JP2011026476A - 摺動性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)85〜97質量%、ポリオルガノシロキサンゴム成分55〜80質量%とポリアルキル(メタ)アクリレート成分45〜20質量%からなる複合ゴムに少なくとも1種類以上のビニル系単量体がグラフト重合された複合ゴム系グラフト共重合体(B)3〜15質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩(C)0.05〜0.5質量部、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(D)0.05〜1質量部を含むことを特徴とする摺動性ポリカーボネート樹脂組成物である。
【選択図】なし
Description
これら樹脂組成物においては、摺動性材料の少量の添加では摺動性の改善効果が不十分であり、添加量を増加させるとポリカーボネート樹脂本来の特性である引張り特性等の機械特性が低下し、長期の使用に対しては摩耗や脱落により摺動性が低下するという問題が生じるようになる。
また、摺動性改良材としてシリコーンオイルを必須成分とする各種の樹脂組成物が知られている(特許文献4、5、6、7、8、9参照)。しかし、シリコーンオイルを添加することにより、オイル成分が成形品表面への滲み出しが起こり、摺動性が低下し易く、また、他の特性も損なわれるという問題が生じるようになる。
さらに、上記の特許文献の中には、難燃性を付与するために、臭素や塩素を含むハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を添加することも知られているが(文献2、3、8参照)、成形時や燃焼時にハロゲンを含むガスが発生する懸念や、リン系化合物による環境影響に及ぼす懸念があった。
1 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)85〜97質量%、ポリオルガノシロキサンゴム成分55〜80質量%とポリアルキル(メタ)アクリレート成分45〜20質量%からなる複合ゴムに少なくとも1種類以上のビニル系単量体がグラフト重合された複合ゴム系グラフト共重合体(B)3〜15質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩(C)0.05〜0.5質量部、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(D)0.05〜1質量部を含むことを特徴とする摺動性ポリカーボネート樹脂組成物。
2 有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩(C)が、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩である上記1に記載の摺動性ポリカーボネート樹脂組成物。
3 上記1又は2に記載の摺動性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂(A)としては、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。すなわち、二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、二価フェノールとホスゲンの反応、二価フェノールとジフェニルカーボネート等とのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
本発明に使用される上記内容のポリカーボネート樹脂(A)の使用量は、後述する複合ゴムグラフト共重合体(B)との合計量に対して、85〜97質量%、好ましくは、90〜96質量%の範囲である。85質量%未満であると十分な難燃性が得られないという問題があり、97質量%を超えると十分な摺動性が得られないという問題がある。
本発明の複合ゴム系グラフト共重合体(B)は、ポリオルガノシロキサンゴム成分55〜80質量%とポリアルキル(メタ)アクリレート成分45〜20質量%からなる複合ゴムに少なくとも1種類以上のビニル系単量体がグラフト重合された複合ゴムグラフト共重合体(コアシェル型Si複合ゴム)である。
複合ゴム系グラフト共重合体に用いるポリオルガノシロキサンは、特に限定されるものではないが、好ましくはビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンである。かかるポリオルガノシロキサンは、例えば、ジオルガノシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物またはさらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含むラテックスを、酸触媒を用いて高温下で重合させることにより、製造することができる。
重合の停止は、反応液を冷却し、さらにラテックスを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質により中和することによって行うことができる。
ここで、複合ゴム系グラフト共重合体(B)を構成する、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレート成分からなる複合ゴムにおいては、その成分比を特定の範囲とする。ポリオルガノシロキサンゴム成分:60〜80質量%、好ましくは、70〜80質量%、ポリアルキル(メタ)アクリレート成分:40〜20質量%、好ましくは30〜20質量%である。
上記複合ゴム中、ポリオルガノシロキサンゴム成分が60質量未満では、十分な摺動性が得られないという問題があり、80質量%を超えると十分な難燃性が得られないという問題がある。
有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩(C)としては、種々のものが挙げられるが、少なくとも一つの炭素原子を有する有機酸又は有機酸エステルのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩である。
ここで、有機酸又は有機酸エステルは、有機スルホン酸、有機カルボン酸、ポリスチレンスルホン酸等である。一方、アルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、リチウム及びセシウム等、又、アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等である。中でも、ナトリウム、カリウム及びセシウムの塩が好ましく用いられる。
又、その有機酸の塩は、フッ素、塩素及び臭素のようなハロゲンが置換されていてもよい。
(CnF2n+1SO3)mM (1)
(式中、nは1〜10の整数を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等のアリカリ金属、又はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属を示し、mはMの原子価を示す。)
で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましく用いられる。
これらの化合物としては、例えば、特公昭47−40445号公報に記載されているものがこれに該当する。
その他、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸及びこれらのフッ素置換体並びにポリスチレンスルホン酸等の有機スルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。特に、パーフルオロアルカンスルホン酸及びジフェニルスルホン酸が好ましい。
次に、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩及び/又アルカリ土類金属塩としては、一般式(2)
で表わされるスルホン酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂を用いることができる。
ここで、スルホン酸塩基はスルホン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、等が挙げられる。
即ち、スルホン酸塩基(X)は、芳香環に対して、全置換したものであっても、部分置換したものであってもよい。
本発明の難燃性の効果を得るためには、スルホン酸塩基の置換比率は、スルホン酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の含有量等を考慮して決定され、特に制限なく、一般的には10〜100%置換のものが用いられる。
ここで、スルホン酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の製造方法としては、(a)前記のスルホン酸基等を有する芳香族ビニル系単量体、又はこれらと共重合可能な他の単量体とを重合又は共重合する方法。(b)芳香族ビニル系重合体、又は芳香族ビニル系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体、又はこれらの混合重合体をスルホン化し、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属で中和する方法がある。
有機アルカリ金属塩及び有機アルカリ土類塩において、スルホン酸アルカリ金属塩、スルホン酸アルカリ土類金属塩、ポリスチレンスルホン酸アルカリ金属塩及びポリスチレンスルホン酸アルカリ土類金属塩が好ましい。
又、有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類塩は、更なる難燃性の向上及び摺動性の向上のために添加されるもので、有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類塩の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び複合ゴム系グラフト共重合体(B)100質量部に対して、0.05〜0.5質量部、好ましくは、0.08〜0.4質量部である。0.05質量部未満であると十分な難燃性が得られないため好ましくなく、0.5質量部を超えると十分な摺動性と難燃性が得られないため好ましくない。
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。
その具体例としては、例えば、テフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業株式会社製)及びCD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製)等が挙げられる。
これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えば、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、6.9〜690KPaの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得ることができる。
又、熱可塑性樹脂に常用されている添加剤成分を必要により含有させることもできる。
例えば、フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、離型剤、可塑剤、抗菌剤、相溶化剤及び着色剤(染料、顔料)等が挙げることができる。
任意成分の配合量は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)〜(D)を上記割合で、更に必要に応じて用いられる各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。
配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択される。この溶融混練成形としては、押出成形機、特に、ベント式の押出成形機の使用が好ましい。
尚、ポリカーボネート樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂又は他の熱可塑性樹脂と溶融混練、即ち、マスターバッチとして添加することもできる。
第1表−1及び第1表−2に示す割合で各成分を混合〔(A)と(B)成分は質量%、他の成分は、(A)と(B)からなる樹脂100質量部に対する質量部で示す。〕し、ベント式二軸押出成形機〔東芝機械社製:TEM35〕に供給し、280℃で溶融混練してペレット化した。
なお、比較例9では、有機アルカリ金属塩に変えて、リン系難燃剤を用いた。
次に、得られたペレットを、120℃で12時間乾燥した後、成形温度280℃、金型温度80℃で射出成形して試験片を得た。
得られた試験片を用いて性能を下記に記載した各種試験によって評価し、その結果を第1表−1及び第1表−2に示す。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
「タフロンFN1700A」(商品名、出光興産(株)製、PTBPを末端基に有するビスフェノールAポリカーボネート樹脂、粘度数46.9、粘度平均分子量 Mv=17,400)
(B)複合ゴム系グラフト共重合体
複合ゴム−1
ポリオルガノシロキサン−ポリ−アルキル(メタ)アクリレート複合ゴム:ポリジメチルシロキサン−ポリ−n−ブチルアクリレート複合ゴム(ポリジメチルシロキサンゴム成分含量:70質量%,三菱レイヨン(株)製「商品名:メタブレンSX005」)
複合ゴム−1と、下記の複合ゴム−4を3:1の比率で混合し作製した。(ポリジメチルシロキサンゴム成分含量:60質量%)
複合ゴム−3
複合ゴム−1と、下記の複合ゴム−4を1:1の比率で混合し作製した。(ポリジメチルシロキサンゴム成分含量:50質量%)
複合ゴム−4
ポリオルガノシロキサン−ポリ−アルキル(メタ)アクリレート複合ゴム:ポリジメチルシロキサン−ポリ−n−ブチルアクリレート複合ゴム(ポリジメチルシロキサンゴム成分含量:30質量%,三菱レイヨン(株)製「商品名:メタブレンSRK−200」)
パーフルオロアルカンスルホン酸カリウム、メガファックF114(大日本インキ化学工業社製品)
(D)PTFE
ポリフルオロオレフィン樹脂(旭硝子フロロポリマーズ社製 CD076)
(E)リン系難燃剤
レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)(大八化学工業(株)製「商品名:FP500」)
(1)摺動試験(動摩擦係数、比摩耗量)
JIS K7218−A法に準じ、常温下で相手材をSUS304とし、面圧250kPa、速度0.5m/s、試験距離3kmの条件で摺動試験を行った。
(2)衝撃試験(衝撃強度)
ASTM D256に準じ、23℃にてノッチ付アイゾッド衝撃試験を行った。
(3)荷重たわみ温度
ASTM D648に準拠し、荷重1.83MPaにて測定した。
(4)燃焼性
米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL94垂直難燃試験に従い、試験片厚み1.5mm成形体について行い、V−0、V−1、V−2、V−2out(V−2に満たない難燃性)に分類して評価した。
第1表−2より、(B)成分中のシリコンゴム含有量が少ない比較例1及び2では、難燃性が低下する。(D)成分のPTFEを添加しない比較例3、及び(C)成分の有機スルホン酸金属塩を添加しない比較例4では、摺動性及び難燃性が低下する。逆に(C)成分が多すぎる比較例5、及び(D)成分が多すぎる比較例6では、難燃性が低下する。
また、樹脂成分中の(B)成分が多すぎる比較例7では、難燃性が低下する。逆に(B)成分が少なすぎる比較例8では、摺動性が低下する。
比較例9では、リン系難燃剤を添加するため、難燃性は優れるが、耐熱性が非常に低い。
Claims (3)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)85〜97質量%、ポリオルガノシロキサンゴム成分55〜80質量%とポリアルキル(メタ)アクリレート成分45〜20質量%からなる複合ゴムに少なくとも1種類以上のビニル系単量体がグラフト重合された複合ゴム系グラフト共重合体(B)3〜15質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩(C)0.05〜0.5質量部、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(D)0.05〜1質量部を含むことを特徴とする摺動性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩(C)が、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩である請求項1に記載の摺動性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の摺動性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
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