JP2011028424A - センサ機能付きrfidタグ、およびそのrfidタグを用いたrfidシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動電力の供給をすることなくセンサ機能を実現してID情報とセンサ情報を通信でき、既存の汎用タグICを利用可能なセンサ機能付きRFIDタグ、およびそのRFIDタグを用いたRFIDシステムの提供を図る。
【解決手段】センサ機能付きRFIDタグ3は、タグIC6と感応性受動素子5とを備える。タグIC6は、RFIDリーダ2が送信するRF信号をID情報で変調する。感応性受動素子5は、センシング対象に感応して特性が変化しRF信号の伝搬特性を変化させる。この構成により、電圧変換部なしで、既存のRFIDタグにセンサ機能を付加することができ、従来よりも部品コスト、実装コスト、実装面積を抑えることが可能となり、また通信距離の伸長が可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】センサ機能付きRFIDタグ3は、タグIC6と感応性受動素子5とを備える。タグIC6は、RFIDリーダ2が送信するRF信号をID情報で変調する。感応性受動素子5は、センシング対象に感応して特性が変化しRF信号の伝搬特性を変化させる。この構成により、電圧変換部なしで、既存のRFIDタグにセンサ機能を付加することができ、従来よりも部品コスト、実装コスト、実装面積を抑えることが可能となり、また通信距離の伸長が可能となる。
【選択図】図1
Description
この発明は、センサ機能付きRFIDタグ、および、センサ機能付きRFIDタグの応答からID情報およびセンサ情報を取得するRFIDリーダおよびセンサ機能付きRFIDタグを備えるRFIDシステムに関する。
RFIDシステムにおいて既存のRFIDタグにセンサを設け、RFIDリーダが送信するRF信号へのRFIDタグの応答からRFIDリーダでRFIDタグのID情報を取得するとともに、RFIDリーダでRFIDタグのセンサ情報を取得するものがある(例えば特許文献1参照。)。上記文献に開示されたRFIDシステムは、パッシブ型のRFIDタグにアンテナ、電圧変換部、タグIC、センサ、および可変コンデンサ(または可変抵抗)を備える。アンテナはRFIDリーダが送信する電波に結合する。電圧変換部は、アンテナからのRF信号を整流し、駆動電力としてセンサとタグICに出力する。タグICはID情報でRF信号をデジタル変調する。センサはセンシング対象に関する検出値を検出し、その検出値に応じてアンテナとタグICとの間に挿入された可変コンデンサを制御する。可変コンデンサは、キャパシタンスが変化することによりRF信号の周波数を遷移させる。RFIDリーダはRF信号からID情報を検波するとともにRF信号の周波数遷移量に基づいてセンシング対象の検出値を検知する。なお、RFIDタグで可変コンデンサに替えて可変抵抗を設けて可変抵抗の制御によりRF信号の振幅を変化させ、RFIDリーダでRF信号の振幅の変化量に基づいてセンシング対象の検出値を検知する技術も開示されている。
上記RFIDシステムにおいて、センサは電圧変換部から入力される駆動電力を必要とする能動素子であり、以下に示すような問題が存在する。
1.既存のRFIDシステムでは、電圧変換部が一体化されたタグICが一般化している。この既存の汎用のタグICはID情報によるRF信号のデジタル変調のみを行い、内蔵するセンサも、センサ出力用のIO端子も、センサの検出信号を処理(A/D変換等)する機能も無い。したがって、汎用のタグICをそのまま流用すると、能動素子型のセンサに駆動電力を供給することはできず、電圧変換部を別体にするなどの対策を要する。
2.センサと可変コンデンサと電圧変換部とをタグに追加する必要があり、部品コスト、実装面積および実装コストの面で負担となる。
3.パッシブ型では、RFIDタグに誘導される電力量に限度があり、電力消費を伴う能動素子型のセンサを追加することで、センサやICの駆動電力が不足したり、通信距離が低減したりする場合がある。
本願発明の目的は上述の問題を解消するため、センサ駆動電力を別途供給することなくセンサ機能を実現してID情報とセンサ情報を通信でき、かつ既存の汎用タグICを利用可能なセンサ機能付きRFIDタグ、およびそのRFIDタグを用いたRFIDシステムを提供することにある。
この発明のセンサ機能付きRFIDタグは、タグICと感応性受動素子とを備える。タグICは、RF信号をID情報で変調する汎用のものである。感応性受動素子は、センシング対象に感応して特性が変化し、RF信号の伝搬特性を変化させる。
この構成により、既存のRFIDタグに感応性受動素子を追加する程度で既存のRFIDタグにセンサ機能を付加することができ、独自設計のタグICを必要とせず、かつ電圧変換部も不要のため、部品コスト、実装コスト、実装面積を抑えられる。また感応性受動素子は、SAWフィルタに感応性膜を設けたSAWセンサやLCフィルタなどであって素子の挿入損失はある程度生じるが駆動電力を必要としないので、従来よりも通信距離を伸長することが可能になる。
この構成により、既存のRFIDタグに感応性受動素子を追加する程度で既存のRFIDタグにセンサ機能を付加することができ、独自設計のタグICを必要とせず、かつ電圧変換部も不要のため、部品コスト、実装コスト、実装面積を抑えられる。また感応性受動素子は、SAWフィルタに感応性膜を設けたSAWセンサやLCフィルタなどであって素子の挿入損失はある程度生じるが駆動電力を必要としないので、従来よりも通信距離を伸長することが可能になる。
この発明のRFIDシステムは、前記RFIDタグとRFIDリーダとを備え、RFIDリーダは、RF信号を通信帯域内の複数の周波数で送信する、または、通信帯域内で連続的に変化する周波数で送信する。感応性受動素子は、センシング対象に感応して周波数特性が周波数軸上で遷移するフィルタである。RFIDリーダは、RFIDタグの応答からID情報を読み取るとともに周波数特性の遷移量を特定し、周波数特性の遷移量からセンシング対象の情報を検知する。
この構成では、RFIDリーダでID情報を検波することで感応性受動素子の周波数特性を得る。この周波数特性は、センシング対象が基準値の場合の周波数特性からセンシング対象の変化量に応じて遷移したものであり、センシング対象が基準値の場合の周波数特性を把握しておけば、センシング対象の変化量を検知可能である。
この構成では、RFIDリーダでID情報を検波することで感応性受動素子の周波数特性を得る。この周波数特性は、センシング対象が基準値の場合の周波数特性からセンシング対象の変化量に応じて遷移したものであり、センシング対象が基準値の場合の周波数特性を把握しておけば、センシング対象の変化量を検知可能である。
この発明のRFIDシステムは、感応性受動素子が通信帯域付近に阻止域と通過域との境界を有し、RFIDリーダでID情報が読み取れる周波数と読み取れない周波数との組みあわせに基づいて周波数特性の遷移量を推定し、センシング対象の情報を検知する。
この構成では、既存のRFIDリーダを利用して、高度な信号処理を行うことなくセンシング対象の情報を検知できる。
この構成では、既存のRFIDリーダを利用して、高度な信号処理を行うことなくセンシング対象の情報を検知できる。
この発明のRFIDシステムは、RFIDリーダでID情報が読み取れる周波数での信号強度、または位相特性に基づいて周波数特性の遷移量を推定し、センシング対象の情報を検知する。
この構成では、RFIDリーダで信号強度または位相特性を計測、比較することで、精度を高めてセンシング対象の情報を検知できる。
この構成では、RFIDリーダで信号強度または位相特性を計測、比較することで、精度を高めてセンシング対象の情報を検知できる。
この発明のRFIDシステムは、前記RFIDタグとRFIDリーダとを備え、RFIDリーダは、RF信号を通信帯域内の周波数で送信する。感応性受動素子は、センシング対象に感応して挿入損失が変化する。RFIDリーダは、RFIDタグの応答からID情報を読み取るとともに挿入損失の変化量を特定し、挿入損失の変化量からセンシング対象の情報を検知する。
この構成では、RFIDリーダでID情報を検波する際の信号強度に基づいて感応性受動素子の挿入損失を得る。この挿入損失は、センシング対象が基準値の場合の挿入損失からセンシング対象の変化量に応じて遷移したものであり、センシング対象が基準値の場合の挿入損失を把握しておけば、センシング対象の変化量を検知可能である。なお、RF信号の信号強度はRFIDリーダ−RFIDタグ間の距離によっても変化するため、より好ましくは、距離についての情報をRFIDリーダが把握できるとよい。
この構成では、RFIDリーダでID情報を検波する際の信号強度に基づいて感応性受動素子の挿入損失を得る。この挿入損失は、センシング対象が基準値の場合の挿入損失からセンシング対象の変化量に応じて遷移したものであり、センシング対象が基準値の場合の挿入損失を把握しておけば、センシング対象の変化量を検知可能である。なお、RF信号の信号強度はRFIDリーダ−RFIDタグ間の距離によっても変化するため、より好ましくは、距離についての情報をRFIDリーダが把握できるとよい。
この発明のRFIDタグは、感応性受動素子の特性変化の影響から独立する補助用タグICをさらに備え、RFIDリーダは、補助用のタグICからの応答をタグICからの応答と比較し、感応性受動素子における挿入損失の変化を特定すると好適である。
この構成では、仮に感応性受動素子を介した通信に支障がでても、補助用タグICを利用して少なくともID情報の認証を行える。また、挿入損失が変化する感応性受動素子を用いる場合、補助用タグICからの信号強度をRFIDリーダで把握することにより、通信距離を把握でき、通信距離が未知であっても感応性受動素子の挿入損失を推定できる。
この構成では、仮に感応性受動素子を介した通信に支障がでても、補助用タグICを利用して少なくともID情報の認証を行える。また、挿入損失が変化する感応性受動素子を用いる場合、補助用タグICからの信号強度をRFIDリーダで把握することにより、通信距離を把握でき、通信距離が未知であっても感応性受動素子の挿入損失を推定できる。
この発明のRFIDリーダは、RF信号を前記RFIDタグに既知の通信距離から送信し、RFIDタグからの応答の信号強度に基づいて挿入損失を特定し、センシング対象の情報を検知すると好適である。
この構成では、通信距離がRFIDリーダにとって既知であるため、感応性受動素子の挿入損失の推定のための信号処理が簡易である。
この構成では、通信距離がRFIDリーダにとって既知であるため、感応性受動素子の挿入損失の推定のための信号処理が簡易である。
この発明のRFIDタグは、センシング対象が異なる複数の感応性受動素子を備えると好適である。さらには、ID情報が異なる複数のタグICを備えると好適である。これにより、一つのRFIDタグに複数のセンシング対象に対するセンサ機能を付与できる。
この発明の感応性受動素子は、弾性波デバイスやLCフィルタ、可変抵抗素子であると好適である。特には、弾性表面波デバイスやFBARデバイス、バルク波デバイスであると好適である。特には、圧電体が水晶で振動モードがSHモードであると好適である。これにより、センサ情報に対する高感度化やタグの小型化などの実現を図ることができる。
この発明によれば、独自設計の専用タグICを必要とせず、既存の汎用タグICに電圧変換部や電池から入力されるセンサ駆動電力が不要な感応性受動素子を設けてセンサ機能を付与することができ、部品コスト、実装コスト、実装面積を抑えることができる。また、感応性受動素子の挿入損失は生じるがセンサ駆動の電力が不要なので、従来よりも通信距離を伸ばすことが可能になる。
以下、本願発明の第1の実施形態に係るRFIDシステムについて説明する。図1は、本実施形態に係るRFIDシステムの概念図である。
本実施形態のRFIDシステム1は、日本のUHF帯パッシブRFID規格であるARIB-89(通信帯域952MHz〜954MHz)を利用してID情報の認証を行う。ARIB-89では帯域内に200kHz間隔で9chが割り当てられ、RFIDシステムは任意のチャネルを利用することができる。なお、RFIDシステムとして、コイル間の電磁結合を利用する13.56MHz帯RFID規格や、2.4GHz帯のRFID規格など他の帯域の規格を用いるものであっても本発明は実施可能である。また、アンテナに励起する電力で動作するパッシブ方式の他に、電源から電力を得るアクティブ方式であっても本発明は実施可能である。
RFIDシステム1は、RFIDリーダ2とRFIDタグ3とを備える。RFIDリーダ2は、ARIB-89規格の既存のものとし、ソフトウェアにより設定するチャネルシーケンスに従って信号を送信する。RFIDタグ3は、アンテナ4と感応性受動素子5とタグIC6とを備える。アンテナ4は、RFリーダ2が送信するチャネルのRF信号に結合する。感応性受動素子5は、950MHz付近に中心周波数を設定したSAW(弾性表面波)フィルタであり、アンテナ4とタグIC6の間に挿入される。タグIC6は、UHF帯パッシブRFIDの汎用のICであり、アンテナの励起電力を整流して駆動電力とする電圧変換部を内蔵し、受信したチャネルのRF信号をID情報で変調(例えばASK変調)する。
このRFIDシステム1では感応性受動素子5に、センシング対象に感応して共振周波数が変化するセンサ機能を持たせる。ここでは、SAWフィルタの温度特性を利用し、感応性受動素子5のセンシング対象を温度とする。これにより、感応性受動素子5は温度に感応して周波数特性における通過域が周波数軸上で遷移する。これにより、アンテナ4とタグIC6との間の信号伝搬経路における伝搬特性が変化する。センサ駆動電力を別途供給をする必要がない、駆動電力が不要な感応性受動素子5をアンテナ−タグIC間の信号伝搬経路に配置するのみで、既存のRFIDタグ3にセンサ機能を付与できる。したがって、実装コストおよび実装面積の点で従来のRFIDシステムよりも優れる。また、RFID通信距離の低下を回避できる。
なお、磁気をセンシング対象とする場合にはIDT電極をNi等磁歪材料で形成したSAWセンサとして感応性受動素子5を構成するとよい。水素濃度をセンシング対象とする場合にはIDT電極をPd等水素吸蔵合金で形成したSAWセンサとして感応性受動素子5を構成するとよい。ここで例示する各例では、センシング対象に感応して通過域が周波数軸上で遷移する特性を有する。
RFIDリーダ2は、周波数の異なるRF信号を複数送信、または広い範囲で連続的にスイープして送信し、RFIDタグ3の応答からID情報を検波できる周波数に基づいて感応性受動素子5の通過域を把握する。そして、予め記憶しておいた感応性受動素子5の周波数特性における通過域と感応性受動素子5の温度との関係に基づいて、感応性受動素子5の通過域の周波数軸上での遷移量を検出する。この遷移量は温度変化に伴って変化するものであり、遷移量に基づいて温度変化量を検知できる。
以下、感応性受動素子5の具体的な設定例を説明する。
本実施形態での感応性受動素子5はSAWフィルタ(縦結合型2port共振子)(参考文献:特許3353742,「重い電極/水晶基板構造の超小型なSH型SAWデバイス」 電子情報通信学会論文誌C, vol.J86-C, No.11, pp.1151-1159, 2003 門田道雄 etc.)であり、具体的な構成としてIDT電極を備え、水晶STカット基板に存在するSHモードを利用する。SHモードを利用することにより反射係数を大きくでき反射器の本数を少なくして感応性受動素子5の素子サイズを小型化できる。また、SHモードは他のモードよりも音速が速く(4000〜5000m/s)、950MHz帯でもIDT線幅が1〜2um程度と比較的大きく取ることができ製造上有利である。なお、SAWフィルタとしてはSHモード以外のモードを利用するものを利用してもよく、1port共振子やトランスバーサル型フィルタであってもよい。
図2は、感応性受動素子5の周波数特性を例示する図である。図中に示す破線はセンシング対象の検出量が基準値(基準温度)の場合を示し、図中に示す実線はセンシング対象の検出により検出量が基準値から遷移した場合を示す。
図2(A)に示す例では通過域の帯域幅を、RFIDの通信帯域よりも狭い1チャネルから数チャネル程度としている。図2(B)に示す例では通過域の帯域幅を、RFIDの通信帯域全体を含む同程度としている。図2(C)に示す例では通過域の帯域幅を、RFIDの通信帯域全体よりも広くしている。
感応性受動素子5の周波数特性は、ID情報によって符号化されるRF信号に含まれる搬送波および側波帯が通過することが可能な通過域の帯域幅を持ち、通過域と阻止域の境界が急峻であることが望ましい。具体的な通過域の帯域幅はタグICでの変調速度や、符号化方法等により異なり、例えばGen2規格のUHF帯パッシブRFIDの場合、タグからリーダへの通信速度は40kbps〜640kbpsであり、RF信号は上・下側波帯合わせて80kHz〜1280kHzの帯域幅を必要とするので、感応性受動素子5における通過域の帯域幅も同程度あると望ましい。図2(A),(B)の例ではフィルタの比帯域は0.2%以下であり、このような狭帯域は、本実施形態のように水晶基板を使用した縦結合型共振子構造として感応性受動素子5を構成することで実現できる。図2(C)の設定例は比帯域が大きく他素材の圧電基板でも容易に実現できる。また、感応性受動素子5の通過域の帯域内LOSSは3dB以下であり、阻止域についてはLOSSが20dB以上であることが望ましい。
このRFIDリーダ2でRFIDタグ3側の通過域を特定する具体的な方法として、通過域の中心周波数を検出して通過域の遷移量を検知する第1の検知方法と、通過域と阻止域との境界を検出して通過域の遷移量を検知する第2の検知方法とがある。
第1の検知方法では、ID情報が読み取れる周波数ごとの信号強度や位相特性の差に基づいて、通過域の中心周波数を推定する。信号強度に基づく場合には、例えば10kHz間隔のようにチャネル周波数よりも細かい周波数ステップでRF信号を送信し、RFIDタグ3の応答からID情報を読み取れる周波数の信号強度を取得して信号強度が最大となる周波数を中心周波数とする。または、ID情報が読み取れる周波数範囲の中心をフィルタの中心周波数と仮定する。あるいは、所定の計算式を用いて中心周波数を算出する。より好適には、まず粗い周波数ステップでID情報を読み取って通過域を把握した後、細かい周波数ステップでID情報を読み取って通過域の中心周波数を検出するように再スイープすると、効率よく中心周波数を把握できる。その際、図2(A)に示すような狭帯域な通過域であれば、中心周波数の把握が容易となって広帯域な通過域よりも好ましい。
なお、RFIDリーダ2で設定すべき周波数ステップ幅は、必要な周波数読み取り分解能、及びセンサの感度に応じて変わり、例えば周波数温度係数が20ppm(19kHz)/℃の温度SAWセンサをつかって、0.1℃の分解能がほしい場合は、最低でも2kHz程度のステップで送信信号を送る必要がある。また、位相特性に基づいて中心周波数を把握する場合には、RFIDリーダ2でRF信号からI/Q信号を分離し、I/Q信号から位相特性を把握する必要がある。以上の方式では、中心周波数の遷移を読み取ることで高い精度でセンシング対象の変化を読み取ることができる。
第2の検知方法では、RFIDリーダ2は基準通過域を含む複数のチャネル、好ましくは全チャネルでRF信号を送信する。そして、RFIDタグ3の応答からID情報を読み取れるチャネルと読み取れないチャネルとの組み合わせに基づいて、通過域と阻止域との境界を検出する。そのため、感応性受動素子5における通過域は、RFIDの通信帯域付近に、阻止域と通過域を有するものであり、センシング対象の変化に対する通過域の周波数遷移量が大きいことが望ましい。
アンテナ-タグIC間を通過するチャネルは、感応性受動素子5がセンシング対象に感応して通過域が周波数軸上で遷移することにより変化する。このため、阻止域のチャネルでは、RFIDタグ3でRF信号がタグICに到達しないためにタグICが動作せず、RFIDリーダ2でRFIDタグ3の応答からID情報を読み取ることができない。一方、通過域のチャネルでは、タグICが正常に動作するため、RFIDリーダ2でRFIDタグ3の応答からID情報を読み取ることができる。したがって、RFIDリーダ2では、ID情報が読み取れるチャネルに基づいて、感応性受動素子5の周波数特性における通過域のチャネルと阻止域のチャネルとを特定できる。例えば図2(B),(C)では、RFIDリーダ2がch1〜ch9すべてのチャネルでRF信号を送信した場合、基準通過域ではすべてのチャネルでID情報を検出できる。一方、基準通過域から遷移した通過域ではch1およびch2で信号が遮断されてID情報が検出できない。ch3〜ch9でID情報を検出することができ、ch1およびch2でID情報が検出できないという状態を把握して、RFIDリーダ2は周波数特性における通過域の遷移量を把握できる。この方法では、例えば周波数温度係数が20ppm/℃のSAW温度センサを用いた場合に、温度を10℃程度の精度でしか読み取れないが、特別な計算などを必要とせず処理系統が簡易であってもよい利点がある。なお、より効率的にはch1から順に問い合わせを行い、ID情報を検出できるチャネルを検出した時点でRF信号の送信を終了しても良い。
このように粗い周波数ステップを用いる場合、通過域の帯域幅は広いほうが都合が良く、より好ましくは、図2(B),(C)のように全チャネルを含む帯域幅とするのが良い。その理由は、図2(A)に示す狭帯域な通過域では、いずれのチャネルも遮断されてしまってRFIDリーダ2でセンサ情報が得られない危険があり、これを避けるために少なくとも1つのチャネルを通過させる帯域幅を必要とする。また、前述したように通信速度を速くするためにも、帯域は広いほうが良い。さらには、比帯域0.2%以上のフィルタは、水晶基板の他の圧電基板で作製することも可能であり、例えばLiNbO3, LiTaO3を利用すると基板コスト、実現できるセンサ種類、感度などで有利となる。
なお、感応性受動素子5として本実施形態ではUHF帯パッシブRFIDに好適なSAWフィルタを採用する例を示したが、他の構成の感応性受動素子5を用いてもよい。例えば、磁気をセンシング対象とする場合には磁気開閉スイッチを感応性受動素子5に利用してもよい。他にも、弾性波デバイス(FBAR, バルク振動子等)、LC共振回路、誘電体フィルタなどであっても本発明は実施できる。
また、タグIC6は汎用のものに限らず、専用のものを使用しても良い。アンテナはモノポールやダイポール、ループアンテナなど、どのようなものでもよく、利用する周波数帯域に合わせた適切なものを選べばよい。感応性受動素子5とアンテナとの間やタグICとの間には、整合回路を設けても良い。ARIB-89規格に日本のUHF帯パッシブRFIDでの使用を想定したが、他国のUHF帯パッシブRFID用帯域(868MHz, 920MHz)を使用する場合は、それにフィルタの周波数帯を合わせればよい。
次に、本願発明の第2の実施形態に係るRFIDシステムについて説明する。図3(A)は、本実施形態に係るRFIDシステムの概念図である。
RFIDシステム11は、RFIDリーダ12とRFIDタグ13とを備える。RFIDタグ13は、アンテナ14と感応性受動素子15とタグIC16とを備える。感応性受動素子15は、950MHz付近に中心周波数を設定したフィルタや、サーミスタなどの可変抵抗素子であり、センシング対象の変化に感応して挿入損失が変化し、アンテナ14とタグIC16との間のRF信号が伝搬する経路における伝搬特性を変化させる。電力消費が生じない感応性受動素子15を、アンテナ−タグIC間の信号通過経路に配置するのみで、既存のタグICにセンサ機能を付与できる。したがって、実装コストおよび実装面積の点で従来のRFIDシステムよりも優れる。また、センサ機能を実現するための電力消費がないので、RFID通信距離の低下を回避できる。
RFIDリーダ2は、単一の周波数、または複数の周波数を束ねてRF信号を送信し、RFIDタグ3の応答からID情報を検波するとともに信号強度を把握する。そして、予め記憶しておいた信号強度とセンシング対象に対する感応性受動素子5の挿入損失との関係に基づいて、センシング対象の変化量を検知する。
図3(B)は、ch1およびch2を通過域とする感応性受動素子5の周波数特性を、図3(C)は、ch1〜ch9を通過域とする感応性受動素子5の周波数特性を例示する図である。図中に示す破線はセンシング対象の検出量が基準値の場合を示し、図中に示す実線はセンシング対象の検出により検出量が基準値から遷移した場合を示す。いずれの場合でも、センシング対象の変化に感応することで、感応性受動素子5の挿入損失が低下している。
RFIDリーダ12でRFIDタグ13側の挿入損失を特定する具体的な方法として第1の検知方法と第2の検知方法とがある。第1の検知方法は、RFIDリーダとRFIDタグとが既知の通信距離である状態で通信を行い、その時の信号強度に基づいて感応性受動素子の挿入損失を検知する。この方法では、RFIDリーダとRFIDタグとが既知の通信距離であることを検出する手段をRFIDリーダに設けて既知の通信距離の場合にのみRF信号を送信するようにRFIDシステムを構築する必要が有る。
第2の検知方法は、RFIDリーダとRFIDタグとの通信距離を測定し、通信距離による信号強度の変化を校正して、感応性受動素子の挿入損失を検知する。この方法では、RFIDリーダとRFIDタグとの通信距離を測定する手段をRFIDタグに設けてRFIDシステムを構築する必要が有る。
上述の検知方法のように、本実施形態のRFIDシステムでは通信距離による信号強度の変化の影響を受けずに、感応性受動素子15の挿入損失を検知する必要が有る。しかしながら、本実施形態では、周波数遷移ではなく信号強度の変化に基づいてセンサ情報を通信することができるので、周波数遷移を用いてセンサ情報を通信することが困難な場合や、周波数遷移を用いるだけではセンサ感度を高めることが困難な場合に好適である。特には、周波数遷移と信号強度の変化とを併用してセンサ感度を高めると好適である。
次に、本願発明の第3の実施形態に係るRFIDシステムについて説明する。図4は、本実施形態に係るRFIDシステムの概念図である。
このRFIDシステム21は、第1の実施形態および第2の実施形態とほぼ同じ構成に加え、タグIC27を備える。タグIC27は、タグIC26および感応性受動素子25に対して並列にアンテナ24に接続され、タグIC26とは異なるID情報を有する。なお、ここでは単一のアンテナ24に複数のタグIC26,27を接続するが、各タグIC26,27に個別のアンテナを接続してもよい。
ARIB-89のような一般的なRFIDシステムにおいては、前述のように通信帯域内にch1〜9が割り当てられており、そのch1〜ch9のうちのどのチャネルを使用するかは限定されない。センサ情報を検出する機能を備えていない既存のRFIDリーダに対して本発明のRFIDタグを近づけても、既存のRFIDリーダが使用するチャネルによっては、本発明のRFIDタグ23を全く検出できないことがある。
そこで本実施形態では、ID情報の異なるタグIC26,27を設け、片方のタグIC26の前段にのみ感応性受動素子25を配置した構成とする。これにより、感応性受動素子25が信号を遮断しても、タグIC27を用いて確実にID情報の認証を行うことができる。
また、感応性受動素子25が、第2の実施形態の感応性受動素子と同様に挿入損失の変化を伴うものであれば、タグIC26が応答する信号強度とタグIC27が応答する信号強度とが相違することになる。タグIC27が応答する信号強度は通信距離による影響のみを受け、タグIC26が応答する信号強度は通信距離と感応性受動素子25とによる影響を受けるので、タグIC26が応答する信号強度とタグIC27が応答する信号強度との比較から通信距離を把握し、通信距離による影響を校正して、感応性受動素子25による信号強度の変化を把握することが可能になる。
次に、本願発明の第4の実施形態に係るRFIDシステムについて説明する。図5(A)は、本実施形態に係るRFIDシステムの概念図である。
このRFIDシステム31は、第1の実施形態および第2の実施形態とほぼ同じ構成に加え、感応性受動素子37を備える。感応性受動素子37は、感応性受動素子35に対して並列にアンテナ34とタグIC36との間に接続される。感応性受動素子35,37はそれぞれ異なるフィルタ特性を有する。
図5(B)は、各感応性受動素子のフィルタ特性の設定例を説明する図である。ここでは、同じセンシング対象に対する感応性を有する複数の感応性受動素子を、例えば868MHz帯, 920MHz帯, 950MHz帯のように通過域を異ならせて利用する。これにより、例えばUHF帯パッシブRFIDの電波法および周波数が異なる複数の国で、RFIDタグ33を利用できる。
図5(C)は、各感応性受動素子のフィルタ特性の他の設定例を説明する図である。ここでは、異なるセンシング対象に対する感応性を有する複数の感応性受動素子を、例えば日本のUHF帯パッシブRFIDの帯域内の異なる周波数で利用する。このようにすれば、各通過域を実現する感応性受動素子に、例えば温度、気圧、湿度などといった異なるセンシング対象に対するセンサ機能を持たせることができる。
以上のように、本実施形態のRFIDシステム31では、単一のRFIDタグで複数の電波法に対応したり、複数のセンサ機能を実現したりすることができる。
なお、本実施形態の構成では、各感応性受動素子の動作周波数範囲を、隣接する他の感応性受動素子の動作周波数範囲を犯さないように設定する必要があり、各感応性受動素子の動作周波数範囲を狭める必要が生じる。しかしながら、各感応性受動素子を並列に接続していても、それぞれの通過域が異なるため、特定のチャネルが複数の感応性受動素子を通過することがなく、電力LOSSの増大を抑制できる。
次に、本願発明の第5の実施形態に係るRFIDシステムについて説明する。図6は、本実施形態に係るRFIDシステムの概念図である。
このRFIDシステム41は、第1の実施形態および第2の実施形態とほぼ同じ構成に加え、感応性受動素子47およびタグIC48を備える。感応性受動素子47およびタグIC48は、感応性受動素子45およびタグIC46に対して並列に接続される。感応性受動素子45,47はそれぞれ同じフィルタ特性を有するとともに、異なるセンシング対象に対する感応性を有する。また、タグIC46,48はそれぞれ異なるID情報を有する。なお、追加する感応性受動素子およびタグICの数はより多くてもよい。また、単一のアンテナ44に複数のタグIC46,48を接続するのではなく、各タグIC46,48に個別のアンテナを接続してもよい。
この構成では、通過域が重なる感応性受動素子を並列に接続するため、アンテナ44に受信された電力が各タグICに等分され、通信距離が低下してしまう。しかしながら、通信周波数を分ける必要が無く、各感応性受動素子45,47の動作周波数範囲を広く確保しながら、複数のセンサ機能を実現できる。
次に、本願発明の第6の実施形態に係るRFIDシステムについて説明する。図7は、本実施形態に係るRFIDシステムの概念図である。
このRFIDシステム51は、感応性受動素子55をアンテナ−タグIC間にシャントに接続した点で、上述の実施形態のRFIDシステムの構成と相違する。なお、感応性受動素子55のアース端は、タグIC56の基準電位に接続してもよい。
このように構成しても、感応性受動素子55の特性がセンシング対象に感応して変化すると、アンテナ−タグIC間の伝搬特性が変化するので、RFIDリーダ52でセンシング対象の変化を検知することが可能である。
次に、本願発明の第7の実施形態に係るRFIDシステムについて説明する。図8は、本実施形態に係るRFIDシステムの概念図である。
図8(A)に示すRFIDシステム61は、RFIDタグのアンテナをダイポールアンテナとし、ダイポールアンテナの途中に感応性受動素子65を挿入した構成である。このように構成しても、感応性受動素子65の特性がセンシング対象に感応して変化するとRF信号の伝搬特性が変化するので、RFIDリーダ62でセンシング対象の変化を検知することが可能である。
図8(B)に示すRFIDシステム71は、RFIDタグのアンテナをループアンテナとし、ループアンテナの途中に感応性受動素子75を挿入した構成である。このように構成しても、感応性受動素子75の特性がセンシング対象に感応して変化すると、RF信号の伝搬特性が変化するので、RFIDリーダ72でセンシング対象の変化を検知することが可能である。
1,11,21,31,41,51,61,71…RFIDシステム
2,12,22,32,42,52,62,72…RFIDリーダ
3,13,23,33,43,53,63,73…RFIDタグ
4,14,24,34,44,54,64,74…アンテナ
5,15,25,35,37,45,47,55,65,75,…感応性受動素子
6,16,26,27,36,46,48,56…タグIC
2,12,22,32,42,52,62,72…RFIDリーダ
3,13,23,33,43,53,63,73…RFIDタグ
4,14,24,34,44,54,64,74…アンテナ
5,15,25,35,37,45,47,55,65,75,…感応性受動素子
6,16,26,27,36,46,48,56…タグIC
Claims (16)
- RF信号をID情報で変調するタグICと、
センシング対象に感応、特性が変化して前記RF信号の伝搬特性を変化させる感応性受動素子と、
を備えるセンサ機能付きRFIDタグ。 - 前記感応性受動素子は、アンテナと前記タグICの間、もしくはアンテナの一部に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。
- 前記感応性受動素子は、センシング対象に感応して周波数特性が周波数軸上で遷移するフィルタである、請求項1または2に記載のセンサ機能付きRFIDタグと、
前記RF信号を通信帯域内の複数の周波数で送信する、または、通信帯域内で連続的に変化する周波数で送信するRFIDリーダと、を備え、
前記RFIDリーダは、前記RFIDタグの応答からID情報を読み取るとともに前記周波数特性の遷移量を特定し、前記周波数特性の遷移量からセンシング対象の情報を検知することを特徴とするRFIDシステム。 - 前記感応性受動素子が通信帯域付近に阻止域と通過域との境界を有し、前記RFIDリーダは前記ID情報が読み取れる周波数と読み取れない周波数との組みあわせに基づいて、前記周波数特性の遷移量を推定し、前記周波数特性の遷移量からセンシング対象の情報を検知することを特徴とする請求項3に記載のRFIDシステム。
- 前記RFIDリーダは前記ID情報が読み取れる周波数での信号強度、または位相特性に基づいて前記周波数特性の遷移量を特定し、前記周波数特性の遷移量からセンシング対象の情報を検知することを特徴とする請求項3に記載のRFIDシステム。
- 前記感応性受動素子が、センシング対象に感応して挿入損失が変化する、請求項1または2に記載のセンサ機能付きRFIDタグと、
RF信号を通信帯域内の周波数で送信するRFIDリーダと、を備え、
前記RFIDリーダは、前記RFIDタグの応答からID情報を読み取るとともに前記挿入損失の変化量を特定し、前記挿入損失の変化量からセンシング対象の情報を検知することを特徴とするRFIDシステム。 - 前記RFIDタグは、前記感応性受動素子の影響から独立する補助用タグICをさらに備え、前記RFIDリーダは、前記補助用タグICからの応答を前記タグICからの応答と比較し、前記感応性受動素子における前記挿入損失の変化を特定する、請求項6に記載のRFIDシステム。
- 前記RFIDリーダは、前記RF信号を前記RFIDタグに既知の通信距離から送信し、前記RFIDタグからの応答の信号強度に基づいて前記挿入損失を特定し、センシング対象の情報を検知する、請求項6に記載のRFIDシステム。
- RFIDタグはセンシング対象が異なる複数の感応性受動素子を備える、請求項3〜8のいずれかに記載のRFIDシステム。
- RFIDタグはID情報が異なる複数のタグICを備える、請求項3〜8のいずれかに記載のRFIDシステム。
- 前記感応性受動素子は弾性波デバイスである、請求項3〜10のいずれかに記載のRFIDシステム。
- 前記弾性波デバイスはSAWフィルタである、請求項11に記載のRFIDシステム。
- 前記SAWフィルタは、圧電体が水晶で振動モードがSHモードである、請求項12に記載のRFIDシステム。
- 前記弾性波デバイスはFBARデバイスである、請求項11に記載のRFIDシステム。
- 前記弾性波デバイスはバルク波デバイスである、請求項11に記載のRFIDシステム。
- 前記感応性受動素子は可変抵抗素子である、請求項3〜10のいずれかに記載のRFIDシステム。
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-
2009
- 2009-07-23 JP JP2009171944A patent/JP2011028424A/ja active Pending
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