JP2010538183A - 高強度ポリエチレン繊維の製造方法及び高強度ポリエチレン繊維 - Google Patents
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Abstract
【選択図】図1
Description
本出願は、2008年7月8日に提出された米国非仮特許出願第12/169,300号の優先権を主張し、その内容はすべて、ここで言及することにより本明細書に包含される。
本発明は、延伸性に優れ、より高い強度及びより高い弾性率を有する生産性の高い高強度ポリエチレン繊維の製造方法、及びその方法によって得られた高強度ポリエチレン繊維に関する。
[1](1)超高分子量ポリエチレンの溶媒に、化学的に表面修飾されたカーボンナノファイバーを分散させる工程と、
(2)前記工程(1)で得られた分散液に前記ポリエチレンを混合させ、ポリエチレン濃度が0.5重量%以上50重量%未満である、ポリエチレン、前記修飾カーボンナノファイバー及び溶媒からなる混合ドープを作製する工程と、
(3)前記工程(2)で得られたドープを口金から押出し、冷却させた後、前記ドープを、0.005s−1以上0.5s−1以下の変形速度で、フィラメント糸条に延伸する工程と
を含む、高強度ポリエチレン繊維の製造方法。
[2]前記表面修飾カーボンナノファイバーを作製する工程をさらに含み、該工程が、
(4)カーボンナノファイバーを酸化させることにより、カーボンナノファイバー表面にカルボキシル基を導入し、
(5)末端にアミンを含むアルキル鎖を前記(4)のカルボキシル基と反応させて、カーボンナノファイバー表面にアルキル鎖を導入すること
を含む、上記[1]に記載の方法。
[3]前記表面修飾カーボンナノファイバーがアルキル鎖で修飾されたカーボンナノファイバーであり、超高分子量ポリエチレンの極限粘度が5dL/g〜40dL/gである、上記[1]に記載の方法。
[4]前記カーボンナノファイバーの含有量が0.05wt%〜10wt%である上記[3]に記載の方法。
[5]前記修飾カーボンナノファイバー中に占めるアルキル鎖の重量分率が、8〜20%である、上記[3]に記載の方法。
[6]前記修飾カーボンナノファイバーにおけるアルキル鎖が、炭素数8以上の直鎖アルキルである、上記[3]に記載の方法。
[7]アルキル鎖が炭素数18のオクタデシル鎖である、上記[6]に記載の方法。
[8]上記[1]に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
[9]上記[2]に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
[10]上記[3]に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
[11]上記[4]に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
[12]上記[5]に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
[13]上記[6]に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
[14]上記[7]に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
変形速度(s−1)=(1―1/延伸倍率)延伸速度/加熱区間長さ
である。また、所望の強度の繊維を得るためには、繊維の延伸倍率は10倍以上、好ましくは12倍以上、さらに好ましくは15倍以上が推奨される。
本発明における強度は、オリエンティック社製「テンシロン」を用い、試料長100mm(チャック間長さ)、伸長速度100%/分の条件で歪−応力曲線を雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で測定し、破断点での応力と伸びから強度(cN/dTex)を計算して求めた。また曲線の原点付近の最大勾配を与える接線から弾性率(cN/dTex)を計算して求めた。尚、各値は10回の測定値の平均値を使用した。
ポリエチレン繊維の延伸中におけるX線構造解析は、米国ブルックヘブン国立研究所 (Upton,NY,USA)内にあるシンクロトロン光源のX27Cビームラインにて実施した。間隙2mm、長さ30mmのスリットヒーターを有する延伸機を、間隙の間の、スリットヒーターの中心部をX線が通過するように設置した。ヒーターの間隙に通糸し、延伸中の繊維にX線が当たるように延伸機の位置を微調整した後、X線ディテクターとしてMar−CCD2次元X線検知器(Mar USA,Inc)を用いて、X線回折像を撮影した。波長
本発明における強度は、オリエンティック社製「テンシロン」を用い、試料長100mm(チャック間長さ)、伸長速度100%/分の条件で歪−応力曲線を雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で測定し、破断点での応力と伸びから強度(cN/dTex)を計算して求めた。また曲線の原点付近の最大勾配を与える接線から弾性率(cN/dTex)を計算して求めた。尚、各値は10回の測定値の平均値を使用した。
ポリエチレン繊維の延伸中におけるX線構造解析は、米国ブルックヘブン国立研究所(Upton,NY,USA)内にあるシンクロトロン光源のX27Cビームラインにて実施した。間隙2mm、長さ30mmのスリットヒーターを有する延伸機を、間隙の間の、スリットヒーターの中心部をX線が通過するように設置した。ヒーターの間隙に通糸し、延伸中の繊維にX線が当たるように延伸機の位置を微調整した後、X線ディテクターとしてMar−CCD2次元X線検知器(Mar USA,Inc)を用いて、X線回折像を撮影した。なおX線の波長は0.1371nm、繊維−X線検知器間距離は約10cm(実験によって異なる)とした。
カーボンナノファイバー(CNF)表面への酸性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシル基)の生成は、混酸(硫酸と硝酸の混合物)を用いて行なった。カーボンナノファイバー0.5g(Pyrograf PR−24−HHT)、濃硫酸(95%、シグマ・アルドリッチ社)37.5mL、濃硝酸(シグマ・アルドリッチ社)12.5mLの混合物を10分間超音波照射してCNFを分散させたのち、60℃で24時間攪拌した。CNF懸濁液を純水で希釈し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過した後、純水およびメタノールで洗浄し、70℃の真空中で一晩乾燥させて酸化CNFを得た。
60℃における攪拌時間を18時間とした以外は実施例1と同様にして、酸化CNFを得た。
60℃における攪拌時間を10時間とした以外は実施例1と同様にして、酸化CNFを得た。
60℃における攪拌時間を6時間とした以外は実施例1と同様にして、酸化CNFを得た。
実施例1で得られた酸化カーボンナノファイバー0.4gと、ジメチルスルホキシド(シグマ・アルドリッチ社)8mL、1−オクタデシルアミン(シグマ・アルドリッチ社)0.4gの混合物に10分間超音波照射させた後、1−オクタデシルアミンを1.8g追加し、180℃で24時間攪拌した。これを孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過した後、エタノール/クロロホルム混合溶媒(体積比2/1)で洗浄し、70℃の真空中で一晩乾燥させてm−CNFを得た。
酸化カーボンナノファイバーとして実施例2で得られたものを使用したこと以外は、実施例5と同様にして、m−CNFを得た。
酸化カーボンナノファイバーとして実施例3で得られたものを使用したこと以外は、実施例5と同様にして、m−CNFを得た。
酸化カーボンナノファイバーとして実施例4で得られたものを使用したこと以外は、実施例5と同様にして、m−CNFを得た。
実施例5で得られたm−CNF0.018gを、デカヒドロナフタレン(シス体、トランス体の混合物)291gに投入し、1時間超音波照射を行ない、表面修飾CNFをデカヒドロナフタレンに分散させた。この分散溶媒に、極限粘度が21.0dL/gの超高分子量ポリエチレンを8.982g、酸化防止剤としてBHTをポリエチレンに対して1重量%投入し、混合してスラリー状液体を形成させた。該物質を分散させながら、160℃の温度に設定した2本の撹拌翼を備えたミキサー型の混練機で溶解しゲル状物質を形成させた。該ゲル状物質を冷却することなく、170℃に設定したシリンダーに充填し、170℃に設定した、直径0.8mmのホールを1つ有する口金より0.8g/分の吐出量で押し出した。吐出したドープフィラメントを7cmのエアギャップを介した後に水浴中に投入させ、冷却し、溶媒を除去することなしに紡糸速度20m/分でドープフィラメントを巻き取った。ついで、該ドープフィラメントを40℃、24時間の条件で真空乾燥させ、溶媒を除去した。得られた繊維を80℃に設定したスリット式延伸機を用いて、0.1s−1の変形速度で、4倍の延伸比で延伸し延伸糸を巻き取った。ついで、該延伸糸を143℃、0.1s−1の変形速度で更に延伸し、糸が切れる直前の延伸倍率を測定し、その値に4を乗じた数値を最大延伸倍率とした。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。
実施例9において、延伸時の変形速度を0.01s−1としたこと以外は、実施例9と同様にしてポリエチレン繊維を作製した。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。
実施例6で得られたm−CNFを使用すること以外は、実施例9と同様にしてポリエチレン繊維を作製した。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。
実施例7で得られたm−CNFを使用すること以外は、実施例9と同様にしてポリエチレン繊維を作製した。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。
実施例8で得られたm−CNFを使用すること以外は、実施例9と同様にしてポリエチレン繊維を作製した。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。
表面修飾を施さないCNFを使用すること以外は、実施例9と同様にしてポリエチレン繊維を作製した。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。
m−CNFを使用しないこと以外は実施例9と同様にして、ポリエチレン繊維を作製した。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。
実施例9において、延伸時の変形速度を0.001s−1としたこと以外は、実施例9と同様にしてポリエチレン繊維を作製した。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。
実施例9において、延伸時の変形速度を0.8s−1としたこと以外は、実施例9と同様にしてポリエチレン繊維を作製した。最大延伸倍率および得られたポリエチレン繊維の諸物性を表1に示す。繊維を延伸できなかったので、最大延伸倍率は得られなかった。
実施例5で得られたm−CNF0.018gを、デカヒドロナフタレン(シス体、トランス体の混合物)291gに投入し、1時間超音波照射を行ない、表面修飾CNFをデカヒドロナフタレンに分散させた。この分散溶媒に、極限粘度が21.0dL/gの超高分子量ポリエチレンを8.982g投入し、混合してスラリー状液体を形成させた。該物質を分散させながら、160℃の温度に設定した2本の撹拌翼を備えたミキサー型の混練機で溶解しゲル状物質を形成させた。該ゲル状物質を冷却することなく、170℃に設定したシリンダーに充填し、170℃に設定した、直径0.8mmのホールを1つ有する口金より0.8g/分の吐出量で押し出した。吐出したドープフィラメントを7cmのエアギャップを介した後に水浴中に投入、冷却し、溶媒を除去することなしに紡糸速度20m/分でドープフィラメントを巻き取った。ついで、該ドープフィラメントを40℃、24時間の条件で真空乾燥させ、溶媒を除去した。得られた繊維を80℃に設定したスリット式延伸機を用いて、0.1s−1の変形速度で、4倍の延伸比で延伸し延伸糸を巻き取った。これを中間延伸糸Aとする。
中間延伸糸Aを143℃において、0.1s−1の変形速度で、2倍、3倍、4倍の延伸比で延伸し、延伸オーブン(スリットヒーター)中間部における広角X線回折パターンをそれぞれ撮影した。回折パターンを赤道線から±5°の範囲で積分した回折プロファイルからバックグラウンドを差し引き、次いでカーブフィッティングによって各結晶ピークを分離し、ピーク面積を求めた。各延伸比における六方晶の分率を、表面修飾アルキル鎖含量に対する依存性として図2に示す。
実施例7で得られたm−CNFを使用すること以外は、実施例13と同様にしてポリエチレン繊維の中間延伸糸を作製した。これを中間延伸糸Bとする。
中間延伸糸Bを143℃において2倍、3倍、4倍の延伸比で延伸し、延伸オーブン(スリットヒーター)中間部における広角X線回折パターンをそれぞれ撮影した。回折パターンを赤道線から±5°の範囲で積分した回折プロファイルからバックグラウンドを差し引き、次いでカーブフィッティングによって各結晶ピークを分離し、ピーク面積を求めた。各延伸比における六方晶の分率を、表面修飾アルキル鎖含量に対する依存性として図2に示す。
実施例8で得られたm−CNFを使用すること以外は実施例13と同様にしてポリエチレン繊維の中間延伸糸を作製した。これを中間延伸糸Cとする。
中間延伸糸Cを143℃において2倍、3倍、4倍の延伸比で延伸し、延伸オーブン(スリットヒーター)中間部における広角X線回折パターンをそれぞれ撮影した。回折パターンを赤道線から±5°の範囲で積分した回折プロファイルからバックグラウンドを差し引き、次いでカーブフィッティングによって各結晶ピークを分離し、ピーク面積を求めた。各延伸比における六方晶の分率を、表面修飾アルキル鎖含量に対する依存性として図2に示す。
表面修飾を施さないCNFを使用すること以外は、実施例13と同様にしてポリエチレン繊維の中間延伸糸を作製した。これを中間延伸糸Dとする。
中間延伸糸Dを143℃において2倍、3倍、4倍の延伸比で延伸し、延伸オーブン(スリットヒーター)中間部における広角X線回折パターンをそれぞれ撮影した。回折パターンを赤道線から±5°の範囲で積分した回折プロファイルからバックグラウンドを差し引き、次いでカーブフィッティングによって各結晶ピークを分離し、ピーク面積を求めた。各延伸比における六方晶の分率を、表面修飾アルキル鎖含量に対する依存性として図2に示す。
m−CNFを使用しないこと以外は、実施例13と同様にしてポリエチレン繊維の中間延伸糸を作製した。これを中間延伸糸Eとする。
中間延伸糸Eを143℃において2倍、3倍、4倍の延伸比で延伸し、延伸オーブン(スリットヒーター)中間部における広角X線回折パターンをそれぞれ撮影した。回折パターンを赤道線から±5°の範囲で積分した回折プロファイルからバックグラウンドを差し引き、次いでカーブフィッティングによって各結晶ピークを分離し、ピーク面積を求めた。各延伸比における六方晶の分率を、表面修飾アルキル鎖含量に対する依存性として図2に示す。
Claims (14)
- (1)超高分子量ポリエチレンの溶媒に、化学的に表面が修飾されたカーボンナノファイバーを分散させる工程と、
(2)前記工程(1)で得られた分散液に前記ポリエチレンを混合させ、ポリエチレン濃度が0.5重量%以上50重量%未満である、ポリエチレン、前記修飾カーボンナノファイバー及び溶媒を含む混合ドープを作製する工程と、
(3)前記工程(2)で得られたドープを口金から押出し、冷却させた後、前記ドープを、0.005s−1以上0.5s−1以下の変形速度で、フィラメント糸条に延伸する工程と
を含む、高強度ポリエチレン繊維の製造方法。 - 前記表面修飾カーボンナノファイバーを作製する工程をさらに含み、該工程が、
(4)カーボンナノファイバーを酸化させることにより、カーボンナノファイバー表面にカルボキシル基を導入し、
(5)末端にアミンを含むアルキル鎖を前記(4)のカルボキシル基と反応させて、カーボンナノファイバー表面にアルキル鎖を導入すること
を含む、請求項1に記載の方法。 - 前記表面修飾カーボンナノファイバーがアルキル鎖で修飾されたカーボンナノファイバーであり、超高分子量ポリエチレンの極限粘度が5dL/g〜40dL/gである、請求項1に記載の方法。
- 前記カーボンナノファイバーの含有量が0.05wt%〜10wt%である、請求項3に記載の方法。
- 前記修飾カーボンナノファイバー中に占めるアルキル鎖の重量分率が、8〜20%である請求項3に記載の方法。
- 前記修飾カーボンナノファイバーにおけるアルキル鎖が、炭素数8以上の直鎖アルキルである、請求項3に記載の方法。
- アルキル鎖が炭素数18のオクタデシル鎖である、請求項6に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
- 請求項2に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
- 請求項3に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
- 請求項4に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
- 請求項5に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
- 請求項6に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
- 請求項7に記載の方法で製造されてなる高強度ポリエチレン繊維。
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