℃、相対湿度90%の恒温恒湿器に入れ、24時間経過後に測定した上記試験体の重量とから重量増加率を求め、その値を吸湿率とした。
一方、放湿率は、試験体を25℃、相対湿度50%の恒温恒湿器中で48時間養生した後、25℃、相対湿度90%の恒温恒湿器中に24時間保持した時の上記試験体の重量と、その後25℃、相対湿度50%の恒温恒湿器中で24時間保持した後の上記試験体の重量とから重量減少率を求め、その値を放湿率とした。
アセトアルデヒド吸着率は、試験体10gを100ppmの濃度に調整したアセトアルデヒドガス1リットルと共にテドラバッグ中に封入し、5時間経過後のテドラバッグ中のアセトアルデヒド濃度から吸着率を求めた。
(実施例1、比較例1〜4)
試験体として、30μmアンダーに分級された表1に示す性状の稚内層珪質頁岩(実施例1)、一般珪藻土(秋田県産)(比較例1)、一般珪藻土(石川県産)(比較例2)、活性炭(比較例3)、天然ゼオライト(比較例4)を用意した。これらの各試験体10gを30μm厚さのポリエチレン袋中にバナナ3本と共にそれぞれ入れ、開口部を密閉した状態で、25℃、相対湿度60%の雰囲気中にて保存テストを行った。その結果、稚内層珪質頁岩(実施例1)を用いた場合は10日後でもバナナの賞味が可能であったが、他の試験体(比較例1〜4)では多少のバラツキが見られたものの4〜6日後に腐敗が始まり、6日後には全て賞味できなかった。
試験体として、30μmアンダーに分級された表1に示す性状の稚内層珪質頁岩(実施例1)、一般珪藻土(秋田県産)(比較例1)、一般珪藻土(石川県産)(比較例2)、活性炭(比較例3)、天然ゼオライト(比較例4)を用意した。これらの各試験体10gを30μm厚さのポリエチレン袋中にバナナ3本と共にそれぞれ入れ、開口部を密閉した状態で、25℃、相対湿度60%の雰囲気中にて保存テストを行った。その結果、稚内層珪質頁岩(実施例1)を用いた場合は10日後でもバナナの賞味が可能であったが、他の試験体(比較例1〜4)では多少のバラツキが見られたものの4〜6日後に腐敗が始まり、6日後には全て賞味できなかった。
(実施例2)
全細孔容積が0.269ml/g、比表面積133.4m2/gの稚内層珪質頁岩の粉砕物を0.25〜1.3mmの粒径に分級した。この稚内層珪質頁岩100重量部に、7wt%過マンガン酸カリウム水溶液を66重量部加えて混合・乾燥し、鮮度保持材を調整した。この鮮度保持材2.5gを、1000ppmの濃度に調整したエチレンガス1リットルと共にテドラバッグ中に封入し、5時間経過後のテドラバッグ中のエチレン濃度を測定した。その結果、エチレン濃度は5ppmまで除去され、除去率は99.5%に達することが確認された。また、この鮮度保持材10gを用いてブロッコリーの保存テスト(保存雰囲気5℃)を行ったところ、鮮度保持材なしの場合は5日後に葉が黄化し始めたのに対し、鮮度保持材を用いた場合は11日後に葉の黄化が始まるなど、優れた鮮度保持効果を有することが確認された。
全細孔容積が0.269ml/g、比表面積133.4m2/gの稚内層珪質頁岩の粉砕物を0.25〜1.3mmの粒径に分級した。この稚内層珪質頁岩100重量部に、7wt%過マンガン酸カリウム水溶液を66重量部加えて混合・乾燥し、鮮度保持材を調整した。この鮮度保持材2.5gを、1000ppmの濃度に調整したエチレンガス1リットルと共にテドラバッグ中に封入し、5時間経過後のテドラバッグ中のエチレン濃度を測定した。その結果、エチレン濃度は5ppmまで除去され、除去率は99.5%に達することが確認された。また、この鮮度保持材10gを用いてブロッコリーの保存テスト(保存雰囲気5℃)を行ったところ、鮮度保持材なしの場合は5日後に葉が黄化し始めたのに対し、鮮度保持材を用いた場合は11日後に葉の黄化が始まるなど、優れた鮮度保持効果を有することが確認された。
本発明の鮮度保持材によれば、収穫後の青果物又は花卉類をフィルム包装等によって貯蔵・流通させるに際し、その間の水分蒸散に伴う鮮度の低下と、自らが排出して老化を促進するエチレンやアセトアルデヒドによる成熟・老化等が抑制される。しかして、かかる本発明の鮮度保持材は、世界的な食料問題が深刻化している中にあって、青果物又は花卉類の保存期間を大幅に伸ばすことができることから、食の安全と安心に資する技術として極めて利用価値の高いものである。
Claims (2)
- 全細孔容積が0.1〜0.8ml/g、比表面積100m2/g以上の珪質頁岩を主材としてなることを特徴とする青果物又は花卉類の鮮度保持材。
- 上記請求項1記載の珪質頁岩に、更にエチレン除去触媒を添着してなることを特徴とする青果物又は花卉類の鮮度保持材。
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JP2009187261A JP2011036191A (ja) | 2009-08-12 | 2009-08-12 | 青果物又は花卉類の鮮度保持材 |
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JP2013223851A (ja) * | 2012-04-19 | 2013-10-31 | Nagamine Seisakusho:Kk | 窒素酸化物浄化材 |
CN104741070A (zh) * | 2013-12-27 | 2015-07-01 | 财团法人塑料工业技术发展中心 | 植物延缓成熟老化材料及其制造方法 |
KR102120261B1 (ko) * | 2019-12-19 | 2020-06-08 | 박형우 | 플라즈마 처리된 기능성 필름 및 그의 제조 방법 |
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2009
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