JP6931889B2 - 白血病幹細胞のニッチ形成抑制活性を有する海洋生物由来の抽出物、化合物及び医薬組成物 - Google Patents

白血病幹細胞のニッチ形成抑制活性を有する海洋生物由来の抽出物、化合物及び医薬組成物 Download PDF

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Description

本発明は、海洋生物特に海綿動物(Polifera)由来の、白血病幹細胞のニッチ形成に対して抑制活性を有する化合物を含む抽出物、該抽出物より単離精製される化合物、その誘導体、これらを含有する医薬組成物、他の抗腫瘍剤と組み合わせて使用する悪性腫瘍の再発防止剤、及び白血病幹細胞の分離及び/又は選別するための方法に関する。
多くの抗白血病薬を含む抗腫瘍剤が開発され臨床で使用されている。これらの抗腫瘍剤は、悪性腫瘍細胞の活動及び増殖を抑制し、症状を寛解させる等の効果を有する。一方、多くの悪性腫瘍で自己複製能と多分化能を有するがん幹細胞が生き残り、これが活性化されることにより高い再発率を有する。「血液のがん」ともいわれる白血病においても同様であり、白血病にも白血病幹細胞が存在し、多くの場合、抗腫瘍剤が奏功しにくい休止期に留まりニッチ(Niche)環境でがん幹細胞や白血病幹細胞が生き残り、これらの細胞は薬剤に対して耐性を有し、活性化されると再発の原因となる(図1参照)。
白血病幹細胞のニッチの環境及びその形成機序、薬剤耐性の機序、ニッチ形成の阻害方法等が明らかとなれば、ニッチ形成を標的として抑制又は消滅させる薬剤を提供できる。そして、ニッチ形成を抑制又は消滅させる薬剤と悪性腫瘍細胞自身を特異的に壊死又はアポトーシスを惹起する薬剤を併用すれば、従来の治療法では難治性であった白血病等の悪性腫瘍をも完治できると考えられ、がん・白血病幹細胞 の新たな特異的攻略剤として、新たな薬剤の検討がなされている(特許文献1〜3)。
しかし、未だ、白血病幹細胞を含むがん幹細胞に対する腫瘍細胞のニッチ形成を抑制するための有効な薬剤は開発されていない。
国際公開公報WO2010/101257 国際公開公報WO2013/009690 国際公開公報WO2013/070807
本発明は、がん幹細胞、特に白血病幹細胞のニッチ形成に対して阻害又は抑制活性を有する化合物を含む抽出物、該抽出物より単離精製された化合物、及びこれらを含有する医薬組成物、他の抗腫瘍用薬と併用することによる悪性腫瘍の再発防止剤、白血病幹細胞の分離及び/又は選別方法を提供する。
本発明者らは、海綿動物(Porifera)の脂溶性画分より、ヒト白血病幹細胞様細胞のコブルストーン領域(cobblestone area、CA)形成阻害活性を指標として、該活性を有する画分を抽出、分離し、さらに、該画分より該活性を有する化合物を単離精製し、その構造を決定することにより新規化合物を含むステリフェリン化合物を同定した。さらに、前記単離精製されたステリフェリン化合物が既存の抗腫瘍剤に対して耐性を有するヒト慢性骨髄性白血病(CML)由来の白血病幹細胞様細胞のニッチ形成を抑制し、該細胞に対する抗腫瘍剤の効果を増強することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、海綿動物(Polifera)から脂溶性溶媒で抽出される抽出物であって、下記式(I)で表されるステリフェリン化合物を乾燥重量当たり少なくとも2%(w/w)以上含有し、腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する抽出物を提供する。
Figure 0006931889
ただし、
R1はテルペン基であり、
R2はH又はアセチル基から選択され、
R3及びR4は、それぞれ独立して、H、-OH、メチル基、カルボキシル基又はヒドロキシメチル基から選択される。
本発明の前記抽出物は、
(I) 海綿動物からの水溶性アルコール系溶媒による抽出物に対して、非水溶性有機溶媒で脂溶性画分を抽出するステップ、
(II) 前記ステップ(I)における脂溶性画分に対して、高濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒を加えて、液−液抽出し、非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒層(画分2-1)を回収するステップ、
(III) 前記ステップ(II)における高濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液層を濃縮又は溶媒留去後、中濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出し、塩素系炭化水素溶媒画分(画分2-2)を回収するステップ、及び、
(IV) 前記画分2-1及び前記画分2-2を濃縮又は溶媒留去するステップを含むことによって製造される場合がある。
前記抽出物は、
(I’) 海綿動物からの水溶性アルコール系溶媒による抽出物に対して、水と非水溶性有機溶媒で脂溶性画分を液−液抽出するステップ、
(II’) 前記ステップ(I’)における脂溶性画分に対して、90%水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒を加えて、液−液抽出し、非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒層(画分2-1)を回収するステップ、
(III’) 前記ステップ(II’)における90%水溶性アルコール系溶媒/水溶液層に水を添加して希釈した60%水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出し、塩素系炭化水素溶媒画分(画分2-2)を回収するステップ、及び、
(IV’) 前記画分2-1及び前記画分2-2を濃縮又は溶媒留去するステップ
を含むことによって製造される抽出物である場合がある。
本発明の抽出物を製造する方法において、前記ステップ(I)〜(IV)は、以下の(i)〜(v)を含む場合がある。
(i) 海綿動物からの水溶性アルコール系溶媒による抽出物に対して、水と塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出を行い、塩素系炭化水素溶媒画分を回収するステップ、
(ii) 前記(i)のステップで得る水溶性画分に対して、非水溶性アルコール系溶媒で液−液抽出を行うステップ、
(iii) 前記ステップ(i)の塩素系炭化水素溶媒層と、前記ステップ(ii)の非水溶性アルコール系溶媒層とを混合し濃縮又は溶媒留去後、高濃度の水溶性アルコール系溶媒水溶液及び非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒を加えて、液−液抽出し、非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒層を回収するステップ、
(iv) 前記ステップ(iii)における高濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液層に水を添加して希釈した中濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出し、塩素系炭化水素溶媒画分を回収するステップ、及び、
(v) 上記ステップ(iii)の非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒層及び上記ステップ(iv)の塩素系炭化水素溶媒層のそれぞれの画分を濃縮又は溶媒留去するステップを含むことによって製造される場合がある。
本発明の抽出物を製造する方法において、前記ステップ(I)〜(IV)又は (I’)〜(IV’)のステップは、以下の(i’)〜(v’)のステップを含む場合がある。
(i’) 海綿動物からの水溶性アルコール系溶媒による抽出物に対して、水と塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出を行い、塩素系炭化水素溶媒画分を回収するステップ、
(ii’) 前記(i)のステップで得る水溶性画分に対して、非水溶性アルコール系溶媒で液−液抽出を行うステップ、
(iii’) 前記ステップ(i’)の塩素系炭化水素溶媒層と、前記ステップ(ii’)の非水溶性アルコール系溶媒層とを混合し濃縮又は溶媒留去後、90%水溶性アルコール系溶媒水溶液及び非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒を加えて、液−液抽出し、非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒層を回収するステップ、
(iv’) 前記ステップ(iii’)における90%水溶性アルコール系溶媒/水溶液層に水を添加して希釈した60%水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出し、塩素系炭化水素溶媒画分を回収するステップ、及び、
(v’) 上記ステップ(iii’)の非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒層及び上記ステップ(iv’)の塩素系炭化水素溶媒層のそれぞれの画分を濃縮又は溶媒留去することによって製造される場合がある。
本発明の前記抽出物は、その製造方法において、前記ステップ(I)〜(IV)、(I’)〜(IV’)、(i)〜(v)又は(i’)〜(v’)のステップに加えて、さらに、以下のステップ(vi)〜(viii)を含み、ステリフェリン化合物を70%以上含有する前記抽出物の場合がある。
(vi) 前記ステップ(IV)、(IV’)、(v)又は(v’)に記載の非脂溶性脂肪族炭化水素系溶媒で抽出された脂溶性画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで非極性溶媒、非極性溶媒と極性溶媒との混合溶媒、さらに、極性溶媒と水の混合溶媒の順で順次溶出し、腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する画分を取得するステップ、
(vii) さらに、前記ステップ(vi)の前又は後に、任意に、ODS系逆相高速液体クロマトグラフィーでメタノールと水の混合溶媒でのグラジエントクロマトグラフィーで精製し、腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する画分を取得するステップ、及び、
(viii) 前記ステップ(vi)又は(vii)で得られる腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する画分を、さらに、高速液体クロマトグラフィーで分画するステップ。
前記(viii)のステップにおける高速液体クロマトグラフィーで分画する条件は、下記の条件である場合がある。
(a) ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーで、以下の条件:
固定相:COSMOSILR5C18 AR II
固定相サイズ:内径10 mm x 長さ250 mm
移動相: 80%メタノール水溶液
流速:2.0 mL/min
で保持時間30分、34分に得られる画分を取得し、
・保持時間30分より得られる画分の溶媒留去するステップを含むことにより、ステリフェリン化合物を70%以上含有し、
・保持時間34分より得られる画分の溶媒留去するステップを含むことにより、ステリフェリン化合物を70%以上含有し、
又は、
(b) ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーで、以下の条件:
固定相:COSMOSILR 5C18 AR II
固定相サイズ:内径10 mm x 長さ250 mm
移動相:85%メタノール水溶液
流速:2.0 mL/min
・保持時間40〜42分より得られる画分を溶媒留去するステップを含むことにより取得される。
前記抽出物の発明において、前記ステリフェリン化合物が、ステリフェリンA、ステリフェリンB、又はそれらのジアステレオマー若しくはエナンチオマーから選択される場合がある。
本発明の前記抽出物において、前記腫瘍細胞が、がん幹細胞、白血病幹細胞又は慢性骨髄性白血病細胞である場合がある。
また、本発明は、下記式(II)で表される化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
Figure 0006931889
R1は、下記式(III)若しくは(IV)又はテルペン基から選択され、
Figure 0006931889
Figure 0006931889
R2は、H、-COCH3、-COCH2CH3、-CO(CH2)2CH3、-COCH(CH3)2、-COC(CH3)3からなる群より選択される。
本発明の前記化合物は、
前記式(I)〜(IV)の化合物が、下記の式(V)〜(VII)で表される場合がある。
Figure 0006931889
Figure 0006931889
Figure 0006931889
さらに、本発明は、前記抽出物又は前記化合物を含有する腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤を提供する。
本発明は、前記抽出物又は前記化合物の有効用量を必要とする患者へ投与することを含む、腫瘍細胞のニッチ形成を予防及び/又は治療するための方法である場合がある。
また、本発明は、腫瘍細胞のニッチ形成を予防及び/又は治療するための方法での使用のための前記抽出物又は前記化合物を提供する。
また、本発明は、腫瘍細胞のニッチ形成を予防及び/又は治療するための薬剤を製造するための前記抽出物又は前記化合物の使用を提供する。
さらに、本発明は、前記抽出物若しくは前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を含有する腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤を提供する。
また、本発明は、前記抽出物若しくは前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の有効用量を必要とする患者へ投与することを含む、腫瘍細胞のニッチ形成を予防及び/又は治療するための方法を提供する。
また、本発明は、腫瘍細胞のニッチ形成を予防及び/又は治療するための方法での使用のために前記抽出物若しくは前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
また、本発明は、腫瘍細胞のニッチ形成を予防及び/又は治療するための薬剤を製造するための前記抽出物若しくは前記化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
本発明の前記ニッチ形成阻害剤又は前記ニッチ形成阻害作用を有する前記抽出物又は前記化合物の方法及び使用において、前記腫瘍細胞が、がん幹細胞、白血病幹細胞又は慢性骨髄性白血病細胞である場合がある。
さらに、本発明は、前記抽出物又は前記化合物と、1種又は2種以上の抗腫瘍剤とを組み合わせる抗腫瘍用医薬組成物を提供する。
また、本発明は、必要とする患者に有効用量の前記抽出物又は前記化合物と、1種又は2種以上の抗腫瘍剤とを組み合わせる腫瘍を予防及び/又は治療するための方法を提供する。
また、本発明は、1種又は2種以上の抗腫瘍剤と組み合わせて腫瘍を予防及び/又は治療するための方法に使用する前記抽出物又は前記化合物を提供する。
また、本発明は、1種又は2種以上の抗腫瘍剤と組み合わせて腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬を製造するための前記抽出物又は前記化合物の使用を提供する。
抗腫瘍用医薬組成物において、前記抗腫瘍剤が、イブリツモマブチウキセタン、イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、スニチニブ、セツキシマブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、タミバロテン、トラスツズマブ、トレチノイン、パニツムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ラパチニブ、リツキシマブ、イホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、メルファラン、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、ゲムシタビン、シタラビン、テガフール、テガフール・ウラシル、ネララビン、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メトトレキサート、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、アクラルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ぺプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、アナストロゾール、エキセメスタン、エチニルエストラジオール、ロルマジノン、ゴセレリン、タモキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ブレドニゾロン、リュープロレリン、レトロゾール、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン2、ウベニメクス、乾燥BCG及びレンチナンからなる群から選択される少なくとも1種である場合がある。
本発明の前記医薬組成物が、悪性腫瘍の再発防止用である悪性腫瘍に対する再発予防剤の場合がある。
また、本発明は、前記医薬組成物を必要とする患者に有効用量を投与することを含む、悪性腫瘍に対する再発予防方法の場合がある。
また、本発明の前記医薬組成物は、悪性腫瘍に対する再発予防方法に使用するための医薬組成物である場合がある。
また、本発明は、悪性腫瘍に対する再発予防方法に使用するための医薬組成物である場合がある。
また、本発明は、悪性腫瘍に対する再発予防のための医薬を製造するために使用するための医薬組成物である場合がある。
また、本発明は、前記抽出物又は前記化合物を使用するがん幹細胞又は白血病幹細胞の分離及び/又は選別するための方法を提供する。
また、本発明において、前記「抽出物」は「組成物」と表される場合がある。
本発明は、海洋生物特に海綿由来の、白血病幹細胞を含むがん幹細胞のニッチ形成に対して抑制活性を有する化合物を含む抽出物、該抽出物より単離精製された活性化合物、これらを有効成分として含有するニッチ形成阻害剤、他の抗腫瘍剤と組み合わせて使用する悪性腫瘍の再発を防止するための薬剤、及び、がん幹細胞又は白血病幹細胞の分離及び/又は選別方法を提供する。
白血病幹細胞(LSC)の薬剤耐性と白血病再発との関係を説明する図 ヒト慢性骨髄性白血病(CML)由来細胞株MB-1とマウス骨髄性由来間質細胞株OP9とを共培養して産生されるコブルストーン領域(CA:ニッチ環境モデル)の顕微鏡写真図。 スクリーニング方法の操作の概略を表す図。 スクリーニング方法においてコブルストーン領域(CA)形成の有無を評価する指標を表す図。 加計呂麻島から採取された海綿動物(学名:Stelleta globostellata、コード番号S12111)から分画された、MB-1細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する脂溶性画分2-1及び画分2-2の分離精製スキームを表す図。 S12111画分(脂溶性画分)のCA形成阻害作用を表す図。 脂溶性画分2-1からさらに単離精製し、MB-1細胞のニッチ形成抑制作用を有する画分10-3及び画分10-5の分離精製スキームを表す図。 馬毛島から採取された海綿動物(学名:Stelleta globostellata、コード番号:S09226)からMB-1細胞のニッチ形成抑制作用を有する画分9-2の分離精製スキームを表す図。 S09226画分より分画された画分9-2を液体クロマトグラフィーで画分15-1〜15-10に分画したときのクロマトグラムを表す図。 画分9-2を液体クロマトグラフィーで画分15-1〜15-10に分画したときの各画分の取得量を表す図。 S12111画分から単離精製された画分10-3の化合物のNMR測定結果と構造式の同定を表す図。 S12111画分から単離精製された画分10-5の化合物のNMR測定結果と構造式の同定を表す図。 S09226画分から単離精製された画分15-4の化合物のマススペクトルを表す図。 S09226画分から単離精製された画分15-4の化合物のNMR測定結果と構造式の同定を表す図。 ステリフェリンAと各種濃度のイマチニブとを慢性骨髄性白血病細胞MB-1とOP9細胞の共培養系に添加した場合のMB-1細胞に対するアポトーシス惹起作用を核染色蛍光試薬NucView 488で評価したFACSのチャート図。 ステリフェリンAと各種濃度のイマチニブとを慢性骨髄性白血病細胞MB-1とOP9細胞の共培養系に添加した場合のアポトーシス惹起作用を核染色蛍光試薬NucView 488で染色し、FACSで評価した結果を集計した図。 MB-1細胞単独培養系におけるイマチニブの用量依存的なアポトーシス惹起作用を核染色蛍光試薬NucView 488で評価した図。 ステリフェリンAとイマチニブとを慢性骨髄性白血病細胞MB-1とOP9細胞の共培養系に添加した場合のMB-1細胞に対するアポトーシス惹起作用をミトコンドリア膜電位差を検出する蛍光試薬JC-1で染色し評価したFACSのチャート図。 ステリフェリンAとイマチニブとを慢性骨髄性白血病細胞MB-1とOP9細胞の共培養系に添加した場合のMB-1細胞に対するアポトーシス惹起作用をJC-1試薬で染色しFACSで解析した結果を集計した図。 ステリフェリンAと各種濃度のイマチニブとを慢性骨髄性白血病細胞MB-1とOP9細胞の共培養系に添加した場合のMB-1細胞に対するアポトーシス惹起作用をJC-1試薬で染色し、評価したFACSのチャート図。 ステリフェリンAと各種濃度のイマチニブとを慢性骨髄性白血病細胞MB-1とOP9細胞の共培養系に添加した場合のMB-1細胞に対するアポトーシス惹起作用をJC-1試薬で染色し、評価したFACSの結果を集計した図。 OP9細胞とMB-1細胞それぞれに対して蛍光タンパク(各mCherry、GFP)遺伝子を導入し、共焦点顕微鏡によって細胞同士の立体的な位置関係を観察した図。 白血病幹細胞様の特性を有するTF-1細胞とOP9細胞の共培養系でのS12111画分のニッチ形成に対する抑制作用を評価した顕微鏡写真の図。 TF-1細胞とOP9細胞の共培養系でのステリフェリンAのニッチ形成に対する抑制作用を評価した顕微鏡写真の図。 ステリフェリンA共存下でMB-1細胞とOP9細胞とを共培養した後、ステリフェリンAを除去した場合における、ステリフェリンAのCA形成阻害活性を評価した結果を表す図。 ステリフェリンA共存下でMB-1細胞とOP9細胞とを共培養し、その遊離MB-1を回収した後に、新鮮OP9細胞とステリフェリンA非共存下で培養した場合のステリフェリンAのCA形成阻害に及ぼす影響を評価した結果を表す図。 ステリフェリンA共存下OP9細胞を培養後、そのOP9細胞とMB-1細胞とをステリフェリンA非共存下の共培養系において、ステリフェリンAのCA形成阻害作用を表す図。
本発明の実施形態の1つは、海綿動物(Polifera)から脂溶性溶媒で抽出されるステリフェリン化合物を前記抽出物全体の乾燥重量当たり少なくとも2%(w/w)以上含有する抽出物であって、腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する抽出物である。
本明細書において、ステリフェリン化合物とは、下記式(VIII)で表される化合物をいう。
Figure 0006931889
ただし、
R1はテルペン基であり、
R2はH又はC1〜4のアシル基、好ましくは、H又はアセチル基から選択され、
R3及びR4は、それぞれ独立して、H、-OH、好ましくはメチル基であるC1〜6のアルキル基、好ましくはヒドロキシメチル基であるヒドロキシアルキル基、又は、カルボキシル基若しくはそのエステル誘導体から選択される。
前記テルペン基の例としては、下記の式(1)〜(45)の置換基が挙げられる。
Figure 0006931889
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又は、
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前記式(1)〜(45)のテルペン基を有するステリフェリン化合物の中、ステリフェリンA〜Fは、Tsuda M.ら、天然有機化合物討論会講演要旨集 33, 441-447(1991年9月7日)に、ステリフェリンJ〜Nは、Tanaka N.ら、Tetrahedron,Vol.67, 6689-6696 (2011)に、ステレッティン (stellettin) A〜Iは、McCormick, J. L.J. Nat. Prod. 59: 1047-1050 (1996)及びTang S.-Aら、Chinese J. Nat. Med. 3:213-218 (2005)に、グロボステラト酸 (globostellatic acid) A〜Dは、Ryu G.ら、J. Nat. Prod., 59: 512-514 (1996)に、グロボステラト酸、グロボステラト酸A, D, F〜M、13E-isomer of stelliferin riboside、stelliferin?riboside及び3-O-deacetyl-13Z-stelliferin ribosideは、Fouad Mら、J. Nat. Prod., 69: 211-218 (2006)に、グロボステラト酸Xメチルエステル類 (globostellatic acid X methyl esters)は、Aoki S.ら、Bioorg Med Chem. 15:4818-28 (2007)に、その構造式及び入手方法等が記載されている。
また、本明細書において、前記「抽出物」は、「組成物」と表される場合がある。
ステリフェリン化合物を含む抽出物若しくはステリフェリン化合物を含み、がん細胞のニッチ形成を阻害する抽出物又は組成物は、海綿(Polifera)より、液−液抽出法などの分離精製法を使用することにより分離精製した画分を分画し、培養細胞系のコブルストーン領域形成の阻害活性に対するスクリーニング系で、該画分のコブルストーン領域形成の阻害活性の有無を指標として取得することができる。
前記分離精製法としては、例えば、液−液抽出法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やオープンカラムクロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、セファデックスカラム等の分子篩等の方法から選択される2相分配法を使用できる。
下記の実施例に記載されるように、海綿動物のアルコール抽出物の脂溶性画分は、さらに、さらなる分離精製方法を組み合わせて、より活性の強い画分、又は、単離精製された活性化合物を取得できる。本発明において、これらの海綿動物を分画した画分の中の3つの画分より、新規化合物を含む3種類のステリフェリン化合物を単離し、その構造を同定し特定した。この化合物は、ステリフェリンA、ステリフェリンB及び新規のステリフェリン化合物であるステリフェリン化合物3(コード番号S09226.15-4)を含む。
一方、海綿動物から取得される、これら3種類のステリフェリン化合物以外にも、海綿動物の脂溶性画分において、例えば、画分15-2(コード番号S09226.15-2)、15-3(コード番号S09226.15-3)、15-6(コード番号S09226.15-6)、15-8(コード番号S09226.15-8)、15-9(コード番号S09226.15-9)及び15-10(コード番号S09226.15-10)が本発明の抽出物に含まれ、また、これらの画分に含まれる化合物が、腫瘍細胞に対してニッチ形成抑制作用を有する未知のステリフェリン化合物として本発明の化合物に含まれる。
より具体的には、本発明の抽出物は、海綿動物(Stelleta globostellata)から脂溶性溶媒で抽出される抽出物であって、ステリフェリン化合物を該抽出物の乾燥重量当たり少なくとも2%(w/w)以上含有し、腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する組成物を取得できる。本明細書において、ステリフェリン化合物を少なくとも3%(w/w)以上、少なくとも5%(w/w)以上、少なくとも10%(w/w)以上、少なくとも15%(w/w)以上、少なくとも20%(w/w)以上、少なくとも25%(w/w)以上、少なくとも30%(w/w)以上、少なくとも35%(w/w)以上、少なくとも40%(w/w)以上、少なくとも45%(w/w)以上、少なくとも50%(w/w)以上、少なくとも55%(w/w)以上、少なくとも60%(w/w)以上、少なくとも65%(w/w)以上、少なくとも70%(w/w)以上、少なくとも75%(w/w)以上、少なくとも80%(w/w)以上、少なくとも85%(w/w)以上、少なくとも90%(w/w)以上、少なくとも95%(w/w)以上を含有してもよい。
本発明の前記抽出物において、
前記脂溶性画分は、
(I) 海綿動物からの水溶性アルコール系溶媒による抽出物に対して、非水溶性有機溶媒で脂溶性画分を抽出するステップ、
(II) 前記ステップ(I)における脂溶性画分に対して、高濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒を加えて、液−液抽出し、非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒層(画分2-1)を回収するステップ、
(III) 前記ステップ(II)における高濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液層に水を添加して希釈した中濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出し、塩素系炭化水素溶媒画分(画分2-2)を回収するステップ、及び
(IV) 前記画分2-1及び前記画分2-2を濃縮又は溶媒留去するステップを含むことによって製造できる。
また、本発明の前記抽出物において、
前記脂溶性画分は、
(I) 海綿動物からの水溶性アルコール系溶媒による抽出物に対して、非水溶性有機溶媒で脂溶性画分を抽出するステップ、
(II) 前記ステップ(I)における脂溶性画分に対して、高濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒を加えて、液−液抽出し、非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒層(画分2-1)を回収するステップ、
(III) 前記ステップ(II)における高濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液層に水を添加して希釈した中濃度の水溶性アルコール系溶媒/水溶液及び塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出し、塩素系炭化水素溶媒画分(画分2-2)を回収するステップ、及び、
(IV) 前記画分2-1及び前記画分2-2を濃縮又は溶媒留去するステップを含むことによって製造できる。
(V) さらに、前記ステップ(IV)に記載の画分2-1及び画分2-2をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで非極性溶媒、非極性溶媒と極性溶媒との混合溶媒、さらに、極性溶媒と水の混合溶媒の順で順次溶出し、腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する画分を取得するステップ、
(VI) さらに、前記ステップ(V)の前又は後に、任意に、ODS系逆相高速液体クロマトグラフィーでメタノールと水の混合溶媒でのグラジエントクロマトグラフィーで精製し、腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する画分を取得するステップ、及び、
(VII)前記ステップ(V)又は(VI)で得られる腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する画分をさらに高速液体クロマトグラフィーで分画し、単離精製することによりステリフェリン化合物を76.3%以上含有する抽出物を取得できる。
前記、高速液体クロマトグラフィーで分画し、本発明の抽出物又は化合物を取得する条件として、例えば、下記条件が挙げられる。
(i) ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーで、以下の条件:
固定相:COSMOSILR5C18 AR II
固定相サイズ:内径10 mm x 長さ250 mm
移動相:80%メタノール水溶液
流速:2.0 mL/min
で保持時間30分、34分に得られる画分を取得し、
・保持時間30分より得られる画分の溶媒留去するステップを含み、ステリフェリン化合物を76.9%以上含有する抽出物を取得する、若しくは、
・保持時間34分より得られる画分の溶媒留去するステップを含み、ステリフェリン化合物を73.9%以上含有する抽出物を取得する、
又は、
(ii) ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーで、以下の条件:
固定相:COSMOSILR 5C18 AR II
固定相サイズ:内径10 mm x 長さ250 mm
移動相:85%メタノール水溶液
流速:2.0 mL/min
・保持時間40〜42分より得られる画分の溶媒留去し、ステリフェリン化合物を76.9%含有する抽出物を取得する。
前記(I)〜(VI)のステップは、より具体的には、前記抽出物は、
(i) 海綿動物からのメタノールによる抽出物に対して、水とジクロロメタン又はクロロホルムを含む塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出を行い、塩素系炭化水素溶媒画分を回収するステップ、
(ii) 前記(i)のステップで得る水溶性画分に対して、n-ブタノールで液−液抽出を行うステップ、
(iii) 前記ステップ(i)の塩素系炭化水素溶媒層と、前記ステップ(ii)のn-ブタノール層とを混合し濃縮又は溶媒留去後、高濃度のメタノール水溶液及びn-ヘキサンを加えて、液−液抽出し、n-ヘキサン層を回収するステップ、
(iv) 前記ステップ(iii)における高濃度のメタノール層に水を添加して希釈した中濃度のメタノール及び塩素系炭化水素溶媒で液−液抽出し、塩素系炭化水素溶媒画分を回収するステップ、及び、
(v) 上記ステップ(iii)のn-ヘキサン及び上記ステップ(iv)の塩素系炭化水素溶媒層のそれぞれの画分を濃縮又は溶媒留去するステップを含むことによって製造できるが、これらに限定されない。
本明細書において、「高濃度」とは、75%以上をいい、好ましくは、80%以上であり、もっとも好ましくは90%以上をいう。
本明細書において、「中濃度」とは、30%以上75%未満をいい、好ましくは、40%以上70%未満であり、もっとも好ましくは60%をいう。
以下、本方法によって、取得される抽出物の例として、画分10-2〜15-10の取得方法を記載するが、これらの取得方法のみに限定されない。
本発明の前記抽出物を製造する方法において、前記ステップ(i)〜(v)に加えて、さらに、
(vi) 前記ステップ(v)に記載の非水溶性溶媒で抽出された脂溶性画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで非極性溶媒、非極性溶媒と極性溶媒との混合溶媒、さらに、極性溶媒と水の混合溶媒の順で、非極性溶媒から極性溶媒に変化させて順次溶出し、溶出過程で一定量の画分を分取し、その画分の腫瘍細胞のニッチ形成に対する抑制作用を評価することにより、該活性を有する画分を取得するステップ、
(vii) さらに、前記ステップ(vi)の前又は後に、任意に、ODS系逆相高速液体クロマトグラフィーを使用して、メタノールと水の混合溶媒でのグラジエントクロマトグラフィーで順次メタノール含量を増加させて溶出し、所定量の画分を分取し、腫瘍細胞のニッチ形成に対する抑制作用を示す画分を取得することにより、前記脂溶性画分に含まれる活性化合物を含む画分を精製するステップ、及び、
(viii) さらに、前記ステップ(vi)又は(vii)で得られる腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有する画分を、ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーで分画するステップを含むことにより、新規なステリフェリン化合物(コード番号S09226.15-4)を76.3%以上含有する抽出物として取得できる。
前記ステップ(viii)のODS逆相系高速液体クロマトグラフィーを用いた単離精製法の条件の例として、以下が挙げられる。
(a) ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーで、以下の条件:
固定相:COSMOSILR 5C18 AR II
固定相サイズ:内径10 mm x 長さ250 mm
移動相:80%メタノール水溶液
流速:2.0 mL/min
で保持時間30分、34分に得られる画分を取得し、
・保持時間30分より得られる画分の溶媒留去するステップを含み、ステリフェリンAを76.9%以上含有し、若しくは、
・保持時間34分より得られる画分の溶媒留去するステップを含み、ステリフェリンBを73.9%以上含有する、
又は
(b) ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーで、以下の条件:
固定相:COSMOSILR 5C18 AR II
固定相サイズ:内径10 mm x 長さ250 mm
移動相:85%メタノール水溶液
流速:2.0 mL/min
・保持時間40〜42分より得られる画分の溶媒留去するステップを含み、新規なステリフェリン化合物(コード番号S09226.15-4)を76.3%以上含有する抽出物として取得できる。
さらに、ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーにおいて、同一溶離条件で、上記ステリフェリン化合物(コード番号S09226.15-4)の以外の画分として、コード番号S09226.15-2〜コード番号S09226.15-10で表される腫瘍細胞のニッチ形成阻害作用を有する画分を分取することができる。
また、本発明の抽出物に含まれ、腫瘍細胞のニッチ形成阻害作用を有する化合物の例として、下記式(IX)で表すことができる。
Figure 0006931889
R1 は、下記式(X)若しくは(XI)又は前記テルペン基から選択され、
Figure 0006931889
Figure 0006931889
R2は、H、-COCH3、-COCH2CH3、-CO(CH2)2CH3、-COCH(CH3)2、-COC(CH3)3から選択される。
本明細書において、「テルペン」とは「イソプレノイド」とも言われ、特に天然物由来の場合には「テルペノイド」といわれ、5炭素化合物であるイソプレンユニットを有する化合物又はその誘導体をいい、主には天然物由来の化合物をいうが、天然物には限定されない。
「テルペン基」は、テルペン又はテルペノイドより水素原子等が1又は2原子脱離した置換基、及びその誘導体をいう。テルペンには、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セスタテルペン、トリテルペン、テトラテルペン(カロテノイド)、ポリテルペン等が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の脂溶性画分に含まれる前記化合物は、より具体的には、下記の式(XII)〜(XIV)で表される場合がある。
Figure 0006931889
Figure 0006931889
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さらに、これらの海綿動物から単離されたステリフェリンA、B又はステリフェリン・S09226.15-4を含むステリフェリン・S09226.15-2〜ステリフェリン・S09226.15-10の画分の含まれるステリフェリン化合物を、誘導化することにより、ニッチ形成阻害活性をさらに向上させる、又は吸収・分布・代謝・排泄等の体内動態を改善し、生物学的利用能を改善することができる。誘導化の例として、ステリフェリン構造が有する水酸基に対して、当業者に慣用の縮合反応によるエステル化、又は、天然のステリフェリン化合物が有するアセチルエステルに対して当業者に慣用の加水分解による脱アセチル化、及び脱アセチル化された化合物の水酸基に対する当業者に慣用の縮合反応による再エステル化等が挙げられる。前記エステル化又は再エステル化として、アセチル化、n-プロピルエステル化、イソプロピルエステル化、t-ブチルエステル化等への誘導化が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において、「プロドラッグ」とは、生体内に投与後、生体内で代謝されて本発明の化合物を活性代謝物として産生する化合物又はその塩をいう。
プロドラッグとしてのステリフェリン誘導体の例として、下記式XV〜XVIIで表される化合物、又はこれらの塩が挙げられる。
Figure 0006931889
R5及びR6は、各々独立して、H、アセチル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基及びt-ブチルエステル基から選択されるが、これらに限定されない。
Figure 0006931889
R7及びR8は、各々独立して、H、アセチル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基及びt-ブチルエステル基から選択されるが、これらに限定されない。
Figure 0006931889
R9及びR10は、各々独立して、H、アセチル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基及びt-ブチルエステル基から選択されるが、これらに限定されない。
本明細書において、「脂溶性溶媒」とは、非水溶性、非極性、無極性、疎水性、親油性又は油溶性の溶媒をいい、例えば、これらに限定されないジクロロメタン、クロロホルム、n-ヘキサン、n-ブタノール、酢酸エチル、ベンゼン及びトルエン等の溶媒をいう。
本明細書において、「脂溶性画分」とは、複数種の化合物の混合物若しくは混和物又は天然物等から前記脂溶性溶媒で抽出される組成物をいい、例えば、海綿等の天然物の破砕物より液−液抽出法を利用する分離方法によって、脂溶性溶媒に分配され、脂溶性溶媒を分取後、溶媒を留去又は濃縮することによって取得される溶質を含む組成物をいう。
本明細書において、「液−液抽出法」又は「液−液分配法」は、当業者に周知の2種類の液体に対する目的とする物質の溶解性の相違を利用した単離精製法をいうが、目的とする物質を単離・精製可能な限り、2種類の液体に限定されない、例えば、液相−固相、気相−固相、気相−液相等の2相分配法を使用できる。
本明細書において、「塩素系炭化水素溶媒」とは、本技術分野において溶媒として使用される低分子量の塩素化炭化水素をいい、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロエタン及びテトラクロロエチレン等をいうが、これらに限定されない。
本明細書において、「水溶性有機溶媒」とは、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)等の極性有機溶媒をいう。「水溶性有機溶媒」と「水」とを含めて、「極性溶媒」と記載する場合がある。
本明細書において、「水溶性アルコール系溶媒」とは、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)等の極性アルコール系溶媒をいう。「水溶性アルコール系溶媒」と「水」とを含めて、「極性アルコール系溶媒」と記載する場合がある。
本明細書において、「非水溶性アルコール系溶媒」とは常温において、非水溶性を示すアルコール系溶媒をいい、これらに限定されないn-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール(イソアミルアルコール)等をいう。
本明細書において、「非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒」とは、非極性の脂肪族炭化水素系溶媒をいい、例えば、n-ヘキサンなどをいうが、これに限定されない。
また、「塩素系炭化水素溶媒」又は「非水溶性脂肪族炭化水素系溶媒」を用いて、液−液抽出を行う場合に、これらの溶媒に代えて、又はこれらの溶媒に加えて、ベンゼン、トルエン、キシレン及びスチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロルベンゼン及びオルト-ジクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル(酢酸アミル)及び酢酸イソペンチル(酢酸イソアミル)等のエステル系溶媒;並びに、エチルエーテル、1,4-ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒から選択される非水溶性溶媒を使用することができる。
本明細書において、「非水溶性溶媒」とは、約23℃の室温環境下で同量の水と混合した場合に、二層に分離する溶媒をいい、二層分離を示さずに、水と混和する有機溶媒を「水溶性溶媒」と記載する。
本明細書において、「アルコール抽出物」とは、複数種の化合物の混合物若しくは混和物又は天然物等から、これらに限定されないメタノール又はエタノール等の水溶性アルコール系溶媒で抽出される抽出物をいう。
「ニッチ」とは、一般的に「生態学的地位」をいう。特に、本明細書において「ニッチ」とは、特に、生体内の微小環境におけるがん細胞の休止期にある幹細胞様の特性を有する悪性腫瘍細胞の「居場所」をいう。慢性骨髄性白血病においては、慢性骨髄性白血病細胞がコブルストーンエリアにおいて細胞集団としてニッチを形成する。このニッチな腫瘍細胞は、抗腫瘍剤に対して耐性を示し、ニッチな腫瘍細胞の活性化による再増殖が、抗腫瘍剤治療によるがんの寛解後の再発の原因と考えられている(特許文献1〜3)。
本明細書において、「腫瘍」とは、生体において、細胞又は組織が自律的に過剰増殖したものであって、上皮細胞(消化管の粘膜や肝細胞などの細胞の表皮部分)にできる「癌」、非上皮細胞(骨、軟骨、筋肉など、臓器を結合する組織細胞)にできる「肉腫」、造血器(血液、リンパ液、骨髄)にできる「白血病」、「悪性リンパ腫」、「多発性骨髄腫」を含む。
本明細書において、「がん幹細胞(Cancer stem cells:CSCs)」とは、がん細胞のうち幹細胞の性質をもった細胞をいう。自己複製能及び多分化能を有し、がん幹細胞を起源としてがんが発生すると考えられている。すでに、様々ながんにおいてがん幹細胞が発見されている。がん幹細胞の例として、より具体的には、上顎がん幹細胞、(上、中、下)咽頭がん幹細胞、喉頭がん幹細胞、舌がん幹細胞、甲状腺がん幹細胞、乳がん幹細胞、肺がん幹細胞(非小細胞肺がん幹細胞、小細胞肺がん幹細胞)、食道がん幹細胞、胃がん幹細胞、十二指腸がん幹細胞、大腸がん幹細胞(結腸がん幹細胞、直腸がん幹細胞)、肝がん幹細胞(肝細胞がん幹細胞、胆管細胞がん幹細胞)、胆嚢がん幹細胞、胆管がん幹細胞、膵がん幹細胞、肛門がん幹細胞、腎がん幹細胞、尿管がん幹細胞、膀胱がん幹細胞、前立腺がん幹細胞、陰茎がん幹細胞、精巣(睾丸)がん幹細胞、子宮がん幹細胞(子宮頸がん幹細胞、子宮体がん幹細胞)、卵巣がん幹細胞、外陰がん幹細胞、膣がん幹細胞、基底細胞がん幹細胞、有棘細胞がん幹細胞、白血病幹細胞、悪性リンパ腫幹細胞、及び多発性骨髄腫幹細胞が挙げられる。
本明細書において、「白血病幹細胞(LSC)」とは、造血幹細胞の形質である表面マーカーCD34、がん幹細胞のマーカーであり細胞接着性に関連するヒアルロン酸受容体とされるCD44、及びリンパ球膜の主要構成成分のひとつであるCD45を発現する細胞であり、生体内において細胞分裂の休止期にニッチを形成し、活性化されると、白血球細胞を増殖する能力を有し、急性白血病の臨床的寛解期における白血病の再発の原因と考えられている(特許文献1〜3)。
「コブルストーン領域(cobblestone area:CA)」とは、「敷石状構造形成エリア」とも呼ばれ、前記白血病幹細胞などのがん細胞が集団で間葉系細胞等から構成される支持組織に接着して形成される細胞集団をいう。
本明細書において、「ニッチ形成阻害剤」とは、がん細胞のコブルストーンエリアの形成を阻害、抑制、縮小又は消滅させる活性を有する化合物若しくはその塩、又はそれらを含有する組成物をいう。ニッチ形成阻害作用のメカニズムの例の一つとして、ニッチを形成するがん細胞の支持組織への粘着を阻害することによりもたらされることが考えられる。現在、臨床で使用される抗腫瘍剤で、このニッチ形成阻害作用を有するものは報告されていない。
本明細書において、「抗腫瘍剤」及び「抗腫瘍用医薬組成物」は同義として使用される。「抗腫瘍剤」又は「抗腫瘍用医薬組成物」とは、悪性腫瘍を有する患者の症状を寛解又は症状の進行を遅延、又は患者の生命予後を改善するための薬剤をいう。「抗腫瘍剤」及び「抗腫瘍用医薬組成物」は、日本の厚生労働省における薬効分類で「腫瘍用薬」に分類される薬剤、及びその候補物質を含む。前記薬効分類表において、「腫瘍用薬」は、「アルカリ化剤」、「代謝拮抗剤」、「抗腫瘍性抗生物質製剤」、「抗腫瘍性植物成分製剤」及び「その他の腫瘍用薬」に分類される。抗腫瘍剤として、既に臨床では、「分子標的薬」として、イブリツモマブチウキセタン、イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、スニチニブ、セツキシマブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、タミバロテン、トラスツズマブ、トレチノイン、パニツムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ラパチニブ及びリツキシマブ等が;「アルキル化剤」として、イホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン及びメルファラン等が;「代謝拮抗剤」として、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、ゲムシタビン、シタラビン、テガフール、テガフール・ウラシル、ネララビン、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン及びメトトレキサート等が;「植物アルカロイド」として、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビンブラスチン等が;「抗がん性抗生物質」として、アクチノマイシンD、アクラルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ぺプロマイシン、マイトマイシンC及びミトキサントロン等が;「白金製剤」として、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン及びネダプラチン等が;「ホルモン剤」として、アナストロゾール、エキセメスタン、エチニルエストラジオール、ロルマジノン、ゴセレリン、タモキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ブレドニゾロン、リュープロレリン及びレトロゾール等が;並びに、「生物学的応答調節剤」として、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン2、ウベニメクス、乾燥BCG及びレンチナン等が使用されている。本明細書に記載の「抗腫瘍剤」は、これらの既に臨床で使用されている薬剤に限定されない。
具体的には、本発明の「抗腫瘍剤」又は「抗腫瘍用医薬組成物」が対象とする「悪性腫瘍」として、頭頸部の悪性腫瘍として、「上顎がん」、「(上、中、下)咽頭がん」、「喉頭がん」、「舌がん」、「甲状腺がん」等が;胸部の悪性腫瘍として、「乳がん」、「肺がん(非小細胞肺がん、小細胞肺がん)」等が;消化器の悪性腫瘍として、「食道がん」、「胃がん」、「十二指腸がん」、「大腸がん(結腸がん、直腸がん)」、「肝がん(肝細胞がん、胆管細胞がん)」、「胆嚢がん」、「胆管がん」、「膵がん」、「肛門がん」等が;泌尿器の悪性腫瘍として、「腎がん」、「尿管がん」、「膀胱がん」、「前立腺がん」、「陰茎がん」、「精巣(睾丸)がん」が、生殖器の悪性腫瘍として、「子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)」、「卵巣がん」、「外陰がん」、「膣がん」が;皮膚の悪性腫瘍として「基底細胞がん」、「有棘細胞がん」が;造血器(血液、リンパ液、骨髄)の悪性腫瘍として、「白血病」、「悪性リンパ腫」、「多発性骨髄腫」が挙げられるが、これらに限定されない。
前記白血病幹細胞(LSC)は、ニッチ環境において細胞周期が停止している。したがって、細胞周期に効果の発揮が依存する従来の抗腫瘍剤に対してLSCは耐性を示し、白血病慢性期にLSCが活性化されると白血病が再発する。そこで、白血病の再発予防として、LSCを標的として、アポトーシスを惹起するための戦略が試みられている(特許文献1)。
本発明のがん細胞のニッチ形成を阻害する抽出物若しくは該抽出物から単離精製される化合物、これらの化合物の誘導体、又は、これらの化合物若しくは誘導体について全合成法によって合成される化合物は、OP9細胞等の間葉系細胞を支持組織として接着したヒト慢性骨髄性白血病細胞(CML)のコブルストーン領域の形成を阻害する作用を有し、in vitroの共培養系で、浮遊CML細胞を増加させる効果を有する。支持組織に接着したCMLは抗腫瘍剤に対して耐性を示すが、浮遊CML細胞は、抗腫瘍剤によって壊死又はアポトーシスが惹起される。したがって、本発明のニッチ形成阻害薬と抗腫瘍剤とを組み合わせて使用することにより、がん患者の抗腫瘍剤治療による寛解期における白血病幹細胞等のニッチを形成するがん細胞を消滅又は減少させることにより、がんの再発を改善できる。
前記がん細胞のニッチ形成に対して阻害作用を有する抽出物又は化合物、又はその塩は、薬学的に許容可能な医薬品添加剤を添加することにより、経口剤、注射剤等の非経口剤等の腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤を製造することができる。
薬学的に許容可能な塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
金属塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などが挙げられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどとの塩が挙げられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
前記ステリフェリン化合物若しくはその誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の少なくとも一つを、例えば、生理食塩水等の溶媒で所定の濃度及び用量に希釈して、pH調整剤等の薬学的に許容可能な添加剤を加え、医薬製剤として、患者に投与することができる。
前記医薬製剤は、前記ニッチ形成阻害活性を有する化合物、又はその塩若しくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物であり、本明細書において、ニッチ形成阻害剤として記載され、好ましくは、悪性腫瘍の予防、治療のための医薬組成物であり、他の抗腫瘍剤と組み合わせることにより悪性腫瘍の再発予防のための医薬組成物として使用できる。
前記医薬製剤の調製に使用される薬学的に許容可能な医薬品添加剤は、当業者に公知の、安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁剤、乳化剤、界面活性剤等の添加物を添加して、調製することができる。これらの医薬品添加剤の種類及びその用法・用量は、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編、薬事日報社、2007年7月)などに記載され、これらの記載に従って調製し、使用することができる。
より具体的には、安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸が、抗酸化剤として例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピル等が、pH調整剤として希塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液等が、緩衝剤としてクエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸若しくはアスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン若しくはアルギニンまたはその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸若しくはホウ酸またはその塩類が、懸濁剤又は乳化剤としてレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート又はポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物等が、界面活性剤として例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が使用できるが、これらに限定されない。
上記製剤に含まれる有効成分化合物の量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、通常、全組成物中0.5〜95重量%、好ましくは1〜30重量%含む。
本発明にかかる医薬組成物の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態・塩の種類、薬剤に対する感受性差、疾患の具体的な種類等に応じて異なるが、通常、成人の場合は1日あたり経口投与で約1 mg〜約1000 mg(好ましくは約10 mg〜約500 mg)、外用剤の場合には、約1 mg〜約1000 mg(好ましくは約10 mg〜約500 mg)、注射剤の場合には、体重1Kgあたり、約1 μg〜約3000 μg(好ましくは約3 μg〜約3000 μg)を1日に1回投与又は2〜6回に分けて使用する。
本発明の抽出物又は化合物は、さらに他の1〜3種の抗腫瘍作用を有する活性成分と併用してもよい。該「他の活性成分」としては、例えば、イブリツモマブチウキセタン、イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、スニチニブ、セツキシマブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、タミバロテン、トラスツズマブ、トレチノイン、パニツムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ラパチニブ、リツキシマブ、イホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、メルファラン、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、ゲムシタビン、シタラビン、テガフール、テガフール・ウラシル、ネララビン、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メトトレキサート、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、アクラルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ぺプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、アナストロゾール、エキセメスタン、エチニルエストラジオール、ロルマジノン、ゴセレリン、タモキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ブレドニゾロン、リュープロレリン、レトロゾール、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン2、ウベニメクス、乾燥BCG及びレンチナンからなる群から選択される。
前記の「他の活性成分」及び本発明の抽出物又は化合物若しくはその塩は、公知の方法に従って混合し、同一の医薬組成物(例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等)中に製剤化して併用してもよく、各々を別個に製剤化し、同一患者に対して同時に又は異なった時間に投与してもよい。
前記の本発明の抽出物又は化合物と他の活性成分とを組み合わせて使用する場合には、患者の症状、年齢、性別、体重及び既往歴等に従って、それぞれの成分を適宜増減した量を組み合わせて使用できる。
また、本発明の前記抽出物及び/又は化合物は、白血病幹細胞が混在する組織又は細胞培養系より白血病幹細胞を分離及び/又は選別するための方法に使用できる。
本発明の白血病幹細胞が混在する組織又は細胞培養系より白血病幹細胞を分離及び/又は選別するための方法は、白血病幹細胞が混在する組織又は培養細胞に前記抽出物及び/又は前記化合物を含む培養液を添加し、インキュベートし、浮遊する細胞を採取するステップを含むことにより実施できる。
採取した浮遊細胞が白血病幹細胞であることの確認は、白血病幹細胞に特有な細胞マーカーの組み合わせ、その他の白血病幹細胞に特有な特性を調べることにより確認できる。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。ここに記述される実施例は本発明の実施形態を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
1. 材料及び実験方法
(1) 材料
ステリフェリン化合物を含む抽出物の抽出及び精製には、海綿動物(学名:Stelleta globostellata、採集場所:加計呂麻島産(S12111画分に対して)及び馬毛島産(S09226画分に対して))を使用した。実験に使用したOP9細胞及びTF-1細胞はATCCから、MB-1細胞は公益財団法人実験動物中央研究所(神奈川県川崎市)から入手した。
前記抽出物からのステリフェリン化合物の抽出、該ステリフェリン化合物の単離・精製のためのカラムクロマトグラフィー、及びHPLCの溶離液に使用したメタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、n-ヘキサン、n-ブタノール及びジメチルスルホキシド(DMSO)は、市販の特級品以上のグレードのものを使用した。また、以下の記載において、「60%メタノール」、「85%メタノール」及び「90%メタノール」等の記載は、メタノールと水との混合液におけるメタノール含量が各々60%、85%及び90%であることを示す。また、同様に、「85% アセトニトリル」の記載は、水溶液におけるアセトニトリル含量が85%であることを表す。
(2) スクリーニングサンプルとしての脂溶性画分及び水溶性画分の調製方法
海洋生物サンプルを100%メタノールで2回抽出し、抽出液を濃縮後、クロロホルムと水の2相分配により脂溶性画分(S12111-E)と水溶性画分(S12111-A)に分画した。得られた脂溶性画分は、溶媒留去後、DMSO(和光純薬工業株式会社、大阪)で1 mg/mL、水溶性画分は80%DMSOで5 μg/mLの濃度に調製した。
(3) スクリーニング方法
96ウェルプレートの各ウェルに、3μg/mLのマイトマイシン C(Sigma-Aldrich Co. LLC.、米国)で3時間 (37℃、5%CO2)処理したOP9細胞を9.0×103個播種し、37℃、5% CO2下でインキュベートした。その際の培養液として、20%非働化FBS (MP Biomedicals,LLC.、米国)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S, Gibco、Thermo Fisher Scientific Inc.、米国)を含むαMEM (Gibco)を使用した。翌日、OP9細胞が播種されている各ウェルにMB-1細胞を2.5×103個播種した。その際のOP9細胞とMB-1細胞の共培養では、培養液として、10% 非働化FBS (Biowest SAS、仏国)、1%P/S、1% non-essential amino acids (NEAA, Invitrogen、Thermo Fisher Scientific Inc.)及び10 μM β-メルカプトエタノール (Gibco)を含むαMEMを使用した。48時間後、DMSOに溶かした海綿動物試料を2μL添加し、5倍希釈で4段階の濃度(10 μg/mL、2 μg/mL、0.4 μg/mL及び0.08 μg/mL)に調製した。 48時間37℃、5%CO2下でインキュベートした後に、4%パラホルムアルデヒド(和光純薬工業株式会社)で固定、Hoechst33342(同仁化学研究所、熊本)で核染色し、顕微鏡(IX71型、オリンパス株式会社、東京)で観察した。このとき、in vitroにおけるLSC特異的な効果の獲得と副作用の危険性の排除のため、評価基準として(1)CA形成阻害活性を有すること、及び(2)OP9細胞に強い毒性が見られないことの2点を設け、顕微鏡観察にて判断した。
各被験体のニッチ形成阻害作用の評価方法を、図2A及び図2Bに記載した。より詳細には、下記の各セクションに記載した。
(4) 単離化合物の構造決定法
単離化合物の構造決定を行うにあたり、各種NMRスペクトルはAVANCE400 (Bruker、独国)、AVANCE600 (Bruker)、MSスペクトルはHRESIMS Exactive plus (Thermo Fisher Scientific)により測定を行った。NMR測定では、重クロロホルム中に試料を溶かして測定した。MSの測定は、100%メタノールで5 μg/mLの濃度に調製した単離化合物の溶液を使用し、ポジティブモードで測定した(イオン化方法:電子スプレイイオン化法、ニードル電圧:3.84kV、キャピラリー温度:320℃)。
(5) 単離精製された抽出物画分中のステリフェリン化合物の純度の測定
海綿中に含まれるステリフェリン化合物の純度は、TOF-MSを使用して、ステリフェリン化合物に特有なピークを測定試料全体のピークの積分値に対する割合を求めることにより算出した。
また、ステリフェリンA、ステリフェリンB及びステリフェリン化合物S09226.15-4の単離精製された画分の純度については、1H-NMRスペクトルの各化合物のピークの積分値を基に算出した。
2. 実験結果
(1) 海綿動物からの脂溶性画分の取得
加計呂麻島産海綿Stelleta globostellata (192 g wet wt.)を粉砕し、メタノール(800 mL×3回)で抽出し、濃縮した抽出液をジクロロメタンと水で2相分配した。水層はさらにノルマルブタノール(n-ブタノール)との間で2相分配し、n-ブタノール層はジクロロメタン層と合一した。得られた水層は画分1-2とし、合一した有機層は濃縮後、溶媒分画によりノルマルヘキサン(n-ヘキサン)、ジクロロメタン及び60%メタノールのそれぞれに可溶性の画分へと分け、各々画分2-1、2-2、2-3とした(図3)。
また、馬毛島産海綿同生物種(998 g wet wt.)をメタノール(1000 mL×3回)で抽出し、濃縮した抽出液をクロロホルムと水で2相分配した。水層はさらにn-ブタノールとの間で2相分配し、得られたn-ブタノール層はクロロホルム層と合一した。得られた水層は画分1-2とし、合一した有機層は濃縮後、溶媒分画によりn-ヘキサン、クロロホルム及び60%メタノールのそれぞれに可溶性の画分へと分け、溶媒を留去したものを、画分2-1、2-2、2-3とした(図3)。
(2) 脂溶性画分のニッチ形成阻害活性 (S12111画分)
S12111画分からの画分1-2、2-1、2-2、2-3について、前記「スクリーニング」と同様の方法で行った活性評価試験の結果を表1及び図4に示す。
Figure 0006931889
S12111画分からの脂溶性画分2-1及び画分2-2で強いCA形成阻害活性を認め、画分1-2及び画分2-3では、活性をほとんど示さなかった。
また、これらの脂溶性画分の中、収量が多く、下記に記載のニッチ形成抑制作用を示すS09226画分由来の画分2-2におけるステリフェリン化合物含量を、TOF-MSを用い、試料全体のピークの積算値に対するステリフェリン化合物に起因するピークの割合で求めると、乾燥重量当たり約2.26%(w/w)であった。
(3) 脂溶性画分のニッチ形成阻害活性 (S09226画分)
画分1-2、2-1、2-2、2-3についてスクリーニングと同様の方法で行った活性評価試験の結果を表2に示す。
Figure 0006931889
S09226画分からの脂溶性画分2-1及び2-2で強いCA形成阻害活性を認めた。画分1-2及び2-3は、S12111画分と同様に、弱い活性しか示さなかった。
(4) 脂溶性画分中の活性成分を含有する画分の精製及び単離 (S12111画分)
画分2-1(n-ヘキサン層)をオープンシリカゲルカラムクロマトグラフィー (内径2 cm×長さ15 cm)によりさらに分画した。n-ヘキサン、n-ヘキサン:酢酸エチル 9:1、8:2、7:3、6:4、クロロホルム:メタノール:水 7:3:0.5の6種類の溶媒それぞれ150 mL順にカラムに流し、25 mLずつ回収して32のフラクションに分けた。このうち20〜22のフラクションをまとめ、溶媒留去したものを画分8-6とした(図5)。
次に画分8-6(17.4 mg)を逆相HPLCによりさらに精製した。カラムはCOSMOSILR 5C18 ARII(内径10 mm×長さ25 cm)を使用し、流速2 mL/minで85%メタノールを10分間流した後に、30分間かけてグラジエントで100%メタノールにした。保持時間38〜42分に現れた2本のピークを回収し、溶媒を留去し、画分9-4とした(図5)。保持時間30分でステリフェリン化合物(下記でステリフェリンAと同定、画分10-3)の抽出物2.1 mg、34分で別のステリフェリン化合物(下記でステリフェリンBと同定、画分10-5)の抽出物1.8 mgを得た。
画分9-4(6.3 mg)をさらに逆相HPLCで精製した。移動相は80%メタノールで、その他の条件は上記と同じである。保持時間30分で、下記ステリフェリンAと同定されるステリフェリン化合物 (画分10-3)2.1 mg、34分で下記ステリフェリンBと同定されるステリフェリン化合物 (画分10-5)1.8 mgを得た(図5)。
(5) 脂溶性画分から精製及び単離された画分のニッチ形成阻害活性
S12111画分から精製して得られた画分10-1〜6の活性評価試験結果を表3に示す。
Figure 0006931889
S12111画分から精製した画分10-3〜6で、強いCA形成阻害活性を示した。
(6) 脂溶性画分中の活性成分を含有する画分の精製及び単離(S09226画分)
S09226画分からの画分2-2(クロロホルム層)をODSフラッシュカラムクロマトグラフィーによりさらに分画した。50、70%メタノール、70、85%アセトニトリル、100%メタノール、クロロホルム:メタノール:水 6:4:1の6種類の溶媒それぞれ500 mLの順にカラムに流し、各溶媒可溶性の画分に分け、溶媒を留去した。このうち100%メタノール可溶性のものを画分8-5とした(図6)。
次に、画分8-5(1293.6 mg)をオープンシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに分画した。クロロホルム、クロロホルム:メタノール 19:1、9:1、クロロホルム:メタノール:水 8:2:0.1、7:3:0.5、6:4:1の6種類の溶媒それぞれ200 mLの順にカラムに流し、およそ25 mLずつ回収して48のフラクションに分けた。このうち4〜8のフラクションをまとめ、溶媒を留去したものを画分9-2とした(図6)。
画分9-2(278.0 mg)を逆相HPLCによりさらに精製した。移動相は85%メタノールを用い、その他の条件はステリフェリンA及びB(画分10-3、10-5)単離時と同様である。保持時間40〜42分に現れたピークを回収し、溶媒を留去し、画分15-4より化合物3(コード番号;S09226.15-4)を、画分15-5より化合物4(コード番号;S09226.15-5)を、画分15-7より化合物5(コード番号;S09226.15-7)を含む画分15-2〜15-10を得た(図7A、図7B)。
この画分10-3中のステリフェリンA、画分10-5中のステリフェリンB、画分15-4中の新規化合物S09226.15-4の含有量を、1H-NMRを用いて求めると、各画分において乾燥重量当たり、ステリフェリンAが約76.9%(w/w)以上、ステリフェリンBが約73.9%(w/w)以上、新規ステリフェリン化合物S09226.15-4が約76.3%(w/w)以上であった。
S09226画分より得られた画分15-1〜10の活性評価試験結果を表4に示す。
Figure 0006931889
S09226画分からの画分15-2〜15-10で強いCA形成阻害活性を示した。
(7) 脂溶性画分から単離された活性成分の構造決定
S12111画分から精製した画分10-3及び画分10-5について、1H-13CNMR及び高分解能MSを測定した。高分解能MSスペクトルは、画分10-3については、C32H48O4(理論値;m/z 496.3553 (Na付加で519.3445)、実測値;m/z 519.3445 [M+Na]+)、画分10-5については、C32H48O4(理論値;m/z 496.3553 (Na付加で519.3445)、実測値m/z;519.3446 [M+Na]+)を示した。また、これらのNMRスペクトル解析により、それぞれステリフェリンA及びステリフェリンBが同定された(図8、図9)。
また、S09226画分を単離、精製して得られ、ステリフェリンA及びステリフェリンBとはHPLCの保持時間が相違し、強いCA形成阻害活性を示した画分15-4のNMR及び高分解能MSを測定した。高分解能MSスペクトルは、C32H48O4Na(理論値;m/z 519.3445、実測値;m/z 519.3443)のピークを認めた。さらに、NMRスペクトルより、画分15-4に含まれる化合物は、新規ステリフェリン化合物と同定された(図10A、図10B)。
さらに、強いCA形成阻害活性を認めた前記画分15-5及び15-7より分取された化合物4及び化合物5についても、それぞれ1H-NMRスペクトルを測定した。その結果、画分15-5の主成分はステリフェリンA、画分15-7の主成分はステリフェリンBと同定された。
(8) ニッチ形成阻害活性を有するステリフェリン化合物と抗腫瘍剤との併用による悪性腫瘍細胞のアポトーシス惹起作用の評価
マウス間葉系細胞でCA形成で支持細胞として働くOP9細胞、及びMB-1細胞との共培養によって形成されるCA形成に対するステリフェリン化合物の影響を検討した。
12ウェルプレートにMMC処理を施したOP9細胞を1ウェル当たり1.6×105個の密度で播種した。1日培養後、MB-1細胞を1ウェル当たり8.0×104個の密度で播種した。2日間培養後、ステリフェリンAを0.4 μg/mLの濃度で添加した。1日間培養後、イマチニブを0.2 μM及び1.0 μMの濃度で添加した。1日間培養後、以下に記述のアポトーシス検出を行った。

アポトーシスの検出には、NucView 488 Caspase-3 Assay Kit for Live Cells(Biotium、米国)又はミトコンドリア膜電位差を検出する蛍光試薬JC-1(Cayman Chemical、米国)を使用した。

NucView 488による評価は、各ウェルに対して0.05%トリプシン-EDTAを加え、4分間インキュベートし、培養液を加えた後、それぞれ分取した後に遠心分離(1,200 rpm、4分間)し、細胞を採取した。採取した細胞懸濁液をそれぞれ1 mLあたり1.0×106個の密度になるように調整し、それぞれ200 μLずつを分取した。分取した細胞にNucView 488 Caspase-3 Assay Kit for Live CellsのNucView 488 substrate stock solutionを5 μL加え、遮光して常温で20分間インキュベートした。300 μLの培養液を加え、セルソーター(SH-800型、ソニー株式会社、東京)によって解析し、各ウェルにおける緑色蛍光陽性の細胞の割合を算出した。
ステリフェリンA非添加条件と比較して、ステリフェリンA添加条件では0.2 μM、1.0 μMどちらのイマチニブの添加条件においても、カスパーゼ3活性を表すNucViewの高蛍光強度側のピークのステリフェリンA及びイマチニブのそれぞれの濃度に依存した増加が認められた(図11A)。
これらの結果を表5及び図11Bにまとめた。これらの結果より、ステリフェリンA及びイマチニブのそれぞれの濃度に依存してアポトーシスを惹起したMB-1細胞の割合が統計学的有意(Studentのt検定法、p<0.05)に増加した。
Figure 0006931889
(9) イマチニブ単体によるアポトーシス惹起作用の評価
次に、MB-1細胞単独培養時のイマチニブ単体によるアポトーシス惹起作用の評価を行った。
OP9細胞との共培養系からセルソーターによって精製したMB-1細胞を12ウェルプレートに1ウェルあたり2.0×105個の密度で播種し、イマチニブを0.2 μM及び1.0 μMの濃度で添加した。1日間培養後、以下に記載のアポトーシス検出を行った。

アポトーシスの検出には、NucView 488 Caspase-3 Assay Kit for Live Cells(Biotium、米国)を使用し、上記MB-1細胞とOP9細胞の共培養系でのアポトーシスの検出方法と同様の方法で行った。
単独培養MB-1細胞はステリフェリンA非添加時の共培養MB-1細胞と比較して、イマチニブに対して高い感受性を示した(図11C)。これらの結果から、MB-1細胞はOP9細胞との共培養下において薬剤抵抗性を獲得することが確認された。
(10) ニッチ形成阻害活性を有するステリフェリン化合物と抗腫瘍剤との併用による悪性腫瘍細胞のアポトーシス惹起作用についてのJC-1試薬を用いた評価
マウス間葉系細胞でCA形成で支持細胞として働くOP9細胞、及びMB-1細胞との共培養によって形成されるCAに対するステリフェリン化合物の影響をアポトーシス検出試薬JC-1を使用して検討した。
24ウェルプレートにMMC処理を施したOP9細胞を1ウェル当たり8.0×104個の密度で播種した。1日培養後、MB-1細胞を1ウェル当たり4.0×104個の密度で播種した。2日培養後、ステリフェリンAを0.4 μg/mLの濃度で添加した。1日間培養後、イマチニブを1.0 μMの濃度で添加した。1日間培養後、以下に記述のアポトーシス検出を行った。
アポトーシスの検出には、JC-1 Mitochondrial Membrane Potential Assay Kitを使用した。各ウェルに対してJC-1 Mitochondrial Membrane Potential Assay KitのJC-1 Reagentを50 μL添加し、20分間インキュベートした。その後、各ウェルに対して0.05%トリプシン-EDTAを加え、4分間インキュベートし、培養液を加えた後、それぞれ分取した後に遠心分離(1,200 rpm、4分間)し、細胞を採取した。採取した細胞をそれぞれ300 μLの培養液に懸濁し、セルソーター(SH-800型、ソニー株式会社、東京)によって解析し、各ウェルにおける赤色蛍光陰性の細胞の割合を算出した。
結果
ステリフェリンA非添加条件と比較して、ステリフェリンA添加条件ではイマチニブの添加によってミトコンドリアの膜電位差が消失していることを表すJC-1 reagentの低蛍光強度側のピークの増加が認められた。すなわち、ステリフェリンAとイマチニブとの共存下、アポトーシスが惹起されていることが確認された(図12A、図12B)。また、ステリフェリンA共存下、イマチニブの用量を変化させると、イマチニブの用量に依存したアポトーシスの惹起が認められた(図12C)。これらの結果は、Nuc View 488を使用した結果と一致した。
(11) 細胞間の立体的な位置関係に対するステリフェリン化合物の影響の評価
マウス間葉系細胞でCA形成で支持細胞として働くOP9細胞、及びMB-1細胞間の立体的な位置関係に対するステリフェリン化合物の影響を、それぞれ蛍光タンパク質を導入したOP9細胞とMB-1細胞を用いて検討した。
ガラスボトムの35 mm dishにMMC処理を施した蛍光タンパク質mCherryを導入したOP9細胞を4.0×105個の密度で播種した。1日間培養後、蛍光タンパク質GFPを導入したMB-1細胞を2.0×105個の密度で播種した。2日培養後、ステリフェリンAを0.4 μg/mLの濃度で添加した。2日間培養後、細胞間の立体的な位置関係を共焦点顕微鏡(IX81型、オリンパス)をもちいて撮影し、検討した。
結果
ステリフェリンA非添加条件ではMB-1細胞がOP9細胞の層の下側へと潜り込んでいる様子が観察されたが、ステリフェリンA添加条件ではMB-1細胞がOP9細胞の層の上側へと露出していることが認められた(図13)。
小括
以上の結果より、海綿動物より単離精製された画分から、白血病幹細胞様細胞であるMB-1細胞とOP9細胞との共培養系で認められるCA形成に対して抑制活性を有するステリフェリン化合物を同定した。上記のように、ステリフェリン化合物は、本実験で行った濃度において、MB-1細胞に対して直接的なアポトーシス惹起作用は示さない。したがって、本結果で認めたステリフェリン化合物の作用は、支持細胞との共培養下での特有な作用である。そして、ステリフェリンA非添加条件ではMB-1細胞がOP9細胞の層の下側へと潜り込んでいるが、ステリフェリンA添加条件ではMB-1細胞がOP9細胞の層の上側へと露出している。即ち、本結果で認めた作用は、ステリフェリン化合物が白血病幹細胞ニッチ形成に対して抑制的に作用することを示すものあり、ステリフェリン化合物が白血病幹細胞による悪性腫瘍の再発防止に有用であることを示すものである。
(12) S12111画分のTF-1細胞及びOP9細胞の共培養系におけるニッチ形成抑制作用の評価
上記ステリフェリンAのMB-1細胞のニッチ形成抑制作用がMB-1細胞に特有な作用に基づくものではないことを検証する目的で、MB-1細胞と同様に白血病幹細胞様の特性を有するTF-1細胞とOP9細胞との共培養系におけるTF-1細胞のニッチ形成に対するS12111の脂溶性画分及びステリフェリンAの作用を評価した。
実験方法は、MB-1細胞の代わりにTF-1細胞(human bone marrow erythroleukemia cell由来株)を使用した以外、基本的に上記MB-1細胞での評価と同様に行った。ステリフェリンAの評価において、より詳細には、ステリフェリンAのTF-1細胞のOP9細胞との共培養系におけるニッチ形成抑制作用の評価は、24ウェルプレートの各ウェルにMMCによる処理を施したOP9細胞を8.0×104個を播種した。1日間培養後、TF-1細胞を4.0×104個播種した。その際の培養液として、10%非働化FBS (Biowest SAS、仏国) 、1% P/Sを含むIMDM(Gibco)を使用した。1日間培養後、培地交換を行い、さらに1日間培養後にステリフェリンAを0.4 μg/mLの濃度で添加した。2日培養後、CA形成の有無を顕微鏡によって観測した。
TF-1細胞に対しても、MB-1細胞におけるステリフェリンAの効果と同様に、S12111の脂溶性画分(S12111-E)及びステリフェリンAはニッチ形成を抑制した(図14A及び図14B)。ステリフェリン化合物で示される白血病幹細胞様細胞に対するニッチ形成は、MB-1細胞に特有の作用ではなく、白血病幹細胞様細胞に共通した作用であることが示された(図14において、左図:対照、右図:S12111-E画分)。
(13) ステリフェリン化合物のOP9細胞とMB-1細胞の共培養系のニッチ形成阻害作用におけるOP9細胞とMB-1細胞のそれぞれにおける役割の検討
上記のOP9細胞とMB-1細胞及びOP9細胞とTF-1細胞の共培養系でのステリフェリン化合物のニッチ形成阻害作用が共培養系に特有な作用であるところから、共培養系でステリフェリン化合物の作用させた後のOP9細胞とMB-1細胞のそれぞれを分離してステリフェリン化合物を作用させた場合における各細胞の役割を検討した。
1) OP9細胞とMB-1細胞の共培養系でステリフェリン化合物を添加後、培地を交換した場合のCA再形成の検討
第1日にOP9細胞を上記と同様の方法で培地に播種し、インキュベートした。第2日にMB-1細胞を播種し、OP9細胞と共培養した。第4日にステリフェリンAを0.4 μg/mLとなるように添加しインキュベートした後、第6日に培地をステリフェリンAを含まない新鮮培地に交換し、第8日にCAの再形成の有無を検討し、評価した(図15A)。
その結果、OP9細胞とMB-1細胞の共培養系でステリフェリン化合物を作用させた後に、ステリフェリン化合物を除いても、CA再形成は認められなかった(図15A)。したがって、本結果は、ステリフェリンAの効果は、OP9細胞とMB-1細胞の共培養系で持続的に作用することが示された。
2) OP9細胞とMB-1細胞の共培養系でステリフェリン化合物を作用させた後、遊離細胞を採取し、新鮮なOP9細胞と共培養した場合のCA再形成の検討
第1日にOP9細胞を上記と同様の方法で培地に播種し、インキュベートした。第2日にMB-1細胞を播種し、OP9細胞と共培養した。第4日にステリフェリンAを0.4μg/mLとなるように添加しインキュベートした後、第6日に遊離MB-1細胞を採取し、第5日からインキュベートした新鮮OP9細胞に加え共培養し、ステリフェリンA非共存下で共培養し、第8日にCAの再形成の有無を検討した。
その結果、新鮮OP9細胞とステリフェリンAを作用させたMB-1細胞とを共培養すると、CAの形成が認められた(図15B)。本結果は、上記ステリフェリン化合物の標的が、MB-1細胞ではないことを示すものである。
3) OP9細胞の単独培養系にステリフェリン化合物を作用させた後、ステリフェリン化合物と非接触のMB-1細胞と共培養した場合のCA形成の検討
第1日にOP9細胞を上記と同様の方法で培地に播種し、インキュベートした。第2日にステリフェリンAを0.4 μg/mLとなるように添加しインキュベートした。第4日にステリフェリンAと非接触の新鮮MB-1細胞を播種し、共培養後、第6日にCAの形成の有無を検討した。また、対照群としてステリフェリンAを添加せずに、OP9細胞とMB-1細胞を上記のスケジュールで共培養させた系でCA形成を検討し比較した。
その結果、ステリフェリンAと接触させたOP9細胞と非接触のMB-1細胞とを共培養させた場合、ステリフェリンAと非接触のOP細胞とMB-1細胞とを共培養した場合と比較し、CAの形成数は減少した(図15C)。本結果は、ステリフェリン化合物のCA形成阻害作用がMB-1細胞よりも、むしろOP9細胞に作用していることを示すものである。
以上の結果より、ステリフェリン化合物は、白血病幹細胞様のMB-1細胞と支持細胞としての機能を有するOP9細胞との共培養系で、CA形成阻害作用を有し、その作用は、MB-1細胞よりもむしろ支持細胞としてのOP9細胞に作用することが示された。
本明細書に記載された実験は、白血病幹細胞に関連しているが、本明細書に記載の抽出物、組成物、化合物、腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤、医薬組成物、再発予防剤、並びに白血病幹細胞の分離及び/又は選別方法は、白血病幹細胞に限定されずいかなるがん幹細胞にも適用することができる。
したがって、上記の結果は、ステリフェリンAを含むステリフェリン化合物を含有する医薬組成物を、がん細胞に対して細胞毒性を発揮する抗腫瘍薬又は抗がん剤等と組み合わせて、それらの有効量を緩解期のがん患者に投与することにより、白血病幹細胞を含むがん幹細胞のニッチ形成を抑制又は阻害し、白血病の再発を含むがんの再発を抑制できることを示している。
そして、本結果は、ステリフェリン化合物が従来の抗腫瘍剤とは作用が相違する新たな悪性腫瘍、特に白血病の再発に対する治療戦略を提供することを示すものである。

Claims (11)

  1. 海綿動物(Polifera)の脂溶性溶媒抽出物であって、下記式(I)で表されるステリフェリン化合物を乾燥重量当たり少なくとも2%(w/w)以上含有し、腫瘍細胞のニッチ形成に対して抑制作用を有することを特徴とする抽出物。
    Figure 0006931889
  2. 下記式(II)で表されることを特徴とする化合物、又はその薬学的に許容可能な塩。
    Figure 0006931889
  3. 海綿動物(Polifera)の脂溶性溶媒抽出物であって、下記式(III)で表されるステリフェリン化合物を乾燥重量当たり少なくとも2%(w/w)以上含有する抽出物を含有することを特徴とする、腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤。
    Figure 0006931889
    ただし、
    R1はテルペン基であり、
    R2はH又はアセチル基から選択され、
    R3及びR4は、それぞれ独立して、H、-OH、メチル基、カルボキシル基又はヒドロキシメチル基から選択される。
  4. 前記ステリフェリン化合物が、ステリフェリンA、ステリフェリンB、又はそれらのジアステレオマー若しくはエナンチオマーから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤。
  5. 下記式(IV)で表される化合物又はその薬学的な許容可能な塩を含有することを特徴とする、腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤。
    Figure 0006931889
    ただし、
    R1はテルペン基であり、
    R2はH又はアセチル基から選択され、
    R3及びR4は、それぞれ独立して、H、-OH、メチル基、カルボキシル基又はヒドロキシメチル基から選択される。
  6. 前記式(IV)の化合物が、下記の式(V)〜(VII)で表されることを特徴とする、請求項5に記載の腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤。
    Figure 0006931889
    Figure 0006931889
    Figure 0006931889
  7. 前記式(IV)の化合物又はその薬学的な許容可能な塩が、抗腫瘍作用を示さない量で用いられるものである、請求項5又は6に記載の腫瘍細胞のニッチ形成阻害剤。
  8. 前記腫瘍細胞が、がん幹細胞、白血病幹細胞又は慢性骨髄性白血病細胞であることを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載のニッチ形成阻害剤。
  9. 請求項3〜8のいずれか1項に記載のニッチ形成阻害剤とイマチニブとを組み合わせることを特徴とする抗腫瘍用医薬組成物。
  10. 請求項9に記載の医薬組成物が、悪性腫瘍の再発防止用であることを特徴とする、悪性腫瘍に対する再発予防剤。
  11. 海綿動物(Polifera)の脂溶性溶媒抽出物であって、下記式(VIII)で表されるステリフェリン化合物を乾燥重量当たり少なくとも2%(w/w)以上含有する抽出物、又は下記式(VIII)で表される化合物若しくはその薬学的に許容可能な塩の使用を特徴とする、がん幹細胞又は白血病幹細胞の分離及び/又は選別するための方法。
    Figure 0006931889
    ただし、
    R1はテルペン基であり、
    R2はH又はアセチル基から選択され、
    R3及びR4は、それぞれ独立して、H、-OH、メチル基、カルボキシル基又はヒドロキシメチル基から選択される。
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