JP2011007716A - 広域温度対応型複素誘電率測定用空洞共振器 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャビティ内にガイドを設け、所定温度の気流により測定試料の温度を一定にしながら複素誘電率を測定する。
【解決手段】内部でTM0n0モード(n=1〜4の整数)の電磁波の共振が成立するキャビティ(1)と、共振周波数およびQ値を測定するためのケーブル接続ポート(2)と、測定試料を装てんした時に電磁波が漏れない内径と長さをもったスリーブ(3)と、−198℃から+320℃の範囲で物理的強度が著しく変化しない、誘電損失の小さな素材でできたガイド(B)と、試料温調槽(8)とを備えた空洞共振器において、試料温調槽(8)とガイド(B)と測定試料を、気流によって所定の温度に設定しながら複素誘電率の測定を行うことが可能な空洞共振器。
【選択図】図1
【解決手段】内部でTM0n0モード(n=1〜4の整数)の電磁波の共振が成立するキャビティ(1)と、共振周波数およびQ値を測定するためのケーブル接続ポート(2)と、測定試料を装てんした時に電磁波が漏れない内径と長さをもったスリーブ(3)と、−198℃から+320℃の範囲で物理的強度が著しく変化しない、誘電損失の小さな素材でできたガイド(B)と、試料温調槽(8)とを備えた空洞共振器において、試料温調槽(8)とガイド(B)と測定試料を、気流によって所定の温度に設定しながら複素誘電率の測定を行うことが可能な空洞共振器。
【選択図】図1
Description
本発明は、複素誘電率測定用の空洞共振器に関するものであり、特に、広域温度で複素誘電率の測定を可能とした広域温度対応型複素誘電率測定用空洞共振器に関するものである。
物質に電磁波を照射した場合、被照射物質は浸透する電磁波のエネルギーを熱に変えることによって温度が上昇することは従来から知られている。この時の温度上昇率は被照射物質の導電率の関数である導電損、誘電率の関数である誘電損、透磁率の関数である磁性損で表される。
近年、マイクロ波帯のエネルギーを化学反応用加熱デバイスに利用する試みが多くなされており、特に被照射物質の誘電損を、広範囲の温度で評価する方法が求められている。
被照射体の誘電損を計測する方法として、被照射体の複素誘電率を評価する方法がある。液体あるいは粉体の複素誘電率を測定する方法としては空洞共振器法、同軸プローブ法、伝送ライン法、フリースペース法、平行板コンデンサ法、などの装置が市販されている(非特許文献1参照)。このうち、TM0n0モード円筒共振器を用いた空洞共振器法は、測定試料断面積が空洞共振器断面積に比べて十分に小さく、かつ軸方向に均一とみなせるならば、固体、液体、粉体、およびこれらの任意の混合体でも精度よく測定できる。例えば棒状の固体試料や、細管に充填した液体試料や、細管に充填した粉体試料や、細管に充填した固体液体混合試料、などの複素誘電率が測定できる。
近年、マイクロ波帯のエネルギーを化学反応用加熱デバイスに利用する試みが多くなされており、特に被照射物質の誘電損を、広範囲の温度で評価する方法が求められている。
被照射体の誘電損を計測する方法として、被照射体の複素誘電率を評価する方法がある。液体あるいは粉体の複素誘電率を測定する方法としては空洞共振器法、同軸プローブ法、伝送ライン法、フリースペース法、平行板コンデンサ法、などの装置が市販されている(非特許文献1参照)。このうち、TM0n0モード円筒共振器を用いた空洞共振器法は、測定試料断面積が空洞共振器断面積に比べて十分に小さく、かつ軸方向に均一とみなせるならば、固体、液体、粉体、およびこれらの任意の混合体でも精度よく測定できる。例えば棒状の固体試料や、細管に充填した液体試料や、細管に充填した粉体試料や、細管に充填した固体液体混合試料、などの複素誘電率が測定できる。
ここでTM0n0モードとは、円筒共振器の内部にある電磁界の振動状態を示す。TMモードとは横波(Transverse wave)の磁界(Magnetic field)が進行する様子を表す。円筒共振器では軸方向を電磁波の進行方向、円周方向の節の数をa、中心から円周方向の節の数をb、進行方向の節の数をcと定義され、ここに伝播される横波の磁界はTMabcモードと表記される。したがって円周方向の節の数が0、中心から円周方向の節の数がn、進行方向の節の数が0となるTM波が存在できる円筒共振器をTM0n0モード円筒共振器と呼ぶ。
一方、空洞共振器を用いた複素誘電率の測定では、測定試料の温度を室温より上げる、あるいは室温より下げることは容易ではない。
室温以外の温度で測定する既存の手法として、空洞共振器を恒温槽に収容し、温度を調整して測定する方法がある(特許文献1、2参照)。この方法では−40℃から+120℃の範囲にわたり温度が可変である。しかしながらこの方法では空洞共振器のはんだ溶接部が融解する温度(約180℃)以上の温度での測定は共振器の損傷が起こるため困難である。また冷媒の冷却温度(−40℃)以下の温度での測定は困難である。
また室温以外の温度で測定する他の方法として誘電体円柱共振器を用いる方法があるが、板状試料の測定に適したものであり、液体や粉体など流動性のある材料の測定は困難である(特許文献3、4参照)。
また他の方法として、測定機であるベクトルネットワークアナライザから発振された電磁波信号を、測定試料が加熱されるほどに増幅器で増幅し、増幅された電磁波信号を空洞共振器内で測定試料に照射することで測定試料のみを加熱し、透過する電磁波信号を減衰器で減衰させた後にベクトルネットワークアナライザに戻して測定する方法がある(非特許文献2参照)。しかしながらこの方法では電磁波で加熱ができる試料でなければ温度が上がらず、電磁波の吸収が小さい材料の高温化は困難である。
室温以外の温度で測定する既存の手法として、空洞共振器を恒温槽に収容し、温度を調整して測定する方法がある(特許文献1、2参照)。この方法では−40℃から+120℃の範囲にわたり温度が可変である。しかしながらこの方法では空洞共振器のはんだ溶接部が融解する温度(約180℃)以上の温度での測定は共振器の損傷が起こるため困難である。また冷媒の冷却温度(−40℃)以下の温度での測定は困難である。
また室温以外の温度で測定する他の方法として誘電体円柱共振器を用いる方法があるが、板状試料の測定に適したものであり、液体や粉体など流動性のある材料の測定は困難である(特許文献3、4参照)。
また他の方法として、測定機であるベクトルネットワークアナライザから発振された電磁波信号を、測定試料が加熱されるほどに増幅器で増幅し、増幅された電磁波信号を空洞共振器内で測定試料に照射することで測定試料のみを加熱し、透過する電磁波信号を減衰器で減衰させた後にベクトルネットワークアナライザに戻して測定する方法がある(非特許文献2参照)。しかしながらこの方法では電磁波で加熱ができる試料でなければ温度が上がらず、電磁波の吸収が小さい材料の高温化は困難である。
「誘電体特性の基礎」アジレントテクノロジーズ アプリケーションノート 5989−2589JAJP、2005年6月23日 アジレントテクノロジー株式会社発行
関勇、二川佳央、「マイクロ波領域における有機材料の複素誘電率温度依存性の評価」第6回マイクロ波効果・応用国際シンポジウム予稿 133頁〜134頁、2006年11月 日本電磁波エネルギー応用学会発行
本発明は、簡単な構成で、固体、液体、粉体、およびこれらの混合体等のいずれの測定試料に対しても、従来よりも広域な温度範囲で複素誘電率を測定可能にしようとするものであって、本発明では、空洞共振器と断熱した状態で、測定試料およびその近傍を、所定の温度(−198℃から+320℃)に維持したまま、複素誘電率を測定するための広域温度対応型の複素誘電率測定用の空洞共振器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明者は鋭意検討を重ねた結果、比誘電損失(εr”)が小さく、広域の温度で耐性が高い、肉薄なガイドを、円筒型空洞共振器の中心に設置し、その内部を希望とする温度の気体で満たすことで空洞共振器に損傷を与えず、−198℃から+320℃の広域な温度の試料の測定が可能な、複素誘電率測定用の円筒型空洞共振器を作成することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明により提供される広域温度対応型複素誘電率測定用空洞共振器を用いることによって、測定試料が固体、液体、粉体、およびこれらの混合体にかかわらず、また電磁波による加熱のされやすさの差異にかかわらず、−198℃から+320℃の広域な温度において複素誘電率が測定できる。
本発明は、送風機によって所定温度の気流を試料予備温調部およびガイドに送り、測定試料を所定の温度に設定した状態で、共振周波数及びQ値のブランク測定を行い、引き続き測定試料を測定空間に移動させ、共振周波数及びQ値のターゲット測定を行い、ブランクとターゲットの共振周波数およびQ値の変化から複素誘電率を求めることで広域な温度での測定を実現した。
また、本発明は、低温で測定を行う際には、乾燥気体を充填した乾燥バック内に空洞共振器を設置することにより、結露や降霜を妨ぐことができる。
また、本発明は、低温で測定を行う際には、乾燥気体を充填した乾燥バック内に空洞共振器を設置することにより、結露や降霜を妨ぐことができる。
図1に、本発明の一実施例である広域温度対応型複素誘電率測定用空洞共振器の全体構成を示す。図において、本装置は、以下の(A)から(D)の4部分に分かれる。
(A)空洞共振器部:ブランク(基準)および測定試料の共振周波数、Q値を測定するための空洞共振器
(B)ガイド:測定試料の温度を一定に保つために空洞共振器と測定試料を隔てるもの
(C)試料予備温調部:測定試料を所定の温度に設定するための装置
(D)乾燥バック(9):結露や降霜を妨げるために外気と遮断するもの
そして、(A)の空洞共振器部は、特定の電磁界モードが成立する形状であり、具体的にはキャビティ(1)の内部でTM0n0モード(n=1〜4の整数)の電磁波の共振が成立する形状であり、ベクトルネットワークアナライザなどの外部装置にて共振周波数およびQ値を測定するためのケーブル接続ポート(2)があり、測定試料を装てんした時に電磁波が漏れない内径と長さをもったスリーブ(3)があればよく、市販の共振器などを使うことができるが、好ましくは、室温のブランク測定でQ値は16000以上がよく、より好ましくは20000以上がよい。
次に、ガイド(B)は低温から高温まで広範囲に温度耐性が必要であり、好ましくは−200℃から+350℃の範囲で物理的強度が著しく変化しない素材がよい。ガイド(B)は、スリーブ(3)と断熱している構造が好ましいが、ガイド(B)とスリーブ(3)の間に0.5mm程度のわずかな隙間があるだけでも十分である。また150℃以上の高温で使用する場合はスリーブ(3)を外部から強制空冷してもよい。キャビティ(1)にガイド(B)を導入することによって(A)の空洞共振器部のQ値が減少するため、ガイド(B)は誘電損失の小さな物質がよく、キャビティ(1)にガイド(B)を導入した状態の室温のブランク測定でQ値は8000以上がよく、より好ましくは10000以上がよい。
次に、(C)の試料温調部は、高温測定時には測定試料を欲する温度に予熱する形状であり、具体的には試料温調槽(8)によって外部から測定試料を加熱する、あるいは温度調整の可能な送風機から得られる所定温度の気流を、送風機接続口(4)から導入し、試料温調槽(8)およびガイド(B)に供給する形状である。測定試料は試料導入口(5)から導入され、試料温調槽(8)の内部で温度計(7)により計測されながら所定温度に設定される。(C)は全体として断熱材等で保温される構造が好ましい。
また、(C)の試料温調部は、低温測定時には測定試料を欲する温度に予冷する形状であり、具体的には試料温調槽(8)によって外部から測定試料を冷却する、あるいは温度調整の可能な送風機から得られる所定温度の気流を、送風機接続口(4)から導入し、試料温調槽(8)およびガイド(B)に供給する形状である。極低温で冷却する際に、スリーブ(3)とガイド(B)の間に隙間がある場合は、ここからキャビティ(1)内部に外気が入り、ガイド(B)の表面に結露あるいは降霜が起こり測定に支障をきたす。この場合は、(A)の空洞共振器部を(D)の乾燥気体で満たした乾燥バック(9)で密封して用いる。
(A)空洞共振器部:ブランク(基準)および測定試料の共振周波数、Q値を測定するための空洞共振器
(B)ガイド:測定試料の温度を一定に保つために空洞共振器と測定試料を隔てるもの
(C)試料予備温調部:測定試料を所定の温度に設定するための装置
(D)乾燥バック(9):結露や降霜を妨げるために外気と遮断するもの
そして、(A)の空洞共振器部は、特定の電磁界モードが成立する形状であり、具体的にはキャビティ(1)の内部でTM0n0モード(n=1〜4の整数)の電磁波の共振が成立する形状であり、ベクトルネットワークアナライザなどの外部装置にて共振周波数およびQ値を測定するためのケーブル接続ポート(2)があり、測定試料を装てんした時に電磁波が漏れない内径と長さをもったスリーブ(3)があればよく、市販の共振器などを使うことができるが、好ましくは、室温のブランク測定でQ値は16000以上がよく、より好ましくは20000以上がよい。
次に、ガイド(B)は低温から高温まで広範囲に温度耐性が必要であり、好ましくは−200℃から+350℃の範囲で物理的強度が著しく変化しない素材がよい。ガイド(B)は、スリーブ(3)と断熱している構造が好ましいが、ガイド(B)とスリーブ(3)の間に0.5mm程度のわずかな隙間があるだけでも十分である。また150℃以上の高温で使用する場合はスリーブ(3)を外部から強制空冷してもよい。キャビティ(1)にガイド(B)を導入することによって(A)の空洞共振器部のQ値が減少するため、ガイド(B)は誘電損失の小さな物質がよく、キャビティ(1)にガイド(B)を導入した状態の室温のブランク測定でQ値は8000以上がよく、より好ましくは10000以上がよい。
次に、(C)の試料温調部は、高温測定時には測定試料を欲する温度に予熱する形状であり、具体的には試料温調槽(8)によって外部から測定試料を加熱する、あるいは温度調整の可能な送風機から得られる所定温度の気流を、送風機接続口(4)から導入し、試料温調槽(8)およびガイド(B)に供給する形状である。測定試料は試料導入口(5)から導入され、試料温調槽(8)の内部で温度計(7)により計測されながら所定温度に設定される。(C)は全体として断熱材等で保温される構造が好ましい。
また、(C)の試料温調部は、低温測定時には測定試料を欲する温度に予冷する形状であり、具体的には試料温調槽(8)によって外部から測定試料を冷却する、あるいは温度調整の可能な送風機から得られる所定温度の気流を、送風機接続口(4)から導入し、試料温調槽(8)およびガイド(B)に供給する形状である。極低温で冷却する際に、スリーブ(3)とガイド(B)の間に隙間がある場合は、ここからキャビティ(1)内部に外気が入り、ガイド(B)の表面に結露あるいは降霜が起こり測定に支障をきたす。この場合は、(A)の空洞共振器部を(D)の乾燥気体で満たした乾燥バック(9)で密封して用いる。
空洞共振器(A)およびガイド(B)は水平から垂直まで任意の方向で設置してよいが、測定試料の温度を一定に保つためにはなるべくガイド(B)と接触しない方向がよい。また空洞共振器(A)およびガイド(B)を水平方向以外で設置して使用する場合、試料温調部(C)はガイド(B)の上部および下部のどちらに設置して使用してもかまわない。
本発明で用いる(A)の空洞共振器部は、例えばTM010円筒空洞共振器、TM020円筒空洞共振器が挙げられる。ガイド(B)の素材は、例えばホウ珪ガラス、石英が挙げられる。ガイド(B)の外径は小さいほうが良いが、6ギガヘルツ以下の測定では5ミリメートル以内、6ギガヘルツ以上では3ミリメートル以内が良い。
周波数の適用範囲は、良好なQ値を持つ共振器が提供されればどのような周波数でも可能であるが、UHF帯(0.3〜3ギガヘルツ)およびSHF帯(3〜30ギガヘルツ)において、測定原理は変わらないため、周波数の適用範囲としては、UHF帯あるいはSHF帯が好ましく、汎用のベクトルネットワークアナライザで測定が可能な0.5〜20ギガヘルツの範囲が実用的である。
本発明で用いる(A)の空洞共振器部は、例えばTM010円筒空洞共振器、TM020円筒空洞共振器が挙げられる。ガイド(B)の素材は、例えばホウ珪ガラス、石英が挙げられる。ガイド(B)の外径は小さいほうが良いが、6ギガヘルツ以下の測定では5ミリメートル以内、6ギガヘルツ以上では3ミリメートル以内が良い。
周波数の適用範囲は、良好なQ値を持つ共振器が提供されればどのような周波数でも可能であるが、UHF帯(0.3〜3ギガヘルツ)およびSHF帯(3〜30ギガヘルツ)において、測定原理は変わらないため、周波数の適用範囲としては、UHF帯あるいはSHF帯が好ましく、汎用のベクトルネットワークアナライザで測定が可能な0.5〜20ギガヘルツの範囲が実用的である。
本発明を用いた複素誘電率の測定は以下の手順による。
初めに、送風機によって所定温度の気流を試料予備温調部およびガイドに送り、測定試料およびガイドを所定の温度に設定する。
次に、測定試料が測定空間(空洞共振器内)にない状態で、共振周波数及びQ値を、ベクトルネットワークアナライザによって測定する。これをブランク測定と呼ぶ。
次に、測定試料が測定空間(空洞共振器内)にある状態で、共振周波数及びQ値を、ベクトルネットワークアナライザによって測定する。これをターゲット測定と呼ぶ。
ブランク測定で得られた共振周波数fcから、共振器内を均一な円筒空洞と見なした時の見かけの共振器半径rcを数式1から求める。
初めに、送風機によって所定温度の気流を試料予備温調部およびガイドに送り、測定試料およびガイドを所定の温度に設定する。
次に、測定試料が測定空間(空洞共振器内)にない状態で、共振周波数及びQ値を、ベクトルネットワークアナライザによって測定する。これをブランク測定と呼ぶ。
次に、測定試料が測定空間(空洞共振器内)にある状態で、共振周波数及びQ値を、ベクトルネットワークアナライザによって測定する。これをターゲット測定と呼ぶ。
ブランク測定で得られた共振周波数fcから、共振器内を均一な円筒空洞と見なした時の見かけの共振器半径rcを数式1から求める。
ここでanは、第一種0次ベッセル関数J0(x)において値が0となるxのうち、n番目のxの値であり、nはTM0n0モードのnを表す1から4の整数であり、具体的にはn=1においてはan=2.405、n=2においてはan=5.520、n=3においてはan=8.654、n=4においてはan=11.79を表す。式1から得られた共振器半径をrc、試料断面積をSs、ブランク測定時の共振周波数をfc、ブランク測定時のQ値をQc、ターゲット測定時の共振周波数をfs、ターゲット測定時のQ値をQsとすると、複素誘電率εr *は数式2、数式3、数式4によって得られる。
ここでαnは、第一種0次ベッセル関数J0(x)において値が0となるxのうち、n番目のxの値を数式5に代入して求められた値であり、nはTM0n0モードのnを表す1から4の整数であり、具体的にはn=1においてはαn=1.855、n=2においてはαn=4.318、n=3においてはαn=6.786、n=4においてはαn=9.25を表す。
ここでJ1(x)は第一種1次ベッセル関数を表す。
ターゲット測定とブランク測定は短時間内に両方を終えることが好ましいが、温度、サンプルの状態、共振器の状態、ネットワークアナライザの状態などが同一と見なせれば間隔をあけて測定しても良い。また、ターゲット測定とブランク測定の順序は入れ替えてもよい。また、容器に充填された試料を測定する時は、空容器が測定空間(空洞共振器内)にある状態をブランク測定としてもよい。この時の容器は長さ方向に均一であり、誘電損失が小さく、円筒状であることが好ましい。
(測定例1)
所定の周波数近傍でキャビティ内にTM0n0モードの電磁波共振が成立する、試料温調部を装着した本発明の装置を用いて、試料断面積が0.9平方ミリメートルとなるガラス製細管に封じられたエタノールの複素誘電率加温特性を、25℃から80℃の範囲で測定したところ、図3の表に示す値となった。
所定の周波数近傍でキャビティ内にTM0n0モードの電磁波共振が成立する、試料温調部を装着した本発明の装置を用いて、試料断面積が0.9平方ミリメートルとなるガラス製細管に封じられたエタノールの複素誘電率加温特性を、25℃から80℃の範囲で測定したところ、図3の表に示す値となった。
(測定例2)
2.45ギガヘルツ近傍でキャビティ内にTM020モードの電磁波共振が成立する、試料温調部を装着した本発明の装置を用いて、試料断面積が2.8平方ミリメートルとなるガラス製細管に封じられたシクロヘキサンの複素誘電率加温特性を、25℃から80℃の範囲で測定したところ、図4の表に示す値となった。図4の表より、シクロヘキサンは25℃から80℃の範囲で複素誘電率の虚数項で示される比誘電損失(εr”)が0.002以下であり、電磁波の吸収がほとんどない材料であることが示されている。このことは、本発明の装置では電磁波の吸収がほとんどない材料でも高温測定が可能であることを示している。
2.45ギガヘルツ近傍でキャビティ内にTM020モードの電磁波共振が成立する、試料温調部を装着した本発明の装置を用いて、試料断面積が2.8平方ミリメートルとなるガラス製細管に封じられたシクロヘキサンの複素誘電率加温特性を、25℃から80℃の範囲で測定したところ、図4の表に示す値となった。図4の表より、シクロヘキサンは25℃から80℃の範囲で複素誘電率の虚数項で示される比誘電損失(εr”)が0.002以下であり、電磁波の吸収がほとんどない材料であることが示されている。このことは、本発明の装置では電磁波の吸収がほとんどない材料でも高温測定が可能であることを示している。
(測定例3)
2.45ギガヘルツ近傍でキャビティ内にTM020モードの電磁波共振が成立する、試料温調部を装着した本発明の装置を用いて、試料断面積が2.8平方ミリメートルとなるガラス製細管に充填率25%で封じられた炭素混合シリカゲル粉体(和光純薬製 カタログ番号019-19411)の複素誘電率加温特性を、25℃から320℃の範囲で測定したところ、図5の表に示す値となった。
2.45ギガヘルツ近傍でキャビティ内にTM020モードの電磁波共振が成立する、試料温調部を装着した本発明の装置を用いて、試料断面積が2.8平方ミリメートルとなるガラス製細管に充填率25%で封じられた炭素混合シリカゲル粉体(和光純薬製 カタログ番号019-19411)の複素誘電率加温特性を、25℃から320℃の範囲で測定したところ、図5の表に示す値となった。
(比較測定例1)
測定例3と同じ炭素混合シリカゲル粉体測定試料を、別途電気炉で220℃に予熱し、本発明の装置から試料温調部およびガイドを取り外した空洞共振器を用いて、複素誘電率加温特性の測定を試みたところ、測定所要時間である20秒内において、測定試料は速やかに放冷され、220℃を維持することはできなかった。またこの時の温度は測定時間内で一定ではなく、特定ができなかった。
比較測定例1で測定例3と異なるところは、測定試料をガイドおよび欲する温度の気流により保温しなかった点である。比較測定例1では、ベクトルネットワークアナライザが共振周波数およびQ値を計測するための所要時間内に測定試料の温度が低下し、またこの時の試料の温度を特定できないことを示しており、加温特性の測定ができないことを示している。
測定例3と同じ炭素混合シリカゲル粉体測定試料を、別途電気炉で220℃に予熱し、本発明の装置から試料温調部およびガイドを取り外した空洞共振器を用いて、複素誘電率加温特性の測定を試みたところ、測定所要時間である20秒内において、測定試料は速やかに放冷され、220℃を維持することはできなかった。またこの時の温度は測定時間内で一定ではなく、特定ができなかった。
比較測定例1で測定例3と異なるところは、測定試料をガイドおよび欲する温度の気流により保温しなかった点である。比較測定例1では、ベクトルネットワークアナライザが共振周波数およびQ値を計測するための所要時間内に測定試料の温度が低下し、またこの時の試料の温度を特定できないことを示しており、加温特性の測定ができないことを示している。
(測定例4)
2.45ギガヘルツ近傍でキャビティ内にTM020モードの電磁波共振が成立する、試料温調部および乾燥バックを装着した本発明の装置を用いて、試料断面積が0.9平方ミリメートルとなるガラス製細管に封じられたエタノールの複素誘電率冷却特性を、−198℃から−10℃の範囲で測定したところ、図6の表に示す値となった。
2.45ギガヘルツ近傍でキャビティ内にTM020モードの電磁波共振が成立する、試料温調部および乾燥バックを装着した本発明の装置を用いて、試料断面積が0.9平方ミリメートルとなるガラス製細管に封じられたエタノールの複素誘電率冷却特性を、−198℃から−10℃の範囲で測定したところ、図6の表に示す値となった。
(比較測定例2)
測定例4と同じエタノール試料を、別途液体窒素浴で−198℃に予冷し、本発明の装置から試料温調部、乾燥バック、およびガイドを取り外した空洞共振器を用いて、複素誘電率冷却特性の測定を試みたところ、測定時間内において、測定試料は速やかに加温され、−198℃を維持することはできなかった。また移動において降霜が生じ、正確性の低下が生じた。
比較測定例2で測定例4と異なるところは、測定試料をガイドおよび欲する温度の気流により保温しなかった点、および乾燥バックを用いないため試料表面に降霜が生じた点である。比較測定例2では、ベクトルネットワークアナライザが共振周波数およびQ値を計測する時間内に測定試料の温度が上昇し、またこの時の試料の温度を特定できないことを示しており、さらには時間とともに降霜量が増加し、冷却特性の測定ができないことを示している。
測定例4と同じエタノール試料を、別途液体窒素浴で−198℃に予冷し、本発明の装置から試料温調部、乾燥バック、およびガイドを取り外した空洞共振器を用いて、複素誘電率冷却特性の測定を試みたところ、測定時間内において、測定試料は速やかに加温され、−198℃を維持することはできなかった。また移動において降霜が生じ、正確性の低下が生じた。
比較測定例2で測定例4と異なるところは、測定試料をガイドおよび欲する温度の気流により保温しなかった点、および乾燥バックを用いないため試料表面に降霜が生じた点である。比較測定例2では、ベクトルネットワークアナライザが共振周波数およびQ値を計測する時間内に測定試料の温度が上昇し、またこの時の試料の温度を特定できないことを示しており、さらには時間とともに降霜量が増加し、冷却特性の測定ができないことを示している。
本発明により提供される広域温度対応型複素誘電率測定用空洞共振器は、測定試料およびその近傍を、所定の温度(−198℃から+320℃)に維持したまま、複素誘電率を測定できるため、固体、液体、粉体、およびこれらの任意の混合体などの、広域な複素誘電率の温度特性を測定する装置として有用である。また、細管に封じられた試料の測定も可能であり、沸点以上の液体の温度特性、あるいは粉体突沸が起こりやすい試料の温度特性の測定が可能である。
1 キャビティ
2 ケーブル接続ポート
3 スリーブ
4 送風機接続口
5 試料導入口
6 ガイド接続口
7 温度計
8 試料温調槽
9 乾燥バック
2 ケーブル接続ポート
3 スリーブ
4 送風機接続口
5 試料導入口
6 ガイド接続口
7 温度計
8 試料温調槽
9 乾燥バック
Claims (4)
- 内部でTM0n0モード、ただし、n=1〜4の整数、の電磁波の共振が成立するキャビティと、共振周波数およびQ値を測定するためのケーブル接続ポートと、測定試料を装てんした時に電磁波が漏れない内径と長さをもったスリーブと、−198℃から+320℃の範囲で物理的強度が著しく変化しない、誘電損失の小さな素材でできたガイドと、試料温調槽とを備えた空洞共振器において、試料調温槽とガイドを気密に接続し、ガイドはスリーブを通してキャビティの中央部に設置され、試料温調槽とガイドの内部を気流によって所定の温度に設定しながら、試料調温槽内で予め所定温度に調温された測定試料をガイド内に装填して複素誘電率の測定を行うことを特徴とする空洞共振器。
- 前記スリーブは、前記ガイドと断熱されていることを特徴とする請求項1記載の空洞共振器。
- 前記キャビティの外側を、乾燥気体で充填した乾燥バックを用いて密封し、結露あるいは降霜を防ぐことを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1項に記載の空洞共振器。
- 測定試料を加熱する加熱手段または測定試料を冷却する冷却手段をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空洞共振器。
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---|---|---|---|
JP2009153353A JP2011007716A (ja) | 2009-06-29 | 2009-06-29 | 広域温度対応型複素誘電率測定用空洞共振器 |
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- 2009-06-29 JP JP2009153353A patent/JP2011007716A/ja active Pending
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