JP2011007333A - ねじ部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄製の壁面に下孔を形成しその下孔に、電動工具を用いてタップを立てるように挿入されるものであって、下孔に挿入されるタッピングねじ部を有し、このタッピングねじ部は、鉄に、カーボンを0.20%〜0.26%含む炭素鋼であって、全長が10mmを越えて15mm以下、ねじ山を含まない外径が11mmを越えて15mm以下、ねじ山の高さは0.6mm以上1.0mm以下、ねじ山の最大幅は0.2mm以上0.4mm以下、隣り合うねじ山の間隔(ピッチは、1mm以上2mm以下で、表面を焼き入れし、タッピングねじ部の表面から0.4mmまでの範囲のピッカース硬さが500HV以上で、タッピングねじ部の表面から1.00mm以上中心部までの範囲のピッカース硬さが300HV以下で、タッピングねじ部の断面は円形である。
【選択図】図1
Description
上記の課題を解決するために、本発明は、電動工具で回転駆動してねじ込むように使用されても、十分な強度を保ち、実用性の高いねじ部材を提供することを目的とする。
〈構成1〉
鉄製の壁面に下孔を形成しその下孔に、電動工具を用いてタップを立てるように挿入されるものであって、前記下孔に挿入されるタッピングねじ部を有し、このタッピングねじ部は、鉄に、カーボンを0.20%〜0.26%含む炭素鋼であって、全長が10mmを越えて15mm以下、ねじ山を含まない外径が11mmを越えて15mm以下、ねじ山の高さは0.6mm以上1.0mm以下、ねじ山の最大幅は0.2mm以上0.4mm以下、隣り合うねじ山の間隔(ピッチは、1mm以上2mm以下で、表面を焼き入れし、タッピングねじ部の表面から0.4mmまでの範囲のピッカース硬さが500HV以上で、タッピングねじ部の表面から1.00mm以上中心部までの範囲のピッカース硬さが300HV以下で、前記ねじ山を設けた部分の、前記ねじ山を含まない外径と、前記ねじ山の高さと、前記ねじ山の断面と、前記隣り合うねじ山の間隔はいずれも一定であって、前記タッピングねじ部の断面は円形であることを特徴とするねじ部材。
鉄製の壁面に下孔を形成しその下孔にタップを立てるように挿入すると、鉄製のねじ部材を電動工具で一気にねじ込んで固定することができる。各部の寸法と材質を最適化したので、4t程度の引き抜き力に対して十分に耐えうるものにすることができる。
図1(a)のねじ部材10は、特許文献1で紹介された構造のものである。その右側にはタッピングねじ部14を備え、左側には連結用ねじ部18を備え、中央には工具掛け部19を備えている。タッピングねじ部14の外周にはねじ山17が設けられている。このねじ部材10は、図1(b)に示すように、土留め12に沿って立てられたH鋼13にねじ込み固定される。
このねじ部材10は、工具掛け部19とタッピングねじ部14の間にテーパ接合部24を設けている。このねじ部材10をH鋼13にねじ込むと、テーパ接合部24により、工具掛け部19とH鋼13の間に若干の隙間が生じる。ここで、H鋼13の向きが、図示しないコンクリート型枠と正対しておらず、若干傾いているとする。このときは、連結用ねじ部18を叩いて連結用ねじ部18の向きを正しい方向に向ける。このとき、工具掛け部19とH鋼13の間に隙間があると、図4に示すように曲げやすくなる。
既に説明したように、ねじ山17の高さH、最大幅W、間隔(ピッチP)を上記の所定の寸法範囲に設定する。このねじ山17が、H鋼13の下孔16(図2)の内壁のねじ切りをする。H鋼13の下孔16にはねじ山17に対応するねじ溝が切られる。ねじ山17と下孔16のねじ溝とが密着しているとき、タッピングねじ部14に矢印Fの方向の引き抜き力が加わると、ねじ山17とH鋼13のねじ溝とには、それぞれ図の短矢印に示すような反力が加わる。
ねじ部材10は強度を保つために、図7(a)に示すように、表面焼き入れをして、外径が10mmのもので深さ0.1mm付近まで硬化層28を形成する。十分簡単に曲げ加工することができるように、必要最小限の深さについて焼き入れをする。これで、下孔にねじ込まれるときにねじ部がねじを切るための強度は十分に保持できる。その結果、図の(b)に示すように、ねじ山17を含むねじ部材10の表面が強化され、芯部30は柔軟性を保持する。例えば、表皮の硬化層28部分はピッカース硬さが650HV、芯部30部分は250HV程度になる。
図のように、中程度の硬さのH鋼では、引き抜き力を加えると、H鋼の下孔内でねじ山に挟まれた部分が塑性変形するため、ねじ山矢印Jに示すような曲げ応力が加わる。焼き入れによる硬化層は脆いため、図のようにねじ山の根元で破断が生じる。ねじ部材全体を焼き入れして強化すればこの問題は解決するが、それでは、上記の曲げ調整ができなくなる。また、無理に曲げようとすると割れが生じる。そこで、焼き入れにより強化する硬化層の厚さを最適化した。即ち、ねじ山を含まないタッピングねじ部の表面から0.4mmまでの範囲に、中心部の硬さの2倍以上の硬化層を設けた。
この実施例では、ねじ部材の外径を10mmとした。タッピングねじ部の表面から1.00mm以上、好ましくは0.6mm以上、中心部までの範囲のピッカース硬さが300HV以下とし、横断面から見て80〜90%の部分の強度を調整し曲げ特性を保持させている。一方、タッピングねじ部の表面から0.4mmまでの範囲のピッカース硬さが500HV以上になるように表面焼き入れ加工をした。これにより、中程度の硬さのH鋼に対して使用して、4t程度の引き抜き力を加えても、ねじ山が変形したり破損せず、耐え得ることがわかった。図のグラフの縦軸はピッカース硬さ(HV)、横軸は、ねじ部材の表面から中心方向の距離(mm)である。実線が実施例、破線は比較例である。比較例は、3.5tでねじ山が壊れてねじ部材が抜け落ちた。
それぞれ、寸法等の制約条件が実線で示されている。太線の部分は、鋼材のばらつきを考慮したときの安全圏の範囲である。この範囲で、引き抜き力が4tに耐えるものを実現できた。以上の説明のとおり、鉄製の壁面に下孔を形成しその下孔にタップを立てるように挿入されるタッピングねじ部を有するねじ部材を、所定の寸法範囲に設計することにより、電動工具によるねじ込み時の摩擦熱に影響を受けないものを得ることができた。また、表面焼き入れによる硬化層の厚さを調整することにより、取り付け後の曲げを許容しつつ、4tといった高い引き抜き力にも耐えるねじ部材を実現できた。
13 H鋼
14 タッピングねじ部
15 連結金具
16 下孔
17 ねじ山
18 連結用ねじ部
19 工具掛け部
20 パッキング
21 防水シート
24 テーパ接合部
28 硬化層
30 芯部
Claims (1)
- 鉄製の壁面に下孔を形成しその下孔に、電動工具を用いてタップを立てるように挿入されるものであって、前記下孔に挿入されるタッピングねじ部を有し、
このタッピングねじ部は、鉄に、カーボンを0.20%〜0.26%含む炭素鋼であって、
全長が10mmを越えて15mm以下、
ねじ山を含まない外径が11mmを越えて15mm以下、
ねじ山の高さは0.6mm以上1.0mm以下、
ねじ山の最大幅は0.2mm以上0.4mm以下、
隣り合うねじ山の間隔(ピッチは、1mm以上2mm以下で、
表面を焼き入れし、タッピングねじ部の表面から0.4mmまでの範囲のピッカース硬さが500HV以上で、タッピングねじ部の表面から1.00mm以上中心部までの範囲のピッカース硬さが300HV以下で、
前記ねじ山を設けた部分の、前記ねじ山を含まない外径と、前記ねじ山の高さと、前記ねじ山の断面と、前記隣り合うねじ山の間隔はいずれも一定であって、
前記タッピングねじ部の断面は円形であることを特徴とするねじ部材。
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