JP2010516632A - フタリド化合物のダイマーの抗腫瘍作用 - Google Patents

フタリド化合物のダイマーの抗腫瘍作用 Download PDF

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Abstract

本発明は、広域の抗腫瘍活性を持ち、直接に腫瘍細胞の増殖を抑制し、又は死亡に誘導することだけではなく、血管新生を抑制することにより、間接に腫瘍の進行を抑制することもできるフタリド化合物のダイマーの用途を公開する。そして、前述のフタリド化合物のダイマーは、抗腫瘍剤として単独で或は多種を併せて使用することができ、また化学療法剤と併用し、化学療法剤の薬効を向上させ、化学療法剤の毒性を低減させることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、医薬品の分野に属し、抗腫瘍薬の製造に単独で或は併せて使用できる一種類のフタリド化合物のダイマーの使用に関する。
世界保健機関(WHO)の統計資料によると、癌は全世界で毎年約1,000万人が発症し、約700万人が死亡し、既に心臓血管疾患に続く人類の第二の死因となっていることがわかった。現在、臨床で用いられる化学療法剤は主に細胞毒性薬なので、正常細胞は癌細胞とともに致死される。いくつの原因遺伝子の単一な白血病の治療は顕著な進展が得られた以外、固形腫瘍において、化学療法の効果は限界があり、且つ毒副作用が顕著である。したがって、天然動・植物から毒性が低く、治療効果が良好で、ターゲットが明確で、機序が新しい抗癌前駆化合物を探すのは、ずっと国内外の科学者の研究のホットスポットの一つである。
漢方薬は何千年もの医療実践によって実証され、世界中でより多くの人に知られて利用されてきている。近年、生薬の抗癌の有効成分の研究は迅速な進歩が得られ、すでに腫瘍細胞を抑制或は致死できる成分がいくつか見出された。
しかしながら、生薬は種類が多く、且つ活性成分が複雑なので、本分野では、今、生薬における抗癌活性成分についてまだよく知られていない。したがって、毒性が低く、抗薬剤耐性で、多数のターゲット或はルートで腫瘍細胞を抑制或は致死できる活性成分を見つけるため、さらに癌に有効な活性成分を生薬から分離して研究することが必要である。
発明の内容
本発明は一種類の優れた抗腫瘍効果を持つ化合物を提供することを目的とする。
本発明の第一は、抗腫瘍組成物の製造のための、一般式(I)で表されるフタリド化合物のダイマーの使用を提供する。
Figure 2010516632
(式中、
R1は、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C1-C8アルコキシ基、C1-C4カルボキシ基、ハロゲン原子を表す。
R2は、なしで、或は、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C1-C8アルコキシ基、C1-C4カルボキシ基、ハロゲン原子を表す。
R3とR4は、独立に、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C1-C8アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。
R5とR8は、独立に、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C1-C8アルコキシ基、C1-C4カルボキシ基、フェニル基、アリール基、アラルキル基、窒素原子を1-2個含有する5-6員の複素環、ハロゲン原子を表す。
R6とR7は、独立に、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C1-C4カルボキシ基、ハロゲン原子を表す。或は、R6とR7とは結合してともに5-7員環を形成する。
Figure 2010516632
は、A環に二重結合が1-3個あることを表す。
だだし、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環は、C1-C3アルキル基、水酸基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる0-3個の置換基を有する)。
本発明の好ましい例において、前述のフタリド化合物は、以下のものから選ばれる構造を持つ。
Figure 2010516632
(式中、R1-R8は前述と同じ意味を表す)。
本発明の他の好ましい例において、前述のフタリド化合物のダイマーは、以下のものから選ばれる構造を持つ。
Figure 2010516632
本発明の他の好ましい例において、前述のフタリド化合物のダイマーは、以下のものから選ばれる構造を持つ。
Figure 2010516632
本発明の他の好ましい例において、前述の組成物は、2種或は2種以上のフタリド化合物のダイマーを含有する。
本発明の他の好ましい例において、前述の抗腫瘍組成物は、直接に腫瘍細胞の増殖を抑制し、又は死亡に誘導する。或は、前述の抗腫瘍組成物は、腫瘍の血管新生を抑制することにより、間接に腫瘍の進行を抑制する。
本発明の他の好ましい例において、前述の抗腫瘍組成物は、カスパーゼ依存、或はカスパーゼ非依存のミトコンドリアアポトーシス経路を誘導する。
本発明の他の好ましい例において、前述の腫瘍は、薬物感受性腫瘍、アポトーシス抵抗性を持つ腫瘍、或は薬剤耐性腫瘍である。
本発明の他の好ましい例において、前述の腫瘍は、非小細胞性肺癌、肝臓癌、脳腫、白血病、前立腺癌、腸癌、骨髄腫、リンパ腫、乳癌、卵巣癌、胃癌、小細胞性肺癌、食道癌、結腸癌、及び肉腫からなる群から選ばれる。
本発明の他の好ましい例において、前述の抗腫瘍組成物は、さらに、化学療法剤の薬効を向上させ、化学療法剤の毒性を低減させるため、及び/又は腫瘍の転移に抵抗するために用いられる。
本発明の他の好ましい例において、前述の抗腫瘍組成物は、さらに、少なくとも1種の他の抗腫瘍薬(例えば、化学療法剤)を含有する。
本発明の他の好ましい例において、前述の他の抗腫瘍薬は、分子標的薬(例えば、ゲフィチニブ(Gifitinib)、エルロチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブ)、細胞毒性薬(例えば、ビンブラスチン系薬物、アントラサイクリン系薬物、抗生物質系薬物、代謝系薬物)、或は分化誘導剤を含むが、これらに限定されない。
本発明の第二は、抗腫瘍組成物の製造のための、一般式(I)で表されるフタリド化合物のダイマーの使用を提供する。
Figure 2010516632
(式中、R1-R8は前述と同じ意味を表す)。
本発明の第三は、治療が必要な哺乳動物に一般式(I)で表されるフタリド化合物のダイマーを使用する工程を含む、腫瘍を治療する方法を提供する。
Figure 2010516632
(式中、R1-R8は前述と同じ意味を表す)。
本発明の他の好ましい例において、前述のフタリド化合物のダイマーの使用量は、1-400mg/kg体重(より好ましくは10-200mg/kg体重、さらに好ましくは10-100mg/kg体重)である。
本発明の他の主旨は、本文の公開される内容により、この分野の技術者にとっては明らかになっている。
図1は、フタリド化合物或はそのダイマーのクロマトグラムを示す。 図2は、フタリド化合物のダイマーS1-S6の異なる細胞株(Kasumi-1、U251、Bel-7402、NCI-H446、NCI-H1299及びU87MG)に対する増殖抑制作用を示す。 図3は、フタリド化合物のダイマーが薬剤耐性(HL60/ADR、KBv200、NB4-R2、Bel-7402/5-FU)と非薬剤耐性の細胞株(HL60、KB、NB4、Bel-7402)に対して近似の増殖抑制効果を持つことを示す。 図4は、フタリド化合物のダイマーによる細胞G0/G1期停止作用を示す。その中、図4Aは、S4とS6でU87、HL60とH1299を処理した後得られたフローサイトメトリー解析図であり、controlは対照を示し、すなわち、フタリド化合物のダイマーで処理されていない各細胞のフローサイトメトリー解析図である。図4Bは、それぞれS1-S6でH1299細胞を処理した後、細胞周期の様子のヒストグラムであり、その中、対照はフタリド化合物のダイマーで処理されていない各細胞の細胞周期の様子である。 図5は、フタリド化合物のダイマーによって誘導された異なる細胞系の細胞死を示す。その中、図5Aは、それぞれ異なる濃度のS1、S4及びS6でHL60、H1299及びU251を処理した後得られたフローサイトメトリー解析図である。図5Bは、HL60をそれぞれS1-S6で処理した(濃度10μg/mL、48時間)後のPI陽性率である。図5Cは、H1299をそれぞれS1-S6で処理した(濃度20μg/mL、48時間)後のPI陽性率である。図5Dは、U251をそれぞれS1-S6で処理した(濃度10μg/mL、48時間)後のPI陽性率である。その中、対照はフタリド化合物のダイマーで処理されていない細胞の相応の様子である。 図6は、フタリド化合物のダイマーによって誘導された非薬剤耐性細胞(KB、HL60、NB4、Bel-7402)と薬剤耐性細胞(KBv200、HL60/ADR、NB4-R2、Bel-7402/5-FU)の死亡のフローサイトメトリー解析図を示す。その中、con対照はフタリド化合物のダイマーで処理されていない細胞のフローサイトメトリー解析図である。 図7は、フタリド化合物のダイマーがカスパーゼ非依存のミトコンドリア経路によって癌細胞の死亡を誘導したことを示す。 図8は、フタリド化合物のダイマーの鶏胚漿尿膜の血管新生に対する抑制を示す。図8Aは、顕微鏡で観察されたS1-S6の鶏胚漿尿膜の血管生長に対する影響の様子を示し、その中、対照はフタリド化合物のダイマーで処理されていない鶏胚漿尿膜の血管生長の様子である。図8Bは、異なる濃度のS1-S6化合物の血管新生抑制率を示す。 図9は、異なる投与量のフタリド化合物のダイマー及びフタリド化合物のモノマー(n-ブチルフタリド、BP)のBabl/Cヌードマウスの異種移植腫瘍の生長に対する抑制の様子を示し、その中、対照は同体積の溶媒を腹腔注射したマウス、及び同体積の生理食塩水を尾静脈注射したマウスの様子である。 図10は、フタリド化合物のダイマーの毒性低減・効果増加作用を示し、その中、D1、D5、…D30は投与後の日数を表し、対照は同体積の溶媒を腹腔注射したマウス、及び同体積の生理食塩水を尾静脈注射したマウスの様子である。
具体的な実施形態
発明者らは幅広く深く研究した結果、初めて、フタリド化合物のダイマーが広域で、極めて優れた抗腫瘍効果を持ち、その抗腫瘍効果はフタリド化合物のモノマーよりも遥かに優れたことを見出した。さらに、前述フタリド化合物のダイマーは、カスパーゼ依存或は非依存のミトコンドリア経路によって効果的に各種の腫瘍を致死することができ、且つ血管新生に対する抑制作用によって間接に腫瘍の退行を誘導することができることを見出した。また、前述のフタリド化合物のダイマー或はその誘導体は、化学療法剤と併用することによって化学療法剤の薬効を顕著に増加させ且つ化学療法剤の毒副作用を低減させることができる。これに基づき、本発明を完成させた。
本文で用いられる用語の「アルキル基」は、直鎖或いは分枝の飽和の、1-8個の炭素原子(好ましくは1-6個の炭素原子)を有する脂肪族炭化水素類基を表す。前述のアルキル基は分枝でもよく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ヘキシル基などがある。「アルケニル基」は少なくとも1個の炭素-炭素二重結合と2-8個の炭素原子(好ましくは2-6個の炭素原子)を有する直鎖或いは分枝の炭化水素基を含む。「アルキニル基」は少なくとも1個の炭素-炭素三重結合と2-8個の炭素原子(好ましくは2-6個の炭素原子)を有する直鎖或いは分枝の炭化水素基を含む。
本発明で用いられる用語の「アリール基」は芳香族系を表し、単環でもよく、或は、少なくとも縮合した或いは結合した環の一部が芳香族共役系を形成するようにもともと縮合した或いは一体に結合した多芳香環でもよい。アリール基はフェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基を含むが、これらに限定されない。
本発明で用いられる「シクロアルキル基」は3-8個の炭素原子を有するシクロアルキル基を表し、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などがある。
本発明で用いられる「アルコキシ基」は1-8個の炭素原子を有するアルコキシ基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などがある。
本発明で用いられる用語の「複素環」は安定した4-7員(好ましくは5-6員)の単環或いは安定した多環式複素環を表し、この複素環は飽和、部分的に不飽和或いは不飽和のものでもよく、かつ炭素原子とN、O及びS原子から選ばれる1-4個のヘテロ原子からなる。NとS原子は酸化されてもよい。また、複素環は任意な多環を含めてもよい。ここで、上述複素環はいずれも芳香環に縮合してもよい。
「置換されたアリール基」或いは「置換された複素環」は、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、置換されたアルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボキシ基、アルキルアミノ基又はアリールチオ基からなる群から選ばれる1-3個の基で置換されたアリール基或いは複素環を表す。好ましくは、置換基はハロゲン、C1-C4アルキル基、アルキル基、水酸基である。
本発明で用いられる「ハロゲン原子」はハロゲン元素、すなわちF、Cl、Br、或いはIを表す。
活性成分
本発明の抗腫瘍のための活性成分は、式(I)で表されるフタリド化合物のダイマーである。
Figure 2010516632
本発明にかかるフタリド化合物のダイマーは、人工的に合成されたものでも、自然界から分離されたものでもよい。例えば、セリ科植物であるトウキ或はセンキュウから直接にフタリド化合物のダイマーを分離・抽出することができる。或は、トウキ或はセンキュウから前述のフタリド化合物或いはその誘導体のモノマーを分離・抽出し、さらにダイマーに重合させることもできる。或は、全合成の方法により製造することもできる。ダイマーを形成する二つのモノマー(式(I)で表される構造を持つ)の構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。
前述のフタリド化合物のダイマーは、抗腫瘍効果がフタリド化合物のモノマーよりも遥かに優れたので、非常に低投与量で良好な効果が得られる。
用途
本発明は、抗腫瘍組成物の製造のためのフタリド化合物のダイマーの使用を提供する。
本発明にかかるフタリド化合物のダイマーは、カスパーゼ依存或は非依存のミトコンドリア経路によって細胞死を誘導することができることにより、腫瘍細胞、特にアポトーシス抵抗性を持つ腫瘍、或は薬剤耐性腫瘍に対する抑制或は致死に有用で、これについて本発明の実施例に詳細な論証がある。そして、前述のフタリド化合物のダイマーは、顕著に血管新生を抑制する作用を持つため、間接に血管新生を抑制することによって腫瘍の進行と転移を抑制することもできる。
また、前述のフタリド化合物のダイマーは、他の抗腫瘍薬(例えば、化学療法剤)の薬効を向上させるため、及び/又は、化学療法剤の毒性を低減させるためにも用いられる。前述のフタリド化合物のダイマーは、腫瘍細胞に作用することにより、化学療法剤の薬効を向上させ、且つ/又は、化学療法剤の毒性を低減させるため、広域の化学療法剤のいずれにも有効である。前述の化学療法剤は、ゲフィチニブ(Gifitinib)、エルロチニブ、ソラフェニブ、ベバシズマブのような分子標的薬、ビンブラスチン系、アントラサイクリン系、抗生物質系、代謝系のような細胞毒性薬、及び分化誘導剤などを含むが、これらに限定されない。
薬剤組成物
本発明は、活性成分としての本発明にかかるフタリド化合物のダイマー、及び一種或いは多種の薬学的に允許される担体或いは賦形剤(例えば溶剤、希釈剤)を含有する組成物も含む。前述の「薬学的に允許される」成分は、ヒト及び/又は動物に適用する場合、過度の不良な副反応(例えば毒性、刺激とアレルギー反応)がなく、すなわち、合理的なベネフィット/リスク比を持つ物質である。本発明に使用できる薬学的に允許される担体は、各種の通常の固体担体と液体担体を含む。例えば、固体担体は、淀粉、ラクトース、りん酸水素カルシウム、微結晶セルロースなどを、液体担体は無菌水、ポリエチレングリコールなどを含み、活性成分の特性と要求される特定な薬剤の給与の様態に適すればよい。
本発明の組成物は、例えば、錠剤、カプセル、分散できる粉末、顆粒、或は懸濁液、シロップ(例えば約10-50%の砂糖を含有する)、及びエリキシル剤(例えば約20-50%のエタノールを含有する)などの各種の通常の様態としてもよく、或いは無菌の注射できる溶液又は懸濁液の様態で(等張媒体に約0.05-5%の懸濁化剤を含有する)非胃腸投与してもよい。例えば、これらの薬物製剤は、担体と混合した約0.01-99.9wt%、好ましくは2.5-90wt%、より好ましくは5-60%wtの活性成分を含有することができる。
本発明の組成物は、単独で1種のフタリド化合物のダイマーを、或は、任意に、同時に1種以上の前述のフタリド化合物のダイマーを含有してもよい。
他の好ましい薬物組成物は、同時に他の抗腫瘍薬(例えば、化学療法剤)を含有する。例えば、(a)0.01-99wt%(好ましくは0.1-90wt%)のフタリド化合物のダイマーと、(b)0.01-99wt%(好ましくは0.1-90wt%)の抗腫瘍薬と、(c)薬学的に允許される担体を含有する。通常、成分(a)と成分(b)の重量比は1:100〜100:1、好ましくは10:1〜1:10である。
前述の薬物組成物は、さらに他の添加剤、例えば色素、防腐剤、酸化防止剤などを含有してもよい。
用いられる活性成分の有効投与量は、投与の様態と治療しようとする疾病の重篤度によって変更できるが、通常、毎日約1-400mg/kg体重の投与量で投与する場合、満足できる効果が得られるが、好ましくは毎日2-4回にわけた投与量で、或いは徐放性製剤の形態で投与する。本発明者らは、治療に用いる場合、低投与量の本発明のフタリド化合物のダイマーだけで、良好な抗腫瘍効果が実現でき、必要な投与量は、通常、2-200 mg/kg体重、好ましくは10-100 mg/kg体重であることを実践で見出した。
治療方法
本発明は、さらに、治療が必要な哺乳動物に安全有効量のフタリド化合物のダイマーを使用する工程を含む腫瘍を治療する方法を提供する。前述の「安全有効量」とは、ヒト及び/又は動物に機能或は活性が生じ、且つヒト及び/又は動物が耐えられる量という。好ましくは、この方法は、さらに、同時に他の抗腫瘍薬或いは他の治療手段(例えば化学療法)と併用する工程を含む。
フタリド化合物のダイマーを単独で、或いは併せて使用すると、各種の異なる腫瘍を治療することができる。代表的な例は、非小細胞性肺癌、肝臓癌、脳腫、白血病、前立腺癌、腸癌、骨髄腫、リンパ腫、乳癌、卵巣癌、胃癌、小細胞性肺癌、食道癌、結腸癌、及び肉腫を含むが、これらに限定されない。
フタリド化合物のダイマーの投与の様態について、特に限定されない。経口及び静脈内、筋肉内、局所、腫瘍内又は皮下などの様態で投与することができる。好ましい様態は、経口、静脈内、又は腫瘍内の投与である。
本発明の主な利点は下述の通りである。
(1)初めて、フタリド化合物のダイマーは、広域で、極めて優れた腫瘍を抑制或は致死する効果を持ち、その抗腫瘍効果はフタリド化合物のモノマーよりも遥かに優れ、且つ前述フタリド化合物のダイマーは、ミトコンドリア経路によって効果的に各種の腫瘍を致死することができることを見出した。
(2)初めて、フタリド化合物のダイマーは、顕著に血管新生を抑制する作用を持つため、間接に腫瘍の増殖を抑制することができることを見出した。
(3)前述のフタリド化合物のダイマーは、化学療法剤と併用することによって化学療法剤の薬効を顕著に増加させ且つ化学療法剤の毒副作用を低減させることができる。
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われる。
実施例1.一部のフタリド化合物のダイマーの製造
生薬(センキュウ或いはトウキ100kg)を95%エタノールで3回還流抽出し、ろ液を合併して濃縮した後、水を入れてアルコール濃度が約80%になるまで希釈し、石油エーテルで3回抽出し、アルコールの匂いがなくなるまで溶媒を回収し、得られたエキスを水で溶解させ、さらに酢酸エチルとn-ブタノールの順で抽出した。酢酸エチル部は5%NaHCO3水溶液で酸性物質を除去した後、中性になるまで水で洗浄し、エキスに濃縮し、シリカゲルカラムにかけ、20:1→10:1→5:1の石油エーテルと酢酸エチルで勾配溶出し、1-5番目の画分を合併してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を繰り返し、S3が得られ、すなわち、図1において、第1号のピークである。20-24番目の画分を合併してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を繰り返し、酢酸エチルで再結晶し、S2とS6が得られ、すなわち、図1において、第16と17号のピークである。31番目の画分を酢酸エチルで再結晶し、S4とS5が得られ、すなわち、図1において、第20と15号のピークである。32-40番目の画分を合併してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を繰り返し、またS4とS1が得られ、S1は、図1において、第18号のピークである(本方法は、文献:薬学学報Acta Pharmaceutica Sinica 2005, 40 (2) : 141-144を参照)。
得られた化合物S1-S6は、フタリド化合物のダイマーである。
Figure 2010516632
1H-NMR(CDCl3) δ2.02, 2.08 (それぞれ1H, m, H-4) 1.50, 1.91 (それぞれ1H, m, H-5) 2.55 (1H,t, J=7.8, H-6) 3.28 (1H,d,J=7.8, H-7) 5.58(1H,t,J=8.1,H-8) 2.29 (2H,q,J=7.3,H-9) 1.46 (2H, m, H-10) 0.93 (3H,t,J=7.3,H-11) 1.4, 2.03 (1H,m,H-4’) 1.30,1.88(1H,m,H-5’) 2.99 (2H,m,H-6’) 7.38 (1H,d,J=6.8, H-7’) 5.0 (1H,t,J=7.6,H-8’) 2.18 (2H,m,H-9’) 1.45 (2H,m,H-9’) 0.92 (3H,t,J=7.3)
13C-NMR(CDCl3) δ164.9 (C-1), 150.3 (C-3), 153.4 (C-3a), 22.2 (C-4), 29.0 (C-5), 38.3 (C-6), 41.5 (a,C-7), 129.6 (C-7a), 115.6 (C-8), 27.5 (C-9), 22.8 (C-10), 13.7 (b,C-11), 164.9 (C-1’), 150.4 (C-3’), 47.7 (C-3’a), 31.1 (C-4’), 25.7 (C-5’), 41.2 (a,C-6’), 142.0 (C-7’), 134.3 (C-7’a), 108.8 (C-8’), 27.8 (C-9’), 23.1 (C-10’), 13.9 (b,C-11’)
Figure 2010516632
1H-NMR(CDCl3) δ2.232,2.635 (それぞれ1H,m,H-4) 2.18,2.115 (それぞれ1H,m,H-5) 2.749 (1H,m,H-6) 3.659 (1H,d,J=8.2,H-7) 5.23 (1H,t,J=7.8,H-8) 2.33 (2H,m,H-9) 1.49 (2H,m,H-10) 0.95 (3H,t,J=7.4,H-11) 2.74 (1H,ddd,J=7.6,1.0,1.0,H-4') 7.74 (1H,ddd,J=7.6,7.5,1.0,H-5') 7.53 (1H,ddd,J=7.6,1.0,1.0,H-6') 7.83 (1H,ddd,J=7.6,1.0,1.0, H-7') 3.14(1H,dt,J=7.8,7.8,H-8') 1.44 (2H,m,H-9') 0.99 (2H,m,H-10') 0.76 (3H,t,J=7.4,H-11')
13C-NMR(CDCl3) δ168.5 (C-1), 149.4 (C-3), 154.8 (C-3a), 19.9 (C-4), 21.3 (C-5), 32.4 (C-6), 38.7 (C-7), 122.6 (C-7a), 112.2 (C-8), 28.1 (C-9), 22.5 (C-10), 14.3 (C-11), 170.3 (C-1’), 91.0 (C-3’), 151.1 (C-3’a), 121.0 (C-4’), 134.7 (C-5’), 129.7 (C-6’), 125.0 (C-7’), 125.7 (C-7’a), 47.6 (C-8’), 26.5 (C-9’), 20.8 (C-10’), 14.1 (C-11’)
Figure 2010516632
1H-NMR(CDCl3) δ2.01,2.4 (それぞれ1H,m,H-4) 2.02,2.6 (それぞれ1H,m,H-5) 2.89 (1H,dd,H-6) 3.54 (1H,d,J=10.0,H-7) 5.24 (1H,t,J=8.0,H-8) 2.4 (2H,m,H-9) 1.50 (2H,m,H-10) 0.95 (3H,t,J=7.5,H-11) 2.17 (1H,d,J=13.0,3.0, H-3’α) 2.2 (2H,m,H-4’) 2.1(2H,m,H-5’) 5.96 (1H,dt,J=10.0,3.0, H-6’) 6.14 (1H,dt,J=10.5, H-7’) 1.84,1.90(それぞれ1H,m,H-9’) 1.41,1.53 (それぞれ1H,m,H-10’) 1.00 (3H,t,J=7.0,H-11’)
13C-NMR(CDCl3) δ167.9 (C-1), 147.8 (C-3), 155.5 (C-3a), 18.2 (C-4), 22.8 (C-5), 38.5 (C-6), 35.1 (C-7), 123.7 (c,C-7a), 113.4 (C-8), 28.0 (C-9), 22.3 (C-10), 13.9 (C-11), 170.3 (C-1'), 88.3 (C-3'), 44.5 (C-3'a), 22.4 (c,C-4'), 24.5 (C-5'), 130.8 (C-6'), 124.8 (C-7'), 49.7 (C-7'a), 207.9 (C-8'), 31.7 (C-9'), 15.5 (C-10'), 14.3 (C-11')
Figure 2010516632
1H-NMR(CDCl3) δ2.02, 2.18 (それぞれ1H, m, H-4) 1.50, 1.91 (それぞれ1H, m, H-5) 2.54 (1H,t, J=7.8, H-6) 3.25 (1H,d,J=7.8, H-7) 5.07(1H,t,J=7.8,H-8) 2.30 (2H,q,J=7.3,H-9) 1.46 (2H, m, H-10) 0.93 (3H,t,J=7.3,H-11) 1.34, 2.03 (1H,m,H-4’) 1.30,1.85(1H,m,H-5’) 2.99 (2H,m,H-6’) 7.36 (1H,d,J=6.6, H-7’) 5.0 (1H,t,J=7.6,H-8’) 2.18 (2H,m,H-9’) 1.45 (2H,m,H-9’) 0.92 (3H,t,J=7.3)
13C-NMR(CDCl3) δ168.4 (C-1), 148.0 (C-3), 155.0 (C-3a), 19.8 (C-4), 29.0 (C-5), 38.3 (C-6), 41.6 (a,C-7), 126.6 (C-7a), 112.1 (C-8), 28.0 (C-9), 22.3 (C-10), 13.9 (b,C-11), 164.9 (C-1’), 150.5 (C-3’), 47.6 (C-3’a), 31.1 (C-4’), 25.8 (C-5’), 41.5 (a,C-6’), 142.0 (C-7’), 134.3 (C-7’a), 108.8 (C-8’), 27.5 (C-9’), 22.3 (C-10’), 13.8 (b,C-11’)
Figure 2010516632
1H-NMR(CDCl3) δ4.56 (1H,m,H-3) 1.98, 2.08 (それぞれ1H,m,H-4) 1.53,1.90 (それぞれ1H,m,H-5) 2.54 (1H,m,H-6) 3.18 (1H,d,J=8.9,H-7) 1.38,1.70 (それぞれ1H,m,H-8) 1.26 (2H,m,H-9) 1.45 (2H,m,H-10) 0.93 (3H,t,J=7.34,H-11) 1.40,2.03 (それぞれ1H,m,H-4’) 2.30,1.87 (それぞれ1H,m,H-5’) 2.97 (1H,m,H-6’) 7.33 (1H,d,J=6.6,H-7’) 4.98 (1H,t,J=7.3) 2.18 (2H,q,J=7.8,H-9’) 1.44 (2H,m,H-10’) 0.93 (3H,t,J=7.3,H-11’)
13C-NMR(CDCl3) δ165.0 (C-1), 82.4 (C-3), 47.3 (C-3a), 30.9 (C-4), 25.7 (C-5), 41.6 (C-6), 141.9 (C-7), 134.5 (C-7a), 32.2 (C-8), 26.5 (C-9), 22.3 (C-10), 13.7 (C-11), 171.9 (C-1’), 150.5 (C-2’), 168.1 (C-3a), 22.4 (C-4’), 28.8 (C-5’), 38.3 (C-6’), 41.7 (C-7’), 127.1 (C-7a’), 108.6 (C-8’), 27.4 (C-9’), 22.2 (C-10’), 13.9 (C-11’)
Figure 2010516632
1H-NMR(CDCl3) δ2.02,2.57 (それぞれ1H,m,H-4) 2.02,2.17 (それぞれ1H,m,H-5) 2.55 (1H,m,H-6) 3.47 (1H,d,J=7.3,H-7) 5.21 (1H,t,J=7.8,H-8) 2.33 (2H,m,H-9) 1.50 (2H,m,H-10) 0.95 (3H,t,J=7.6,H-11) 2.58,2.74 (それぞれ1H,m,H-4’) 2.47,2.75 (それぞれ1H,m,H-5’)5.93 (1H,dt,J=9.6,4.1, H-6’) 6.17 (1H,dt,J=9.6, 1.8, H-7’) 2.94 (1H,q,J=7.8,H-8’) 1.45 (2H,m,H-9’) 1.14 (2H,m,H-10’) 0.87 (3H,t,J=7.6,H-11’)
13C-NMR(CDCl3) δ168.5 (C-1), 149.2 (C-3), 154.6 (C-3a), 19.6 (C-4), 26.2 (C-5), 35.0 (c,C-6), 44.0 (C-7), 122.3 (c,C-7a), 112.2 (C-8), 28.0 (C-9), 22.4 (C-10), 13.9 (C-11), 170.3 (C-1’), 92.0 (C-3’), 160.1 (C-3’a), 21.0 (c,C-4’), 20.7 (c,C-5’), 138.7 (C-6’), 117.0 (C-7’), 122.5 (d,C-7’a), 32.3 (c,C-8’), 20.0 (c,C-9’), 22.6 (C-10’), 14.1 (C-11’)
得られたS1-S6のフタリド化合物のダイマーは、後の試験に供された。
実施例2-5 細胞学的効果評価
以下の実施例において、用いられた細胞系は、H1299、H446(ヒト肺癌細胞系)、KB(ヒト口腔扁平上皮癌細胞系)、NB4、HL60(ヒト白血病細胞系)、U251、U87MG(ヒト悪性膠腫細胞系)、MCF-7(ヒト乳癌細胞系)、Bel-7402とSMMC7721(ヒト肝細胞癌細胞系)、SW620(ヒト結腸癌細胞系)、HDF(ヒト真皮線維芽細胞)、HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞株)及びKasumi-1(ヒト急性骨髄性白血病細胞系)で、いずれも米国組織・細胞バンク(ATCC)から入手した。
HL60/ADR、MCF-7/ADR、K562/ADR、Bel-7402/5-FU、KBV200、SMMC7721/Adrは、それぞれ、HL60、MCF-7、K562、Bel-7402、KB、SMMC7721の細胞に化学療法剤であるアドリアマイシン(Adriamycin、ADR)、5-フルオロウラシル(5-Flourouracil、5-FU)或はビンクリスチン(vincristine、VCR)の薬剤耐性亜株(いずれも中国医学科学院から入手)で、NB4-R2は、全トランス型レチノイン酸(ATRA)の薬剤耐性亜株(上海交通大学医学院の病理生理教学研究室から入手)である。その中、K562/ADRの主な薬剤耐性の機序は、P-糖タンパク(P-glycoprotein、P-gp)の高発現で、同時にBcl-2発現の向上もある。MCF-7/ADRの薬剤耐性の機序は、P-gpの高発現以外、乳癌薬剤耐性タンパク(Breast Cancer Resistant Protein、BCRP)も同時に高発現である。HL60/ADRの主な薬剤耐性の機序は、多薬剤耐性タンパク1(Multidrug Resistance Protein 1、MRP1)の高発現で、同時にBcl-2、Bcl-xLの高発現が伴う。Bel-7402/5-FUの主な薬剤耐性は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST;Glutathione S Transferase π、GST-π)の発現向上とBcl-xLと関わる。KBV200の主な薬剤耐性の機序は、P-gpの高発現及びその活性増加である。NB4-R2のATRAに対する薬剤耐性の機序は、RAR遺伝子サイトの突然変異である。
実施例2.細胞学的効果評価-増殖抑制作用
対数増殖期のヒト肺癌細胞のH1299とH446、膠腫細胞のU251とU87MG細胞及びヒト肝細胞癌のBel-7402細胞をパンクレアチンで消化し、10%牛胎児血清を含有するDMEM或はRPMI1640で浮遊させ、白血病細胞Kasumi-1は消化せず、遠心後直接に10%牛胎児血清を含有するRPMI1640で浮遊させた。細胞計数によってその密度が1×104細胞/mlになるように調節し、この細胞浮遊液を100μl/ウェルでそれぞれ96ウェルプレートに接種した(細胞を合計で6群接種した)。接着細胞は一夜培養し、浮遊細胞は直接に異なる濃度勾配のフタリド化合物のダイマー(S1-S6)を入れ、各種の薬剤の各濃度に平行重複ウェルを6個設け、各ウェルの最終体積を200μlとし、不足分を培地で補充し、37℃、飽和湿度、5%CO2の細胞インキュベーターで68時間培養した。培養液を引き出し、培地を72μl/ウェルで入れ、同時にコレシストキニン-8(CCK-8)を8μl/ウェルで入れ、2時間培養した後、マイクロプレートリーダーで450nmにおける吸光度値を測定した。技術計算ソフトOrigin 7.0によりシグモイド関数で抑制が50%になった時点の薬物濃度をIC50として算出した。
結果は図2を参照し、S1-S6はヒトの異なる癌細胞のいずれにも顕著な生長抑制作用を持つことが明らかになった。比較的に、S4は大多数の癌細胞系に対する生長抑制効果が最も優れた。
実施例3.薬剤耐性の機序の異なる細胞株の薬剤耐性の克服
各種の癌細胞(用いられた細胞の種類は表1或は図3を参照)を1×103細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、浮遊細胞には直接に異なる濃度のフタリド化合物のダイマー(S1-S6)を入れ、接着細胞には細胞が接着した後異なる濃度のフタリド化合物のダイマー(S1-S6)を入れ、異なるフタリド化合物のダイマーはそれぞれ0、0.1、0.5、1、5、10、20、40、80、160μg/mlの10種の濃度に分け、各濃度に重複のウェルを6個設けた。
実施例2の方法に従ってMTTを測定し、且つIC50を算出した。実験は、3回重複した。
S1-S6のダイマーの感受性細胞及びその薬剤耐性細胞亜株に対する生長抑制作用の測定結果(IC50(μg/ml))は表1と図3の通りである。
Figure 2010516632
表1と図3に示される結果から、フタリド化合物のダイマーは、異なる機序による薬剤耐性細胞に感受性細胞とほぼ同様な作用効果を持つことがわかった。これは、フタリド化合物のダイマーは、多種の薬剤耐性の機序の腫瘍薬剤耐性を克服することができることを証明した。中でも、特にS4とS6の効果が良好である。
実施例4.細胞学的効果評価-細胞周期のG0/G1期における停止を引き起こす
S1-S6は全部10μg/mlと20μg/mlの濃度でそれぞれU87、HL-60及びH1299細胞に48h作用した後、1×106細胞を収集し、冷PBSで2回洗浄し、70%のエタノールで4℃で24h固定した。細胞をPBSで洗浄し、RNA酵素を含有するTris-HCl緩衝液(pH7.4)とともに30minインキュベート(37℃)した。その後、最終濃度50μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI)で遮光下30 min染色し、フローサイトメトリーで細胞のDNA含有量を分析した。データはModfitソフト(BD社)で収集・保存・分析した。
結果は図4Aと図4Bの通りで、その中、図4Aは、S4とS6でU87、HL60とH1299を処理した後得られたフローサイトメトリー解析図であり、controlは対照を示し、すなわち、フタリド化合物のダイマーで処理されていない各細胞のフローサイトメトリー解析図である。図4Bは、それぞれS1-S6でH1299細胞を処理した後、細胞周期の様子のヒストグラムであり、その中、対照はフタリド化合物のダイマーで処理されていない各細胞の細胞周期の様子である。
結果から、フタリド化合物のダイマーは腫瘍細胞に顕著なG0/G1期停止作用を持つことが明らかになった。
実施例5.細胞学的効果評価-細胞死の誘導効果
生長状態が良好なHL-60、H1299、U251細胞にそれぞれ異なる濃度のS1-S6(濃度は図5に示すように)を入れ、48h培養した。細胞を収集し、最終濃度10μg/mlのローダミン123(Rh123)染色液で37℃で20minインキュベートし、冷却したPBSで細胞を2回洗浄し、さらに細胞をPBSに浮遊させ、最終濃度25μg/mlのPIを入れ、室温で遮光下15 minインキュベートし、フローサイトメトリーでミトコンドリアの膜電位とPI陽性細胞を検出し、PI陽性細胞の比率を細胞死亡率として計数した。
結果は図5の通りで、図5Aは、異なる濃度のS1、S4及びS6でHL60、H1299及びU251を処理した後得られたフローサイトメトリー解析図である。図5Bは、HL60をそれぞれS1-S6で処理した(濃度10μg/mL、48時間)後のPI陽性率である。図5Cは、H1299をそれぞれS1-S6で処理した(濃度20μg/mL、48時間)後のPI陽性率である。図5Dは、U251をそれぞれS1-S6で処理した(濃度10μg/mL、48時間)後のPI陽性率である。対照はフタリド化合物のダイマーで処理されていない細胞の対応の様子である。
図5の結果から、各フタリド化合物のダイマーはいずれも顕著なのミトコンドリアの膜電位の降下と死亡を誘導する作用を持つことが明らかになった。中でも、S4の細胞死を誘導する効果は最も良好である。
実施例6.薬剤耐性の機序の異なる各薬剤耐性細胞の死亡の誘導効果
状態が良好な感受性細胞HL60、NB4、Bel-7402、KB及びこれらの薬剤耐性細胞株HL60/ADR、NB4-R2、Bel-7402/5-FU、KBv200にフタリド化合物のダイマーS3、S4、S5、S6(濃度はそれぞれ図6Aに示すように)を入れ、48h培養し、細胞を収集し、最終濃度10μg/mlのRh123染色液で37℃で20minインキュベートし、冷却したPBSで細胞を2回洗浄し、さらに細胞をPBSに浮遊させ、最終濃度25μg/mlのPIを入れ、室温で遮光下15 minインキュベートし、フローサイトメトリーで検出し、結果は図6Aの通りである。
Bcl-2とBcl-xlを含有する真核発現担体はそれぞれHL-60細胞に一時的トランスフェクションを24時間行い(トランスフェクション試薬はInvitrogen社のTransfection 2000キットを使用し、プロトコールはマニュアルを参照)、Bcl-2或はBcl-xlの高発現を機序とする薬剤耐性細胞を形成し、それぞれフタリド化合物のダイマーS4を15μg/ml入れ、24時間培養し、細胞を収集し、10μg/mlのローダミン123(Rh123)染色液で37℃で20minインキュベートし、冷却したPBSで細胞を2回洗浄し、さらに細胞をPBSに浮遊させ、最終濃度25μg/mlのPIを入れ、室温で遮光下15 minインキュベートし、フローサイトメトリーで検出し、結果は図6Bの通りである。
図6の結果から、フタリド化合物のダイマーは同等に薬剤耐性細胞と非薬剤耐性細胞のミトコンドリアの膜電位の降下と死亡(PI染色陽性)を誘導することができることが明らかになった。これは、フタリド化合物のダイマーは、各種の異なる機序の薬剤耐性作用を克服することができることを証明した。
実施例7.細胞死誘導の分子機序-ミトコンドリア経路による死亡の誘導
正常細胞と薬物処理した細胞を収集し、細胞成分分離キット(Roche)のマニュアルに従ってミトコンドリアと細胞質を抽出した。通常のBCA法で細胞の各成分にタンパク質の定量を行った。等量のタンパク質を取って150g/L SDS-PAGE電気泳動を行った。分離したタンパク質を硝酸セルロースろ過膜に移し、50g/Lの脱脂粉乳で1hブロックし、1:200で希釈したマウス抗ヒトシトクロムC(Cyto-C)、アポトーシス誘導因子(AIF)、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)を入れ、HRP標識IgG(1:200)を入れ、室温でDAB発色を2h行い、β-アクチン或はGAPDHを内部標準とした。
図7Aの結果は、フタリド化合物のダイマーは、ミトコンドリア膜タンパクを放出することによって、カスパーゼ活性化を誘導し、腫瘍細胞をアポトーシス或は死亡に導くことができることを示す。
図7Bの結果は、フタリド化合物のダイマーの死亡を誘導する方式は抗アポトーシスタンパク質であるBcl-2及びMcl-1の減少と直接に関わることを示す。
フタリド化合物のダイマーで処理した細胞は、全カスパーゼ阻害剤であるz-VAD-fmk(z-VAD或はVADと略する。米国Chemicon社から購入)を同時に入れて或は入れずに、フローサイトメトリーでPI染色陽性率を検出し、結果は図7Cの通りである。図7Cの結果のように、全カスパーゼ阻害剤z-VAD-fmkの前処理は部分的にフタリド化合物のダイマーによる腫瘍細胞(NB4)の死亡を抑制することができ、これは抑制された部分の細胞死はカスパーゼ依存の死亡であることを証明した。その中、図における「*」と「**」はそれぞれの対照群と有意差があることを表し、P値はそれぞれ<0.05と<0.01である。「+」と「++」はフタリド化合物のダイマーの単独作用群と有意差があることを表し、P値はそれぞれ<0.05と<0.01である。
図7Dは、フタリド化合物のダイマーで処理したHL60細胞は、Cyto-c、AIFの放出及びカスパーゼ-9、カスパーゼ-3の活性化を起こし、カスパーゼ阻害剤VADでの前処理はフタリド化合物のダイマーによるカスパーゼ-9及びカスパーゼ-3の活性化を抑制することができるが、フタリド化合物のダイマーによるCyto-c、AIFの放出を抑制することができないことを示す。
図7Eは、カスパーゼ阻害剤VADでの前処理はフタリド化合物のダイマーによる腫瘍細胞(HL60及びU87MG)の死亡を抑制することができないことを示し、これがカスパーゼ非依存の細胞死であることが証明された。その中で、「**」はそれぞれの対照群と有意差があることを表し、P<0.01である。
上述のように、図7は、フタリド化合物のダイマーに誘導される細胞死は、カスパーゼ依存とカスパーゼ非依存のミトコンドリア経路のいずれによるものでもよいことを示す。また、H1299はP53欠陥細胞であるが、フタリド化合物のダイマーに対する感受性に影響を与えなかったので、フタリド化合物のダイマーの抗癌機序はP53非依存の経路であることが示唆された。
実施例8.フタリド化合物のダイマーの血管新生に対する抑制
1.血管内皮細胞の抑制試験
2×103個の細胞を96ウェルプレートに入れて24時間培養した後、それぞれ異なる濃度(濃度はそれぞれ0、0.01、0.1、0.5、1、2.5、5、10、20、40、80、160μg/ml)のS1-S6を入れて72h培養し、各濃度に重複のウェルを6個設け、CCK-8で細胞増殖の抑制を検出し、半数抑制率(IC50)を算出し、プロトコールは実施例3と同様であった。
表2の結果は、HUVEC細胞はS1-S6化合物のいずれにも非常に敏感で、IC50は2.56〜5.99の間にあり、腫瘍細胞及び線維芽細胞よりも顕著に低く、中でも、S1の抑制作用が最も顕著であることを示す。これは、フタリド化合物のダイマーは、血管内皮細胞の抑制を優先させることを示し、良好な抗血管新生作用を持つことが示唆された。
Figure 2010516632
腫瘍細胞H1299の培養上清液における血管内皮細胞成長因子(VEGF)含有量の測定:各サンプルは、重複のウェルを3個設け、24ウェルプレートに接種し、それぞれS1-S6でH1299細胞を処理して24h培養し、各群の細胞の培養上清を収集し、VEGF-ELISAキット(晶美社)のマニュアルに従って、順に仕込み、インキュベーション、洗浄、マイクロプレートリーダーによる波長450nmにおける比色を行い、サンプルのOD値を測定した。異なる使用量のVEGF標準品で検量線を作り、上清液におけるVEGFの分泌量を算出した。検出結果は表3の通りである。
Figure 2010516632
表3の結果は、フタリド化合物のダイマーは、顕著に腫瘍細胞の血管内皮細胞成長因子(VEGF)の分泌を抑制し、中でも、S1の抑制作用が最も顕著であることを示す。
2.鶏胚漿尿膜の血管の抑制試験
受精したタマゴ(N=70)を取ってオーブンに置き、37℃、55%相対湿度でタマゴを気室を上として8日孵化した。無菌条件下、鶏胚漿尿膜(CAM)を露出させ、それぞれ生理食塩水が吸着されたS1-S6(5μg/ml)の皿状セルロースディスクでCAMを被覆し、ランダムに7群に分け、群ごとに10個の鶏胚孵化標本とした。輸液シールで窓口を封じ、上に向いてオーブンに置き、37℃、55%相対湿度で3日孵化し、10%ホルムアルデヒドで固定し、メチルセルロース膜を中心としてCAMを切取り、スライドガラスに貼りつけ、脱水して標本とし、解剖顕微鏡で4つの視野における血管分枝点を計数し、公式:((対照群における血管分枝数の合計-投与群における血管分枝数の合計)/対照群における血管分枝数の合計)×100%で血管新生抑制率を算出した。結果は図8の通りである。図8Aは、顕微鏡で観察されたS1-S6の鶏胚漿尿膜の血管生長に対する影響の様子を示し、図8Bは、異なる濃度のS1-S6化合物の血管新生抑制率を示す。
図8に示されるように、フタリド化合物のダイマーは血管新生を抑制することができ、中でも、S1の抑制作用が最も顕著であるとがわかった。表2及び表3の結果と合わせて、フタリド化合物のダイマーの血管新生を抑制する機序は、血管内皮の増殖の優先抑制、腫瘍細胞或は血管間質細胞(鶏胚)のVEGF分泌の減少と関係があることが証明された。
実施例9.生体内における腫瘍抑制効果の評価-ヒト非小細胞性肺癌・肝臓癌・神経膠腫等のヌードマウスの異種移植腫瘍の生長に対する抑制
実験の群分け:Balb/c雄ヌードマウスを選択し、個体の体重を18-22gとした。実験を3回に分け、それぞれU87MG、H1299及びHL-60細胞を接種した。実験ごとに3群に分け、一つの群は対照で、一つの群はフタリド化合物のダイマー群で、もう一つの群はフタリド化合物のモノマー群で、群ごとに6匹とした。
その中で、フタリド化合物のモノマー群は、n-ブチルフタリド(n-butylidenephthalide (BP) 、Sigma社から購入)を抗腫瘍活性成分とし、当該化合物の構造式は以下の通りである。
Figure 2010516632
実験の過程:対数増殖期のH1299、HL-60或はU87MG細胞を取り、計数後適量の無血清DMEM或は1640培地で細胞濃度が1.5×107/mlになるように単一細胞の浮遊液とし、ヌードマウスの右側の皮下に細胞浮遊液を0.2ml/匹、すなわち3×106細胞/匹接種した。腫瘍が0.1-0.5cm3に生長した後(約7-10日)、フタリド化合物のダイマー群は、S4(25mg/kg)、S6(30mg/kg)、S1(32mg/kg)をそれぞれ200μl、フタリド化合物のモノマー群は、n-ブチルフタリド(250mg/kg)を、対照群は、同体積のビヒクル(vehicle)を腹腔注射し、4週間後動物を無痛致死し、皮下の腫瘍を分離し、撮影し(図9A)腫瘍重量を測った(図9B)。
図9は、上述フタリド化合物のダイマー(S4、S6及びS1)は、いずれも非常に顕著な生体内における腫瘍抑制効果を持ち、かつ極低い投与量だけで良好な腫瘍抑制効果が得られることを示す。一方、フタリド化合物のモノマー(BP)は一定の腫瘍抑制効果を持つが、その効果は、明らかにフタリド化合物のダイマーには及ばず、且つ腫瘍抑制効果を得るための投与量が遥かにフタリド化合物のダイマーよりも高い(約10倍或はそれ以上高い)。
実施例10.フタリド化合物のダイマーと化学療法剤との併用の薬効及び毒性低減作用の評価
対数増殖期のBel-7402細胞を取り、計数後、適量の無血清DMEMで細胞濃度が1.5×107/mlになるように単一細胞の浮遊液とした。ヌードマウスの右腋部の皮下に細胞浮遊液を0.2ml/匹、すなわち3×106細胞/匹接種し、接種後10日目にそれぞれ投薬した。
群分けは以下の通りである。
実験群一:30mg/kgのS6を腹腔注射し、生理食塩水を尾静脈注射した。
実験群二:3mg/kgのビンブラスチン(VNB)を尾静脈注射し、S6のビヒクルを腹腔注射した。
実験群三:同時に、30mg/kgのS6を腹腔注射し、3mg/kgのVNBを尾静脈注射した。
対照:同体積のビヒクル(vehicle)を腹腔注射し、同体積の生理食塩水を尾静脈注射した。
各実験群は、ヌードマウスを6匹とし、実験中にマウスの体重の変化(図10Aを参照)と腫瘍体積の大きさ(図10Bを参照)を測定し、その中で、図10Bにおける「**」はそれぞれの対照群と有意差があることを表し、P<0.01である。
図10の結果は、S6は顕著な毒副作用がなく、VNBは顕著な毒副作用があり(体重が顕著に降下)、且つS6とVNBとの併用の場合、効果向上だけではなく、VNBによる体重降下も低減したことを示す。
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。

Claims (10)

  1. 抗腫瘍組成物の製造のための、一般式(I)で表されるフタリド化合物のダイマーの使用。
    Figure 2010516632
    (式中、
    R1は、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C1-C8アルコキシ基、C1-C4カルボキシ基、ハロゲン原子を表す。
    R2は、なしで、或は、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C1-C8アルコキシ基、C1-C4カルボキシ基、ハロゲン原子を表す。
    R3とR4は、独立に、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C1-C8アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。
    R5とR8は、独立に、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C1-C8アルコキシ基、C1-C4カルボキシ基、フェニル基、アリール基、アラルキル基、窒素原子を1-2個含有する5-6員の複素環、ハロゲン原子を表す。
    R6とR7は、独立に、水素、水酸基、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、C1-C4カルボキシ基、ハロゲン原子を表す。或は、R6とR7とは結合してともに5-7員環を形成する。
    Figure 2010516632
    は、A環に二重結合が1-3個あることを表す。
    だだし、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環は、C1-C3アルキル基、水酸基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる0-3個の置換基を有する。)
  2. 前述のフタリド化合物は、以下のものから選ばれる構造を持つことを特徴とする請求項1に記載の使用。
    Figure 2010516632
    (式中、R1-R8は前述と同じ意味を表す。)
  3. 前述のフタリド化合物のダイマーは、以下のものから選ばれる構造を持つことを特徴とする請求項1に記載の使用。
    Figure 2010516632
  4. 前述のフタリド化合物のダイマーは、以下のものから選ばれる構造を持つことを特徴とする請求項3に記載の使用。
    Figure 2010516632
  5. 前述の抗腫瘍組成物は、直接に腫瘍細胞の増殖を抑制し、又は死亡に誘導すること、或は、前述の抗腫瘍組成物は、腫瘍の血管新生を抑制することにより、間接に腫瘍の進行を抑制すること、を特徴とする請求項1に記載の使用。
  6. 前述の腫瘍は、薬物感受性腫瘍、アポトーシス抵抗性を持つ腫瘍、或は薬剤耐性腫瘍であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
  7. 前述の腫瘍は、非小細胞性肺癌、肝臓癌、脳腫、白血病、前立腺癌、腸癌、骨髄腫、リンパ腫、乳癌、卵巣癌、胃癌、小細胞性肺癌、食道癌、結腸癌、及び肉腫からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の使用。
  8. 前述の抗腫瘍組成物は、さらに、化学療法剤の薬効を向上させ、化学療法剤の毒性を低減させるため、及び/又は腫瘍の転移に抵抗するために用いられることを特徴とする請求項1に記載の使用。
  9. 抗腫瘍組成物の製造のための、一般式(I)で表されるフタリド化合物のダイマーの使用。
    Figure 2010516632
    (式中、R1-R8は前述と同じ意味を表す。)
  10. 治療が必要な哺乳動物に一般式(I)で表されるフタリド化合物のダイマーを使用する工程を含むことを特徴とする腫瘍を治療する方法。
    Figure 2010516632
    (式中、R1-R8は前述と同じ意味を表す。)
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