JP2011033597A - シート状物の物性測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、測定ヘッドとシート状物の接触状態が測定ヘッド全面で均一となるシート状物の物性測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、n個の検出部とそれを保持する測定ヘッドを有するシート状物の物性測定装置において、測定ヘッドの外形形状を正n角形とし、正n角形の一辺をシート状物の走行方向と垂直になる状態に測定ヘッドを配して測定する。また、本発明は、測定ヘッドの位置制御手段として、測定ヘッドとシート状物との接触面から測定ヘッドを押し込む押込量制御手段と測定ヘッドとシート状物との接触状態から測定ヘッドを傾斜させる傾斜角度制御手段と測定ヘッドとシート状物との接触面で測定ヘッドを(360/n)度ずつ回転させる回転手段により構成し、n個の検出部は誘電体共振器であることがより好ましい。
【選択図】 図4

Description

本発明は、紙、不織布、フィルムをはじめとするシート状物の物性測定装置に関し、更に詳しくは、シート状物と測定ヘッドの接触状態の均一性向上技術に関するものである。
シート状試料の透明・不透明を問わず、試料の物性として配向性あるいは誘電的異方性をオンラインで測定する方法を発明者らは提示している。基本的な方法としては、検出部として採用した矩形誘電体共振器をマイクロ波により共振させ、その表面に沁みだしたエバネセント波を利用し、試料の片側から検出部を接触もしくは近接させた際の共振周波数の変化を測定するものである。試料の片側から検出部が接触あるいは近接したときに、試料の誘電率と厚さの積に応じて共振周波数が低周波数側にシフトする。このシフト量を測定することによって、紙などのシート状物の繊維配向あるいは分子配向をオンラインで測定することが可能となる。
使用する誘電体共振器の個数を5個とした場合を例に説明する。図1に示すように、各々を72°の角度ずつ配置した5個の誘電体共振器1〜5によって構成された測定ヘッド10を用いて試料を測定する。このような複数の誘電体共振器を使用した場合、信号処理は図2に示すようにマイクロ波掃引発振器から出た信号を5個の誘電体共振器に分配し、透過強度を検波ダイオードで電圧に変換する。これを増幅、A/D変換し、ピーク検出回路によってピーク位置が検出される。周波数の掃引は一定の周期で繰り返され、かつ掃引中のみハイレベルとなる同期信号が同時にマイクロ波掃引発振器から出ているため、この同期信号がハイレベルになる瞬間から透過強度が最大値をとるまでの時間を測定すれば、共振周波数が求められる。図2は5個の誘電体共振器を使用した場合の信号処理系のブロック図である。
試料がないときのブランク共振周波数と試料を共振器に近接または接触させたときの共振周波数の差をシフト量(Δf)と呼び、図1に示した5個の誘電体共振器のそれぞれについて周波数シフト量を求め、これを極座標上にプロットすることで楕円パターンを描く。そして、得られたデータについて楕円近似をかけることによりで図3のような配向パターンと呼ばれる楕円が計算され、試料の配向性が示される。図3において、MD(Machine Direction)方向はオンライン測定の場合の試料の走行方向であり、この方向を基準方向とする。TD(Transverse Direction)は基準方向に直交する方向で、オンライン測定の場合は試料の幅方向である。φ(基準方向と誘電率最大の方向とのなす角度)は配向角度を表し、長軸aと短軸bの差又はそれを長軸aもしくは短軸bで除したものは異方性の程度を表す。
紙や不織布など、延伸されたPETなどと比較して小さい誘電的異方性を有する試料の配向性を測定するためには、複数個の誘電体共振器における共振周波数のシフト量をより正確に捉える必要があり、複数の誘電体共振器の固体差(同一試料を接触させても同一の共振周波数シフトをせず、わずかに差異が生ずること)をできるだけ小さくする必要がある。そこで本発明者らは、複数の誘電体共振器を用いる場合に、個々の誘電体共振器の固体差を補正する手段を導入し、特許文献1に開示している。この方法では、測定対象となる試料をそのまま補正係数測定に用いるため、試料の凹凸などの個々の物性を加味した正確な補正係数を求めることができ、より高精度の配向測定が可能となった。
加えて、走行するシート状試料を精度良く測定するためには、試料に対して検出部が均一に接触する必要がある。そこで、本発明者らは、オンラインでの測定の際、検出部の検出面を走行するシート状物と均一に安定して接触させながら測定することができるシート状物の物性を測定する測定装置および測定方法について、特許文献2に開示している。この装置及び方法によって、検出部を保持する測定ヘッドの接触端部のシート状物の走行経路に対し、測定ヘッドの押込量及び測定ヘッドの平面状接触面が、シート状物の流れ方向に対してシート状物から一定の角度を保って離間させる傾斜角度制御手段の調整により、最適なフォイル効果を得て安定してシート状物の物性を測定することが可能となった。
特許文献1のような方法で、複数個の誘電体共振器の固体差補正を行う際、測定ヘッドに対し測定ヘッドの中心部を中心として任意の角度ごとに回転させるステップ、又は測定対象試料に対して測定ヘッドの中心部を中心として測定ヘッドを任意の角度ごとに回転させるステップを踏む必要がある。測定対象試料が走行中のシート状物の場合、当然のことであるが、測定対象試料に対して測定ヘッドを回転させる必要がある。
一方、紙の繊維配向を製造ライン上で測定する場合、紙のバタツキやテンションの変動などにより紙面とマイクロ波誘電体共振器の検出面との接触状態が一定にならない場合が多く、検出面の全面に亘って紙面と安定して均一に接触させることが難しいという問題があった。そこで特許文献2のように、検出部を保持する測定ヘッドの接触端部のシート状物の走行経路に対し、測定ヘッドの押込量及び測定ヘッドの平面状接触面が、シート状物の流れ方向に対してシート状物から一定の角度を保って離間させる傾斜角度制御手段の調整により、最適なフォイル効果を得て安定してシート状物の物性を測定することが可能となった。
さらに、最適なフォイル効果を得るための測定ヘッドの形状について説明する。測定ヘッドを測定面方向から見た場合、測定ヘッド面の形状が円形の場合は、紙とヘッド面はヘッド面の最も上流側の1点から順次接するため、ヘッド面の川下側に行くにつれて、紙から離れる位置関係にある。そのため、測定ヘッドの下流側や側面側に行くほど負圧の程度が小さくなり、接触状態が不均一になる可能性が否めない。そこで、紙と測定ヘッド面が最初に1点から接するのではなく、線で接するようにすれば紙の流れに対して直角方向でより一層圧力分布が均一になりより好ましい。例えば、シート状物と接触する際の基点となる測定ヘッドの上流側の端辺を直線状とすれば、負圧になる範囲がヘッド幅全体に広がり、より均一な接触が得られやすくなる。
そこで、例えば測定ヘッドの外形形状を正方形にすれば、最適なフォイル効果を得るための形状は満たされるが、検出部が4個でない場合、たとえば本発明の実施例のように検出部が5個の場合は、補正係数測定で測定ヘッドを回転させるステップの際に、シート状物と接触する際の基点となる測定ヘッドの上流側の端辺を直線状に保つためには、外形は正方形でありながら検出部を含むヘッドの中央部は(360/5)度毎に回転できる機構を設ける必要があり、複雑で高価な装置構成が要求され現実的ではない。つまりフォイル効果の都合だけを考慮すれば、測定ヘッドの外形形状の正多角形の角数は少ない方がよいが、装置の構成全体を勘案すると検出部の個数と正多角形の角数を一致させるのが合理的である。また測定ヘッドの外形形状の正多角形の角数については、角数が多いほどフォイル効果の特性が円形ヘッドの場合に近くなり、本願の意図する効果は減少すると考えられる。
本発明は、測定ヘッドとシート状物の接触状態が測定ヘッド全面で均一となるシート状物の物性測定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、n個の検出部とそれを保持する測定ヘッドを有するシート状物の物性測定装置において、測定ヘッドの外形形状を正n角形とし、正n角形の一辺をシート状物の走行方向と垂直になる状態に測定ヘッドを配して測定することを特徴とするものである。
また、本発明は、測定ヘッドの位置制御手段として、測定ヘッドとシート状物との接触面から測定ヘッドを押し込む押込量制御手段と測定ヘッドとシート状物との接触状態から測定ヘッドを傾斜させる傾斜角度制御手段と測定ヘッドとシート状物との接触面で測定ヘッドを(360/n)度ずつ回転させる回転手段により構成することが好ましい。
更に、本発明は、n個の検出部は誘電体共振器であることがより好ましい。
本発明によれば、n個の検出部とそれを保持する測定ヘッドを有するシート状物の物性測定装置において、測定ヘッドの外形形状を正n角形とし、その一辺をシート状物の走行方向と垂直になる状態で測定することにより、測定ヘッドとシート状物の接触状態を測定ヘッド全面で均一にすることが可能である。
また測定ヘッドの位置制御手段として、測定ヘッドとシート状物との接触面から測定ヘッドを押し込む押込量制御手段と測定ヘッドとシート状物との接触状態から測定ヘッドを傾斜させる傾斜角度制御手段と測定ヘッドとシート状物との接触面で測定ヘッドを(360/n)度ずつ回転させる回転手段により構成することにより更に高度な接触状態の調整が可能である。またn個の検出部が誘電体共振器である場合には前述手段で得られる均一な接触状態が特に重要である。
5個の誘電体共振器を保持した円形測定ヘッドの平面図。 5個の誘電体共振器を使用した場合の信号処理系のブロック図。 各誘電体共振器の出力から得られる配向パターン。 5個の誘電体共振器を保持した正五角形測定ヘッドの平面図。 円形ヘッドの周囲に正五角形のリングを付加した場合の平面図。 (a)傾斜角度を設けない場合の断面図。(b)傾斜角度を設けた場合の断面図。 (a)測定ヘッドと走行中の紙の傾斜角度が小さい場合の断面図。(b)傾斜角度が小さい場合の測定ヘッドと圧力分布の関係を示す曲線。 (a)測定ヘッドと走行中の紙の傾斜角度が大きい場合の断面図。(b)傾斜角度が大きい場合の測定ヘッドと圧力分布の関係を示す曲線。 (a)測定状態の測定ヘッドと走行中の紙を示す断面図。(b)測定ヘッドの押圧状態と圧力分布の関係を示す曲線。 円形測定ヘッドの場合の圧力分布を示す図。 正五角形測定ヘッドの場合の圧力分布を示す図。 (a)5個の誘電体共振器の位置を示した測定ヘッドの平面図。(b)各誘電体共振器の出力から得られる配向パターン。 測定ヘッドと紙面の接触状態が均一な場合に5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量。 測定ヘッドと紙面の接触状態が不均一な場合に5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量。 円形ヘッドを用いた場合に5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量。 円形ヘッドの周囲に正五角形のリングを付加した測定ヘッドを用いた場合に5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量。 配向角度15度の場合について、5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量をシミュレーションにより求めたグラフ。
以下誘電体共振器を検出部として使用し、シート状物として走行する紙を測定する配向測定装置を例に説明する。本例の場合は5個の誘電体共振器が72度ごとに配列された測定ヘッドを例を挙げて説明する。5個の誘電体共振器を一つの金属製の測定ヘッドに装着する。金属としてはシールド効果が高く加工しやすいアルミニウム、真鍮、銅等が使用される。図1の円型の測定ヘッドについて説明すると、円形測定ヘッド10にそれぞれの誘電体共振器1〜5が装着されている。この例では直方体状の各誘電体共振器1〜5が円形測定ヘッドに設けられた穴部に底部や側周部と若干の隙間を保って装着される。低誘電率高分子材料、例えばフッ素系樹脂をこの隙間を埋めたり保ったりする部材として使用している。それぞれの誘電体共振器の試料との接触条件が同一になるようにそれぞれの誘電体共振器の検出面DS1〜DS5が測定ヘッドの試料との平面状接触面HSと面一になるように装着される。図4は、5個の誘電体共振器を保持した正五角形測定ヘッドの平面図である。
本発明の目的を満足するためには、測定ヘッドの外形形状が正n角形であればよい訳であるから、一例として、円形ヘッドの周囲に外形が正n角形のリングを付加しても当然のことながら同様の効果が得られる。図5は、円形ヘッドの周囲に正五角形のリング11を付加した場合の平面図である。円型測定ヘッドに対して外周リングを取りつける場合は、隙間からの流体の流出もしくは流入を防ぐ目的から測定ヘッド外周部とリング内部の間にOリング等のシール部材を使用するのが望ましい。
図4、図5のように、採用した誘電体共振器の個数である5個に対し、正五角形測定ヘッド又は円形ヘッドの周囲に正五角形のリングを付加した場合について、代表して図4の正五角形測定ヘッドを採用した場合を例に説明する。フォイル効果をこの測定ヘッドに適用し、試料と測定ヘッドの接触面とが均一に接触するような装置の構成を以下に示す。図6は本発明の測定ヘッドの位置制御手段の概略構成図である。矢印A方向に走行する紙の経路Wに対してその紙の経路と測定ヘッドの平面状接触面HSが平行になるように測定ヘッド10を支持する測定ヘッド支持台12に測定ヘッド10が固定されている。図6(a)傾斜角度を設けない場合の断面図である。紙の経路Wに対してその紙と測定ヘッドの平面状接触面HSが平行になった状態で、測定ヘッド支持台12は測定ヘッド押込量制御手段Poに固定されている。測定ヘッド押込量制御手段Poは図中矢印Bで示す方向に測定ヘッド支持台の高さを任意に調整できるようにロータリーアクチュエーターのひとつのロータリーシリンダ(図示省略)によって構成される一軸方向の移動手段とその移動先端部に接続固定された台で構成される。この図6(a)に示す状態では測定ヘッド支持台の高さは紙が測定ヘッド10にほぼ接するような状態に調整されている。
測定ヘッド押込量制御手段Poは測定ヘッド傾斜角度制御手段In上に乗った形で測定ヘッド傾斜角度制御手段Inと接続固定されている。測定ヘッド傾斜角度制御手段Inは具体的には載置台13とその載置台13における紙の流れの上流側端部13bに接続される一軸方向の移動手段14とから構成される。載置台13は紙の流れの下流側端部13aを支点として図中矢印C方向に回動可能となっており、端部13bに接続された例えばロータリーアクチュエーターとボルトナットで構成される一軸方向の移動手段14が、設置基礎台15から端部13bを任意の間隔で離間させることによって測定ヘッド押込量制御手段Poを一定の角度で傾けた状態となっている。図6(b)は傾斜角度を設けた場合の断面図で、この状態を示している。
図からわかるようにこの測定ヘッド押込量制御手段Poが傾斜することにより測定ヘッド10が図中紙の経路Wに対してシート状物から一定の角度αを保って離間するような角度すなわち傾斜角度をつけることになる。この傾斜角度αの一定の角度を保って紙の経路Wから測定ヘッドの平面状接触面が傾斜するようになる。
すなわち測定ヘッド傾斜角度制御手段Inによってこの傾斜角度を調整することができる。なお、以上の説明からわかるように測定ヘッド押込量制御手段Poは紙の経路Wに対して位置的に測定ヘッドの押込量を調整することになる。すなわち測定ヘッドが紙を圧接しない位置から圧接することによりその位置から押し込まれた位置までの距離を調整する。この測定ヘッド傾斜角度制御手段Inと測定ヘッド押込量制御手段Poによって測定ヘッド位置制御手段が構成される。なお理想的には測定ヘッド押込量制御手段Poが測定ヘッド10を紙に対して鉛直方向に圧接することが好ましいが、本例ではこの図の矢印B方向の移動距離と測定ヘッド傾斜角度制御手段Inに設定される傾斜角をPC(パーソナルコンピュータ)等により演算して押込量、傾斜角度を調整することになる。
図7(a)は測定ヘッドと走行中の紙の傾斜角度が小さい場合の断面図である。また図7(b)は傾斜角度が小さい場合の測定ヘッドと圧力分布の関係を示す曲線である。図7から分かるように紙パスに対して測定ヘッド10の下流側の測定ヘッド後端部10bをわずかに紙パスPから離すと、フォイル効果により紙面とヘッド面に挟まれた空間が負圧になるために、紙が測定ヘッド面に吸い寄せられて均一に接触する。尚この際の測定ヘッド10の上流側の測定ヘッド先端部10aが最初に紙に接する接触端部となる。この測定ヘッド10は円形であるので接触端部は点となる。紙パスPに対する測定ヘッド面の傾き角度すなわち前述の傾斜角度に応じて、図7に示すようにヘッド周りの圧力分布が変わる。図7にはこの傾斜角度が比較的小さい場合の例を示した。このように傾斜角度すなわち傾斜角度が小さい場合は、負圧の程度も小さいが負圧となる範囲が長く(広く)なる。反対に傾斜角度が大きいと負圧の程度が大きくなるが負圧の範囲が狭くなる傾向にある。このような状態を図8に示した。図8(a)は測定ヘッドと走行中の紙の傾斜角度が大きい場合の断面図である。図8(b)はこの時の圧力分布の関係を示す曲線である。この最適な傾斜角度は、紙の走行速度、紙の張力および紙の弾性率で決まる。また、紙面に対する鉛直方向の測定ヘッドの位置すなわち測定ヘッド圧接位置言い換えればヘッドの紙に対する押込量によっても図9(b)に示すように圧力分布が変わる。図9(a)は測定状態の測定ヘッドと走行中の紙を示す断面図、図9(b)は測定ヘッドの押圧状態と圧力分布の関係を示す曲線であり、図9は二つの測定ヘッド押込量についてそれぞれの紙の走行位置に伴う圧力分布を示している。測定ヘッドを紙に対してキスタッチの位置とその位置に対してさらに押し込んだ位置における圧力分布を較べると、押し込んだ位置では測定ヘッドと紙の接触点より上流側の正圧はさらに上がり、接触点より下流側の負圧はさらに負圧が大きくなる傾向となる。
先に測定ヘッド位置調整手段が二つの制御手段によって構成される場合を説明したが、一種類の調整手段によって構成することも可能である。例えば、測定ヘッドを一軸方向の移動手段を少なくとも3つ使用して支持することによって測定ヘッド傾斜角制御と測定ヘッド押込量制御を行うことも可能である。このような一軸方向の移動手段としてはロータリーアクチュエーターにボルト、ナット等を組み合わせたものがあげられる。PC(パーソナルコンピュータ)等を使用して各一軸方向移動手段の移動情報から測定ヘッド傾斜角、測定ヘッド押込量を演算したり、逆に測定ヘッド傾斜角、測定ヘッド押込量の設定のために各移動手段の移動量を演算したりすることになる。
図7から図9において測定ヘッドの中央部の断面状態として紙と測定ヘッド面の接触状態を説明した。測定ヘッドの測定面方向から見た場合、測定ヘッド面の形状が先に説明したような円形の場合は、紙とヘッド面はヘッド面の最も上流側の1点から順次接するため、ヘッド面の川下側に行くにつれて、紙から離れる位置関係にある。実際にはフォイル効果によりほぼ全面に亘って紙とヘッド面が接触するが、厳密には測定ヘッドの面内で圧力分布が生じる。図10は円形測定ヘッドの場合の圧力分布を示す図であり、R1は最も負圧の強い領域、R2は2番目に負圧の強い領域、R3は3番目に負圧の強い領域を示している。図10からわかるように測定ヘッドの下流側や側面側に行くほど負圧の程度が小さくなるので、両側からエアーがヘッド面上に入ってくる傾向が強くなり、ヘッドの両側端側では接触不足になるおそれがある。そこで、このような傾向をより小さくする上で、紙と測定ヘッド面が最初に1点から接するのではなく、線で接するようにすれば紙の流れに対して直角方向でより一層圧力分布が均一になりより好ましい。図11は正五角形測定ヘッドの場合の圧力分布を示す図である。図11に示すように、正五角形測定ヘッドの場合、最も負圧の強い領域R1の範囲がヘッド幅全体に広がり、より均一な接触が得られやすくなる。これは紙の流れの上流側でヘッドと紙が接触することにより、ヘッドの幅全体に亘って負圧になるためであると考える。このように、測定ヘッド上流側の端辺が最初に紙に接する接触端辺を起点とし、誘電体共振器1〜5の範囲を含む区間にわたりシート状物が測定ヘッドに均一に接触することが好ましい。
さらに、発明者らは複数の誘電体共振器の個別の異方性感度の差を補正するために補正係数を求め、これを適用することで感度補正を行っている。そのためには測定ヘッド自体を回転させる必要がある。外形形状が円形の測定ヘッドの場合はそのまま回転させることが容易であるが、前述の通り外形形状が円形の測定ヘッドでは、シート状物を測定ヘッドに均一に接触させることが困難である。
ここで補正係数測定について簡単に説明する。補正係数測定とは、測定対象試料の配向を求めるオンライン配向測定方法における次のステップを備えた補正係数算出方法である。走行中の紙について補正係数を行う場合を例にとると、まず、試料の一面側のみに配置されたn個の誘電体共振器を備える測定ヘッド上に何も置かない状態で、各誘電体共振器の共振周波数を測定することによりブランク時共振周波数を求める。次に、走行中の測定対象試料表面に測定ヘッドを接触させた状態で、各誘電体共振器の共振周波数を測定する。次に測定ヘッドを一旦測定対象試料表面から離して回転させ、回転完了後に再び測定対象試料表面に測定ヘッドを接触させるか、もしくは、測定ヘッドを測定対象試料表面に接触した状態を維持したまま測定ヘッドを連続的または断続的に回転させて各誘電体共振器の共振周波数を測定する。これらの測定により得られた各誘電体共振器の全ての共振周波数と、ブランク時共振周波数との差から、各誘電体共振器の各回転角でのシフト量を求める。算出された各誘電体共振器の各回転角でのシフト量の平均値を測定領域毎に算出し、その平均値と各誘電体共振器のシフト量を演算し、領域毎に規格化した各誘電体共振器のシフト量を算出し、次にその各規格化した各誘電体共振器のシフト量を誘電体共振器毎に平均化して、各誘電体共振器の補正係数が算出される。
図12は、図に示した矢印の紙の流れ方向に配向した紙を(a)に示した配置のマイクロ波誘電体共振器により測定した場合の配向パターンを(b)に示したものである。図12のように、5つのヘッドの各領域の定位置をそれぞれポジションA、ポジションB、ポジションC、ポジションD、ポジションEと呼ぶ。補正係数測定で得られた、ポジションごとに算出された各誘電体共振器の各回転角でのシフト量に、算出された各誘電体共振器の補正係数を演算して補正後のシフト量とすると共に、各ポジションでの補正後のシフト量の平均値を算出し、ポジションごとに補正後のシフト量及びその平均値を表示すれば、測定の精度の目安をあらかじめ得ることが可能となる。例えば、5つの誘電体共振器を用いて図12(b)に示したような配向パターンが得られる場合、5つのヘッドの定位置であるポジションAからEに対して、共振周波数のシフト量(Δf)は理論上、図13に示したような形になる。図13は測定ヘッドと紙面の接触状態が均一な場合に5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量の一例である。
一方、図14は測定ヘッドと紙面の接触状態が不均一な場合に5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量の一例である。シート状物と測定ヘッドの接触が不均一になると、図13のような理想的なパターンにはならず、配向角度および配向度が正しく算出されない場合があった。そこで図4の正五角形測定ヘッドを採用した場合、測定対象のシート状物の移動方向に対して直線状の接触端辺が垂直に圧接するような状態をそれぞれの水準で満たすように、360度を5で除した72度毎にヘッドを回転させれば、均一接触を保ちながら補正係数を求めることができるので、図13のような理想的なグラフ形状に帰着することが可能となる。
まず、図1の誘電体共振器を5個72度ずつ配置した円形測定ヘッドに対し、図2に示した信号処理回路を組み合わせ、実際に走行している抄紙後の紙に測定ヘッドを接触させ、リアルタイムで紙の繊維配向を測定した。紙との接触手段としてはフォイル効果を用い、米坪62.5g/mの試料について、各誘電体共振器の共振周波数のシフト量を72度ごと取得した後、ポジションごとに共振周波数のシフト量を並び替え表示した。図15は円形ヘッドを用いた場合に5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量であり、傾斜角度0.7度、測定ヘッドの紙に対する押込量0.5mmの条件により得られた共振周波数のシフト量の一例である。
次に、図5のように、図1の誘電体共振器を5個72度ずつ配置した円形ヘッドの周囲に正五角形のリングを付加した場合において、図2に示した信号処理回路を組み合わせて同様にフォイル効果を用い測定を行った。図16は円形ヘッドの周囲に正五角形のリングを付加した測定ヘッドを用いた場合に5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量であり、米坪62.5g/mの同一試料について傾斜角度0.6度、測定ヘッドの紙に対する押込量0.8mmの条件により得られた共振周波数のシフト量の一例である。
続いて、上記測定対象である米坪62.5g/m試料を取得し、王子計測機器(株)製分子配向計(型式:MOA−3001A)を用い、取得サンプルをオフラインで測定した結果、配向角度は約15度、MOR値は約1.17程度であった。前述したように、図12(b)に示したような配向パターンが得られる場合、共振周波数のシフト量は各ポジションに対して理論上は図13に示したような形になる。これはすなわち、図3における配向角度が0度の状態での各ポジションに対する共振周波数のシフト量をシミュレーションした結果となる。これと同様に、配向角度15度の場合のシミュレーション結果を図17に示す。図17は配向角度15度の場合について、5つのポジションにおいて各誘電体共振器が示す共振周波数のシフト量をシミュレーションにより求めたグラフである。
図13に示した配向角度0度の状態のシミュレーション結果は共振周波数のシフト量の数値がPosA<PosC=PosD<PosB=PosEとなる。一方、図17の結果は、図13を基準とすると相対的にPosA、C、Eが上がり、PosB,Dが下がる結果となる。これを踏まえ、図15および図16を見ると、図15は測定ヘッド面の最も上流側の1点から順次試料に接触する影響から、川上側つまりPosAの接触が相対的に他より強くなり、本来得られるべきグラフ形状からやや逸脱した結果となっている。一方、図16を見ると、PosAの共振周波数のシフト量が他の4点に対して相対的に下がり、シミュレーション結果とより近いグラフ形状を示している。このことから、測定ヘッドの平面状接触面に面一になるように5角形リングを施した測定ヘッドでは、測定ヘッド面の上流から川下側の誘電体共振器にかけてほぼ均一に試料が接触していることが確認された。つまり、紙の繊維配向の実測においても、配向角度および配向度の測定精度が向上したことが確認されたということになる。
本発明によれば、シート状物の物性を測定する装置において接触型の検出部の検出面を測定対象であるシート状物と均一に安定して接触させることができ、電気抵抗等の接触型の物性の測定にも適用可能である。
1〜5 誘電体共振器
10 測定ヘッド
10a 測定ヘッド先端部
10b 測定ヘッド後端部
11 正五角形リング
12 測定ヘッド支持台
13 載置台
13a 載置台における紙の流れの下流側端部
13b 載置台における紙の流れの上流側端部
14 一軸方向の移動手段
15 設置基礎台
In 測定ヘッド傾斜角度制御手段
Po 測定ヘッド押込量制御手段
R1 最も負圧の強い領域
R2 2番目に負圧の強い領域
R3 3番目に負圧の強い領域
W 紙の経路
矢印A 紙の走行方向
矢印B 測定ヘッドの移動距離
矢印C 載置台の回動可能方向
角度α 紙の経路に対する測定ヘッドの傾斜角度
特許第4124147号公報 特開2008−304415

Claims (3)

  1. n個の検出部とそれを保持する測定ヘッドを有するシート状物の物性測定装置において、測定ヘッドの外形形状を正n角形とし、正n角形の一辺をシート状物の走行方向と垂直になる状態に測定ヘッドを配して測定することを特徴とするシート状物の物性測定装置。
  2. 測定ヘッドの位置制御手段として、測定ヘッドとシート状物との接触面から測定ヘッドを押し込む押込量制御手段と測定ヘッドとシート状物との接触状態から測定ヘッドを傾斜させる傾斜角度制御手段と測定ヘッドとシート状物との接触面で測定ヘッドを(360/n)度ずつ回転させる回転手段を有することを特徴とする請求項1に記載のシート状物の物性測定装置。
  3. n個の検出部は誘電体共振器であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート状物の物性測定装置。
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