JP2011032619A - 白水回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】抄紙機における歩留まり低下の際の白水濃度増加時においてもディスクフィルタタイプ白水処理設備における白水処理量の向上と回収白水の清澄度の向上とが可能な白水回収方法を提供する。
【解決手段】製紙工程における白水回収において、白水に製紙原料を混合した後にカチオン性の電荷を有する高分子凝集剤を添加して、ディスクフィルタタイプの白水回収設備を用いて、好ましくは前記高分子凝集剤の添加量は白水と製紙原料の混合物に対して、0.1〜50ppmとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、製紙工程におけるろ過式ディスクフィルタタイプ白水回収設備における白水回収方法に関し、更に詳しくはディスクフィルタタイプ白水回収設備において処理白水量を増加し、かつ白水の清澄度を高める白水回収方法に関するものである。
製紙工程における抄紙機ではパルプ繊維、無機填料等からなる含水原料をワイヤー上で脱水して湿紙を形成した後に、プレスロールで搾水を行なっている。この脱水・搾水工程等で得られるろ水を白水と呼び、水以外の主要成分として紙の原料となるパルプ繊維及び填料からなる。
製紙工程では原料及び水質資源の有効活用かつ環境配慮の観点から白水の循環利用を行なっており、工程より発生した白水を抄紙機前の製紙原料の希釈に利用するほか、白水回収設備により固液分離回収のうえで原料及び水質資源として再利用している。固液分離回収した白水については、固形分は原料として、水質資源は回収した白水の清澄度に応じてパルプ化工程もしくは製紙工程における原料の希釈水、工程損紙等を解繊する際の希釈水、抄紙機の洗浄用シャワー水等として再利用している。したがって、固液分離回収により回収される水質資源として白水は、一定レベル以上の清澄度が要求される。
固液分離を行なう白水回収設備としては、加圧浮上方式、凝集沈殿方式、ろ過方式の設備が挙げられる。近年の大型抄紙機に付設する白水回収設備としては、白水の発生量が多量であることから白水処理に要する設備面積が必要となるが、設備の設置面積及び処理速度の要求に応えるべく、ろ過式の白水回収設備、特にディスクフィルタを複数枚設置して処理面積を増大したディスクフィルタタイプの白水回収設備が多く導入されている。
ディスクフィルタタイプ白水回収設備による白水の固液分離の原理は以下に示すとおりである。すなわち、ワイヤーをはったディスクフィルタを複数枚設置した装置に対して処理原料を流入し、真空ポンプ等で発生させたディスクフィルタ内外の圧力差によりディスクフィルタ上にパルプ層を形成させることで、パルプ層によるろ過補足で白水中の繊維分及び填料分等の固形分の原料資源と、ろ水を清澄度の高い水質資源として回収する。ここで、ディスクフィルタ上のパルプ繊維によるマット形成が不十分な間に回収される比較的SS濃度の高いろ過白水をクラウディ白水、マットが十分に形成されてから回収するろ過白水をクリア白水といったように清澄度の違いで分別回収を行なう場合もある。清澄度の高い回収ろ過白水についてはさらに2次処理を施すことで清水の代替利用を促進して水質資源の有効活用を行なっている。
ディスクフィルタタイプ白水回収設備で白水の回収を促進するためには、前述の原理から処理する原料として白水中の微細成分によるフィルタの目詰まり回避及び微細成分のパルプ繊維層のマットによるろ過補足のために、処理原料には迅速なマット形成が要求される。処理能力向上につながる迅速なマット形成のためには、処理原料に対して高いろ水性が要求されるため、一般的に白水に媒介原料として微細成分よりも比表面積の大きな長繊維分を多く含有する製紙原料を配合する。ディスクフィルタ上での速やかなパルプマット層の形成の要求に対しては配合する製紙原料としては未叩解のパルプ原料が好ましいが、実際には回収後の原料を製紙用原料と使用することから、叩解後の原料を1種もしくは数種配合した原料からなる場合が一般的である。
一方、白水回収設備により、固液分離回収される白水は抄紙機より発生した白水であるために、通常は抄紙機ワイヤー上での原料歩留まりに大きく影響を受けて濃度変動を生じる。したがって、抄紙機ワイヤー上で原料歩留まりが低下した場合、白水濃度の上昇が生じて白水回収設備で処理する原料のろ水性が悪化するためにディスクフィルタにおけるパルプマット形成の遅延が生じて、原料処理量の低下及び回収白水の清澄度の悪化といった白水処理能力の低下を招く。抄紙機の高速化、高灰分原料の配合、用水のクローズド化の進行による系内への歩留まり向上剤の添加効果の阻害物質の蓄積等により抄紙機における歩留まり低下傾向は近年顕著であるとともに歩留まり変動も顕著であり、これに伴い生じる白水処理能力の低下に対する対策が望まれている。
上記の課題に対する対策として、ディスクフィルタタイプ白水回収設備において処理能力を向上させるために、処理原料のろ水性悪化に応じて原料のろ過処理面積を増加する目的でディスクフィルタの設置枚数を増やす手段もあるが、設置可能なディスクフィルタ枚数の上限は回収設備の設置時に定まっているために解決手段としては適切ではない。同じく、ろ過処理面積を増加する目的で、ディスクフィルタの回転スピードを増速する手段もあるが、設備仕様で上限が定まっており解決手段として適切ではない。
白水濃度増加を回避する手段として抄紙機のワイヤー上での原料歩留まりを向上させるために適切な歩留まり向上剤を製紙原料に添加する方法が開示されているが(特許文献1、2)、歩留まり向上剤の添加率の増加に応じて原料のフロック形成が促進され、紙製品の地合いの悪化を招くためにディスクフィルタタイプ白水処理設備の処理能力を向上させる手段としては適切ではない。
特許文献3には、白水処理設備において処理する白水に凝集剤を添加する記載があるが、ディスクタイプ白水処理設備において白水に凝集剤を添加しても処理能力向上に対しては効果が不十分であるだけではなく、微細成分を過度に凝集させることで製品に欠点等の欠陥を発生させる原因ともなる。
また、白水回収設備で処理する白水の凝集処理剤として従来硫酸バンドの添加が有効である。しかし、近年の中性抄紙化の進行にともない、古紙原料由来も含めて原料中に炭酸カルシウムを含有する場合が多く、硫酸バンドの添加処理では炭酸カルシウムが可溶化してしまい、pH変動にしたがいディスクフィルタのワイヤー上に一旦溶解したカルシウムの再析出による目詰まり等を発生する原因ともなりかねない。
特許第4046795号公報 特開2007−100254公報 特許第3635816号公報
本発明は、上記従来の問題を解決し、抄紙機における歩留まり低下の際の白水濃度増加時においてもディスクフィルタタイプ白水処理設備における白水処理量の向上と回収白水の清澄度の向上とが可能な白水回収方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、製紙工程におけるディスクフィルタタイプ白水回収設備を用いた白水回収方法において処理する白水のろ水性の向上が白水処理能力向上及び回収白水の清澄度の向上に不可欠であることを見出し、以下に述べる発明に達した。
(1)製紙工程における白水回収において、白水に製紙原料を混合した後にカチオン性の電荷を有する高分子凝集剤を添加して、ディスクフィルタタイプの白水回収設備を用いて白水を回収する白水回収方法
(2)前記高分子凝集剤の添加量は白水と製紙原料の混合物に対して、0.1〜50ppmとすることを特徴とする白水回収方法
(2)前記高分子凝集剤の添加量は白水と製紙原料の混合物に対して、0.1〜50ppmとすることを特徴とする白水回収方法
以上のように、本発明によるとディスクフィルタタイプ白水回収設備において白水処理能力が向上し、かつ清澄度の高い白水の回収が可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明をするが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
本発明で使用するディスクフィルタタイプ白水回収設備としてはインプコディスクフィルタ、オリバーディスクフィルタ、ポリディスクフィルタなどが挙げられるが、ディスクフィルタを用いる白水回収設備であれば、いずれの回収設備でも構わない。また、回収した白水の清澄度を高めるために固液分離を行なう白水回収装置を更に設置しても問題ない。
ディスクフィルタタイプ白水回収設備で処理する白水と製紙原料の混合物に添加する高分子凝集剤の化学構造に特に限定はないが、ポリアクリルアミド系重合物、アクリル系カチオン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリビニルアミン等が好適に用いられる。
ディスクフィルタタイプ白水回収設備で処理する白水と製紙原料に添加する高分子凝集剤の電荷としてカチオン性の電荷を有することが好ましく、カチオン性基の電荷密度として好ましくは0.3meq/g〜10.0meq/g、更に好ましくは0.5〜8meq/gである。カチオン性電荷を持たない凝集剤の場合、凝集を誘起する対象となるパルプ繊維のアニオン性電荷に作用することができず、凝集性が低く、ろ水性が向上しないため白水処理設備による白水処理量が増加しない。カチオン性電荷密度が10.0meq/g以上では、アニオン性の電荷を有するパルプ繊維との相互作用が強すぎ、高分子凝集剤が単独のパルプ繊維に密着した状態で吸着する形態をとり、他のパルプ繊維との相互作用による凝集性の低下を招き、処理白水量の増加につながらない。なお、上記のとおりカチオン性の電荷密度を有していれば部分的に高分子凝集剤の骨格中にアニオン性の電荷を有しても問題はない。
本発明でディスクフィルタタイプの白水回収設備で処理する白水と製紙原料の混合物に添加する高分子凝集剤の添加量は、処理原料の容量に対して0.1〜50ppmであり、好ましくは0.3〜10ppmである。添加量が0.1ppm未満では、課題を解決するにはろ水性向上能として不十分であり、50ppmを超える添加は微細成分の過度の凝集を生じることで系内汚れを誘発するために相応しくない。
本発明で添加する高分子凝集剤の粘度平均分子量は、500万〜2500万であり、好ましくは750万から2000万である。分子量が500万以下では凝集剤を添加しても凝集力が弱く、ろ水性が向上しないため白水処理能力の向上につながらない。分子量が2500万以上では凝集力向上には寄与するものの、添加した高分子凝集剤の分散性が優れず、微細成分の不当凝集を生じることで系内汚れを誘発するだけではなく、添加設備の汚れ、詰まり等を誘発するため相応しくない。
ディスクフィルタタイプ白水回収設備で処理する対象物は白水に製紙原料を配合して成り、この際、製紙原料の配合量は白水の容量に対して絶乾質量%として0.1%から1.0%が好ましく、更に好ましくは0.2から0.5%である。製紙原料の配合量が0.1%以下の場合は、ディスクフィルタにおいて形成されるパルプのマット層の厚みが薄いために白水中に含まれる微細成分のろ過補足効果が低下して、回収白水の清澄度が悪化するために相応しくない。製紙原料の配合量が1.0%以上の場合は、ディスクフィルタにおいて形成されるパルプのマット層の厚さが厚くなり白水中の微細成分のろ過補足効果は高いが、処理原料濃度が増加するためにろ水性が悪化し、迅速なマット形成がされず白水処理能力が低下するため相応しくない。
本発明の方法を適用するにあたり、ディスクフィルタタイプ白水回収設備で処理する白水に配合される製紙原料は特に限定されるものではなく、ディスクフィルタタイプ白水回収設備が付設されていれば、抄紙機で抄造する品種としては上質紙、中質紙、ダンボール用ライナー原紙、中芯原紙、白板紙などいずれでも良い。この際、白水に配合される製紙原料のパルプ繊維は特に限定されず、通常用いられている公知の製紙用パルプに適用でき、サルファイトパルプ、クラフトパルプ、ソーダパルプ等のケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、メカニカルパルプ等木材パルプ、或いはこうぞ、みつまた、麻などの非木材パルプ、古紙を処理して製造される脱墨パルプ、ダンボール古紙等のいずれでもよく、未晒パルプでも晒パルプでもよい。上記、製紙用パルプの配合比率は抄造品種の要求品質に応じて適宜決められる。
ディスクフィルタタイプ白水回収設備が付設されていれば、紙の製造方法は公知の湿式抄紙機、例えば長網式抄紙機、オントップ型抄紙機、ギャップフォーマ型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機を目的に応じて適宜選択して行われるが、これに限るものではない。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に制約されるものではない。特に断りのない限り、実機及び比較例中の薬品添加率及び灰分に関する%は質量%を示す。効果の判定においては以下に示す評価方法及び判断基準に基づいた。
(白水処理能力)
実施例及び比較例に用いたポリディスクフィルタ白水回収設備において、処理原料に薬品等を添加せずにSS濃度3000ppmの白水を処理する状況下の白水回収設備の液面レベルを100%とした。実施例及び比較例の実施時は、白水に配合する製紙原料の配合量を変更は行なわず、更にディスクフィルタの回転速度も一定速度とした。すなわち、処理原料のろ水性向上による白水処理能力向上のみが液面レベルを低下する要因となりうることから、白水処理能力の指標とした。
(白水の清澄度)
実施例及び比較例に用いたポリディスクフィルタ白水回収設備において、パルプマット形成初期に得られる半濁ろ過白水をクラウディ白水として、パルプマット形成後に得られるろ過白水をクリア白水として回収を行い、ろ過白水のSS濃度をAdvantec社製5Cろ紙ろ過測定することで白水の清澄度の指標とした。
(系内汚れ)
ポリディスクフィルタおよび抄紙機の汚れ状況より判断し、汚れが認められない場合及び汚れが軽微な場合は○とし、重度の場合は×、その中位に位置する場合は△として評価した。
<実施例1>
塗工原紙抄造における抄紙機からの白水を固液分離白水回収設備としてポリディスクフィルタを用いて処理した。白水のSS濃度は3000ppmであり、SS成分中の灰分率は60%であった。ポリディスクフィルタで処理する際に白水に配合する製紙原料として塗工原紙抄造時原料である叩解後のLBKP、NPKP、DIPを配合比45/15/40で配合した原料を配合した。白水に対する製紙原料の配合量は白水の容量に対して0.3%とした。ポリディスクフィルタで処理する白水と製紙原料とを配合した原料に対して高分子凝集剤としてカチオン性の電荷を有するハイモロックND−260(ハイモ(株)製)を1ppm添加した。
<実施例2>
高分子凝集剤の添加率を0.5ppmとした以外は、実施例1と同様の条件でポリディスクフィルタを運転して評価した。
<実施例3>
高分子凝集剤の添加率を10ppmとした以外は、実施例1と同様の条件でポリディスクフィルタを運転して評価した。
<実施例4>
高分子凝集剤の添加率を0.05ppmとした以外は、実施例1と同様の条件でポリディスクフィルタを運転して評価した。
<実施例5>
高分子凝集剤の添加率を60ppmとした以外は、実施例1と同様の条件でポリディスクフィルタを運転して評価した。
<比較例1>
高分子凝集剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様の条件でポリディスクフィルタを運転して評価した。
<比較例2>
添加する高分子凝集剤をアニオン性の電荷を有するハイモロックFA−230(ハイモ(株)製)とした以外は、実施例1と同様の条件でポリディスクフィルタを運転して評価した。
<比較例3>
高分子凝集剤を製紙原料配合前の白水に添加した以外は、実施例1と同様の条件でポリディスクフィルタを運転して評価した。
実施例1〜5、及び比較例1〜3で得られた結果を表1に示した。
Figure 2011032619
表1から明らかな如く、カチオン性高分子凝集剤をポリディスクフィルタで処理する原料に添加した実施例1、2、3、4、5では高分子凝集剤を添加していない比較例1に対してポリディスクフィルタの処理能力が向上し、液面レベルの低下、クラウディおよびクリア白水の清澄化が認められている。一方、高分子凝集剤の電荷がアニオン性である場合(比較例2)、カチオン性高分子凝集剤の添加位置が異なる場合(比較例3)は、ポリディスクフィルタの処理能力の大幅な向上が認められない。以上のように、本発明におけるディスクフィルタタイプ白水処理設備で処理する白水と製紙原料とを配合した原料にカチオン性高分子凝集剤を添加することによる白水処理能力の向上効果は明らかである。

Claims (2)

  1. 製紙工程における白水回収において、白水に製紙原料を混合した後にカチオン性の電荷を有する高分子凝集剤を添加して、ディスクフィルタタイプの白水回収設備を用いて白水を回収することを特徴とする白水回収方法
  2. 前記高分子凝集剤の添加量は白水と製紙原料の混合物に対して、0.1〜50ppmとすることを特徴とする白水回収方法
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