JP2011004656A - トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法 - Google Patents

トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安全性の高い天然物系の食用油中のカロテンを、効率良くZ−体(シス体)からE−体(トランス体)に異性化させ、粘度を上昇させることなくE−体(トランス体)を高含有させることが可能なトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法の提供。
【解決手段】カロテンを含有する食用油を50℃以上で加温しながら、単位容積当たりの攪拌所要動力2kW/m〜9kW/mで攪拌することを特徴とするトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法に関する。
カロテンは、天然に存在する黄色系のテルペノイド類の脂溶性色素で、天然着色料として広く用いられており、更にビタミンA前駆体としての機能も有することから、健康食品のビタミン強化剤としても広く使われている。
カロテンの構造としては、分子内に共役2重結合を有し、その構造が全てE−体(トランス体)であるものをオールトランス体と呼ぶ。前記オールトランス体は、一部の2重結合がZ−体(シス体)であるものと比較して吸光係数が高く、着色料として用いる場合などに効率が良いことからその商業的価値は高いものとなっている。
アスタキサンチンなどのカロテノイドは、抽出などの通常の方法で濃縮を行うと約半分がZ−体(シス体)となってしまうことが知られている(非特許文献1参照)。カロテンも、紫外線によってシス化が生じ、有効成分濃度が低下する。カロテンは高付加価値の色素であることから、有効成分の向上は、商業的価値が向上することを意味する。そのため、E−体(トランス体)を高含有するカロテンの提供が望まれているのが現状である。また、市販のカロテンには合成品と天然品とが存在するが、食品などに用いられる場合、安全性の面から、天然カロテンに対する需要が大きい。
カロテンのZ−体(シス体)は、溶媒存在下で加温することでE−体(トランス体)に異性化することが知られている(特許文献2〜4参照)が、その異性化効率は十分なものではない点で問題であった。また、カロテンを加温すると、溶媒が少ない場合、あるいは溶媒の種類によっては、トランス化に伴い粘度が急激に上昇することから、カロテンの製造工程における配管閉塞やハンドリング性の悪化が生じる点で問題であった。
したがって、安全性の高い天然物系の食用油中のカロテンを、効率良くZ−体(シス体)からE−体(トランス体)に異性化させ、粘度を上昇させることなくE−体(トランス体)を高含有させることが可能なトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法は、未だ提供されておらず、その速やかな提供が求められているのが現状である。
特開2001−247541号公報 米国特許第2,849,507号明細書 特開昭50−50338号公報 特開平8−119933号公報
Jian−Ping Yuan and Feng ChenJ., Agric. Food Chem., 1999, 47(9), p.3656−3660
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、安全性の高い天然物系の食用油中のカロテンを、効率良くZ−体(シス体)からE−体(トランス体)に異性化させ、粘度を上昇させることなくE−体(トランス体)を高含有させることが可能なトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、カロテンを50℃以上で加温することにより、効率良くZ−体(シス体)からE−体(トランス体)に異性化させることができること、前記加温時に、単位容積当たりの攪拌所要動力2kW/m〜9kW/mで攪拌することにより、カロテンの粘度の上昇を抑制することができることを知見し、本発明の完成に至った。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1>カロテンを含有する食用油を、50℃以上で加温しながら攪拌する工程を少なくとも含むことを特徴とするトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法である。
<2>加温する温度が、60℃〜100℃であり、攪拌する動力が、単位容積当たりの攪拌所要動力2kW/m〜9kW/mである前記<1>に記載のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法である。
<3>加温時間が、少なくとも2時間である前記<1>から<2>のいずれかに記載のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法である。
<4>食用油が、ひまわり油及び中鎖トリグリセリドの少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、安全性の高い天然物系の食用油中のカロテンを、効率良くZ−体(シス体)からE−体(トランス体)に異性化させ、粘度を上昇させることなくE−体(トランス体)を高含有させることが可能なトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法を提供することができる。
図1は、アンカーパドル翼の付いたジャケット付きの撹拌槽の一例を模式的に表した図である。
(トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法)
本発明のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法は、カロテンを含有する食用油(以下、「食用油懸濁品」と称することがある。)を、50℃以上で加温しながら攪拌する工程を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
前記50℃以上で加温しながら攪拌する工程は、前記カロテンを含有する食用油を攪拌槽に入れ、50℃以上の一定の温度で加温しながら、一定の攪拌動力で一定時間攪拌する工程である。
<食用油懸濁品>
前記食用油懸濁品としては、カロテンを含有する食用油であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、天然物系の原料より得られた食用油懸濁品が、安全性が高い点で好ましい。
前記天然物系の原料より得られた食用油懸濁品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーム油、ひまわり油、中鎖トリグリセリド(MCT)、ゴマ油、大豆油、サフラワー油、コーン油、米油、綿実油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナツ油、オリーブ油、ナタネ油などが挙げられる。前記食用油懸濁品は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−入手方法−
前記食用油懸濁品の入手方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所望の植物より抽出する方法、市販品より入手する方法などが挙げられる。
本出願人らは以前に、油脂にアルコールを添加し、これを酸性ゲル型カチオン交換樹脂に接触させることで、油脂中の遊離脂肪酸のエステル化率を向上することが可能な油脂の製造方法を特許出願している(国際公開第2006/064643号パンフレット参照)。前記食用油懸濁品は、このような処理を施したものを使用することもできる。
<攪拌>
本発明のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法は、前記食用油懸濁品を攪拌し、剪断力をかけることによりカロテンの粘度上昇を抑制することができる。
−方法−
前記食用油懸濁品を攪拌する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、攪拌槽に前記食用油懸濁品を所望の量入れ、攪拌翼により一定の攪拌動力で一定時間攪拌する方法が好ましい。
前記攪拌槽としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加熱用のジャケットが装備され、撹拌翼を有する撹拌槽が好ましい。
前記撹拌翼としては、特に制限はなく、一般的な撹拌翼の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パドル、タービン、アンカー翼、広幅翼などが挙げられる。これらの中でも、高粘度のものを攪拌できるアンカー翼や広幅翼が好ましく、図1に示すアンカーパドル翼2(例えば、佐竹化学機械工業(株)製)がより好ましい。前記アンカーパドル翼2は、U字型の羽であるため、大容量の食用油懸濁品を用いた場合でも全体を均一に攪拌することができる点で有利である。
−攪拌動力−
前記攪拌動力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、単位容積当たりの攪拌所要動力が、2kW/m〜9kW/mが好ましい。前記単位容積当たりの攪拌所要動力が、2kW/m未満であると、前記カロテンの粘度上昇を抑制することができず、9kW/mを超えると、物理的な点又は経済性の点で前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造に不向きである。
前記単位容積当たりの攪拌所要動力は、実装置での撹拌モーターの撹拌動力を設定し、撹拌動力を測定し後、仕込み量(容量)で除することにより算出できる。前記仕込み量は下記計算式1により算出でき、前記単位容積当たりの攪拌所要動力は下記計算式2により算出できる。
−−仕込み量の算出−−
仕込み量(m)=原料仕込み(kg)/トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の比重(g/mL)/1,000=仕込み量(L)/1,000 (計算式1)
−−−比重の測定方法−−−
前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の比重の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、標準比重計により測定する方法などが挙げられる。
−−単位容積当たりの攪拌所要動力の算出−−
単位容積当たりの攪拌所要動力(kW/m)=攪拌所要動力(kW)/仕込み量(m) (計算式2)
−攪拌時間−
前記攪拌を行う時間としては、特に制限はなく、後述する加温時間などに応じて適宜選択することができる。
<加温>
本発明のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法における加温は、前記食用油懸濁品に含まれるカロテンのZ−体(シス体)を、効率良くE−体(トランス体)に異性化させることができる。
−温度−
前記加温する温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上が好ましく、60℃〜100℃がより好ましく、70℃〜90℃が特に好ましい。前記温度が、50℃未満であると、前記カロテンのトランス化の進行が遅く、100℃を超えると、前記カロテンのシス化が進行し、トランス体カロテンが減少する。
−方法−
前記加温する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記攪拌槽に付属するジャケットにスチームや熱媒体を流して加温する方法などが挙げられる。
−時間−
前記加温する時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも2時間が好ましく、2時間〜20時間がより好ましく、10時間〜18時間が特に好ましい。前記加温する時間が、10時間未満であると、前記カロテンのトランス化の進行度が低く、18時間を超えると、前記カロテンのトランス体が増加しにくい。
<トランス体カロテン高含有食用油懸濁液>
前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液は、本発明のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法により得られるカロテントランス体を高含有し、かつ粘度の低い食用油である。
−カロテン−
前記カロテンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、及びその混合物などが挙げられるが、これらの中でも、β−カロテンが、ビタミンA前駆体としての機能を有し、入手しやすい点で好ましい。
前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液中のカロテン濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
−−カロテン濃度の測定方法−−
前記カロテン濃度を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分光光度計で測定する方法、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定する方法などが挙げられる。
前記分光光度計で測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液100mgを正確に量り、カロテンが可溶な溶媒で所望の濃度に希釈し、前記希釈した食用油懸濁液を、前記カロテンが可溶な溶媒で正確に100mLとし、波長448nmで吸光度を測定する方法などが挙げられる。
前記カロテンが可溶な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シクロヘキサン、ヘキサンなどが挙げられる。
前記希釈する濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、波長448nmにおける吸光度が、0.2〜0.8になるように希釈することが好ましい。
前記カロテンの濃度は、前記吸光度から、下記計算式3により算出できる。
カロテン濃度(質量%)=(吸光度×希釈倍率)/(試料質量(g)×2,500) (計算式3)
ここで、2,500はトランス−β−カロテンの吸光係数(E1%、1cm)である。
−−カロテントランス体比−−
前記カロテン中のトランス体比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
なお、一般に市販のカロテンは、濃度が20質量%〜30質量%程度のものが多いため、1質量%でも多くトランス体を含有させることができれば、カロテン濃度が高くなることから、その価値は非常に高いものである。
−−−カロテントランス体比の測定方法−−−
前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液中のカロテンのトランス体比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、HPLCにより、測定波長448nmで測定する方法などが挙げられる。
−粘度−
前記粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000mPa・s以下が好ましく、2,500mPa・s以下がより好ましく、1,600mPa・s以下が特に好ましい。前記粘度が、5,000mPa・sを超えると、前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造工程における配管閉塞やハンドリング性の悪化が生じる。
−−粘度の測定方法−−
前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の粘度を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、B型粘度計により測定することができる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液を冷却する冷却工程などが挙げられる。前記冷却する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記攪拌槽の温度を所望の冷却温度に設定し、攪拌しながら冷却する方法などが挙げられる。
以下に本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜4)
ひまわり油懸濁品(Refined Sunflower Oil、SGS社製)186kgを使用原料とし、図1に示すアンカーパドル翼2(佐竹化学機械工業(株)製)の付いたジャケット付きの撹拌槽1(千代田化工建設(株)製)内で、下記表1に従い、50℃(実施例1)、80℃(実施例2)、90℃(実施例3)、及び120℃(実施例4)のいずれかの温度で加温しながら、単位容積当たりの攪拌所要動力2.6kW/mで18時間攪拌を行った。次いで、40℃で更に攪拌しながら冷却し、トランス体カロテン高含有食用油懸濁液を得た。撹拌槽1の槽径は800mm、アンカーパドル翼2の攪拌翼径は700mm、攪拌翼幅は70mm、攪拌翼高さは650mmである。なお、単位容積当たりの攪拌所要動力は、後述する計算式4〜5により算出した。
(実施例5〜7)
攪拌所要動力を、下記表1に従い、1.0kW/m(実施例5)、6.2kW/m(実施例6)、及び11kW/m(実施例7)のいずれかにした以外は、実施例2と同様の方法でトランス体カロテン高含有食用油懸濁液を得た。
(実施例8〜10)
攪拌時間を、下記表1に従い、2時間(実施例8)、6時間(実施例9)、及び14時間(実施例10)のいずれかにした以外は、実施例2と同様の方法でトランス体カロテン高含有食用油懸濁液を得た。
(実施例11)
使用原料を中鎖トリグリセリド(BERGABEST MCT−OIL 60/40、Sternchemie社製)にした以外は、実施例2と同様の方法でトランス体カロテン高含有食用油懸濁液を得た。
(実施例12)
使用原料を中鎖トリグリセリド(BERGABEST MCT−OIL 60/40、Sternchemie社製)にした以外は、実施例6と同様の方法でトランス体カロテン高含有食用油懸濁液を得た。
(比較例1)
加温せず、攪拌を室温で行った以外は、実施例2と同様の方法でトランス体カロテン高含有食用油懸濁液を得た。
(比較例2)
剪断力を加えなかった以外は、実施例2と同様の方法でトランス体カロテン高含有食用油懸濁液を得た。
<単位容積当たりの攪拌所要動力の算出>
実施例1〜12及び比較例1の単位容積当たりの攪拌所要動力は、実装置での撹拌モーターの撹拌動力を設定し、撹拌動力を測定後、下記計算式4〜5に示すように、仕込み量(容量)で除することにより算出した。なお、本実施例1〜12及び比較例1〜2の原料仕込みは、186kgである。
前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の比重は、80℃にて標準比重計((有)横田計器製作所製)により算出した。ひまわり油懸濁品の比重は0.90であり、中鎖トリグリセリドの比重は0.92であった。
仕込み量(m)=186(kg)/トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の比重(g/mL)/1,000=仕込み量(L)/1,000 (計算式4)
単位容積当たりの攪拌所要動力(kW/m)=各条件における撹拌機モーターの撹拌動力値(kW)/仕込み量(m) (計算式5)
<カロテン濃度の測定>
未処理のひまわり油懸濁品、未処理の中鎖トリグリセリド懸濁品、実施例1〜12のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液、及び比較例1〜2のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液をそれぞれ100mg正確に量り、シクロヘキサン(特級、関東化学(株)製)で20,000倍に希釈した後、正確に100mLとし、分光光度計(島津自記分光光度計 UV−2200、(株)島津製作所製)にて波長448nmで吸光度を測定した。
前記吸光度から、下記計算式6により、カロテン濃度を算出した結果を表1〜4に示す。なお、下記表1〜4中、「A」は使用原料がひまわり油懸濁品であり、「B」は使用原料が中鎖トリグリセリド懸濁品であることを示す。
カロテン濃度(質量%)=(吸光度×希釈倍率)/(試料質量(g)×2,500) (計算式6)
<カロテントランス体比の測定>
未処理のひまわり油懸濁品、未処理の中鎖トリグリセリド懸濁品、実施例1〜12のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液、及び比較例1〜2のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液をそれぞれ100mg正確に量り、ヘキサン(HPLC用、関東化学(株)製)で500倍に希釈して正確に100mLとし、下記条件にてHPLCを行い、カロテンのトランス体比を測定した。結果を、下記表1〜4に示す。
測定条件
装置:インテグレータ C−R7A((株)島津製作所製)
ポンプ LC−10AD((株)島津製作所製)
検出器 SPD−10AV(UV−VIS)((株)島津製作所製)
ポンプ CO−8010(東ソー(株)製)
カラム:LIMEカラム(水酸化カルシウム(特級、キシダ化学(株)製)を充填したカラム)
移動相:アセトン(HPLC用、関東化学(株)製)/ヘキサン=0.5/99.5(V/V)
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
温度:室温
検出波長:448nm
<粘度の測定>
未処理のひまわり油懸濁品、未処理の中鎖トリグリセリド懸濁品、実施例1〜12のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液、及び比較例1〜2のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液をそれぞれ基準油脂分析試験法2.2.10.5−1996(ブルックフィールド法)に準じて、B型粘度計を用いて粘度を測定した。結果を、下記表1〜4に示す。
<評価>
実施例1〜12及び比較例1〜2について、下記評価基準によりトランス体カロテン高含有食用油懸濁液を評価した。評価結果を表2〜4に示す。
−カロテンのトランス体比の評価基準−
◎:60質量%以上
○:50質量%以上60質量%未満
△:40質量%以上50質量%未満
×:40質量%未満
−粘度の評価基準−
◎:1,600mPa・s以下
○:1,600mPa・s超え2,500mPa・s以下
△:2,500mPa・s超え5,000mPa・s以下
×:5,000mPa・s超え
−総合評価基準−
◎:カロテンのトランス体比の評価及び粘度の評価がいずれも「◎」
○:カロテンのトランス体比の評価及び粘度の評価の少なくともいずれかが「○」
△:カロテンのトランス体比の評価及び粘度の評価の少なくともいずれかが「△」
×:カロテンのトランス体比の評価及び粘度の評価の少なくともいずれかが「×」
実施例1〜4より、単位容積当たりの攪拌所要動力2.6kW/mで18時間攪拌した場合、攪拌時の温度が80℃〜90℃の場合と、50℃の場合とで比較すると、50℃の場合ではカロテントランス体比が低く、粘度が高かった。これらの結果より、攪拌時の温度は80℃〜90℃が良好であることが認められた。
実施例5〜7では、良好なカロテントランス体比及び良好な粘度が得られた80℃、18時間の条件(実施例2)にて、単位容積当たりの攪拌所要動力のみを変化させた。実施例2及び実施例5〜7より、単位容積当たりの攪拌所要動力が2.6kW/m〜11kW/mの場合と、1.0kW/mの場合とを比較すると、1.0kW/mの場合では粘度が非常に高かった。これらの結果より、単位容積当たりの攪拌所要動力は2.6kW/m以上が良好であることが認められた。
実施例8〜10では、良好なカロテントランス体比及び良好な粘度が得られた80℃、2.6kW/mの条件(実施例2)にて、単位容積当たりの攪拌時間のみを変化させた。攪拌時間は14時間以上が良好であることが認められた。
実施例11〜12では、良好なカロテントランス体比及び良好な粘度が得られた条件(実施例2及び実施例6)で、原料を中鎖トリグリセリドに変えて行ったが、原料の違いに関わらず、カロテントランス体比が高く、粘度の低い良好なトランス体カロテン高含有食用油懸濁液が得られた。
一方、比較例1では、適当な単位容積当たりの攪拌所要動力で攪拌した場合でも、室温にて攪拌した場合は、カロテントランス体比が非常に低く、粘度は高いことが認められた。
また、比較例2では、適当な温度で行った場合でも、攪拌しなかった場合は、カロテントランス体比は良好であったが、粘度が非常に高かった。
<保存安定性試験>
実施例2のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液について、室温で2ヶ月間放置した。2ヵ月後の前記トランス体カロテン高含有食用油懸濁液の粘度及びカロテントランス体比を、前述した方法と同様の方法で分析することにより、保存安定性について確認を行った。結果を下記表5に示す。
表5より、実施例2のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液は、室温で2ヶ月放置しても良好なカロテントランス体比、粘度、及びカロテン濃度を維持しており、非常に安定であることが認められた。
本発明のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法は、カロテンのトランス体比を高くすることが可能であり、かつ粘度の上昇を抑制できるため、優れたトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法である。
本発明のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法は、安全性の高い天然物系の食用油中のカロテンを、効率良くZ−体(シス体)からE−体(トランス体)に異性化させ、粘度を上昇させることなくE−体(トランス体)を高含有させることができるため、マーガリン、飲料などの着色料に好適に利用可能である。また、カロテンはビタミンA前駆体であり、体内でビタミンAに変化するため、栄養補助食品などの強化剤としても好適に利用可能である。
1 攪拌槽
2 攪拌翼

Claims (4)

  1. カロテンを含有する食用油を、50℃以上で加温しながら攪拌する工程を少なくとも含むことを特徴とするトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法。
  2. 加温する温度が、60℃〜100℃であり、攪拌する動力が、単位容積当たりの攪拌所要動力2kW/m〜9kW/mである請求項1に記載のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法。
  3. 加温時間が、少なくとも2時間である請求項1から2のいずれかに記載のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法。
  4. 食用油が、ひまわり油及び中鎖トリグリセリドの少なくともいずれかである請求項1から3のいずれかに記載のトランス体カロテン高含有食用油懸濁液の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2015093367A1 (ja) * 2013-12-19 2015-06-25 日本曹達株式会社 共結晶の製造方法
JP2015530076A (ja) * 2012-07-20 2015-10-15 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se 乳化カロテノイドを含む水性の透明な水中油型エマルション

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