JP2010514834A - ウールリッヒ型先天筋ジストロフィーの処置のための、非免疫抑制性シクロスポリン - Google Patents

ウールリッヒ型先天筋ジストロフィーの処置のための、非免疫抑制性シクロスポリン Download PDF

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Abstract

本発明は、ウールリッヒ型先天筋ジストロフィー又はベツレムミオパシー(Bethlem myopathy)と診断された患者の筋細胞の、ミトコンドリア機能不全及びアポトーシス速度を低下させるための、非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の使用に関する。

Description

本発明は、ウールリッヒ型先天筋ジストロフィー又はベツレムミオパシー(Bethlem myopathy)と診断された患者の筋細胞の、ミトコンドリア機能不全及びアポトーシス速度を低下させるための、非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の使用に関する。
コラーゲンVI遺伝子の遺伝性突然変異は、2つの主要な骨格筋疾患、ベツレムミオパシー(BM, Online Mendelian Inheritance in Man [OMIM] 158810)及びウールリッヒ型先天筋ジストロフィー(UCMD, OMIM 254090)を引き起こす。
BMは、屈曲指拘縮を伴う、体軸筋及び近位筋の衰弱が徐々に進行することを特徴とする、常染色体優性障害である(Bethlem and Wijngaarden. Brain 1976; 99: 91-100; Merlini et al. Neuromuscul Disord 1994; 4: 503-11)。これは家族内変異性があり、出生前から成人中期の異なる臨床的発病を示す。出生前発病は胎動の減少、新生児期発病は低血圧又は斜頸、幼児期発病は運動発達の一里塚(モーターマイルストーン)の遅延、筋衰弱及び拘縮、並びに成人発病は近位筋衰弱、アキレス腱及び指拘縮を特徴とする。症状は通常軽度で徐々に進行し、50歳以上の罹患した人に、屋外での運動性に補助が必要な場合がある(Pepe et al. Biochem Biophys Res Commun 1999; 258: 802-07. De Visser et al.. Muscle Nerve 1992; 15: 591-96)。通常、心機能は正常である。
UCMDは、関節拘縮及び遠位関節過弛緩の発生を伴う先天性筋衰弱を特徴とする常染色体劣性障害である(Ullrich. Z. Ges. Neurol. Psychiatr. 1930; 126 : 171-201. Camacho Vanegas et al. Proc Natl Acad Sci USA 2001 ; 98: 7516-21)。症状には、通常出生時に、低血圧、先天性股関節脱臼、突出踵骨、及び一時的な後弯変形がある。運動発達の一里塚(モーターマイルストーン)は遅延し、ほとんどの子供は自力歩行能力を獲得できない。四肢の上方及び下方の伸筋表面にわたる毛孔性角化症及びケロイド及びタバコ巻紙様瘢痕の形成が一般的である。体軸筋障害は重症で、棘硬化を伴う進行性側弯をもたらす。初期及び重症の呼吸器障害は、10歳又は20歳まで人工的換気の補助を要する。UCMDに罹患した者は通常の知能を有し、MRIは通常の能発達を示す。劣性又は新規の異型接合変異をもつ患者は、ベツレム型疾患より軽症の場合もあるが、通常古典的な重症表現型を有する(Pan et al. Am J Hum Genet 2003; 73: 355-69. Baker et al. Hum MoI Genet 2005; 14: 279-93. Demir et al. Am J Hum Genet 2002; 70: 1446-58)。この症状を考慮し、UCMD表現型の患者において、遺伝子異質性を提示するコラーゲンVI遺伝子の変異を排除した例もある(Pan et al. Am J Hum Genet 2003; 73: 355-69)。
近年、標的とされたCol6a1遺伝子の不活性化のためのコラーゲンVI欠乏マウスが、(細胞死のいくつかの形態において機能し、シクロスポリンAにより脱感作され得る内膜チャネル、膜透過性遷移孔(permeability transition pore)(PTP)の不適切な開口による潜在的ミトコンドリア欠損を有することが明らかになった(Irwin et al. Nat Genet 2003; 35: 267-71. Bernardi et al. FEBS J 2006; 273: 2077-99)。この発見は、さらにインビボで開発され、マウスモデルにおける有効な治療介入をもたらした。ミトコンドリアが遺伝的及び臨床的に異質なUCMDの病因に関与するかを確認することは、最大の課題であり、これはマウスモデルで規定された投薬計画のヒトにおける治療的応用のための主要なハードルであった。この課題が今回解決された。さらに本発明者等は、UCMD患者の細胞に存在する潜在的ミトコンドリア欠損及び結果として上昇したアポトーシス速度を、非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、例えば[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAにより阻害可能であることを実証できた。したがって、本発明は、UCMDに罹患する患者の筋細胞のアポトーシスを阻害するための新規な方法、及び非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、好ましくは[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAを用いて当該患者の疾患を処置する新規な方法を提供する。現在利用し得る、UCMDを処置するために有効な方法はない。それ故、本明細書に記載されるような新規な治療的アプローチの要請が存在する。本発明者等は、シクロスポリンAに対する感受性の高いBM患者における、同様のミトコンドリア欠損を明らかにすることができた。それ故、本明細書に開示するUCMD患者のための新規な処置方法は、BM患者の処置のためにも利用可能である。
本発明は、UCMDにおける重大な問題が骨格筋細胞のアポトーシス速度上昇であるとの発見に由来する。発明者等は、この速度上昇が、細胞をシクロスポリンAへ曝露することにより修正され得る潜在的ミトコンドリア機能不全の結果であることを示すことができた。重要なことに、非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAは、ミトコンドリア機能不全を低下させ、過剰なアポトーシスを抑制する点で、親化合物と同程度効果的であった。従って、本発明は、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA(CsA)、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの使用であって、UCMDに罹患する患者の細胞における、ミトコンドリア機能不全及びアポトーシス速度の低下のための使用に関する。本発明での使用に適した非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体は、Novartis AGによる国際特許出願PCT/EP2004/009804(国際公開第2005/021028号)、3〜6頁で報告されている。[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAは米国特許第6,927,208号で報告されている。
式I
Figure 2010514834
式中、
Wは、MeBmt、ジヒドロ-MeBmt、8'-ヒドロキシ-MeBmt又はO-アセチル-MeBmtであり、
Xは、αAbu、Val、Thr、Nva又はO-メチルスレオニン(MeOThr)であり、
Rは、Pro、Sar、(D)-MeSer、(D)-MeAla、又は(D)-MeSer(Oアセチル)であり、
Yは、MeLeu、チオMeLeu、γ-ヒドロキシ-MeLeu、MeIle、MeVal、MeThr、MeAla、MeaIle又はMeaThr;N-エチルVal (EtVal)、N-エチルIle、N-エチルThr、N-エチルPhe、N-エチルTyr又はN-エチルThr(Oアセチル)であり、ここでRがSarの場合YはMeLeuの可能性はなく、
Zは、Val、Leu、MeVal又はMeLeuであり、
Qは、MeLeu、γ-ヒドロキシ-MeLeu、MeAla又はProであり、
1は、(D)Ala又はLysであり、
2は、MeLeu又はγ-ヒドロキシ-MeLeuであり、及び
3は、MeLeu又はMeAlaである。
式II
Figure 2010514834
式中、
W'は、MeBmt、ジヒドロ-MeBmt、又は8'-ヒドロキシ-MeBmtWであり、
Xは、αAbu、Val、Thr、Nva又はO-メチルスレオニン(MeOThr)であり、
R'は、Sar、(D)-MeSer、(D)-MeAla、又は(D)-MeSer(Oアセチル)であり、
Y'は、MeLeu、γ-ヒドロキシ-MeLeu、MeIle、MeVal、MeThr、MeAla、MeaIle又はMeaThr;N-エチルVal (EtVal)、N-エチルIle、N-エチルThr、N-エチルPhe、N-エチルTyr又はN-エチルThr(Oアセチル)であり、ここでRがSarの場合YはMeLeuの可能性はなく、
Zは、Val、Leu、MeVal又はMeLeuであり、
Q'は、MeLeu、γ-ヒドロキシ-MeLeu、又はMeAlaである。
式III
Figure 2010514834
式中、MeBmtはN-メチル-(4R)-4-ブト-2E-エン-1-イル-4-メチル-(L)スレオニン、αAbuは、L-α-アミノ酪酸、D-MeAlaはN-メチル-D-アラニン、EtValはN-エチル-L-バリン、ValはL-バリン、MeLeuはN-メチル-L-ロイシン、AlaはL-アラニン、(D)AlaはD-アラニン、及びMeValはN-メチル-L-バリンである。
別の実施態様によれば、本発明は、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの使用であって、UCMDの処置を目的とした医薬の製造のための使用に関する。
さらなる実施態様によれば、本発明は、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの有効量を患者に投与することを含んでなる、患者におけるUCMDの処置のための方法に関する。非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の有効量は、UCMD患者対する治療投薬計画の過程において反復投与されると、疾患の進行における目的の臨床的応答、例えば改善、安定化又は減速をもたらす量であると解する。経口投与の場合、一日投与又は週3回投与の有効量は、約1 mg/kgから約100 mg/kg、好ましくは約1 mg/kgから約20 mg/kgの間が可能である。静脈経路による場合、対応する指示用量は、約1 mg/kgから約50 mg/kg、好ましくは約1 mg/kgから約25 mg/kgでもよい。
さらに、本発明は、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの有効量、医薬的に許容可能な担体を含んでなるとともに、任意に賦形剤及び希釈剤を含んでいてもよいUCMDの治療のための医薬組成物に関する。希釈剤は典型的には水である。典型的に非経口製剤に添加される賦形剤は、例えば等張剤、バッファ又は他のpH制御剤、及び保存剤がある。当該組成物は、抗生物質等の他の活性成分を含んでもよい。
本発明はさらに、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの使用であって、ベツレムミオパシーに罹患する患者の細胞における、ミトコンドリア機能不全及びアポトーシス速度を低下するための使用に関する。さらには、本発明は、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの有効量を患者に投与することを含んでなる、患者におけるBMの処置のための方法にも関する。さらに本発明は、式I、II又はIIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の使用であって、BMの処置を目的とする医薬の製造のための使用に関する。最後に本発明は、式I、II又はIIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の有効量、医薬的に許容可能な担体及び、任意に賦形剤及び希釈剤を含んでなる、BMの処置のための医薬組成物に関する。
図1は、パネルA及びBにおいて、オリゴマオイシンに曝した、UCMD患者の筋生検から得られた筋芽細胞のミトコンドリア膜電位を示し、パネルCにおいて、UCMD患者と健常人からの筋芽細胞のアポトーシス速度を示した。 Col6a(1)-1-マウスから単離した、肝臓及び筋のミトコンドリアのカルシウム保持能(CRC)に与える[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの効果を試験する代表的実験例。矢印で示される箇所で、10μM Ca2+のパルスを添加した。最後の処置後5時間して、試験したミトコンドリアを、パネルA及びBにおいてはプラセボ処置したマウスから、パネルAII及びBIIにおいては[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAで処置したマウスから単離した。トレースa〜d:未添加、トレースa'〜d':[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA(0.8μM)をインキュベーション媒体に添加した。データは4重にした試験の代表例である。 プラセボ又は[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAで処置後の、Col6a1-/-マウスの肝臓及び筋から単離したミトコンドリアのCRC決定の概要。実験は図2に記載の通りに実施した。CRCmaxは、インキュベーション媒体へ、0.8μM [D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAを添加後に観察したCRCのことを言う。パネルA:各点は単一のマウスを表す。マウス24〜27は、[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAで処置し、マウス28〜31はプラセボ製剤で処置した。 プラセボ又は[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAで処置したCol6a1-/-マウスから単離したFDB線維におけるオリゴマイシンのミトコンドリアTMRM蛍光に与える影響。TMRMアッセイは、実施例4(方法)で記載の通りに実施した。示した部分で、5μM オリゴマイシン(オリゴ)又は4μM カルボニルシアニド−P−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP)を添加した。各トレースは、単一線維の蛍光値を表す。図には、90%の蛍光で任意に設定した閾値に対するオリゴマイシン添加後の線維脱分極の数も表示する。 [D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA又はプラセボで処理したCol6a1-/-マウスからの横隔膜切片におけるアポトーシスの発生。表示は、[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA(群1、マウス番号24〜27)又はプラセボ(群2、マウス番号28〜31)で処理した各Col6a1-/-マウス由来の横隔膜切片におけるmm2当たりのアポトーシス核の数である。横線は、マウス当たりの20〜30切片の平均+/-SDを表す。未処理(基本)及びCsA(シクロスポリンA)処理動物を表すデータは、過去に使ったサンプルから得たものである。 [D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA又はプラセボで処理したCol6a1-/-マウス由来の横隔膜における変化したミトコンドリアでの線維の評価。パネルAは、個々の動物からのサンプルにおける電子顕微鏡によって検出した変化したミトコンドリアでの筋線維のパーセンテージを示す。パネルBは、2つの処理群の平均値を表す。横線は平均パーセント+/-SDを表す。有意性は、マン・ホイットニィ検定(Mann-Whitney test)を用いて計算した。
アポトーシス発生の増加及び潜在的ミトコンドリア機能不全が、UCMD患者に見られるものであるかを評価するため、5人のUCMD罹患患者を健常人との比較で研究した。患者1及び5は遺伝的にUCMDに罹っていた(Demir et al. Mutations in COL6A3 cause severe and mild phenotypes of Ullrich congenital muscular dystrophy. Am J Hum Genet 2002; 70: 1446-58. Giusti et al. Dominant and recessive COL6A1 mutations in Ullrich scleroatonic muscular dystrophy. Ann Neurol 2005; 58: 400-10)。患者2においては、COL6A1 エクソン9の配列分析により、異型接合において発生する、15ヌクレオチド欠失の存在(COL6A1のエクソン1〜20を含む遺伝子クローンに対応する、受入番号AJ011932の全長ヌクレオチド(spanning nucleotidest)35.374〜35.388、COL6A1転写に対応する、受入番号NM 001848のnt 921〜936)が明らかになった。患者4においては、COL6A1 エクソン9の配列分析により、異型接合において発生するG→A変異の存在を明らかにした(受入番号AJ011932のヌクレオチド35.400、受入番号NM 001848のヌクレオチド850)。UCMDの典型的な臨床的及び免疫組織化学的な特徴を示す患者3には、遺伝子解析は使えなかった。
この5人の患者はUCMD重症度のスペクトルの代表例であった。全員が先天的発症であり、3人(患者2、3及び5)は起立及び歩行能力が発達せず、1人(患者4)は補助つきで起立のみ可能であり、及び1人(患者1)は歩くことができた。コラーゲンVIの減少は、軽度(患者1及び4)から顕著(患者2及び3)、完全になし(患者5)の範囲であった。当該変異は、3つの事例(患者2、4及び5)においてはCOL6A1遺伝子へ、1の事例(患者1)においてはCOL6A3遺伝子へ影響を及ぼし、1の事例(患者3)においては未確認であった。
5人の患者及び健常ボランティアの大腿四頭筋からの生検は、患者に対するインフォームドコンセント及び倫理委員会の承認の後に入手した。アポトーシス速度は、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ介在dUTPニック末端標識(TUNEL)法を用いて評価した。厚み7μmの凍結切片を筋生検から調製し、50%アセトン−50%メタノールで固定した。TUNELはApoptagインサイツアポトーシス検出キット(ケミコン)を用いて実施した。サンプルを、TUNEL陽性核を明らかにするためにペルオキシダーゼジアミノベンジジンで染色し、全核をラベルするためHoechst 33258(シグマ)で対比染色した。総数及びTUNEl陽性核の数を、ランダムに選択した視野中で、デジタルカメラを付帯するZeiss Axioplan 顕微鏡 (倍率×40)を用いて決定した。データを平均±S.D.で表した。データを、不対スチューデントのt検定で解析し、P<0.01の値を有意性ありとした。結果からは、アポトーシス核の頻度が全患者サンプルにおいて、健常なドナーと比較した場合かなり高く、値の幅は、患者1、2及び3でのおよそ10倍の増加から、患者4及び5での200超の増加に及ぶことが明らかになった。増加したアポトーシスは、全ての患者由来の筋生検におけるコラーゲンVIの発現が有意に減少したことと対応し、これはコラーゲンVIに対する選択的抗体で染色することにより証明された。
コラーゲンVIの欠如とアポトーシスとの間に存在する因果関係を実験的に検証するために実験を行った。筋芽細胞の培養物を、2つの未処理コントロール及び患者1、2、3及び4由来の筋生検を、酵素的及び機械的処理とダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に20%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンフォテリシンB(シグマ)を添加した中への移植により調製した。アポトーシスの試験のため、細胞を50%アセトン−50%メタノールで固定させ、TUNEL分析のためDead End Fluorescence TUNELシステム(プロメガ)を使用する処理を行った。全核の可視化は、Hoechst 33258で染色することにより行った。全患者由来の培養物は健常ドナーと比較して高いアポトーシス発生を示した。コラーゲンVIの移植又はシクロスポリンAでの処理は、患者サンプルにおいてアポトーシスの出現を十分に正常化した。患者2、3及び4からの筋細胞培養物は、予想通りコラーゲンVIがほとんど無いレベルまで低い値を示し、これは患者1及び5で以前に既に示された通りであった(Demir et al. 2002. Giusti et al. 2005)。
コラーゲンVI及びCsAの抗アポトーシス影響がミトコンドリアで追跡できるかを評価するため、ミトコンドリアの機能を筋生細胞培養で調べた。予想通り、健常ドナーから確立された培養物へのオリゴマイシンの添加では、プロトノフォアカルボニルシアニド−P−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾンの添加により即座に生じる、ミトコンドリア脱分極が発生しなかった。一方、全てのUCMD患者からの細胞においては、オリゴマイシンの添加に続いてミトコンドリア脱分極が起こった。特に、オリゴマイシンの応答は、シクロスポリンAもしくは細胞内Ca2+キレーターBAPTA-AMでの処理によって、又はコラーゲンVIに細胞を移植することにより十分に正常化され、UCMDの病因にPTPの関与を示した。ミトコンドリア膜電位を、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)の蓄積に基づいて評価した。ここで留意すべきことは、オリゴマイシンは、健常な呼吸する細胞において過分極を引き起こすことが予想されることであり、その細胞中では、ミトコンドリア膜電位が呼吸連鎖によるプロトンポンプ作用によって維持され、プロトン電気化学的勾配がATP合成を駆動するために使われる。従って、UCMD筋芽細胞培養物においてオリゴマイシンによって誘導されるミトコンドリアの脱分極は異常応答で、膜電位が、呼吸によってではなく、むしろミトコンドリアATPシンターゼの作用によって「逆に」マトリクスから膜間部分にプロトンを押し出すことで維持され、その結果解糖系ATPを消費することを示す。
健常ドナー並びに患者1、2及び3から確立した筋細胞培養物を、電子顕微鏡で調べた。UCMDサンプルにおいては、ミトコンドリア領域/視野の比率が、健常ドナーのものより顕著に増加し、患者1、2及び3でそれぞれ、62.5、75及び50%の値に達した(P<0.05)。この発見は、UCMD筋細胞において、ミトコンドリアは通常のサンプル中より顕著に伸長度合いが低いことを示している。患者のミトコンドリアの4〜8%は、短軸値が、コントロール(<300nm)と比較して、増加(>400nm)した。総合して考えると、これらの発見は、UCMD細胞において、サイズの増大を伴うトコンドリアがある割合で存在することを示した。UCMD患者由来のかなりの割合の細胞(健常ドナーからの細胞の1%と比較して。4及び5%の間)にも、マトリクス濃度が低く、クリステが無い、膨張したミトコンドリアが見られる。驚くべきことに、UCMD細胞をコラーゲンVIに移植した場合、当該領域/視野の比率及び短軸値は、健常ドナーのものと同様になった。また、コラーゲンVIへの移植又はシクロスポリンAでの処理は、膨張ミトコンドリアを有する細胞の数を、健常ドナーからの培養物で観察される値まで減少させた。
F1F0 ATPシンターゼ阻害剤であるオリゴマイシンで培養物を処理すると、膨張ミトコンドリアを有する細胞の割合を、コントロールで4%、UCMD患者で40%超まで上昇させた。これは前に示されたコラーゲンVI欠損マウスモデルと同様に、オリゴマイシンにより選択的に増幅される、潜在的ミトコンドリア機能不全の存在を示す発見である。オリゴマイシンの影響はシクロスポリンAでの処理により阻止することができ、これは全細胞培養物における基底値と同程度まで、膨張ミトコンドリアを産生する細胞の割合を回復させる。非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAは、UCMD患者由来の細胞におけるオリゴマイシン依存的なミトコンドリア分極を妨害する点でシクロスポリンAと同じくらい効果的であり、健常ドナー由来の細胞により示されたレベルまでアポトーシスの出現を回復した。これらの発見をもたらした実験は、実施例1で議論する。
ミトコンドリア欠損は、初代遺伝子欠損がCOL6A1又はCOL6A3遺伝子中であるかに関係なく、UCMDの臨床的兆候を有する患者由来の初代培養に出現し得ること、また潜在的ミトコンドリア異常は、重度の臨床的な症候群の予兆とならないことは、驚くべきことである。これらの発見は、ミトコンドリアがUCMDの全事例の病因に関与しており、追加的な遺伝的及び/又は環境的要因が、筋線維の死滅及び再生に対する個々の感受性の強さに影響を及ぼすことを示している。全てのミトコンドリア異常及びその後のアポトーシスは、UCMDをコラーゲンVI上に移植又はシクロスポリンAに曝すことにより治療できた。これらの発見は、原理上、遺伝子障害の下流の病原の連鎖は、少なくとも初期の段階で、適切な薬物により介入できることを実証する。シクロスポリンAは、患者の長期治療における主要な障害となり得る免疫抑制を引き起こすことがよく知られている。本発明者等によりなされた重要な観察は、非免疫抑制シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAが、UCMD細胞におけるミトコンドリア機能不全及びアポトーシス速度を低下させる点でシクロスポリンAと同じくらい効果的ということである。この発見は、シクロスポリンの免疫抑制活性は細胞保護効果に関与せず、コラーゲンVI障害を患う患者への新規な医薬治療を提供することを実証する。
これらの発見に基づき、本発明は、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの使用であって、UCMDに罹患する患者の細胞におけるミトコンドリア機能不全及びアポトーシス速度を低下させるための使用に関する。
式I
Figure 2010514834
式中、
Wは、MeBmt、ジヒドロ-MeBmt、8'-ヒドロキシ-MeBmt又はO-アセチル-MeBmtであり、
Xは、αAbu、Val、Thr、Nva又はO-メチルスレオニン(MeOThr)であり、
Rは、Pro、Sar、(D)-MeSer、(D)-MeAla、又は(D)-MeSer(Oアセチル)であり、
Yは、MeLeu、チオMeLeu、γ-ヒドロキシ-MeLeu、MeIle、MeVal、MeThr、MeAla、MeaIle又はMeaThr;N-エチルVal (EtVal)、N-エチルIle、N-エチルThr、N-エチルPhe、N-エチルTyr又はN-エチルThr(Oアセチル)であり、ここでRがSarの場合YはMeLeuの可能性はなく、
Zは、Val、Leu、MeVal又はMeLeuであり、
Qは、MeLeu、γ-ヒドロキシ-MeLeu、MeAla又はProであり、
1は、(D)Ala又はLysであり、
2は、MeLeu又はγ-ヒドロキシ-MeLeuであり、及び
3は、MeLeu又はMeAlaである。
式II
Figure 2010514834
式中、
W'は、MeBmt、ジヒドロ-MeBmt、又は8'-ヒドロキシ-MeBmtWであり、
Xは、αAbu、Val、Thr、Nva又はO-メチルスレオニン(MeOThr)であり、
R'は、Sar、(D)-MeSer、(D)-MeAla、又は(D)-MeSer(Oアセチル)であり、
Y'は、MeLeu、γ-ヒドロキシ-MeLeu、MeIle、MeVal、MeThr、MeAla、MeaIle又はMeaThr;N-エチルVal (EtVal)、N-エチルIle、N-エチルThr、N-エチルPhe、N-エチルTyr又はN-エチルThr(Oアセチル)であり、ここでRがSarの場合YはMeLeuの可能性はなく、
Zは、Val、Leu、MeVal又はMeLeuであり、
Q'は、MeLeu、γ-ヒドロキシ-MeLeu、又はMeAlaである。
式III
Figure 2010514834
式中、MeBmtはN-メチル-(4R)-4-ブト-2E-エン-1-イル-4-メチル-(L)スレオニン、αAbuは、L-α-アミノ酪酸、D-MeAlaはN-メチル-D-アラニン、EtValはN-エチル-L-バリン、ValはL-バリン、MeLeuはN-メチル-L-ロイシン、AlaはL-アラニン、(D)AlaはD-アラニン、及びMeValはN-メチル-L-バリンである。
非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体は、インビトロで、UCMD患者から得た生検から調製した筋由来細胞中でアポトーシスを阻害するために使用できる。アポトーシス阻害が見られれば、それはその非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体で患者を処置することにより、症状の緩和が有効であることを示す指標となる。
本発明はまた、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの使用であって、UCMDに罹患する患者を処置するための使用に関する。活性化合物、すなわち非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体を、任意の従来的経路により投与してもよい。これは非経口的に、例えば注入可能な溶液もしくは懸濁物の形態、又は注入可能な貯蔵(deposit)製剤の形態で投与してもよい。好ましくは、経口的に、飲用の溶液もしくは懸濁物、錠剤又はカプセルの形態で投与もできる。非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAを含んでなる、経口投与のための医薬組成物は、実施例に記載する。実施例により実証されるように、かかる医薬組成物は典型的に、選択した非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体及び1又は複数の医薬的に許容可能な担体物質を含んでなる。好適な医薬担体は、例えば、この分野で標準的に参照されるテキストである、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA (1990)に記載されている。これらの組成物には、濃縮されており、投与前に適切な希釈剤、例えば水と組み合わせることが必要なものもある。非経口投与のための医薬組成物も、典型的に1又は複数の賦形剤を含有する。任意の賦形剤には、等張剤、バッファ又は他のpH制御剤、及び保存剤がある。これらの賦形剤は、組成物の維持のため、並びに好ましい範囲のpH(約6.5〜7.5)及び浸透圧(約300mosm/L)の達成のために添加してもよい。
経口投与のためのシクロスポリン製剤の追加的な例は、米国特許第5,525,590号及び第5,639,724号、並びに米国特許出願第2003/0104992号で見ることができる。経口経路の場合、一日投与又は週3回投与のために、非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の指示用量は、約1 mg/kgから約100 mg/kg、好ましくは約1 mg/kgから約20 mg/kgでもよい。静脈経路の場合、対応する指示用量は、約1 mg/kgから約50 mg/kg、好ましくは約1 mg/kgから約25 mg/kgでもよい。非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の有効量は、UCMD患者に治療的投薬計画の過程で反復的に投与されると、疾患の進行における目的の臨床的応答、例えば改善、安定化又は減速をもたらす量と解する。かかる臨床的応答を、例えば量的等強度(Quantitative Isometric Strength)(QIS)試験により評価できる。QISは、圧力変換及び記録装置を用い、客観的手法で筋強度を見積もることができる。あるいは、アポトーシス速度の正常化を、筋生検で、当業者に既知の生化学的及び免疫組織化学的手法により評価できる。最後に、神経パターンの代わりに筋のパターンを示す筋電図検査を利用してもよく、これは定量化可能である。
最初の第I相臨床試験は、[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの経口用量の安全性を評価し、当該薬物物質の薬物動態プロファイル及び安全性プロファイルを決定するために実施した。研究から、水中の微小エマルション状態で50〜1600mgの用量は十分に寛容されることが示された。軽度で短期間の副作用が観察され、吐き気、嘔吐、腹痛、及び軽度の頭痛があった。これらの副作用に用量相関はなかった。
式I、II又はIIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体を含んでなる、本発明の医薬組成物の効果を試験するための治験用量の決定の際には、臨床医により非常に多くの要因が考慮される。中でも基本的な要因は、非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の毒性及び半減期である。追加的な要因には、患者のサイズ、患者の年齢、患者の通常状態(機械換気、疾患の臨床段階、症状の重症度等)、患者における他の薬物の存在等がある。処置過程においては、本発明の医薬組成物の反復的な投与が必要となる。典型的には、適切な薬物用量が、1日当たりおよそ1回投与されるであろう。疾患の遺伝的性質が原因で、処置が、長期間、可能性として患者の生涯にわたって継続が必要となることもある。
効果的なUCMDの薬理学的処置は、現在知られていない。患者は、インフルエンザ及び肺炎球菌感染に対する、任意の感染が抗体で競合的に処置されるワクチン接種により支えられている。それ故、本発明の医薬組成物は、非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体に加えて、1又は複数の他の活性成分、例えば1又は複数の抗生物質を含んでもよい。シクロスポリンA誘導体及び当該他の活性成分は、同じ医薬組成物の部分として共に投与してもよく、あるいは全活性成分の利益を得るよう設計された適切な用量の投薬計画の部分として、別々に投与してもよい。適切な用量の投薬計画、投与される各用量、及び各活性剤の投与の間の特定の間隔は、使用される特定の化合物製剤の組み合わせ、処置される患者の状態、及び前節で述べた他の要因に依存する。かかる追加的な活性成分は、一般的に単一の治療剤として効果的であると知られるものと同量で投与されるであろう。ヒトに対する投与のためのFDA承認を受けた、当該活性成分のFDA承認用量は、公的に利用可能である。
本発明はまた、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの使用であって、BMに罹患する患者の細胞における、ミトコンドリア機能不全及びアポトーシス速度の低下のための使用に関する。さらに、本発明はまた、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、より好ましくは式IIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体、及び最も好ましくは式IIIの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの有効量を患者に投与することを含んでなる、患者におけるBMの処置のための方法に関する。さらに、本発明はまた、式I、II又はIIIの非免疫抑制性シクロスポリン誘導体Aの使用であって、BMの処置目的の医薬の製造のための使用に関する。最後に、本発明は、式I、II又はIIIの非免疫抑制性シクロスポリン誘導体Aの有効量、医薬的に許容可能な担体並びに、任意に賦形剤及び希釈剤を含んでなる、BMの処置のための医薬組成物に関する。
本明細書で引用した全ての特許、特許出願及び文献は、その全体が参照により組み込まれると考えられる。
本発明をさらに以下の実施例により詳述する。実施例は、当業者に説明する目的で提供しており、請求の範囲に記載の発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は与えられる実施例に限定されると解釈すべきでなく、本明細書中で提供された教示の結果として明らかになる、任意の及び全ての変更を包含すると解釈されるべきである。
シクロスポリンA及び非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの、UCMD患者由来の筋芽細胞培養物における、ミトコンドリアTMRM蛍光(ミトコンドリア膜電位の測定)及びアポトーシス発生に与える影響
図1のパネルA及びBは、UCMD患者1(A)及び4(B)由来の筋芽細胞における、ミトコンドリア膜電位を、時間の関数で示す。ミトコンドリア膜電位を、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)の蓄積に基づいて測定した。筋芽細胞を24mmの円形ガラスのカバースリップ上に播き、20%FCSを添加したDMEM中で2日間増殖させた。細胞の広がり及び、結果としてミトコンドリアがロードする電位差滴定のプローブは、シクロスポリンAで阻害される原形質膜多剤耐性ポンプの活性の影響を受ける。従ってシクロスポリンでの処理は、ミトコンドリア膜電位の上昇として誤って解釈され得る、ミトコンドリア蛍光の上昇を引き起こすこともある。かかる人為的影響を防止しロードする条件を標準化するため、実験は、多剤耐性ポンプを阻害するがPTPには影響を与えない、1.6μM シクロスポリンHの存在下で実施した。ミトコンドリア膜電位測定のために、細胞を一度リンスし、その後1.6μM シクロスポリンHを添加した血清未含有のDEME中でインキュベートし、10 nM TMRMを30分間ロードした。各実験の最後に、4μM プロトノフォアカルボニルシアニド−P−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP)の添加により、ミトコンドリアを十分に脱分極させた。細胞蛍光画像は、落射蛍光照明用にキセノン光源(75W)及び12ビットデジタル冷却CCDカメラ(Micromax, Princeton Instruments)を備えたオリンパス1×71/1×51倒立顕微鏡を用いて取得した。蛍光の検出のため、568+/-25 nm帯域及び585 nm長域(longpass)放出フィルターセットを使用した。画像を、40×、1.3 NA油侵対物レンズ(ニコン)を用いて、100 ミリ秒の露光時間で集めた。データを取得し、Cell R ソフトウェア(オリンパス)を用いて解析した。いくつかのミトコンドリアの集団(10〜30)が、注目の領域として確認され、細胞を含まない視野領域を背景とした。連続的なデジタル画像を2分ごとに取得し、平均蛍光強度を次の解析のために記録し、保存した。パネルA及びBに示される実験において、ガラス上の細胞に、上記のTMRMを添加し、矢印で示されたところで、6μM オリゴマイシン(オリゴ)及び4μM FCCPを、追加の処理なしで(白記号)又は1.6μM シクロスポリンA(黒四角)もしくは1.6μM[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA(黒三角)で30分間処理後に添加した。図1のパネルCは、追加的処理をしない(基礎)、又は1.6μM シクロスポリンAもしくは1.6μM[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAで2時間処理後のいずれかの場合であり、患者1(P1)及び患者4(P4)由来の筋芽細胞をプラスティック皿で培養し、TUNEL陽性核の存在を採点した。データは少なくとも4つの独立した実験の平均±S.D.で、ここで(*)は、基礎の状態と比較してP<0.01である。アポトーシスは既に記載の通りに評価した。
図1で報告された結果は、非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAが、UCMD患者由来の細胞におけるオリゴマイシン依存的なミトコンドリアの脱分極を妨害し、健常ドナー由来の細胞により示されるレベルまでアポトーシスの出現を回復させる点で、シクロスポリンAと同程度の効果であった。
[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの合成
(Jean Francois Guichouによる博士号論文からの翻訳、タイトル"De nouveaux analogues de Cyclosporin A comme agent anti-VIH-1", Faculte des Sciences, University of Lausanne, CH-1015 Lausanne, Switzerland (2001))。
実施例A:H-MeLeu-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal- MeBmt(Oac)-Abu-Sar-OMeの合成
4−ジメチルアミノピロリジン(DMAP)(41.5 mモル; 5.8 g)を、100 ml無水酢酸中のシクロスポリンA(CsA)(8.3 mモル; 10 g)溶液に添加した。溶液を18時間室温で攪拌した。反応混合物をその後600 ml酢酸エチルで希釈し、水で2回、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で4回洗浄した。有機相を、無水Na2SO4を通して乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた黄色残存物をシリカゲルのクロマトグラフィに通し(溶離液:98:2 ジクロロメタン/メタノール)、エーテル中で再結晶させた。白色粉末である、9.5gのMeBmt(OAc)-CsAを回収し、回収率は92%であった。
トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート(22.5 mモル; 3.3 g)を、60 mlのジクロロメタン中のMeBmt(OAc)-Cs (7.5 mモル; 9.4 g)溶液に添加した。室温で16時間攪拌後、メタノール中の35 mlの0.26 M ナトリウムメタノレートを添加した。
1時間後、35 mlのメタノール及び35 mlの2N 硫酸を添加し、反応混合物をさらに15分間攪拌し、飽和KHCO3(28 ml)でpH 6.0に中和し、酢酸エチルで2回抽出した。有機相を、飽和NaClで2回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過させた。続いて、溶媒を減圧下で蒸発させた。残存物をシリカゲルでクロマトグラフィした(溶離液:5:1酢酸エチル/メタノール)。
7.3gのH-MeLeU-VaI-MeLeU-AIa-D-AIa-MeLeU-MeLeU-MeVaI-MeBrTIt(OAc)-AbU-Sar-OMe
を得た(収率76%)
HPLC tr=268.23 mn (98%)
ES/MS: m/z: 1277.5 [M+H+], 639.2 [M+2H+]
実施例B:H-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt(OAc)-Abu-Sar-OMeの合成
DMAP (2.3 mモル; 334 mg)及びフェニルイソチオシアネート(6.9 mモル; 0.75 ml)を、48 mlテトラヒドロフラン中のH-MeLeu-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt(OAc)-Abu-Sar-OMe (4.6 mモル; 7 g)溶液に添加した。2時間後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をシリカゲルでクロマトグラフィに供した(溶離液:9:1tert−ブチルメチルエステル(MTBE)/酢酸エチル(1)、9:1MTBE/メタノール(2))。5.8gのPh-NH-C(S)- MeLeu-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt(OAc)-Abu-Sar-OMe を得た(収率90%)。
13.8 ml トリフルオロ酢酸を、290 ml ジクロロメタン中の、最後の化合物(4 mモル; 5.6 g)溶液に添加した。反応の1時間後、混合物を、KHCO3を用いて中和し、500 mlのジクロロメタンで希釈した。有機相を2回、飽和NaClで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させて濾過した。続いて、溶媒を減圧下で蒸発させた。残存物をシリカゲルでクロマトグラフィに供した(溶離液:9:1 MTBE/酢酸エチル(1);3:1 MTBE/メタノール(2))。2.8gのH-Val-MeLeu-Ala-D-Ala- MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt(OAc)-Abu-Sar-OMeを得た(収率61%)。
HPLC tr=25.80 mn (99%)
ES/MS: m/z: 1050.5 [M+H+], 547.7 [M+2H+]
実施例C:Boc-D-MeAla-EtVal-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu- MeLeu-MeVal-MeBmt(OAc)-Abu-NMe-CH2-CH2-OHの合成
フルオロ−N,N,N'−テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TFFT)(0.96 mモル; 0.25 g)を、15 mlジクロロメタン中の、H-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt(OAc)-Abu-Sar-OMe(0.87 mモル; 1.00 g)、DIPEA(2.78 mモル; 0.48 ml)及びBoc-D-MeAla-EtVal-OH (0.96 mモル; 0.32 g)の溶液に、不活性ガス雰囲気下で添加した。15分後、ジクロロメタンを蒸発させ、残存物を酢酸エチルに溶解させた。有機相を、連続的に飽和NaHCO3溶液、10% クエン酸溶液及び飽和NaCl溶液で洗浄し、その後無水Na2SO4で乾燥させ濃縮した。シリカゲルでクロマトグラフィを行い(98:2酢酸エチル/メタノール)、1.14g(90%)のBoc-D-MeAla-EtVal-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt(OAc)-Abu-Sar-OMeを得た。
最後の産物(0.64 mモル; 0.93 g)を45 ml無水メタノールに溶解させ、水酸化ホウ素ナトリウム(25.5 mモル; 0.96 g)を、3時間30分の間にわたって15分の間隔で少量ずつ添加した。4時間目、反応混合物を0℃に冷却し、10% クエン酸の添加により加水分解させ濃縮させた。残存物を酢酸エチルに溶解した。有機相を10%クエン酸溶液及び飽和NaCl溶液で洗浄し、その後無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(95:5 酢酸エチル/メタノール)の後、0.63g(81%)のBoc-D-MeAla-EtVal-Val-MeLeU-Ala-D-Ala-MeLeU-MeLeU-MeVal-MeBmt(OAc)-AbU-NMe-CH2-CH2-OHを得た。
ES/MS: m/z: 1434.9 [M+H+], 717.9 [M+2H+]
実施例D: H-D-MeAla-EtVal-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt-Abu-OHの合成
メタンスルホン酸(3.18 mモル; 2.060 ml)を、42.5 mlメタノール中のBoC-D-MeAla-EtVal-Val-MeLeU-Ala-D-Ala-MeLeU-MeLeU-MeVal-MeBrDt(OAc)-AbU-NMe-CH2-CH2-OH溶液に添加し、混合物を50℃まで加熱しこれを維持した。反応のプロセスをHPLC及び質量分析で観測した。80時間後、混合物を0℃まで冷却し、1M NaHCO3の添加により加水分解した。メタノールを除去し、残存物を酢酸エチルに溶解させた。有機相を、1M NaHCO3、その後飽和NaCl溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ濃縮した。産物(577 mg)、H-D-MeAla-EtVal-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeU-MeLeU-MeVal-MeBml(OAc)-AbU-O-CH2-CH2-NHMe は、さらなる精製を行わずに次のステップに用いた。
産物(0.42 mモル; 557 mg)を20 mlメタノール中に溶解させ、1.26 mlメタノール中のナトリウムメタノレート(1.26 mモル)の溶液と、不活性雰囲気下で混合した。室温で18時間後、反応混合物を0℃まで冷却し、5 ml水中の水酸化ナトリウム(4.2 mモル; 168 mg)を、滴下しながら添加した。室温で21時間後、反応混合物を再び0℃まで冷却し、1M KHSO4で中和した。メタノールを除去し、残存物を酢酸エチルに溶解させた。有機相を準飽和NaCl溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ濃縮した。産物(335 mg; 64%)、H-D-MeAla-EtVal-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt-Abu-OHを、さらなる精製を行わずに次のステップで用いた。
HPLC tr=26.27 mn (86%)
ES/MS: m/z: 1235.5 [M+H+], 618.2 [M+2H+]
実施例E:[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの合成
不活性雰囲気下、50 mlジクロロメタン中の、H-D-MeAla-EtVal-Val-MeLeu-Ala-D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeBmt-Abu-OH (0.162 mモル; 200 mg)及び sym−コリジン(1.78 mモル; 0.24 ml)溶液を、3.2リットルジクロロメタン中の(7−アザベンゾトリアゾル−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロ−ホスフェート(PyAOP, 0.486 mモル; 254 mg)溶液に対して、滴下しながら添加した。72時間後、反応混合物を、10% Na2CO3溶液の添加により加水分解した。ジクロロメタンを蒸発させ、残存物を酢酸エチルに溶解させた。有機相を連続的に、0.1N HCl及び飽和NaCl溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ濃縮した。粗生成物をシリカゲルで精製し、110 mg(59%)の[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAを得た。
HPLC tr=30.54 mn (100%)
ES/MS: m/z: 1217.6 [M+H+], 609.3 [M+2H+]
[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの経口製剤
量は% w/wとして表す。
Figure 2010514834
A〜D製剤の個々の成分及び調製の方法については英国特許出願第2,222,770号を参照されたい。
コラーゲンVIノックアウトマウスにおける[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの治療効果
4匹のコラーゲンVIノックアウトマウス(Col6a1-/-、5〜6月齢、性別は釣合っている)の1群に、1日2回で5日間、用量5 mg/kgの[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAを静脈注入で投与した。4匹のコントロール群は、同じ投薬計画でプラセボ製剤を受けた。犠牲にした後、血液サンプルを各動物から捕集し、その後、後肢からの肝臓及び筋を単離し、カルシウム保持能(CRC)用のミトコンドリア調製のために処理した。同時に、横隔膜及び短趾屈(FDB)筋を取り出し、組織病理学及びインサイツのミトコンドリア機能評価(ミトコンドリア膜電位)のために処理した。全てのインビボ実験は、適切な機関により承認されており、機関の指針に従って実施した。
方法
ミトコンドリアの調製及びCRCアッセイ
ミトコンドリアは、Fontaine et al. 1998. J. Biol. Chem. 273: 25734- 25740 and Fontaine and Bernardi. 1999. J. Bioenerg. Biomembr. 31 : 335-345の記載の通り、肝臓及び筋のホモジネートから、分画遠心法により調製した。ミトコンドリア調製物のCRCを、Ca2+指標のカルシウムグリーン−5N(分子標識、励起505 nm、発光535 nm)存在下、磁気攪拌及び熱制御を備えるPerkinElmer LS50B分光光度計を用いて、蛍光で評価した。インキュベーション培地は、0.25 Mスクロース、10 mM Tris-MOPS、5 mMグルタメート、2.5 mMマレート、1(肝臓)mm又は10(筋)mMのPi-Tris、20μM EGTA-Tris及び1μM カルシウムグリーン−5N(pH 7.4)を含有させた。
骨格筋芽細胞の単離及び培養並びにTMRMアッセイ
FDB線維を、Irwin et al. 2003. Nat. Genet. 35: 267- 271に記載の通りに単離した。無傷筋芽細胞を、ラミニン(3μg/cm2)で被覆したガラスのカバースリップ上に移植し、10% ウシ胎仔血清含有のダルベッコ変法イーグル培地で培養した。実験のために、Irwin等による記載の通り、FDB線維を1ml タイロードバッファに移植し、20 nM TMRM(Molecular Probes)をロードした。ミトコンドリアTMRM蛍光画像を、オリンパス1×71/1×51倒立顕微鏡を用いて取得した。
TUNELアッセイ
4% パラホルムアルデヒドでの固定化し、パラフィン埋め込み後、横隔膜筋の7μm切片を調製した。TUNEL法は、ApopTagインサイツアポトーシス検出キット(Intergen)を用いて実施した。Irwin等の記載の方法に従い、サンプルを、TUNEL陽性核を検出するためペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジンで染色し、全核をマークするためにHoechst 33258 (Sigma)で対比染色した。ランダムに選択した線維における、総ての及びTUNEL陽性の核の数を、Leica DC 500 カメラを備えるZeiss Axioplan顕微鏡を用いて検出した。
結果
[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAがエキソビボで膜透過性遷移孔(PTP)に与える影響
[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA又はプラセボ製剤で処理した後、Col6a1-/-マウスから単離した肝臓及び後肢筋由来の活性化(Energize)ミトコンドリアを、ミトコンドリア外Ca2+を観測するカルシウムグリーン−5Nの存在下でインキュベートした。一連のCa2+パルスをその後投与し、濃度閾値まで取り込ませた各パルスは、PTPの開口を引き起こすに至った。このプロトコルはPTP増感剤及び脱感剤双方の影響について詳細な分析ができる(Fontaine et al. 1998)。結果は、PTPの開口のCa2+閾値の上昇で示されるように、[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAで処理したマウス由来の肝臓及び筋のミトコンドリアにおいては、PTPのCa2+及びPiに対する顕著な脱感作を示した(図2)。この影響は特に筋ミトコンドリアで際立っており、CRCは、インキュベーション培地への[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの直接添加により達成される最大レベル近傍に到達した。パネルBIIのトレースdとトレースd'を比較して見る。4匹の[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA処理(マウス番号24〜27)及び4匹のプラセボ処理(マウス番号28〜31)由来のミトコンドリア分析から得られた結果の概括を図3に示す。
FDB線維における[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAのミトコンドリア膜電位の影響
ミトコンドリア膜電位を、分極ミトコンドリアに蓄積し、膜電位が減少すると放出される蛍光プローブである、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)のミトコンドリア蛍光変化により評価した。Col6a1-/-マウス線維におけるミトコンドリア機能不全は、ミトコンドリアF1 F0−ATPシンターゼの阻害剤である、オリゴマイシンによって明らかにされることが以前に示されている。プラセボ処理したCol6a1-/-マウスから単離した線維へのオリゴマイシン添加は、大多数の線維において、予想通りのTMRM蛍光の増加をもたらした(図4)。インビボで、[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAでの処理は、そこでミトコンドリア脱分極が観察され得る線維の数を、顕著に減少させた(図4B)。表1は、プラセボ又は[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA処理した各マウスの結果をそれぞれまとめたものである。
Figure 2010514834
横隔膜アポトーシスへの[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの影響
[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA処理(番号24〜27)又はプラセボ処理(番号28〜31)した、各Col6a1-/-マウス由来の横隔膜を切片化した。動物当たり20から30の切片をTUNELアッセイにより調べた。[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA処理マウス由来の横隔膜線維は、プラセボ処理のものと比較し、アポトーシス核の劇的な減少を示した(図5)。インビボ[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA処理は、CsAでの処理と同程度の効果があった。
超微細構造的評価
[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA処理(番号24〜27)又はプラセボ処理(番号28〜31)したCol6a1-/-マウス由来の横隔膜筋のサンプルを、固定化の際収縮しないよう歯科用ワックスの補助のもと、徐々に伸展させた。固定化のため、サンプルを、2.5%グルタルアルデヒド含有の0.1 Mリン酸バッファ(pH 7.4)中で3時間、40℃でインキュベートし、0.15 Mリン酸バッファ中で一昼夜洗浄し、ベローナル中の1%四酸化オスミウムで固定後、脱水し、Epon 812エポキシ樹脂に埋め込んだ。超薄切片を酢酸ウラニルで染色し、クエン酸塩を誘導し、Philips EM 400膜電位顕微鏡を、100キロボルトで操作しながら観察した。統計解析のため、各サンプル組織の3つの異なるブロック由来の300の筋線維を調べた(図6)。コントロールマウス(番号28〜31)と比較した場合、[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAマウス(番号24〜27)において、膨張した外観を示し、あるいは電子密度内包(electrodense inclusions)を呈する変化したミトコンドリアを伴う、極度に低下した線維数がカウントされた。
類似体の試験は、[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAを含んでなる製剤又はプラセボ製剤で、経口により(p.o.)処置したCol6a1-/-マウスを用いて実施した。[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsA処理動物由来の筋ミトコンドリアにおいて、シクロスポリンによる脱感作を示す、CRCの明らかな上昇を観察した。さらに、横隔膜切片でのTUNELアッセイは、[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAでのインビボ処理により、アポトーシスの発生を劇的に低下させることを示した。
UCMD及びBM患者での[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAの予備臨床試験
5人の患者が登録し、そのうち4人がUCMDで1人がBMに罹患していた。患者等は、それぞれCOL6A1、COL6A2又はCOL6A3遺伝子に突然変異があった。治験は、CsAでの処置が、筋線維におけるミトコンドリアの脱分極を引き起こすことができるオリゴマイシンにより評価される、ミトコンドリア機能不全の低減に対して効果的であるかを試験するよう設計された。脱分極は、TMRM蛍光の変化として検出した。患者を、1日経口用量5mg/kgのCsAで、30日間にわたり処置した。筋生検を処置期間の前後で迅速に採取し、TMRMアッセイ用に処理した。5人の患者を平均した結果、オリゴマイシンは、処置前には筋細胞の90%を脱分極に誘導したのに対し、処理後は37%しか誘導しなかった。すなわち、CsAでの短期の処置は、オリゴマイシン誘導性脱分極により評価される、ミトコンドリア機能不全を実質的に軽減させることができた。

Claims (13)

  1. 式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の使用であって、ウールリッヒ型先天筋ジストロフィー又はベツレムミオパシー(Bethlem myopathy)に罹患する患者の細胞における、ミトコンドリア機能不全及びアポトーシス速度を低下させるための、使用。
  2. 非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体が、式IIのシクロスポリン誘導体である、請求項1に記載の使用。
  3. 非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体が、式IIIの非免疫抑制性シクロスポリン[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAである、請求項1に記載の使用。
  4. 式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の使用であって、ウールリッヒ型先天筋ジストロフィー又はベツレムミオパシーの処置を目的とした医薬の製造のための、使用。
  5. 非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体が、式IIのシクロスポリン誘導体である、請求項4に記載の使用。
  6. 非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体が、式IIIの非免疫抑制性シクロスポリン[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAである、請求項4に記載の使用。
  7. 患者における、ウールリッヒ型先天筋ジストロフィー又はベツレムミオパシーの処置のための方法であって、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の有効量を患者に投与することを含んでなる、方法。
  8. 非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体が、式IIのシクロスポリン誘導体である、請求項7に記載の方法。
  9. 非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体が、式IIIの非免疫抑制性シクロスポリン[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAである、請求項7に記載の方法。
  10. ウールリッヒ型先天筋ジストロフィー又はベツレムミオパシーの処置のための医薬組成物であって、式Iの非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体の有効量、医薬的に許容可能な担体を含んでなるとともに、任意に賦形剤及び希釈剤を含んでなる、医薬組成物。
  11. 非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体が、式IIのシクロスポリン誘導体である、請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 非免疫抑制性シクロスポリンA誘導体が、式IIIの非免疫抑制性シクロスポリン[D−MeAla]3−[EtVal]4−CsAである、請求項10に記載の医薬組成物。
  13. 追加の活性成分をさらに含んでなる、請求項10〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
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