JP2011023074A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Kyohei Onishi
郷平 大西
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Abstract

【課題】非磁性層及び磁性層を有する磁気記録媒体において、粗い表面を有する非磁性支持体を用いた場合でも、エラーの少ない磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性支持体上に、非磁性層と、磁性層とを有する磁気記録媒体において、50nm以下の平均粒子径を有する第1の非磁性粉末と、硬化性樹脂とを含有するとともに、第1の非磁性粉末100質量部に対して結合剤を15〜78質量部含有する平滑化層を非磁性支持体と非磁性層との間に形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、非磁性支持体の少なくとも一方の主面上に、平滑化層、非磁性層、及び磁性層が積層された塗布型の磁気記録媒体に関する。
磁気記録媒体の一つである磁気テープは、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータテープなどの種々の用途に用いられている。特に、データバックアップ用のコンピュータテープの分野では、バックアップ対象となるハードディスクの大容量化に伴い、大容量の磁気テープが求められている。例えば、LTO(Linear Tape Open)やDLT(Digital Linear Tape)など、1巻当り数100GB以上の記憶容量を有するコンピュータテープが商品化されている。
このような磁気記録媒体において高容量化を達成するためには、1巻当りの記録面積を増大させること、すなわち磁気記録媒体の全厚を薄くして、磁気記録媒体を長尺化すること、並びに記録密度を向上すること、すなわち記録信号を短波長化することや記録トラック幅を狭幅化することが必要とされる。
例えば、上記のようなコンピュータテープでは、長尺化のために、全厚を10μm以下とすることにより、カートリッジ内における体積密度を向上させている。
また、記録信号の短波長化にあたっては、磁性層の厚さが厚いと、記録再生時の自己減磁損失や磁性層の厚さに起因する厚み損失の影響が大きくなり、十分な分解能が得られないことから、上記のようなコンピュータテープでは、0.1μm程度の薄層の磁性層が形成されている。そして、非磁性支持体上にこのような薄層の磁性層のみを形成すると、塗布抜けなどの欠陥が生じやすく、また非磁性支持体の表面粗さが形成される磁性層の表面に影響して、磁性層の表面平滑性が低下しやすいことから、上記のような高密度記録が行なわれるコンピュータテープの作製にあたっては、磁性層を形成する面の表面突起高さ(P0)が100nm以下の極めて平滑な非磁性支持体を使用するとともに、塗布方式として、非磁性支持体上に、非磁性粉末及び結合剤を含有する厚さが2〜3μm程度の比較的厚い非磁性層を形成し、該非磁性層上に磁性層を形成するいわゆる重層塗布方式を採用している。
しかしながら、磁気記録媒体の製造には長尺の非磁性支持体が必要とされることから、上記のような非常に平滑な表面を有する均一な非磁性支持体は、製造工程において巻き取り速度を上げられないために高コストにならざるを得ないという問題がある。従って、製造原価低減のために、粗い表面を有し、高速巻き取りを可能にした低廉な非磁性支持体(例えば、上記表面突起高さ(P0)が150nm以上)を利用することが望まれている。
一方、上記した高容量化の観点から磁気記録媒体の全厚を薄くするためには、磁気記録媒体全体の体積の中で最も大きな割合を占める非磁性支持体を薄くすることが有効であるが、非磁性支持体を薄くすると、磁気記録媒体の剛性が低下して、磁気ヘッドへの磁性層の当接状態(ヘッドコンタクト)が変化するという問題がある。そのため、再生出力が低下したり、寸法安定性が劣化し、エラーが発生しやすい。従って、上記のような重層構成の磁気記録媒体を薄くするためには、非磁性支持体の次に厚い非磁性層を薄くすることが考えられる。
ところが、上記のような粗い表面を有する非磁性支持体上に薄い非磁性層と磁性層とを形成した場合、非磁性層を設けても、剛性が不足して寸法安定性が不十分となりやすく、また非磁性支持体の表面突起が非磁性層で十分に被覆されず、磁性層の表面平滑性が劣化して、エラーが増加しやすいことが明らかとなってきた。これは、非磁性層が結合剤として硬化性樹脂を含有していても、非磁性層用塗料及び磁性層用塗料の塗布、乾燥終了時には非磁性層及び磁性層は十分に硬化していない塗膜となっており、これらの層の乾燥後には磁性層の表面平滑化及び充填性の向上のために通常カレンダ処理が行われることから、カレンダ処理時の圧力が未硬化状態の非磁性層に付与されると、薄い非磁性層が圧縮され、それによって未硬化状態の非磁性層よりも高硬度の非磁性支持体の表面突起が非磁性層を変形させるためである。その結果、非磁性層の変形が上層の磁性層の表面平滑性の劣化を招くこととなる。
このような重層構成を有する磁気記録媒体における非磁性支持体の表面突起に起因する磁性層の表面平滑性の劣化を低減するための検討も行なわれており、例えば、非磁性支持体と非磁性層との間に、水溶性樹脂からなる平滑化層を形成することが提案されている(例えば、特許文献1)。
非磁性粉末を含有しない水溶性樹脂のみからなる平滑化層は、非磁性粉末の重なりに起因する表面の凹凸が発生しないため、表面平滑性には優れている一方、水溶性樹脂は非硬化性の樹脂であるため、非磁性粉末を含有する非磁性層に比べてヤング率が低く、磁気記録媒体全体の剛性が不足して、ヘッドコンタクトが悪化しやすい。また、樹脂のみからなる平滑化層は温湿度変化により容易に変形するため、寸法安定性に劣る。そのため、ヘッドコンタクトの悪化、及び寸法安定性の低下に起因して、エラーが増加するという問題がある。また、非硬化性の水溶性樹脂のみからなる平滑化層は有機溶剤との相溶性が悪く、同時重層塗布方式で平滑化層と非磁性層とを形成した場合、平滑化層と非磁性層との界面で分離が生じ、平滑化層上に均一な非磁性層を形成することが難しい。そのため、平滑化層を形成するための樹脂溶液を非磁性支持体上に塗布し、乾燥させて、平滑化層を形成した非磁性支持体を一旦巻き取った原反ロールを作製する必要がある。しかしながら、このような樹脂のみからなる平滑化層の形成時や平滑化層を形成した非磁性支持体を原反ロールから巻き出す際に、平滑化層と非磁性支持体の裏面との間で帯電が生じやすく、またこのような樹脂のみからなる平滑化層は非磁性支持体の裏面と接着しやすい。そのため、平滑化層と非磁性支持体の裏面との間でブロッキングが発生しやすいという問題がある。
磁性層の表面平滑性と磁気記録媒体の導電性の両立を目的として、導電性微粒子と、硬化性樹脂を含む結合剤とを含有する下層導電層を非磁性支持体と非磁性層との間に形成することも提案されている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、この特許文献2の磁気記録媒体では、下層導電層の硬化処理が行われることなく非磁性層が形成されているため、非磁性層のみを設けた場合と同様に、カレンダ処理時の圧力によって下層導電層が容易に圧縮され、非磁性支持体の表面突起が磁性層の表面平滑性を劣化させることとなる。また、この下層導電層には、導電性微粒子100質量部に対して結合剤が80〜120質量部も使用されており、そのためこのような多量に結合剤を含有する塗料を用いた場合、硬化性樹脂を含有していても、温湿度変化による寸法変化が大きくなり、エラーが増加しやすいという問題やブロッキングが発生しやすいという問題がある。さらに、下層導電層を形成した後、これを硬化させることなく、同時重層塗布方式で非磁性層と磁性層とを形成した場合、下層導電層と非磁性層との界面で混合が生じ、下層導電層上に均一な非磁性層を形成することが難しい。
特開2003−263728号公報
特開平11−86270号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、粗い表面を有する非磁性支持体を用いた場合でも、磁性層の表面の突起や寸法変化に起因するエラーの少ない磁気記録媒体を提供すること、並びに平滑化層を形成する際に、平滑化層と非磁性支持体の裏面との間のブロッキングを低減することにある。
本発明は、非磁性支持体の少なくとも一方の主面上に、50nm以下の平均粒子径を有する第1の非磁性粉末及び硬化性樹脂を含む結合剤を含有する平滑化層と、第2の非磁性粉末及び結合剤を含有する非磁性層と、磁性粉末及び結合剤を含有する磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記平滑化層は、前記第1の非磁性粉末100質量部に対して前記結合剤を15〜78質量部含有し、
前記平滑化層は、前記非磁性層の形成前に硬化処理されている磁気記録媒体である。
平滑化層と薄い非磁性層とを同時重層塗布方式により形成した場合、平滑化層に非磁性支持体の表面突起の形状が転写され、これが非磁性層を介して磁性層の表面平滑性を劣化させる。また、平滑化層を乾燥した後に、非磁性層を形成する逐次重層塗布方式であっても、平滑化層が硬化処理されていない場合、後のカレンダ処理による圧力で未硬化状態の平滑化層よりも高い硬度を有する非磁性支持体の突起が平滑化層を変形させ、それによって非磁性層及び磁性層が変形し、磁性層の表面平滑性が劣化する。これに対して、50nm以下の平均粒子径を有する微粒子の第1の非磁性粉末と硬化性樹脂とを含有する平滑化層は、非磁性支持体の表面突起の被覆性に優れており、非磁性支持体の表面突起が平滑化層の表面に転写され難い。また、上記平滑化層は硬化性樹脂を含有するから、非磁性層の形成前に平滑化層を硬化処理すれば、高い硬度を有する平滑化層を形成することができる。これにより、非磁性層及び磁性層の形成後にカレンダ処理が行われても、非磁性支持体の表面突起による平滑化層の変形も少ない。このため、上記平滑化層を非磁性支持体と非磁性層との間に形成すれば、表面突起高さ(P0)が150nm以上の粗い表面を有する非磁性支持体を用いても、薄層の磁性層の表面平滑性の劣化を抑えることができる。また、上記平滑化層は、第1の非磁性粉末と、結合剤として硬化性樹脂とを含有するとともに、第1の非磁性粉末100質量部に対して結合剤を15〜78質量部含有するから、平滑化層と非磁性支持体とのブロッキングを抑えることができる。さらに、上記平滑化層は温湿度変化による膨張率が小さいため、寸法安定性に優れる磁気記録媒体を得ることができる。
前記平滑化層は、0.1〜2μmの厚さを有することが好ましい。平滑化層の厚さが上記範囲であれば、粗い表面を有する非磁性支持体の表面突起を十分に被覆することができるとともに、磁気記録媒体全体の厚さを抑えることができる。
以上のように、本発明によれば、粗い表面を有する非磁性支持体を用いた場合でも、磁性層の表面の突起や磁気記録媒体の寸法変化に起因するエラーを低減できるととともに、平滑化層と非磁性支持体の裏面とのブロッキングを低減することができる。
本実施の形態において、非磁性支持体としては、表面突起高さ(P0)が150nm以上の非磁性支持体が用いられる。このような粗い表面を有する非磁性支持体を用いても、本実施の形態の平滑化層を形成することにより、非磁性支持体の表面の突起を十分に被覆することができる。また、硬化性樹脂を含有する平滑化層上に非磁性層が形成されるため、カレンダ処理時における非磁性支持体の表面突起による平滑化層の変形を低減することができる。なお、非磁性支持体の表面突起高さ(P0)は150nm以上であれば、均一な非磁性支持体を製造するにあたっての製造上の負担が少なく、それゆえ生産性の観点からはその上限は限定されるものではないが、通常、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。なお、磁気記録媒体から非磁性支持体の表面突起高さ(P0)を求める場合、テトラヒドロフランを滲みこませた綿棒で磁性層、非磁性層、及び平滑化層を剥離することにより非磁性支持体の表面突起高さ(P0)を測定することができる。
非磁性支持体としては、従来公知の磁気記録媒体用の非磁性支持体を使用できる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなどからなる厚さが1.5〜7μmのプラスチックフィルムが挙げられる。市場で入手可能な非磁性支持体としては、具体的には、例えば、東レ社製のルミラー、帝人社製のテオネックスなどが挙げられる。非磁性支持体の厚さが1.5μm未満となると、製膜が難しくなり、高コストになるだけでなく、強度が低くなって、寸法安定性が低下する傾向がある。一方、非磁性支持体の厚さが7μmを超えると、高容量化のために全厚10μm以下の磁気記録媒体を製造する場合、薄層の磁性層を形成しても、非磁性層及び平滑化層の厚さが低下するため、非磁性支持体の表面突起を被覆する効果が低下する。また、寸法安定性が問題になってくる。なお、本明細書において、非磁性支持体、平滑化層、及び磁性層の各表面突起高さ(P0)は、後述する走査型白色光干渉法により測定することができる。
非磁性支持体の長手方向のヤング率は5.8GPa以上が好ましく、7.1GPa以上がより好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.8GPa以上であれば、磁気記録媒体の走行を安定化させることができる。ヘリキャルスキャン方式のシステムに用いられる磁気記録媒体の場合、非磁性支持体の長手方向のヤング率(MD)と幅方向のヤング率(TD)との比(MD/TD)は0.6〜0.8が好ましく、0.65〜0.75がより好ましい。長手方向のヤング率(MD)と幅方向のヤング率(TD)との比(MD/TD)が上記範囲であれば、磁気ヘッドのトラックの入り側から出側間の出力のばらつき(フラットネス)を抑えることができる。また、リニアレコーディング方式のシステムに用いられる磁気記録媒体の場合、長手方向のヤング率(MD)と幅方向のヤング率(TD)との比(MD/TD)は0.7〜1.3が好ましい。さらに、非磁性支持体の幅方向の温度膨張係数は−10〜10×10−6が好ましく、湿度膨張係数は0〜10×10−6が好ましい。温度及び湿度膨張係数が上記範囲であれば、温湿度変化によるエラーレートをさらに改善することができる。
本実施の形態の磁気記録媒体は、上記非磁性支持体の磁性層が形成される面の非磁性支持体と非磁性層との間に、50nm以下の平均粒子径を有する第1の非磁性粉末と、硬化性樹脂を有する結合剤とを含有し、第1の非磁性粉末100質量部に対して結合剤を15〜78質量部含有する平滑化層を有する。このような平滑化層を非磁性層が形成される前に予め形成することにより、粗い表面を有する非磁性支持体を用いた場合でも、優れた表面平滑性を有する磁性層を形成できるとともに、寸法安定性に優れ、ブロッキングの少ない磁気記録媒体を得ることができる。
平滑化層に含まれる第1の非磁性粉末としては、従来公知の非磁性粉末を使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、ITOなどの導電性粉末;α−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素などの6以上のモース硬度を有する無機粉末;炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属塩類粉末;ベンゾグアナミン、架橋ポリスチレン、ポリエチレン、シリコン樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機溶剤に不溶性の有機粉末などが挙げられる。これらは単独でも複数組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、カーボンブラック、ITOなどの導電性粉末や酸化鉄が好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを好適に用いることができる。このような第1の非磁性粉末を含有する平滑化層は、樹脂のみからなる樹脂層と比べて、非磁性支持体との接着力が弱く、また帯電が少ないため、ブロッキングを低減することができる。
第1の非磁性粉末は、50nm以下の平均粒子径を有し、好ましくは20nm以下の平均粒子径を有し、さらに好ましくは17nm以下の平均粒子径を有する。平均粒子径が50nmを超えると、平滑化層自体の表面平滑性が低下し、磁性層の表面平滑性が劣化して、平滑化層を設ける意義が失われる。一方、第1の非磁性粉末の平均粒子径は小さい程、表面平滑性に優れた平滑化層が形成できるため、好ましい。ただし、平均粒子径が小さくなりすぎると、非磁性粉末の製造が困難になるとともに、非磁性粉末の分散性が低下する。このため、第1の非磁性粉末の平均粒子径は10nm以上が好ましい。本明細書において、粉末の平均粒子径は、ウルトラミクロトーム超薄切片法またはFIB(Focused Ion Beam)法により作製した磁気記録媒体の断面スライス試料(厚さ:約0.1μm)を、透過型電子顕微鏡(加速電圧:120kV,倍率:10万倍)で観察して、写真を撮影し、写真から20個の粉末を任意に選択して、粉末の最大さしわたし(針状の粉末の場合:長軸径、板状の粉末の場合:最も長い板径)を粒子径として測定し、その平均を算出することにより求めることができる。
平滑化層は結合剤として硬化性樹脂を含有する。非磁性層の形成前に硬化性樹脂を含有する平滑化層を形成し、これを硬化処理することにより、高硬度の平滑化層を形成することができるため、非磁性層及び磁性層の形成後にカレンダ処理が行われても、平滑化層の変形が少なく、それゆえ粗い表面を有する非磁性支持体を用いても平滑化層上に形成された非磁性層及び磁性層の変形を抑えることができる。その結果、優れた表面平滑性を有する磁性層を形成することができる。また、第1の非磁性粉末及び硬化性樹脂を含有する平滑化層は、水溶性樹脂のような非硬化性樹脂のみからなる樹脂層と比べて、温湿度変化による変形が小さいため、寸法安定性に優れる磁気記録媒体を得ることができる。さらに、結合剤の含有量が15〜78質量部であれば、平滑化層を形成した非磁性支持体を巻き取っても、平滑化層と非磁性支持体の裏面とのブロッキングを低減することができる。平滑化層の結合剤中の硬化性樹脂の含有量は、結合剤全量中、10〜100質量%が好ましい。硬化性樹脂の含有量が10質量%未満であると、平滑化層の硬化性が低下して、平滑化層の表面平滑性や寸法安定性が低下したり、ブロッキングが発生しやすくなる傾向がある。
硬化性樹脂としては、従来磁気記録媒体で使用されている熱硬化性樹脂や放射線硬化性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。これらは単独でも複数組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などが挙げられる。
放射線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリルモノマーや(メタ)アクリルオリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、分子内に二重結合を2個以上有し、且つ二重結合1個当り50〜300の重量平均分子量を有する放射線硬化性樹脂が好ましい。このような放射線硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ノボラックジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグルコールジ(メタ)アクリレートなどの二官能(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの三官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの四官能以上の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、上記モノマーをポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの骨格で分子鎖延長してオリゴマー化した放射線硬化性樹脂を使用してもよい。これらは単独でも複数組み合わせて使用してもよい。
また、平滑化層は、硬化性樹脂の一部として、上記熱硬化性樹脂や放射線硬化樹脂中に含まれる官能基と結合し架橋構造を形成する架橋剤を含有することが好ましい。このような架橋剤としては、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物;イソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有する化合物との反応生成物;イソシアネート化合物の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが挙げられる。硬化性樹脂の一部として架橋剤を使用する場合、架橋剤の含有量は、硬化性樹脂全量中、1〜50質量%が好ましい。
平滑化層に用いられる結合剤は、上記の硬化性樹脂以外に、第1の非磁性粉末の分散性を向上させるために、必要により熱可塑性樹脂を含有してもよい。このような熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂などの塩化ビニル系樹脂;ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂などが挙げられる。ただし、硬化性を向上するために、平滑化層は硬化性樹脂のみからなる結合剤を含有することが好ましく、熱硬化性樹脂と架橋剤とのみからなる結合剤を含有することがより好ましい。
上記の熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂は、分散性や硬化性を向上する目的で、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、具体的には、例えば、COOM、SOM、OSOM、P=O(OM)、O−P=O(OM)(Mは、水素原子、アルカリ金属塩またはアミン塩である)、OH、NR、NR(R,R,R,R,及びRは、水素または炭化水素基であり、通常その炭素数が1〜10である)、エポキシ基などが挙げられる。
本実施の形態において、平滑化層中の結合剤の含有量は、総量で、第1の非磁性粉末100質量部に対して、15〜78質量部であり、好ましくは15〜60質量部であり、より好ましくは45〜60質量部であり、最も好ましくは45〜55質量部である。平滑化層の結合剤の含有量が15質量部より少ないと、第1の非磁性粉末同士を結合する効果が不十分となり、非磁性層及び磁性層を形成するときに平滑化層の表面が乱れ、それによって均一な非磁性層及び磁性層を形成できなくなる。一方、結合剤の含有量が78質量部より多いと、寸法安定性が劣化し、また平滑化層と非磁性支持体の裏面とのブロッキングが顕著となる。なお、結合剤の含有量は、硬化性樹脂の一部として架橋剤を使用する場合には、架橋剤の含有量も含む値である。
平滑化層の厚さは0.1〜2μmが好ましい。平滑化層の厚さが0.1μm以上であれば、粗い表面を有する非磁性支持体を用いても、非磁性支持体の表面突起を十分被覆することができる。一方、平滑化層の厚さが2μm以下であれば、磁気記録媒体の全厚が不要に厚くなることが避けられ、体積当りの記録容量を向上させることができる。本明細書において、磁気記録媒体を構成する各層の厚さは、FIB(Focused Ion Beam)法により作製した磁気記録媒体の断面を走査型電子顕微鏡(加速電圧:2kV,倍率:5万倍)で観察して、写真を撮影し、写真から20箇所の各層の厚さ(隣接する層の界面間の距離)を測定し、その平均を算出することにより求めることができる。
平滑化層の表面突起高さ(P0)は100nm以下が好ましく、90nm以下がより好ましく、70nm以下がさらに好ましい。平滑化層の表面突起高さ(P0)が100nm以下であれば、磁性層の表面平滑性の劣化が抑えられ、高出力が得られるとともに、エラーの原因となるドロップアウトを低減することができる。なお、平滑化層の表面突起高さ(P0)は低いほど、磁性層の表面平滑性を向上できるため、その下限は特に限定されるものではない。ただし、平滑化層の表面突起高さ(P0)が小さくなりすぎると、磁気記録媒体の製造工程において、平滑化層を設けた非磁性支持体の搬送速度が上げられない場合があるため、表面突起高さ(P0)は10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。
本実施の形態の磁気記録媒体は、平滑化層上に第2の非磁性粉末及び結合剤を含有する非磁性層を有する。このような非磁性層を形成することにより、磁性層表面の電気抵抗を低減したり、磁性層に潤滑剤を供給することができる。
非磁性層に含まれる第2の非磁性粉末としては、上記した第1の非磁性粉末と同一または異なる非磁性粉末を使用することができる。これら中でも、剛性と導電性の両立を目的として、無機粉末と導電性粉末の併用が好ましい。このような無機粉末としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、酸化鉄単独または酸化鉄と酸化アルミニウムの混合粉末が好ましい。無機粉末の粒子形状は、球状、板状、針状、紡錘状のいずれでもあってもよい。針状または紡錘状の無機粉末の平均粒子径(平均長軸径)は50〜200nmが好ましく、平均短軸径は5〜100nmが好ましい。また、粒状の無機粉末の場合、平均粒子径は5〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましい。導電性粉末としては、第1の非磁性粉末として好適に用いられるカーボンブラックや、10〜100nmの平均粒子径を有する板状ITO粉末などが挙げられる。なお、平滑、且つ厚みムラの少ない非磁性層を形成するため、シャープな粒度分布を有する非磁性粉末が特に好ましい。
非磁性層の結合剤としては、既述した平滑化層に用いられる結合剤を使用することができる。これらの中でも、第2の非磁性粉末の分散性及び非磁性層の剛性を考慮すれば、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂と、ポリウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂と、ポリイソシアネートなどの架橋剤とを含有する結合剤が好ましい。非磁性層中の結合剤の含有量は、特に限定されるものではないが、通常、第2の非磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。特に、塩化ビニル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を併用する場合、塩化ビニル系樹脂を5〜30質量部、ポリウレタン系樹脂を2〜20質量部使用することが好ましい。また、架橋剤を使用する場合、架橋剤の含有量は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の総量100質量部に対して、1〜50質量部が好ましい。
非磁性層は、上記の非磁性粉末及び結合剤を含有していれば、潤滑剤、分散剤などの任意の添加剤をさらに含有してもよい。特に、本実施の形態の磁気記録媒体は高容量化のために薄層の磁性層が形成されるため、耐久性付与の目的で非磁性層は潤滑剤を含有することが好ましい。このような潤滑剤としては、具体的には、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが挙げられる。非磁性層中の潤滑剤の含有量は、第2の非磁性粉末100質量部に対して、0.2〜15質量部が好ましい。
脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸が好ましい。脂肪酸は、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能に優れる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸が好ましい。脂肪酸エステルとしては、前記脂肪酸のエステルが好ましい。脂肪酸アミドとしては、パルミチン酸、ステアリン酸などの炭素数が10以上の脂肪酸アミドが好ましい。
分散剤としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸などの炭素数12〜18個の脂肪酸〔RCOOH(Rは炭素数11〜17個のアルキル基またはアルケニル基である)〕;上記脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩からなる金属石けん;上記脂肪酸のエステル;上記脂肪酸のアミド;ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル;レシチン;トリアルキルポリオレフィンオキシ化合物(アルキル基の炭素数は1〜5個であり、オレフィンはエチレン、プロピレンなどのアルキレン基である)の第四級アンモニウム塩、硫酸塩、スルホン酸塩、りん酸塩;銅フタロシアニンなどが挙げられる。これらは、単独でも複数組み合わせて使用してもよい。分散剤の含有量は、結合剤100質量部に対し、0.5〜20質量部が好ましい。
非磁性層の厚さは0.2〜3μmが好ましく、0.2〜2μmがより好ましく、0.2〜1.2μmがさらに好ましい。非磁性層の厚さが0.2μm以上であれば、耐久性を向上することができる。一方、非磁性層の厚さが3μm以下であれば、高容量化のために全厚を薄くすることができる。本実施の形態の磁気記録媒体によれば、非磁性層の形成前に非磁性支持体の表面突起の被覆性に優れる平滑化層が形成されるため、このような薄い非磁性層と磁性層とを同時重層塗布方式で形成しても、非磁性支持体の表面突起による変形が少なく、それゆえ表面平滑性に優れた磁性層を形成することができる。
本実施の形態の磁気記録媒体は、上記の非磁性層上に薄層の磁性層を有する。本実施の形態の磁気記録媒体は、非磁性支持体と非磁性層との間に平滑化層が予め形成されているため、粗い表面を有する非磁性支持体を用いても、表面平滑性に優れた磁性層を形成することができる。
磁性層に用いられる磁性粉末としては、従来磁気記録媒体に用いられている磁性粉末を使用することができる。このような磁性粉末としては、具体的には、例えば、強磁性鉄系金属磁性粉末、窒化鉄系磁性粉末、板状の六方晶系フェライト磁性粉末などが挙げられる。磁性粉末の平均粒子径は10〜50nmが好ましく、15〜40nmがより好ましい。平均粒子径が10nm以上であれば、保磁力の低下や粒子の表面エネルギーの増大を招くことなく、塗料中で良好に磁性粉末を分散させることができる。一方、平均粒子径が50nm以下であれば、磁性粉末の大きさに基づく粒子ノイズを低減することができる。
磁性層に用いられる結合剤としては、従来公知の結合剤を使用することができる。これらの中でも、磁性粉末の分散性及び磁性層の剛性を考慮すれば、非磁性層に用いられる結合剤と同様に、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂と、ポリウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂と、ポリイソシアネートなどの架橋剤とを含有する結合剤が好ましい。磁性層中の結合剤の含有量は、磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。特に、塩化ビニル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を併用する場合、塩化ビニル系樹脂を5〜30質量部、ポリウレタン系樹脂を2〜20質量部使用することが好ましい。また、架橋剤を使用する場合、架橋剤の含有量は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の総量100質量部に対して、1〜50質量部が好ましい。
磁性層は、上記の磁性粉末及び結合剤を含有していれば、研磨剤、潤滑剤、分散剤など公知の添加剤をさらに含有してもよい。特に、耐久性の観点から、研磨剤及び潤滑剤が好ましく用いられる。研磨剤としては、具体的には、例えば、α−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素などが挙げられる。これらは、単独でも複数組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、モース硬度6以上の研磨剤がより好ましい。研磨剤の平均粒子径は、使用する研磨剤の種類にもよるが、10〜200nmが好ましい。研磨剤の含有量は、磁性粉末100質量部に対して、5〜20質量部が好ましく、8〜18質量部がより好ましい。潤滑剤としては、非磁性層で用いられる潤滑剤と同様の潤滑剤を使用することができる。これらの中でも、脂肪酸と脂肪酸エステルの併用が好ましい。磁性層に潤滑剤を含有させる場合、磁性層中の磁性粉末、研磨剤、導電性粉末などの全粉末の総量に対して、脂肪酸を0.5〜5質量%、脂肪酸エステルを0.2〜3質量%、脂肪酸アミドを0.5〜5.0質量%含有させることが好ましい。上記各潤滑剤の含有量であれば、摩擦係数を十分に低減できるとともに、磁性層の強靭性を確保することができる。分散剤としては、上記した非磁性層と同様の分散剤を使用することができる。
また、磁性層は、必要により、導電性及び表面潤滑性の向上を目的として、従来公知のカーボンブラックを含有してもよい。このようなカーボンブラックとしては、具体的には、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。カーボンブラックの平均粒子径は10〜300nmが好ましい。平均粒子径が10nm以上であれば、カーボンブラックが良好に分散された磁性層を形成することができる。一方、平均粒子径が300nm以下であれば、表面平滑性に優れた磁性層を形成することができる。また、必要により、平均粒子径の異なるカーボンブラックを2種以上用いてもよい。
磁性層の厚さは、短波長記録特性の向上を目的として、10〜150nmが好ましく、20〜90nmがより好ましい。磁性層の厚さが10nm以上であれば、より均一な磁性層を形成することができ、高出力を得ることができる。一方、磁性層の厚さが150nm以下であれば、短波長記録においても記録再生時の厚み損失を低減することができる。
磁性層の表面突起高さ(P0)は60nm以下が好ましい。本実施の形態の磁気テープは、上記の平滑化層が非磁性支持体と非磁性層との間に形成されているため、粗い表面を有する非磁性支持体を用いても、上記のような非常に平滑な表面を有する磁性層を得ることができる。このため、エラーの少ない磁気記録媒体が得られる。なお、磁性層の表面突起高さ(P0)は低いほど好ましく、エラーの低減のためにその下限は特に限定されるものではない。ただし、表面突起高さ(P0)のより低い磁性層を形成するためには、塗料の分散に長時間を要したり、カレンダ処理において高圧が必要なるなど、製造工程における負担が増えるため、5nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。
磁性層の長手方向の残留磁束密度と磁性層の厚さとの積は0.0018〜0.05μTmが好ましく、0.0036〜0.05μTmがより好ましく、0.004〜0.05μTmがさらに好ましい。前記積が小さすぎると、再生ヘッドとしてMRヘッドが用いられる場合、再生出力が小さくなる傾向がある。一方、前記積が大きすぎると、MRヘッドが飽和して、再生出力が歪みやすくなる。
本実施の形態の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に上記の平滑化層、非磁性層、及び磁性層をこの順に有していれば、さらに他の層を有していてもよい。例えば、非磁性支持体と平滑化層との間に、平滑化層の接着性と表面平滑性を高める目的で、易接着性樹脂を含有する易接着層がさらに形成されていてもよい。このような易接着性樹脂としては、具体的には、例えば、塩化ビニル、塩素化塩化ビニル、酢酸ビニル、酢酸ビニル−マレイン酸エステル、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、スチレン−アクリル酸エステル、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテルなどを構成単位として含む重合体または共重合体の熱可塑性樹脂;フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、エポキシ−ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ウレタン−ウレア系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂とイソシアネートプレポリマーとの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートとの混合物などの熱硬化性樹脂や反応性樹脂などが挙げられる。これらは単独でも複数組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ポリエステル系樹脂は、密着性、ガラス転移温度、溶解性などの物性面で優れているため、好ましい。特に、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基を有するポリエステル系樹脂がより好ましい。また、磁性層の上に、トップコート層(最上層非磁性層)をさらに設けてもよい。
また、平滑化層、非磁性層、及び磁性層が形成されている面と反対面にバックコート層を設けてもよい。バックコート層は、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックを含有することが好ましい。バックコート層の結合剤としては、摩擦係数を低減し走行性を向上するため、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂の併用が好ましい。バックコート層を形成する場合、バックコート層の厚さは0.2〜0.8μmが好ましく、0.3〜0.8μmがより好ましい。
本実施の形態において、磁気記録媒体の全厚は、体積当たりの記録容量を高めるためにも、10μm以下が好ましく、9.5μm以下がより好ましい。
次に、本実施の形態の磁気記録媒体の製造方法について説明する。
平滑化層、非磁性層、及び磁性層を形成するにあたっては、上記した各構成材料と有機溶剤とを混合した、平滑化層用塗料、非磁性層用塗料、及び磁性層用塗料がそれぞれ調製される。これらの平滑化層用塗料、非磁性層用塗料、及び磁性層用塗料の調製にあたっては、従来から公知の磁気記録媒体の製造で使用されている塗料製造方法を使用できる。具体的には、ニーダなどによる混練工程と、サンドミル、ピンミルなどによる一次分散工程との併用が好ましい。また、非磁性支持体上に各塗料を塗布するにあたっては、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布などの従来から公知の磁気記録媒体の製造で使用されている塗布方式を使用できる。
各塗料を調製するにあたって使用される有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤;トルエンなどの芳香族系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は単独でも複数組み合わせて使用してもよい。
平滑化層を形成する場合、平滑化層用塗料を非磁性支持体上に塗布し、乾燥して、所定の厚みを有する平滑化層を形成した後、非磁性層を形成する前に硬化処理する。硬化処理を行うことにより、平滑化層中に含まれる硬化性樹脂が硬化し、平滑化層の硬度を高めることができる。これにより、非磁性層及び磁性層形成後のカレンダ処理で平滑化層に高圧が付与されても、平滑化層が変形し難くなる。その結果、粗い表面を有する非磁性支持体を用いた場合でも、非磁性支持体の表面突起による平滑化層の変形が抑えられ、それによって非磁性層及び磁性層の変形を抑えることができる。また、平滑化層が硬化処理されていれば、該平滑化層上に非磁性層用塗料が塗布されて、非磁性層用塗料中の有機溶剤と平滑化層の表面とが接触しても、平滑化層の表面の乱れを抑えることができる。これらにより、優れた表面平滑性を有する磁性層を均一に形成することができる。さらに、平滑化層が硬化処理されていれば、平滑化層が形成された非磁性支持体を巻き取っても、平滑化層と非磁性支持体の裏面とのブロッキングを抑えることができる。
平滑化層の硬化処理は、平滑化層が熱硬化性樹脂を含有する場合、加熱硬化処理を、平滑化層が放射線硬化性樹脂を含有する場合、放射線硬化処理を使用することができる。加熱硬化処理の温度は40〜100℃が好ましく、40〜70℃がより好ましい。低温では硬化に長時間が必要となり、生産性が低下する一方、高温では原反が変形する恐れがある。加熱硬化処理の時間は、生産性を考慮すれば、1〜72時間が好ましい。放射線硬化処理の放射線量は、総量で、0.5〜20Mradが好ましく、2〜15Mradがより好ましい。
上記のようにして平滑化層が形成された後、平滑化層上に非磁性層用塗料及び磁性層用塗料を順次、塗布、乾燥することにより、非磁性層及び磁性層を形成することができる。非磁性層及び磁性層の形成にあたっては、非磁性層を塗布、乾燥した後、磁性層を塗布、乾燥する逐次重層塗布方式を採用してもよいし、非磁性層が湿潤状態にあるうちに磁性層を形成する同時重層塗布方式を採用してもよい。また、非磁性層及び磁性層を形成するにあたっては、磁性層が未乾燥のうちに所定の方向に磁界を印加する配向処理を行うことが好ましい。配向処理は、面内配向処理、垂直配向処理いずれであってもよい。また、配向装置としては、永久磁石、ソレノイド磁石など公知のものを単独でまたは複数組み合わせて使用することができる。
本実施の形態においては、上記のようにして平滑化層、非磁性層、及び磁性層を形成した後、磁性層の表面平滑性及び充填性の向上を目的としてカレンダ処理を行うことが好ましい。カレンダ装置としては、加圧ロールを3〜7段配設した装置を使用することができる。加圧ロールは、金属ロールのみを使用してもよいし、金属ロールとプラスチックロールとを組み合わせて使用してもよい。プラスチックロールとしては、エポキシ、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミドなどの耐熱性ロール(これらは、カーボン、金属、その他の無機化合物が練り込まれていてもよい)を用いることができる。カレンダ処理の温度は、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。また、カレンダ処理の線圧力は、196kN/m以上が好ましく、294kN/m以上がより好ましい。さらに、カレンダ処理時の搬送速度は、20〜700m/分が好ましい。
本実施の形態の磁気記録媒体は、カレンダ処理後、非磁性層及び磁性層の硬化処理を行うことが好ましい。硬化処理の条件は、平滑化層の硬化処理と同様の条件を使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。なお、以下において、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
<実施例1>
[平滑化層用塗料の調製]
表1に示す平滑化層用塗料成分(1)を回分式ニーダで混練した。得られた混練物と、表2に示す平滑化層用塗料成分(2)とをディスパを用いて撹拌した後、混合物をサンドミル(滞留時間:60分)で分散した。得られた分散液と、表3に示す平滑化層用塗料成分(3)とをディスパを用いて撹拌し、これをフィルタでろ過して、平滑化層用塗料を調製した。
Figure 2011023074
Figure 2011023074
Figure 2011023074
[非磁性層用塗料の調製]
表4に示す非磁性層用塗料成分(1)を回分式ニーダで混練した。得られた混練物と、表5に示す非磁性層用塗料成分(2)とをディスパを用いて撹拌した後、混合物をサンドミル(滞留時間:60分)で分散した。得られた分散液と、表6に示す非磁性層用塗料成分(3)とをディスパを用いて撹拌し、これをフィルタでろ過して、非磁性層用塗料を調製した。
Figure 2011023074
Figure 2011023074
Figure 2011023074
[磁性層用塗料の調製]
表7に示す磁性層用塗料成分(1)を高速撹拌混合機で高速混合し、得られた混合物を連続式2軸混練機で混練した。次いで、連続式2軸混練機に、表8に示す磁性層用塗料成分(2)を2段階に分けて加えて混練物を希釈し、これをサンドミル(滞留時間:45分)で分散した。得られた分散液と、表9に示す磁性層用塗料成分(3)とをディスパを用いて撹拌し、これをフィルタでろ過して、磁性層用塗料を調製した。
Figure 2011023074
Figure 2011023074
Figure 2011023074
[バックコート層用塗料の調製]
下記表10に示すバックコート層用塗料成分を混合した混合液を、サンドミルで分散処理(滞留時間:45分)した。得られた分散液にポリイソシアネート15部を加え、撹拌し、これをフィルタでろ過して、バックコート層用塗料を調製した。
Figure 2011023074
[磁気テープの作製]
まず、ベースロールから非磁性支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム,厚さ:6.1μm,磁性層形成面のP0:250nm)を巻き出し、これを搬送しながら、上記の平滑化層用塗料を、非磁性支持体上に、乾燥及びカレンダ処理後の平滑化層の厚さが0.3μmとなるように塗布し、乾燥して、平滑化層を形成した原反ロールを作製した。この原反ロールを60℃で48時間加熱硬化処理して、平滑化層を硬化させた。
次に、上記原反ロールから非磁性支持体を巻き出し、これを搬送しながら、平滑化層上に、上記の非磁性層用塗料及び磁性層用塗料を、乾燥及びカレンダ処理後の非磁性層及び磁性層の厚さがそれぞれ1.2μm及び0.1μmとなるように、エクストルージョン型コータにて同時重層塗布し、乾燥して、非磁性層及び磁性層を形成した。なお、このときソレノイド磁石を用いて配向磁界(400kA/m)を印加しながら、面内配向処理を行った。
次に、上記のバックコート層用塗料を、非磁性支持体の磁性層が形成された面の反対面に、乾燥及びカレンダ処理後の厚さが0.5μmとなるように塗布し、乾燥して、バックコート層を形成した。
次に、上記のように非磁性支持体の片面に平滑化層、非磁性層、及び磁性層を、他面にバックコート層を形成した磁気シートを、7段の金属ロールを有するカレンダ装置で鏡面化処理した(温度:100℃,線圧力:196kN/m)。この鏡面化処理した磁気シートをシートコアに巻いた状態で、60℃で72時間加熱硬化処理した。得られた磁気シートを1/2インチ幅に裁断し、サーボライタにてサーボ信号を書き込み、評価用の磁気テープを作製した。
<実施例2>
実施例1の平滑化層用塗料の調製において、ポリエステルポリウレタン樹脂43部をポリエステルポリウレタン樹脂36部に、ポリイソシアネート12部をポリイソシアネート9部に変更した以外は実施例1と同様にして平滑化層用塗料を調製した(結合剤の含有量:45部)。そして、実施例1の磁気テープの作製において、上記平滑化層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<実施例3>
実施例1の平滑化層用塗料の調製において、ポリエステルポリウレタン樹脂43部をポリエステルポリウレタン樹脂63部に、ポリイソシアネート12部をポリイソシアネート15部に変更した以外は実施例1と同様にして平滑化層用塗料を調製した(結合剤の含有量:78部)。そして、実施例1の磁気テープの作製において、上記平滑化層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<実施例4>
実施例1の磁気テープの作製において、平滑化層の厚さを1μmとした以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<実施例5>
実施例1の平滑化層用塗料の調製において、ポリエステルポリウレタン樹脂43部をポリエステルポリウレタン樹脂12部に、ポリイソシアネート12部をポリイソシアネート3部に変更した以外は実施例1と同様にして平滑化層用塗料を調製した(結合剤の含有量:15部)。そして、実施例1の磁気テープの作製において、上記平滑化層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<実施例6>
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層形成面の表面突起高さ(P0)が150nmの非磁性支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム,厚さ:6.1μm)を用い、平滑化層の厚さを0.1μmとした以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<実施例7>
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層形成面の表面突起高さ(P0)が150nmの非磁性支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム,厚さ:6.1μm)を用い、平滑化層の厚さを0.2μmとした以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<実施例8>
実施例1の平滑化層用塗料の調製において、カーボンブラック100部を粒状酸化鉄(平均粒子径:50nm)100部に変更した以外は実施例1と同様にして平滑化層用塗料を調製した(結合剤の含有量:55部)。そして、実施例1の磁気テープの作製において、上記平滑化層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<比較例1>
実施例1の磁気テープの作製において、平滑化層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<比較例2>
実施例1の平滑化層用塗料の調製において、カーボンブラックを使用しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂のみからなる平滑化層用塗料を調製した。この樹脂のみからなる平滑化層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<比較例3>
実施例1の平滑化層用塗料の調製において、カーボンブラック(平均粒子径:17nm,吸油量:74cc/100g)100部をカーボンブラック(平均粒子径:56nm,吸油量:120cc/100g)100部に変更した以外は実施例1と同様にして平滑化層用塗料を調製した(結合剤の含有量:55部)。そして、実施例1の磁気テープの作製において、上記平滑化層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<比較例4>
実施例1の平滑化層用塗料の調製において、ポリエステルポリウレタン樹脂43部をポリエステルポリウレタン樹脂10部に、ポリイソシアネート12部をポリイソシアネート3部に変更した以外は、実施例1と同様にして平滑化層用塗料を調製した(結合剤の含有量:13部)。そして、実施例1の磁気テープの作製において、上記平滑化層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製したが、非磁性層及び磁性層形成時に平滑化層が崩れ、均一な非磁性層及び磁性層を形成することができなかった。
<比較例5>
実施例1の平滑化層用塗料の調製において、ポリエステルポリウレタン樹脂43部をポリエステルポリウレタン樹脂64部に、ポリイソシアネート12部をポリイソシアネート18部に変更した以外は、実施例1と同様にして平滑化層用塗料を調製した(結合剤の含有量:82部)。そして、実施例1の磁気テープの作製において、上記平滑化層用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
<比較例6>
実施例1の磁気テープの作製において、平滑化層の硬化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気テープを作製した。
<比較例7>
実施例1の磁気テープの作製において、平滑化層を形成せず、非磁性層の厚さを1.5μmとした以外は、実施例1と同様にして原反ロール及び評価用の磁気テープを作製した。
以上のようにして作製した各原反ロール及び磁気テープを用いて以下の評価を行った。表11及び12はこれらの結果を示す。
〔表面突起高さ(P0)〕
非磁性支持体単独(磁性層形成面)、硬化処理後の平滑化層、及びカレンダ処理後の磁性層のそれぞれの表面を光学顕微鏡(倍率:100倍)で観察し、突起が見られる部分を5箇所マーキングした。この各マーキング箇所の表面突起高さを、汎用三次元表面構造解析装置(ZYGO社製,NewView5000)で、走査型白色光干渉法(Scan Length:5μm,測定視野:350μm×280μm)により測定し、5箇所の平均値を求めた。なお、比較例6においては平滑化層の硬化処理を行わなかったため、硬化処理前の平滑化層の表面突起高さを求めた。
〔エラー回数〕
LTO2用のヘッドを用いて、評価用の磁気テープを速度1.83m/sで走行させながら波長0.39μmの矩形波を記録再生した。このとき、再生信号振幅のベース対ピーク値が平均出力に対して35%より小さく、且つその時間が1μsec以上連続して続いた場合を1回のエラーとしてカウントし、磁気テープ100m当りのエラー回数を測定した。
〔膨張率〕
30℃,80%RH、及び10℃,10%RHの各環境下に評価用の磁気テープを3時間放置した。放置後、各環境下で磁気テープの幅寸法を三次元測定器を用いて測定し、磁気テープの幅方向の膨張率を下記の式により求め、寸法安定性を評価した。
膨張率(ppm)=[(30℃,80%RH保存後の磁気テープの幅寸法)−(10℃,10%RH保存後の磁気テープの幅寸法)/(10℃,10%RH保存後の磁気テープの幅寸法)]×10
〔ブロッキング〕
各磁気テープの作製において、非磁性層及び磁性層を形成する際に、原反ロールから巻き出される非磁性支持体の巻き出し状態を観察し、以下の基準によりブロッキングを評価した。
○:抵抗なく非磁性支持体が巻き出されている
△:部分的に平滑化層と非磁性支持体の裏面との貼り付きが見られる
×:全面的に平滑化層と非磁性支持体の裏面との貼り付きが見られる
Figure 2011023074
Figure 2011023074
上記表に示すように、本発明の実施例1〜8の磁気テープは、粗い表面を有する非磁性支持体が用いられているが、表面突起高さの低い平滑化層が形成されており、非磁性支持体の表面突起により平滑化層の表面平滑性が劣化していないことが分かる。また、この平滑化層を硬化処理した後、薄い非磁性層及び磁性層を同時重層塗布により形成しても、優れた表面平滑性を有する磁性層が形成されており、非磁性支持体の突起高さが磁性層の表面平滑性に影響していないことが分かる。これは、これらの実施例の平滑化層が微粒子の非磁性粉末と一定量の硬化性樹脂を含有しているため、非磁性支持体の表面突起の被覆性に優れているとともに、該平滑化層が硬化処理されているため、非磁性層を平滑化層上に形成しても平滑化層の表面の乱れが少ないことと、カレンダ処理によっても平滑化層の変形が少ないためと考えられる。また、平滑化層中の結合剤の含有量が15〜78質量部であれば、温湿度変化による膨張率も小さいことが分かる。このため、本発明の実施例によれば、エラーの少ない磁気テープを得ることができる。特に、非磁性粉末100質量部に対して結合剤を45〜55質量部含有する平滑化層を設けた磁気テープは、結合剤の含有量のみが異なる磁気テープに比べて、エラーが顕著に低減されることが分かる。これは、これらの磁気テープでは、表面平滑性と膨張率の良好なバランスが得られているためと考えられる。さらに、平滑化層中の結合剤の含有量が15〜78質量部であれば、平滑化層と非磁性支持体の裏面とのブロッキングも抑えられていることが分かる。
これに対して、平滑化層を有さない磁気テープは、磁性層の表面突起高さが大きくなって、エラーが増大することが分かる。また、平滑化層を設けず、非磁性層を厚くしても同様であることが分かる。さらに、非磁性粉末の種類及び結合剤の含有量が実施例のそれらと同じ平滑化層を設けても、平滑化層の硬化処理を行うことなく非磁性層を形成した場合、磁性層の表面突起高さが大きくなり、非磁性支持体の表面突起による磁性層の変形が抑えられないことが分かる。これは、非磁性層及び磁性層の形成前に平滑化層の硬化処理が行われていないため、カレンダ処理によって未硬化状態の平滑化層が圧縮され、粗い表面を有する非磁性支持体を用いた場合、非磁性支持体の表面突起が平滑化層を変形させ、それによって磁性層の表面平滑性を低下させるためと考えられる。
また、硬化性樹脂のみを含有する平滑化層は、同一の厚さを有し、非磁性粉末を含有する平滑化層に比べて、平滑化層の表面平滑性は優れるが、寸法安定性に劣り、エラーが増大するとともに、平滑化層と非磁性支持体との間でブロッキングが発生することが分かる。
さらに、非磁性粉末を含有する平滑化層を設けても、結合剤の含有量が多すぎると、樹脂のみからなる平滑化層を設けた場合と同様に、膨張率が大きくなり、寸法安定性に劣ることが分かる。このため、エラーが増加する。また、この平滑化層は非磁性支持体との間でブロッキングが発生することが分かる。一方、結合剤の含有量が少なすぎる場合、硬化処理を行っても非磁性粉末の結合力が低下するため、脆弱な平滑化層しか形成することができず、上記したように非磁性層及び磁性層を均一に形成することができなかった。
そして、平滑化層が非磁性粉末を含有しても、その粒子径が大きすぎる場合、平滑化層の表面平滑性が低下し、エラーが増大することが分かる。

Claims (3)

  1. 非磁性支持体の少なくとも一方の主面上に、50nm以下の平均粒子径を有する第1の非磁性粉末及び硬化性樹脂を含む結合剤を含有する平滑化層と、第2の非磁性粉末及び結合剤を含有する非磁性層と、磁性粉末及び結合剤を含有する磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
    前記平滑化層は、前記第1の非磁性粉末100質量部に対して前記結合剤を15〜78質量部含有し、
    前記平滑化層は、前記非磁性層の形成前に硬化処理されている磁気記録媒体。
  2. 前記平滑化層は、0.1〜2μmの厚さを有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記非磁性支持体は、150nm以上の表面突起高さ(P0)を有する請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
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