JP2010539899A - 植物静止中心由来幹細胞株及びその分離方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は植物静止中心由来細胞株及びこの分離方法に関し、より詳細には、植物の静止中心において別の脱分化過程なしに取得されることを特徴とする静止中心由来単細胞起源の均質な細胞株、及びこの分離方法に関する。
Description
本発明は植物静止中心由来細胞株及びその分離方法に関し、より詳細には植物の静止中心において別の脱分化過程なしで取得されることを特徴とする静止中心由来単細胞起源の均質な細胞株、及びこの分離方法に関する。
植物は過去食糧資源として用いられていたが、現在には薬剤、香料、色素、農薬、染料などを含んだ広範囲の化学物質供給源としてその意味が広がっている。特に、殆どの植物由来有用物質は、抗ウイルス、抗バクテリア、抗癌、抗酸化能などの生理活性を持ち、新たな医薬品として発展可能な理想的な資源として注目されていて、多くの植物由来物質の化学構造と活性との間の関係を究明するための研究が盛んに行われている。
しかし、生理活性物質は医薬品として開発し難しい実情であり、その主な理由は次のとおりである。一番目に、植物内の生理活性物質の含有量が極めて限定的である。二番目に、植物の生長速度は非常に遅い。三番目には、植物由来生理活性物質は植物の特定器官内にだけ少量存在する。四番目に、自然破壊などの環境問題が係わっている。五番目に、植物由来生理活性物質の場合、化学的構造が非常に複雑で、多段階重合過程が求められて、生産費用が非常に高い経済的な問題がある。従って、植物由来生理活性物質を商業的に安定的に供給することがかなり困難であった。
しかし、生物工学技法の一つである植物細胞培養方法は、環境問題を誘発せずに植物由来有用物質を安定的に供給できる、最も理想的な技術として長い間評価されている。韓国公開特許1995−0000870(1995年1月3日)によると、植物細胞培養による有用物質の生産は植物からの直接抽出方法より多くの長所がある。特に、既存の抽出法とは異なって、外部環境の影響を受けずに持続的な生産が可能で、生態系破壊のような懸案問題を解決できる最適の方法であると思われている。しかし、植物細胞培養に対する多大な関心と努力にも係わらず、産業化に成功した例は未だに極めて一部に過ぎないのが実情である。これは多数の植物細胞培養において細胞増殖と生産性の変動が主要な問題として依然として残っているためである。
植物発現システムに植物細胞を利用する場合、植物細胞の分化組織、例えば、葉、幹、種子などは分裂能が失われた永久組織であるため、分裂能を有する細胞株に転換させるために脱分化過程が必ず先行して行われる。前記脱分化過程は植物体のある組織や器官を利用して培養した時、その組織や細胞が既に特定機能を遂行するように分化した状態を解体することを意味する。しかし、このような脱分化過程中に染色体変異によって、細胞株に深刻な変異が起こりうる。
特に、植物細胞培養を通した有用物質の生産は、長期間の培養期間の間に迅速な細胞増殖と高い代謝物質生産能が安定的に維持されてこそ産業化が可能となるが、殆どの細胞株は継代培養によって、本来とは異なった多くの変異を受けるようになる。従って、このような変異の問題を解決して、植物細胞培養を通して有用物質生産において遺伝的に安定した細胞株を獲得するための方策が切に求められるのが実情である。
一方、植物は生長に必要な十分な水と無機物質を吸収しなければならないため、根元の表面積がとても広い。このような根元の端部には複数の根端分裂組織細胞があって、これらは分裂、拡張、伸長、及び分化して、主根の組織を形成する。根端分裂組織は根冠で包まれて保護されており、根端分裂組織の中にある細胞は非常にゆっくり分裂するため静止中心といい、静止中心の周りには1次分裂組織を作る始原細胞(progenitor cells)が囲んでいる。
しかし、植物の根系において大変重要であるにもかかわらず、根端分裂組織の生理的特性に関する研究は不十分である。即ち、トウモロコシなどの植物を利用して、静止中心の生理的特性を研究したり、これを培地で培養することにより根元へと発達させた研究はあるが、根冠、維管束組織、内鞘、内皮、皮層、表皮などの根系を構成している様々な組織中から静止中心だけを分離して、細胞株として確立した例はなかった。
従って、静止中心は遺伝的に最も安定した細胞組織であり、これを分離することによって植物の発生及び遺伝的起源に関する研究が可能になるため、静止中心由来の均質な細胞株を分離する方法の開発が求められている。また、近年幹細胞生物学(stem cell biology)分野が新しく台頭して、発生過程に関与するシグナルに対する研究など幹細胞と関連した多くの実験が進められている。しかし、動物の場合幹細胞を分離・培養する方法は逸早く確立されたが、植物の場合幹細胞分離に対する研究は殆どない状態である。そのため、静止中心由来細胞株を誘導及び分離することによって植物幹細胞生物学の発展を進展させると考えられる。
そこで、本発明者は静止中心由来単細胞起源の均質な細胞株を分離する方法及び脱分化過程がなくても、植物発現システムに使用できる植物細胞を開発しようと努力した結果、静止中心由来細胞株を分離して、前記分離した細胞株が長期間培養時に変異が殆どなくて安定した培養が可能で、凍結保存時生存率が高いことを確認して、本発明の完成に至った。
本発明の目的は、安定した培養が可能な静止中心由来細胞株を提供することである。
本発明の他の目的は、脱分化過程なしに静止中心由来細胞株を分離する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、脱分化過程なしに静止中心由来細胞株を分離する方法を提供することである。
前記目的を達成するために、本発明は植物の静止中心含有根組織を培養後、分化しない白色組織を回収することを含む静止中心由来細胞株の分離方法を提供する。
本発明はまた、植物の静止中心において誘導され、次の特性を有する植物の静止中心由来細胞株を提供する。
(a)懸濁培養において単細胞として存在し、
(b)静止中心以外組織由来の細胞株と比べて、大きい核を有する形態学的特徴を示し、
(c)粘液物質で囲まれており、
(d)長期間培養で形態的な変異なしで安定的に維持され、そして
(e)凍結保存時高い生存率を示す。
(a)懸濁培養において単細胞として存在し、
(b)静止中心以外組織由来の細胞株と比べて、大きい核を有する形態学的特徴を示し、
(c)粘液物質で囲まれており、
(d)長期間培養で形態的な変異なしで安定的に維持され、そして
(e)凍結保存時高い生存率を示す。
本発明はまた、前記植物の静止中心由来細胞株を凍結することを含む植物細胞株の保存方法を提供する。
本発明の他の特徴及び実施態様は、下記の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になる。
別に定義されない限り、本明細書で使われた全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術分野において熟練した専門家によって、通常理解できるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われた命名法は本技術分野においてよく知られていて通常使われるものである。
本発明は一側面において、植物の静止中心含有根組織を培養した後、分化しない白色組織を回収することを含む静止中心由来細胞株の分離方法に関する
この時望ましくは、前記植物の静止中心含有根組織は無菌処理された植物種子を発芽させて取得したもの、又は植物体の一部から誘導されたカルスから分化した根組織を用いる。また、前記培養で使われる培地は当業者に公知の任意の細胞株誘導培地を使えるが、望ましくは、N6培地、MS培地、GamborgB5培地、LS培地及びKAOM培地のうちいずれか一つの培地で培養する。この時、より一層望ましくは前記培養は2、4−Dを含んだ培地で行われる。また、本発明において前記静止中心由来細胞株の回収は3〜6週間培養した後に行うことが好ましい。
本発明の「静止中心」は、根端分裂組織(root apical meristem)の中央に500〜1,000個の非活性細胞で構成された半球型または円盤型の単一細胞群を意味する。この細胞群は細胞周期がG1期に長く留まって、約15〜20日周期で分裂すると知られているが、平常時には非活性状態で存在して外科的または放射能傷害処理時に分裂活性を再開する。即ち、根元が土の中を進む時、根冠は根端分裂組織を効果的に保護するが完璧ではないため、分裂組織は時には根元が成長する間に傷を負うようになる。この時に静止中心にあった細胞が分裂して損傷された分裂組織と根冠を再形成するようになる。また、X−ray露出時に分裂細胞の分裂が停止するが、静止中心細胞はX−rayに影響を受けずにすぐ分裂を開始して、分裂細胞を再形成する。即ち、静止中心は遺伝的に安定した細胞が貯蔵されている場所である。静止中心は根元の1次分裂組織である前形成層、基本分裂組織、原表皮(protoderm)に分化される。
前記静止中心は植物体の根元から取得することができるが、望ましくは無菌処理された種子を発芽させた小植物体の根元から取得するか、植物体の一部から誘導されたカルスから分化した根元組織から取得することができる。この時望ましくは、根元端部から根冠を除去して切断面から1mm内外の部位の切片体を取得して、これを細胞株誘導培地で培養する。この時培養に先立って、殺菌工程を植物体の根組織取得後に当業者に公示された一般的な方法に従って実施することができるが、無菌処理された種子を発芽させた小植物体の根元を用いる場合などには、根組織取得後、別の殺菌過程を経なくてもよい。
前記細胞株誘導培地は、当業界に公示された任意のものであってもよいが、例えば、N6培地(CHu C.C.,Proc.Symp.Plant Tissue Cult.,Peking,43,1978)、MS培地(Murashige T. and Skoog F.,Physiol. Plant,15:473、1962)、GamborgB5培地(Gamborg O.L et al.,Exp.Cell Res.,50:151、1968)、LS培地(Linsmaier E.M. and Skoog F., Physiol. Plantarum.,18:100、1965)、KAOM培地(Kao K.N. and Michayluk M.R.,Planta.(Berl.)、126:105、1975)等があるが、これに限定されるのではない。
この時、さらに望ましくは、オーキシン類の中2、4−Dを含んで培養する。この時、望ましくは2、4−Dは2mg/Lの濃度で含み、さらに望ましくは2〜7mg/Lの濃度で含む。具体的な細胞株誘導のための培養条件、培養期間などは植物細胞の種類や特性に応じて決定され、このような実施は当業者には自明なことである。
前記培養時に静止中心以外の根元組織由来細胞株と静止中心由来細胞株は形態的な差異が観察されるが、根元組織由来細胞株では異質でかつ局所的な分化が観察されるが、静止中心由来細胞株は均質であり局所的な分化は観察されない。また、根元組織由来細胞株の場合、肉眼で観察した時に黄色を帯びているが、静止中心由来細胞株は白色を帯びており、粘液物質に囲まれていることが明らかになった。即ち、静止中心由来細胞株は「分化しない白色組織」として現れた。前記粘液物質はムチン前駆体と予想されるが、ムチン前駆体とは、根冠の周辺細胞と根元の表皮細胞によって分泌される物質で、糖、有機酸、ビタミン、酵素、アミノ酸などを含有する複合多糖類と知られている。
従って、このような形態的差異に基づいて、静止中心由来細胞株だけを選別することができる。図1Aは静止中心由来細胞株の分離前の写真であり、赤色の円の部分が静止中心由来細胞株で、図1Bは分離後に誘導された静止中心由来細胞株を分離して、4週間培養した写真である。
前記静止中心由来細胞株の回収は望ましくは植物の静止中心含有根組織を培地に接種後、望ましくは3〜6週間、さらに望ましくは4〜5週間培養した後に行う。接種後約3〜6週が過ぎると静止中心由来細胞株が誘導され、これで分離し易くなる。
静止中心は全ての植物体が有している組織であるため、本発明の静止中心由来細胞株の分離方法は全ての植物体に適用可能であり、これで全ての植物体から静止中心由来細胞株取得が可能である。即ち、本発明の一実施例ではイネ及びトウモロコシの根組織の静止中心から細胞株を分離したが、これに限定されることなく静止中心を有する植物であれば本発明の方法を適用できることは本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者には自明なことである。例えば、静止中心由来細胞株を取得できる植物の例としてイネ、トウモロコシ、エンドウ、燕麦、玉ネギ、シロイヌナズナなどが挙げられるが、これに限定されるのではない。静止中心の生理的特性が研究された例としては、トウモロコシ(Maize)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、玉ネギ(Alliumcepa)、燕麦(Avenasativa)、及びエンドウ(Pisum sarivum)等が挙げられる[Maize:Georina Ponce et al.,Plant Cell and Environment,28:719、2005、Keni Jiang et al.,Development,130:1429、2003:Arabidopsis:Noriko Kamiya et al.,The Plant Journal,35:429、2003、Peter Doerner,Current Biology,8:R42、1998、Allium cepa:R.Liso,New Phytol.,110:469、1998,Avena saaaaaaaativa:F.A.L.CLOWES,New Phytol.,129、1982、Pisum sativum:Peter Doerner,Current Biology、8:R42、1998]。
本発明は他の側面において、植物の静止中心から誘導される、以下の特性を有する植物の細胞株に関する:
(a)懸濁培養において単細胞として存在し、
(b)静止中心以外組織由来の細胞株と比べて、大きい核を有する形態学的特徴を示し、
(c)粘液物質で囲まれており、
(d)長期間培養で形態的な変異なしに安定的に維持され、そして
(e)凍結保存時の高い生存率をしめす。
(a)懸濁培養において単細胞として存在し、
(b)静止中心以外組織由来の細胞株と比べて、大きい核を有する形態学的特徴を示し、
(c)粘液物質で囲まれており、
(d)長期間培養で形態的な変異なしに安定的に維持され、そして
(e)凍結保存時の高い生存率をしめす。
本発明の静止中心由来細胞株は、相対的に大きい核を有する形態学的特徴を示すが、核の大きさが2〜4μm程度であり、静止中心以外の他組織由来一般細胞株と比べて大きいことが明らかになった。
本発明の静止中心由来細胞株は、また、長期間培養時にも形態的な変化がない非常に安定した増殖を見せる。本発明の一実施例においては16週以上培養した場合でも形態的変化なしに安定的に培養されることが明らかになった。一方、根元組織由来細胞株を長期間培養する場合、内部細胞塊にいくつかの局所的な分化が観察され、特に不定根の発達が顕著であることが確認された。
また、植物細胞は微生物細胞とは異なり、単細胞で培養されずに細胞塊形態で培養されるが、このような細胞凝集は細胞塊の内部と外部とで環境的な差を誘発して、細胞増殖と有用物質生産に変動を誘発する。しかし、本発明の静止中心由来細胞株は懸濁培養時に単細胞で培養されて、このような変動の可能性はない。
それで、本発明による静止中心由来細胞株は、植物発現システムに使用されて有用物質を安定的に生産できる。また、本発明の静止中心由来細胞株は植物懸濁培養方法で培養でき、具体的な培養方法は当業界に公知のものに従って実施することができる。
本発明はまた他の側面において、前記植物の静止中心由来細胞株を凍結することを含む植物細胞株の保存方法に関する。
また、植物細胞の場合に凍結保存時の生存率が低いことが明らかになったが、本発明の静止中心由来細胞株は通常の細胞凍結保存方法に従って凍結保存した時、細胞生存率が85%以上と非常に高い。細胞株を凍結保存できる場合、原料の安定した供給及び実質的なマスター細胞銀行(master cell bank)の構築が可能で、それで本発明の静止中心由来細胞株を利用して、長期的かつ安定した細胞株供給が可能となる。
世界は今、研究素材(生物資源)を巡る戦争中で、人体組織、植物種子、微生物、細胞、及び遺伝子など各種新薬開発と食糧の改良などのための生物資源の保存と解読が重要な国家資産として浮上している。そこで研究素材確保がまさに国家の競争力である時代に、生命科学と関連した分野の研究に必須資料として活用されている細胞株(Cell Line)を開発して収集、保存、分譲する細胞株銀行の構築が必要であるのが実情である。従って、このような植物細胞銀行を構築するために研究素材の供給を円滑にでき、植物細胞株を利用する研究期間を短縮できると期待される。
以下、実施例を通して、本発明をより一層詳細に説明する。この実施例は本発明を例示するためであり、下記実施例は多様な他の形態に変形されるため、本発明の範囲がこの実施例によって制限されないことは当業界には通常の知識を有する者には自明なことである。
[実施例1]イネの静止中心由来細胞株の分離
1-1:植物材料の準備
イネ種子の殻を取り除いて、本来の状態で70%エタノールに1分間表面殺菌後、2%次亜塩素酸ナトリウム溶液に1時間浸漬させて、滅菌水で1〜2回洗浄した。これをまた滅菌水で30分間十分洗浄した後水気を完全に取り除いた。
乾燥種子をN6培地(CHU MEDIUM,Chu C.C.,Proc.Symp.Plant Tissue Cult.,Peking,43,1978)に種まきして、5日間25℃で培養して発芽させた。前記N6培地の組成は表1に示す。
1-1:植物材料の準備
イネ種子の殻を取り除いて、本来の状態で70%エタノールに1分間表面殺菌後、2%次亜塩素酸ナトリウム溶液に1時間浸漬させて、滅菌水で1〜2回洗浄した。これをまた滅菌水で30分間十分洗浄した後水気を完全に取り除いた。
乾燥種子をN6培地(CHU MEDIUM,Chu C.C.,Proc.Symp.Plant Tissue Cult.,Peking,43,1978)に種まきして、5日間25℃で培養して発芽させた。前記N6培地の組成は表1に示す。
その後、約5〜6日間発芽させた植物体から静止中心含有根元組織を採取した。根元端部から根冠を取り除いて切断面から1mmの部位を切片体(explant)として取得した。
1-2:静止中心由来細胞株誘導及び分離
(1)実施例1-1で取得した切片体を2mg/L、3mg/L及び4mg/Lの2、4−Dが含まれた各々のN6培地と、他の類型のオーキシン系ホルモンであるIAA(Indole-3-acetic acid)、IBA(Indole-3-butyric acid)、NAA(1-naphthalenacetic acid)、CPA(p-chlorophenoxyacetic acid)、ピクロラム(Picloram、4-amino-3、5、6-trichloropicolinic acid)が同一濃度で含まれたN6培地に接種した。
(1)実施例1-1で取得した切片体を2mg/L、3mg/L及び4mg/Lの2、4−Dが含まれた各々のN6培地と、他の類型のオーキシン系ホルモンであるIAA(Indole-3-acetic acid)、IBA(Indole-3-butyric acid)、NAA(1-naphthalenacetic acid)、CPA(p-chlorophenoxyacetic acid)、ピクロラム(Picloram、4-amino-3、5、6-trichloropicolinic acid)が同一濃度で含まれたN6培地に接種した。
その結果、2、4−Dを含んだ培地の場合、接種30日目に細胞株誘導が観察された。2、4−Dが含まれた培地は濃度に比例して静止中心由来細胞の誘導率が高くならず、2mg/L及びそれ以上の濃度で、同様の誘導率を示した。それで2mg/L以上の濃度で培養するのが望ましいことが明らかになった。但し、さらに1mg/L、4mg/L、5mg/L、6mg/L及び7mg/Lに対して実験を進めた結果、2〜7mg/L濃度で培養するのがより望ましいことが明らかになった。
一方、図2に示したように、2、4−Dを除いた他のオーキシン類の場合、接種後細胞が誘導されずに切片体で不定根が発生した。図2において、Aは2、4−Dを含んで培養させたもので、BはCPA、CはIAA、DはIBA、EはNAA、Fはピクロラムを含んで培養させたものである。
従って、静止中心由来細胞株は2、4−Dを使用する場合、特異的に誘導されることを確認することができた。
(2)図1Aに示したように、2、4−Dを含んだ培地で培養時静止中心以外の根元組織と静止中心由来細胞株は形態的な差異が観察された。即ち、根元組織由来細胞株では異質かつ局所的な分化が観察されるが、静止中心由来細胞株は均質であり局所的な分化は観察されなかった。肉眼で観察した時、静止中心以外の根元組織由来細胞株の場合に黄色を帯びている一方、静止中心由来細胞株は白色を帯びており、粘液物質に囲まれていることが明らかになった。そこでこのような形態的差異に基づいて、分化が観察されずに白色を帯びる組織、即ち静止中心由来細胞株を3〜6週後、分離した。図1Aにおける赤色円の部分が静止中心由来細胞株である。
(3)図3は静止中心由来細胞株を分離した後の写真で、静止中心以外の根組織から由来した細胞株(a)と静止中心由来細胞株(b)を形態的に観察した写真である。図3に示したように、根元組織由来細胞株では異質かつ局所的な分化が観察されたが、静止中心由来細胞株は均質であり局所的な分化が観察されなかった。
(4)一方、約3〜6週が過ぎても分離せずに、静止中心由来細胞株が静止中心以外の根組織由来細胞株と混合されている場合には粘液成分の変成が起きたが、このような変成は他組織由来細胞株のフェノール化合物によるものと判断される。フェノール成分の合成は分化組織で活発に形成されるためである。
[実施例2]トウモロコシの静止中心由来細胞株の分離
実施例1-1と同様な方法でトウモロコシ種子を発芽させ、発芽させた植物体の根元から静止中心を含有した切片体を取得した。その後、前記実施例1-2と同様な方法で2、4−D、CPA、IAA、IBA、NAA、及びピクロラムを各々含む培地で切片体を培養して、静止中心由来細胞株が誘導されるのか観察した。
実施例1-1と同様な方法でトウモロコシ種子を発芽させ、発芽させた植物体の根元から静止中心を含有した切片体を取得した。その後、前記実施例1-2と同様な方法で2、4−D、CPA、IAA、IBA、NAA、及びピクロラムを各々含む培地で切片体を培養して、静止中心由来細胞株が誘導されるのか観察した。
その結果、図4に示したように、トウモロコシの静止中心含有切片体を培養した場合、イネの静止中心含有根元切片体を誘導した場合と同様に2、4−Dを含んだ培地の場合、細胞株誘導が観察されたが、2、4−Dを除いた他のオーキシン類の場合、接種後、細胞が誘導されずに切片体から不定根が発生した。図4において、Aは2、4−Dを含んで培養させたもので、BはCPA、CはIAA、DはIBA、EはNAA、Fはピクロラムを含んで培養させたものである。
従って、イネ以外の静止中心を含有する植物でも2、4−D特異的に静止中心由来細胞株を誘導できることを確認した。
[実施例3]イネの静止中心由来細胞株の特性観察
3-1:長期間培養時形態学的変化観察
前記実施例1において分離した静止中心由来細胞株を実施例1-2の細胞株誘導工程と同じ組成の培養培地、即ち、2mg/Lの2、4−Dが含まれたN6培地に接種して増殖させた。そして、増殖4週及び16週後に増殖した各静止中心細胞を観察した。また、対照群である静止中心以外根元組織由来細胞株も同様な方法で増殖させた後に細胞の形態学的変化を観察した。
3-1:長期間培養時形態学的変化観察
前記実施例1において分離した静止中心由来細胞株を実施例1-2の細胞株誘導工程と同じ組成の培養培地、即ち、2mg/Lの2、4−Dが含まれたN6培地に接種して増殖させた。そして、増殖4週及び16週後に増殖した各静止中心細胞を観察した。また、対照群である静止中心以外根元組織由来細胞株も同様な方法で増殖させた後に細胞の形態学的変化を観察した。
その結果、図5に示したように、根元組織由来細胞株で培養4週(A)及び培養16週経過後(A以外の写真)、形態的変異を観察した。培養16週経過後には内部細胞塊にいくつかの局所的な分化が観察され、特に不定根発達が顕著であることが認められた。
一方、図6に示したように、静止中心由来細胞株を培養した時は培養4週(A)及び16週(B)経過後にも形態的変異が発生しなかった。
従って、静止中心以外の根元組織由来細胞株は時間経過に伴って急激な形態的変異を示すが、静止中心由来細胞株は形態的な安全性を示すことが確認できた。前記のように、本発明による静止中心由来細胞株は、単細胞起源の細胞株で長期間培養時安定的に変異なしで維持され、収率が高いと共に物質生産能力が安定した細胞株を選抜するのに好適である。
一方、分離した静止中心由来細胞株は形態学的に大きい核を有しており、図7Aに示されたように細胞株自体の大きさが約10〜20μmであるが、核の大きさは約2〜4μmであった。一方、根元組織由来細胞株は図7Bに示したように、核の大きさが静止中心由来細胞株と比べて、非常に小さいことが明らかになった。
3-2:懸濁培養時細胞凝集有無観察
植物細胞は微生物細胞とは異なって単細胞で培養されずに細胞塊形態で培養され、数個〜数百個が培養される。このような細胞凝集は細胞塊の内部と外部との間の環境的な差を誘発し、これはすぐ細胞増殖と有用物質生産に変動をもたらす。従って、静止中心由来細胞株と静止中心以外根元組織由来細胞株の懸濁培養時細胞凝集有無を観察した。
その結果、図8及び図9に示したように、静止中心以外根元組織由来細胞株は数百個の細胞が集まって塊状で培養されるが、静止中心細胞株は単細胞で培養されることが確認できた。図8は静止中心以外根元組織由来細胞株(a)と静止中心由来細胞株(b)の細胞レベルを示した写真で、図9は静止中心以外根元組織由来細胞株及び静止中心由来細胞株の凝集率を示したグラフである。
植物細胞は微生物細胞とは異なって単細胞で培養されずに細胞塊形態で培養され、数個〜数百個が培養される。このような細胞凝集は細胞塊の内部と外部との間の環境的な差を誘発し、これはすぐ細胞増殖と有用物質生産に変動をもたらす。従って、静止中心由来細胞株と静止中心以外根元組織由来細胞株の懸濁培養時細胞凝集有無を観察した。
その結果、図8及び図9に示したように、静止中心以外根元組織由来細胞株は数百個の細胞が集まって塊状で培養されるが、静止中心細胞株は単細胞で培養されることが確認できた。図8は静止中心以外根元組織由来細胞株(a)と静止中心由来細胞株(b)の細胞レベルを示した写真で、図9は静止中心以外根元組織由来細胞株及び静止中心由来細胞株の凝集率を示したグラフである。
3-3:凍結保存時生存率実験
細胞株の凍結保存技術は原料を安定的に供給して実質的なマスター細胞銀行(master cell bank)を構築するために必須の方法である。凍結保存技術は動物細胞では普遍的に広く使われるが、植物細胞の場合凍結保存後生存率が低く、適用範囲が限られていていることが知られている。それで、下記のように、本発明の静止中心から取得した細胞の凍結保存生存率をテストした。
細胞株の凍結保存技術は原料を安定的に供給して実質的なマスター細胞銀行(master cell bank)を構築するために必須の方法である。凍結保存技術は動物細胞では普遍的に広く使われるが、植物細胞の場合凍結保存後生存率が低く、適用範囲が限られていていることが知られている。それで、下記のように、本発明の静止中心から取得した細胞の凍結保存生存率をテストした。
実施例3-2の静止中心由来細胞株を接種して、6日から7日間培養した懸濁培養物を室温で0.16Mのマンニトル(mannitol)が添加された培地に3日間予備培養した後、4℃で3時間低温処理した。低温処理された細胞を回収した後、40%エチレングリコール(ethylene glycol/sigma,USA)と30%ソルビトール(sorbitol/DUCHEFA,The Netherlands)が含まれた培地を含むcryovial(Duran,USA)に移して4℃で3分間培養した。その後、凍結保存剤で処理した培養細胞を液体窒素に浸漬して冷凍させた。その後、解凍のために液体窒素に10分以上維持させた培養細胞を取り出して、40℃水槽に入れて1〜2分間放置した。細胞再生長のために細胞を含む濾過物を0.5Mソルビトールが添加された培地上に適用して、30分間室温で安定化させた。その次に、0.1Mソルビトールが含まれた培地に24時間、ソルビトールが含まれていない培地で24時間、再度ソルビトールが含まれてない培地で24時間培養した後、細胞生存率を観察した。
その結果、図10及び図11に示したように、根元組織由来細胞株は10%未満の生存率を示したが、本発明の静止中心由来細胞株は約85%以上の生存率を示した。図10は凍結保存後、Evan's Blue染色を通して、静止中心以外根元組織由来細胞株(a)及び静止中心由来細胞株(b)の生存率観察した写真であり、図11はこれを示したグラフである。
従って、通常の植物細胞は凍結時生存率が低いため、凍結保存の方法では細胞株を保管できなかったが、本発明の静止中心から取得した細胞株は凍結保存が可能になることが確認できた。従って、静止中心由来細胞株は長期保存に望ましい形態であることが確認できた。
以上説明したように、本発明による方法で分離した静止中心由来の均質な細胞株は、発生及び遺伝学的起源の研究ツールとして有効であると共に、植物幹細胞生物学の発展に役立つ。一方、本発明による静止中心由来細胞株は、長期間形態的変異なしに安定的に維持され、懸濁培養時単細胞状態で培養されるため、各種植物有用物質を安定的かつ効率的に生産できると共に、他の植物細胞とは異なって凍結保存時生存率が85%以上で凍結保存方法を利用して、植物細胞銀行の構築を可能にする。即ち、本発明による細胞株は植物細胞銀行として構築されることによって、研究材料の供給をスムーズにし、植物細胞株を利用した研究期間を短縮させられる長所がある。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な技術は単に望ましい実施様態であるだけであり、これによって本発明の範囲が制限されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求範囲及びその等価物によって定義される。
Claims (6)
- 植物の静止中心含有根組織を培養後、分化しない白色組織を回収することを含む、以下の特性を有する静止中心由来細胞株の分離方法:
(a)懸濁培養において単細胞として存在し、
(b)静止中心以外組織由来の細胞株と比べて、大きい核を有する形態学的特徴を示し、
(c)粘液物質で囲まれており、
(d)長期間培養で形態的な変異なしに安定的に維持され、そして
(e)凍結保存時の高い生存率をしめす。 - 前記植物の静止中心含有根組織は無菌処理された植物種子を発芽させて取得したもの、又は植物体の一部から誘導されたカルスから分化した根組織であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記培養は2、4−ジクロロフェノキシ酢酸を含む培地で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 植物の静止中心から誘導されて、以下の特性を有する植物の静止中心由来細胞株:
(a)懸濁培養において単細胞として存在し、
(b)静止中心以外組織由来の細胞株と比べて、大きい核を有する形態学的特徴を示し、
(c)粘液物質で囲まれており、
(d)長期間培養で形態的な変異なしに安定的に維持され、そして
(e)凍結保存時の高い生存率をしめす。 - 前記植物はイネ、トウモロコシ、エンドウ、燕麦、玉ネギ及びシロイヌナズナからなる群より選択されることを特徴とする請求項4に記載の細胞株。
- 請求項4または請求項5に記載の植物の静止中心由来細胞株を凍結することを含む植物細胞株の保存方法。
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