本発明の振動装置および振動装置の振動発生方法の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態の振動装置は、光学機器であるカメラに搭載される。
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態におけるカメラの外観および振動装置が装備された撮像部の構造を示す斜視図である。同図(A)はカメラの外観を示す。カメラ10は周知のデジタルスチルカメラである。同図(B)は振動装置が装備されたカメラ10の撮像部の構造を示す。カメラ10の撮像部では、受光した被写体像を電気信号に変換して画像データを作成するCCDやCMOSセンサ等の受光素子である撮像素子4が設けられている。また、撮像素子4の表(おもて)面の空間が密封されるように、矩形の板状を有する振動体3が取り付けられる。振動体3は、矩形の板状を有する光学素子1、およびその両端部に接着によって固着された電気機械エネルギ変換素子である一対の圧電素子2a、2bから構成される。光学素子1はカバーガラス、赤外線カットフィルタ、あるいは、光学ローパスフィルタ等の透過率の高い光学部材で構成されており、撮像素子4には、光学素子1を透過した光が入射する。
ここで、光学素子1の両端部に配置された圧電素子2a、2bの厚み方向(図中、上下方向)の寸法は、振動に対する曲げ変形の発生力が大きくなるように、光学素子1の厚み方向(図中、上下方向)の寸法と同じ値である。なお、圧電素子2a、2bを特に区別する必要がないときは、単に圧電素子2と称する。
図2は振動装置の電気的構成を示すブロック図である。点線で囲まれたブロックが振動装置であり、振動装置は、上記振動体3を構成する光学素子1と、第1電気機械エネルギ変換素子および第2電気機械エネルギ変換素子である圧電素子2a、2bとの他、電源5a、5bと、制御回路6とを有する。制御回路6は、圧電効果によって圧電素子2のセンサ電極2S(図3参照)に発生する電圧を読み取り、振動の振幅および位相を検知し、電源5a、5bが発生する交番電圧の振幅、周波数および時間的位相を制御する。
ここで、本実施形態では、振動装置の制御回路6には、姿勢センサ7と、撮像素子4に接続された画像処理部8とが接続されている。姿勢センサ7は、振動装置(具体的に、光学素子1)の姿勢を検知する。画像処理部8は、光学素子1のどの位置に塵埃が付着しているかを、撮像素子4によって撮像された画像を用いて演算する。なお、電源5a、5bはそれぞれ圧電素子2a、2bに交番電圧を印加するが、特に区別する必要がないときは、単に電源5と称する。
図3は圧電素子2の表面の電極パターンを示す図である。圧電素子2の表(おもて)面には、電圧印加電極2Vと、第1のセンサおよび第2のセンサであるグラウンド電極2Gおよびセンサ電極2Sとが形成されている。裏面には、全面に亘ってグラウンド電極2Gが形成されている。表面のグラウンド電極2Gおよび裏面のグラウンド電極2Gは、圧電素子2を貫通する電極であるスルーホールによって電気的に接続されている。また、電圧印加電極2Vおよびグラウンド電極2Gは電源5の電源電圧側およびGND側にそれぞれ接続されている。この電源5が圧電素子2に交番電圧を印加することで、振動体3は振動を励起する。
ここで、対象物上の塵埃を除去するための振動装置の駆動方法を説明する。まず、次数の1つ異なる第1の定在波および第2の定在波である、m次の面外曲げ振動と(m+1)次の面外曲げ振動を振動体3に同時に励起する方法を示す(mは自然数)。m次の面外曲げ振動と(m+1)次の面外曲げ振動はいずれも複数の節を有しており、これら次数の異なる2つの面外曲げ振動に生じる複数の節は同一方向に並んでいる。
図4は圧電素子2に印加される交番電圧の周波数と圧電素子2に生じる各振動の振幅を示すグラフである。ここで、f(m)はm次の面外曲げ振動の共振周波数であり、f(m+1)は(m+1)次の面外曲げ振動の共振周波数である。圧電素子2に印加される交番電圧の周波数fをf(m)<f<f(m+1)に設定すると、m次の面外曲げ振動と(m+1)次の面外曲げ振動それぞれの共振現象によって振幅が拡大された、周波数fの振動が得られる。各振動の時間周期は同じである。一方、圧電素子2に印加される交番電圧の周波数fをf(m)より低くするほど(m+1)次の面外曲げ振動の振幅が小さくなり、周波数fをf(m+1)より高くするほどm次の面外曲げ振動の振幅が小さくなる。
図5はmが奇数である場合の振動体3におけるm次の面外曲げ振動の変位および(m+1)次の面外曲げ振動の変位を示す図である。m次の振動を励起する場合、光学素子1の両端部に固着された一対の圧電素子2のうち、一方の圧電素子2に交番電圧を印加して圧電素子2を伸縮させ、他方の圧電素子2にも同じ時間的位相の交番電圧を印加して圧電素子2を伸縮させる(同図(A)参照)。これにより、光学素子1の両端部に同位相の面外曲げ変形が励起し、効率的に振動を励起することができる。
また、(m+1)次の振動を励起する場合、光学素子1の両端部に固着された一対の圧電素子2のうち、一方の圧電素子2に交番電圧を印加して圧電素子2を伸縮させ、他方の圧電素子2に時間的位相が180°異なる交番電圧を印加して圧電素子2を伸縮させる(同図(B)参照)。これにより、光学素子1の両端部に逆位相の面外曲げ変形が励起し、効率的に振動を励起することができる。
これら2つの振動の時間的位相を90°異ならせて励起し、重ね合わせる方法を示す。図6はmが奇数である場合の一対の圧電素子に印加される交番電圧を示すテーブルである。このテーブルには、(a)m次の面外曲げ振動、(b)(m+1)次の面外曲げ振動、(c)時間的位相差が90°異なる(m+1)次の面外曲げ振動、および(d)(a)と(c)の重ね合わせた振動を振動体3に励起させるために、印加される交番電圧が示されている。
ここで、印加する交番電圧の振幅と時間的位相を実数成分と虚数成分で表現する。また、ある交番電圧を印加したときのm次の面外曲げ振動の振幅と(m+1)次の面外曲げ振動の振幅との比をA:1とし、同じ振幅を出すための各交番電圧の振幅を、m次の面外曲げ振動の交番電圧の振幅で正規化する。
(a)のm次の面外曲げ振動と、(c)の時間的位相が90°異なる(m+1)次の面外曲げ振動とを重ね合わせる場合、(a)、(c)それぞれで印加される交番電圧を足せばよい。つまり、(d)に示すように、一方の圧電素子2に印加される交番電圧の実数成分を値1とし、虚数成分を値Aとし、他方の圧電素子2に印加される交番電圧の実数成分を値1とし、虚数成分を値−Aとすればよい。言い換えると、ある周波数の交番電圧に対し、各振動の振幅のゲインの比に応じて、2つの圧電素子2に印加される交番電圧の振幅および位相を制御することで、2つの振動の振幅比(例えば1:1)および時間的位相(例えば90°)を制御することが可能である。
また、ある周波数の交番電圧に対し、2つの振動の振幅比が1:1である場合(A=1)、一方の圧電素子2に印加される交番電圧の実数成分を値1として虚数成分を値1とし、他方の圧電素子2に印加される交番電圧の実数成分を値1として虚数成分を値−1とする。これにより、2つの振動の振幅比は1:1となり、時間的位相差は90°になる。
このように、一方の圧電素子2に印加される交番電圧と他方の圧電素子2に印加される交番電圧との時間的位相を90°異ならせることで、m次の面外曲げ振動と時間的位相が90°異なる(m+1)次の面外曲げ振動とを同時に励起させることができる。また、交番電圧の振幅および位相に加え、周波数を制御することで、更に、2つの振動の重ね合わせ方も任意に制御可能である。
ここで、2つの振動の振幅比を1:1とするために、本実施形態では、次のような工夫が施されている。圧電素子2の圧電効果によって、図3に示すセンサ電極2Sおよびグラウンド電極2G間には、電圧が発生する。制御回路6は、振動体3の両端部に設けられた各圧電素子2a、2bで、センサ電極2Sおよびグラウンド電極2G間の電圧を検出する。制御回路6は、検出したセンサ電極2Sおよびグラウンド電極2G間の電圧を基に、2つの振動の振幅値を算出し、これら振幅値の比を算出する。制御回路6は、算出した振幅値の比と、目標の振幅値の比1:1との差分を求める。制御回路6は、各電源5a、5bから印加される交番電圧の周波数、電圧値および位相差の少なくとも1つを増減させ、差分が減る方向である場合、その増減の量を増やし、差分が増える方向である場合、その増減の量を逆転させるように、フィードバック制御を行う。こうして、2つの振動の振幅比を1:1に制御することが可能である。光学素子1のより広い範囲で塵埃を一方向に移動させることが可能であり、より高い除去効率が実現される。
図7はmが偶数である場合の振動体3におけるm次の面外曲げ振動の変位および(m+1)次の面外曲げ振動の変位を示す図である。図8はmが偶数である場合の一対の圧電素子に印加される交番電圧を示すテーブルである。このテーブルには、(a)m次の面外曲げ振動、(b)(m+1)次の面外曲げ振動、(c)時間的位相差が90°異なる(m+1)次の面外曲げ振動、および(d)(a)と(c)の重ね合わせた振動を振動体3に励起させるために、印加される交番電圧が示されている。この場合、mが奇数の場合と同様、交番電圧の振幅および位相に加え、周波数を制御することで、2つの振動の重ね合わせ方も任意に制御可能である。
上記構成を有する振動装置における振動体3の駆動方法を具体的に示す。図9は振動体3に励起され、長手方向に沿って面外に変形する1次の面外曲げ振動の変位、2次の面外曲げ振動の変位、および圧電素子2a、2bの配置を示す図である。横軸は振動体3の長手方向の長さを「360」としたときの位置である。縦軸は面外の変位を正規化した値である。図中、波形Bは1次の面外曲げ振動を示す。波形Aは2次の面外曲げ振動を示す。
圧電素子2a、2bは、振動体3の変位に対応し、これらの面外曲げ振動の節の並ぶ方向に位置をずらして配置されている。具体的に、圧電素子2aは、2つの面外曲げ振動の曲げ方向が一致している図中左端に位置している。一方、圧電素子2bは、2つの面外曲げ振動の曲げ方向が逆転している図中右端に位置している。
振動体3にm次の面外曲げ振動および(m+1)次の面外曲げ振動を励起させる場合と同様、圧電素子2aおよび圧電素子2bに、振動周期が同じであり、かつ時間的位相が90°異なる交番電圧を印加する。印加される交番電圧の周波数は、振動体3の長手方向に沿って面外に変形する1次の面外曲げ振動の共振周波数と、2次の面外曲げ振動の共振周波数との間の周波数であり、かつ2つの振動の振幅比が1:1となるような周波数である。これにより、振動体3には、共振現象の応答を持った大きな変位を有する1次の面外曲げ振動、および90°の時間的位相差(1次の面外曲げ振動に対して90°進んでいる)を持った2次の面外曲げ振動が、同じ振幅かつ同じ振動周期で励起される。
図10、図11、図12、図13、図14、図15および図16は2つの振動の時間的位相差が90°である場合の1次の面外曲げ振動、2次の面外曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。図中、波形Cは1次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Dは2次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Eはこれら2つの振動が重ね合わされた振動体3の変位を示す。波形Gは波形Eの時間位相30°前の振動体3の変位を示す。波形Fは振動体3における正規化されたY方向の変位速度を示す。
ここで、撮像素子4は光学素子1に対してY方向(図10参照)の負の方向に位置している。光学素子1のY方向の正の方向から入射した光は、光学素子1の位置60から位置300の間を透過し、撮像素子4の受光面に達する。即ち、撮像素子4に対する光学素子1の有効部は位置60から位置300の範囲である。また、光学素子1と撮像素子4の間の空間は密閉されており、光学素子1の裏面(波形Eの下面に相当)には塵埃が付着しない。一方、光学素子1の表面(波形Eの上面に相当)には、カメラ装置の外部から侵入した塵埃やカメラ装置内部で発生する塵埃が付着することがある。光学素子1の表面(波形Eの上面に相当)の位置60から位置300の範囲に塵埃が付着していると、光は塵埃によって遮られ、撮像素子4で撮像された画像には影ができてしまう。
つぎに、振動装置を動作させた場合の塵埃の動きを示す。光学素子1の表面に付着した塵埃は、光学素子1が塵埃を面外(図10のY方向の正の向き)に突き上げる時、光学素子1の表面の法線方向の力を受けて弾かれるように移動していく。つまり、各時間位相で、Y方向の変位速度を示す波形Fが正の値であるとき、塵埃は面外に突き上げられ、この時間位相における振動体3の変位を示す波形Eの法線方向の力を受け、塵埃は移動していく。図10の矢印hは、塵埃が移動する向きを示している。例えば、図10の左側の矢印hは、波形Eの法線方向のX成分が正であって、かつ、波形Fが正の値である位置m、nの区間内における塵埃の移動する向きを示す。
図10乃至図16を見てみると、例えば、塵埃が位置60に付着している場合、塵埃は、時間位相210°〜330°の間、X方向の正の向きに移動する。この動作によって、塵埃は位置75付近まで移動する。その後、塵埃は、時間位相0°(=360°)〜30°、270°〜330°の間、X方向の正の向きに移動し、時間位相60°の近傍で一時的にX方向の負の向きに移動する。しかし、振動の1周期の間では、X方向の負の向きに塵埃を移動させる振動の量より、正の向きに塵埃を移動させる振動の量がはるかに多いので、塵埃はX方向の正の向きに移動する。
この動作が繰り返されることで、塵埃は位置90まで移動する。同様に、塵埃に振動を繰り返し与え続けることで、塵埃はX方向の正の向きに移動していき、X方向の位置300を越えた位置まで移動する。
こうして、撮像素子4に対する光学素子1の有効部である位置60から位置300の範囲から、塵埃を除去することが可能となる。また、光学素子1の有効部である位置60から位置300のいずれの位置に塵埃が付着しても、塵埃は、X方向の正の向きに移動していき、位置300よりX方向の正の位置に移動し、塵埃の除去が可能である。
なお、上記実施形態では、2つの振動の時間的位相差が90°である場合を示したが、この時間的位相差を0°より大きく180°より小さくしてもよい。この場合、面外の変位速度が正のときに、振動体3の変位を示す波形Eの法線方向のX成分が正となるような、振動体3の変形が可能である。従って、この場合も、塵埃に繰り返し振動を与えることで、塵埃をX方向の正の向きに移動させることができる。また、2つの振動の時間的位相差が−180°より大きく0°より小さい場合、塵埃はX方向の負の向きに移動していき、同様に、塵埃をX方向の位置60より負の位置に移動させることができる。即ち、2つの振動の時間的位相差を0°と180°以外に設定することで、塵埃の移動は可能であり、光学素子1の有効部である有効範囲から塵埃を除去することが可能である。従って、時間的位相差の自由度が増す。
第1の実施形態の振動装置によれば、圧電素子2a、2bにそれぞれ印加され、電源5a、5bが発生する2つの電圧の時間的位相差を、制御回路6を用いて制御することで、2つの振動の時間的位相差を制御することができる。従って、塵埃を移動する方向を制御することが可能である。また、2つの振動の振幅値を略1:1とすることで、光学素子1のより広い範囲で塵埃を同じ方向に移動させることが可能であり、高い除去効率が実現される。また、2つの振動の時間的位相差を90°もしくは−90°に設定することで、光学素子1のより広い範囲で塵埃を一方向に移動させることが可能であり、より高い除去効率が実現される。
なお、本実施形態の振動装置はカメラ装置10に搭載されているので、カメラ装置10に備わる撮像素子4および画像処理部8を用いて、塵埃の位置を検知することが可能である。この塵埃の位置に応じて、より撮像素子の有効部(有効範囲)外に近い方向に塵埃を移動させることで、より短時間に塵埃の除去が可能となり、高い除去効率が実現される。また、カメラ装置10に備わる姿勢センサ7を用いて、光学素子1の姿勢を検知することが可能である。姿勢センサ7によって検出される光学素子1の姿勢から決定される、塵埃移動の方向と重力方向との角度が90°未満になるように、2つの振動の時間的位相差を制御することで、塵埃の移動に重力も利用することが可能となる。これにより、より短時間に塵埃の除去が可能となり、高い除去効率が実現される。これらのことは、以後の実施形態においても、同様である。
ここで、カメラ装置10に備わる撮像素子4および画像処理部8を利用して塵埃を除去する振動装置の駆動方法について説明する。
図17は、振動体3の光学素子1の表面に付着した塵埃30の位置を示す図である。図17において、A0は塵埃30と撮像素子4に対する光学素子1の有効部外の領域との図中X方向の負の向きでの距離で、B0は塵埃30と撮像素子4に対する光学素子1の有効部外の領域との図中X方向の正の向きでの距離を示している。
図18は、振動装置における振動体3の第一の駆動処理を示すフローチャートである。
図18において、まず、撮像素子4にて塵埃が写りこんだ画像を取得する(ステップS101)。例えば、カメラのシャッタを閉じて、カメラ内部の光源を点灯させることで、塵埃のみが写りこんだ画像を取得する。あるいは、輝度や色が一様である被写体(例えば、白い用紙)が画角全体を占める構図にて撮影することで、この被写体と塵埃からなる画像を取得する。
ステップS102において、撮像素子4にて取得した画像を解析することにより、画像処理部8は光学素子1の有効部に、撮影した画像に与える影響の度合いの強い特定の塵埃が存在しているか否かを判別する。撮影した画像に与える影響の度合いの強い特定の塵埃とは、例えば、他の塵埃と比較して明らかに大きいものや、画面の中央部近傍に存在しているものが該当する。また、塵埃の判別方法の例としては、輝度の低い領域を塵埃領域と判別したり、複数の画像間でコントラストの評価値に変化のない領域を塵埃と判別したりする方法が考えられる。ステップS102の判別の結果、光学素子1の有効部に特定の塵埃が無い場合は、ステップS113に進む。
ステップS113において、制御回路6は圧電素子2a、2bのそれぞれに印加する電圧の時間的位相差θを同位相(θ=0°)に設定し、かつ、それぞれの周波数を1次の面外曲げ振動の固有振動数f1と略一致するように設定する。
ステップS114において、制御回路6は時間的位相差が同位相に設定された電圧を、圧電素子2a、2bに既定時間t2だけ印加する。振動装置の振動体3には、1つの1次の面外曲げ振動の定在波が共振状態で励起され、この定在波の腹近傍に位置する塵埃が光学素子1の面外に飛散する。振動装置の光学素子1の面外の位置には粘着剤が配置されており、この粘着剤によって塵埃が捕集される。なお、ステップS113で設定された電圧を圧電素子2a、2bの一方にのみ印加することで、振動装置の振動体3に1つの1次の面外曲げ振動の定在波を励起させてもよい。
ステップS115において、制御回路6は圧電素子2a、2bのそれぞれに印加する電圧の時間的位相差θを180°に設定し、かつ、それぞれの周波数を2次の面外曲げ振動の固有振動数f2と略一致するように設定する。
ステップS116において、制御回路6は時間的位相差が逆位相に設定された電圧を、圧電素子2a,2bに既定時間t2だけ印加する。振動装置の振動体3には、1つの2次の面外曲げ振動の定在波のみが共振状態で励起され、この定在波の腹近傍に位置する塵埃が光学素子1の面外に飛散し、粘着剤によって捕集される。ステップS114とステップS116とで次数の異なる定在波を励起しているのは、2つの定在波の節の位置をずらして、光学素子1に振幅が生じない個所を設けないためである。なお、ステップS115で設定された電圧を圧電素子2a、2bの一方にのみ印加することで、振動装置の振動体3に1つの2次の面外曲げ振動の定在波を励起させてもよい。
そして、振動装置における振動体3の第一の駆動処理を終了する。
一方、ステップS102の判別の結果、光学素子1の有効部に特定の塵埃、例えば塵埃30が有る場合は、ステップS103に進む。
ステップS103において、画像処理部8は、塵埃30と図17中X方向の負の向きにおける光学素子1の有効部外の領域との距離A0と、塵埃30と図17中X方向の正の向きにおける光学素子1の有効部外の領域との距離B0とを演算する。
ステップS104において、画像処理部8は距離A0と距離B0とを比較し、距離A0が距離B0以上であればステップS105に進み、距離A0が距離B0未満であればステップS106に進む。
ステップS105において、制御回路6は、圧電素子2aに印加する電圧に対する圧電素子2bに印加する電圧の時間的位相差θを90°に設定し、塵埃30と光学素子1の有効部外の領域との距離の初期値X0をB0に設定する。また、電圧の周波数を、m次と(m+1)次(本実施形態では1次と2次)の面外曲げ振動の振幅が1:1となる周波数f0に設定する。そして、ステップS107に進む。
ステップS106において、制御回路6は、圧電素子2aに印加する電圧に対する圧電素子2bに印加する電圧の時間的位相差θを−90°に設定し、塵埃30と光学素子1の有効部外の領域との距離の初期値X0をA0に設定し、電圧の周波数をf0に設定する。そして、ステップS107に進む。
ステップS107において、制御回路6は、ステップS105あるいはステップS106で設定された時間的位相差の電圧を、圧電素子2a、2bに規定時間t0だけ印加する。これにより、塵埃30を、X方向に沿って、より近い側の光学素子1の有効部外の領域に向かって移動させる。
本第一の駆動処理では、塵埃30を移動させる向きを圧電素子2a、2bに印加する電圧の時間的位相差θを90°と−90°のいずれかに選択することで切り替えているが、これに限られるものではない。塵埃30を移動させる向きは、1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動との時間的位相差θが、0°<θ<180°であるか、あるいは、−180°<θ<0°であるかによって決定されるので、これらの範囲のいずれかの位相差を設定すればよい。また、後述する第2の実施形態で詳細に説明するが、圧電素子2a、2bに印加する電圧の振幅比を変化させることによっても、塵埃30を移動させる向きを切り替えることができる。
続くステップS108において、撮像素子4にて再び画像を取得する。
ステップS109において、画像処理部8は再び光学素子1の有効部に特定の塵埃が存在しているか否かを判別する。ステップS109の判別の結果、光学素子1の有効部に特定の塵埃、例えば塵埃30が有る場合は、ステップS110に進む。
ステップS110において、画像処理部8は、撮像素子4にて再び取得した画像を解析することにより、塵埃30と光学素子1の有効部外の領域との新たな距離X1を演算する。
ステップS111において、画像処理部8は、新たに演算した距離X1と初期値X0とから、塵埃の移動量ΔXを演算する。ΔXの演算式はΔX=X1−X0である。続いて、塵埃の移動速度VをΔXとt0とから演算する。Vの演算式はV=ΔX/t0である。続いて、新たな電圧の印加時間t1をX1とVとから演算する。t1の演算式はt1=X1/Vである。また、初期値X0にX1を代入する。
ステップS112において、制御回路6は、ステップS105あるいはステップS106で設定された時間的位相差の電圧を、圧電素子2a,2bに規定時間t1だけ印加する。これにより、塵埃30を、X方向に沿って、より近い側の光学素子1の有効部外の領域に向かって移動させる。
そして、再びステップS108,S109に進み、撮像素子4にて取得した画像から塵埃30が無くなるまで、ステップS108乃至ステップS112の処理を繰り返す。これにより、塵埃30を光学素子1の有効部から除去し、図9における位置60あるいは300よりも外側に塵埃が集められる。
一方、ステップS109の判別の結果、光学素子1の有効部に特定の塵埃が無い場合は、ステップS113乃至ステップS116の処理を実行し、振動体3に次数の異なる面外曲げ振動の定在波を、順に共振状態で励起する。
ここで、図9における位置60あるいは300よりも外側の領域は、振動体3に1次の面外曲げ振動あるいは2次の面外曲げ振動の定在波を励起した際に、それぞれの定在波における腹の位置の近傍となる。そのため、ステップS103乃至ステップS112の処理によって集められた塵埃を、効果的に光学素子1の面外に飛散させることができる。
このように、本第一の駆動処理によれば、より短時間で塵埃30を光学素子1の有効部外の領域に移動させることができ、かつ、光学素子1の有効部外の領域に移動させた塵埃を効果的に飛散させることが可能となる。
続いて、第一の駆動処理とは別の、振動体3の第二の駆動処理について説明する。
上述した第一の駆動処理では、塵埃30と光学素子1の有効部外の領域との距離に応じて、圧電素子2a、2bに印加する電圧の時間的位相差θを設定した。これに対して、第二の駆動処理では、塵埃30の重心位置31と、塵埃30及び光学素子1の接触箇所との位置関係に応じて、圧電素子2a、2bに印加する電圧の時間的位相差θを設定する。
図19は、振動体3における光学素子1の断面と、その光学素子1の表面に付着した塵埃30と、塵埃30の重心位置31とを示す図であり、図20は、振動装置における振動体3の第二の駆動処理を示すフローチャートである。
図19において、符号αは、塵埃30の重心位置31と塵埃30及び光学素子1の接触部の中心点とを結ぶ直線と、光学素子1の表面とが為す角度である。
図20において、まず、撮像素子4にて塵埃が写りこんだ画像を取得する(ステップS201)。例えば、カメラのシャッタを閉じて、カメラ内部の光源を点灯させることで、塵埃のみが写りこんだ画像を取得する。
ステップS202において、撮像素子4にて取得した画像から、画像処理部8は光学素子1の有効部に、撮影した画像に与える影響の度合いの強い特定の塵埃が存在しているか否かを判別する。ステップS202の判別の結果、光学素子1の有効部に特定の塵埃が無い場合は、本第二の駆動処理を終了し、光学素子1の有効部に特定の塵埃、例えば塵埃30が有る場合は、ステップS203に進む。
ステップS203において、画像処理部8は、撮像素子4が取得した画像を解析することにより、光学素子1の有効部の表面に付着した塵埃30の外形から、塵埃30のおおよその重心位置31を演算する。例えば、塵埃30の外形から求めた塵埃30の中心位置を、重心位置31とする。また、塵埃30及び光学素子1の接触部の中心点を演算する。具体的には、塵埃30及び光学素子1の接触部は、塵埃30の外形の内部で最も暗くなるため、この最も暗い領域の中心位置を塵埃30及び光学素子1の接触部の中心点とする。
ステップS204において、画像処理部8は、接触部の中心点と重心位置31とを比較することで、角度αが0°<α≦90°の範囲にあるか、あるいは、90°<α<180°の範囲にあるかを判別する。ステップS204の判別の結果、角度αが0°<α≦90°の範囲にある場合は、ステップS205に進み、角度αが90°<α<180°の範囲にある場合は、ステップ206に進む。
ステップ205において、制御回路6は、圧電素子2aに印加する電圧に対する圧電素子2bに印加する電圧の時間的位相差θを0°より大きく、180°より小さな値に設定する。これは、図19において、角度αが0°<α<90°の範囲であれば、塵埃30は図中X方向の正の向きの成分を含む力を受けたときのほうが、負の向きの成分を含む力を受けたときと比較して、面外に突き上げられたときの、その移動量が大きくなるためである。また、電圧の周波数を、m次と(m+1)次(本実施形態では1次と2次)の面外曲げ振動の振幅が1:1となる周波数f0に設定する。
ステップ206において、制御回路6は、圧電素子2aに印加する電圧に対する圧電素子2bに印加する電圧の時間的位相差θを−180°より大きく、0°より小さな値に設定する。これは、図19において、角度αが90°<α<180°の範囲であれば、塵埃30は図中X方向の負の向きの成分を含む力を受けたときのほうが、正の向きの成分を含む力を受けたときと比較して、面外に突き上げられたときの、その移動量が大きくなるためである。また、電圧の周波数をf0に設定する。
なお、角度αが90°のときは、X方向のどちらの向きの力を受けても移動量の差はないが、ここでは時間的位相差θを0°より大きく、180°より小さな値に設定する。
ステップS207において、制御回路6は、ステップS205あるいはステップS206で設定された時間的位相差の電圧を、規定時間t0だけ圧電素子2a、2bに印加する。これにより、塵埃30を光学素子1の有効部外の領域に向かって移動させることができる。
ステップS208において、撮像素子4にて再び画像を取得する。
ステップS209において、画像処理部8は再び光学素子1の有効部に特定の塵埃が存在しているか否かを判別する。ステップS209の判別の結果、光学素子1の有効部に特定の塵埃が無い場合は、本第二の駆動処理を終了し、光学素子1の有効部に特定の塵埃、例えば塵埃30が有る場合は、ステップS203に戻る。
このように、本第二の駆動処理によれば、光学素子1の有効部に付着した塵埃がより大きく移動するように、圧電素子2a、2bに印加する電圧の時間的位相差を設定して、印加する動作を繰り返すので、光学素子1に付着した塵埃を確実に飛ばすことができる。
続いて、第一、第二の駆動処理とはさらに別の、振動体3の第三の駆動処理について説明する。
第三の駆動処理では、撮影した画像に与える影響の度合いの強い特定の塵埃が複数存在する場合に、塵埃の位置、大きさ、および濃度から画像の品質を損なう程度を演算し、除去すべき特定の塵埃の優先順位を決定する。そして、撮影した画像の品質を損なう程度が大きいものから順に除去する。
図24は、振動装置における振動体3の第三の駆動処理を示すフローチャートである。図24では、図18のステップと同一のステップには同一符号を付している。
図24において、まず、撮像素子4にて塵埃が写りこんだ画像を取得する(ステップS101)。
ステップS102において、撮像素子4にて取得した画像を解析することにより、画像処理部8は光学素子1の有効部に、撮影した画像に与える影響の度合いの強い特定の塵埃が存在しているか否かを判別する。ステップS102の判別の結果、光学素子1の有効部に特定の塵埃が無い場合は、ステップS113乃至ステップS116の処理に進み、図18のステップS113乃至ステップS116と同様の処理を実行して、本第三の駆動処理を終了する。
一方、ステップS102の判別の結果、光学素子1の有効部に特定の塵埃、例えば塵埃30が有る場合は、ステップS301の処理に進む。
ステップS301において、画像処理部8は、光学素子1の有効部に塵埃30が複数有る場合に、それらに優先順位をつけるための塵埃の点数Dを演算する。
図21、図22および図23は、塵埃の最終的な点数Dを決定するために用いる各点数を説明するための図である。
図21は、塵埃の光学素子1の有効部上の位置に基づいて決定される点数Aを示しており、光学素子1の中心部分を最も画像の品質を損なうものとして最も高い4点とし、外側にいくほど低い点数としている。図22は、塵埃の大きさに基づいて決定される点数Bを示しており、横軸は塵埃の面積であり、縦軸が点数である。点数BはB=(塵埃の面積μm2)×0.002で算出する。塵埃の面積が大きいほど、画像の品質を損なう程度が大きいので、点数Bは塵埃の面積に応じた値となるように設定されている。図23は、塵埃の濃度に基づいて決定される点数Cを示しており、横軸は塵埃による影における明度が閾値以下の黒の割合であり、縦軸が点数である。点数CはC=(黒の割合%)×0.05で算出する。塵埃の最終的な点数Dは、D=A×B×Cで算出する。この点数Dの高い塵埃ほど優先順位を高く設定し、優先順位の順に除去を行う。
続くステップS302において、制御回路6は最も点数Dの高い塵埃30を、除去対象の塵埃として決定する。以下、この塵埃30が光学素子1の有効部外の領域に移動するまで、この塵埃30のみに着目して本第三の駆動処理が実行される。なお、特定の塵埃が1つしか無い場合は、ステップS301とステップS302とは省略してよい。
そして、ステップS103乃至ステップS108の処理に進み、図18のステップS103乃至ステップS108と同様の処理を実行して、ステップS303の処理に進む。
ステップS303において、ステップS108で撮像素子4にて取得した画像を解析することにより、画像処理部8はステップS302で除去対象として決定された塵埃30を検索する。ステップS105とステップS106のどちらを実行したかによって、塵埃30の移動方向が決定されると共に塵埃30の存在する画像領域が限定されるので、その限定された画像領域の中から、ステップS302で除去対象として決定された塵埃30を検索する。
ステップS304において、画像処理部8は除去対象の塵埃30が存在しているか否かを判別する。ステップS304の判別の結果、塵埃30が無い場合は、ステップS305の処理に進む。
一方、ステップS304の判別の結果、塵埃30が有る場合は、ステップS110に進み、塵埃30が無くなるまで、ステップS108乃至ステップS112の処理を繰り返す。
ステップS305において、ステップS108で撮像素子4にて取得した画像を解析することにより、既に除去した塵埃30の他に、除去対象とすべき塵埃が存在していないか否か判別する。除去対象とすべき塵埃とは、ステップS102の処理と同様に、その大きさが閾値を超えている塵埃や、画面の中央部近傍に存在している塵埃が該当する。
ステップS305の判別の結果、他に除去対象とすべき塵埃が存在する場合は、ステップS301の処理に戻り、再度塵埃の点数Dの演算が行われて、除去対象とすべき塵埃が無くなるまで、ステップS301乃至ステップS305の処理を繰り返す。
ステップS305の判別の結果、他に除去対象とすべき塵埃が存在しない場合は、ステップS113乃至ステップS116の処理に進み、図18のステップS113乃至ステップS116と同様の処理を実行して、本第三の駆動処理を終了する。
このように、本第三の駆動処理によれば、優先順位の高い塵埃から順に除去を行うので、より短時間で効率よく複数の塵埃を光学素子1の有効部外の領域に移動させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る振動装置では、撮像素子4および画像処理部8を利用することで、塵埃の状況に応じて、より短時間で塵埃を除去することができる。
また、振動体を構成する圧電素子の構造および配置は、上記実施形態に限られるものではない。図25は振動体3に励起され、長手方向に沿って面外に変形する1次の面外曲げ振動の変位、2次の面外曲げ振動の変位、および圧電素子2a、2bの配置を示す図である。振動体13、23、33では、2つの圧電素子2a、2bは、振動の節が並ぶ方向に対して異なった位置に配置されている。さらに、一方の圧電素子2aが2つの振動の面外の曲げの方向が一致する位置に、他方の圧電素子2bが2つの振動の面外の曲げの方向が異なる位置に配置されている。これにより、2つの振動を効率よく励起させることが可能である。また、振動体43では、単一の圧電素子2が設けられている。この圧電素子2には、2つの電圧印加電極2Vが形成されている。この2つの電圧印加電極2Vは、振動の節が並ぶ方向に異なる位置に配置されている。一方の電圧印加電極2Vは2つの振動の面外の曲げの方向が一致する位置に配置され、他方の電圧印加電極2Vは2つの振動の面外の曲げの方向が異なる位置に配置されている。これにより、振動体43では、振動体13、23、33と同様、2つの振動を効率よく励起させることが可能である。また、圧電素子が1つで済むので、製造工程が簡素化され、コストの低減が図れる。
[第2の実施形態]
前記第1の実施形態では、1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の振幅比が1:1である場合を示したが、この振幅比はこれに限定されない。第2の実施形態では、1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の振幅比が1:4である場合を示す。なお、第2の実施形態における振動装置は、前記第1の実施形態と同様、カメラ装置に搭載され、前記第1の実施形態と同じ構成を有する。
図26は第2の実施形態における、振動体3に励起され、長手方向に沿って面外に変形する1次の面外曲げ振動の変位、2次の面外曲げ振動の変位、および圧電素子2a、2bの配置を示す図である。横軸は振動体3の長手方向の長さを「360」としたときの位置である。縦軸は面外の変位を正規化した値である。図中、波形Bは1次の面外曲げ振動を示す。波形Aは2次の面外曲げ振動を示す。
図27、図28、図29、図30、図31、図32および図33は2つの振動の時間的位相差が90°である場合の1次の面外曲げ振動、2次の面外曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。図中、波形Cは1次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Dは2次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Eはこれら2つの振動が重ね合わされた振動体3の変位を示す。波形Gは波形Eの時間位相30°前の振動体3の変位を示す。波形Fは振動体3における正規化されたY方向の変位速度を示す。
振動装置では、光学素子1の表面に付着した塵埃は、光学素子1が塵埃を面外(図27のY方向の正の向き)に突き上げる時、光学素子1の表面の法線方向の力を受けて弾かれるように移動していく。つまり、各時間位相で、Y方向の変位速度を示す波形Fが正の値であるとき、塵埃は面外に突き上げられ、この時間位相における振動体3の変位を示す波形Eの法線方向の力を受け、塵埃は移動していく。図27の矢印hは、区間内で、塵埃が移動する向きを示している。
第2の実施形態の振動装置によれば、前記第1の実施形態と同様、塵埃を除去することが可能である。しかし、1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の振幅比が1:4であるため、前記第1の実施形態の振幅比が1:1である場合と比較すると、塵埃を移動させる向きがX方向の正の向きに比べてX方向の負の向きの移動が多くなっている。このため、前記第1の実施形態に比べ、塵埃の除去効率は低下するものの、塵埃を除去することは可能である。
[第3の実施形態]
第3の実施形態の振動装置では、前記第1の実施形態と異なり、圧電素子2に印加される周波数は、振動体3の長手方向に沿った面外に変形する2次の面外曲げ振動の共振周波数と3次の面外曲げ振動の共振周波数との間の周波数である。これにより、振動体3には、共振現象の応答を持った大きな変位の2次の面外曲げ振動と、90°の時間的位相差(2次の面外曲げ振動に対して90°進んでいる)を持った3次の面外曲げ振動とが同じ周波数で同時に励起される。振動体3の変形は、これら2つの振動が重ね合わされたものとなる。なお、第3の実施形態における振動装置は、前記第1の実施形態と同様、カメラ装置に搭載され、前記第1の実施形態と同じ構成を有する。
図34は第3の実施形態における、振動体3に励起され、長手方向に沿って面外に変形する2次の面外曲げ振動の変位、3次の面外曲げ振動の変位、および圧電素子2a、2bの配置を示す図である。横軸は振動体3の長手方向の長さを「360」としたときの位置である。縦軸は面外の変位を正規化した値である。図中、波形Bは2次の面外曲げ振動を示す。波形Aは3次の面外曲げ振動を示す。ここで、撮像素子4に対応する光学素子1の有効部は位置100から位置260である。
図35、図36、図37、図38、図39、図40および図41は2つの振動の時間的位相差が90°である場合の1次の面外曲げ振動、2次の面外曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。図中、波形Cは1次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Dは2次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Eはこれら2つの振動が重ね合わされた振動体3の変位を示す。波形Gは波形Eの時間位相30°前の振動体3の変位を示す。波形Fは振動体3における正規化されたY方向の変位速度を示す。
振動装置では、光学素子1の表面に付着した塵埃は、光学素子1が塵埃を面外に突き上げる時、光学素子1の表面の法線方向の力を受けて弾かれるように移動していく。つまり、各時間位相で、Y方向の変位速度を示す波形Fが正の値であるとき、塵埃は面外に突き上げられ、この時間位相における振動体3の変位を示す波形Eの法線方向の力を受け、塵埃は移動していく。図中、矢印hは区間内で塵埃が移動する向きを示している。
第3の実施形態の振動装置によれば、前記第1の実施形態と同様、撮像素子4に対する光学素子1の有効部である位置100から位置260の範囲に付着している塵埃に繰り返し振動を与えることで、塵埃を図中右方向に移動させ、除去することが可能である。
[第4の実施形態]
第4の実施形態の振動装置では、前記第1の実施形態と異なり、圧電素子2に印加される周波数は、振動体3の長手方向に沿った面外に変形する10次の面外曲げ振動の共振周波数と11次の面外曲げ振動の共振周波数との間の周波数である。これにより、振動体3には、共振現象の応答を持った大きな変位の10次の面外曲げ振動と、90°の時間的位相差(10次の面外曲げ振動に対して90°進んでいる)を持った11次の面外曲げ振動とが同じ周波数で同時に励起される。従って、振動体3の変形は、これら2つの振動が重ね合わされたものとなる。なお、第4の実施形態における振動装置は、前記第1の実施形態と同様、カメラ装置に搭載され、前記第1の実施形態と同じ構成を有する。
図42は第4の実施形態における、振動体3に励起され、長手方向に沿って面外に変形する10次の面外曲げ振動の変位、11次の面外曲げ振動の変位、および圧電素子2a、2bの配置を示す図である。横軸は振動体3の長手方向の長さを「360」としたときの位置である。縦軸は面外の変位を正規化した値である。図中、波形Bは2次の面外曲げ振動を示す。波形Aは3次の面外曲げ振動を示す。ここで、撮像素子4に対応する光学素子1の有効部は位置100から位置260である。
図43、図44、図45、図46、図47、図48および図49は2つの振動の時間的位相差が90°である場合の10次の面外曲げ振動、11次の面外曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。図中、波形Cは1次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Dは2次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Eはこれら2つの振動が重ね合わされた振動体3の変位を示す。波形Gは波形Eの時間位相30°前の振動体3の変位を示す。波形Fは振動体3における正規化されたY方向の変位速度を示す。
振動装置では、光学素子1の表面に付着した塵埃は、光学素子1が塵埃を面外に突き上げる時、光学素子1の表面の法線方向の力を受けて弾かれるように移動していく。つまり、各時間位相で、Y方向の変位速度を示す波形Fが正の値であるとき、塵埃は面外に突き上げられ、この時間位相における振動体3の変位を示す波形Eの法線方向の力を受け、塵埃は移動していく。
第4の実施形態の振動装置によれば、前記第1〜第3の実施形態と同様、撮像素子4に対する光学素子1の有効部である位置100から位置260の範囲に付着している塵埃に繰り返し振動を与えることで、塵埃を図中右方向に移動させ、除去することが可能である。
このように、前記第1〜第4の実施形態では、次数が1つ異なる2つの面外曲げ振動の共振周波数の間に周波数を有する交番電圧が圧電素子2に印加され、振動体3には、2つの面外曲げ振動の共振現象の応答を持った振動が励起している。これにより、印加電圧の周波数と各々の面外曲げ振動の共振周波数の周波数との差を小さくすることが可能であり、各振動の、より大きな共振現象の応答を得て、より大きな振動を振動体3に励起することが可能である。従って、光学素子1に付着した塵埃を移動させる速度をより大きくすることができ、より短時間に塵埃を除去することが可能である。
[第5の実施形態]
第5の実施形態の振動装置では、前記第1〜第4の実施形態と異なり、圧電素子2に印加される周波数は、振動体3の長手方向に沿った面外に変形する1次の面外曲げ振動の共振周波数と3次の面外曲げ振動の共振周波数との間の周波数である。これにより、振動体3には、共振現象の応答を持った大きな変位の1次の面外曲げ振動と、−90°の時間的位相差(1次の面外曲げ振動に対して90°遅れている)を持った3次の面外曲げ振動とが同じ周波数で励起される。振動体3の変形は、これら2つの振動が重ね合わされたものとなる。なお、第5の実施形態における振動装置は、前記第1の実施形態と同様、カメラ装置に搭載され、前記第1の実施形態と同じ構成を有する。
図50は第5の実施形態における、振動体3に励起され、長手方向に沿って面外に変形する1次の面外曲げ振動の変位、3次の面外曲げ振動の変位、および圧電素子2a、2bの配置を示す図である。横軸は振動体3の長手方向の長さを「360」としたときの位置である。縦軸は面外の変位を正規化した値である。図中、波形Bは2次の面外曲げ振動を示す。波形Aは3次の面外曲げ振動を示す。撮像素子4に対応する光学素子1の有効部は位置100から位置260である。
図51、図52、図53、図54、図55、図56および図57は2つの振動の時間的位相差が−90°である場合の1次の面外曲げ振動、3次の面外曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。図中、波形Cは1次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Dは3次の面外曲げ振動の変位を示す。波形Eはこれら2つの振動が重ね合わされた振動体3の変位を示す。波形Gは波形Eの時間位相30°前の振動体3の変位を示す。波形Fは振動体3における正規化されたY方向の変位速度を示す。
振動装置では、光学素子1の表面に付着した塵埃は、光学素子1が塵埃を面外に突き上げる時、光学素子1の表面の法線方向の力を受けて弾かれるように移動していく。つまり、各時間位相で、Y方向の変位速度を示す波形Fが正の値であるとき、塵埃は面外に突き上げられ、この時間位相における振動体3の変位を示す波形Eの法線方向の力を受け、塵埃は移動していく。図中、矢印hは区間内で塵埃が移動する向きを示している。
第5の実施形態の振動装置によれば、撮像素子4に対する光学素子1の有効部である位置100から位置260の範囲に付着している塵埃に繰り返し振動を与えることで、塵埃を図中右方向に移動させ、除去することが可能である。また、本実施形態では、中心位置である位置180より図中左側では、塵埃は図中左側に移動し、位置180より図中右側では、塵埃は図中右側に移動する。従って、光学素子1の有効部から塵埃を速やかに除去することが可能である。
前述したように、前記第1から第4の実施形態では、次数が1つ異なる2つの面外曲げ振動の共振周波数の間に周波数を有する交番電圧が圧電素子に印加された。一方、第5の実施形態では、次数の2つ異なる2つの面外曲げ振動の共振周波数の間に周波数を有する交番電圧が圧電素子2に印加されるが、この場合も同様に、塵埃の除去が可能である。
なお、本実施形態では、2つの振動の時間的位相を+90°異ならせた場合、中心位置である位置180より図中左側では、塵埃は図中右側に移動し、位置180より図中右側では、塵埃は図中左側に移動する。従って、中心位置である位置180の箇所に塵埃が集まってくることになる。
また、本実施形態では、次数の2つ異なる振動を励起する場合、時間的位相差をその他の所望の値に設定することでも、塵埃の除去が可能である。また、2つの振動の次数が3以上異なる場合、2つの振動にどのような時間的位相差を設けたとしても、塵埃が集まる箇所が発生する。この場合、塵埃が集まる個所をカメラ装置の機能上で問題のない箇所に設定する必要がある。
また、前記第1〜第5の実施形態で示したように、振動の次数はいかなる組み合わせであっても、塵埃の移動が可能であり、塵埃を除去するように設定することができる。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
例えば、上記各実施形態では、カメラ装置に搭載される振動装置の振動体は、矩形状に形成されていたが、特にその形状は限定されるものではない。図58は他の実施形態における振動装置の振動体の形状を示す斜視図である。この振動装置はカメラ装置に装備される。図59は振動体の圧電素子の配置を示す図である。振動体53は、軸53aを中心とする円板形状の光学素子51、この光学素子51の裏側中心部に接着によって固着された小さい円板形状の圧電素子52、および光学素子51の裏側周縁部に接着によって固着された円環形状の圧電素子54から構成される。圧電素子52、54は、透明な電気機械変換素子であるニオブ酸リチウムからなる。
図60は1次の面外曲げ振動および2次の面外曲げ振動を示す図である。中心部および外径部にそれぞれ位置する圧電素子52、54に印加される交番電圧の周波数は、円板の軸方向に変形する1次の面外曲げ振動の共振周波数と、同じく軸方向に変形する2次の面外曲げ振動の共振周波数との間に設定された周波数である。図中、波形Aおよび波形Bはそれぞれ1次の面外曲げ振動および2次の面外曲げ振動を示す。また、中心部および外径部にそれぞれ位置する圧電素子52、54に印加される交番電圧の時間的位相差は90°である。
このような形状を有する振動体53では、塵埃は中心位置から外径端に向かって移動し、光学素子51の上から除去される。なお、振動体は、円板形状を有するものに限らず、端部を有する形状のものであればよく、端部に向かってあるいは端部から離れるように、塵埃を移動させることが可能であり、塵埃を除去することができる。
また、上記実施形態では、光学機器であるカメラに適用された場合を示したが、本発明の振動装置は、光学機器として、カメラ、ファクシミリ装置、スキャナ、プロジェクタ、複写機、レーザビームプリンタ、インクジェットプリンタ、レンズ、双眼鏡、画像表示装置などに適用可能である。さらには、本発明の振動装置は、塵埃を除去する必要がある、光学機器以外の様々な装置にも適用可能である。