JP2011006811A - 極細繊維不織布およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 極細繊維を含有した不織布に関し、特には皮膚洗浄用シート、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロス、床ずれ防止基材、微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れた極細繊維不織布、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 実質的にアルカリ不溶性繊維のみからなる繊維ウエブが、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有しており、前記繊維ウエブはニードル又は水流の作用によって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合しており、さらにディロアニードル、バフ加工又はスライス加工によって立毛している極細繊維不織布。
【選択図】 図1

Description

この発明は、極細繊維を含有した不織布に関し、特には、化粧前又は化粧後に肌の表面に浮き出した皮脂分を吸い取り、化粧ののりを良くすることや、化粧直し、化粧落とし、洗顔等に使用できる皮膚洗浄用シート、あるいは微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロス、床ずれ防止基材や微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れた極細繊維不織布、およびその製造方法に関する。
従来から極細繊維の特性を利用した不織布が提案されており、例えば化粧前又は化粧後に肌の表面に浮き出した皮脂分を吸い取り化粧ののりを良くすることや化粧直し、細くて柔らかい極細繊維の毛先を利用して洗剤等と併用して毛穴等のクリーニングを行う化粧落とし、洗顔等に使用できる皮膚洗浄用シート、あるいは微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロス用の不織布や、微細な塵埃を除去するためのフィルタ用の不織布がある。
これら用途の中で、皮膚洗浄用シート、マスク、あるいは床ずれ防止基材のように皮膚に接触させて用いるもの、あるいはワイピングクロスのように手に直接持って使用するものとしては、特に保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、肌触り感に優れたものが求められていた。このような用途のために提案された不織布としては、例えば特許文献1の化粧用脂取りシートがある。
この特許文献1によれば、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、フラッシュ紡糸不織布、或いは分割繊維を分割した不織布を加熱加圧プレスして化粧用脂取りシートを形成している。しかし、加熱加圧プレス条件が弱いと繊維間の接着強度が弱く、機械的強度が弱いため取り扱いにくく、また皮膚に繊維が付着してしまう場合があり、逆に、加熱加圧プレス条件が強いとフィルム化してしまい、柔軟性が損なわれて皮膚への触感が良くないものであった。
このような問題に対して、特許文献2の「親油性繊維を75mass%以上含む皮膚用あぶらとりシートであり、前記皮膚用あぶらとりシートは親油性繊維を構成する最も融点の低い親油性低融点樹脂が融着しているとともに、前記親油性繊維の少なくとも一部は繊維形態を維持しており、しかも前記皮膚用あぶらとりシートの平均孔径が15μm以下である皮膚用あぶらとりシート。」が提案されている。この親油性繊維は、具体的には繊維径が5μm以下の親油性極細繊維と、前記親油性極細繊維を構成する親油性樹脂よりも融点の低い親油性低融点樹脂を表面に備えた親油性低融点繊維とを含んでおり、前記親油性低融点樹脂が融着していること、またこの皮膚用あぶらとりシートが、海島型繊維の海成分を除去することによって製造された繊維径が5μm以下の親油性極細繊維から抄造された湿式繊維ウエブに由来することが示されている。
このように、この特許文献2では、皮膚用あぶらとりシートが繊維径が5μm以下の親油性極細繊維から抄造された湿式繊維ウエブに由来するため、親油性繊維の低融点樹脂が融着することで、ペーパーライクでしかも高密度で硬くなり、柔軟性に劣り、皮膚への触感に劣るという問題があった。
また、特許文献3には「海島構造または剥離構造を有する複合繊維を用いて製織または編成してなる布帛を熱水中またはアルカリ液中で処理し、海成分を除去、または剥離した後、染色処理を行うことにより得られた、単繊維繊度が0.001デシテックス以上、1.0デシテックス以下の極細繊維からなる布帛と、通気性に優れた布帛とを、二層構造とした皮膚洗浄用布帛」が提案されている。しかし、この特許文献3では、繊維組織が製織または編成されているため、繊維の自由度が劣り、そのため柔軟性に劣るという問題があった。さらに、皮膚への触感にも劣るという問題があった。
特開2001−286411号公報 特開2004−154272号公報 特開2006−336149号公報
本発明は、上記問題を解決して、極細繊維を含有した不織布に関し、特には、化粧前又は化粧後に肌の表面に浮き出した皮脂分を吸い取り、化粧ののりを良くすることや、化粧直し、化粧落とし、洗顔等に使用できる皮膚洗浄用シート、あるいは微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロス、床ずれ防止基材や微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れた極細繊維不織布、およびその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、実質的にアルカリ不溶性繊維のみからなる繊維ウエブが、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有しており、前記繊維ウエブはニードル又は水流の作用によって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合しており、さらにディロアニードル、バフ加工又はスライス加工によって立毛していることを特徴とする極細繊維不織布である。この発明により、皮膚洗浄用シート、ワイピングクロス、床ずれ防止基材やフィルタとして好適な、保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れた極細繊維不織布を提供することが可能となる。
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の極細繊維不織布からなる皮膚洗浄用シートである。
請求項3に係る発明では、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いでニードル又は水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、次いでディロアニードルによって前記繊維ウエブの少なくとも片面を立毛させ、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする極細繊維不織布の製造方法である。この発明により、皮膚洗浄用シート、ワイピングクロス、床ずれ防止基材やフィルタとして好適な、保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れた極細繊維不織布を製造することが可能となる。
請求項4に係る発明では、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いでニードル又は水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、その後に(1)前記繊維ウエブに温水可溶性樹脂を含浸して繊維シートを形成し、次いで前記繊維シートの少なくとも片面をバフ加工するか、或いは前記繊維シートをスライス加工することにより立毛させ、次いで温水にて前記温水可溶性樹脂を溶出して繊維ウエブに戻す工程と、(2)前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合する工程を有し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする極細繊維不織布の製造方法である。この発明により、皮膚洗浄用シート、ワイピングクロス、床ずれ防止基材やフィルタとして好適な、保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れた極細繊維不織布を製造することが可能となる。
極細繊維を含有した不織布に関し、特には、化粧前又は化粧後に肌の表面に浮き出した皮脂分を吸い取り、化粧ののりを良くすることや、化粧直し、化粧落とし、洗顔等に使用できる皮膚洗浄用シート、あるいは微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロス、床ずれ防止基材や微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れた極細繊維不織布、およびその製造方法を提供することが可能となった。
本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の例 (a)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(b)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(c)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(d)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例を示す図である。
以下、本発明に係る極細繊維不織布およびその製造方法の好ましい実施の形態について詳細に説明する。なお、極細繊維不織布の製造方法については、極細繊維不織布の説明の中で説明する。
本発明の極細繊維不織布の繊維ウエブは、その構成繊維が実質的にアルカリ不溶性繊維のみからなっている。アルカリ不溶性繊維としては、例えばアルカリ不溶性の樹脂成分から形成されるナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ビニロン繊維などを挙げることができる。また、アルカリ不溶性の樹脂成分を2成分以上複合して形成される、複合型の繊維を挙げることができる。また、芯鞘型の複合繊維で、鞘部にアルカリ不溶性の樹脂成分を有する複合繊維を挙げることができる。
ここで、「実質的に」とは、後述するように、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して極細繊維を形成する際に、アルカリ可溶性樹脂成分が好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満残留した状態を含むことを意味する。
また、「極細繊維、及び熱接着性繊維を含有する」とは、本発明の極細繊維不織布が1層からなる場合は、その層に極細繊維と熱接着性繊維を両方含むことを意味し、極細繊維不織布が2層以上不離一体に積層されている場合は、極細繊維不織布全体として極細繊維と熱接着性繊維を両方含むことを意味する。したがって、本発明の極細繊維不織布は、例えば、ある層のA層が極細繊維100%からなり、別の層のB層が接着繊維100%からなり、絡合によってA層中の極細繊維の一部がB層に入り込む、および/または絡合によってB層中の接着繊維の一部がA層に入り込む形態の極細繊維不織布を含んでいる。
本発明では、前記繊維ウエブはアルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有している。ここで、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維の形態としては、例えば、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型などを挙げることができるが、これらの中では特に極細の繊維を発生することが可能な海島型が好ましい。
海島型の複合繊維としては、例えば図1に断面を例示するように海を形成する樹脂成分1と島を形成する樹脂成分2とからなる複合繊維があり、例えば紡糸口金部で海成分中に口金規制して島成分を押出して複合する方法などの複合紡糸法で得られる海島型複合繊維を適用可能である。また、一般的に混合紡糸法といわれる、島成分を構成する樹脂と海成分を構成する樹脂とを混合した後に紡糸する方法によって得られた海島型複合繊維も可能である。複合紡糸法による複合繊維の場合、海成分を溶解除去することによって同一の繊維径の極細繊維を得ることが可能であるという利点がある。一方、混合紡糸法による複合繊維の場合、同一の繊維径の極細繊維を得ることが困難であるが、より極細の繊維を発生することが可能であるという利点がある。以上説明した海島型の複合繊維の島成分をアルカリ不溶性樹脂成分とし、海成分をアルカリ可溶性樹脂成分とし、この海成分であるアルカリ可溶性樹脂成分を除去することで、島成分から極細繊維を形成することができる。
また、オレンジ型、多重バイメタル型の複合繊維としては、例えば一成分を他成分間に放射状に配した断面形状をもつ菊花型繊維、異なる成分を交互に層状に積層した断面形状をもつバイメタル型繊維があり、具体的には、例えば図2の(a)、(b)、(c)、(d)に断面を例示するように樹脂成分1と樹脂成分2とからなる複合繊維を挙げることができる。なお、図2の(a)では、樹脂成分1をアルカリ不溶性樹脂成分とし樹脂成分2をアルカリ可溶性樹脂成分とすることができる。このような断面形状の分割性複合繊維の樹脂成分1または樹脂成分2を、アルカリ液を用いて溶解除去することによって、断面形状が扁平形状の極細繊維を形成することができる。このような極細繊維は、鋭利な角をもつ扁平な断面形状を有するので、皮膚洗浄用シートやワイピング用途の場合、微細な塵埃を除去するとともに油性の汚れを払拭しやすいという利点がある。また、アルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維であるので、単に水流により分割して発生した極細繊維と異なりほぼ完全に分割した極細繊維であり、極細繊維としての効果を十分に発揮できるという利点がある。
特に、図2(a)または(c)のように、極細繊維の断面形状が略三角形の場合は、三角形の角が鋭利な角となるので、特に微細な塵埃を除去するとともに油性の汚れを払拭しやすいという利点がある。また、図2(b)のように、樹脂成分1と樹脂成分2とが層状に積層されており、分割後に繊維断面が偏平形状となるような極細繊維を含むことにより、場合により水流による絡合が高度に生じソフトな風合いと保形性に優れた不織布とすることができる。偏平形状に関しては、長軸の長さをaとし短軸の長さをbとすると、偏平度a/bの値が3以上であることが好ましい。偏平度a/bの値は例えば100個以上の走査型電子顕微鏡の映像を平均して求めることができる。
前記極細繊維の繊維径は、0.1〜7μmであることが好ましく、0.2〜3μmがより好ましく、0.3〜1μmが更に好ましい。7μmを超えると油性の汚れを払拭する効果や、微細な粉じんを除去する効果や、微細な塵埃を補足する効果などが低下する場合がある。また、0.1μm未満では、極細繊維の強度が低下して、その結果不織布の保形成が低下する場合がある。
なお、極細繊維の繊維径は走査型電子顕微鏡の平面、又は断面の映像で確認できる直径で表すことができる。直径にバラツキがある場合は前記映像のうち例えば任意の100個の数平均値で表すことができる。繊維の断面形状が円形でない場合は、繊維断面と同じ面積を有する円の直径で表すことができる。なお、使用される原料の繊度(デシテックス)が分かっている場合は、次式で得られる繊維径で表すことができる。
D=(4d/π・10・ρ)0.5・10
(ここで、D:繊維径(μm),ρ:繊維を構成する高分子重合体の密度(g/cm),d:繊維の繊度(デシテックス),π:円周率)
また、前記極細繊維の繊維ウエブ中に占める割合は35〜95質量%であることが好ましく、40〜95質量%であることがより好ましく、45〜95質量%であることが更に好ましい。35質量%未満であると、油性の汚れを払拭する効果や、微細な粉じんを除去する効果や、微細な塵埃を補足する効果などの有利な特性が充分に発揮されない場合があり、95質量%を超えると接着性繊維の割合が低下して、繊維ウエブを充分に結合できず保形性に劣る極細繊維不織布になる場合がある。
本発明では、前記繊維ウエブはさらに熱接着性繊維を含んでいる。当該熱接着性繊維としては、繊維ウエブの構成繊維の融点の中で最も低い融点を有する単一成分からなる熱接着性繊維が適用可能であり、また構成繊維の融点の中で最も低い融点を有する低融点成分と、この低融点成分よりも高い融点(好ましくは10℃以上高い融点、より好ましくは20℃以上高い融点)を有する高融点成分とからなる、2種類以上の樹脂成分からなるサイドバイサイド型、芯鞘型などの複合型の熱接着性繊維が可能である。なお、前記熱接着性繊維の接着温度は、極細繊維を含有する構成繊維を接着により結合させる際に、極細繊維が変形や熱収縮しないように、極細繊維の融点よりも10℃以上低いことが好ましく、より好ましくは20℃以上低いことが好ましい。
前述の単一成分からなる熱接着性繊維としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの樹脂を主体とする繊維を例示でき、複合型の熱接着性繊維の樹脂成分として、6ナイロン/ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体、6ナイロン/66ナイロン、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレンなどの組み合わせが例示できるが、これらに限定されるものではない。
また、前記熱接着性繊維の構成繊維中に占める割合が5〜65質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、5〜55質量%であることが更に好ましい。5質量%未満であると、構成繊維を充分に結合できず保形性に劣る極細繊維不織布になる場合があり、65質量%を超えると極細繊維不織布の油性の汚れを払拭する効果や、微細な粉じんを除去する効果や、微細な塵埃を補足する効果などが低下する場合がある。
また、本発明では、前記繊維ウエブは前記極細繊維と前記熱接着性繊維以外にも、他の機能性を付加する目的で、本発明の特性を大きく低下させない範囲で、他のアルカリ不溶性繊維を含有することも可能である。
また、前記構成繊維の繊維長さは、不織布の各製造方法での繊維ウエブの形成に適した長さを適用可能であり、例えば乾式法やエアレイ法であればカード機に供給するステープル繊維として好適な15〜110mmであることが好ましく、スパンボンド法であれば連続した長繊維が適用可能である。これらの製法中でも、乾式法やエアレイ法であれば、スパンボンド法と比較して海島型複合繊維や分割性複合繊維と熱接着性繊維とを均一に混合可能であること、また湿式法と比較して極細繊維不織布の強度がより優れるという点で好ましく、この点から好ましい繊維長は15〜110mmといえる。
本発明の極細繊維不織布または繊維ウエブの面密度、厚さ、見掛け密度などについては、繊維ウエブがニードルの作用によって絡合しているか、あるいは水流の作用によって絡合しているかによって、好ましい範囲が異なる場合がある。すなわち、ニードルの作用が効果的に働く繊維ウエブの面密度と水流の作用が効果的に働く繊維ウエブの面密度が異なるためである。そこで、以下の説明では、繊維ウエブがニードルの作用によって絡合している極細繊維不織布を極細繊維不織布Aと称し、繊維ウエブが水流の作用によって絡合している極細繊維不織布を極細繊維不織布Bと称する場合がある。
本発明では、前記繊維ウエブの面密度は、好ましくは20〜250g/m、より好ましくは30〜200g/m、さらに好ましくは35〜160g/mである。20g/m未満であると、ニードル又は水流による絡合が不充分となり保形性に劣る場合があり、250g/mを超えると柔軟性に劣ったり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。なお、極細繊維不織布A(ニードル絡合)では、前記繊維ウエブの面密度は、好ましくは50〜250g/m、より好ましくは70〜200g/m、さらに好ましくは90〜160g/mである。また、極細繊維不織布B(水流絡合)では、前記繊維ウエブの面密度は、好ましくは20〜120g/m、より好ましくは30〜90g/m、さらに好ましくは35〜80g/mである。
また、前記複合繊維からアルカリ可溶性樹脂成分を溶出する前の繊維ウエブ(但し、温水可溶性樹脂が含浸されていない状態の繊維ウエブ)において、繊維ウエブ中に占める複合繊維の割合は60〜98質量%であることが好ましく、65〜98質量%であることがより好ましく、70〜98質量%であることが更に好ましい。60質量%未満であると、油性の汚れを払拭する効果や、微細な粉じんを除去する効果や、微細な塵埃を補足する効果などの有利な特性が充分に発揮されない場合があり、98質量%を超えると接着性繊維の割合が低下して、繊維ウエブを充分に結合できず保形性に劣る極細繊維不織布になる場合がある。
また、前記複合繊維からアルカリ可溶性樹脂成分を溶出する前の繊維ウエブ(但し、温水可溶性樹脂が含浸されていない状態の繊維ウエブ)において、繊維ウエブ中に占める接着性繊維の割合は2〜40質量%であることが好ましく、2〜35質量%であることがより好ましく、2〜30質量%であることが更に好ましい。2質量%未満であると、構成繊維を充分に結合できず保形性に劣る極細繊維不織布になる場合があり、40質量%を超えると極細繊維不織布の油性の汚れを払拭する効果や、微細な粉じんを除去する効果や、微細な塵埃を補足する効果などが低下する場合がある。
また、前記複合繊維からアルカリ可溶性樹脂成分を溶出する前の繊維ウエブ(但し、温水可溶性樹脂が含浸されていない状態の繊維ウエブ)の面密度は、好ましくは60〜800g/m、より好ましくは80〜600g/m、さらに好ましくは100〜500g/mである。60g/m未満であると、ニードル又は水流による絡合が不充分となり耐久性に劣る場合があり、800g/mを超えると前記複合繊維からアルカリ可溶性樹脂成分を十分に溶出することができなくなる場合がある。また、極細繊維不織布の柔軟性に劣ったり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。なお、極細繊維不織布A(ニードル絡合)では、溶出する前の繊維ウエブの面密度は、好ましくは120〜800g/m、より好ましくは170〜600g/m、さらに好ましくは210〜500g/mである。また、極細繊維不織布B(水流絡合)では、溶出する前の繊維ウエブの面密度は、好ましくは60〜260g/m、より好ましくは80〜200g/m、さらに好ましくは100〜160g/mである。
本発明では、前記繊維ウエブはニードル又は水流によって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合している。ニードルによる絡合は、公知の方法で行うことが可能であり、例えばニードルパンチ用の針を用いて、針深さ1〜20mm、針密度100〜1000本/mの条件で行うことが可能である。具体的には、例えば、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合することによって行なうことができる。
また、水流による絡合も、公知の方法で行うことが可能であり、例えば金属性ネットやプラスチックネットなどの多孔性支持体上に、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを載置して、その上方から繊維ウエブに向けて、高圧のノズルから水流を噴射する方法を適用することができる。
前記水流の発生に用いる好ましいノズルとしては、例えばノズル孔が一列又は複数列に配置されたノズルがあり、ノズル孔の列は生産方向と交差する方向に配置される。ノズル孔の孔径は直径0.05〜0.5mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましく、0.1〜0.18mmがさらに好ましい。また隣り合うノズル孔の間隔は0.2〜4mmが好ましく、0.3〜3mmが好ましく、0.4〜2mmがさらに好ましい。ノズルから噴射される水流の形状は柱状が好ましいが、ノズル孔から離れるほど水流の太さが広がるような円錐形状も可能である。またノズル内の圧力は好ましくは0.1〜15MPaである。また前記ノズルを複数配置しておくことも可能であるが、エネルギー消費効率から考慮すると全て合わせて10台以内のノズル台数で噴射処理することが好ましい。
本発明では、前記繊維ウエブをニードル又は水流によって絡合した後で、必要に応じてさらにディロアニードルによって前記繊維ウエブの少なくとも片面を立毛させる。ここで、必要に応じてとは、後にバフ又はスライス加工を行わない場合のことを意味し、その場合にはこのディロアニードルによる立毛工程が必要となることを意味する。ディロアニードルによる立毛の方法としては、クラウンニードル又はフォークニードルをニードル機に取付けて、ニードル加工により表面に繊維を突出させる方法を挙げることができる。なお、本発明では、ディロアニードルの用語は、通常のニードルよる立毛とは異なりニードル周辺の繊維をまとめて押出すようにして立毛可能な、クラウンニードル、フォークニードル又はそれらに類似したニードルによるニードル加工のことを総称する用語として用いている。
本発明では、前記ディロアニードルによる立毛は、例えばブラシヘッド上に繊維フェルトをセットし、クラウンニードルを用いて、針深さ1〜20mm、針密度100〜1000本/mの条件で、上からニードリングを行う。このように、ニードリングにより下面に形成されたパイルがブラシヘッド中に突入することにより、パイル倒れを防止しながら行うので、柔軟性がさらに良好になり皮膚への触感がより優れたものとなる。なお、立毛の密度を高くする場合は、フォークニードルよりもクラウンニードルを用いることがより好ましい。
また、本発明では、ディロアニードルによる立毛加工の後に、あるいは後述する熱接着性繊維による結合処理の後に、シャーリング処理を行うことが可能である。このシャーリング処理によって、表面に突出した繊維のみを裁断して、立毛の長さを一定の長さに切りそろえることができる。また、シャーリング処理を施すことによって、皮膚への触感により優れた極細繊維不織布を形成することができる。
本発明では、前記繊維ウエブをニードル又は水流によって絡合した後で、第2の製造方法を構成する工程である「(1)前記繊維ウエブに温水可溶性樹脂を含浸して繊維シートを形成し、次いで前記繊維シートの少なくとも片面をバフ加工するか、或いは前記繊維シートをスライス加工することにより立毛させ、次いで温水にて前記温水可溶性樹脂を溶出して繊維ウエブに戻す工程」によっても立毛させることができる。
ここで、温水可溶性樹脂とは、15〜100℃のいずれかの温度の水に溶解する樹脂のことを意味し、前記温水溶解樹脂としては、例えば溶解温度が40〜100℃の部分けん化のポリビニルアルコールを挙げることができる。このような温水溶解樹脂を含浸することによって、バフ加工やスライス加工時に、繊維ウエブの内部が変形したり、破損することを防止する。前記温水溶解樹脂の含浸量(固形分)は、繊維ウエブの面密度(g/m)の15〜60%であることが好ましく、20〜55%であることがより好ましく、25〜50%であることが更に好ましい。15%未満であると上記の効果による利点が失われる場合があり、60%を超えるとバフ加工やスライス加工がし難くなる場合がある。
前記繊維シートの少なくとも片面をバフ加工する方法としては、例えばサンドペーパをロールに取付けたバッフィングマシンを用いて、繊維シートの片面/又は両面にバフ加工を行う方法を挙げることができる。そして、ループ状に突出した繊維やシート面に平行になっている繊維束をカットすることで、繊維を立毛させることができる。なお、この立毛した繊維の先端においては、後述するアルカリ可溶樹脂成分の溶解処理において、極細繊維束が分散し易くなるという利点がある。
前記繊維シートをスライス加工する方法としては、バンドナイフを取付けたスライスマシンによって、繊維シートの中間位置に対してスライス加工を行う方法を挙げることができる。そして、スライス面で繊維を立毛させることができる。なお、この立毛した繊維の先端においては、後述するアルカリ可溶樹脂成分の溶解処理において、極細繊維束が分散し易くなるという利点がある。
本発明では、前記繊維シートの少なくとも片面をバフ加工するか、或いは前記繊維シートをスライス加工した後に、繊維シートに含浸されている温水溶解樹脂を、15〜100℃の温度の水に溶解させることで除去する。
本発明では、前記繊維ウエブは前記熱接着性繊維によって結合していることが必要である。この結合は、熱接着性繊維がその低融点成分の融点以上の温度で加熱処理されることで、低融点成分が他の繊維に融着して繊維間の結合が生じる。この加熱処理は、アルカリ液によるアルカリ可溶樹脂成分の溶解処理前に行われることが好ましく、例えばニードルによる絡合やディロアニードルによる立毛加工の後に行うことができる。また、第2の製造方法を構成する工程である「(1)前記繊維ウエブに温水可溶性樹脂を含浸して繊維シートを形成し、次いで前記繊維シートの少なくとも片面をバフ加工するか、或いは前記繊維シートをスライス加工することにより立毛させ、次いで温水にて前記温水可溶性樹脂を溶出して繊維ウエブに戻す工程」の前後に行うことができるが、温水可溶性樹脂を溶出した後、乾燥する工程において、乾燥と同時に行うことが好ましい。このような方法により、繊維組織の崩れを防止するとともに、アルカリ可溶樹脂成分の溶解処理後に柔軟性に優れるとともに保形性に富む極細繊維不織布を得ることができるという利点がある。すなわち、まず熱接着性繊維同士が繊維交点で確実に接着固定するとともに接着性繊維によって、保形成に富む繊維構造の骨格を形成する。
そして、複合繊維が海島型複合繊維の場合、その骨格の中で、複合繊維がアルカリ処理によって極細化するとともに、繊維間の接着交点は消失して、繊維の自由度が高まる。それと同時に、空隙が大きくなり、極細繊維の分散が促進される。また、その後の中和、水洗後の加熱乾燥で再度、繊維間の接着交点が生じて繊維組織が固定されて、繊維の離脱が防止される。このようにして油性の汚れを払拭する効果や、塵埃を捕捉する容量が大きくなったり、粉じん保持容量が増加するのである。
また、複合繊維が分割性複合繊維の場合、その骨格の中で、複合繊維がアルカリ処理によって極細化して、分散が生じ、繊維の自由度が高まる。また、接着性繊維が複合繊維に対して融着して形成された融着樹脂からなる接着交点はアルカリ処理によって、アルカリ不溶性樹脂成分からなる極細繊維との小さな接着交点となり、すなわち融着樹脂の一部が剥離して小さな融着樹脂となることで、繊維の自由度が高まるとともに、空隙が大きくなり、油性の汚れを払拭する効果や、塵埃を捕捉する容量が大きくなったり、粉じん保持容量が増加するのである。
本発明の極細繊維不織布の面密度は、好ましくは20〜250g/m、より好ましくは30〜200g/m、さらに好ましくは35〜160g/mである。20g/m未満であると、ニードル又は水流による絡合が不充分となり保形性に劣る場合があり、250g/mを超えると柔軟性に劣ったり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。なお、極細繊維不織布A(ニードル絡合)の面密度は、好ましくは50〜250g/m、より好ましくは70〜200g/m、さらに好ましくは90〜160g/mである。また、極細繊維不織布B(水流絡合)の面密度は、好ましくは20〜120g/m、より好ましくは30〜90g/m、さらに好ましくは35〜80g/mである。
また、本発明の極細繊維不織布の厚さは、0.2〜5mmが好ましく、0.25〜3.5mmがより好ましく、0.3〜3mmが更に好ましい。0.2mm未満であると、皮膚への触感に劣ったり、ワイピング材として使用した場合、手に持った時に厚み感に乏しく感じる場合や、拭き取り性能が劣る場合がある。また、フィルタとして使用した場合、濾過性能が低下したり、粉じん保持容量が少なくなる場合がある。5mmを超えると、柔軟性が低下する場合がある。また、フィルタとして使用した場合、折り加工等の加工が難しくなる場合がある。また折り加工した後枠材を取付けてなるフィルタエレメントやフィルタユニットにおいて単位容積当りの収納濾過面積が小さくなり圧力損失が高くなる場合がある。なお、厚さは1cmあたり20gの荷重時の厚さで表すものとする。また、極細繊維不織布A(ニードル絡合)の厚さは、0.4〜5mmが好ましく、0.5〜3.5mmがより好ましく、0.6〜3mmが更に好ましい。また、極細繊維不織布B(水流絡合)の厚さは、0.2〜1mmが好ましく、0.25〜0.7mmがより好ましく、0.3〜0.6mmが更に好ましい。
また、本発明の極細繊維不織布の見掛け密度は、0.03〜0.3g/cmが好ましく、0.04〜0.2g/cmがより好ましく、0.05〜0.2g/cmが更に好ましい。0.03g/cm未満であると、繊維組織が崩れ易くなる場合があり、0.3g/cmを超えると柔軟性が低下したり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。なお、極細繊維不織布A(ニードル絡合)の見掛け密度は、0.03〜0.3g/cmが好ましく、0.04〜0.2g/cmがより好ましく、0.05〜0.2g/cmが更に好ましい。また、極細繊維不織布B(水流絡合)の見掛け密度は、0.06〜0.3g/cmが好ましく、0.08〜0.2g/cmがより好ましく、0.1〜0.2g/cmが更に好ましい。
また、本発明の極細繊維不織布の柔軟性の指標となる剛軟度の値は好ましくは150mm以下であることが好ましく、より好ましくは130mm以下であり、さらに好ましくは120mm以下である。なお剛軟度はJIS L1096に記載される、剛軟性8.19.1A法(45度カンチレバー法)に準じて測定した値を用い、タテ方向とヨコ方向の平均値を用いるものとする。また、極細繊維不織布A(ニードル絡合)の剛軟度の値は、150mm以下が好ましく、より好ましくは130mm以下がより好ましく、120mm以下が更に好ましい。また、極細繊維不織布B(水流絡合)の剛軟度の値は、120mm以下が好ましく、より好ましくは105mm以下がより好ましく、95mm以下が更に好ましい。
また、本発明の極細繊維不織布の湿潤時の幅引きは10%以内であることが好ましく、より好ましくは8%以内であり、さらに好ましくは7%以内である。なお幅引きの試験は、250mm幅×500mm長さの試験片を水に浸漬し、端部をバーに固定して持ち上げた時の幅引きの値(mm)を測定し、その測定値の250mmに対する割合(%)で表すものとする。
本発明の極細繊維不織布の用途としては、皮膚洗浄用シート、ワイピングクロス、床ずれ防止基材、マスク、フィルタなどがあるが、特に好適な用途としては、極細繊維の特長を十分に発揮できる点、及び保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れる点で、皮膚洗浄用シートおよびワイピングクロスを挙げることができる。ワイピングクロスとしては、自動車、家具、台所などを対象として手で作業する用途や、コピー機などのOA機器、精密部品などを対象として機械によってクリーニングする、例えば半導体用クリーニングテープなどの用途に用いられるワイピングクロスを挙げることができる。
フィルタとしては、特に計数法で評価される中高性能のエアフィルタの用途を挙げることができる。また、極細繊維不織布の立毛部分では繊維組織が非常に粗い組織となっており、密度勾配を有したフィルタ構造となっている。そして、立毛部分で比較的粗い粉じんを除去することで、フィルタの目詰まりが生じ難く、その結果粉じん保持容量が大きくなるという利点がある。
本発明の第1の極細繊維不織布の製造方法は、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いでニードル又は水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、次いでディロアニードルによって前記繊維ウエブの少なくとも片面を立毛させ、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする。この第1の製造方法によって、本発明の極細繊維不織布を製造することができる。
「アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブ」については、前述の説明をそのまま適用することができる。また、「ニードル又は水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、次いでディロアニードルによって前記繊維ウエブの少なくとも片面を立毛させ、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合する」ことについても、前述の説明をそのまま適用することができる。
本発明の製造方法では、前記繊維ウエブを絡合し、次いでディロアニードルによって前記繊維ウエブの少なくとも片面を立毛させ、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出する。このアルカリ液としては、アルカリ水溶液を用いることが好ましく、アルカリ水溶液に、前記絡合・結合繊維ウエブを浸漬して、アルカリ可溶性樹脂成分を溶出して除去する。この処理に際しては、例えばアルカリ可溶性樹脂成分がポリエステル樹脂成分であれば、水酸化ナトリウムの6%水溶液を95℃に加温して、その水溶液中に30分間浸漬することにより、ほぼ100%の溶解除去が可能である。
なお、アルカリ液によりアルカリ可溶性樹脂成分を溶出した後に、乾燥処理を行うが、この乾燥処理の温度条件としては、特に極細繊維不織布に柔軟性が要求される場合には、前記熱接着性繊維の低融点樹脂成分の融点未満の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。また、特に極細繊維不織布に保形性が要求される場合には、前記熱接着性繊維の低融点樹脂成分の融点以上の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。
本発明の第2の極細繊維不織布の製造方法は、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いでニードル又は水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、その後に(1)前記繊維ウエブに温水可溶性樹脂を含浸して繊維シートを形成し、次いで前記繊維シートの少なくとも片面をバフ加工するか、或いは前記繊維シートをスライス加工することにより立毛させ、次いで温水にて前記温水可溶性樹脂を溶出して繊維ウエブに戻す工程と、(2)前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合する工程を有し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする。
「(1)前記繊維ウエブに温水可溶性樹脂を含浸して繊維シートを形成し、次いで前記繊維シートの少なくとも片面をバフ加工するか、或いは前記繊維シートをスライス加工することにより立毛させ、次いで温水にて前記温水可溶性樹脂を溶出して繊維ウエブに戻す工程と、(2)前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合する工程を有し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出する」ことについては、前述の説明をそのまま適用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例にすぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
(表面触感性の試験方法)
5人のモニターによって、離脱繊維の顔への付着が有るか否か(無い場合を良好とする)、顔への触感がソフトか否か、顔への密着性が良いか否か、手への馴染みが良いか否かの4項目についての状態を目視または判断して、全ての項目において良好であることを全員が判断した場合を○とし、3人以上が良好と判断した場合を△とし、2〜0人が良好と判断した場合を×とする。
(繊維の非離脱性試験方法)
密閉容器に濃度6%のNaOH水溶液を3000cc入れ、その水溶液中に、円筒状の多孔体に巻回した1mの試験片を浸漬する。次いで水溶液を95℃に加温して、正逆回転させながら30分間アルカリ抽出処理を行う。次いで、NaOH水溶液を濾過して、NaOH水溶液中の離脱繊維の有無を目視により確認する。その結果、離脱繊維が認められない場合は○、認められる場合は×と評価する。
(実施例1)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)97質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)3質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを表裏からニードル処理(針:40番、針深さ8mm、針密度200本/cm)によって絡合し、次いでこの繊維ウエブを片面からディロアニードル処理(針:クラウンニードル36番、針深さ10mm、針密度400本/cm)を行い、前記繊維ウエブの他面を立毛させた。
次いで、この絡合・立毛した繊維ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して繊維シート(面密度296g/m、厚さ3.2mm、見掛け密度0.093g/cm)を得た。
次いで、この繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は4%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が114g/mであり、厚さが1.1mmであり、見掛け密度が0.104g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が92質量%であり、熱接着性繊維の比率が8質量%であった。また、剛軟度は38mmであり、湿潤時の幅引きは3.5%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例2)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを表裏からニードル処理(針:40番、針深さ8mm、針密度200本/cm)によって絡合し、次いでこの繊維ウエブを片面からディロアニードル処理(針:クラウンニードル36番、針深さ10mm、針密度400本/cm)を行い、前記繊維ウエブの他面を立毛させた。次いで、この絡合・立毛した繊維ウエブに更にシャーリング処理を行い、立毛長を1.5mmに揃えた。
次いで、この絡合・立毛・シャーリングした繊維ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して繊維シート(面密度277g/m、厚さ3.3mm、見掛け密度0.084g/cm)を得た。
次いで、この繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は3%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が115g/mであり、厚さが1.4mmであり、見掛け密度が0.082g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が80質量%であり、熱接着性繊維の比率が20質量%であった。また、剛軟度は50mmであり、湿潤時の幅引きは2%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例3)
実施例1において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)75質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)25質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、繊維シート(面密度253g/m、厚さ4.7mm、見掛け密度0.054g/cm)及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は1%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が131g/mであり、厚さが2.4mmであり、見掛け密度が0.055g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が51質量%であり、熱接着性繊維の比率が49質量%であった。また、剛軟度は100mmであり、湿潤時の幅引きは0%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例4)
0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)100質量%を別のカード機に投入して、面密度23g/mの繊維ウエブAを形成した。次いで、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)100質量%をカード機に投入して、面密度266g/mの繊維ウエブBを形成して、前記繊維ウエブAの上に積層して積層繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを繊維ウエブBの面からニードル処理(針:40番、針深さ8mm、針密度200本/cm)によって絡合し、次いで繊維ウエブBの面からディロアニードル処理(針:クラウンニードル36番、針深さ10mm、針密度400本/cm)を行い、繊維ウエブAの面を立毛させた。
次いで、この絡合・立毛した繊維ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して繊維シート(面密度289g/m、厚さ4.5mm、見掛け密度0.064g/cm)を得た。
次いで、この繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は1%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が117g/mであり、厚さが1.9mmであり、見掛け密度が0.062g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が80質量%であり、熱接着性繊維の比率が20質量%であった。また、剛軟度は61mmであり、湿潤時の幅引きは1%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例5)
実施例1において、3.6デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリ乳酸樹脂、島成分はナイロン6樹脂、島比率25質量%)94質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)6質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、繊維シート(面密度408g/m、厚さ5.0mm、見掛け密度0.082g/cm)及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は0%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から400nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が124g/mであり、厚さが1.6mmであり、見掛け密度が0.078g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が80質量%であり、熱接着性繊維の比率が20質量%であった。また、剛軟度は50mmであり、湿潤時の幅引きは3%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(比較例1)
実施例1において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)100質量%をカード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、繊維シート(面密度341g/m、厚さ4.3mm、見掛け密度0.079g/cm)及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は10%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が133g/mであり、厚さが0.97mmであり、見掛け密度が0.137g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が100質量%であり、熱接着性繊維の比率が0質量%であった。また、剛軟度は28mmであり、湿潤時の幅引きは11%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は脱離繊維が認められ×であった。
(比較例2)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを表裏からニードル処理(針:40番、針深さ8mm、針密度400本/cm)によって絡合した。
次いで、この絡合した繊維ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して繊維シート(面密度281g/m、厚さ2.5mm、見掛け密度0.112g/cm)を得た。
次いで、この繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は2%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が115g/mであり、厚さが1.2mmであり、見掛け密度が0.096g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が80質量%であり、熱接着性繊維の比率が20質量%であった。また、剛軟度は70mmであり、湿潤時の幅引きは1%であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であったが、十分に立毛しておらず、極細繊維束の先端部分の分散不足が認められ、表面触感性は△であった。
(比較例3)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長0.5mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)の海成分をアルカリ液にて溶出することで得られた繊維径が600nmの極細繊維15質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長5mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)85質量%を混合したスラリーを形成した後、湿式法により抄造して繊維ウエブを形成した。
次いで、この絡合した繊維ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合した。次いで、表面平滑なスチールロールと樹脂ロールからなる一対の加熱ロール(スチールロール温度80℃)の間に通過させて、極細繊維不織布を得た。
得られた極細繊維不織布は、面密度が55g/mであり、厚さが0.13mmであり、見掛け密度が0.423g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が15質量%であり、熱接着性繊維の比率が85質量%であった。また、剛軟度は128mmであり、湿潤時の幅引きは0%であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であったが、立毛しておらず、表面触感性は×であった。
なお、この比較例3では、繊維ウエブが湿式法によるため、繊維長が短いことが必要であった。そこで離脱繊維を防止するため、60質量%以上の接着繊維が必要となり、さらに加熱ロールにより見掛け密度を上昇させて接着性を向上させることが必要となり、その結果、柔軟性が劣るとともに表面触感性が劣るものしか得られなかった。
(実施例6)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)97質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)3質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを表裏からニードル処理(針:40番、針深さ8mm、針密度800本/cm)によって絡合して、絡合繊維ウエブ(面密度296g/m、厚さ2.8mm、見掛け密度0.106g/cm)を得た。
次いで、この絡合繊維ウエブに、100℃の水に溶解する部分けん化のポリビニルアルコールの水溶液(濃度15質量%、0.5質量%のアニオン界面活性剤を含む)を含浸した後に、乾燥して、面密度385g/mの含浸繊維シートを形成した。この含浸繊維シートには面密度89g/mのポリビニルアルコールが付着していた。次いで、この含浸繊維シートの片面に対して、バッフィングマシンを用いてバフ加工することで繊維を立毛させて、面密度339g/mの立毛繊維シートを得た。
次いで、この立毛繊維シートからポリビニルアルコール樹脂を温水にて溶出させて繊維ウエブに戻した後、145℃のドライヤーに入れて乾燥と同時に、加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して、絡合、結合、及び立毛した繊維シートを得た。
次いで、この繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は4%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が105g/mであり、厚さが0.74mmであり、見掛け密度が0.142g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が92質量%であり、熱接着性繊維の比率が8質量%であった。また、剛軟度は45mmであり、湿潤時の幅引きは3.5%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例7)
実施例6において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例6と同様の各工程を経て、絡合繊維ウエブ(面密度290g/m、厚さ2.8mm、見掛け密度0.104g/cm)、面密度377g/mの含浸繊維シート、面密度332g/mの立毛繊維シート、及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は3%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が103g/mであり、厚さが0.76mmであり、見掛け密度が0.136g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が80質量%であり、熱接着性繊維の比率が20質量%であった。また、剛軟度は53mmであり、湿潤時の幅引きは2%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例8)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを表裏からニードル処理(針:40番、針深さ8mm、針密度800本/cm)によって絡合して、絡合繊維ウエブ(面密度510g/m、厚さ5.0mm、見掛け密度0.102g/cm)を得た。
次いで、この絡合繊維ウエブに、100℃の水に溶解する部分けん化のポリビニルアルコールの水溶液(濃度15質量%、0.5質量%のアニオン界面活性剤を含む)を含浸した後に、乾燥して、面密度663g/mの含浸繊維シートを形成した。この含浸繊維シートには面密度153g/mのポリビニルアルコールが付着していた。次いで、この含浸繊維シートに対して、バンドナイフを取付けたスライスマシンによって、繊維シートの厚さの中間位置でスライス加工を行ない、それぞれの面密度が330g/mである2枚の立毛繊維シートを得た。
次いで、この立毛繊維シートからポリビニルアルコール樹脂を温水にて溶出させて繊維ウエブに戻した後、145℃のドライヤーに入れて乾燥と同時に、加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して、絡合、結合、及び立毛した繊維シートを得た。
次いで、この繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は3%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が105g/mであり、厚さが0.74mmであり、見掛け密度が0.142g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が80質量%であり、熱接着性繊維の比率が20質量%であった。また、剛軟度は50mmであり、湿潤時の幅引きは2%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例9)
実施例6において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)75質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)25質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例6と同様の各工程を経て、絡合繊維ウエブ(面密度260g/m、厚さ3.4mm、見掛け密度0.076g/cm)、面密度338g/mの含浸繊維シート、面密度300g/mの立毛繊維シート、及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は1%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が116g/mであり、厚さが1.12mmであり、見掛け密度が0.104g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が51質量%であり、熱接着性繊維の比率が49質量%であった。また、剛軟度は95mmであり、湿潤時の幅引きは0%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(比較例4)
実施例6において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)100質量%をカード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例6と同様の各工程を経て、絡合繊維ウエブ(面密度340g/m、厚さ3.3mm、見掛け密度0.103g/cm)、面密度442g/mの含浸繊維シート、面密度388g/mの立毛繊維シート、及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は10%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が116g/mであり、厚さが0.79mmであり、見掛け密度が0.147g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が100質量%であった。また、剛軟度は45mmであり、湿潤時の幅引きは11%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められ×であった。
(実施例10)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)97質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)3質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを金網コンベアー上に載置した後、金網コンベアーを移動させながら、この繊維ウエブの両面に対して、複数のノズル(ノズル孔の孔径が直径0.13mm、ノズル孔の間隔0.6mm、ノズル内圧力5〜8MPa)から柱状水流を噴射することによって、この繊維ウエブを水流の作用によって絡合して、絡合繊維ウエブ(面密度120g/m、厚さ1.1mm、見掛け密度0.109g/cm)を得た。
次いで、この絡合繊維ウエブに、100℃の水に溶解する部分けん化のポリビニルアルコールの水溶液(濃度15質量%、0.5質量%のアニオン界面活性剤を含む)を含浸した後に、乾燥して、面密度156g/mの含浸繊維シートを形成した。この含浸繊維シートには面密度36g/mのポリビニルアルコールが付着していた。次いで、この含浸繊維シートの片面に対して、バッフィングマシンを用いてバフ加工することで繊維を立毛させて、面密度140g/mの立毛繊維シートを得た。
次いで、この立毛繊維シートからポリビニルアルコール樹脂を温水にて溶出させて繊維ウエブに戻した後、145℃のドライヤーに入れて乾燥と同時に、加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して、絡合、結合、及び立毛した繊維シートを得た。
次いで、この繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は5%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が42g/mであり、厚さが0.37mmであり、見掛け密度が0.114g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が92質量%であり、熱接着性繊維の比率が8質量%であった。また、剛軟度は32mmであり、湿潤時の幅引きは5%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例11)
実施例10において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)92質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)8質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例10と同様の各工程を経て、絡合繊維ウエブ(面密度124g/m、厚さ1.2mm、見掛け密度0.103g/cm)、面密度161g/mの含浸繊維シート、面密度145g/mの立毛繊維シート、及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は3%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が46g/mであり、厚さが0.38mmであり、見掛け密度が0.121g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が80質量%であり、熱接着性繊維の比率が20質量%であった。また、剛軟度は38mmであり、湿潤時の幅引きは3%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
(実施例12)
実施例10において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)75質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)25質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例10と同様の各工程を経て、絡合繊維ウエブ(面密度130g/m、厚さ1.3mm、見掛け密度0.100g/cm)、面密度169g/mの含浸繊維シート、面密度153g/mの立毛繊維シート、及び極細繊維不織布を得た。なお、初期の繊維ウエブに対して、面積収縮率は1%であった。
得られた極細繊維不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維不織布は、面密度が61g/mであり、厚さが0.49mmであり、見掛け密度が0.124g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が51質量%であり、熱接着性繊維の比率が49質量%であった。また、剛軟度は80mmであり、湿潤時の幅引きは0%であり、表面触感性は○であり、繊維の非離脱性試験の結果は離脱繊維が認められず○であった。
実施例1〜12の極細繊維不織布は、保形性に優れ且つ柔軟性に優れるとともに、皮膚への触感に優れていた。また、実施例1、2、5のディロアニードルによって立毛した極細繊維不織布は、特に低密度であり、嵩高性に優れていた。また、実施例4の二層構造の極細繊維不織布は、特に保形性に優れていた。また、実施例6、7、9のニードル後のバフ加工によって立毛した極細繊維不織布は、見掛け密度は高まる傾向にあるものの柔軟性に優れ且つ保形性に優れていた。また、実施例8のニードル後のスライス加工によって立毛した極細繊維不織布はバフ加工によって立毛した極細繊維不織布と同様に特に柔軟性に優れ且つ保形性に優れていた。なお、実施例8では更にバフ加工を組合わせることが可能であり、この場合バフ加工面(表裏面)とスライス加工面(中間層面)での立毛が可能となる。また、実施例10〜12の水流絡合後のバフ加工によって立毛した極細繊維不織布は、特に低目付であり柔軟性に優れるとともに保形性に優れていた。
また、比較例1の極細繊維不織布は、柔軟性に優れるものの繊維組織が崩れ易く、また繊維が離脱しやすいという欠点があった。また、比較例2の極細繊維不織布は、十分に立毛しておらず、極細繊維束の先端部分の分散不足が見られ、表面触感性はやや劣るものであった。また、比較例3の極細繊維不織布は離脱繊維が認めらなかったが、立毛しておらず、表面触感性に劣っていた。また、ペーパーライクであり、柔軟性に劣っていた。また、比較例4の極細繊維不織布は、柔軟性に優れるものの繊維組織が崩れ易く、また繊維が離脱しやすいという欠点があった。
1 樹脂成分
2 他の樹脂成分

Claims (4)

  1. 実質的にアルカリ不溶性繊維のみからなる繊維ウエブが、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有しており、前記繊維ウエブはニードル又は水流の作用によって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合しており、さらにディロアニードル、バフ加工又はスライス加工によって立毛していることを特徴とする極細繊維不織布。
  2. 請求項1に記載の極細繊維不織布からなる皮膚洗浄用シート。
  3. アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いでニードル又は水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、次いでディロアニードルによって前記繊維ウエブの少なくとも片面を立毛させ、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする極細繊維不織布の製造方法。
  4. アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いでニードル又は水流の作用によって前記繊維ウエブを絡合し、その後に(1)前記繊維ウエブに温水可溶性樹脂を含浸して繊維シートを形成し、次いで前記繊維シートの少なくとも片面をバフ加工するか、或いは前記繊維シートをスライス加工することにより立毛させ、次いで温水にて前記温水可溶性樹脂を溶出して繊維ウエブに戻す工程と、(2)前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブを結合する工程を有し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする極細繊維不織布の製造方法。
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