JP2011006288A - ガラス基板の刻印方法およびそれを用いたフラットパネルディスプレイの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プラズマディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイのガラス基板上に精度よく、かつ熱プロセスおよび応力に対しての耐性の高いアライメントマークを簡単に形成する。
【解決手段】ガラス基板に刻印する方法であって、ガラス基板の所定位置に、可視光吸収体を含む膜を形成する膜形成ステップと、所定位置にレーザ光を照射してガラス基板に刻印する刻印ステップと、膜にレーザ光を照射して膜の少なくとも一部を除去する照射ステップとを有し、刻印ステップのレーザ光の波長は、ガラス基板の光の吸収率が塗布膜の光の吸収率より低い波長であることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、ガラス基板の刻印方法および、プラズマディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイの製造方法に関する。
近年、レーザ光を用いたガラスを基体とする物質への刻印技術は、広く用いられている。中でもプラズマディスプレイパネル(以下、PDPとする)に代表されるフラットパネルディスプレイ(以下、FPDとする)の製造工程においても、生産管理にて使用するQRコードや、各工程の位置合わせに使用するアライメントマーク等が、レーザ光によって刻印されている。
ここで、PDPについて説明する。PDPは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、前面側のガラス基板(以下、「前面ガラス基板」または単に「ガラス基板」と略記する)と、前面ガラス基板上に形成された1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対と、それらを覆う誘電体層および保護層を有する。背面板は、背面側のガラス基板(以下、「背面ガラス基板」または単に「ガラス基板」と略記する)と、背面ガラス基板上に形成されたデータ電極と、それを覆う誘電体層と、隔壁と、蛍光体層とを有する。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このように構成されたPDPの各放電セル内でガス放電を発生させ、赤、緑、青各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
走査電極および維持電極のそれぞれは、幅の広いストライプ状の透明電極の上に幅の狭いストライプ状のバス電極を積層して形成されている。透明電極は、前面ガラス基板の全面にスパッタ法等を用いて形成したITO薄膜をフォトリソグラフィ法によりストライプ状にパターニングして形成される。このとき、以降の工程に必要なマスク合わせ用のアライメントマークを同時に形成する。そしてバス電極は、透明電極およびアライメントマークを形成した前面ガラス基板上に、アライメントマークに重ならないように感光性導電ペーストを印刷し、アライメントマークを用いてフォトマスクを位置合わせして露光した後エッチングして形成される。
しかしながら、従来の透明電極はスパッタ法等でITO薄膜を形成するため、大掛りな真空装置や高価なITOターゲット材料が必要であった。さらにITO薄膜をフォトリソグラフィ法でエッチングするための露光機やフォトマスクも必要となり、生産設備が大型になるだけでなくPDPの生産性が低いという問題点もあった。
これらの課題を解決するために、錫を添加したITO粉末とアルコキシドの混合分散液を前面ガラス基板上にインクジェット印刷法で印刷し、焼成して透明電極を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、複数の孔を有する細長導電層で構成した複数の走査電極構造体と複数の維持電極構造体とを前面ガラス基板上に形成することで、透明電極を形成することなくPDPを構成する方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
このように透明電極をインクジェット印刷法等の厚膜印刷法で製造する場合、または透
明電極を形成しない場合には、アライメントマークを前面ガラス基板上にあらかじめ形成しておく必要があった。ガラス基板にマークを形成する方法として、例えばガラスの表面にレーザ光を照射して所定のマークを刻印する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開平07−242842号公報 特開2004−127951号公報 特開2004−130789号公報
しかしながら、ガラス基板の表面にレーザ光を照射して刻印するためには、ガラス基板が吸収できる短波長のレーザを用いる必要があり、この条件を満たす炭酸ガスレーザや紫外線レーザを用いたアライメントマークの刻印装置は大型になる傾向がある。そしてそれらの刻印装置をPDP等のFDPの製造ラインに導入するためには、製造ラインを再構築する必要があった。
またPDPのアライメントマークは、高い精度および良好な視認性が要求されるだけでなく、PDP製造時の熱プロセスを経てもマイクロクラック等が発生、成長することがないように、また封着後の応力に対してもマイクロクラック等が発生、成長することがないように、熱プロセスおよび応力に対する耐性が要求されるという課題があった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ガラス基板上に精度よく、かつ熱プロセスおよび応力に対しての耐性の高いアライメントマークを簡単に形成する方法を提供し、さらに、低コストで生産性よくFPDを製造することができるFPDの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、ガラス基板に刻印する方法であって、ガラス基板の所定位置に、可視光吸収体を含む膜を形成する膜形成ステップと、所定位置にレーザ光を照射してガラス基板に刻印する刻印ステップと、膜にレーザ光を照射して膜の少なくとも一部を除去する照射ステップとを有し、刻印ステップのレーザ光の波長は、ガラス基板の光の吸収率が塗布膜の光の吸収率より低い波長であることを特徴とする。またここで、刻印ステップで照射するレーザ光の焦点位置と、と照射ステップで照射するレーザ光の焦点位置とが異なり、かつ刻印ステップで照射するレーザ光の径と、と照射ステップで照射するレーザ光の径が異なってもよい。
この方法により、ガラス基板上に精度よく、かつ熱プロセスおよび応力に対しての耐性の高いアライメントマークを簡単に形成する方法を提供し、さらに、低コストで生産性よくFPDを製造することができるFPDの製造方法を提供することができ、かつ塗布膜の残留物を効率よく除去できる。
また本発明のレーザ光は、波長532nmのグリーンレーザであってもよい。この方法により、FPDに使用するガラス基板の可視光領域における最も低い吸収率の波長となる。
また本発明の可視光吸収体は、銅、鉄、マンガン、コバルト、ニッケルの少なくとも1つの酸化物、または2つ以上の複合酸化物を含む顔料であってもよい。
また本発明の可視光吸収体は、芳香族化合物を含む有機顔料または有機染料であってもよい。
また本発明のFPDの製造方法は、請求項1から請求項5までのいずれかに記載のガラス基板の刻印方法を用いることを特徴とする。この方法により、FPDのガラス基板上に
精度よく、かつ熱プロセスおよび応力に対しての耐性の高いアライメントマークを簡単に形成する方法を提供し、さらに、低コストで生産性よくFPDを製造することができるFPDの製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、ガラス基板上に精度よく、かつ熱プロセスおよび応力に対しての耐性の高いアライメントマークを簡単に形成する方法を提供し、さらに、低コストで生産性よくFPDを製造することができるFPDの製造方法を提供することが可能となる。
本発明の実施の形態におけるPDPの分解斜視図 同PDPの前面板を示す図 同PDPの前面板の製造方法を説明するための図 同PDPの背面板の製造方法を説明するための図 同PDPに用いる前面ガラス基板の可視光領域における吸収率を示す図
以下、本発明の実施の形態におけるガラス基板への刻印方法およびFPDの製造方法について、PDPおよびその製造方法を例に挙げて、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるPDP10の分解斜視図である。PDP10は、前面板20と背面板30とを対向配置し、周辺部を低融点ガラス(図示せず)を用いて封着することにより構成されており、内部に多数の放電セルが形成されている。
前面板20は、前面ガラス基板21と、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24と、ブラックストライプ25と、誘電体層26と、保護層27とを有する。さらに図1には示していないが、ガラス基板21の画像を表示しない所定位置にアライメントマークが形成されている。
ガラス基板21上には1対の走査電極22と維持電極23との間に放電ギャップを形成した表示電極対24が互いに平行に複数形成されている。そして隣り合う表示電極対24の間にはブラックストライプ25が形成されている。
そしてこれらの表示電極対24およびブラックストライプ25を覆うように誘電体層26が形成され、誘電体層26上に保護層27が形成されている。
背面板30は、背面ガラス基板31と、データ電極32と、誘電体層33と、隔壁34と、蛍光体層35とを有する。さらに図1には示していないが、ガラス基板31の所定位置にアライメントマークが形成されている。
ガラス基板31上には、複数のデータ電極32が互いに平行に形成されている。そしてデータ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成され、誘電体層33の表面と隔壁34の側面とに赤、緑、青各色の蛍光体層35が形成されている。
そして、表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように前面板20と背面板30とが対向配置され、表示電極対24とデータ電極32とが対向する部分に放電セルが形成される。放電セルが形成された画像表示領域の外側の位置で、低融点ガラスを用いて前面板20と背面板30とが封着され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。
図2は、本発明の実施の形態におけるPDP10の前面板20を示す図であり、図2(a)は前面板20の全体を示す正面図、図2(b)は画像表示部分の詳細を示す拡大図、図2(c)はアライメントマークの詳細を示す拡大図である。
走査電極22は、透明電極22aとバス電極22bとを有する。維持電極23も透明電極23aとバス電極23bとを有する。そして透明電極22aと透明電極23aとの間に
放電ギャップが形成される。
透明電極22a、23aは、ITO、酸化錫等の金属酸化物を用いて形成されており、放電空間に強い電界を発生して放電を発生させるとともに、蛍光体層35で発生した光をPDP10外部へ取り出すために設けられている。
バス電極22bは黒色層と導電層とからなり、バス電極23bも黒色層と導電層とからなる。黒色層は、PDP10を表示面側から見たときにバス電極22b、23bを黒く見せるために設けられており、例えば酸化ルテニウムを主成分とする黒色の材料をガラス基板21の上に幅の狭いストライプ状に形成したものである。そして導電層は、バス電極22b、23bの導電性を高めるために設けられており、黒色層の上に銀を含む導電性の材料を積層して形成したものである。
ブラックストライプ25は、PDP10を表示面側から見たときに表示面を黒く見せるために設けられている。本実施の形態では、酸化ルテニウムを主成分とする黒色の材料を用いて形成したが、黒色に見える他の材料、例えば黒色顔料を主成分とした材料を用いてもよい。なお、ブラックストライプ25は必ずしも設ける必要はないが、表示面を黒くしてコントラストの高い画像を表示するうえで有効である。
アライメントマーク28は、PDP10を製造するときの位置合わせの基準となるマークであり、前面ガラス基板21上の画像を表示しない所定位置に所定形状のマークが形成されている。本実施の形態においては、ガラス基板21の四隅に十字形状のアライメントマーク28がグリーンレーザを用いて刻印されている。
次にPDP10の製造方法について説明する。図3は、本発明の実施の形態におけるPDP10の前面板20の製造方法を説明するための図である。前面ガラス基板21は、42インチのPDPであれば、例えば、大きさが980mm×554mm、厚みが1.8mmのガラス基板である。
次にアライメントマーク28を形成する。アライメントマーク28を形成するには、まず可視光吸収体が分散された塗布液を作成する。可視光吸収体としては、例えば銅、鉄、マンガン、コバルト、ニッケルの少なくとも1つの酸化物、または2つ以上の複合酸化物を含む顔料を用いることができる。塗布液は、これら可視光吸収体と、キシレン、エチルベンゼン、エチレングリコール、モノブチルエーテル等の有機溶剤と、アクリル樹脂、シリコン樹脂等の樹脂とを混合、分散させて作成する。そしてガラス基板21のアライメントマーク28を刻印する所定位置に塗布液を塗布し、乾燥させて塗布膜41を形成する。本実施の形態においては、ガラス基板21の四隅のアライメントマーク28を刻印する位置に膜厚が約1μmの塗布膜41を形成した(図3(a))。
次に、塗布膜41上に波長532nmのグリーンレーザ(レーザ光42)を照射して所定形状のアライメントマーク28を刻印する。本実施の形態においては、YAG単結晶をレーザダイオードで励起して得られる波長1066nmの、いわゆるYAGレーザ光をSHG素子で変換した第二高調波のグリーンレーザを使用した小型の刻印装置を用いた。そして、レーザ出力を電流換算で16Aに設定し、パルス幅30ns、加工面でのビーム径10μm、繰り返し周波数5kHz、スキャン速度60mm/sで、約1.5秒間、レーザ光42をガラス基板21に照射して十字形状のアライメントマーク28を刻印した(図3(b))。
ところで、上記のように前面ガラス基板21表面にレーザ光吸収用の塗布膜41を形成し、アライメントマークをレーザ刻印により形成した場合、前面ガラス基板21上にこの塗布膜41の一部が残存する。後工程であるが、前面ガラス基板21上への電極膜形成工程前に、前面ガラス基板21表面の改質を目的として、前面ガラス基板21をアルカリ洗浄する。このとき、塗布膜41の残留物も、同時に洗浄されることになるが、この残留物を洗浄槽に持ち込むと、洗浄槽フィルターが目詰まりしやすく、交換頻度が高くなる。さらに、洗浄液中に混入した塗布膜41の残留物が、前面ガラス基板21表面の電極膜形成領域に残った場合は、電極断線などの品質不良となる不具合が生じる。
そこで、本発明の実施形態においては、この段階において、レーザ照射によって塗布膜41を洗浄、除去する。まず、レーザ光の焦点を塗布膜41上ではなく、さらに前面ガラス基板21の上空部あるいは、前面ガラス基板21の後方部で像を結び、塗布膜41上でのレーザ光の径が50μmになるよう調整する。
この場合、レーザ光照射のエネルギーはガラスに刻印する程度(ガラス加工閾値)までは達しておらず、塗布膜41を除去する程度にとどまる。つまりこの設定でのレーザ光を塗布膜41の塗布領域全体に走査することによって、塗布膜41の残留物を除去する。アライメントマーカー形成部以外の残った塗布膜をレーザ照射により除去する。またレーザ光の径が大きいため、塗布領域全体を走査する時間は比較的短くて済む。
また、本発明の実施形態においては、レーザ光照射によるガラスの昇華成分および塗布膜41の除去成分は、吸引により回収し、前面ガラス基板21表面への再付着を防止する。
こうして形成されたアライメントマーク28は、縦および横の長さがそれぞれ3mm、幅が160μm、深さが2μmの十字形状のアライメントマーク28である(図3(c))。
そして、前面ガラス基板21をアルカリ洗浄する。電極層形成工程直前にアルカリ洗浄することによって、前面ガラス基板21表面へのダスト付着の可能性を最小限にすることができる。
次に、透明電極22a、23aを形成する。本実施の形態においては、まず、平均粒径が10nmのインジウム−錫の合金微粒子を12wt%の濃度で分散剤とともに有機溶媒中に分散させて分散液を作成した。次に、インクジェット印刷装置を用いて、幅の広いストライプ状に分散液を印刷して透明電極22a、23aの前駆体を形成した。このときガラス基板21上に形成されたアライメントマーク28をインクジェット印刷装置の光学系で読み取り、位置決めを行った。
その後、透明電極22a、23aの前駆体が形成されたガラス基板21を1×10−3Paの減圧下において230℃で10min保持して乾燥した。そしてその後、大気中で500℃で60min保持して焼成し、幅が約140μm、厚さが約300nmのITO膜からなる透明電極22a、23aを形成した(図3(d))。
その後、酸化ルテニウムや黒色顔料を主成分とする黒色層用ペーストを用いて、黒色層の前駆体、およびブラックストライプ25の前駆体を形成する。そして、銀を含む導電層用ペーストを用いて黒色層の前駆体の上に導電層の前駆体を形成する。本実施の形態においては、スクリーン印刷法を用いて感光性の黒色層用ペーストをガラス基板21の全面に塗布し露光マスクを用いて露光する。その後、感光性の導電層用ペーストをガラス基板21の全面に塗布し露光マスクを用いて露光する。このときも、ガラス基板21上に形成されたアライメントマーク28を用いて露光マスクの位置決めを行った。そしてその後、現像を行って黒色層の前駆体および導電層の前駆体を形成した。
次に、これら黒色層の前駆体および導電層の前駆体が形成されたガラス基板21を焼成して、バス電極22b、23b、ブラックストライプ25を形成する。このときの焼成のピーク温度は550℃〜600℃が望ましく、本実施の形態においては580℃である。またバス電極22b、23bの厚みは、1μm〜6μmが望ましく、本実施の形態においては4μmである(図3(e))。
次に、走査電極22、維持電極23およびブラックストライプ25が形成されたガラス基板21上に、スクリーン印刷法等の公知技術により、誘電体層26の前駆体を形成する。そして誘電体層26の前駆体を焼成して、厚み20μm〜50μmの誘電体層26を形成する。
本実施の形態においては、酸化硼素35wt%、酸化硅素1.4wt%、酸化亜鉛27.6wt%、酸化物バリウム3.3wt%、酸化ビスマス25wt%、酸化アルミニウム1.1wt%、酸化モリブデン4.0wt%、酸化タングステン3.0wt%を含んだ誘電体ガラスを含む誘電体ペーストを作成した。このようにして作成された誘電体ガラスの軟化点は約570℃である。次に走査電極22、維持電極23およびブラックストライプ25が生成されたガラス基板21上にダイコート法により誘電体ペーストを塗布して誘電体層26の前駆体を形成した。そして誘電体層26の前駆体を約590℃で焼成して誘電体層26を形成した。このときの誘電体層26の厚みは約40μmである。
そして誘電体層26の上に、酸化マグネシウムを主成分とする保護層27を、真空蒸着法等の公知技術により形成した(図3(f))。
次に背面板30の製造方法について説明する。図4は、本発明の実施の形態におけるPDP10の背面板30の製造方法を説明するための図である。
まずアライメントマーク38を形成する。本実施の形態における背面ガラス基板31のアライメントマーク38の形成方法は前面ガラス基板21のアライメントマーク28の形成方法とほぼ同じである。すなわち、可視光吸収体が分散された塗布液を作成し、背面ガラス基板31の四隅のアライメントマーク38を刻印する位置に塗布液を塗布、乾燥して塗布膜を形成した。そして塗布膜上に波長532nmのグリーンレーザを照射してアライメントマーク38を刻印した。このときのアライメントマーク38は十字形状でもよいが、前面ガラス基板21のアライメントマーク28と区別するために、他の形状であってもよい(図4(a))。
この後、前面板20同様に、レーザ照射によって塗布膜41を洗浄、除去する。まず、レーザ光の焦点を塗布膜41上ではなく、さらに背面ガラス基板31の上空部あるいは、背面ガラス基板31の後方部で像を結び、塗布膜41上でのレーザ光の径が50μmになるよう調整する。
この場合、レーザ光照射のエネルギーはガラスに刻印する程度(ガラス加工閾値)までは達しておらず、塗布膜41を除去する程度にとどまる。つまりこの設定でのレーザ光を塗布膜41の塗布領域全体に走査することによって、塗布膜41の残留物を除去する。アライメントマーカー形成部以外の残った塗布膜をレーザ照射により除去する。またレーザ光の径が大きいため、塗布領域全体を走査する時間は比較的短くて済む。
また、本発明の実施形態においては、レーザ光照射によるガラスの昇華成分および塗布膜41の除去成分は、吸引により回収し、背面ガラス基板31表面への再付着を防止する。
こうして形成されたアライメントマーク38は、縦および横の長さがそれぞれ3mm、幅が160μm、深さが2μmの十字形状のアライメントマーク38である(図4(a))。
そして、背面ガラス基板31をアルカリ洗浄する。電極層形成工程直前にアルカリ洗浄することによって、背面ガラス基板31表面へのダスト付着の可能性を最小限にすることができる。
次に、スクリーン印刷法、フォトリソグラフィ法等の公知技術を用いて、背面ガラス基板31上に、銀を主成分とする導電層用ペーストを一定間隔でストライプ状に塗布し、データ電極32の前駆体を形成する。このときガラス基板31上に形成されたアライメントマーク38を用いて位置決めを行う。次に、データ電極32の前駆体が形成された背面ガラス基板31を焼成して、データ電極32を形成する。データ電極32の厚みは、例えば2μm〜10μmであり、本実施の形態では3μmである(図4(b))。
続いて、データ電極32を形成した背面ガラス基板31上に誘電体ペーストを塗布し、この後焼成して誘電体層33を形成する。誘電体層33の厚みは、例えば約5μm〜15μmであり、本実施の形態では10μmである(図4(c))。
続いて、誘電体層33を形成したガラス基板31上に感光性の誘電体ペーストを塗布した後、焼成して隔壁34の前駆体を形成する。その後、露光マスクを用いて感光し、現像して隔壁34を形成する。このときも、背面ガラス基板31上に形成されたアライメントマーク38を用いて露光マスクの位置決めを行う。こうして形成された隔壁34の高さは、例えば100μm〜150μmであり、本実施の形態では120μmである(図4(d))。
そして、隔壁34の壁面および誘電体層33の表面に、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体のいずれかを含む蛍光体インクを塗布する。このときも、背面ガラス基板31上に形成されたアライメントマーク38を用いて塗布装置の位置決めを行う。その後乾燥、焼成して蛍光体層35を形成する。
赤色蛍光体としては、例えば(Y,Gd)BO:Eu、(Y,V)PO:Eu等を、緑色蛍光体としては、例えばZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Tb、(Y,Gd)Al(BO:Tb等を、青色蛍光体としては、例えばBaMgAl1017:Eu、SrMgSi:Eu等をそれぞれ用いることができる(図4(e))。
そして上述した前面板20と背面板30とを、表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように、前面ガラス基板21上に作成されたアライメントマーク28および背面ガラス基板31上に作成されたアライメントマーク38を用いて対向配置し、放電セルが形成された画像表示領域の外側の位置で低融点ガラスを用いて封着する。その後、内部の放電空間にキセノンを含む放電ガスを封入して、PDP10が完成する。
このように本実施の形態においては、波長532nmのグリーンレーザを用いた小型の刻印装置を使用しているので、PDP10の製造ラインを再構築することなく、アライメントマーク28、38を形成する工程を追加することができる。そしてアライメントマーク28を形成する工程は、前面ガラス基板21に刻印する方法であって、前面ガラス基板21の所定位置に、可視光吸収体を含む膜を形成する膜形成ステップと、その所定位置にレーザ光を照射して前面ガラス基板21に刻印する刻印ステップと、その塗布膜41にレーザ光を照射して塗布膜41の少なくとも一部を除去する照射ステップとを有し、その刻印ステップのレーザ光の波長は、前面ガラス基板21の光の吸収率が塗布膜41の光の吸収率より低い波長であり、本発明の実施形態においては532nmである。そしてこの波長は前面ガラス基板21の可視光領域における最も低い吸収率の波長である。アライメントマーク38を形成する工程も同様である。
図5は、本発明の実施の形態におけるPDP10に用いる前面ガラス基板21の可視光領域における吸収率を示す図である。このようにガラス基板21の吸収率はグリーンレーザの波長532nmで最も低く1%となる。そのために、ガラス基板21自体がレーザ光42を吸収するのではなく、ガラス基板21の表面に形成した塗布膜41がレーザ光42のエネルギーを吸収し、そのエネルギーをガラス基板21に間接的に伝達することでガラス基板21に刻印している。従って、ガラス基板21に与えるダメージが少なく、PDP10製造時の熱プロセスおよび封着後の応力に対してマイクロクラック等が発生、成長することのない、耐性の高いアライメントマーク28を形成することができる。
またレーザ光42のエネルギーを吸収した部分の塗布膜41は速やかに昇華するため、必要以上にレーザ光42のエネルギーがガラス基板21に伝達されることがない。従ってレーザ出力をある程度変化させてもガラス基板21に伝達されるエネルギーは変化せず、安定してアライメントマーク28を形成することができる。背面ガラス基板31のアライメントマーク38に対しても同様である。
なお、本実施の形態においては、可視光吸収体として、銅、鉄、マンガン、コバルト、ニッケルの少なくとも1つの酸化物、または2つ以上の複合酸化物を含む顔料と、有機溶剤と樹脂とを分散した塗布液を用いて塗布膜41を形成した。しかしながら上記以外にも、波長532nmのグリーンレーザを吸収し、かつレーザ照射により速やかに昇華する物質であれば塗布膜41として用いることができる。例えば、波長532nmに吸収帯のある有機顔料または有機染料で、例えば、パイ電子共役系を持つ芳香族化合物と、キシレン、ブタノール、ベンジルアルコール等の有機溶剤と、アクリル樹脂、シリコン樹脂等の樹脂を混合した塗布液を乾燥させた厚さ0.4μm〜3.0μmの塗布膜であってもよい。これら塗布膜の波長532nmの可視光に対する吸収率は5%〜95%である。
また、アルカリ可溶性の樹脂を含む塗布液を用いて塗布膜を形成すると、溶剤を用いることなく、例えば0.5%程度の苛性ソーダを含む洗浄剤等の水系洗剤を用いて、容易に塗布膜を洗浄、除去することができる。
また本実施の形態においては、インクジェット印刷法を用いて透明電極22a、23aを形成するPDP10を例に説明したが、本発明は透明電極22a、23aを形成しないPDPについても適用することができる。この場合には、まずガラス製のガラス基板21をアルカリ洗浄し、次にアライメントマーク28を形成する。そして走査電極構造体と維持電極構造体とをバス電極22b、23bと同様の工程で形成し、その上に誘電体層26と保護層27とを形成すればよい。すなわち、図3(d)に示した工程を省略することができる。
また本実施の形態においては、PDP1枚分の大きさのガラス基板を用いて、PDP1枚毎に前面板20および背面板30を製造するPDP10の製造方法を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、FPD4枚分またはFPD6枚分等、FPD複数枚分の大きさのガラス基板を用いて、一度に複数枚の前面板20および背面板30を製造する、いわゆる多面取りによるFPDの製造方法についても適用することができる。
なお、本実施の形態において用いた具体的な各数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、PDPの仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。
そして、本実施の形態においてはPDPを例に挙げて説明したが、これに限らず、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のガラス基板を用いたFPD全般のアライメントマーク、QRコード等に実施することができ、上記の効果が期待できる。
本発明は、ガラス製の基板上に精度よく、かつ熱プロセスおよび応力に対しての耐性の高いアライメントマークを簡単に形成することができるので、低コストで生産性よくFPDを製造することができるFPDの製造方法として有用である。
10 PDP
20 前面板
21 (前面)ガラス基板
22 走査電極
22a,23a 透明電極
22b,23b バス電極
23 維持電極
24 表示電極対
25 ブラックストライプ
26 誘電体層
27 保護層
28,38 アライメントマーク
30 背面板
31 (背面)ガラス基板
32 データ電極
33 誘電体層
34 隔壁
35 蛍光体層
41 塗布膜
42 レーザ光(グリーンレーザ)

Claims (6)

  1. ガラス基板に刻印する方法であって、前記ガラス基板の所定位置に、可視光吸収体を含む膜を形成する膜形成ステップと、前記所定位置にレーザ光を照射して前記ガラス基板に刻印する刻印ステップと、前記膜にレーザ光を照射して前記膜の少なくとも一部を除去する照射ステップとを有し、前記刻印ステップのレーザ光の波長は、前記ガラス基板の光の吸収率が前記塗布膜の光の吸収率より低い波長であることを特徴とするガラス基板の刻印方法。
  2. 前記刻印ステップで照射するレーザ光の焦点位置と、前記照射ステップで照射するレーザ光の焦点位置とが異なり、かつ前記刻印ステップで照射するレーザ光の径と、前記照射ステップで照射するレーザ光の径が異なることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の刻印方法。
  3. 前記刻印ステップおよび前記照射ステップで照射する前記レーザ光は、波長532nmのグリーンレーザであることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の刻印方法。
  4. 前記可視光吸収体は、銅、鉄、マンガン、コバルト、ニッケルの少なくとも1つの酸化物、または2つ以上の複合酸化物を含む顔料であることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の刻印方法。
  5. 前記可視光吸収体は、芳香族化合物を含む有機顔料または有機染料であることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の刻印方法。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれかに記載のガラス基板の刻印方法を用いたフラットパネルディスプレイの製造方法。
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