JP2010527375A - Gpr12の阻害による認知障害の治療方法 - Google Patents

Gpr12の阻害による認知障害の治療方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、長期記憶形成、海馬依存性認知課題の成績またはGpr12機能を調節する薬剤の能力について、薬剤をスクリーニングする方法を提供する。本発明はまた、Gpr12依存性タンパク質発現を調節することにより、長期記憶形成または海馬依存性認知課題の成績を調節する方法を提供する。本発明はさらに、Gpr12機能を阻害することにより長期記憶形成の障害を治療する方法、Gpr12機能を阻害することにより海馬依存性認知課題の成績における障害を治療する方法を提供する。

Description

(関連出願)
本願は、2007年5月15日に出願された米国仮特許出願番号第60/938,163号の35 U. S. C. §119の下での利益を主張しており、その全内容および実体は参照によって本明細書に援用される。
(発明の分野)
本発明は、Gpr12遺伝子または遺伝子産物の阻害による認知障害の治療方法に関する。
(発明の背景)
ヒトを含む多くの生物が有する特性は、過去の出来事の記憶である。この特性は、何十年も研究されており、多くの派生した問題を説明する多くの情報が現在利用可能である。例えば、2つの記憶の基本型:短期記憶を含む転写非依存性記憶、および長期記憶を含む転写依存性記憶が同定されている。
Gpr12は、オーファンGPCRである。インサイチュハイブリダイゼーションによるGpr12の発現解析によって、Gpr12がマウスCNSで広く発現しており、海馬および視床内の発現が最も高いレベルであることが明らかにされた(Ignatovら、2003, J. Neurosci. 23:907-914)。Gpr12の内因性リガンドは不明である。Gpr12の系統学解析によって、オーファンレセプターGpr3およびGpr6がGpr12に最も近い相同物として明らかにされた。3つのオーファンGPCRを含むサブグループは、Mcr(メラノコルチン様ペプチド)およびEdg(内皮分化)ファミリーのGPCRに最も密接に関連している。このことによって、可能なGpr12のリガンドとして脂質またはペプチドが示される。スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)は、ヘテロ発現系でGpr12を活性化する。SPCは、胚性皮質培養神経細胞Idの分化および成熟を促進する。しかし、Gpr12の内因性リガンドおよび成体CNS中のインビボ機能は分かっていない。
以前の結果によって、Gpr12 は、Gαi依存性機構によってシグナル伝達することが示された。cAMP/PKA経路は、哺乳動物の脳におけるCREB活性および長期記憶を調節する(Abelら、1997, Cell 88:615-626)、(Bourtchouladzeら、1998, Learn Mem. 5:365-374)、(Baradら、1998. Proc. Natl. Acad. Sci USA 95:15020-15025)、(Bourtchouladzeら、2003, Proc. Natl. Acad. Sci USA 100: 10518-10522)。
(発明の概要)
g共役タンパク質レセプターGpr12が哺乳動物の記憶形成の基礎となる細胞事象を媒介する点で重要な役割を果たすことが発見された。本明細書に記載されるように、海馬内のGpr12媒介mRNA輸送が哺乳動物の文脈長期記憶形成に重要であることが発見された。海馬Gpr12機能の破壊または阻害が哺乳動物の転写依存性記憶形成(例えば長期記憶形成)を増強することが発見された。本願は、特にGpr12遺伝子または遺伝子産物の阻害による長期記憶欠陥または認知障害の治療方法に関する。
本発明は、哺乳動物における認知機能を調節する方法を提供する。
一態様において、本発明は、哺乳動物のGpr12活性を調節する有効量の薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む方法に関する。
別の態様において、哺乳動物は成体哺乳動物である。別の態様において、哺乳動物はヒトである。
別の態様において、投与工程により長期記憶形成の調節が生じる。別の態様において、長期記憶形成が増強される。
別の態様において、該方法は長期記憶形成の調節を検出する工程をさらに含む。別の態様において、調節の検出工程は、海馬依存性認知課題の調節の検出である。別の態様において、調節の検出工程は、扁桃体依存性認知課題の調節の検出である。別の態様において、調節の検出工程は、海馬依存性認知課題および扁桃体依存性認知課題の調節の検出である。
特定の態様において、Gpr12活性の調節は、哺乳動物におけるGpr12タンパク質発現の調節を含む。さらなる態様において、投与工程により認知機能の増強が生じる。
別の態様において、該方法は、特定の認知課題の成績における改善を生じるのに十分な条件下で、哺乳動物を訓練する工程をさらに含む。別の態様において、投与工程がない訓練工程だけによって達成される認知課題の成績に対して成績増大が達成される。
別の態様において、訓練は、複数訓練セッションを含む。別の態様において、訓練は、間隔訓練セッションを含む。
別の態様において、薬剤は、各訓練セッションの前および/または各訓練セッション中に投与される。
別の態様において、薬剤は、有効量のGpr12 siRNA分子、有効量の生物学的活性Gpr12アンチセンス断片および/またはGpr12タンパク質に特異的な有効量の抗体の1つ以上を含む。
本発明の別の方法は、(a)Gpr12タンパク質を発現する宿主細胞に目的の薬剤を導入する工程;および(b)Gpr12機能を決定する工程を含み、薬剤が投与されていない(a)の宿主細胞のGpr12機能と比べて(b)で決定されたGpr12機能の差によって、Gpr12機能を調節できるものとして薬剤が同定される方法である。
本発明の別の方法は、(a)Gpr12機能を調節する薬剤を哺乳動物に投与する工程; (b)哺乳動物の長期記憶形成を生じるのに十分な条件下で、工程(a)の哺乳動物および薬剤が投与されていない同じ種類の対照哺乳動物を訓練する工程; (c)工程(b)で訓練された哺乳動物の長期記憶形成を評価する工程;ならびに(d)工程(c)で評価された哺乳動物の長期記憶形成を比較する工程を含み、対照哺乳動物で評価された長期記憶形成に対する薬剤が投与された哺乳動物で評価された長期記憶形成の差によって、長期記憶形成を調節できるものとして薬剤が同定される方法である。
特定の態様において、哺乳動物は成体哺乳動物である。別の特定の態様において、哺乳動物はヒトである。
別の態様において、長期記憶形成は海馬依存性長期記憶形成である。別の態様において、長期記憶形成は扁桃体依存性長期記憶形成である。別の態様において、長期記憶形成は海馬依存性および扁桃体依存性長期記憶形成である。
別の態様において、Gpr12活性の調節は、哺乳動物におけるGpr12タンパク質発現の調節を含む。
別の態様において、訓練は複数訓練セッションを含む。別の態様において、訓練は間隔訓練セッションを含む。
さらに別の態様において、薬剤が、各訓練セッションの前および/または各訓練セッション中に投与される。
別の態様において、薬剤は、有効量のGpr12 siRNA分子、有効量の生物学的活性Gpr12アンチセンス断片および/またはGpr12タンパク質に特異的な有効量の抗体の1つ以上を含む。
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および付属の図面を参照して明らかになる。しかし、本質的な精神および範囲を逸脱することなく、さまざまな変化、変更および置換が本明細書に開示される特定の態様に対して行われてもよいことが理解される。また、図面は本発明の例示態様の例示的および象徴的な提示であることを意図すること、および他の例示されていない態様が本発明の範囲内にあることがさらに理解される。
図1aは、文脈記憶形成に対する試行数の効果を示す棒グラフである。マウスは、CS-US組の増大数で訓練され、4日後に文脈記憶を評価した。図1bは、時間的記憶形成に対する痕跡間隔の効果を示す棒グラフである。マウスは、遅延条件付けと比較して徐々に長い痕跡間隔および音記憶を用いた痕跡恐怖条件付けで訓練された。 図2aは、リアルタイムPCRによって測定されたマウスCNS内のGpr12 mRNAの発現レベルの表である。図2bは、リアルタイムPCRによって測定されたマウスCNS内のGpr12 mRNAの発現レベルの表である。 図3は、Neuro2A細胞におけるsiRNA処理24時間後のGpr12のmRNAレベルの棒グラフである。 図4aは、文脈記憶に対するマウス海馬のGpr12 siRNAの効果の棒グラフである。図4bは、文脈記憶に対するマウス扁桃体のGpr12 siRNAの効果の棒グラフである。 図5は、痕跡恐怖記憶に対するマウス海馬のGpr12 siRNAの効果の棒グラフである。 図6は、注入した海馬についてのノンターゲッティング(A)およびGpr12 siRNA(B)のニッスル染色の写真である。カニューレ挿入部位の背側および腹側の海馬スライスを示す。 図7は、Gpr12 siRNA処理2日および3日後の海馬Gpr12 mRNAレベルの棒グラフである。 図8aは、Gpr12-/-、Gpr12+/-マウスおよびWT対照同腹仔におけるGpr12、Creb1およびGrin1 mRNAレベルのqPCR解析を示す。Gpr12 mRNAは、Gpr12+/-マウスで対照の51%に減少し、ホモ型KOマウスで検出可能でなかった。対照的に、Creb1およびGrin1 mRNAに影響はなかった。図8bは、Gpr12+/-およびWT海馬形態の全体の解析(クレシルバイオレット染色)を示す。Gpr12+/-マウスで明らかな異常は観察されなかった。 図9aは、Gpr12+/-マウス(n=9)およびWT対照(n=8)におけるオープンフィールド中の一般運動および探索活動、特に水平活動(歩行)を示す。図9bは、Gpr12+/-マウス(n=9)およびWT対照(n=8)におけるオープンフィールド中の一般運動および探索活動、特に垂直活動(立ち上がり)を示す。 図10は、物体認識記憶の長期保持が訓練時間に依存する、WTマウス(n=19)におけるNOR記憶を示す。 図11aは、Gpr12+/-マウス(n=15)およびWT対照(n=16)におけるNOR記憶の24時間保持を示す。図11bは、Gpr12+/-マウスおよびWT対照における試験中の探索時間を示す。 図12aは、Gpr12+/-マウス(n=6)およびWT対照(n=8)におけるNOR記憶の3時間保持を示す。図12bは、試験中の探索時間を示す。
(発明の詳細な説明)
本発明は、Gpr12の阻害が長期記憶形成を促進することができるという発見に関するものである。
転写非依存性記憶としては、短期記憶、中間(または中期)記憶および(ハエの)麻酔耐性記憶などの様々な「記憶段階」が挙げられる。これらの形態に共通するものは、RNA転写の薬理学的阻害剤がこれらの記憶を阻害しないことである。転写依存性記憶は、通常、長期記憶と称され、RNA合成の阻害剤は長期記憶の発生を阻害する。
この特定の実験経験の記憶形成は、2つの一般形態:転写非依存性形態および転写依存性形態で存在することができる。前者は、短期記憶および中間(または中期)記憶などの様々な「記憶段階」を含む。これらの形態に共通するものは、RNA転写の薬理学的阻害剤がこれらの記憶を阻害しないことである。後者の形態は、通常、長期記憶と称され、RNA合成の阻害剤が長期記憶の発生を阻害する。
g共役タンパク質レセプターGpr12が哺乳動物の記憶形成の基礎となる細胞事象を媒介する点で重要な役割を果たしていることが発見された。本明細書に記載されるように、海馬内のGpr12媒介mRNA輸送が哺乳動物の文脈長期記憶形成に重要であることが発見された。海馬Gpr12機能の破壊または阻害が哺乳動物の転写依存性記憶形成(例えば長期記憶形成)を増強することが発見された。本発明の方向は、Gpr12遺伝子または遺伝子産物の阻害による長期記憶欠陥または認知障害の治療方法に関する。
特に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明の属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
当業者は、本明細書に記載されるものと類似から同等の多くの方法および材料を認識するが、これらは本発明の実施に使用することができる。実際、本発明は、本明細書に記載される方法および材料に限定されない。本発明の目的のために、以下の用語を定義する。
定義
用語「動物」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物および他の動物、脊椎動物および無脊椎動物(例えば、鳥類、魚類、爬虫類、昆虫(例えば、ショウジョウバエ種)、アメフラシ)を含む。用語「哺乳動物」および「哺乳類」は、本明細書で使用される場合、子供に授乳するおよび子供を生む(真獣類もしくは胎盤哺乳類)または卵を産む(後獣類もしくは非胎盤哺乳類)、単孔類、有袋類および胎盤類などの任意の脊椎動物のことをいう。哺乳動物種の例としては、ヒトおよび他の霊長類(例えば、サル、チンパンジー)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、モルモット)および反芻動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ)が挙げられる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
本明細書で使用される場合、「対照動物」または「正常動物」は、動物の転写依存性記憶形成を誘導するのに十分な条件下で訓練される動物と同じ種類の動物およびそうでない場合は同等の動物(例えば、同様の年齢、性別)である。
「Gpr12機能」は、Gpr12の生物学的活性を意味する。生物学的活性は、生物学的機能または作用を意味することが理解される。
用語「Gpr12阻害剤」または「GPR12阻害剤化合物もしくは阻害剤」は、Gpr12ポリペプチドのアンタゴニストとして作用することができ、かつGpr12ポリペプチドの機能を直接または間接的のいずれかで阻害することができる化合物を意味する。かかる化合物としては、Gpr12遺伝子に特異的な干渉RNA(siRNA)、Gpr12遺伝子に特異的なアンチセンスヌクレオチド、Gpr12タンパク質に特異的な抗体、およびペプチドなどの低分子が挙げられる。
マウスおよびヒトのGpr12遺伝子およびタンパク質配列を表1に示す。



様々な種で、長期記憶(LTM)は、2つの主な生物学的性質によって定義される。第一に、長期記憶形成には、新規タンパク質の合成が必要とされる。第二に、長期記憶形成はcAMP応答性転写を伴い、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)ファミリー転写因子によって媒介される。
「認知障害、欠陥または状態」は、老化関連記憶障害、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病(舞踏病)、他の老化性痴呆)、精神病(例えば、鬱、統合失調症、自閉症、注意欠陥障害)、外傷依存性機能低下(例えば、脳血管疾患(例えば、卒中、虚血)、脳腫瘍、頭部または脳傷害)、遺伝的欠陥(例えば、ルービンスタイン-テービ症候群、ダウン症候群、アンゲルマン症候群、神経線維腫症、コフィン-ローリー症候群、レット症候群、筋緊張性ジストロフィー、脆弱X症候群(例えば、脆弱X-1、脆弱X-2)、ウイリアム症候群)および学習不能を含む。
正式な認知訓練プロトコルは公知であり、当該技術分野で容易に利用可能である。例えば、Karni, A.およびSagi, D., "Where practice makes perfect in text discrimination: evidence for primary visual cortex plasticity", Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4966-4970 (1991); Karni, A.およびSagi, D., "The time course of learning a visual skill", Nature, 365:250-252 (1993); Kramer, A. F.ら、"Task coordination and aging: explorations of executive control processes in the task switching paradigm", Acta Psychol. (Amst), 101:339-378 (1999); Kramer, A. F.ら、"Training for executive control: Task coordination strategies and aging", In Aging and Skilled Performance: Advances In Theory and Applications, W. Rogersら、編(Hillsdale, NJ.: Erlbaum) (1999); Rider, R. A.およびAbdulahad, D. T., "Effects of massed versus distributed practice on gross and fine motor proficiency of educable mentally handicapped adolescents", Percept. Mot. Skills, 73:219-224 (1991); Willis, S. L.およびSchaie, K. W., "Training the elderly on the ability factors of spatial orientation and inductive reasoning", Psychol. Aging, 1 :239-247 (1986); Willis, S. L.およびNesselroade, C. S., "Long-term effects of fluid ability training in old-old age", Develop. Psychol., 26:905-910 (1990); Wek, S. R.およびHusak, W. S.. "Distributed and massed practice effects on motor performance and learning of autistic children", Percept. Mot. Skills, 68:107-113 (1989): Verhaehen, P.ら、"Improving memory performance in the aged through mnemonic training: a meta-analytic study", Psychol. Aging, 7:242-251 (1992); Verhaeghen, P.およびSalthouse. T. A., "Meta-analyses of age-cognition relations in adulthood: estimates of linear and nonlinear age effects and structural models", Psychol. Bull., 122:231-249 (1997); Dean, C. M.ら、"Task-related circuit training improves performance of locomotor tasks in chronic stroke: a randomized, controlled pilot trial", Arch. Phys. Med. Rehabil., 81 :409-417 (2000); Greener, J.ら、"Speech and language therapy for aphasia following stroke", Cochrane Database Syst. Rev., CD000425 (2000); Hummelsheim, H.およびEickhof, C., "Repetitive sensorimotor training for arm and hand in a patient with locked-in syndrome", Scand. J. Rehabil. Med., 31 :250-256 (1999); Johansson, B. B., "Brain plasticity and stroke rehabilitation. The Willis lecture", Stroke, 31 :223-230 (2000); Ko Ko, C., "Effectiveness of rehabilitation for multiple sclerosis", Clin. Rehabil., 13 (Suppl.1):33-41 (1999); Lange. G.ら、"Organizational strategy influence on visual memory performance after stroke: cortical/subcortical and left/right hemisphere contrasts", Arch. Phys. Med. Rehabil., 81:89-94 (2000); Liepert, J.ら、"Treatment-induced cortical reorganization after stroke in humans", Stroke, 31 :1210-1216 (2000); Lotery, A. J.ら、"Correctable visual impairment in stroke rehabilitation patients", Age Ageing, 29:221-222 (2000); Majid, M. J.ら、"Cognitive rehabilitation for memory deficits following stroke" (Cochrane review), Cochrane Database Syst. Rev., CD002293 (2000); Merzenich, M.ら、"Cortical plasticity underlying perceptual, motor, and cognitive skill development: implications for neurorehabilitation", Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol., 61 :1-8 (1996); Merzenich, M. M.ら、"Temporal processing deficits of language-learning impaired children ameliorated by training", Science, 271 :77-81 (1996); Murphy, E., "Stroke rehabilitation", J. R. Coll. Physicians Lond., 33:466-468 (1999); Nagarajan, S. S.ら、"Speech modifications algorithms used for training language learning-impaired children", IEEE Trans. Rehabil. Eng., 6:257-268. (1998); Oddone, E.ら、"Quality Enhancement Research Initiative in stroke: prevention, treatment, and rehabilitation", Med. Care 38:192-1104 (2000); Rice-Oxley, M.およびTurner-Stokes, L., "Effectiveness of brain injury rehabilitation", Clin. Rehabil., 13(Suppl1):7-24 (1999); Tallal, P.ら、"Language learning impairments: integrating basic science, technology, and remediation", Exp. Brain Res., 123:210-219 (1998); Tallal, P.ら、"Language comprehension in language-learning impaired children improved with acoustically modified speech", Science, 271 :81-84 (1996): Wingfield., A.ら、"Regaining lost time: adult aging and the effect of time restoration on recall of time-compressed speech", Psychol. Aging, 14:380-389(1999)を参照、これらの参考文献は参照によってその全体が本明細書に援用される。
訓練は1つまたは複数の訓練セッションを含むことができ、目的の認知課題の成績における改善を生じるのに適切な訓練である。例えば、言語獲得における改善が所望される場合、訓練は言語獲得に焦点が当てられる。楽器の演奏を学習する能力における改善が所望される場合、訓練は楽器の演奏の学習に焦点が当てられる。特定の運動技能における改善が所望される場合、訓練は特定の運動技能の獲得に焦点が当てられる。目的の特定の認知課題を適切な訓練と適合する。
「複数訓練セッション」は、2つ以上の訓練セッションを意味する。Gpr12阻害剤は1つ以上の訓練セッション前、中または後に投与することができる。特定の態様において、Gpr12阻害剤は、各訓練セッション前および中に投与される。「訓練」は、認知訓練を意味する。
「調節」は、遺伝子の発現、または1つ以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子もしくは同等のRNA分子のレベル、または1つ以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が、発現、レベル、または活性がモジュレーターの非存在下で観察されるものより高いまたは低いように、上方調節または下方調節されることを意味する。例えば、用語「調節する」は、「阻害する」ことを意味するが、語「調節する」の使用は、この定義に限定されない。
「阻害する」、「下方調節する」、または「減少する」は、遺伝子の発現、または1つ以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子もしくは同等のRNA分子のレベル、または1つ以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が、本発明の核酸分子(例えば、siRNA)の非存在下で観察されるものより低く減少することを意味する。一態様において、siRNA分子を用いた阻害、下方調節または減少は、不活性もしくは弱めたsiRNA分子の存在下で観察されるレベルより低い。別の態様において、siRNAを用いた阻害、下方調節、または減少は、例えば、スクランブル配列もしくはミスマッチを有するsiRNA分子の存在下で観察されるレベルより低い。別の態様において、siRNA分子を用いた阻害、下方調節または減少は、標的RNA分子または同等のRNA分子の発現レベルが、siRNA分子の非存在下のレベルと比べて、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、または70%減少することを意味する。
「増強する」または「増強」は、正常、生化学もしくは生理学の作用または効果と比べて、強化する、増大する、改善するまたは高くするもしくは良好にする能力を意味する。例えば、長期記憶形成の増強とは、動物の正常な長期記憶形成と比べて、動物の長期記憶形成を強化するまたは増大する能力のことをいう。結果として、長期記憶獲得は、より早くまたはより良好に保持される。認知課題の成績の増強とは、動物による認知課題の正常成績と比べて、動物による特定の認知課題の成績を強化するまたは改善する能力のことをいう。
用語「海馬依存性認知課題」とは、脳の海馬領域と関連する認知課題のことをいう。
用語「扁桃体依存性認知課題」とは、脳の扁桃体領域と関連する認知課題のことをいう。
用語「標的遺伝子」または「遺伝子」は、RNAをコードする核酸、例えば、限定されないが、ポリペプチドをコードする構造遺伝子を含む核酸配列を意味する。標的遺伝子は、細胞に由来する遺伝子または内因性遺伝子であり得る。「標的核酸」は、発現または活性が調節される任意の核酸配列を意味する。標的核酸は、DNAまたはRNAであり得る。
「相同配列」は、遺伝子、遺伝子転写物および/またはノンコーディングポリヌクレオチドなどの1つ以上のポリヌクレオチド配列が共有するヌクレオチド配列を意味する。例えば、相同配列は、関連するが異なるタンパク質、例えば遺伝子ファミリーの異なる一員、異なるタンパク質エピトープ、異なるタンパク質アイソフォームをコードする2つ以上の遺伝子またはサイトカインおよびその対応するレセプターなどの完全に多様な遺伝子が共有するヌクレオチド配列であり得る。相同配列は、ノンコーディングDNAもしくはRNA、調節配列、イントロン、および転写制御もしくは調節の部位などの2つ以上のノンコーディングポリヌクレオチドが共有するヌクレオチド配列であり得る。相同配列はまた、1つより多くのポリヌクレオチド配列が共有する保存配列領域を含むことができる。相同性は、完全な相同性(例えば、100%)である必要はなく、部分相同配列も本発明によって考えられる(例えば、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%など)。
「保存配列領域」は、ポリヌクレオチド中の1つ以上の領域のヌクレオチド配列が、世代間で、またはある生物システム、被験体もしくは生物から別の生物システム、被験体、もしくは生物へと有意に変化しないことを意味する。ポリヌクレオチドは、コーディングおよびノンコーディングDNAおよびRNAの両方を含み得る。
「センス領域」は、siRNA分子のアンチセンス領域に相補性を有するsiRNA分子のヌクレオチド配列を意味する。また、siRNA分子のセンス領域は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含み得る。
「アンチセンス領域」は、標的核酸配列に相補性を有するsiRNA分子のヌクレオチド配列を意味する。また、siRNA分子のアンチセンス領域は、siRNA分子のセンス領域と相補性を有する核酸配列を任意に含み得る。
「相補性」は、核酸が従来のワトソンクリックまたは他の従来でない種類のいずれかによって別の核酸配列と(1つまたは複数の)水素結合を形成することができることを意味する。本発明の核酸分子に言及する際、核酸分子とその相補的配列の結合自由エネルギーは、核酸の関連する機能、例えばRNAi活性が進むことを可能にするのに十分である。核酸分子の結合自由エネルギーの測定は、当該技術分野で周知である(例えば、Turnerら、1987, CSH Symp. Quant. Biol. LII pp. 123-133; Frierら、1986, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 83:9373-9377; Turnerら、1987, J. Am. Chem. Soc. 109:3783-3785参照)。相補性の割合は、第二核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン-クリック塩基対形成)を形成することができる核酸分子中の連続残基の割合を示す(例えば、10個のヌクレオチドを有する第二核酸配列に対形成した第一オリゴヌクレオチド中の全部で10個のヌクレオチドのうち5、6、7、8、9、または10個のヌクレオチドは、それぞれ50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補性を示す)。「完全な相補性」は、核酸配列の連続残基全てが第二核酸配列中の同数の連続残基と水素結合することを意味する。
「RNA」は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノース部分の2’位でヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。該用語としては、二重鎖RNA、単鎖RNA、単離RNA、例えば部分精製RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組み換え生成RNA、および1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然RNAと異なる改変RNAが挙げられる。かかる改変としては、例えばsiRNAの(1つまたは複数の)末端への、または例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドの内部への非ヌクレオチド物質の付加を挙げることができる。また、本発明のRNA分子中のヌクレオチドは、非天然ヌクレオチドまたは化学合成ヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドを含むことができる。これらの改変RNAは、アナログまたは天然RNAのアナログと呼ばれる場合がある。
用語「ホスホロチオエート」は、本明細書で使用される場合、RNA分子中のヌクレオチド間結合のことをいい、2つのヌクレオチド間の少なくとも1つの結合は硫黄原子を含む。従って、用語ホスホロチオエートとは、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合とホスホロジチオエートヌクレオチド間結合の両方のことをいう。
用語「ホスホノアセテート結合」は、本明細書で使用される場合、RNA分子中のヌクレオチド間結合のことをいい、2つのヌクレオチド間の少なくとも1つの結合はアセチル基または保護アセチル基を含む。例えば、Sheehanら、2003 Nucleic Acids Research 31, 4109-4118または米国特許公開第2006/0247194号参照。
用語「チオホスホノアセテート結合」は、本明細書で使用される場合、アセチル基または保護アセチル基および硫黄原子を含む少なくとも1つのヌクレオチド間結合を含むRNA分子のことをいう。例えば、Sheehanら、2003 Nucleic Acids Research 31 , 4109-4118または米国特許公開第2006/0247194号参照。
本明細書で使用される場合、用語「治療する」は、不良な長期記憶形成を示す臨床症状の改善を意味することを意図する。臨床症状の改善としては、例えば、長期記憶の増大または改善、治療前のレベルまたは長期記憶形成の欠陥のない個体と比べて認知課題を行う能力の増大が挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「妨げる」は、不良な長期記憶形成を示す臨床症状の予防を意味することを意図する。
用語「治療効果」は、本明細書で使用する場合、長期記憶形成の欠陥の治療、長期記憶形成の改善、認知課題を行う能力の改善における薬物または候補薬物の治療効果のことをいう。治療効果は、認知課題を行う患者の能力をモニタリングすることによって決定することができる。
RNA分子
例えば、合成または細胞での発現によって適切なsiRNAを生成することができる。一態様において、siRNA分子のアンチセンス鎖をコードするDNA配列を、PCRによって作製することができる。別の態様において、siRNAコーディングDNAが、哺乳動物への移入を容易にするプラスミドまたはウイルスベクターなどのベクターにクローニングされる。別の態様において、siRNA分子は、化学または酵素手段を用いて合成されてもよい。
本発明の一態様において、本発明のsiRNA分子の各配列は、独立して約18〜30ヌクレオチド長であり、特定の態様において約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長である。一態様において、siRNA分子は、約19〜23塩基対、好ましくは約21塩基対を含む。別の態様において、siRNA分子は、約24〜28塩基対、好ましくは約26塩基対を含む。個々のsiRNA分子は、単鎖および対形成二本鎖(「センス」および「アンチセンス」)の形態であってもよく、ヘアピンループなどの第二構造を含んでもよい。また、個々のsiRNA分子は、前駆体分子として送達することができ、続いて活性分子を生じるように改変される。単鎖形態のsiRNA分子の例としては、DNA配列の非転写領域(例えば、プロモーター領域)に対する単鎖アンチセンスsiRNAが挙げられる。さらに別の態様において、ヘアピンまたは環状構造を含む本発明のsiRNA分子は、約35〜約55(例えば、約35、40、45、50または55)ヌクレオチド長、または約38〜約44(例えば、約38、39、40、41、42、43または44)ヌクレオチド長であり、約16〜約22(例えば、約16、17、18、19、20、21または22)塩基対を含む。
siRNA分子は、非修飾のマウスまたはヒトGpr12タンパク質配列をコードするDNA配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖であるヌクレオチド断片を含んでもよい。好ましくは、マウスまたはヒトGpr12タンパク質配列は、配列番号:1、配列番号:4、または配列番号:6からなる群より選択される表1のものを含む。本発明のsiRNA分子は、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:5からなる群より選択される表1に示される非修飾のマウスまたはヒトGpr12 mRNAのmRNA配列のセンス鎖のヌクレオチド断片であってもよい。本発明のsiRNA分子は、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:5からなる群より選択される表1に示される非修飾のマウスまたはヒトGpr12 mRNAのmRNA配列のアンチセンスである配列であってもよい。
以下の考察は、現在知られている低分子干渉RNAによって媒介されるRNA干渉の提案された機構を説明するが、限定されることを意味せず、先行技術で認められていない。化学修飾された低分子干渉核酸は、siRNA分子のように、RNAiを媒介する類似または改善された能力を有し、インビボで改善された安定性および活性を有することが予想される。従って、この考察は、siRNAのみに限定されることを意味せず、全体としてsiRNAに適用することができる。「RNAiを媒介する能力の改善」または「改善されたRNAi活性」は、RNAi活性がRNAiを媒介するsiRNAの能力および本発明のsiRNAの安定性の両方の反映である場合のインビトロおよび/またはインビボで測定されたRNAi活性を含むことを意味する。
RNA干渉とは、低分子干渉RNA(siRNA)によって媒介される動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスのことをいう(Fireら、1998, Nature, 391, 806)。植物で相当するプロセスは、転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと一般に呼ばれ、また、真菌において抑制(quelling)と呼ばれる。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、多様な植物相および門によって一般に共有される外因遺伝子の発現を妨げるために使用される進化的に保存された細胞防御機構であると考えられている(Fireら、1999, Trends Genet., 15, 358)。外因遺伝子発現からのかかる保護は、ウイルス感染に由来する二本鎖RNA(dsRNA)の生成、または相同単鎖RNAもしくはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞応答を介した宿主ゲノムへのトランスポゾンエレメントのランダムな組込みに応答して進化し得た。細胞中のdsRNAの存在は、十分に特徴付けされていない機構を介したRNAi応答を誘発する。この機構は、リボヌクレアーゼLによるmRNAの非特異的切断を生じる、プロテインキナーゼPKRおよび2',5'-オリゴアデニレートシンセターゼのdsRNA媒介活性化により生じるインターフェロン応答と異なっているように思われる。
細胞中の長いdsRNAの存在は、ダイサーと呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する。ダイサーは、低分子干渉RNA(siRNA)として公知の短いdsRNA部分へのdsRNAのプロセッシングに関わる(Bersteinら、2001, Nature, 409, 363)。ダイサー活性に由来する低分子干渉RNAは、典型的に、約21〜約23ヌクレオチド長であり、約19塩基対の二重鎖を含む。また、ダイサーは、転写制御に関係する、保存構造の前駆体RNAからの21および22ヌクレオチド低分子一時RNA(stRNA)の切除に関係している(Hutvagnerら、2001, Science, 293, 834)。また、RNAi応答は、siRNAを含むエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とし、これは、一般的にRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれ、siRNAに相同な配列を有する単鎖RNAの切断を媒介する。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のガイド配列に相補的な領域の中間で生じる(Elbashirら、2001, Genes Dev., 15, 188)。また、RNA干渉は、また、おそらくクロマチン構造を調節して、標的遺伝子配列の転写を妨げる細胞機構により低分子RNA(例えば、マイクロRNAまたはmRNA)媒介遺伝子サイレンシングを伴うことができる(例えば、Allshire, 2002, Science, 297, 1818-1819; Volpeら、2002, Science, 297, 1833-1837; Jenuwein, 2002, Science, 297, 2215-2218;およびHallら、2002, Science, 297, 2232-2237参照)。
RNAiは、様々な系で研究されている。Fireら、 1998, Nature, 391, 806によって最初に線虫でRNAiが観察された。WiannyおよびGoetz, 1999, Nature Cell Biol., 2, 70には、マウス胚でdsRNAによって媒介されるRNAiが記載される。Hammondら、2000, Nature, 404, 293には、dsRNAをトランスフェクトしたショウジョウバエ細胞におけるRNAiが記載される。Elbashirら、2001, Nature, 411, 494には、ヒト胚性腎臓およびHeLa細胞を含む哺乳動物培養細胞において、21ヌクレオチド合成RNAの二重鎖の導入により誘導されるRNAiが記載される。ショウジョウバエ胚溶解物の最近の研究によって、siRNAの長さ、構造、化学組成、および効率的なRNAi活性を媒介するのに不可欠な配列のための特定の要件が明らかにされた。これらの研究によって、21ヌクレオチドsiRNA二重鎖が2つの2-ヌクレオチド3'末端ヌクレオチド突出を含む場合に最も活性であることが示された。さらに、2'-デオキシまたは2'-O-メチルヌクレオチドでの1つまたは両方のsiRNA鎖の置換はRNAi活性を無効にするが、デオキシヌクレオチドでの3'末端siRNAヌクレオチドの置換は許容されることが示された。siRNA二重鎖の中央のミスマッチ配列はまた、RNAi活性を無効にすることが示された。また、これらの研究によって、標的RNAの切断部位の位置が3'末端よりも5'末端のsiRNAガイド配列によって規定されることが示される(Elbashirら、2001, EMBO J., 20, 6877)。他の研究によって、siRNA二重鎖の標的相補鎖上の5'リン酸がsiRNA活性に必要であること、およびATPがsiRNA上の5'リン酸部分を維持するために利用されることが示された(Nykanenら、2001, Cell, 107, 309);しかし、5'リン酸を欠くsiRNA分子は、外因的に導入される場合に活性であり、siRNA構築物の5'-リン酸化がインビボで起こり得ることが示される。
一態様において、本発明は修飾siRNA分子を特徴とする。リン酸骨格で考えられる修飾の例としては、1つ以上のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネートなどのホスホネート、アルキルホスホトリエステルなどのホスホトリエステル、モルホリノ、アミデートカルバメート、カルボキシメチル、アセトアミド、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換を含むリン酸骨格修飾が挙げられる。オリゴヌクレオチド骨格修飾の概説のために、HunzikerおよびLeumann, 1995, Nucleic Acid Analogues: Modern Synthetic Methods中のSynthesis and Properties, VCH, 331-417, ならびにMesmaekerら、1994, Carbohydrate Modifications in Antisense Research中のNovel Backbone Replacements for Oligonucleotides, ACS, 24-39を参照。
糖部分で考えられる修飾の例としては、2'-アルキルピリミジン、例えば2'-O-メチル、2'-フルオロ、アミノ、およびデオキシ修飾などが挙げられる(例えば、Amarzguiouiら、2003, Nucleic Acds Res. 31 :589-595.米国特許公開第2007/0104688号参照)。塩基で考えられる修飾の例としては、脱塩基糖、2-O-アルキル修飾ピリミジン、4-チオウラシル、5-ブロモウラシル、5-ヨードウラシル、および5-(3-アミノアリル)-ウラシルなどが挙げられる。ロックド核酸、即ちLNAもまた、組み込むことができる。多くの他の修飾が公知であり、上記基準を満たす限り使用することができる。また、修飾の例が、米国特許第 5,684,143号、第5,858,988号および第6,291,438号ならびに米国公開特許出願第2004/0203145号A1に開示されており、それぞれは、参照によって本明細書に援用される。他の修飾は、Herdewijn (2000), Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 10:297-310, Eckstein (2000) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 10:117-21, Rusckowskiら (2000) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 10:333-345, Steinら(2001) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 11:317-25およびVorobjevら (2001) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 11:77-85に開示されており、それぞれは参照によって本明細書に援用される。
RNAは、酵素または部分/全体有機合成によって生成されてもよく、修飾リボヌクレオチドは、インビトロでの酵素合成または有機合成によって導入することができる。一態様において、各鎖は化学調製される。RNA分子を合成する方法は当該技術分野で公知である。
抗体
例示的な抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、二特異的抗体およびヘテロコンジュゲート抗体が挙げられる。
用語「抗体」は最も広い意味で使用され、具体的に、例えば、1つの抗Gpr12モノクローナル抗体(アンタゴニスト、および中和抗体を含む)、多エピトープ特異性を有する抗Gpr12抗体組成物、単鎖抗Gpr12抗体、および抗Gpr12抗体の断片を含む。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体、即ち微量で存在する場合がある天然で可能な変異を除いて同じ集団を含む個々の抗体のことをいう。
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖抗体(Zapataら、Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]); 単鎖抗体分子;および抗体断片から形成された多特異的抗体が挙げられる。
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに「特異的に結合する」または「特異的な」抗体は、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合しない特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する抗体である。
抗Gpr12抗体はポリクローナル抗体を含んでもよい。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に公知である。ポリクローナル抗体は例えば、免疫剤、および所望される場合の補助剤の1回以上の注射によって哺乳動物で惹起することができる。典型的に、免疫剤および/または補助剤は、複数の皮下または腹腔内注射によって哺乳動物に注射される。免疫剤は、Gpr12ポリペプチドまたはその融合タンパク質を含んでもよい。免疫化される哺乳動物で免疫原性であることが公知のタンパク質に免疫剤をコンジュゲートすることは有用であり得る。かかる免疫原性タンパク質の例としては、限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、およびダイズトリプシン阻害剤が挙げられる。使用され得る補助剤の例としては、フロイント完全アジュバントおよびMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫プロトコルは、過度の実験なしで当業者によって選択されてもよい。
あるいは、抗Gpr12抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein, Nature, 256:495 (1975)によって記載されるものなどのハイブリドーマ法を用いて調製され得る。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主動物は、典型的に免疫剤で免疫化され、免疫剤に特異的に結合する抗体を生じるまたは生じることができるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化されてもよい。
当業者に理解されるように、種々の他の遺伝子破壊技術を本発明とともに使用することができる。非限定的な例として、標的遺伝子における相同組換え、ドミナントネガティブ遺伝子構築物のトランスジェニック発現、正常遺伝子構築物のトランスジェニック発現およびアミノ酸配列の任意の他の改変を使用することができる。種々のかかる遺伝子構築物を脳細胞に送達するための適切なものとしてウイルスベクターを使用してもよく、かかる構築物はRNAi経路を介して作用するいくつかのもの(ショートヘアピンRNA、二本鎖RNA等)を含む。
製剤
Gpr12インヒビター化合物試料は適切に製剤化することができ、充分な割合の試料が細胞に入ることを可能にする任意の手段により哺乳動物内に適切に導入することができる。例えば、リン酸緩衝化生理食塩溶液、リポソーム、ミセル構築物およびカプシドなどのバッファ溶液中でインヒビターを製剤化することができる。カチオン脂質を用いたsiRNAの製剤を使用して、細胞へのdsRNAのトランスフェクションを容易にすることができる。例えば、リポフェクチンなどのカチオン脂質(参照により本明細書中に援用される米国特許第5,705,188号)、カチオングリセロール誘導体、およびポリリジンなどのポリカチオン分子(参照により本明細書中に援用される公開PCT国際出願WO 97/30731)を使用することができる。適切な脂質としては、その全てが製造業者の指示に従って使用することができるオリゴフェクトアミン、リポフェクトアミン(Life Technologies)、NC388(Ribozyme Pharmaceuticals, Inc., Boulder, Colo.)、またはFuGene 6(Roche)が挙げられる。
一態様において、本発明のGpr12特異的siNA分子はポリエチレンイミン(例えば直鎖もしくは分枝PEI)および/または例えばガラクトースPEI、コレステロールPEI、抗体誘導体化PEIおよびそれらのポリエチレングリコールPEI(PEG-PEI)誘導体などの移植PEIを含むポリエチレンイミン誘導体とともに製剤化または複合体化される(例えば、参照により本明細書に援用されるOgris et al., 2001, AAPA PharmSci, 3, 1-11;Furgeson et al., 2003, Bioconjugate Chem., 14, 840-847;Kunath et al., 2002, Pharmaceutical Research, 19, 810-817;Choi et al., 2001, Bull. Korean Chem. Soc., 22, 46-52;Bettinger et al., 1999, Bioconjugate Chem., 10, 558-561;Peterson et al., 2002, Bioconjugate Chem., 13, 845-854;Erbacher et al., 1999, Journal of Gene Medicine Preprint, 1, 1-18;Godbey et al., 1999, PNAS USA, 96, 5177-5181;Godbey et al., 1999, Journal of Controlled Release, 60, 149-160;Diebold et al., 1999, Journal of Biological Chemistry, 274, 19087-19094;Thomas and Klibanov, 2002, PNAS USA, 99, 14640-14645;およびSagara, 米国特許第6,586,524号を参照のこと。
Gpr12インヒビター分子を細胞の環境に導入する方法が細胞の種類および細胞の環境の組成に依存することを理解することができる。例えば、液体中に細胞が見られる場合、1つの好ましい製剤はリポフェクトアミンなどの脂質製剤とともにあり、該インヒビターを細胞の液体環境に直接添加することができる。脂質製剤はまた、例えば静脈内、筋内もしくは腹腔内注射、または経口または吸入または当該技術分野において公知の他の方法により動物に投与することができる。製剤が、哺乳動物などの動物、より具体的にはヒトへの投与に適切である場合、該製剤はまた、薬学的に許容され得る。オリゴヌクレオチドを投与するための薬学的に許容され得る製剤は公知であり使用可能である。いくつかの場合、インヒビターをバッファまたは生理食塩溶液中に製剤化して、製剤化されたインヒビターを細胞内に直接注射することが好ましい場合がある。dsRNA二本鎖の直接注射を行ってもよい。siRNAの適切な導入方法について、参照により本明細書に援用される米国公開特許出願2004/0203145 A1を参照。
Gpr12インヒビターは薬理学的に有効な量を含む。薬理学的または治療的に有効な量とは、意図される薬理学的、治療的または予防的な結果を生じるのに有効なインヒビターの量のことをいう。句「薬理学的に有効な量」および「治療的に有効な量」または単に「有効量」は、意図される薬理学的、治療的または予防的な結果を生じるのに有効なインヒビターの量のことをいう。例えば、疾患または障害に関連する測定可能なパラメーターにおいて少なくとも20%の減少がある場合、所定の臨床治療が有効であると見なされたとすると、疾患または障害の治療について治療的に有効な薬物の量はかかるパラメーターにおいて少なくとも20%の減少をもたらすために必要な量である。
適切な量のインヒビターが導入されるべきであり、これらの量は標準的な方法を使用して経験的に決定することができる。典型的に、細胞の環境における個々のsiRNA種の有効濃度は、約50nM以下、10nM以下であり、約1nM以下の濃度の組成物を使用することができる。他の態様において、方法は、約200pM以下の濃度を利用し、さらには多くの状況において約50ピコモル以下の濃度を使用することができる。
一般的に、siRNAの適切な用量単位は、約0.001〜約0.25mg/レシピエントの体重kg/日の範囲、または約0.01〜約20μg/体重kg/日の範囲、または約0.01〜約10μg/体重kg/日の範囲、または約0.10〜約5μg/体重kg/日の範囲、または約0.1〜約2.5μg/体重kg/日の範囲である。
本発明の一態様において、Gpr12インヒビターは、1日に1回投与され得る。しかし、該製剤はまた、1日当たり適当な間隔で投与される2、3、4、5、6回以上の分割投与を含む用量単位で投与されてもよい。この場合、一態様において、それぞれの分割用量に含まれるインヒビターは、全1日用量単位を達成するために、相応じてより少なくなければならない。数日間に及ぶ単回投与のために、例えば数日間にわたり持続されかつ一定のsiRNAの放出を提供する従来の徐放性製剤を使用して、用量単位を調合することができる。徐放性製剤は当該技術分野に周知である。この態様において、用量単位は1日の用量に相当する分割用量を含む。製剤に関係なく、該医薬組成物は動物におけるGpr12遺伝子の発現を阻害するのに充分な量のインヒビターを含む必要がある。
適切な容量範囲を計算するために、細胞培養アッセイからデータを得ることができる。本発明の組成物の用量は、ほとんどもしくは全く毒性を有さないED50(公知の方法で決定される)を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、使用される投与形態および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変わることがある。本発明の方法に使用される任意の化合物について、治療的に有効な用量は細胞培養アッセイにより最初に推定することができる。血漿中のインヒビターのレベルは、標準的な方法、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定してもよい。
siRNAがその効果を発揮するのに充分な量で細胞に入ることができるようにsiRNA組成物が製剤化されると仮定すると、細胞が生存可能な任意の細胞外マトリックスにsiRNA組成物を添加して該方法を実施することができる。例えば、該方法は、液体培地または細胞増殖培地などの液体、組織外植片、または哺乳動物、特にヒトなどの動物を含む生物全体に存在する細胞を用いた使用に従う。
送達方法
発現のために、アンチセンス鎖をコードするDNA配列または遺伝子の標的配列に特異的なsiRNAを哺乳動物細胞に導入する。遺伝子中で1つより多くの配列(異なるプロモーター領域配列および/またはコーディング領域配列など)を標的化するために、それぞれの標的化された遺伝子配列に特異的な別々のsiRNAコーディングDNA配列を同時に細胞内に導入することができる。別の態様にしたがって、哺乳動物細胞を、遺伝子中の複数の配列を標的化する複数のsiRNAに曝露し得る。
本発明のGpr12インヒビターは、当該技術分野に公知の任意の手段、例えば静脈内、筋内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エーロゾル)、直腸、膣および局所(口内および舌下を含む)投与を含む非経口経路により投与することができる。いくつかの態様において、医薬組成物は、静脈内もしくは腹腔内の点滴または注射により投与される。
一態様において、本発明は、本発明の核酸分子を中枢神経系および/または末梢神経系に送達するための方法の使用を特徴とする。実験により、ニューロンによる核酸の効果的なインビボ取り込みが示された。核酸の神経細胞への局所投与の例として、Sommer et al., 1998, Antisense Nuc. Acid Drug Dev., 8, 75には、c-fosに対する15塩基のホスホロチオエートアンチセンス核酸分子をマイクロインジェクションでラットの脳へと投与する試験が記載される。核酸の神経細胞への全身投与の例として、Epa et al., 2000, Antisense Nuc. Acid Drug Dev., 10, 469には、βシクロデキストリンアダマンタンオリゴヌクレオチドコンジュゲートを使用して神経分化したPC12細胞中のp75ニューロトロフィンレセプターを標的化したインビボマウス試験が記載される。IP投与の2週間経過後、背根神経節(DRG)細胞においてp75ニューロトロフィンレセプターアンチセンスの顕著な取り込みが観察された。また、DRGニューロンにおいて、顕著な、および一定のp75のダウンレギュレーションが観察された。ニューロンに対する核酸の標的化についてのさらなるアプローチがBroaddus et al., 1998, J. Neurosurg., 88(4), 734;Karle et al., 1997, Eur. J. Pharmocol., 340(2/3), 153;Bannai et al., 1998, Brain Research, 784(1,2), 304;Rajakumar et al., 1997, Synapse, 26(3), 199;Wu-pong et al., 1999, BioPharm, 12(1), 32;Bannai et al., 1998, Brain Res. Protoc., 3(1), 83;Simantov et al., 1996, Neuroscience, 74(1), 39に記載される。したがって、本発明の核酸分子は、神経細胞に送達されやすく神経細胞に取り込まれやすい。
候補遺伝子を標的化する本発明の核酸分子の送達は種々の異なる戦略により提供される。使用可能なCNS送達の従来のアプローチとしては、限定されないが、鞘内および脳内脳室投与、カテーテルおよびポンプの埋め込み、損傷もしくは病変の部位での直接注射または灌流、脳動脈系への注射、または脳血液関門の化学的もしくは浸透圧開放が挙げられる。他のアプローチとしては、種々の輸送および担体系の使用ではあるが、例えばコンジュゲートおよび生分解性ポリマーの使用を挙げることができる。さらに、例えばKaplitt et al., 米国特許第6,180,613号およびDavidson, WO 04/013280に記載されるように遺伝子治療アプローチを使用して、CNS中で核酸分子を発現させることができる。
用語「導入」は、インビトロまたはインビボのいずれかで、DNAを細胞内に導入する種々の方法を包含する。かかる方法としては、形質転換、形質導入、トランスフェクション、および感染が挙げられる。ベクターは、siRNA分子をコードするDNAを細胞に導入するための有用かつ好ましい剤である。導入は少なくとも1つのベクターを使用して達成されてもよい。可能性のあるベクターとしては、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターもしくはアデノ随伴ベクターなどの他のベクターが挙げられる。
細胞または組織へのsiRNA分子またはsiRNA分子をコードするDNAの代替的な送達を本発明に使用してもよく、リポソーム、化学溶媒、エレクトロポレーション、ウイルスベクター、飲作用、食作用および他の形態の外因性物質の自発的または誘導性細胞取り込み、ならびに当該技術分野に公知の他の送達系が挙げられる。
適切なプロモーターとしては、干渉RNA分子をコードする配列に作動可能に結合または連結されて該RNA分子の発現を促進するプロモーターが挙げられる。かかるプロモーターとしては、当該技術分野において公知の細胞プロモーターおよびウイルスプロモーターが含まれる。一態様において、プロモーターは、好ましくは干渉RNA分子をコードするDNA配列の直上に位置するRNA Pol IIIプロモーターである。種々のウイルスプロモーターを使用してもよく、限定されないが、当該技術分野に公知のウイルスLTR、ならびにアデノウイルス、SV40、およびCMVプロモーターが挙げられる。
一態様において、本発明では、ヒト細胞における短い規定のリボザイム転写産物の発現のために以前から使用されている哺乳動物U6 RNA Pol IIIプロモーター、より好ましくはヒトU6 snRNA Pol IIIプロモーターを使用する(Bertrand et al., 1997;Good et al., 1997)。U6 Pol IIIプロモーターおよびその単純終結配列(4〜6ウリジン)は細胞内でsiRNAを発現することが見出された。適切に選択された干渉RNAまたはsiRNAコーディング配列を転写カセットに挿入して、該RNA分子の内因性発現および機能を試験するための最適な系を提供することができる。
発現測定
Gpr12遺伝子の発現は、当該技術分野において現在公知であるかまたは後に開発される任意の適切な方法により測定することができる。標的遺伝子の発現を測定するために使用される方法が標的遺伝子の性質に依存することを理解し得る。例えば、標的遺伝子がタンパク質をコードする場合、用語「発現」は遺伝子由来のタンパク質または転写産物のことを表し得る。このような例において、標的遺伝子の発現は、標的遺伝子に対応するmRNAの量を測定すること、またはタンパク質の量を測定することにより決定することができる。タンパク質は、染色、またはイムノブロッティングなどのタンパク質アッセイで測定することができるか、または該タンパク質が測定可能な反応を触媒する場合、反応速度を測定することで決定することができる。全てのかかる方法は当該技術分野において公知であり、使用可能である。遺伝子産物がRNA種である場合、発現は遺伝子産物に対応するRNAの量を決定することで測定できる。測定は、細胞、細胞抽出物、組織、組織抽出物または任意の他の適切な供給物質で行うことができる。
Gpr12遺伝子の発現が減少したかどうかの決定は、遺伝子発現の変化を高精度で検出可能な任意の適切な方法によってなされ得る。
実施例1-文脈および痕跡条件付け
弱い記憶を誘導する文脈条件付けパラダイムでマウスを訓練した(図1、Tully, T., et al., Nat Rev Drug Discov 2, 267-77 (2003)も参照)。図1aには、文脈記憶形成の試行数の効果を示す。マウスを増加する数のCS-US組み合わせで訓練して、4日後に文脈記憶を評価した。1回または2回のCS-US組み合わせの訓練では最大より低い記憶が誘導された。
CSとUSの間の時間間隔が大きくなるにつれて、痕跡条件付けは徐々に困難になる。遅延条件付けと比較して徐々に長くなる痕跡間隔および音記憶を使用して、マウスを痕跡恐怖条件付けで訓練した。図1bには、時間的記憶形成における痕跡間隔の効果を示す。30秒以上の痕跡間隔により、音CSに対して不充分な長期記憶が生じた(遅延条件付けならびに5秒、15秒、30秒、60秒、100秒および120秒の痕跡間隔それぞれに対してn=29、n=20、n=25、n=18、n=28、n=16およびn=12)。実際に、CSとUSの間の痕跡間隔が60秒以上である場合にC57BL/6マウスは不充分な記憶を示す(図1b)。
実施例2-訓練後のマウスの海馬におけるGpr12 RNAのレベル
文脈記憶を評価するために、元来CREBノックアウトマウスの記憶の評価のために開発された、標準化された文脈恐怖条件付け課題を使用した。((Bourtchuladze et al., 1994 Cell 79, 59-68)。訓練日に、非条件付け刺激(US)、2秒間の0.5mA足ショックの開始前に、マウスを2分間条件付けチャンバー(Med Associates, Inc., VA)に入れた。弱い訓練(2回の訓練試行)について、ショック間に1分間の試行間隔をおいてUSを2回繰り返した。強い訓練(5回の訓練試行)について、ショック間に1分間の試行間隔をおいて5回の足ショックを行った(Bourtchouladze et al., 1998 Learn Mem 5, 365-374.);(Scott et al., 2002 J Mol Neurosci 19, 171-177);(Tully et al., 2003 Nat Rev Drug Discov 2, 267-277)。自動ソフトウェアパッケージ(Med Associates, Inc., VA)を使用して訓練を行った。最後の訓練試行後、マウスをさらに30秒間条件付けチャンバーに残し、その後ホームケージに戻した。訓練の24時間後、文脈記憶を試験した。マウスを同一の訓練チャンバーに入れ、すくみ行動をスコアリングして条件付けを評価した。すくみは、5秒間の完全な運動の欠如として定義した((Fanselow and Bolles, 1979 J Comp Physiol Psychol 93, 736-744.);(Bourtchuladze et al., 1994 Cell 79, 59-68);(Bourtchouladze et al., 1998 Learn Mem 5, 365-374)。全試験時間は3分間続いた。それぞれの実験対象の後、実験装置は75%エタノール、水で完全に洗浄し、乾燥させて換気した。各実験を撮影した。全ての実験者は薬物および訓練条件について盲目であった。
全ての行動実験はバランスの取れた様式で設計および実行され、これは(i)各実験条件について同じ数の実験マウスおよび対照マウスを使用したこと;(ii)各実験条件を数回繰り返し、繰り返した日数を加算して最終対象数としたことを意味する。それぞれの訓練セッションの進行を撮影した。各実験において、訓練および試験の間の被験体の処置について、実験者には知らせなかった(盲目)。ソフトウェアパッケージ(StatView 5.0.1; SAS Institute, Inc)を使用してスチューデント非対称t検定によりデータを解析した。記載した以外は、文章および図中の全ての値は平均±標準誤差で表した。
痕跡条件付け訓練について、標準化したマウス文脈恐怖条件付け器具(Med Associates, Inc., VA;(Bourtchuladze et al., 1994 Cell 79, 59-68);(Bourtchouladze et al., 1998 Learn Mem 5, 365-374)を使用した。訓練日に、条件付け刺激(CS)、75dBで20秒間続く2800Hzの音の開始前に、マウスを2分間条件付けチャンバーに入れた。音を終了した60秒後、動物に2秒間の0.5mAショックの非条件付け刺激(US)を与えた。前の実験により、この訓練パラダイムでC57BL/6マウスにおいて不充分な痕跡恐怖記憶が誘導されたこと、およびこの記憶はCREB経路のエンハンサーにより促進できることが明らかとなった。さらに30秒間チャンバーに入れて、マウスをホームケージに戻した。それぞれの実験項目後、実験装置は75%エタノール、水で完全に洗浄し、乾燥させて数分間換気した。
文脈条件付けの効果が混同されることを避けるために、別の実験室に置いた新しいチャンバーで試験を行った。内部条件付けチャンバーを取り除いてマウスケージと取り換えた。それぞれ区別するために、違う色のテープを各ケージの背面に貼った。被験体から被験体へと匂いが混入する可能性を減らすために、3つの異なるケージを交替で使用した。チャンバー内部に30ワットの電灯を配置して訓練と試験の光の違いを確実にした。エタノールの代わりに石鹸液を使用してケージを洗浄した。各試験は、2分間の光のみ(前CS)、次いで20秒間の音の提示(CS)、その後さらに30秒間の光のみ(後CS)で開始した。訓練時と同じ様式で、上述の文脈条件付けと同様に、5秒間の「すくみ」についてマウスを1匹ずつスコアリングした。各実験の進行を撮影した。音記憶に特異的なすくみ応答の割合は、CSすくみから前CSすくみ(非特異的)を差し引いて決定した。
訓練および試験後、マウスの海馬組織を集めた。QIAgen RNeasyキット(Qiagen)を製造業者の指示にしたがって使用して個体のRNA調製を行った。TaqMan逆転写酵素キット(Applied Biosystems)を使用してcDNAを生成した。Affymetrix Gene chip解析を使用してcDNAを解析し、未処置マウスに対する相対的な発現レベルを得た。Affymetrix-chip解析により同定された痕跡恐怖条件付けの1時間後の発現の変化は、Nimble-chip解析により確認した(NimbleGen Systems, Madison, WI, USA)。Affymetrix-chip解析で同定された文脈恐怖条件付け(5回の訓練試行)の1時間後の発現の変化は、2回目のAffy-chip解析およびqPCRにより確認した。
実施例3-Neuro 2A細胞を使用したGpr12を標的化するsiRNAのスクリーニング
リアルタイムPCRによる発現プロファイリングにより、末梢組織でほとんど発現しないマウスおよびヒトのCNS内のGpr12 mRNA発現が明らかとなった(図2)。
Gpr12はマウスのCNS中に広く存在し(図2a)、食事ならびに感覚情報(視床)、運動制御(小脳)および自律機能(脳幹)の統合に関わる脳の領域である視床、脳幹および小脳で発現レベルが最大である。高レベルのGpr12は、記憶の形成に重要な2つの脳の領域である海馬および新皮質でも観察された(Fanselow 2005 J Comp Physiol Psychol 93, 736-744)。これらの結果はマウスのCNSにおけるインサイチュハイブリダイゼーションで観察されたものと同様である(Ignatov 2003 J Neurosci 23, 907-914)。マウスでは、Gpr12発現は肝臓を除くほとんどの末梢組織で検出レベル未満であった。
ヒトCNSにおいて、Gpr12発現は海馬、新皮質および小脳で最大であった(図2b)。
Gpr12に最も相同なGpr3およびGpr6はマウスおよびヒトの両方のCNSに存在した(図2a/b)。しかし、ヒトCNSにおいてGpr12 mRNAレベルはGpr3および6のmRNAレベルよりもかなり高いことがわかる。これは、Gpr6発現が海馬、視床および新皮質で非常に顕著であるマウスの場合とは対照的である。
マウスCNSにおけるGpr12機能の評価のために、インビボ等級のsiSTABLE siRNA(Dharmacon Inc., Lafayette, USA)を使用した。安定性を高めるためにsiRNAを化学的に修飾した。21塩基のsiSTABLEノンターゲッティングsiRNAを対照として使用した。
siRNA効果の評価のために、siGENOME siRNAおよびDharmafect 3(Dharmacon, Lafayette, USA)を使用してNeuro2A細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後にRNAを単離して、海馬組織について上述のようにcDNAを合成した。処理ごとに、3個体のRNA調製およびcDNA合成を行った。cDNA複製当たり標的mRNAレベルを2回測定し、それぞれの実験的複製についてΔCT値を平均した(n=3 RNA/cDNA調製;それぞれ2回のqPCR測定の平均として表す)。
インビトロでGpr12 mRNAを効果的に減少させた3種類のsiRNAを同定した(図3)。siRNA2は処理後24時間でGpr12 mRNAレベルをビヒクル対照の31%まで減少させ、Gpr12のインビボの評価に選んだ。Gpr12-2 siRNA用のインビボ等級siSTABLE siRNAをDharmacon(Lafayette, USA)から入手した。
Gpr12に対するいくつかの非修飾(siGENOME) siRNAを、Neuro 2a細胞を使用してインビトロでbDNAアッセイ(QuantiGene bDNAアッセイキット, Bayer)により試験した。siRNAは多成分合理設計アルゴリズム(Reynolds et al., (2004), Nat Biotechnol 22, 326-330)を使用して設計し、Gpr12に対する特異性についてBLAST検索で制御した。
さらなるインビボ特徴づけのために以下のsiRNA:
Gpr12 siRNA2センス鎖GAGGCACGCCCAUCAGAUAUU;配列番号:7
Gpr12 siRNA2アンチセンス鎖UAUCUGAUGGGCGUGCCUCUU;配列番号:8
ノンターゲッティングsiRNAセンス鎖UAGCGACUAAACACAUCAAUU;配列番号:9
ノンターゲッティングsiRNAアンチセンス鎖UUGAUGUGUUUAGUCGCUAUU;配列番号:10
を選択した。
実施例4-マウスにおける合成Gpr12 siRNAのインビボ送達
動物および環境。若い成体(10〜12週齢)C57BL/6雄マウス(Taconic, NY)を使用した。到着したらすぐに、マウスを標準的実験ケージにグループに分けて飼育し(5匹マウス)、12:12明暗周期で維持した。実験は常に、周期の明期で行った。カニューレ挿入手術後、マウスを一度個々のケージに戻して実験の終了までそのまま維持した。訓練および試験の時間以外は、マウスは制約なしに食餌および水を得た。国立衛生研究所(NIH)ガイドラインに従い、施設内の動物管理使用委員会に承認を受けた標準的条件下でマウスを維持および飼育した。
動物手術およびsiRNA注入。siRNAの注入のために、マウスを20mg/kgのアバルチンで麻酔し、33口径のカニューレを背側海馬(座標:1.2mmの深さに対してA=-1.8mm、L=+/-1.5mm)または扁桃体(座標:4.0mmの深さに対してA=-1.58mm、L=+/-2.8mm)に左右対称に埋め込んだ(Franklin and Paxinos, 1997 The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates)。手術から回復して5〜9日後、動物にsiRNAを注入した。siRNAは、5%グルコースで0.5μg/μlに希釈して、6当量の22kDaの直鎖ポリエチレンイミン(Fermentas)と混合した。室温で10分間インキュベーション後、ポリエチレン製のチューブでマイクロシリンジにつながれた注入カニューレにより2μlをそれぞれの海馬に注入した。完全な注入術には約2分かかり、ストレスを最小限にするために動物を慎重に扱った。全部で3回のsiRNAの注入を3日間かけて行った(1μg siRNA/海馬/日)。
siRNA媒介性のGpr12のノックダウンにより海馬の形成に障害が生じることがある。siRNA処理脳の海馬の形態を評価した。
siRNA注入動物を、行動実験の1日後に屠殺した。凍結した脳を15μm切片にスライスして、クレシルバイオレットで染色した。連続切片の写真で海馬の形態を評価した。カニューレ検証のために、動物に1μlのメチルブルー色素を注入し、その後すぐに屠殺した。凍結した脳を15μmの切片にスライスした。色素染色の位置を顕微鏡で決定して比較した(Franklin and Paxinos, 1997 The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates)。カニューレ検証は被験体の処理について盲目的に行った。
ノンターゲッティングsiRNA(図6a)とGpr12 siRNA処理マウス(図6b)の間の海馬の形態に明確な差はなかった。そのために、Gpr12 siRNAでは脳の形態において明確な変化は何ら生じなかった。錐体細胞層に対する損傷はカニューレ挿入の領域に限定された。図6(中央パネル)に見られる損傷は海馬のカニューレの除去により促進されることに注意されたい。実際の手術により誘導される海馬の形態の変化は現れず、海馬の形態の変化は最小であると見なされ実験被験体の行動成績に影響を及ぼさない。
インビボでのsiRNAによる標的ノックダウンを確認するために、マウスを海馬内siRNAで3日間処理し、最後のsiRNA注入の2および3日後にGpr12 mRNAレベルを測定した(図7)。
インビボにおけるGpr12ノックダウンの評価のために、集団あたり6匹のマウスのsiRNAを注入した海馬組織を集めた。製造業者の指示にしたがってQIAgen RNeasyキット(Qiagen)を使用して6個体のRNA調製を行った。TaqMan逆転写酵素キット(Applied Biosystems)を使用してcDNAを生成した。ABIプリズムおよびSDS 2.1ソフトウェアを使用して、RNA/cDNA複製あたり2回のリアルタイムPCR反応を行った。Gpr12のmRNAレベルを試験するために、必要に応じてABIアッセイ(Applied Biosystems)を使用した。それぞれのcDNA試料に対する平均CT値を測定した。次いで、TATA結合タンパク質(TBP)に対してデータを標準化して、ΔCT値を測定した。ノンターゲッティング対照siRNA処理対照グループに対してmRNAレベルを標準化した。
ノンターゲッティング対照siRNA(n=6)と比較した場合、Gpr12 siRNA(n=6)は処理の2日後にGpr12の海馬mRNAレベルを有意に減少した(p<0.01)。処理の3日後にはGpr12 siRNAの有意な効果はなく、これはGpr12 mRNAノックダウンは一過的であることを示した(p=0.25)。これらの結果により、siRNAがインビボで海馬のGpr12 mRNAを減少したことが確認された。しかし、標的mRNAおよびタンパク質レベルはGpr12 siRNAにより異なる影響を受ける場合がある。Gpr12の実際のタンパク質レベルは、siRNA処理後、より長期に渡り、より大きい程度に減少することがある。
実施例5-文脈条件付けおよび痕跡条件付けにおけるsiRNA媒介性のGpr12のノックダウンの効果
文脈記憶を評価するために、元来CREBノックアウトマウスの記憶の評価のために開発された標準化された文脈恐怖条件付け課題((Bourtchuladze et al., 1994 Cell 79, 59-68)を使用した。訓練日に、非条件付け刺激(US)、0.5mAで2秒間の足ショックの開始前に、マウスを2分間条件付けチャンバー(Med Associates, Inc., VA)に入れた。弱い訓練(2回の訓練試行)について、ショック間に1分の試行間隔をおいてUSを2回繰り返した。強い訓練(5回の訓練試行)について、ショック間に1分の試行間隔をおいて足ショックを5回行った(Bourtchouladze et al., 1998 Learn Mem 5, 365-374.);(Scott et al., 2002 J Mol Neurosci 19, 171-177);(Tully et al., 2003 Nat Rev Drug Discov 2, 267-277)。自動ソフトウェアパッケージ(Med Associates, Inc., VA)を使用して訓練を行った。最後の訓練試行の後、マウスをさらに30秒間条件付けチャンバーに残し、その後ホームケージに戻した。訓練の24時間後、文脈記憶を試験した。マウスを同一の訓練チャンバーに入れ、すくみ行動をスコアリングして条件付けを評価した。すくみは5秒間の運動の完全な欠如として定義した((Fanselow and Bolles, 1979 J Comp Physiol Psychol 93, 736-744.);(Bourtchuladze et al., 1994 Cell 79, 59-68);(Bourtchouladze et al., 1998 Learn Mem 5, 365-374)。全試験時間は3分間続いた。それぞれの実験対象の後、実験装置は75%エタノール、水で完全に洗浄し、乾燥させて換気した。各実験を撮影した。全ての実験は薬物および訓練条件について盲目的に行った。
全ての行動実験は、バランスの取れた様式で設計および実施し、これは(i)各実験条件について同数の実験および対照マウスを使用したこと;(ii)各実験条件を数回繰り返し、繰り返した日数を加算して最終被験体数としたことを意味する。各セッションの経過を撮影した。それぞれの実験において、訓練および試験の際の被験体の処理について実験者には知らせなかった(盲目)。ソフトウェアパッケージ(StatView 5.0.1;SAS Institute, Inc)を使用してスチューデント非対称t検定によりデータを解析した。記載される以外は、文章および図面中の全ての値は平均±標準誤差で表した。
まず、文脈記憶における海馬Gpr12の機能を調べた。マウスの海馬にノンターゲッティング(n=19)またはGpr12 siRNA(n=20)を注入した。最後のsiRNA注入の3日後、弱い文脈記憶を誘導するように設計した文脈条件付けパラダイムで動物を訓練した(Scott et al., 2002 J Mol Neurosci 19, 171-177.)、(Tully et al., 2003 Nat Rev Drug Discov 2, 267-277)。Gpr12 DM-2 siRNA処理した動物は、訓練の24時間後に文脈記憶の有意な増加を示した(24時間記憶:p<0.05、図4a)。
次に、文脈記憶形成について、扁桃体におけるGpr12の機能を調べた。マウスの扁桃体に、ノンターゲッティング(n=20)またはGpr12 siRNA(n=21)を注入して、文脈記憶を試験した。海馬におけるGpr12ノックダウンと同様に、Gpr12 siRNA処理動物は、訓練の24時間後に文脈記憶の有意な増加を示した(24時間記憶:p<0.01、図4b)。誤ったカニューレ設置のために、4匹のマウス(2x ノンターゲッティングsiRNA、2x Gpr12-2 siRNA)を解析から除外した。
痕跡条件付け訓練のために、標準化されたマウス文脈恐怖条件付け器具(Med Associates. Inc., VA;(Bourtchuladze et al., 1994 Cell 79, 59-68);(Bourtchouladze et al., 1998 Learn Mem 5, 365-374)を使用した。訓練日に、条件付け刺激(CS)、75dBで20秒間続く2800Hzの音の開始前に、マウスを2分間条件付けチャンバーに入れた。音を終了して60秒後、0.5mAショック非条件付け刺激(US)を動物に2秒間与えた。前の実験で、この訓練パラダイムではC57BL/6マウスにおいて不充分な痕跡恐怖記憶が誘導されること、およびこの記憶はCREB経路のエンハンサーにより促進できることが明らかにされた。チャンバー内でさらに30秒後、マウスをホームケージに戻した。各実験対象の後、実験装置を75%エタノール、水で完全に洗浄し、乾燥させて数分間換気した。
文脈条件付けの効果の混同を避けるために、試験は別の実験室においた新しいチャンバーで行った。内部条件付けチャンバーを取り除いて、マウスケージと取り換えた。それぞれを区別するために、違う色のテープを各ケージの背面に貼った。被験体から被験体への匂いの混同の可能性を減らすために、3種類の異なるケージを交替で使用した。チャンバー内に30ワットの電灯を設置して、訓練と試験の光の違いを確実にした。エタノールの代わりに石鹸液を使用してケージを洗浄した。各試験は、2分間の光のみ(前CS)、次いで20秒間の音の提示(CS)、その後さらに30秒間の光のみ(後CS)で開始した。訓練時と同じ様式で、上述の文脈条件付けと同様に、5秒間の「すくみ」について、マウスを1匹ずつスコアリングした。各実験の進行を撮影した。CSすくみから前CSすくみ(非特異的)を差し引いて、音の記憶に特異的なすくみ応答の割合を決定した。
痕跡恐怖記憶における海馬Gpr12の機能を調べた。文脈条件付けについて記載されたように、マウスの海馬に、ノンターゲッティング(n=20)またはGpr12 siRNA(n=23)を注入した。一組のCS/USおよび60秒間の痕跡間隔で訓練した場合、Gpr12 DM-2 siRNA処理動物は、有意に高い痕跡条件付けを示した(CS-前CS:p<0.01、図5)。重要なことに、対照siRNAではなく、Gpr12 siRNA処理動物は、音CS提示の際にすくみ応答が増加した。したがって、文脈条件付けと同様に、siRNA媒介性の海馬Gpr12のノックダウンにより痕跡条件付けが促進された。Gpr12 siRNAは、痕跡恐怖条件付けの間の即座のすくみに有意に影響を及ぼさなかった(ノンターゲッティングsiRNA:3.3±1.5%;Gpr12 siRNA:5.1±1.6%;p=0.44;データは示さず)。
まとめるとこれらの結果は、Gpr12は、マウスおよびヒトにおける記憶形成に決定的な2つの側頭葉構造である海馬および扁桃体の両方における記憶形成の負の制御因子であるということを示す。重要なことに、Gpr12 siRNAは、「機能の増大」(すなわち、記憶形成の増強)を誘導した。Gpr12 siRNAの副作用により行動可塑性においてこの効果が誘導されるという可能性は低い。したがって、Gpr12は海馬および扁桃体における記憶の決定的な制御因子である。
実施例6-Gpr12ノックアウトマウス
Gpr12ノックアウトマウス。Gpr12ノックアウトマウスはDeltagen(San Carlos, CA 94070, U.S.A)が権利を取得している。雄Gpr12+/-マウスとC57Bl/6メス(Taconic Farms, USA)を交配して、C57Bl/6バックグラウンドにおいて優性なヘテロGpr12 KOマウス(Gpr12+/-マウスという)(C57Bl/6に5回戻し交配)およびWT同腹子対照を生ませた。ポリメラーゼ連鎖反応によりマウスの遺伝子型を決定した。性のバランスが取れた雄と雌のマウスは、行動解析のために3〜6ヶ月齢で使用した。
Gpr12+/-マウスの海馬におけるGpr12および対照mRNAレベルの評価。Gpr12+/-マウス(n=3)、Gpr12-/-マウス(n=2)およびWT同腹子対照(n=3)から海馬を単離した。QIAgen RNeasyキット(Qiagen)を使用してRNAを単離した。TagMan逆転写酵素キット(Applied Biosystems)を使用してcDNAを生成した。必要に応じてABIアッセイ(Applied Biosystems)を使用して、Gpr12、Creb1およびGrin1のmRNAレベルを測定し、TATA結合タンパク質(TBP)に対して標準化した。
新規物体認識訓練および試験。動物を3日間、3〜5分間取り扱った。訓練の前日、薄暗い部屋に置かれた訓練装置(L=48cm、W=38cmおよびH=20cmのプレキシグラスボックス)に個体動物を入れ、環境に15分間慣れさせた(Bourtchouladze, 2003も参照)。慣れた24時間後に訓練を開始した。2つの同じ物体(例えば、小さな円錐状の物体)が含まれた訓練ボックスに動物を戻し、これらの物体を探索させた。物体をボックスの中心部に置き、物体の空間的な位置(左右側)を物体間で釣り合わせた。動物を10、15または20分間訓練した。探索に2秒未満しか費やさなかったマウスは解析から除外した。
長期記憶の保持を試験するために、訓練から24時間後にマウスを10分間観察した。短期(転写非依存性)記憶について試験するために、訓練から3時間後マウスを10分間観察した(Bourtchouladze, 2003)。1つが訓練中に使用されて「慣れたもの」であり、もう1つが新規のものである2つの物体(例えば、小さな円錐状の物体)とともに動物を置いた。((新規探索-慣れたものの探索)/全探索)*100で物体記憶指数を決定した。探索の非特異的な影響を調整するために、試験中の全探索時間も計算した。
識別標的の匂いが異ならないことを確実にするために、各実験対象後、装置および物体を90%エタノールで完全に洗浄し、乾燥させて、数分間換気した。
オープンフィールド。これは動物の運動行動および探索を調べるために一般的に使用される試験である(Logue, 1997, Barad, 1998)。試験開始の1時間前に動物を一般的な動物小屋から実験室へと移動させた。以前記載されたものと同様に実験を行った(Barad, 1998)。マウスを標準的なオープンフィールドに置き、コンピューター追跡システム(Etho Vision by Noldus, Inc., VA)を使用して30分間観察した。2つのボックスを同時に稼動させて、移動した距離(歩行)および立ち上がりについて動物をスコアリングした。動物と動物の間に、装置を75%エタノールで完全に洗浄し、乾燥させて数分間換気した。実験は観察者を盲目的にして行い、各実験の進行をビデオに撮影した。以下の測定、1)オープンフィールド中の水平行動(歩行)、2)垂直行動(立ち上がり)を定量化した。
表3には、海馬における記憶制御遺伝子としてGpr12の同定を示す結果が示される。P値およびΔ(相対的発現のlog2)は、Affymetrix gene-chip解析について示される。痕跡条件付けデータは、Nimble-chip解析により独立して確認した。文脈条件付けデータは、Affymetrix-chipの反復およびqPCRにより確認した。
ヘテロKOマウス(Gpr12+/-マウス)におけるGpr12の慢性的な阻害。siRNAデータは、インタクトな成体マウスにおいてGpr12の急性阻害により長期記憶が促進されることを示す。長期記憶における慢性的、全身性のGpr12の阻害の効果を試験するために、Gpr12+/-マウスを解析した。
ホモGpr12ノックアウトマウス(Gpr12-/-マウス)は以前に解析されている。ホモノックアウトマウスは、移動障害、ロータロッドにおける運動性能障害、運動機能およびモリス水迷路における学習(泳ぎ)障害、過剰無痛覚症(hyperanalgesia)を示し、肝臓および腎臓疾患の兆候を示す(特許出願WO 2005/027628, Carlton, 2005)。さらなる研究により、ホモGpr12ノックアウトマウスは不良性脂肪血症(dyslipidemia)および肥満を発症することが示された(Bjursell, 2006)。全体的に、これらの所見により、ホモGpr12ノックアウトマウスは種々の一般的かつ発生段階で誘導される健康課題を有することが示された。これらの変異体では一般的な体調の不調のために認知機能が損なわれることが予想される。
ヘテロGpr12 KOマウス(Gpr12+/-)についてデータは入手できないが、これらの以前の研究(Carlton, 2005; Bjursell, 2006)からホモ突然変異体よりも低い程度ではあるが、これらのマウスで長期記憶が損なわれることが予想される。しかしながら、Gpr12+/-マウスで長期記憶の強化が増強されるかは、予想されない結果である。
Gpr12-/-マウスではGpr12対立遺伝子の両方が不活性化され、これらのマウスは検出可能なGpr12 mRNAの発現を有さず(WT対照の0%)、Creb1の発現はわずかに低かったが、Grin1レベルは正常であった(それぞれ、対照の81±1%および102±2%;図8a)。
Gpr12+/-マウスでは2つのGpr12対立遺伝子の1つだけが不活性化され、これらのマウスはWT Gpr12 mRNAの51±8%を示す。したがって、Gpr12 mRNAレベルはホモノックアウトマウスとは異なっている。Creb1およびGrin1のmRNAはGpr12+/-マウスでは影響を受けない(それぞれ102±8%および101±4%;図8a)。クレシルバイオレット染色によるGpr12+/-海馬の肉眼の組織学的解析により、ヘテロ変異体とWT対照間で明確な違いは全く明示されなかった(図8b)。
ヘテロGpr12ノックアウトマウスにおける一般的な運動行動およびオープンフィールド探索。ホモKOマウスの以前の結果から予想されるように、Gpr12+/-マウスにおいて一般的な運動行動および探索が損なわれるかどうかを調べるために、オープンフィールド試験を行った。オープンフィールドにおける水平行動(歩行)を測定し、ヘテロ変異体とWTマウス間で移動行動の違いは見られなかった(全ての時点においてp>0.05;スチューデントt検定;図9a)。Gpr12+/-マウスとWT対照間で垂直行動(立ち上がり)の違いもなかった(全ての時点でp>0.05;スチューデントt検定;図9b)。これらの結果は、ヘテロGpr12変異体マウスにおいて運動行動および探索は正常であることを示す。
ヘテロGpr12ノックアウトマウスにおける新規物体認識記憶。物体認識は、負の強化(足ショック)によって生じない、マウスおよびラットについて生物行動学的に関連のある課題である。この課題は、げっ歯類が環境において慣れたものよりも新規の物体を探索する本来の好奇心に頼っている。明らかに、「慣れた」物体に対して、動物はそれが以前のものであることに注意し、かかる経験を覚えるはずであった。そのために、充分な記憶を有する動物は、慣れたものよりも新しい物体に注意し、探索する。最近のヒトにおける神経画像化研究により、物体認識の記憶は、老化により強く影響を受ける構造体である(Hedden, 2004)前前頭皮質に関連する(Deibert, 1999)ことが示された。サルおよびげっ歯類における他の研究では、海馬は新規物体認識に重要であることが示唆されている(Teng, 2000; Mumby, 2001)。そのために、新規物体認識は、実験動物の海馬および皮質の機能に関連する認知課題における薬物-化合物の効果を評価するための良好な行動モデルを提供する。
文脈条件付けおよび痕跡条件付けに関して、物体認識の長期記憶は訓練条件に依存する(Bourtchouladze, 2003)。物体認識訓練について記憶の長期的な保持ではなく短期的な記憶の保持を可能にする条件を確立するために、Gpr12変異体と同じ遺伝的背景を持つWTマウス(n=19)を10分、15分または20分間訓練した(図10)。24時間後に試験した場合、10分間訓練したマウスは、新規物体に興味を示さなかったが(記憶スコア:2.2±8.0)、15分または20分間訓練したマウスは、新規物体に興味を示した(それぞれ15分および20分の訓練について記憶スコア:21.0±7.0および34.3±4.9)。したがって、10分の訓練は長期物体認識記憶の誘導に充分ではなかった。
次に、Gpr12+/-(n=15)およびWT同腹子(n=16)において、訓練の10分後(図11)に長期物体認識記憶を試験した。24時間後に試験した場合、WT対照ではなくGpr12+/-マウスは長期物体認識記憶を示した(WT対Gpr12+/-マウスについてそれぞれ記憶スコア:6.0±8.2対28.7±4.9;p<0.05、スチューデント非対称t検定;図11a)。訓練(p=0.34)および試験(p=0.63)中に全探索に差はなく、Gpr12+/-マウスにおける長期記憶の促進は探索行動の一般的な増加によるものではないことが示された(図11b)。
Gpr12+/-(n=6)およびWT同腹子(n=8)における短期物体認識記憶(図12)も行った。訓練の3時間後に試験した場合、短期物体認識記憶は変異体と対照の間で同様であった(WT対Gpr12+/-マウスそれぞれについて記憶スコア:25.6±6.6対18.2±4.8;p=0,41、スチューデント非対称t検定;図12a)。試験中の全ての探索においてグループ間で差はなかった(p=0.28;図12b)。重要なことに、以前の研究(Bourtchouladze, 2003)と一致して、WTマウスは訓練10分後に有意な物体記憶の短期保持を示した。しかし、Gpr12+/-マウスだけが長期保持を示し(図11)、Gpr12のヘテロノックダウンは長期記憶を特異的に高めることが示された。
したがって、ヘテロGpr12変異マウス(1つの機能的なGpr12対立遺伝子を有する)は、運動行動および探索において明らかな障害を有さない。長期物体認識記憶の解析により、ヘテロGpr12ノックアウトマウスにおいて長期記憶の強化が促進されるという予想されない所見が明らかになった。対照的に、短期記憶は正常であった。これらの所見は、海馬および扁桃体におけるGpr12のsiRNA阻害後の文脈記憶および時間的記憶の促進と一致する。
本明細書中で発明の背景を説明するために使用される、特に実施に関するさらなる詳細を提供する場合に使用される、本明細書中で言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許または特許出願が参照により具体的かつ個別的に援用される場合と同程度に、参照により本明細書中に援用される。
本発明はその好ましい態様を参照して具体的に示され記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細において種々の変更が本明細書中になされ得ることが当業者に理解されよう。

Claims (29)

  1. 哺乳動物においてGpr12活性を調節する有効量の薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む方法。
  2. 哺乳動物が成体哺乳動物である、請求項1記載の方法。
  3. 哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
  4. 前記投与工程により長期記憶形成の調節が生じる、請求項1記載の方法。
  5. 長期記憶形成が増強される、請求項4記載の方法。
  6. 前記長期記憶形成の前記調節を検出する工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
  7. 前記調節の前記検出工程が海馬依存性認知課題の調節の検出である、請求項6記載の方法。
  8. 前記調節の前記検出工程が扁桃体依存性認知課題の調節の検出である、請求項6記載の方法。
  9. 前記調節の前記検出工程が海馬依存性認知課題および扁桃体依存性認知課題の調節の検出である、請求項6記載の方法。
  10. Gpr12活性の調節が哺乳動物におけるGpr12タンパク質発現の調節を含む、請求項1記載の方法。
  11. 前記投与工程により認知機能の増強が生じる、請求項1記載の方法。
  12. 特定の認知課題の成績の改善を生じるのに充分な条件下で哺乳動物を訓練する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
  13. 前記投与工程なしの訓練工程のみで達成される前記認知課題の成績と比較して成績増大が達成される、請求項12記載の方法。
  14. 訓練工程が複数の訓練セッションを含む、請求項12記載の方法。
  15. 訓練工程が間隔訓練セッションを含む、請求項12記載の方法。
  16. 前記薬剤がそれぞれの訓練セッションの前および/または間に投与される、請求項12記載の方法。
  17. 前記薬剤が、有効量のGpr12 siRNA分子、生物学的に活性な有効量のGpr12アンチセンス断片および/またはGpr12タンパク質特異的な有効量の抗体の1つ以上を含む、請求項1記載の方法。
  18. (a)Gpr12タンパク質を発現する宿主細胞に目的の薬剤を導入する工程;および(b)Gpr12機能を決定する工程を含む方法であって、前記薬剤が投与されなかった(a)の宿主細胞のGpr12機能と比較して(b)で決定されたGpr12機能の差によって、Gpr12機能を調節し得るものとして薬剤が同定される、方法。
  19. (a) Gpr12機能を調節する薬剤を哺乳動物に投与する工程;(b)工程(a)の哺乳動物および前記薬剤が投与されなかった同種の対照哺乳動物を、前記哺乳動物において長期記憶形成が生じるのに充分な条件下で訓練する工程;(c)工程(b)で訓練された哺乳動物の長期記憶形成を評価する工程;ならびに(d)工程(c)で評価された哺乳動物の長期記憶形成を比較する工程を含む方法であって、対照哺乳動物で評価された長期記憶形成に対する薬剤を投与された哺乳動物で評価された長期記憶形成の差によって、長期記憶形成を調節し得るものとして薬剤が同定される、方法。
  20. 前記哺乳動物が成体哺乳動物である、請求項19記載の方法。
  21. 前期哺乳動物がヒトである、請求項19記載の方法。
  22. 前記長期記憶形成が海馬依存性長期記憶形成である、請求項19記載の方法。
  23. 前記長期記憶形成が扁桃体依存性長期記憶形成である、請求項19記載の方法。
  24. 前記長期記憶形成が海馬依存性および扁桃体依存性長期記憶形成である、請求項19記載の方法。
  25. Gpr12活性の調節が哺乳動物におけるGpr12タンパク質発現の調節を含む、請求項19記載の方法。
  26. 訓練工程が複数の訓練セッションを含む、請求項19記載の方法。
  27. 訓練工程が間隔訓練セッションを含む、請求項19記載の方法。
  28. 前記薬剤が各訓練セッションの前および/または間に投与される、請求項19記載の方法。
  29. 前記薬剤が、有効量のGpr12 siRNA分子、生物学的に活性な有効量のGpr12アンチセンス断片および/またはGpr12タンパク質特異的な有効量の抗体の1つ以上を含む、請求項19記載の方法。
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