JP2011032370A - 鉄鉱石含有コークス、及び該鉄鉱石含有コークスの製造方法 - Google Patents

鉄鉱石含有コークス、及び該鉄鉱石含有コークスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスを、より低コストで製造すること。
【解決手段】本発明の鉄鉱石含有コークスは、褐炭と、鉄鉱石と、石炭の溶剤抽出物とを含む混合物を乾留して得られることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、鉄鉱石含有コークス、及び該鉄鉱石含有コークスの製造方法に関するものである。
コークスの用途の一つとして、コークスを用いた銑鉄の製造がある。かかる銑鉄の製造は、具体的には、高炉内にコークス層と鉄鉱石層とを層状に重なるように装入し、次いで羽口から高温の空気を吹き込んでコークスを燃焼させ、このとき発生した還元性ガスで鉄鉱石中の酸化鉄を還元して行われる。
近年、鉄鉱石を内装した鉄鉱石含有コークス(フェロコークスと呼ばれることがある。)を鉄鉱石層に配合して、銑鉄を製造する技術が開発されている。鉄鉱石層に鉄鉱石含有コークスを配合することで、鉄鉱石含有コークスが燃焼して発生する還元性ガスによって鉄鉱石層中の酸化鉄の還元が促進される(還元剤として作用する)と共に、鉄鉱石含有コークス中の鉄成分の触媒作用により銑鉄の生産効率が向上する(熱源として作用する)と考えられている。
鉄鉱石含有コークスの製造方法としては、炭化室壁部がシャモット煉瓦で構成される縦型シャフト炉を用い、炭材(石炭)と鉄鉱石とを予めブリケット状に成形した成形体を縦型シャフト炉の頂部から装入し、次いで成形物を乾留した後、下部から抜き出す連続式コークス製造方法がある。
しかしながら、縦型シャフト炉を用いた製造方法では、乾留過程で成形体に荷重がかかるため、コークス製造の安定操業という点で問題がある。すなわち、一般的な鉄鉱石含有コークスの製造には、炭材として原料炭(コークス製造の原料に使用できる粘結性のある石炭)が用いられるが、この原料炭は300〜500℃で軟化溶融するため、成形物の乾留過程での加熱によって変形、癒着してしまい、炉を閉塞する場合がある。
そこで、成形物が炉を閉塞することを防ぐために、上記原料炭に代えて軟化溶融しない石炭を用いる方法もあるが、この場合には鉄鉱石とコークスが分離し易くなる(強度が十分な鉄鉱石含有コークスが得られ難くなる)という別の問題が生じる。というのも、鉄鉱石とコークスの親和性は本来低く、また、成形物の乾留過程において鉄鉱石は部分的に還元されて収縮するため、もともと親和性の弱い鉄鉱石とコークスの界面は一層脆弱化する傾向がある。そして、乾留過程で軟化溶融しない石炭を用いれば、鉄鉱石とコークスとの親和性(接着性)を高める要素が不足する。なお、鉄鉱石含有コークスには、上記の還元剤や熱源としての役割以外に、高炉内の通気をよくするスペーサーとしての役割も期待されているため、十分な強度を有している(鉄鉱石とコークスとが分離し難い)ことが求められる。
そこで、炉の閉塞を防ぎつつ十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスを得るために、これまでに、軟化溶融しない石炭である半無煙炭や無煙炭を炭材として用いるとともに、鉄鉱石とコークスとの親和性(接着性)を高めるために、軟化溶融する石炭(粘結炭等)やバインダーを併用する方法がこれまでに開示されている。例えば特許文献1には、半無煙炭や無煙炭と軟化溶融する石炭との配合炭と、鉄鉱石とを用いる鉄鉱石含有コークスの製造方法が開示されている。また、特許文献2や3には、半無煙炭や無煙炭等の一般炭と鉄鉱石と、所定の軟化点を有するバインダーとを用いる鉄鉱石含有コークスの製造方法が開示されている。
しかしながら、ここで用いる無煙炭や半無煙炭はいずれも高価であり、製造コストが高くなるという問題があった。また、バインダーを用いても、十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスが得られない場合があった。
特開2008−56791号公報 特開2008−56777号公報 特開2008−56778号公報
本発明は上記の様な事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスを、より低コストで製造することにある。
上記課題を解決し得た本発明の鉄鉱石含有コークスは、褐炭と、鉄鉱石と、石炭の溶剤抽出物とを含む混合物を乾留して得られることを特徴とする。
本発明で用いる褐炭は軟化溶融し難いため、シャフト炉を用いて乾留しても、炉を閉塞し難い。また、石炭の溶剤抽出物を併用するため、褐炭由来のコークスと鉄鉱石の親和性を高めることができる。さらに、褐炭は資源埋蔵量が豊富で安価である上、石炭の溶剤抽出物も褐炭等の低品位炭を用いて得られるため、製造コストを下げることができる。
なお、石炭は、一般に無煙炭、瀝青炭(強粘結炭、粘着炭、弱粘結炭、非粘結炭)、褐炭などに分類されているが、その定義は必ずしも明確ではない。そこで、本明細書では、これらを炭素含有率(d.a.f)で分類するものとする。炭素含有率(d.a.f.=dry ash free)とは、石炭の水分と灰分を除いた有機質(C、H、N、S、O)に対する炭素の含有率(質量%)をいい、JIS M8819に準じて測定することができる。
かかる分類によれば、無煙炭は炭素含有率(d.a.f.)91%超の石炭、瀝青炭は炭素含有率(d.a.f.)が78%以上91%以下の石炭、褐炭は炭素含有率(d.a.f.)が78%未満の石炭に相当する。
本発明では、前記褐炭100質量部に対する前記溶剤抽出物の配合量が10〜100質量部であることが好ましい実施態様である。また、本発明では、前記混合物が、さらに瀝青炭を含んでもよい。
さらに、前記溶剤抽出物のギーセラー最高流動度(logMF)が2以下であることが好ましい実施態様である。
石炭の溶剤抽出物の軟化開始温度、流動性、及び揮発分量を調整することにより、鉄鉱石含有コークスの強度を十分に高くすることができると考えられる。
本発明には、少なくとも褐炭と、鉄鉱石と、石炭の溶剤抽出物とを混合、成形して成形物を得る工程と、前記成形物を乾留する工程とを含むことを特徴とする鉄鉱石含有コークスの製造方法も包含される。
本発明の製造方法は、前記乾留する工程を、シャフト炉を用いて行うことが好ましい実施態様である。
本発明の鉄鉱石含有コークスによれば、炭材として褐炭を用いるため、低コストで鉄鉱石含有コークスを製造することができる。また、石炭の溶剤抽出物(より好ましくは、軟化開始温度、流動性を調整した石炭の溶剤抽出物)を併用するため、強度が十分な鉄鉱石含有コークスを得ることができる。
本発明の鉄鉱石含有コークスは、褐炭と、鉄鉱石と、石炭の溶剤抽出物とを含む混合物を乾留して得られることを特徴とする。
本出願人は、これまでに、石炭の溶剤抽出物について開示している(特許第4284314号、特開2009−144130号公報)。そして、今回、かかる溶剤抽出物をバインダーとして用いれば、資源埋蔵量が豊富で安価な褐炭から、十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスが得られることを見出して本発明を完成した。
以下、本発明の鉄鉱石含有コークスについて詳細に説明する。
(褐炭)
本発明で炭材として用いる褐炭は、上記の通り、炭素含有率(d.a.f.)が78%未満の石炭であり、例えば、ビクトリア炭、ノースダコタ炭、ベルガ炭等が挙げられる。また、本出願人が既に開示している改質褐炭(特開平7−233383号公報)を用いてもよい。かかる改質褐炭は含水量が少なく輸送コストが抑えられるとともに、褐炭表面が油膜で被覆されているため自然発火し難く取り扱い性にも優れている。これらの褐炭は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。炭材として褐炭を用いることにより、鉄鉱石含有コークスの製造コストを下げることができる。また、軟化溶融し難いため、シャフト炉を用いて乾留しても、炭材が変形、癒着して炉を閉塞し難い。
(他の炭材)
本発明の鉄鉱石含有コークスは、製造コストを下げる観点から、炭材として褐炭のみを用いて製造することが好ましいが、他の炭材を併用してもよい。他の炭材としては、炭素含有率(d.a.f.)が78%以上91%以下の瀝青炭が挙げられる。これらの炭材は、比較的安価に入手できる。また、鉄鉱石含有コークスを製造する際の乾留過程で適度に軟化溶融する炭材を選べば、強度がより十分な鉄鉱石含有コークスを製造することができる。
他の炭材の配合量は、褐炭100質量部に対して、200質量部以下(より好ましくは170質量部以下、さらにこのましくは150質量部以下)が好ましい。他の炭材の配合量が200質量部を超えると、鉄鉱石含有コークスの製造コストが上がるからである。
本発明で用いる炭材(褐炭、および他の炭材)の粒径は、その70質量%以上(より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上)が3mm以下であることが好ましい。粒径3mmを超える炭材が30質量%を超えて存在する場合には、得られる鉄鉱石含有コークスの強度が低下することが多いからである。
なお、炭材の粒径は、ふるい分け法によって測定した。詳細には、目開き3mmのふるいを用いて炭材をふるい分け、ふるい上残量(オーバーサイズ)、またはふるい下通過(アンダーサイズ)の全体に対する比率から求めた。
(鉄鉱石)
本発明で用いる鉄鉱石の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、赤鉄鉱(ヘマタイト;Fe)、磁鉄鉱(マグネタイト;Fe)、褐鉄鉱(Fe・nHO)等が挙げられる。またオキシ水酸化鉄(FeOOH)を用いてもよい。この場合、予め脱水して酸化鉄にして使用することが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
鉄鉱石の粒径は、炭材(褐炭、および他の炭材)の粒径が上記範囲にある場合、200μm以下(より好ましくは170μm以下、さらに好ましくは150μm以下)が好ましい。鉄鉱石の粒径が200μmを超える場合には、鉄鉱石の界面に働く応力が大きくなるため、得られる鉄鉱石含有コークスの強度が低下する場合がある。なお、鉄鉱石の粒径の下限については特に限定されるものではなく、小さいほど良いが、例えば30μm(より好ましくは50μm、さらに好ましくは70μm)であることが好ましい。粒径が30μm未満の鉄鉱石を得るには手間がかかり、製造コストが上がるからである。
鉄鉱石の配合量については、特に限定されるものではないが、炭材100質量部に対して10質量部以上(より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上)が好ましく、100質量部以下(より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下)が好ましい。
(石炭の溶剤抽出物)
本発明で用いる石炭の溶剤抽出物は、褐炭由来のコークスと鉄鉱石との接着性を向上するのに適している。このため、この溶剤抽出物を用いて製造される本発明の鉄鉱石含有コークスは、炭材として軟化溶融し難い褐炭を用いても、十分な強度を有することができる。石炭の溶剤抽出物が、褐炭由来のコークスと鉄鉱石との接着性向上に適している理由は明らかではないが、溶剤抽出物が実質的に灰分を含まず、また適度な軟化開始温度、流動性、及び揮発分量を有しているからであると考えられる。
なお、これまでバインダーとして一般的に用いられてきたタールやピッチ、糖蜜は、褐炭由来のコークスと鉄鉱石の接着性を高めることができない。これら公知のバインダーは炭化収率が低く、また、熱分解し易いため乾留後強度が期待できないからである。
溶剤抽出物の配合量は、炭材(褐炭の単独量、あるいは褐炭と他の炭材との合計量)100質量部に対して、5質量部以上(より好ましくは15質量部以上)が好ましく、100質量部以下(より好ましくは70質量部以下)が好ましい。溶剤抽出物の配合量が5質量部未満の場合には、得られる鉄鉱石含有コークスの強度を十分に向上できない場合がある。溶剤抽出物の配合量が100質量部を超える場合には、鉄鉱石含有コークスの製造コストが上がる場合がある。
特に、炭材として褐炭のみを用いる場合には、溶剤抽出物の配合量は、炭材(褐炭)100質量部に対して25質量部以上(より好ましくは30質量部以上)が好ましく、60質量部以下(より好ましくは50質量部以下)が好ましい。また、炭材として褐炭以外に他の炭材(瀝青炭)を併用する場合には、溶剤抽出物の配合量は、炭材(褐炭と他の炭材との合計量)100質量部に対して5質量部以上(より好ましくは10質量部以上)が好ましく、30質量部以下(より好ましくは20質量部以下)が好ましい。
なお、本発明で用いる石炭の溶剤抽出物は、抽出工程、固液分離工程、溶剤除去工程を経て製造することができる。また、溶剤除去工程の後に、加熱操作を行ってもよい。以下、溶剤抽出物の製造方法について詳細に説明する。
<抽出工程>
抽出工程では、石炭と溶剤とを接触させて、石炭に含まれる溶剤可溶成分を溶剤中に溶出させて抽出する。
可溶成分の抽出に用いる溶剤としては、極性溶剤や芳香族溶剤を使用できる。極性溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドンやピリジン等が挙げられる。芳香族溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の1環芳香族化合物や、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)等の2環芳香族化合物、アントラセン等の3環以上の芳香族化合物等が挙げられる。2環芳香族化合物には、その他脂肪族側鎖をもつナフタレン類、また、これにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖をもつアルキルベンゼンが含まれる。
本発明では、上記極性溶剤や芳香族溶剤のなかでも、水素非供与性の溶剤を用いることが好ましい。かかる水素非供与性の溶剤は、主に石炭の乾留生成物から精製した2環芳香族化合物を主とする石炭誘導体であり、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、タール軽油などが挙げられる。水素非供与性溶剤は、加熱状態でも安定であり、また石炭との親和性に優れているため、溶剤に抽出される可溶成分の割合を高くすることができる。また、使用後は蒸留等の方法で容易に回収可能なため、溶剤抽出物の製造工程で循環使用でき、経済性の向上を図ることができる。
上記溶剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、可溶成分の抽出に用いる溶剤は、沸点が180〜330℃(特に、200〜250℃)のものが好ましい。沸点が低過ぎると、抽出工程での可溶成分の抽出率が低下する場合がある。また、抽出工程や、後述する固液分離工程での必要圧力が高くなる場合がある。更に、溶剤を回収するときに揮発による損失が大きくなり、溶剤の回収率が低下する場合がある。一方、沸点が高過ぎると、後述する固液分離工程で分離される液体分からの溶剤の除去や、可溶成分を抽出した後の未溶解石炭に付着している溶剤を除去することが困難となり、溶剤の回収率が低下する場合がある。
可溶成分の抽出に用いる石炭の種類は特に限定されないが、安価な石炭であることが好ましい。これにより、溶剤抽出物を安価に製造できるため、経済性の向上を図ることができる。もちろん、瀝青炭等の高品位炭を使用しても良い。
かかる安価な石炭としては、軟化溶融性をほとんど持たない非粘結炭や弱粘結炭の他、一般炭、低品位炭等が挙げられる。ここで低品位炭とは、通常20質量%以上の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭のことである。このような低品位炭には、例えば、褐炭、亜炭、亜瀝青炭が含まれる。褐炭には上記の種類があり、また、亜瀝青炭には、例えば、西バンゴ炭、ビヌンガン炭、サマランガウ炭等がある。低品位炭は上記例示のものに限定されず、多量の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭は、いずれも本発明のいう低品位炭に含まれる。
抽出工程では、石炭から可溶成分を抽出し易くするために、石炭を、例えば、直径5mm程度以下に粉砕しておくことが好ましい。
抽出工程では、石炭からの可溶成分の抽出率を高めるために石炭と溶剤とをスラリー状に混合することが好ましく、この混合物を攪拌しつつ、スラリーを加熱することがさらに好ましい。
抽出温度は、例えば、300〜420℃(特に350〜400℃)程度に設定することが好ましい。抽出温度が低過ぎると、石炭に含まれる易ガス化成分を石炭から除去できない上に、石炭を構成する成分の分子間結合力を弱めることが不十分となって、石炭に含まれる可溶成分の抽出率が低くなる場合がある。一方、抽出温度が高過ぎると、石炭が熱分解して生成したラジカルの再結合が起こるため、石炭から可溶成分を抽出するときの抽出率が低くなる場合がある。
なお、抽出工程は、溶剤が沸騰しないように加圧して行うことが好ましく、通常、0.8〜2.5MPa(特に、1.5〜2MPa)程度の範囲に調整すればよい。
抽出時間は、例えば、10〜60分程度とすればよい。抽出時間が長過ぎると、抽出した可溶成分の熱分解反応が進行し、ラジカル重合反応が進むため可溶成分の抽出率が低下する場合がある。
スラリーを加熱して抽出工程を行う場合には、例えば、不活性ガス(例えば、窒素)の存在の下で行うことが好ましい。加熱抽出の際に溶剤が酸素と接触すると発火する恐れがある。
<固液分離工程>
固液分離工程では、上記抽出工程で石炭から可溶成分を抽出した後、未溶解石炭(溶剤に可溶な成分が抽出されて残った石炭)を分離し、液体分を回収する。この液体分は、石炭から抽出した可溶成分と、抽出に用いた溶剤で構成されている。
固液分離する方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよく、例えば、各種の濾過法、遠心分離法、重力沈降法が挙げられる。なお、濾過法では、濾過フィルターの濾過量が制限されることから、大量の未溶解石炭を分離できない場合がある。また遠心分離法では、未溶解石炭による閉塞が起こり易く、工業的に実施することが困難な場合がある。一方、重力沈降法によれば、重力沈降槽の上部からは液体分を、下部からは未溶解石炭を得ることができ、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適しているため好ましい。
なお、固液分離工程における溶剤の温度と固液分離時の圧力は、上記抽出工程で設定した温度および圧力と同じ範囲に設定することが好ましい。原料の石炭から溶出した溶質の再析出を防ぐためである。
<溶剤除去工程>
溶剤除去工程では、上記固液分離工程で得られた液体分から溶剤を分離する。これにより、灰分の濃度が少ない溶剤抽出物を得ることができる。なお、灰分とは、溶剤抽出物を815℃で灰化したときの残留無機物(ケイ酸、アルミナ、酸化鉄、石灰、マグネシア、アルカリ金属など)をいう。本発明では、得られる鉄鉱石含有コークスの性能に影響しない範囲で溶剤抽出物中に灰分が数%程度含まれていてもよいが、かかる灰分の含有率は5000ppm以下(より好ましくは2000ppm以下)(質量基準、以下同じ)であることが好ましい。
溶剤を分離する方法としては、一般的な蒸留法や蒸発法(スプレードライ法等)を用いることができる。なお、本発明では、分離して回収した溶剤を抽出工程で用いる溶剤の一部として再利用することが好ましい。
<加熱工程>
本発明では、上記溶剤除去工程を経て得られた溶剤抽出物を用いて鉄鉱石含有コークスを製造してもよいが、この溶剤抽出物をさらに加熱してもよい。これにより、溶剤抽出物の軟化開始温度や流動性を調整することができる。また、併せて、揮発分量を調整することもできる。
石炭の溶剤抽出物の軟化開始温度や流動性を調整することにより、褐炭と鉄鉱石の親和性が高まって、コークスと鉄鉱石との接着性がより一層向上すると考えられる。併せて、石炭の溶剤抽出物に含まれる揮発分量を調整することにより、かかる揮発分に起因して、鉄鉱石含有コークスに膨れや亀裂などの欠陥が生じて、鉄鉱石含有コークスの強度の低下を防ぐことができると考えられる。
加熱工程では、得られた溶剤抽出物を加熱して、溶剤抽出物の軟化開始温度を180℃以上(より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)に調整することが好ましい。また、ギーセラー最高流動度(logMF)を2.0以下(より好ましくは1.9以下、さらに好ましくは1.8以下)に調整することが好ましい。軟化開始温度が180℃に満たない場合や、ギーセラー最高流動度(logMF)が2.0を超える場合には、乾留中に成形体が変形したり割れる可能性が高まる。
さらに、揮発分を、24質量%〜35質量%(より好ましくは、25質量%〜32質量%)に調整することが好ましい。溶剤抽出物の揮発分をかかる範囲に調整することにより、揮発分に起因して鉄鉱石含有コークスに膨れや亀裂が生じるのを防ぐことができるからである。なお、かかる揮発分は、JIS M8812に定められた方法により測定することができる。
加熱する方法は特に制限はなく、例えば、溶剤抽出物を熱的あるいは重合により高分子量化するか、分子量の比較的小さい成分を蒸留で除去するか、あるいはその両方を行う方法が挙げられる。加熱処理は、不活性雰囲気中、あるいは減圧下で行ってもよい。
加熱処理条件は、得られる溶剤抽出物の軟化開始温度や流動性が上記範囲になるように、適宜設定して行えばよく、例えば、常圧空気中、100〜200℃(より好ましくは130〜170℃)で5分〜15分加熱して行う態様が挙げられる。
(鉄鉱石含有コークスの製造方法)
本発明の鉄鉱石含有コークスは、上記褐炭等の炭材と、鉄鉱石と、石炭の溶剤抽出物とを混合、成形して成形物を得る工程と、前記成形物を乾留する工程を経て製造することができる。以下、本発明の鉄鉱石含有コークスの製造方法について詳細に説明する。
<混合工程>
本発明では、先ず炭材と、鉄鉱石と、石炭の溶剤抽出物とを混合する。均一な混合物を得るためである。
炭材と鉄鉱石と溶剤抽出物の混合方法は、特に限定されるものではなく、炭材と鉄鉱石と溶剤抽出物との混合を同時に行う方法の他、炭材と鉄鉱石との混合物にさらに溶剤抽出物を添加して混合する方法、炭材と溶剤抽出物との混合物にさらに鉄鉱石を添加して混合する方法、あるいは、鉄鉱石と溶剤抽出物との混合物にさらに炭材を添加して混合する方法等が挙げられる。
炭材と鉄鉱石と溶剤抽出物とを混合する手段についても、特に限定されるものではなく、例えば、ミキサーやニーダー、あるいは二軸や単軸の混合機が挙げられる。
<成形工程>
成形工程では、上記混合物を成形して、所定の強度を持つ成形物にする。本発明の鉄鉱石含有コークスを、縦型シャフト炉を用いて乾留して製造する場合には、シャフト炉の頂部から上記混合物を投入するため、炭材と鉄鉱石が分離し難いこと(所定の強度を有すること)が求められるからである。
成形手段は、特に限定されるものではなく、例えば、平ロールによるダブルロール(双ロール型成形機)の他、アーモンド型ポケットを有するダブルロール型成形機、単軸プレスやローラタイプの成形機、押し出し成形機が挙げられる。
成形処理条件は、溶剤抽出物が軟化溶融する条件で混合物を成形することが好ましい。溶剤抽出物の軟化溶融物を介して、炭材と鉄鉱石とを接着させるためである。
具体的には、例えば、ダブルロール型の成形機を用いて、200〜400℃(より好ましくは250〜350℃)下で加熱加圧成形する方法が挙げられる。
成形工程で得られる成形物は、圧壊荷重が98.1N(10kgf)以上(より好ましくは196.1N(20kgf)以上であることが好ましい。
<乾留工程>
乾留工程によって、成形物を鉄鉱石含有コークスにする。乾留は、その温度を600〜1100℃(より好ましくは700〜1000℃)程度とし、炭材の酸化劣化を防止するために、例えば窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、乾留工程での滞留時間は1〜24時間程度が好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
先ず、実施例で用いた評価方法について、以下説明する。
(成形物強度、及び鉄鉱石含有コークス強度)
成形物、及び鉄鉱石含有コークスの強度は、ISO 4700に準じて測定した圧壊荷重で評価した。具体的には、双ロールに接していた成形面の中央部に荷重を加えて圧壊強度を測定した。
(軟化開始温度、及びギーセラー流動性試験)
軟化開始温度、及びギーセラー最高流動度(logMF)は、JIS M8801に規定されたギーセラープラストメータ法によって測定した。
(製造例1〜6)
<石炭の溶剤抽出物の製造>
前述した方法(抽出工程、固液分離工程、溶剤除去工程)に従って、石炭の溶剤抽出物を製造した。このとき、原料石炭としては一般炭を用い、溶剤としてはアントラセン油を用いた。得られた溶剤抽出物の軟化開始温度は160℃、ギーセラー最高流動度(logMF)は4.7以上(測定上限以上)であった。
次いで、得られた溶剤抽出物を200μm以下に粉砕した後、空気中、150℃下で10分間保持して、軟化開始温度や流動性を調整した石炭の溶剤抽出物(以下、「調整後溶剤抽出物」と称する場合がある)を得た。得られた調整後溶剤抽出物の軟化開始温度は280℃、ギーセラー最高流動度(logMF)は1.8であった。
<成形工程>
表1に示す組成の石炭と、表2に示す組成の鉄鉱石と、上記調整後溶剤抽出物とを、表3に示す割合でよく混合し、容量5mlのアーモンド型ポケットを有するダブルロール型の成形機を用いて、300℃に加熱しながら成形して、成形体を得た。
なお、成形体の原料としての石炭は、いずれも粒径:3mm以下が90質量%以上となるように粉砕したものを用いた。また、鉄鉱石は、粒径:100μm以下に粉砕したものを用いた。
Figure 2011032370
Figure 2011032370
<乾留工程>
得られた成形体を、窒素雰囲気中、3℃/分の速度で850℃まで昇温した後、この温度で10分間保持して乾留して、鉄鉱石含有コークスを得た。
<特性>
得られた成形体、及び鉄鉱石含有コークスの外観、及び強度を測定した。その結果を表3に示した。
表中、外観評価については、よい場合をA、少し変形し膨張している場合をB、変形し膨張している場合をC、変形や膨張が激しい場合をDとした。また、強度については、測定不能の場合を「−」で表した。
Figure 2011032370
製造例1及び2から、石炭の溶剤抽出物を用いることにより、炭材として褐炭を用いても、十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスが得られることが分かった。特に、炭材中の褐炭の含有率を50質量%以上にしても、十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスが得られることが分かった。
製造例3から、炭材として瀝青炭のみを用いた場合には、乾留時に膨張し過ぎて、鉄鉱石含有コークスの強度が低下することが分かった。
製造例4〜5から、石炭の溶剤抽出物を用いない場合には、十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスが得られないことが分かった。
本発明は、十分な強度を有する鉄鉱石含有コークスを、低コストで提供することができる。

Claims (9)

  1. 褐炭と、鉄鉱石と、石炭の溶剤抽出物とを含む混合物を乾留して得られることを特徴とする鉄鉱石含有コークス。
  2. 前記褐炭100質量部に対する前記溶剤抽出物の配合量が10〜100質量部である請求項1に記載の鉄鉱石含有コークス。
  3. 前記混合物が、さらに瀝青炭を含む請求項1または2に記載の鉄鉱石含有コークス。
  4. 前記溶剤抽出物のギーセラー最高流動度(logMF)が2以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の鉄鉱石含有コークス。
  5. 少なくとも褐炭と、鉄鉱石と、石炭の溶剤抽出物とを混合、成形して成形物を得る工程と、
    前記成形物を乾留する工程と
    を含むことを特徴とする鉄鉱石含有コークスの製造方法。
  6. 前記褐炭100質量部に対する前記溶剤抽出物の配合量が10〜100質量部である請求項5に記載の鉄鉱石含有コークスの製造方法。
  7. 前記成形を得る工程を、さらに瀝青炭を混合して行う請求項5または6に記載の鉄鉱石含有コークスの製造方法。
  8. 前記溶剤抽出物のギーセラー最高流動度(logMF)が2以下である請求項5から7のいずれか一項に記載の鉄鉱石含有コークスの製造方法。
  9. 前記乾留する工程を、シャフト炉を用いて行う請求項5から8のいずれか一項に記載の鉄鉱石含有コークスの製造方法。
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