本発明の第1の発明に係る太陽光発電装置の修復装置は、設置済みの太陽光発電装置を構成する複数のモジュールの内で故障している故障モジュールを検出する検出手段と、検出手段が故障モジュールを検出した場合に、太陽光発電装置に対する故障モジュールの影響を抑制する抑制手段と、を備える。
この構成により、太陽光発電装置の修復装置は、モジュール単位での劣化や故障を検出でき、故障モジュールによる太陽光発電装置への悪影響を、根本的な修理や交換に至る前に抑制できる。
本発明の第2の発明に係る太陽光発電装置の修復装置では、第1の発明に加えて、検出手段は、複数のモジュールのそれぞれにおいて発電されている発電電流値、複数のモジュールのそれぞれの温度値および基準値に基づいて、故障モジュールを検出する。
この構成により、修復装置は、気象条件をも加味して、モジュールの劣化・故障状態を検出できる。
本発明の第3の発明に係る太陽光発電装置の修復装置では、第2の発明に加えて、基準値は、複数のモジュールのそれぞれが発電可能な理想電流値であって、検出手段は、(1)発電電流値と理想電流値との差分値、(2)発電電流値を温度値で補正した補正発電電流値と理想電流値との差分値、(3)発電電流値と理想電流値を温度値で補正した補正理想電流地との差分値、の少なくとも一つに基づいて、故障モジュールを検出する。
この構成により、修復装置は、モジュールの有するスペックと気象条件とを加味して、モジュールの劣化・故障状態を検出できる。
本発明の第4の発明に係る太陽光発電装置の修復装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、検出手段は、複数のモジュールのそれぞれに付与されている識別子によって、複数のモジュールの中での故障モジュールの位置を特定する。
この構成により、抑制手段が抑制すべきモジュールの位置が容易に判別できる。
本発明の第5の発明に係る太陽光発電装置の修復装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、抑制手段は、故障モジュールに隣接するモジュール同士を、故障モジュールを迂回するように接続するバイパス線路を、導電させる。
この構成により、故障モジュールを、複数のモジュール同士の電気接続から切り離すことができる。切り離されることで、故障モジュールの太陽光発電装置への影響が抑制される。
本発明の第6の発明に係る太陽光発電装置の修復装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、抑制手段は、故障モジュールの温度を冷却する。
この構成により、修復装置は、故障モジュールの発電能力を復活させることができる。
本発明の第7の発明に係る太陽光発電装置の修復装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、抑制手段は、故障モジュールの発電能力を低減させる。
この構成により、修復装置は、過剰発電となって故障した故障モジュールによる悪影響を抑制できる。
本発明の第8の発明に係る太陽光発電装置の修復装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、複数のモジュールが発電した電力を蓄電する蓄電池を更に備え、抑制手段は、故障モジュールがある場合には、蓄電池の電流を放電する。
この構成により、修復装置は、過剰発電となって故障した故障モジュールによる悪影響を抑制できる。あるいは、修復装置は、蓄電池に生じうる予期せぬ不具合を未然に防止できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
なお、本明細書におけるモジュールとは、太陽光発電装置において複数のセルで構成されたユニットであり、パネルと呼ばれることもある部位である。但し、詳細な意味に限定されるものではなく、商業施設や一般住宅に設置される太陽光発電装置を構成する複数のユニットのそれぞれを示すものである。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1における太陽光発電装置の修復装置(以下、「修復装置」という)の全体概要について説明する。
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1における修復装置のブロック図である。図1は、太陽光発電装置の一部と修復装置とを同じ図面に示している。
修復装置1は、故障モジュールを検出する検出手段3と故障モジュールの影響を抑制する抑制手段15とを備える。
太陽光発電装置2は、アレイ4、アレイ4を構成する複数のモジュール5、複数のモジュール5のそれぞれを構成する最少発電単位であるセル6を備えている。なお、本来的には、パワーコンディショナなども備えているが、説明の便宜のために割愛する。
検出手段3は、太陽光発電装置2と接続され、太陽光発電装置2が備える複数のモジュール5の劣化を検出する。
検出手段3は、複数のモジュール5のそれぞれについて、所定の測定値を測定する測定手段、所定の基準値を記憶する記憶部8、測定値と基準値とに基づいて、複数のモジュール5に含まれる特定モジュールの劣化度合いを判定する判定手段9と、を備える。
ここで、図1中で、アレイ4に含まれる左下に位置するモジュールを特定モジュール10とする。
測定手段7は、複数のモジュール5のそれぞれが発電している発電電流値、複数のモジュール5のそれぞれの温度である測定温度値の少なくとも一つを測定する。このとき、測定手段7は、複数のモジュール5のそれぞれに設けられてもよいし、複数のモジュール全体をまとめて設けられても良い。測定手段は、複数のモジュール5のそれぞれで測定した発電電流値と測定温度値とを、判定手段9に出力する。
記憶部8は、判定手段9が特定モジュール10の劣化状態を判定するのに所定の基準となる基準値を記憶する。なお、図1では記憶部8は判定手段9と異なる要素として記載されているが、判定手段9に含まれる要素であっても良い。
判定手段9は、記憶部8から基準値を読み出す。また、測定手段7から特定モジュール10の発電電流値と測定温度値とを読み出す。
判定手段は、測定値である発電電流値と基準値とを比較する。このとき、発電電流値と基準値とを単純に比較してもよいし、測定温度値に基づいて比較しても良い。あるいは、判定手段9は、発電電流値および基準値のいずれかを測定温度値によって補正した上で、発電電流値と基準値とを比較しても良い。なお、発電電流値との比較を行うために、基準値は、特定モジュール10の発電可能な理想電流値であることも好適である。測定温度値を考慮して判定が行われることで、天候や気象条件に左右されにくい、モジュールの劣化検出が行われる。
判定手段9は、発電電流値と基準値との比較に基づいて、特定モジュール10の劣化・故障を判定する。判定手段9は、判定結果を、抑制手段15に出力する。例えば、判定手段9は、特定モジュール10が故障していることを検出し、特定モジュール10を故障モジュールとして抑制手段15に出力する。このとき、複数のモジュール5のそれぞれは、識別子を有しており、判定手段9は、故障と判定した故障モジュールの位置(複数のモジュール5の中における位置)と故障の有無を抑制手段15に出力する。識別子は、ID番号などであり、測定手段7や判定手段9は、このID番号を読み取ることで、複数のモジュール5の中における故障モジュールの位置を確認できる。
判定手段9は、測定手段7が測定値を得れば、即座に判定することができるので、劣化検出装置3は、リアルタイムでモジュールの劣化を検出できる。また、測定手段7が連続的に測定値を測定すれば、判定手段9も連続的にモジュールの劣化度合いを判定できる。このため、劣化検出装置3は、常時、モジュールの劣化を検出できる。
このとき、判定手段9は、複数のモジュール5のそれぞれを、順々にあるいは並列に判定対象の特定モジュールとして判定を行い、複数のモジュール5の内、どのモジュールが劣化・故障しているかを検出する。
まず、検出手段3は、天候や気象条件に左右されにくく、位置の特定されたモジュールの劣化をリアルタイムで検出できる。
次に、検出手段3から、ある位置に存在する特定モジュール10が故障モジュールであるとの通知を受けた抑制手段15は、当該故障モジュールによる太陽光発電装置2への悪影響を抑制するための処理を行う。
故障モジュールは、発電能力が落ちている状態であったり、他のモジュールとの導電接続に問題を有している状態であったりする。このため、抑制手段15は、故障モジュールを他のモジュールから電気的に切り離したり、発電対象から除外したりして、他のモジュールへの悪影響を回避させる。あるいは、抑制手段15は、故障モジュールの発電能力の回復を促す処理を行う。あるいは、抑制手段15は、故障モジュールの発電寄与度を、太陽光発電装置2の中で低減させる処理を行う。
このようにして抑制手段15は、故障モジュールにおける、(1)他のモジュールとの電気接続での悪影響を排除する、(2)発電能力の回復、(3)太陽光発電装置2における相対的な問題の解消、を行う。
特に、抑制手段15は、太陽光発電装置2を構成する小単位であるモジュール毎に、故障に対する対応を行うので、より精細なレベルでの自動修復を行える。
以上のように、実施の形態1における修復装置1は、モジュール単位での故障検出に合わせて、故障の影響を抑制する修復を行える。修復装置1は、太陽光発電装置2が含むモジュールのいずれかに故障が生じても、故障の影響を、自動的に最小限に抑えることができる。このため、エンジニアが最終的な修理を行うことができるまでの期間において、太陽光発電装置2の一部のモジュール5に起因する太陽光発電装置2の発電量の著しい減少や使用不能などを防止できる。
次に、各部の詳細について説明する。
(測定手段)
まず、測定手段7について説明する。
測定手段7は、複数のモジュール5のそれぞれについて、所定の測定値を測定する。所定の測定値は、複数のモジュール5のそれぞれが発電している発電電流値、複数のモジュール5のそれぞれの温度である測定温度値の少なくとも一つを含む。また、測定値は、複数のモジュール5のそれぞれにおける日照時間を含んでも良い。
測定手段7は、複数のモジュール5のそれぞれに設置された電流測定デバイスおよび温度測定デバイス(これら2つのデバイスは、一体であっても別体であってもよい)を用いて、モジュール5の発電電流値や測定温度値を測定する。電流測定デバイスは、例えば、複数のモジュール5のあるモジュールと他のモジュールとを接続する入出力信号線に接続されることで、モジュールが実際に発電している発電電流値を測定できる。
温度測定デバイスは、接触温度計や非接触温度計を用いる。
温度測定デバイスは、モジュールの表面、モジュールの内部、モジュールの中央付近、モジュールの端部付近などの種々の位置の内、仕様により定められる位置の温度を測定する。あるいは、温度測定デバイスは、モジュールの表面、モジュールの内部、モジュールの中央付近、モジュールの端部付近などの全ての位置での温度の平均値を、測定温度値として測定する。
また、測定手段7は、複数のモジュール5のそれぞれにおける日照時間を測定してもよい。日照時間は、照度計を用いて測定される。
測定手段7は、このような電流測定デバイスや温度測定デバイスを用いて、発電電流値および測定温度値を測定する。また、測定手段7は、半導体メモリ、磁気メモリ、光ディスクなどを備える記憶装置に、これら測定した測定値を記憶させても良い。
測定手段7は、測定した測定値を、判定手段9に出力する。このとき、測定手段7は、自ら判定手段9に測定値を出力してもよいし、判定手段9の要求に基づいて測定値を出力しても良い。
なお、測定手段7は、アレイ4が含む複数のモジュール5の全てについての測定値を常に測定しなければならないわけではない。測定手段7は、仕様や管理者の設定に応じて、複数のモジュール5のいずれかのモジュールを選択して測定値を測定しても良い。
なお、アレイ4は複数のモジュール5を備えているが、複数のモジュール5のそれぞれには、アレイ4における位置を示す識別子が付与されている。測定手段7は、特定モジュール10の発電電流値や測定温度値を測定するのにあわせて、特定モジュール10の識別子を識別する。識別子を読み取ることで、アレイ4におけるどの位置のモジュールについて劣化を検出しているかが、設置者や管理者にとっては容易に判別できる。
測定手段7は、測定値を出力する際には、この特定モジュールの識別子をあわせて出力する。結果として、記憶部8に測定値が記憶される場合には、モジュールのアレイ4の中での位置を示す識別子と共に、測定値が記憶される。同様に、判定手段9が特定モジュールの劣化度合いを判定する際には、アレイ4の中での位置を示す識別子によって、どの位置のモジュールであるかを特定した上で判定できる。
(記憶部)
次に、記憶部8について説明する。
記憶部8は、基準値を記憶する。記憶部8は、半導体メモリ、光ディスク、磁気ディスク、ハードディスクドライブなど、電子データを記憶できる種々のデバイスを含む。記憶部8は、測定手段7、判定手段9とは別の要素であってもよいし、一体の要素であってもよい。例えば、記憶部8は、測定手段7が測定した測定値を、基準値と共に記憶しても良い。
記憶部8は、記憶している基準値を、判定手段9に出力する。このとき、記憶部8は、自ら判定手段9に基準値を出力してもよいし、判定手段9の要求に基づいて基準値を出力しても良い。
基準値は、判定手段9が劣化度合いを判定する判定の対象となる特定モジュール10が、本来的に有する理想的な理想電流値を含む。理想電流値は、例えば、太陽光発電装置のモジュールやアレイのメーカが提供するデータシートから得られる。図2は、本発明の実施の形態1におけるデータシートを説明する説明図であり、図2は、データシートの一例を示す。
データシートは、多くの場合、モジュールの種類に応じた、発電可能な理想電流値を記載しており、例えば図2のように、最少値(Min)、中間値(Typ)、最大値(Max)を示している。
理想電流値は、特定モジュール10の理想的に発電可能な電流値を示しており、この理想電流値と実際に発電している発電電流値との乖離状態で、特定モジュール10の劣化度合いを判定できる。
記憶部8は、理想電流値を測定温度値で補正した補正理想電流値を、記憶しても良い。あるいは、アレイ4が備える複数のモジュール5のそれぞれで測定された発電電流値の平均値や合計値を記憶しても良い。
判定手段は、補正理想電流値、発電電流値の平均値、発電電流値の合計値などを基準に、特定モジュール10の劣化度合いを判定することもありうるからである。
なお、記憶部8は、太陽光発電装置2の設置場所に近接して設置されてもよいし、離隔して設置されても良い。例えば、多くの場所に設置された太陽光発電装置を一括管理する管理センターに、記憶部8が設置されても良い。
(判定手段)
次に、判定手段9について説明する。
判定手段9は、測定値と基準値に基づいて、特定モジュール10の故障の有無を判定する。測定された特定モジュール10の発電電流値が、理想電流値に対して所定以上の乖離を有する場合には、判定手段9は、特定モジュール10を、劣化あるいは故障状態として判定する。
ここで、劣化と故障は、厳密に区別される概念ではなく、特定モジュール10が、太陽光発電装置2での全体発電に悪影響を与えたり、他のモジュールでの発電に悪影響を与えたりする状態となっていることを指す。
なお、測定手段7および判定手段9の少なくとも一方は、アレイ4が含む複数のモジュール5の中での、特定モジュール10の位置を特定する識別子を識別できる。このため、判定手段9は、特定モジュール10を複数のモジュール5の中での位置を特定した上で、特定モジュール10の劣化・故障の判定結果を出力できる。
この結果、複数のモジュール5の中で、いずれの位置にあるモジュールが劣化・故障をしているかを、判定手段9は、抑制手段15に出力できる。言い換えると、抑制手段15は、複数のモジュール5の中で、いずれの位置にあるモジュールへ対処すればよいかを把握できる。
判定手段9は、基準値をカスタマイズすることで、種々の観点から判定できる。以下に、それぞれを説明する。
(判定手法その1)
判定手段9は、特定モジュール10の発電電流値と理想電流値との差分値を算出する。更に、判定手段9は、この差分値を所定の閾値と比較する。差分値が所定の閾値以上である場合には、判定手段9は、特定モジュールを、劣化・故障状態として判定する。なお、差分値が所定の閾値以上であるとすることに加えて、発電電流値が理想電流値以下であるとの条件を加味して、判定手段9は、特定モジュール10を、劣化・故障状態として判定しても良い。
なお、理想電流値は、太陽光発電装置2のモジュールあるいはアレイを製造するメーカが図2に示されるスペックとして提供することが多い。メーカは、モジュールのみを製造して施工業者に販売し、施工業者が必要な数のモジュールを直列・並列に接続して、商業施設や一般住宅に設置する。
検出手段3の検出結果は、抑制手段15によって利用される。ここで抑制手段15を必要としたりカスタマイズしたりするのは、太陽光発電装置2の設置者や管理者(施工業者が管理者を兼ねることもある)である。設置者や管理者は、実際に設置された太陽光発電装置2が含むモジュール毎の発電電流値と理想電流値との比較によって、メーカが提供するスペックに比して大きく劣る場合に、モジュールが劣化しているとして認識できる。
(判定手法その2)
判定手段9は、図2のデータシートに示される理想電流値を、測定温度値で補正して、補正理想電流値を算出する。データシートに表される理想電流値は、所定温度(通常は、室温を基準とする)での発電電流値であるので、モジュールの温度変化によっては、モジュールが発電可能な電流値は変化しうる。例えば、モジュールの温度が上がっていくと、モジュールが発電可能な電流値は、室温を基準とした理想電流値よりも小さくなることが知られている。
このことを考慮すると、理想電流値が、室温での発電可能な電流値であることから、モジュールの発電電流値とこの理想電流値を比較しただけで、モジュールの劣化・故障状態を判定するのは不十分であることもある(なお、理想電流値との比較は、簡便な処理でもあるので、設置者や管理者の要請に応じて、理想電流値と補正理想電流値を比較対象に用いるかを決めればよい)。
このため、判定手段9は、理想電流値を測定温度値で補正した補正理想電流値を算出して、この補正理想電流値を発電電流値との比較に用いる。すなわち、基準値は、補正理想電流値である。なお、補正理想電流値は、記憶部8に記憶されていてもよいし、判定手段9が保持していても良い。
補正理想電流値は、理想電流値に測定温度値を所定の数式で乗算して得られてもよいし、対応テーブルによって得られても良い。あるいは、図3に示されるように、温度によって理想電流値を補正する補正関数に従って、補正理想電流値が得られても良い。図3は、本発明の実施の形態1における、補正理想電流値と温度との関係を示すグラフである。
図3は一例であるが、室温(データシートに示される理想電流値を示す温度)での補正理想電流値を最大として、室温より温度が上がるにつれて補正理想電流値は減少し、室温より温度が下がるにつれて補正理想電流値は減少する。すなわち、太陽光発電装置2に対する外部環境を考慮した補正理想電流値が得られる。
もちろん、図3のグラフは一例であり、グラフは、温度が上昇するにつれて補正理想電流値が低下する曲線(直線)を有していても良い。
判定手段9は、記憶部8に記憶されている理想電流値と測定温度値を用いて、補正理想電流値を算出し、この補正理想電流値を発電電流値と比較してモジュールの劣化・故障状態を検出する。
判定手段9は、特定モジュール10の発電電流値と測定温度値を読み出す。更に理想電流値を読み出す。読み出された測定温度値と理想電流値とを用いて補正理想電流値を算出する。ついで、判定手段9は、発電電流値と補正理想電流値との差分値を算出する。このとき、差分値が所定の閾値以上である場合には、判定手段9は、この特定モジュール10を、劣化・故障状態として判定する。なお、発電電流値が補正理想電流値よりも小さい上で、差分値が所定の閾値以上であることを、判定手段9は、劣化・故障の条件としてもよい。
なお、ここでは、測定温度値を用いて理想電流値を補正したが、測定温度値を用いて発電電流値を補正して、測定温度値により補正された発電電流値と理想電流値との比較に基づいて、判定手段9は、特定モジュール10の劣化・故障状態を判定しても良い。
(判定手法その3)
判定手段9および測定手段7の少なくとも一方は、複数のモジュール10の全て(あるいは過半)の発電電流値の平均値を算出する。記憶部8は、この平均値を基準値として記憶する。
判定手段9は、測定手段7あるいは自らが算出した平均値を基準値として、特定モジュール10の劣化状態を判定する。
アレイ4に含まれる複数のモジュール5のそれぞれは、データシートに記載の理想電流値を有する。劣化検出装置3は、この理想電流値(あるいは補正理想電流値)を基準として、モジュール毎の劣化状態を検出する。しかし、このような絶対値との比較ではなく、複数のモジュール同士での相対的な比較によって、モジュール毎の劣化状態を判定することも好適である場合がある。例えば、太陽光発電装置2が設置されてから年月が経過し、太陽光発電装置2全体として経年劣化している場合には、個々のモジュールを絶対値と比較して劣化を検出するのは適当でないこともある。アレイ4に含まれる多くのモジュールが劣化・故障状態として検出されてしまいかねないからである。
経年劣化が前提となっている太陽光発電装置2では、複数のモジュール5の中でのモジュールの良し悪しに基づいて劣化状態を検出する方が適当である。
判定手段9は、特定モジュール10の発電電流値と平均値との差分値を算出する。
判定手段9は、この差分値が所定の閾値以上である場合には、特定モジュール10を、劣化・故障状態であるとして判定する。このとき、特定モジュール10の発電電流値が平均値よりも小さい上で、差分値が所定の閾値以上であることを、劣化の条件としても良い。
このように、アレイ4に含まれる複数のモジュール5の中における相対的な位置づけによって、特定モジュール10の劣化・故障状態を判定することも好適である。
なお、判定手段9は、複数のモジュールのそれぞれの発電電流値の平均値ではなく、アレイ4全体が発電している電流値(パワーコンディショナでの電流値)を、比較対照としても良い。
(判定手法その4)
判定手段9は、特定モジュール10の発電電流値が、所定値以下である場合には、特定モジュール10を故障状態として判定する。理想電流値や補正理想電流値との比較にかかわらず、最低限の発電量を生じさせていない特定モジュール10は、故障状態であると考えられる。このため、最低限の発電量に対応する電流値を、所定値と定めると、判定手段9は、発電電流値がこの所定値以下である場合に、特定モジュール10を故障状態として判定する。
また、図4に示されるように、判定手段9は、異なる複数のタイミングのそれぞれで発電電流値と所定値を比較して、所定値以下である比較結果が所定回数以上である場合に、判定手段9は、特定モジュールを故障状態であると判定しても良い。
図4は、本発明の実施の形態1における故障状態を判定する説明図である。
図4に示されるように、判定手段9は、特定モジュール10の発電電流値を、タイミングt1〜t6の6回にわたって、所定値と比較している。タイミングt4においてのみ、発電電流値は、所定値を上回っている。しかし、他のタイミングでは、発電電流値は、所定値を下回っている。このように、比較回数の過半の回数において発電電流値が所定値を下回っていることから、判定手段9は、特定モジュール10を故障状態であるとして判定する。
以上のように、特定モジュール10の発電電流値が所定値以下である場合には、判定手段9は、特定モジュール10を、故障状態であるとして判定する。
(判定手法その5)
判定手段9は、ある特定のタイミングにおける判定、あるいは複数のタイミングにおける判定により、特定モジュール10の劣化状態を判定するだけでなく、所定期間における特定モジュール10の変化に基づいて、特定モジュール10の劣化状態を判定する。所定期間にわたる発電電流値の変化を基準に判定することで、より高い精度での判定が行われる。
あるタイミングでの発電電流値と基準値との比較だけでは、気象条件、外部条件、内部条件、誤差、などの外的要因によって判定結果がばらつくことがある。複数のタイミングでの比較によってこの判定結果のばらつきを低減することもできる。しかし、モジュールの劣化は、特定時の発電電流値によるよりも、時間経過に伴う経年劣化により判定される方が適当であることも多い。
判定手法その5では、判定手段9は、所定期間に渡る発電電流値の変化と、理想電流値もしくは補正理想電流値の予測変化との差分に基づいて、特定モジュール10の劣化状態を判定する。
劣化検出装置3は、発電電流値や測定温度値などの測定値を、所定期間に渡って記憶する累積値記憶部20を更に備える。累積値記憶部20は、発電電流値の所定期間における累積値や発電電流値の所定期間における変化曲線を記憶する。図5は、本発明の実施の形態1における太陽光発電装置の修復装置のブロック図である。検出手段3は、累積値記憶部20を備える。
判定手段9は、累積値記憶部20が記憶する特定モジュール10の発電電流値の累積値あるいは所定タイミングごとの発電電流値を、読み出す。判定手段9は、所定タイミングごとの発電電流値をグラフ上にプロットする。このとき、所定期間に渡って、発電電流値をプロットする。更に、判定手段9は、記憶部8が記憶する理想電流値(あるいは補正理想電流値))の所定期間に渡っての予想変化曲線をグラフにプロットする。なお、発電電流値の変化曲線と理想電流値の変化曲線は、判定手段9が計算してもよいし、記憶部8、累積記憶部20が計算した上で記憶しておいても良い。
このように、判定手段9は、発電電流値の変化曲線と理想電流値の変化曲線(あるいは補正理想電流値の変化曲線)とをグラフにプロットする。このプロットされたグラフは図6のようになる。図6は、本発明の実施の形態1における発電電流値と理想電流値の時間変化曲線を示すグラフである。
図6に示されるように、所定期間においては、特定モジュール10の経年劣化によって、発電電流値が次第に減少することがある。また、工場出荷の後に経年劣化してモジュールそのものの理想電流値も減少することは予想されている。所定期間における理想電流値の変化は、図2に示されるデータシートなどから得ることができる。判定手段9は、発電電流値の変化曲線と理想電流値の変化曲線とを比較する。このとき、図6に示されるように、発電電流値の変化曲線が、理想電流値の変化曲線に対して大きな乖離(差分)を有する場合には、特定モジュール10は、予想よりも大きな劣化あるいは故障を生じさせているものと考えられる。
このため、図6の状態を検出した判定手段9は、特定モジュール10を、劣化状態として判定する。すなわち、判定手段9は、所定期間における発電電流値の変化が、所定期間における予想される理想電流値の変化よりも、所定値以上に大きい場合には、特定モジュール10を、劣化状態として判定する。
このように、判定手段9は、時間要素をも考慮して、特定モジュール10の劣化状態を判定することも好適である。
なお、図6では、理想電流値の変化を判定の基準としたが、測定温度値によって補正される補正理想電流値の変化を判定の基準としても良い。
(判定手法その6)
判定手段9は、累積値記憶部20が記憶する特定モジュール10の発電電流値の累積値を基準に、特定モジュール10の劣化・故障状態を判定する。
図7は、本発明の実施の形態1における発電電流値の累積値と理想電流値の累積値とを比較するグラフである。
判定手段9は、累積値記憶部20から、特定モジュール10の発電電流値の累積値を読み出す。加えて、判定手段9は、記憶部8から理想電流値もしくは補正理想電流値の累積値を読み出す(あるいは、理想電流値もしくは補正理想電流値を読み出して、所定期間に渡って累積演算する)。これらの累積値は、所定期間における累積値である。
図7のグラフに示される理想電流値の累積値は、データシートから得られるデータと所定期間との乗算で得られる。時間の増加に伴って、理想電流値の累積値は増加していく。
一方、発電電流値の累積値も、時間の増加に伴って増加していく。図7のグラフの通りである。ここで、図7に示されるように、発電電流値の累積値が時間の経過と共に、その増加率が悪くなり、理想電流値の累積値と差分が生じることがある。この差分が所定値以上である場合には、判定手段9は、特定モジュール10を、劣化・故障状態であるとして判定する。発電電流値が、本来の発電量を生じさせていないことが所定期間に渡って明確であるからである。
累積値記憶部20は、記憶部8と一体でも別体でも良い。
図7では、理想電流値の変化を判定の基準としたが、測定温度値によって補正される補正理想電流値の変化を判定の基準としても良い。
判定手法その5、その6のように、所定期間の変化や累積値を基準としてモジュールの劣化状態を判定することは、モジュールにおいて進行しすぎた経年劣化に基づく劣化・故障状態を容易に検出できる。
(判定手法その7)
判定手段9は、日照時間を考慮したモジュールの劣化・故障状態の判定を行っても良い。
記憶部8は、所定期間における日照時間を記憶する。この日照時間は、所定期間における実際の日照時間を、照度計を用いて測定された結果でもよいし、累積された気象データに基づいて算出された結果でも良い。
前者の場合には、測定手段7が、発電電流値や温度以外に、日照時間を測定して、その測定値を記憶部8に記憶させる。この日照時間を、所定期間に渡って記憶させることで、所定期間における日照時間の累計値が記憶される。後者の場合には、記憶部8は、過去所定年数分から計算される一般的な日照時間(例えば、7月の1ヶ月は、300時間であるなど)を記憶しておく。
特定モジュール10の発電電流値は、日照時間によっても左右される。このため、判定手段9は、日照時間の要素を、発電電流値および理想電流値に加味した上で、特定モジュール10の劣化状態を判定する。
判定手段9は、所定期間における発電電流値の累計値(もしくは平均値)に所定期間における日照時間の累計値(もしくは平均値)を乗算する。この乗算結果を第1乗算結果とする。
同様に、判定手段9は、所定期間における理想電流値(もしくは補正理想電流値)の累計値(もしくは平均値)に、所定期間における日照時間の累計値(もしくは平均値)を乗算する。この乗算結果を第2乗算結果とする。
判定手段9は、第1乗算結果と第2乗算結果とを比較して差分値を算出する。この差分値が、所定の閾値以上である場合には、判定手段9は、特定モジュール10を、劣化状態であるとして判定する。また、このとき、第1乗算結果が第2乗算結果よりも小さいことを加重条件としてもよい。
また、日照時間と測定温度値との両方を、発電電流値および理想電流値の補正要素に用いることで、気象条件や外部条件をより反映したモジュールの劣化検出ができる。
例えば、日照時間と測定温度値を、発電電流値と理想電流値の両方に乗じた上で、それぞれの乗算結果を比較する。判定手段9は、この比較の結果に基づいて、モジュールの劣化・故障状態を判定する。
なお、以上の判定手法その1〜その7の全てでは、判定手段9は、アレイ4に含まれる複数のモジュール5のそれぞれのモジュールを、都度ごと特定モジュール10として判定を行い、アレイ4に含まれる全てのモジュールについての、劣化状態の判定を行う。あるいは、必要なモジュールの全てについての劣化状態の判定を行う。
また、判定手段9は、以上の判定手法のそれぞれにおいて、異なる複数のタイミングにおいて特定モジュールの劣化・故障状態を判定する。このとき、複数のタイミングにおいて劣化状態であると判定される回数が、所定回数以上である場合に、特定モジュールを故障モジュールであると決定しても良い。すなわち、あるタイミングにおいて上述の判定手法を用いた判定結果が劣化状態であることに加えて、他のタイミングにおいて上述の判定手法を用いた判定結果が劣化状態であることによって、判定手段9は、特定モジュール10を真の劣化状態であると判定する。すなわち、あるタイミングでの判定結果だけを用いてもよいし、複数のタイミングでの判定結果の総合結果を用いてもよい。
このように、複数回に渡って劣化状態を検出することで、より正確に特定モジュール10の劣化や故障を判定できる。
以上のように、実施の形態1における太陽光発電装置の劣化検出装置は、実際の気象条件や外部条件を考慮した上で、アレイに含まれるモジュールの劣化状態を検出できる。しかも、測定手段と判定手段とは、常時動作できるので、劣化検出装置は、リアルタイムにモジュールの劣化状態を検出でき、検出に当たっては、専門エンジニアが専用の装置を持って現場にて対応する必要がない。また、モジュールに付与されている識別子を判定結果に含めることができるので、抑制手段15は、いずれの位置にあるモジュールが故障モジュールであるかを容易に把握できる。
なお、実施の形態1に説明する劣化検出装置は、その一部もしくは全部がハードウェアで構成されても良いし、ソフトウェアで構成されても良い。ソフトウェアで構成される場合には、中央演算処理装置がメモリに記憶されているプログラムとデータを読み出して、所定の演算(実施の形態1で説明した判定手法に従う演算)を行って劣化を検出する。また、方法として実現されても良い。この場合には、太陽光発電装置を構成する複数のモジュールのそれぞれについて、所定の測定値を測定し、記憶部が記憶する所定の基準値を読み出し、測定値と基準値とに基づいて、複数のモジュールに含まれる特定モジュールの劣化・故障状態を判定する。
(抑制手段)
次に、抑制手段15の詳細について説明する。
抑制手段15は、検出手段3が検出した故障モジュールによる太陽光発電装置2への悪影響を抑制する。
(処理その1)
まず、抑制手段15は、検出された故障モジュールが電気的に接続される隣接するモジュールへの悪影響を抑制する。
アレイ4は、図8に示されるように、複数のモジュールを備え、複数のモジュール同士はある列で直列に電気接続され、列ごとの出力が並列接続されて、負荷や蓄電池28に発電した電気を出力する。図8は、本発明の実施の形態1における修復装置の一部のブロック図である。
ここで、ある列にあるモジュール22、モジュール23、モジュール24同士は電気的に直列接続される。このとき、モジュール22とモジュール23とは、電気線路25で直列接続され、モジュール23とモジュール24とは、電気線路26で直列接続されている。モジュール22、モジュール23、モジュール24のそれぞれは、直列接続されており、モジュール22、23、24が発電した電流が加算されながら、蓄電池28に出力される。
ここで、モジュール23が故障モジュールであるとする。検出手段3が、モジュール23を故障モジュールであると検出したことによる。
モジュール23は、故障モジュールであって十分な発電をできない状態である。このような状態であることは、モジュール23は内部で導電路が断線している可能性も高い。モジュール22、23、24のそれぞれは、電気線路25、26によって直列接続されているので、モジュール23の内部で断線を生じていると、モジュール22で発電された電流が、モジュール24(ひいては蓄電池28)に出力されないことになってしまう。
このような場合には、モジュール23が隣接するモジュール22、24と電気接続する電機線路25、26による接続をバイパスする必要がある。モジュール同士の電気接続においては、隣接するモジュール同士を直接接続する電気線路25、26以外に、あるモジュールを迂回するバイパス線路27を、予め設けておくことが好適である。図8では、モジュール22とモジュール24とを直接接続し、モジュール23を迂回するバイパス線路27を、アレイ4は有している。バイパス線路27は、故障している故障モジュール23を迂回して、正常なモジュール22とモジュール23とを直接接続するので、モジュール22とモジュール24にとって(結局は、太陽光発電装置2全体にとって)故障モジュールの悪影響を回避できる。
抑制手段15は、モジュール23が故障モジュールである場合には、バイパス線路27を導電させて、電気線路25、26を断線させる処理を行う。ここで、モジュール23の内部が断線している場合には、電気線路25と電気線路26との間に高いインピーダンスが発生する。このため、バイパス線路27が導電されるだけで、電気線路25と電気線路26とは断線したのと同じ状態となる。
抑制手段15は、モジュール23が故障モジュールである場合には、バイパス線路27(正常時にはバイパス線路27は断線している)を、導電させて、モジュール22、23、24の直列接続から、モジュール23を切り離すことができる。
なお、バイパス線路27は、電気スイッチを設けておき、抑制手段15は、この電気スイッチを導電状態(ON状態)にすることで、バイパス線路27を導電させればよい。電気スイッチ以外にも、抵抗値の調節などによって、抑制手段15は、バイパス線路27を導電させる。
モジュール23が故障モジュールである場合には、電気線路25と電気線路26とが断線状態となることもあり、図8のアレイ4の上段のモジュールの列は、発電に全く寄与できない状態となりうる。とはいえ、故障しているのは上段の3つのモジュール22、23、24の内、一つのモジュール23のみである。すなわち、故障している量と太陽光発電装置2の結果とがアンバランスになってしまう。
一方、抑制手段15が、バイパス線路27によって、故障モジュールであるモジュール23を迂回してモジュール22とモジュール24とを接続することで、故障していないモジュール22とモジュール24との発電量を、太陽光発電装置2の発電量に加えることができる。言い換えると、太陽光発電装置2による発電へ寄与できないのは、故障しているモジュール23だけに抑えることができる。
検出手段3は、故障している量を最小化して特定できるように、モジュール単位で故障を検出する。抑制手段15は、モジュール単位で検出された故障モジュールによる太陽光発電装置2への悪影響を、故障モジュールのみの量に抑えることができる。
なお、図8は、一つのモジュールを回避するバイパス線路27のみを示しているが、複数のモジュールを回避するバイパス線路を予め設けておいても良い。
あるいは、モジュール同士の接続がマトリクス上になっており、抑制手段15は、このマトリクスの接続切り替えによって、故障モジュールを回避する電機接続を実現しても良い。
(処理その2)
次に、抑制手段15の処理その2について説明する。
抑制手段15は、故障モジュールの温度を冷却することで、故障モジュールによる太陽光発電装置2への悪影響を抑制する。
太陽光発電装置2が備えるモジュールは、その温度が上がりすぎると、発電量が低減する傾向を有する。諸所の理由があるが、モジュールが含む電気線路の導電性が温度上昇によって悪化したり、光電効果への悪影響が生じたりするからである。
検出手段3は、モジュールの発電量や温度によって、故障モジュールを検出する。この故障モジュールが劣化や故障した原因は、温度であることもある。特に、検出手段3が、モジュールの温度からモジュールの故障状態を判定した場合には、上昇しすぎた温度によってモジュールが故障したとも考えられる。このような場合には、故障モジュールの温度を下げれば、故障モジュールにおける不具合が解消すると考えられる。不具合が解消すれば、故障モジュールによる太陽光発電装置2への悪影響が回避できる。このため、抑制手段15は、検出手段3が検出した故障モジュール(アレイ4におけるどの位置のモジュールが故障モジュールであるかは、検出手段3が伝達するので、抑制手段15は、どの位置のモジュールを冷却すればよいかを把握できる)を、冷却する。
抑制手段15は、冷風ファンによる送風、ドライアイス冷気の吹き付け、電気的熱交換、冷却水の拭きつけなどの手段によって、故障モジュールを冷却する。
図9は、抑制手段15による故障モジュールの冷却の一例を示す。図9は、本発明の実施の形態1における修復装置の一部のブロック図である。
抑制手段15は、モジュール23が故障モジュールであるとの通知を受ける。この通知においては、モジュール23が高温になりすぎたことでモジュール23が故障したとの指摘を含んでいることもある。このように温度上昇を原因とするモジュール23の故障にかかわる通知の場合には、抑制手段15は、当該故障モジュールを冷却すれば問題解決できる。
抑制手段15は、冷却ファン29を制御する。冷却ファン29は、抑制手段15の制御によって、故障モジュールに風を送る。冷却ファン29からの送風によって故障モジュールとなったモジュール23の温度が下降し、モジュール23の発電能力が復活する。
冷却ファン23は、普通の風を送るだけでもよいし、ドライアイスや冷却材によって冷却された空気を風として送ることもよい。また、冷却ファン23は、複数のモジュールのそれぞれに一つずつ設置されていてもよい。この場合には、抑制手段15は、故障モジュールとなっているモジュールに設置されている冷却ファン23を動作させる。あるいは、一つないしは少数の冷却ファン23が設置されても良い。この場合には、モジュールの位置に合わせて冷却ファン23が移動しながら(モジュールに対応して形成された格子レールを冷却ファン23が移動すればよい)、冷却ファン23が故障モジュールとなっているモジュールへ風を送風する。
また、抑制手段15は、故障モジュールの温度上昇を抑えるために故障モジュールの表面に太陽光を遮る遮蔽シートを掛けることも好適である。太陽光を遮る遮蔽シートがモジュール表面を覆うことで、モジュールの温度上昇が抑制されるからである。温度上昇が抑制されれば、故障モジュールの発電能力が復活しうるからである。
なお、遮蔽シート、熱交換器などは、複数のモジュールの個々に備えられてもよいし、一つもしくは少数の遮蔽シートや熱交換器などが、備えられて、故障モジュールの位置に移動しながら、故障モジュールの温度を冷却しても良い。
(発電能力の低減)
抑制手段15は、故障モジュールの発電能力を低下させることで、故障モジュールによる太陽光発電装置2全体への悪影響を抑制する。
故障モジュールは、発電能力が弱まっている場合と、発電能力が過剰になっている場合とがある。発電能力が過剰になっている場合には、故障モジュールは、他のモジュールへ悪影響を与えることがある。余分な電流が、直列接続や並列接続されている他のモジュールへ流入するからである。あるいは、故障モジュールの発電能力が過剰になっていないとしても、故障モジュールが発電を継続すると、予期せぬ現象を引き起こす可能性もある。
このように、故障モジュールであると判断されたモジュールは、発電を低減もしくは停止することが好ましいことがある。抑制手段15は、故障モジュールの発電能力を低減もしくは停止させる。
図10は、本発明の実施の形態1における修復装置の一部のブロック図である。図10は、抑制手段15が、故障モジュールとなっているモジュール23の発電能力を制御する制御部30をコントロールしている状態を示している。制御部30は、モジュール23の発電能力を制御できる。例えば、モジュール23が太陽光を受けるガラス面の屈折率を変更して、モジュール23が受けうる太陽光の量を調整する。この太陽光の量の調整によってモジュール23の発電能力が制御される。
あるいは、制御部30は、モジュール23が発電した電流を出力する出力端部の抵抗値を上げて、実質的に発電能力を低減させる。
あるいは、制御部30は、モジュール23の発電メカニズムへの作用によって発電能力を低減させる。
以上のように、制御部30は、モジュール23の発電能力を低減させたり停止させたりする機能を有する。制御部30は、複数のモジュールのそれぞれに設けられてもよいし、一つもしくは少数の制御部30が設けられても良い。制御部30は、モジュールとは別個に設けられてもよいし、一体で設けられても良い。また、制御部30は、抑制手段15の内部に設けられても良い。
抑制手段15は、この制御部30をコントロールして、故障モジュールの発電能力を低減もしくは停止させる。もちろん、制御部30の機能を抑制手段15が含んでおり、抑制手段15がこの制御部30の機能を用いて、呼称モジュールの発電能力を低減もしくは停止させても良い。
故障モジュールの発電能力が低減することで、故障モジュールが引き起こす可能性のある予期せぬ現象を予め回避できるようになる。結果として、太陽光発電装置2全体にたいする、故障モジュールの悪影響を抑制できる。勿論、抑制手段15による上述の処理は、エンジニアを派遣するよりも早く自動的に実行されるので、設置者にとっては、エンジニアの派遣までの間の問題を最小限に抑えることができる。
(蓄電池の放電)
抑制手段15は、故障モジュールの存在の通知を受けると、蓄電池に蓄電されている電流を放電することも好適である。
図11は、本発明の実施の形態1における修復装置の一部のブロック図である。
図11は、アレイ4が複数のモジュールを有し、モジュール23が故障モジュールであることを示している。モジュール23が劣化・故障状態にあることで、太陽光発電装置2全体として発電を継続することが、予期せぬ問題を引き起こすこともありうる。このような予期せぬ問題を引き起こしかねない太陽光発電装置2による発電を停止ないしは低減させることが適切な場合もある。
太陽光発電装置2は、複数のモジュールで発電した電流を、蓄電池28に蓄電する。このとき、故障モジュールの存在によって、太陽光発電装置2全体での発電量が、蓄電池28の許容値を超えてしまうような問題も生じうる。このような状況が生じると、蓄電池28が故障して、その後の修理費用が大きくなってしまう問題もある。このような蓄電池28の故障を防止するために、抑制手段15は、蓄電池28の電流を放電させる。放電されれば、蓄電池28が過充電となって故障するおそれが無くなるからである。
抑制手段15は、故障モジュールが発生している場合には、蓄電池28の電流を放電させて、故障モジュールを原因として蓄電池28で生じうる問題を事前回避できる。
なお、抑制手段15による処理は、以上のように種々のパターンを有するが、これら以外のパターンを含んでも良い。更には、抑制手段15は、上記に説明した種々のパターンを適宜組み合わせて、故障モジュールへの対応を行ってもよい。
例えば、故障モジュールの発電能力を低下させる処理と故障モジュールと隣接するモジュールとの電機接続をバイパスさせる処理との組み合わせである。あるいは、故障モジュールを冷却する処理と蓄電池を放電させる処理との組み合わせである。
以上のように、実施の形態1における修復装置1は、複数のモジュールの内で、劣化・故障状態にある故障モジュールを検出し、故障モジュールによる太陽光発電装置2全体への悪影響を抑制できる。特に、モジュールの劣化や故障の修理を行うエンジニアが派遣されるまでの間、自動で故障モジュールによる悪影響が抑制される。この結果、太陽光発電装置の設置者や管理者に対する、モジュールの故障の損失を最小限に抑えることができる。
実施の形態1の修復装置1は、修理や取替えという故障モジュールに対する根本解決までの間の問題を最小化できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態2では、実施の形態1の修復装置が、太陽光発電装置を管理する管理センターや修理センターを備えるシステムに組みいれられる場合について説明する。
実施の形態1においては、設置されている太陽光発電装置のそれぞれにおいて、検出手段と抑制手段が備えられている太陽光発電装置を説明したが、複数の太陽光発電装置からの測定結果を基に、管理センターが有する検出手段がモジュールの劣化・故障状態を一括で検出する場合もありうる。
図12は、本発明の実施の形態2における太陽光発電装置のブロック図である。図12では、3箇所に太陽光発電装置2が設置されている。また3つの太陽光発電装置2のそれぞれには、太陽光発電装置としての識別子が付与されており、図12においては、左から、「A」、「B」、「C」の識別子が付与されている。
3つの太陽光発電装置2のそれぞれには、測定手段7と出力手段40が備えられている。3つの測定手段7のそれぞれは、対応する太陽光発電装置に含まれるモジュール毎の発電電流値、測定温度値、日照時間を計測して、出力手段40を介して、これらの測定値を、検出手段50に出力する。出力手段40は、無線通信および有線通信の少なくとも一方を用いて、測定値を検出手段50に出力する。
このとき、太陽光発電装置2のそれぞれには、「A」、「B」、「C」の識別子が付与されているほか、太陽光発電装置2が含む複数のモジュールのそれぞれにも識別子が付与されている。例えば、図12における左端の太陽光発電装置2のあるモジュールの識別子は、「A:5−1」のように表される。出力手段40は、この「A:5−1」(太陽光発電装置Aの5列1行目のモジュールであることを示す)の識別子で示されるモジュールの測定値を、検出手段50に出力する。
検出手段50は、このように複数の設置場所に設置されている異なる太陽光発電装置2の中のモジュールを特定した測定値の情報を得ることができる。この測定値の情報に基づいて、記憶部8に記憶されている各種基準値(実施の形態1で説明した基準値)を用いてモジュールの劣化状態を判定する。このとき、判定対象のモジュールの位置は、設置場所およびアレイの中での配置位置の両方から特定されているので、検出手段50は、モジュールを特定した上で劣化状態を検出できる。なお、判定手段9での判定の手法は、実施の形態1で説明したとおりである。
例えば、複数の場所に太陽光発電装置2が設置されており、これら複数の太陽光発電装置のモジュール毎の劣化状態を検出する管理センターがある場合には、この管理センターに、図12に示される検出手段50が設置され、太陽光発電装置が設置されている場所ごとに、測定手段7と出力手段9とが設置されている。管理センターに設置される検出手段50は、判定手段9と記憶部8とを備えており、複数の太陽光発電装置についての劣化検出を、集中的に行うことができる。
出力手段40が、測定手段7での測定値を、有線あるいは無線によって管理センターに出力できることで、管理センターにおいて集中的に太陽光発電装置に含まれるモジュールの劣化状態を(そのモジュールの位置を特定した上で)検出できる。
なお、出力手段40が、判定結果を出力する場合には、記憶部8および判定手段9は、各太陽光発電装置2の設置場所に設置される。このとき、出力手段40は、各太陽光発電装置2での判定結果を、管理センターに出力する。管理センターは、得られた判定結果を元に、モジュールの修理や対応を集中的に決定・管理する。
管理センターは、抑制手段15を備えている。抑制手段15は、実施の形態1で説明したように、故障モジュールが太陽光発電装置2全体に与えうる悪影響を抑制する。
例えば、抑制手段15は、故障モジュールと隣接するモジュールとの電気接続をバイパスさせたり、故障モジュールを冷却したり、故障モジュールの発電能力を低減させたり、蓄電池を放電させたりする。このとき、抑制手段15は、管理センターに一括して設置された上で、管理センターに設置された抑制手段15が、無線通信および有線通信の少なくとも一方を用いて遠隔的に操作する。
検出手段や抑制手段が、複数の位置に設置されている複数の太陽光発電装置を管理する管理センターに設置されることで、一括的な検出と修復が実現できる。
図12では、管理センターが、故障モジュールの検出と、故障モジュールによる影響の抑制とを、一括して行うことを説明した。
次に、図13を用いて、故障モジュールの検出と故障モジュールによる影響の抑制は、設置されている太陽光発電装置の個々において行われ、管理センターで、実際の修理などを一括管理するシステムについて説明する。
図13は、本発明の実施の形態2における太陽光発電装置の修復システムのブロック図である。
修復システムは、実施の形態1で説明した検出手段3からの判定結果に基づいて警告を発する警告発生装置81、警告を受ける管理センター80、警告に基づいて太陽光発電装置(あるいはモジュール)へ所定の処置を行う処置装置82、管理センター80からの通報によって太陽光発電装置やモジュールの修理を行う修理センター83とを備える。また、当然ながら、検出手段3からの判定結果に基づいて、故障モジュールによる影響を抑制する抑制手段15は、太陽光発電装置2を制御する。
ここで、抑制手段15が行う処理は、実施の形態1で説明したのと同様である。
すなわち、抑制手段15は、故障モジュールと隣接するモジュールとの電気接続をバイパスさせたり、故障モジュールを冷却したり、故障モジュールの発電能力を低減させたり、蓄電池を放電させたりする。抑制手段15は、設置されている太陽光発電装置2毎に設置されており、太陽光発電装置2毎に故障モジュールによる影響を抑制する。
検出手段3は、実施の形態1で説明した手順で、太陽光発電装置2に含まれる特定モジュールの劣化・故障状態を判定する。出力手段40は、この判定結果を出力する。警告発生装置81は、判定結果を受信する。受信した判定結果が、故障モジュールの情報を含んでいる場合には、警告発生装置81は、警告を発する。警告としては、音声アラームや光、画像、テキスト、電子メールなどの視覚的アラームがありえる。いずれでもあるいはこれらの組み合わせでもかまわない。
管理センター80は、警告を受け取る。警告を受け取った管理センター80は、問題が生じているものと考え、太陽光発電装置で問題が生じていることを修理センター83に通知する。このとき、管理センター80は、いずれの太陽光発電装置であって、太陽光発電装置のいずれの位置のモジュールに問題があるかを特定した上で、修理センター83に通知できる。
修理センター83は、修理を行うエンジニアを有しており、エンジニアを故障モジュールを有している太陽光発電装置2の設置場所に派遣する。
抑制手段15は、故障モジュールによる影響を抑制する処理を行っているが、故障モジュールが根本的に修理される必要がある。エンジニアが派遣されることで、故障モジュールが修理され、問題が根本的に解決される。勿論、エンジニアが派遣されるまでの期間では、抑制手段15によって故障モジュールによる悪影響が抑制されている。
このように、モジュールの故障が検出されると、第1段階として、抑制手段15によって悪影響が抑制され、第2段階として、修理センター83からのエンジニア派遣によって、故障モジュールの修理や交換が実現できる。
また、管理センター80、修理センター83、太陽光発電装置2、検出手段3、抑制手段15のそれぞれは、インターネット回線、イントラネット回線、電話回線、ISDN回線、無線通信回線などの様々なネットワークで結ばれることも好適である。太陽光発電装置の設置者に対して安心感を与えるからである。このような安心感を与えることで、太陽光発電装置の普及が進みやすくなるメリットもある。
以上のように、実施の形態2における太陽光発電装置の修復システムは、集中管理や修理センターからのエンジニア派遣までにも対応することで、太陽光発電装置の設置者への安心感を与えると共に、安定した発電あるいは売電を実現できる。
以上、実施の形態1〜2で説明された太陽光発電装置の修復装置、修復システムは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。