JP2010514434A - ヒトldl受容体に対するモノクローナル抗体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ヒトLDL(低密度リポタンパク質)受容体を対象としたモノクローナル抗体、モノクローナル抗体断片またはモノクローナル抗体誘導体である。これらにおいて、各軽鎖の可変領域は配列識別番号No.5のマウス核酸配列によりコード表現され、各重鎖の可変領域は、配列識別番号No.7のマウス核酸配列、または配列識別番号No.5及びNo.7の配列と性質上の十分な相同性を有し、また前記抗体がその改変されるべきでない抗原に対して結合親和性を有している核酸配列によりコード表現され、そしてその軽鎖及び重鎖の定常領域は非マウス種に由来する定常領域である。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
本発明は、悪性黒色腫の治療領域を拡大することが可能な、ヒトLDL受容体に対するモノクローナル抗体に関するものである。
悪性黒色腫は、元来健康な皮膚において発生するかあるいは前から存在している母斑の劣化によって起きる色素系(メラミン細胞)の悪性腫瘍である。
黒色腫は世界中で発生頻度が急増している皮膚癌である。その発生頻度は10年毎に倍増している。症例の多くは健康な皮膚において起きるもので、前から存在している母斑で発症するのは四分の一未満である。
毎年、米国では47,000人以上の人々が新たに黒色腫と診断され、そのうちの7,700人がこの皮膚の進行性癌によって死亡している。
フランスでは毎年4,000―5,000人の症例が発見されており、1,000人程度の人がこの病気で死亡している。
従って、黒色腫の初期予防と早期発見は非常に重要である。
従って、黒色腫の初期予防と早期発見は非常に重要である。
実際、黒色腫の治療においては研究が行われているが、黒色腫の標準的な治療は依然として手術に依存している、この治療においては最初に切除が行われ、これには腫瘍の厚みに基づいていろいろな大きさで周辺部を切り取ったり、あるいは、必要であれば切除した周辺部を腫瘍の厚みに適合させるための修復手術を行うステップが含まれている。検査で1つあるいは複数の転移が見つかると、それらは外科的手術か化学治療によって措置しなければならない。
黒色腫の治療における現在の希望は新しい細胞治療方式に向けられている。
その方式を用いる理由は以下の2つの知見に基づいている。それは、ひとつには未発達の黒色腫あるいは皮膚転移の自然な退縮が文献で報告されて、この腫瘍の発展に免疫システムが重要な役割を果たしているという推定をもたらしたことと、もうひとつは、ここ数年間で黒色腫瘍細胞の特異性を示す抗原が単離されたことである。
その方式を用いる理由は以下の2つの知見に基づいている。それは、ひとつには未発達の黒色腫あるいは皮膚転移の自然な退縮が文献で報告されて、この腫瘍の発展に免疫システムが重要な役割を果たしているという推定をもたらしたことと、もうひとつは、ここ数年間で黒色腫瘍細胞の特異性を示す抗原が単離されたことである。
黒色腫治療のために用いられる細胞療法は2つのタイプの措置を含んでおり、その1つは養子免疫治療であり、これは患者に『抗腫瘍活性』を有する薬剤を投与してその患者の免疫システムを刺激し、その患者の体が『TIL』または(腫瘍浸潤リンパ球)によって効果的に癌と戦えるよう補助するもので、もう1つはワクチン接種に代表される能動免疫治療である。
TILを利用した養子免疫治療には、黒色腫抗原に特異的で、腫瘍またはその転移から分離され適正製造基準の実験室内でin vitroで拡大させた細胞毒性T細胞を患者に大量(数十億個)注入するステップが含まれる。故にこれは自己系である。
米国における、黒色腫の転移段階でのTIL関する最初の臨床研究では、35%程度の応答レベルが得られたが、しかしすぐに再発する例も多く見られ、こうした受動的な免疫治療方式の放棄が検討されるようになった。
しかし、『残留する』腫瘤に対してサイトカイン、特にインターフェロンαを用いた治療が有効であることから、それをTILへと適用する考え方が提起されてきた。
このTILへのアプローチと並行して、黒色腫抗原に対するクローン、具体的にはMelan−A及びチロシナーゼを注入するアプローチが開発されつつある。転移段階における予備的な結果が得られてはいたが、特筆すべきこととして、患者の体内に注入されたクローンが転移部位において発見され、また一方でそれらは患者の体内に注入された後増幅していることが示された。
ワクチン接種による能動免疫治療は、皮下照射された黒色腫細胞の溶解物の注入(多抗原性アプローチ)、またはHLA制限された状態で、特定の黒色腫抗原の同定の後に得られる特定のペプチドの注入に関連する。従って、その目的は特定の抗黒色腫免疫反応を生じさせることにある。
現在、黒色腫における4世代のワクチンを概略的に区別することができる。第1の世代は多抗原性ワクチンである。これらは放射線照射された腫瘍細胞のホモジェネートによって構成される。このように、これらは複数の腫瘍抗原によって構成され、結果的に患者によって提示される細胞毒性T細胞集団の1つに対応する可能性を増大させることができるという利点を有している。
黒色腫瘍抗原は、メラノサイト分化抗原:チロシナーゼ、gp100、Melan‐A/MART−1、gp75;あるいは腫瘍特異的抗原(胚抗原):“黒色腫関連抗原”MAA:Mage‐1、Mage‐2、Mage‐3、Bage、Gage‐1、Gage‐2、Muc‐1、Rage‐1、NA‐17である。一方これらの抗原は、通常少量存在し、それらの賦活作用が制限される。これら、患者に皮下または皮内注入される腫瘍ホモジェネートは、患者自身(自己系)あるいは異性腫瘍系に由来する。Tリンパ球細胞に対する腫瘍ホモジェネートの刺激作用は、前者に免疫アジュバントを加えることによって増強することができる。アジュバントの例としては、BCG、Detox、QS−21、MF−59が提起されている。
第2の世代は特異抗原ワクチンである。これは患者へ単一の腫瘍抗原を注入する原理に基づいている。これらは重要な細胞毒性Tリンパ球の活性化を惹起する。
また一方でこれらの使用は2つの条件によって制限される:1つはHLA制限(Mage対象のHLA−A1、NA−17対象のHLA−A2、Melan−A)であり、もう1つは腫瘍の発現または注入されるペプチドに対応する抗原の転移である。
故に生検には細胞の損傷が必然的に伴うが、これでPCRによって抗原の有無を識別することが可能となる。当然これは患者がワクチンから受ける恩恵を制限することになる。現在まで、ペプチドMage−3、Mage−1、Melan−A/Mart−1、NA−17、チロシナーゼ、NY−SO1を利用した臨床プロトコルが作成されてきた。
第3の世代のワクチンとしては、ワクチン接種用樹枝状細胞の黒色腫への使用があり、これはこれらの細胞が優れた抗原提示細胞であるという事実に基づいている。これらは、CD4+リンパ球に対してはHLAクラスII、細胞毒性リンパ球に対してはHLAクラスIという背景内で抗原を取り込み、それらをTリンパ球に対して提示することができる。さらにこのTリンパ球の活性化には共刺激分子CD40−CD40L及びB7−CD28が関与する。治療進行の原理は、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)及びIL−13(インターロイキン13)のようなサイトカインの存在下で、患者の血液から分離(サイトアフェレーシス)したCD34細胞または単球のin vitro培養に基づいている。次に得られた分化樹枝状細胞に、in vitroで1種類以上のペプチドが充填される。その結果これらのいわゆる充填樹枝状細胞は、皮内または皮下、また神経節への注射により患者の体内へ再注入される時点で、前記ペプチドに特異的な細胞毒性Tリンパ球の優れた活性化細胞となる。
第4の世代は改変された腫瘍細胞のワクチンである。
黒色腫瘍細胞は、免疫抑制性サイトカインを生成し、その腫瘍抗原をマスキングし、共活性化分子あるいはクラスIまたはIIの抗原を発現させないことによって免疫システムを回避する。これにより細胞障害性T反応が阻止される。腫瘍細胞ワクチンの原理は、放射線照射された自己腫瘍細胞の患者への皮内または皮下注入により構成され、ここでこの自己腫瘍細胞の表現型プロファイルは、この細胞が細胞毒性Tリンパ球に接近することができるように改変されている。故にこの腫瘍細胞は、IL−7、IL−2、IL−12サイトカイン;またはマクロファージを活性化するGM−CSF;またはクラスI、IIの抗原、抗原BL7によりトランスフェクトされることが可能となり、これによって細胞毒性細胞による腫瘍抗原の識別が可能となる。
黒色腫瘍細胞は、免疫抑制性サイトカインを生成し、その腫瘍抗原をマスキングし、共活性化分子あるいはクラスIまたはIIの抗原を発現させないことによって免疫システムを回避する。これにより細胞障害性T反応が阻止される。腫瘍細胞ワクチンの原理は、放射線照射された自己腫瘍細胞の患者への皮内または皮下注入により構成され、ここでこの自己腫瘍細胞の表現型プロファイルは、この細胞が細胞毒性Tリンパ球に接近することができるように改変されている。故にこの腫瘍細胞は、IL−7、IL−2、IL−12サイトカイン;またはマクロファージを活性化するGM−CSF;またはクラスI、IIの抗原、抗原BL7によりトランスフェクトされることが可能となり、これによって細胞毒性細胞による腫瘍抗原の識別が可能となる。
これら異なる第1及び第2世代のワクチンについて臨床試験(フェーズI−II)が行われた。この臨床試験は、試験の時点で、平均的といえる約20%の応答レベルを示す患者に限定して行われた。これらの反応は、他の部位よりも皮膚、神経節、肺、肝臓部位において得られる。このワクチン接種に特有の興味深い事実は、反応期間の延長(2年以上)が見られたことである。重要な点はこの臨床反応が如何に持続するかである。実際のところ、化学療法とは対照的に、臨床的退行は、3〜4ヶ月またはそれ以上持続する安定局面の直後に最も多く見られる。
この持続は全体的にいえば良好である。ここで実質的に見られる副作用は、注入部位における紅斑、及び白斑タイプの自己免疫反応である。
しかし現在の治療法におけるこの平均的応答レベルの低さは、悪性黒色腫の治療領域を拡大することが可能な新しいツールが真に必要とされていることを示している。
本発明は、悪性黒色腫の治療法における応答レベルを高めて、悪性黒色腫の治療領域を拡大することが可能な新しいツールであるヒトLDL受容体に対するモノクローナル抗体を実現することを目的とする。
本発明は、ヒトLDL(低濃度リポタンパク質)受容体に対するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体断片、あるいはモノクローナル抗体誘導体において、その軽鎖のそれぞれの可変領域が配列識別番号No.5のマウス核酸配列によりコード表現され、その重鎖のそれぞれの可変領域が配列識別番号No.7のマウス核酸配列あるいはその性質及び改変されるべきでない抗原に対する前記抗体の結合親和性の上で配列識別番号No.5と配列識別番号No.7の配列と十分な相同性を有する核酸配列によってコード表現され、そして、その軽鎖とその重鎖の定常領域のそれぞれが非マウス種由来の定常領域であることを特徴とする。
本発明のヒトLDL受容体に対するモノクローナル抗体は、悪性黒色腫の治療法における応答レベルを高めて、悪性黒色腫の治療領域を拡大することが可能な新しいツールとすることができる。
前記技術的問題に対処することを目的として、本出願人は、ヒトLDL(低密度リポタンパク質)受容体を対象としたモノクローナル抗体、モノクローナル抗体断片またはモノクローナル抗体誘導体を開発した。これらにおいて、各軽鎖の可変領域は配列識別番号No.5のマウス核酸配列によりコード表現され、各重鎖の可変領域は、配列識別番号No.7のマウス核酸配列、または配列識別番号No.5及びNo.7の配列と性質上の十分な相同性を有し、また前記抗体がその改変されるべきでない抗原に対して結合親和性を有している核酸配列によりコード表現され、そしてその軽鎖及び重鎖の定常領域は非マウス種に由来する定常領域である。
前記抗体はジスルフィド架橋により連結された重鎖及び軽鎖で構成される。N末端位置の各鎖は、抗体が向けられる抗原に特異的な可変領域(またはドメイン)(軽鎖については再配列V−J遺伝子、重鎖についてはV−D−J遺伝子によりコード表現される)からなり、C末端位置の各鎖は、軽鎖については単一のLCドメインまたあるいは重鎖については複数のドメインにより構成される定常領域からなる。
前記2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖の全般的構造は互いに類似性を有している。軽鎖は空間的に互いに独立して折り畳まれた可変ドメインV及び定常ドメインCの2つのドメインからなる。これらはVL、CLと示される。また重鎖はVHと示されるVドメイン、及びCH1〜CH4と示される3または4Cドメインからなる。各ドメインは約約110個のアミノ酸からなり、比較可能な同等の構造を有している。前記2つの重鎖はジスルフィド架橋により連結されており、また各重鎖はジスルフィド架橋により軽鎖にも連結されている。
抗原に対する抗体の特異性を決定する領域は可変部分内に存在し、また一方で定常部分は異なる機能特性を媒介するための補体としてエフェクター細胞または分子の受容体Fcと相互作用する。
本発明の目的にとって、『モノクローナル抗体』または『モノクローナル抗体の組成物』なる表現は、同じまたは独自の特異性を有する抗体分子の調製物を指す。またさらに本出願の明細書本文、請求項、図面において、『モノクローナル抗体』とはこのような抗体の完全なモノクローナル抗体、断片または誘導体を意味する。
特に有利には、本発明の枠内において、十分な相同性(その性質及びその抗体のその改変されるべきでない抗原への結合親和性という点において)とは70%〜l00%の相同性を意味する。
本発明によれば、第2の参照核酸と少なくとも70%の相同性を有する第1の核酸は、前記第2の参照核酸と少なくとも90%、好ましくは少なくとも70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.3%、98.6%、99%、99.6%のヌクレオチド同一性を有している。
本発明によれば、第2の参照ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有する第1のポリペプチドは、前記第2の参照ポリペプチドと少なくとも90%、好ましくは少なくとも70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.3%、98.6%、99%、99.6%のアミノ酸同一性をを有している。
本発明での意味において、2つの核酸配列または2つのポリペプチド配列間の『相同性のパーセンテージ』は、比較ウィンドウ上で最適に整列させた2つの配列を比較することにより決定される。
比較ウィンドウ内のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部は、最適に整列させた2つの配列について、参照配列(これは付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわちギャップ)を含むものとし得る。
この相同性のパーセンテージは、同一の核塩基またはアミノ酸残基が比較される両者の配列中に存在する位置の数を求めて、合致する位置の数を出し、合致した位置の数を、比較ウィンドウ内の位置の合計の数で除算し、この結果に100を乗算して前記2つの配列のヌクレオチド同一性のパーセンテージまたは前記2つの配列のアミノ酸同一性のパーセンテージを出すことにより計算する。
比較のための配列の最適な整列は、既知のアルゴリズムを用いてコンピューターで行うことができる。
最適な比較のために、前記配列の同一性のパーセンテージは、以下のパラメーターにより、CLUSTAL W(バージョン1.82)によって得ることができる:(1)CPU MODE=Clustal W mp;(2)ALIGNMENT=full;(3)OUTPUT FORMAT=aln w/numbers;(4)OUTPUT ORDER=aligned;(5)COLOR ALIGNMENT=no;(6)KTUP(word size)=default;(7)WINDOW LENGTH=default;(8)SCORETYPE=percent;(9)TOPDIAG=default;(10)PAIRGAP=default;(11)PHYLOGENETIC TREE/TREE TYPE=none;(12)MATRIX=default;(13)GAP OPEN=default;(14)END GAPS=default;(15)GAP EXTENSION=default;(16)GAP DISTANCES=default;(17)TREETYPE=cladogram;及び、(18)TREE GRAP DISTANCES=hide。
本発明によれば、『その性質及びその抗体のその抗原への結合親和性が改変されない』という表現は、一方で、各軽鎖の可変領域が配列識別番号No.5の配列によりコード表現され、また各重鎖の可変領域が配列識別番号No.7の配列によりコード表現される抗体と相同性を有する抗体は同じ抗原に結合し、また他方で、それらの結合親和性が、各軽鎖の可変領域が配列識別番号No.5の配列によりコード表現され、各重鎖の可変領域が配列識別番号No.7の配列によりコード表現される抗体の結合親和性の90%に等しいという事実を意味する。
『その性質及びその抗体のその改変されるべきでない抗原への結合親和性という点で配列識別番号No.5及びNo.7の配列と十分な相同性を有する核酸配列』という表現は、その性質及びその抗体のその改変されるべきでない抗原への結合親和性という点で配列識別番号No.5及びNo.7の配列と十分な相同性を有する少なくとも1つの免疫グロブリンドメインまたは断片及び抗体誘導体を含む、ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸配列を意味する。
ここで『免疫グロブリンドメイン』とは、ドメインVL、CL、VH、CH1、CH2、CH3、CH4の内のいずれか1つのドメインを意味する。本発明による抗体は、有利にはこれらのドメインの内の1つ以上のドメインを含むので、これらのドメインの全ての組み合わせが本発明の一部を構成する。
『免疫グロブリン断片』とは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc断片、scFvまたはCDR(相補性決定領域)の内から選択された1つの断片を意味する。
パパインによる免疫グロブリンの酵素消化により、『Fab断片』(断片抗原結合)及び『Fc断片』(結晶化可能断片)と呼ばれる2つの同一の断片を生成する。このFc断片は、この免疫グロブリンのエフェクター機能をつかさどる。
ペプシンで消化することによりF(ab’)2断片が生成される。ここで2つのFab断片は2つのジスルフィド架橋により結合されたままで、Fc断片は複数のペプチドに分割される。このF(ab’)2断片は、2つのFab’断片が鎖間のジスルフィド架橋によって結合され1つのF(ab’)2を形成することによって形成される。
なお重鎖及び軽鎖の可変領域において、配列可変性は等しく分配されるわけではない。実際、可変領域は、一方では4つのフレーム(FR1〜FR4)である『フレームワーク』(FR)として知られる変化の殆どない領域により、他方では『超可変』領域、あるいは3つの領域である(CDR1〜3)CDRとして知られる可変性の極端に高い領域により構成される。
このように本発明による抗体は、有利にはこれらの断片の内の1つ以上を含むことができ、上述の断片の全ての組み合わせが本発明の一部を構成する。
本発明の1つの具体的な実施態様で、本発明による抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリンドメイン及び少なくとも1つの免疫グロブリン断片、例えばFc断片及び1つ以上の可変または超可変領域を含む。
最後に、『抗体誘導体』とは、1つ以上のアミノ酸残基の1つ以上の変異、置換、欠失及び/または付加を含むことができる任意の抗体を意味する。このような付加、置換または欠失は、分子のどこに位置していてもよい。複数のアミノ酸が付加、置換または欠失している場合においては、得られる抗体が少なくとも本発明の抗体の有利な特性を依然として有しているという条件下で、付加、置換、欠失のあらゆる組合せを想定し得る。
本発明による抗体は、その軽鎖及び重鎖の可変領域あるいはこれらの領域の少なくとも1つのドメインまたは断片が異なる種の軽鎖及び重鎖の定常領域に属する、『キメラ』抗体であると理解される。
配列識別番号No.5及びNo.7のマウス核酸配列は、ATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)から番号CRL−1691の下で入手可能なマウスハイブリドーマC7によって生成される抗体の、各軽鎖の可変ドメイン及び各重鎖の可変ドメインをコードする。このハイブリドーマは、LDL−Rに対するIgG2bアイソタイプのマウスモノクローナル抗体を生成する。
このヒトLDL受容体(LDL−R)は、細胞外領域(1−768)、膜貫通領域(768−790)、細胞質領域(790−839)の3つの領域からなる、839アミノ酸の膜貫通タンパク質である。この細胞外領域は、2つのサブ領域‐LDL(1−322)を結合する領域及びLDL(323−768)を結合する前記領域外の領域‐に分割される。
本発明の抗体のマウス配列は、マウス抗体C7のLDL−R抗原に対する特異性のため、本発明による抗体の可変領域あるいはこれらの領域の少なくとも1つのドメインまたは断片をコードするように選択されている。この抗体C7はウシLDL−Rの細胞外ドメインでの免疫化によって生成される。これはウシLDL−R以外ではヒトLDL−Rと結合するが、ラット、マウス、チャイニーズハムスター、ウサギ、イヌのLDL−R(Beisiegelら、1981 J.Biol.Chem.256,11923−11931)とは交差反応しない。モノクローナル抗体の生成株はこれらの種に由来する株である場合が非常に多いので、この特性は有益である。このようにこの組み換え抗体は株YB2/0、NS0、Sp2/0、CHOなどに由来する細胞株において有利に生成することができる。なおここに挙げた株は例であり、これらの株に限定されるものではない。
また本発明の抗体は、そのペプチド配列が配列識別番号No.6、8、9、15、16、17、22、24、25、26、27、28の配列から選択されるCDR領域を有する抗体をも意味する。
これらの配列は、マウス抗体C7に由来するCDR領域の配列、Kabatナンバリングによる抗体の軽鎖のCDR1配列を示す配列識別番号No.6の配列、Kabatナンバリングによる抗体の軽鎖のCDR2配列を示す配列識別番号No.8の配列、Kabatナンバリングによる抗体の軽鎖のCDR3配列を示す配列識別番号No.9の配列、IMGTナンバリングによる抗体の軽鎖のCDR1配列を示す配列識別番号No.15の配列、IMGTナンバリングによる抗体の軽鎖のCDR2配列を示す配列識別番号No.16の配列、IMGTナンバリングによる抗体の軽鎖のCDR3配列を示す配列識別番号No.17の配列、Kabatナンバリングによる抗体の重鎖のCDR1配列を示す配列識別番号No.22の配列、Kabatナンバリングによる抗体の重鎖のCDR2配列を示す配列識別番号No.24の配列、Kabatナンバリングによる抗体の重鎖のCDR3配列を示す配列識別番号No.25の配列、IMGTナンバリングによる抗体の重鎖のCDR1配列を示す配列識別番号No.26の配列、IMGTナンバリングによる抗体の重鎖のCDR2配列を示す配列識別番号No.27の配列、IMGTナンバリングによる抗体の重鎖のCDR3配列を示す配列識別番号No.28の配列である。
また本発明は、各軽鎖の可変ドメイン及び各重鎖の可変ドメインが配列識別番号No.5及び配列識別番号No.7の各配列と少なくとも70%、有利には少なくとも80%または90%または99%の相同性を有している抗体をも含む。ここでこれらの配列改変により抗体の特異性が改変されることはない。また好ましくは、これらの配列改変はその標的に対する親和性を低減させない。
また本発明による抗体は、非マウス種に属するその軽鎖及び重鎖の定常領域をも保有している。この態様において、非マウス哺乳動物の全ての科及び種類、具体的にはヒト、サル、ネズミ科(マウスを除く)、イノシシ科、ウシ科、ウマ科、ネコ科、イヌ科の動物、そして例えば鳥類も利用することができる。
本発明による抗体は、本技術分野の当業者には周知の標準的組み換えDNA技術を利用し、より具体的には例えばMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,pp.6851−55(1984)において述べられている『キメラ』抗体の構築技術を利用して構築することができ、ここで組み換えDNA技術は非ヒト哺乳動物に由来する抗体の重鎖の定常領域及び/または軽鎖の定常領域をヒト免疫グロブリンの対応する領域に置き換えるために利用される。このような抗体及びそれらの調製法は、例えば特許出願EP第173 494号、文献Neuberger,M.S.ら、Nature 312(5995):604−8(1985)、文献EP第125 023号においても述べられている。キメラ性抗体を生成する方法は本技術分野の当業者にとって幅広く応用することができる。例えば抗体の重鎖及び軽鎖は、各鎖に1つのベクターを用い別々に発現させることも、あるいは単一のベクター内に組み込むことも可能である。
発現ベクターとは、抗体の各重鎖または軽鎖の可変ドメインをコードするマウス核酸配列及び抗体の各重鎖または軽鎖の定常領域をコードする核酸配列、好ましくはヒト核酸配列が挿入され、またそれらがホスト細胞内に導入され、保持されている核酸分子である。発現ベクターは発現に不可欠な配列(プロモータ、ポリアデニル化配列、選択遺伝子)を保有しており、これによってホスト細胞内での外来核酸のこれら断片の発現が可能となる。このベクターは、例えばプラスミド、アデノウィルス、レトロウイルスまたはバクテリオファージであり、またこのホスト細胞は、任意の哺乳動物細胞、例えばSP2/0、YB2/0、IR983F、ヒトミエローマ(例えば、Namalwa)、PER.C6、CHO株、特にCHO−K−1、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO−Lec13、CHO Pro−5、CHO dhfr−、Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NSO、SP2/0−Ag 14及びP3X63Ag8.653である。
本発明によるキメラ性抗体の発現ベクターの構築のために、合成シグナル配列及び適切な制限サイトを、PCR増幅反応によって可変領域に融合させることができる。次にこの可変領域を抗体、好ましくはヒトIgG1の定常領域と結合させる。このようにして構築された遺伝子を、2つの別々のベクター(各鎖について1つである)を使用して、プロモータ‐例えばRSV(ラウス肉腫ウイルス)、CMV(サイトメガロウイルス)、MLP(主要後期プロモータ)の制御下かつポリアデニル化部位の上流にクローニングする。なおこれらのプロモータは例でありそれらへの限定を示すものではない。またこのベクターは、例えばdhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子またはネオマイシン耐性遺伝子のような本技術分野における当業者には周知の選択遺伝子とともに提供される。
本発明によるキメラ性抗体は、本技術分野における当業者に周知の方法(リン酸カルシウムを用いる共沈法、電気せん孔法、顕微注入法、その他)を利用して、軽鎖の発現ベクター及び重鎖の発現ベクターのホスト細胞内での同時トランスフェクションによって生成することができる。トランスフェクションの終了時に、細胞を、例えば5%透析血清(Invitrogen ref.10603−017)、500μg/mlのG418(Invitrogen ref.10131−027)、25nMのメトトレキサート(Sigma,ref.M8407)を含むRPMI培地(Invitrogen ref. 21875−034)のような選択培地に配置することができる。耐性トランスフェクションウェルの上澄みは、ヒトIg配列または定常部分が他の種に由来する場合その種の配列に特異的なELISA測定を用いて、キメラ免疫グロブリン(Ig)の存在についてスクリーニングされる。抗体を最も多く生成するトランスフェクタントは増幅され、そしてそれらの上澄みは、それらの生成率を見積もり、また限界希釈(40細胞/プレート)によるクローニングにとって最も良好である3つの生成体を選択するためELISA測定により再測定される。
1つの具体的な実施の形態を以下に説明する。
好ましくは、本発明による抗体の各軽鎖の可変領域は配列識別番号No.10のペプチド配列を保有しており、本発明による抗体の各重鎖の可変領域は配列識別番号No.11のペプチド配列を保有している。配列識別番号No.10のペプチド配列は配列識別番号No.5のヌクレオチド配列から亜推定されるペプチド配列であり、配列識別番号No.11のペプチド配列は配列識別番号No.7のヌクレオチド配列から亜推定されるペプチド配列である。
好ましくは、本発明による抗体の各軽鎖の可変領域は配列識別番号No.10のペプチド配列を保有しており、本発明による抗体の各重鎖の可変領域は配列識別番号No.11のペプチド配列を保有している。配列識別番号No.10のペプチド配列は配列識別番号No.5のヌクレオチド配列から亜推定されるペプチド配列であり、配列識別番号No.11のペプチド配列は配列識別番号No.7のヌクレオチド配列から亜推定されるペプチド配列である。
好ましくは、本発明による抗体の各軽鎖及び各重鎖の定常領域はヒトの定常領域である。本発明のこの好ましい実施の形態はヒトにおける抗体の免疫源性を低下させることが可能であり、同様にヒトに対する治療的あるいは予防的投与中にその効果を改善することが可能である。
本発明による1つの好ましい実施の形態で、本発明による抗体の各軽鎖の定常領域はタイプκのものである。例えば、km(1)、km(1,2)、km(1,2,3)あるいはkm(3)など、いかなるアロタイプでも本発明を実行するために用いることが可能である。
本発明の別の実施の形態で、本発明による抗体の各軽鎖の定常領域はタイプλのものである。
本発明の1つの具体的な実施態様で、特に本発明による抗体の各軽鎖及び各重鎖の定常領域はヒトの領域である場合、その抗体の各重鎖の定常領域はタイプγのものである。この変例によれば、その抗体の各重鎖の定常領域はすべてヒトの相補体に結合する特徴を有するタイプγ1、タイプγ2、タイプγ3であってもよく、あるいはタイプγ4であってもよい。各重鎖の定常領域がタイプγであるような抗体はIgGクラスに属している。タイプG免疫グロブリン(IgG)はジスルフィド架橋で相互に接続された2つの重鎖と2つの軽鎖によって構成されるヘテロダイマーである。各鎖は、N末端位置では、その抗体が向き合う抗原に特異的な可変領域あるいはドメイン(軽鎖に関しては再配列されたV−J遺伝子、重鎖に関してはV−D−J遺伝子でコード表現される)で構成され、C末端位置では、軽鎖に関しては単一のLCドメインで、重鎖に関しては3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)で構成されている。可変ドメインVH及びVLと重鎖及び軽鎖の定常ドメインCH1及びCLの組み合わせがFab部分を形成し、これらの部分が非常に可撓性のあるヒンジ領域によってFc領域に接続されており、各Fabがその抗原標的に結合できるようにしていると同時に、その抗体のエフェクター性を媒介しているFc領域がFcγR受容体、新生児Fc受容体(FcRn)及びC1qなどのエフェクター分子にアクセス可能な状態のままである。2つの球状ドメインCγ2及びCγ3によって構成されるFc領域は、その2つの鎖のそれぞれの上のAsn297に結合された2つの触角を有するN−グリカンの存在によってCγ2ドメインでグリコシル化されている。
好ましくは、その抗体の各重鎖の定常領域はタイプγ1で、従って、抗体はほとんどの(ヒト)個人でADCC(抗体依存細胞の細胞毒性)をつくりだす能力を示すのである。こうした観点から、例えば、G1m(3)、G1m(1,2,17)、GIm(1,17)あるいはC1m(1,3)など、どんなアロタイプでも本発明を実行するために用いることができる。
本発明の1つの特殊な実施態様で、上記抗体の各重鎖の定常領域はタイプγ1で、それは配列識別番号No.23のヒト核酸配列によってコード表現され、その各軽鎖の定常領域は配列識別番号No.21のヒト核酸配列、あるいは配列識別番号No.23あるいは配列識別番号No.21に類似した配列、あるいはそれらの配列の断片によってコード表現される。従って、そうした抗体はマウス可変領域とヒト定常領域を有し、その重鎖はタイプγ1である。この抗体は、従って、IgG1サブ−クラスに属する。この抗体は2つの軽鎖を有し、その可変ドメインは配列識別番号No.5のマウス核酸配列によってコード表現され、さらにそのヒト定常領域は配列識別番号No.21の核酸配列によってコード表現される。さらにこの抗体は2つの重鎖を含み、その可変領域は配列識別番号No. 7のマウス核酸配列によってコード表現され、その定常領域は配列識別番号No.23のヒト核酸配列によってコード表現される。
好ましくは、本発明による抗体の各軽鎖は配列識別番号No.13のマウス−ヒト・キメラ性核酸配列によってコード表現され、各重鎖は配列識別番号No.19のマウス−ヒト・キメラ性核酸配列によってコード表現される。この抗体の各軽鎖をコード表現する配列識別番号No.13のマウス−ヒト・キメラ性核酸配列は、この抗体の各軽鎖の可変ドメインをコード表現する配列識別番号No.5のマウス核酸配列とその抗体の各軽鎖の定常領域をコード表現する配列識別番号No.21のヒト核酸配列の融合によって得られる。この各重鎖をコード表現する配列識別番号No.19のマウス−ヒト・キメラ性核酸配列は、この抗体の各重鎖の可変ドメインをコード表現する配列識別番号No.7のマウス核酸配列とその抗体の各重鎖の定常領域をコード表現する配列識別番号No.23のヒト核酸配列の融合によって得られる。
本発明のそうした特殊な態様で、その抗体の各軽鎖が配列識別番号No.13のマウス−ヒト・キメラ性核酸配列でコード表現され、各重鎖が配列識別番号No.19のマウス−ヒト・キメラ性核酸配列によってコード表現される場合、配列識別番号No.13の核酸配列から推定される各軽鎖のペプチド配列は配列識別番号No.14の配列であり、配列識別番号No.19の核酸配列から推定される各重鎖のペプチド配列は配列識別番号No.20の配列である。
本発明はまた、マウス−ヒト・キメラ性核酸配列によってコード表現される各軽鎖が配列識別番号No.13のマウス−ヒト・キメラ性核酸配列と少なくとも70%の相同性を有しており、マウス−ヒト・キメラ性核酸配列によってコード表現される各重鎖が配列識別番号No.19のマウス−ヒト・キメラ性核酸配列と少なくとも70%、好適には少なくとも80%、あるいは90%か99%の相同性を有している抗体に関するものであり、これらの相同性の違いは抗体の特異性にもそのエフェクター活性にも影響を及ぼさない。
好適に、本発明による抗体は毒素に結合される。この毒素は、例えば、ジフテリア毒素あるいはリシンであるが、これらだけに限定されるものではない。本発明による抗体とこの毒素とのあいだの結合はその毒素の身体組織からの放出を防ぐのには十分に強く、また、その毒素が標的細胞内に放出される程度には十分に不安定である。
本発明の別の態様で、この抗体は放射性同位元素に結合される。この放射性同位元素の存在は、細胞毒性をかなり増大させる。基本的には2つの同位元素が用いられ、その1つヨウ素131(ベータ線及びガンマ線放出性)で、その半減期は比較的長く(8日間)、抗体と結合した腫瘍細胞の周囲約1mm程度に殺腫瘍効果を及ぼす。ヨウ素131は画像形成を可能にするという利点を有しているが、放射線防護基準への適合を必要とする。もう1つはイットリウム90(ベータ線放出性)で、その半減期はより短く(2.5日間)、5mmの距離で殺腫瘍効果を示す。
好適に、本発明の抗体はラットハイブリドーマ細胞株内でつくられる。本発明による抗体生成株は、抗体に対してその特殊な性質を付与するので非常に特徴的である。実際、それらの抗体の発現の手段は翻訳後修飾、特にグリコシル化修飾の複製基点にあり、これはひとつの細胞株から別の細胞株に変わる場合があり、したがって最初の時点では同一の主要配列をもっていた抗体に異なった機能的性質を付与する場合がある。
1つの実施の形態で、抗体はラット株YB2/0(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにATCC CRL−1662の番号で預託されている細胞TB2/3HL.P2.G11.16Ag.20)内で生成される。
本発明による1つの好ましい抗体はハイブリドーマR604によってつくりだされる抗体EMAB604(CNCM−Institut Pasteur,25 rue de Professeur Roux,75724 Paris Cedex 15,Franceに、番号I−3692で2006年11月14日に預託)である。ハイブリドーマ細胞R604によってつくられるモノクローナル抗体の各軽鎖の可変領域は配列識別番号No.5の核酸配列によってコード表現され、そしてハイブリドーマ細胞R604によってつくられるモノクローナル抗体の各重鎖の可変領域は配列識別番号No.7の核酸配列によってつくりだされる。
本発明の1つの特殊な課題はLDL−Rに結合して、エフェクター細胞のリクルートを可能にするモノクローナル抗体に関係している。好ましくは、この抗体はEMAB604あるいは抗体EMAB604と同一の機能的特徴を有するヒト化された又はヒト・キメラ性抗体である。好適に、この抗体は細胞株R604によってつくりだされる。
本発明の別の主題は配列識別番号No.12の、本発明による抗体の軽鎖の発現ベクターに関連している。このベクターは、その軽鎖が配列識別番号No.13の核酸配列によってコード表現される本発明による抗体の発現を可能にするベクターで、その推定されるペプチド配列は配列識別番号No.14の配列である。このベクターは核酸分子で、その内部にそれらをホスト細胞内に導入してそれらを保持するために、その抗体の各軽鎖の可変ドメインをコード表現する配列識別番号No.5のマウス核酸配列と、その抗体の各軽鎖の定常領域をコード表現する配列識別番号No.21の核酸配列が挿入されている。この核酸分子は、この発現に不可欠な配列(プロモータ、ポリアデニル化配列、選択遺伝子)を保有しているので、ホスト細胞内での外来核酸のこれらの断片の発現を可能にしてくれる。こうしたベクターは当業者には良く知られており、アデノウィルス、レトロウィルス、プラスミド、あるいはバクテリアファージなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明による抗体を発現する細胞、例えば、YB2/0、CHO、CHO dhfr−(例えば、CHO DX B11、CHO DG44)、CHO Lec13、SP2/0、NS0、293、BHKあるいはCOSなどのどんな哺乳動物細胞でもホスト細胞として用いることができる。
本発明のもうひとつの主題は、配列識別番号No.18の、本発明による抗体の重鎖の発現ベクターに関係している。このベクターは本発明による抗体の発現を可能にするベクターで、その重鎖は配列識別番号No.19の核酸配列によってコード表現され、その推定ペプチド配列は配列識別番号No.20の配列である。このベクターは核酸分子で、その内部に、それらをホスト細胞内に導入してそれらを保持するために、その抗体の各重鎖の可変ドメインをコード表現する配列識別番号No.7のマウス核酸配列と、その抗体の各重鎖の定常領域をコード表現する配列識別番号No.23の核酸配列が挿入されている。この核酸分子は、この発現に不可欠な配列(プロモータ、ポリアデニル化配列、選択遺伝子)を保有しているので、ホスト細胞内での外来核酸のこれらの断片の発現を可能にしてくれる。前にも述べたように、このベクターはアデノウィルス、レトロウィルス、プラスミド、あるいはバクテリアファージなどであってもよく、そのホスト細胞は、例えば、YB2/0、CHO、CHO dhfr−(例えば、CHO DX B11、CHO DG44)、CHO Lec13、SP2/0、NS0、293、BHKあるいはCOSなどのどんな哺乳動物細胞であってもよい。
細胞YB2/0内におけるこれらのベクターの共発現によって生成される抗体はクローンR604(CNCMにCNCM I−3692の番号で預託)によって生成される抗LDL−R抗体EMAB604によって示される。この抗体はADCCテストの判定によると、強力な細胞毒性を有している。さらに、抗体EMAB604はJurkat−CD16細胞株によるIL−2の分泌を誘発し、このテストはこれらの抗体によってCD16受容体が活性化される可能性を実証するために用いられている。培養液内で前に述べたベクターの発現を可能にするような条件下でクローンR604を培養することでつくりだすことができる抗体EMAB604は、従って、黒色腫の治療と診断を前進させることができる最も有力なツールの1つである。
本発明のもうひとつの主題は、上に述べたような本発明による抗体を生成する安定した細胞株に関係している。
好適に、本発明による安定した細胞株は、その抗体が発現される細胞株が、SP2/0、YB2/0 (アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにATCC CRL−1662の番号で預託されている細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20)、SP2/0−AG14(ATCC CRL−1581)、IR983F、ヒト骨髄腫ナマルワ、PERC6、CHO株、特にCHO−K−1、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO−Lec13、CHO Pro−5、CHO dhfr−、Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NS0、SP2/0−Ag14及びP3X63Ag8.653で構成される群から選択されることを特徴としている。
本発明の安定した細胞株は、前に述べた2つの発現ベクターを組み込んでいる。
本発明の別の主題は、フランスのCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM,Institute Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 Paris Cedex 15)に預託番号CNCM1−3692で預託されているハイブリドーマR604に関連している。
好適に、本発明による抗体はエフェクター免疫細胞のリクルートを可能にしてくれる。
こうした抗体は、その特異性と親和性が優れているので、ADCC(抗体依存細胞媒介細胞毒性)反応の緩和に寄与することができるツールである。実際、本発明による抗体は、LDL−Rに対する優れた親和性を有しており、一方、エフェクター免疫細胞のリクルートを可能にしてくれる。本発明においては、『エフェクター免疫細胞』とは本発明による抗体が結合する細胞(『標的細胞』)の破壊を引き起こす細胞を意味している。
抗LDL−R抗体EMAB604はNK細胞によって発現されるFcgamma受容体RIIIaあるいはCD16と強力に相互作用する能力を有している。この結合は抗CD20抗体Rituxan(登録商標)より強く、LFBのEMABLingプラットフォームによってつくりだされる抗CD20抗体のそれとほぼ同程度である。CD16に対するこの強力な結合は、抗LDL−R抗体EMAB604に対する最適化された細胞毒性の開発を可能にしてくれる。
上に述べたように、この抗体はそのFc部分とNK(ナチュラル・キラー)細胞上に発現される低親和性CD16受容体との相互作用に基づいて、HT144(黒色腫)細胞及びGUY 17.2細胞のADCC(抗体依存細胞媒介細胞毒性)によって細胞溶解を誘発する。実際、このADCCは抗CD−16抗体(クローン3G8)の存在下で抑止される。なお、CD16はマクロファージによっても、そして単球の亜母集団内でも発現され、このことは上記単球株の細胞を介して細胞毒性を誘発することによる抗LDL−R抗体EMAB604の作用を期待できるようにしてくれる。
さらに、この抗LDL−R抗体EMAB604のCD16受容体に対する強力な結合は、HT144細胞の存在下で、CD16(Jurkat−CD16)によってトランスフェクトされたJurkat株によるインターロイキン−2(IL−2)の分泌を誘発する能力をその受容体に対して付与する。実際、その標的(HT144)に結合したこの抗体のFc部分は活性化信号を誘発し、Jurkat−CD16によるIL−2の分泌をもたらす。
一部精製された仔ウシLDL−Rによるマウスの免疫化によって抗体C7が得られた。それは優れたLDL競合因子であり、従って天然のLDL−Rリガンドのそれに比肩し得るLDL−Rに対する親和性を有していることが示されている。
これらの抗体はその可変断片によって標的細胞に結合し、その定常断片によってエフェクター細胞に結合する。これら標的細胞とエフェクター細胞との間の抗体の依存関係はADCC(抗体依存細胞媒介細胞毒性)タイプのメカニズムによって標的細胞の溶解を引き起こす。
好適に、本発明による標的細胞は肉腫、骨髄腫、黒色腫、リンパ腫、及び白血病などの腫瘍細胞であるが、これらに限定されるものではない。実際、研究によると、細胞によるLDL−Rの発現レベルの増大とある種の癌との間には相関関係が認められている。ある種の癌にかかっている患者が低コレステロール血を有していることが分かっている。この低コレステロール血は癌細胞によるコレステロールの過剰消費の結果である。それらの癌細胞は、生き残るために、腫瘍組織内でのLDL受容体(LDL−R)の発現レベルの増大を誘発する(Henrickssonら、1989)。前立腺癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、胃癌、それに白血病などの特定の癌においても同様のことが言える。
その結果、LDL−Rを過剰に発現する癌細胞は本発明による抗体の好ましい標的となる。抗LDL−R抗体EMAB604が黒色腫株HT144及びGUY 17.2に結合することが示されている。
従って、本発明はヒトLDL(低濃度リポタンパク質)受容体に向けられた、黒色腫特有の細胞溶解を引き起こすことができるモノクローナル抗体に関係している。
本発明の別の主題は、in vitro、ex vivo、あるいはin vivoでエフェクター免疫細胞のFCγRIII受容体を活性化させるか、あるいはエフェクター細胞によるサイトカイン又はケモカインの分泌を起こすために、本発明による抗体を使用することである。実際、本発明による抗体はそのFc領域によってFcγRIIIA受容体を活性化する能力の故に用いることができる。このことはかなりの利点を提供してくれる。というのはこの受容体は『エフェクター細胞』と呼ばれる細胞の表面に発現されるからであり、この抗体のFc領域がエフェクター細胞が持っている受容体に結合すると、FcγRIIIAの活性化と標的細胞の破壊をもたらすからである。エフェクター細胞とは、例えば、NK(ナチュラル・キラー)細胞、マクロファージ、好中球、CD8リンパ球、Tγdリンパ球、NKT細胞、好エオシン球、好塩基球、あるいは肥満細胞である。
本発明のさらに別の特定の主題は前に述べたように医薬品として用いられる抗体である。
本発明の1つの特殊な態様で、用いられる抗体はヒトLDL受容体に結合され、エフェクター細胞のリクルートを可能にしてくれる。
本発明のさらに別の主題は、ヒトLDL受容体に向けられたモノクローナル抗体を前立腺癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、胃癌、それに白血病などの癌の治療のための医薬品の製造に用いることである。実際、本発明による抗体はLDL−Rを特異的に標的とする。この実施態様においては、本発明によるこの抗体は、その受容体に結合することによって、特に標的の癌細胞に対するADCCによって標的である癌細胞の溶解反応を起こさせ、後者の溶解を可能にする。従って、溶解された細胞は準特異的癌細胞、LDL−Rを過剰に発現しない、あるいはわずかにしか発現しない健康な細胞で、従って、保存される。
好適に、本発明による抗体を用いて措置される癌は対応する健康な細胞と比較してその癌細胞の表面にLDL受容体が過剰に発現されている癌である。
特に好適には、措置される癌は黒色腫である。
特に好適には、措置される癌は黒色腫である。
従って、本発明は黒色腫治療のための医薬品生産のためにヒトLDLに対するモノクローナル抗体、あるいは上に述べたような抗体を使用することにも関係している。標的の癌細胞はADCC抗体によってADCC反応中にリクルートされたエフェクター細胞によって溶解することができ、LDL−Rをほとんど、あるいはまったく発現しない健康な細胞、あるいは適切であれば処理中の細胞は認識されず従って保存されるようにLDL−R標的のを内部化するためにあらかじめ処理される。
措置される悪性黒色腫は皮膚表面に広がっていて種々の色や輪郭を有し、その表面が不規則であるような黒色腫、そして、悪性黒色腫の水平方向の発展段階に対応する黒色腫、あるいは腫瘍性の突起があったり、すぐに皮膚を冒してしまう明確に限局性に増殖を示す黒色腫などであってよい。
好適に、本発明による抗体は株HT144(HTB−63)(HLA A1, Aw24,B13,B15,Cw3,DRw4,DRw7)及びGUY−17.2から発生する黒色腫に特有な細胞溶解をCD16に基づいて誘発することができる。
本発明のさらに別の主題は本発明による抗体を黒色腫上に発現された1つあるいは複数の他の抗原に対する1つあるいは複数の抗体と組み合わせて使用することに関係している。そうした抗原はリンパ細胞上に発現させることもでき、そして、HLA−Dr、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、及びCD40から選択される。
本発明の別の主題は、本発明による抗体を細胞毒性あるいは細胞増殖抑制性の医薬品など癌の治療のために(化学療法で)一般的に用いられる1つあるいは複数の医薬品と組み合わせて使用することに関連している。これらの医薬品は当業者は周知であり、例えば、細胞毒性剤の場合であれば、アルキル化剤、窒素マスタード、プラチナ誘導体、内位添加剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ抑制剤、紡錘体毒などであり、また細胞増殖抑制剤の場合としては、チロシン・キナーゼ受容体抑制剤、特にEGF(内皮成長因子)受容体、インシュリン受容体、PDGF(血小板誘導成長因子)受容体、FGF(線維芽細胞成長因子)受容体、そしてVEGF(血管内皮成長因子)受容体などであるが、これらに限定されるものではない。
本発明の1つの特殊な実施態様で、本発明による抗体の使用がin vitro、ex vivo、あるいはin vivoで、NK(ナチュラル・キラー)細胞、NKT(ナチュラル・キラーT)細胞、Tγdリンパ球、マクロファージ、単球、そしてCD16を発現するために遺伝子的に修飾されたいずれかの細胞、あるいは樹枝状細胞などのFcγRと組み合わせて実行される。
本発明の別の主題は、少なくとも1つの上に述べたような本発明による抗体と薬学的に許容される賦形剤及び/又は媒体を含む医薬品組成物に関係している。この医薬品組成物は癌細胞、特にLDL−Rを過剰に発現する癌細胞を標的とすることを意図している。その表面に健康な細胞によって発現される受容体の量と比較してより多い量の受容体を発現するので、従って、本発明によって調製されるこの医薬品はそれらの癌細胞によって優先的に結合される。
賦形剤は医薬品としての使用が可能で、当業者に周知の、食塩水や生理学的等張性緩衝液などいずれの溶液でも、あるいはいずれの懸濁液、ゲル、粉末などであてってもよい。本発明によるこの組成物は分散剤、可溶化剤、安定剤、界面活性剤、保存剤などから選択された1つあるいは複数の薬剤を含んでいても差し支えない。
好適に、本発明による組成物は、それらの抗体の標的細胞上に存在しているもう1つの抗原に対する少なくとも1つの抗体も含んでいる。
好適に、本発明による前記組成物は抗HLA−DR抗体も含んでいる。実際、黒色腫株HT144とGUY17.2はその表面にHLA−DR抗原を発現する。抗LDL−R及び抗HLA DR抗体の混合物をいずれか一方の抗体をその組成物全体の重さの5、25、50、75、あるいは95%の比率で含んでいる組成物は、黒色腫患者の治療に特に好適である。
さらに、その組成物はいろいろな方法と形状で投与することが可能である。投与はこの種の治療方式におけるいずれの標準的な経路によってでも行うことができ、特に、全身投与、特に静脈、皮膚内、腫瘍内、皮下、腹腔内、筋肉内、動脈内注射などの方法を用いて行うことができる。例えば、腫瘍内に注射したり、腫瘍に近い場所に注射したり、あるいは腫瘍に浴びせたりする方法も可能である。経口、粘膜経由、あるいは局所投与なども可能である。
用量は投与の回数、その他の活性成分、病状の発展程度などによって変えることができる。
用量は投与の回数、その他の活性成分、病状の発展程度などによって変えることができる。
本発明の別の主題は、癌性の、あるいは健康な、又は肝硬変組織の免疫組織学的分析やELISA分析、さらにはin vivo、ex vivo、あるいはin vitr定量テストで本発明による抗体の使用である。
本発明のその他の実施態様や利点を以下の実施令で述べるが、これらは例示的なものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:抗LDL−Rキメラ性抗体C7の発現ベクターの構築
A:マウス抗体C7の可変領域のリーダー配列の判定
タイプIgG2b,kの免疫グロブリンを生成するマウスハイブリドーマC7の総RNAを抽出した(Machery−Nagel Nucleospin RNAキット 740609.250)。逆転写を行った後、抗体C7の軽(Vk)及び重(VH)鎖の可変ドメインを5’RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)技法(5’RACE キット、Invitrogen ref.18374,041)によって増幅させた。
タイプIgG2b,kの免疫グロブリンを生成するマウスハイブリドーマC7の総RNAを抽出した(Machery−Nagel Nucleospin RNAキット 740609.250)。逆転写を行った後、抗体C7の軽(Vk)及び重(VH)鎖の可変ドメインを5’RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)技法(5’RACE キット、Invitrogen ref.18374,041)によって増幅させた。
簡単に言うと、第1の逆転写ステージは先ずマウスCkあるいはγ2b定常領域の5‘領域に位置しているプライマーを用いて行われた。その後、ポリdc配列を合成cDNAの3’位置に付加してから、ポリdc配列を識別する5’プライマーと逆転写プライマーの5’位置のマウスCkあるいはγ2b定常領域に位置している3‘プライマー用いてVk及びVH領域の増幅を行った。これら2つのステージに用いられたプライマーは以下の通りである。
1:逆転写プライマー
a:マウス・カッパ固有アンチセンス・プライマー5’−ACT GCC ATC AAT CTT CCA CTT GAC−3’(配列識別番号No.1)
b:マウスγ2b固有アンチセンス・プライマー5’−CTGTAGAGTCCAGACTGCAGGAG−3’(配列識別番号No.2)
a:マウス・カッパ固有アンチセンス・プライマー5’−ACT GCC ATC AAT CTT CCA CTT GAC−3’(配列識別番号No.1)
b:マウスγ2b固有アンチセンス・プライマー5’−CTGTAGAGTCCAGACTGCAGGAG−3’(配列識別番号No.2)
2:5’RACE PCRプライマー
a:マウス・カッパ固有アンチセンス・プライマー5’−TTGTTCAAGCACACGACTGAGGCAC−3’(配列識別番号No.3)
b:マウスγ2b固有アンチセンス・プライマー5’−CACTGACTCAGGGAAGTAGCCCTTG−3’(配列識別番号No.4)
a:マウス・カッパ固有アンチセンス・プライマー5’−TTGTTCAAGCACACGACTGAGGCAC−3’(配列識別番号No.3)
b:マウスγ2b固有アンチセンス・プライマー5’−CACTGACTCAGGGAAGTAGCCCTTG−3’(配列識別番号No.4)
このようにして得られたVH及びVk PCR生成物はベクターpCR4 Blunt−TOPO(ゼロ・ブラントTOPR PCRクローニング・キット、Invitrogen、K2875−20)にクローンし、次に配列決定を行った。
マウス抗体C7のVk領域のヌクレオチド配列を配列識別番号No.5の配列で示し、推定されたペプチド配列は配列識別番号No.10の配列である。Vk遺伝子はVk1准グループに属する[Almagro JC et.al.,Immunogenetics(1998),47:355−363]。Kabatナンバリングによって定義された[Kabat et.al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,NIH Publication,91−3242(1991)]マウス抗体C7のVk領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を、配列識別番号No.6、No.8、及びNo.9にそれぞれ示す。IMGT(国際ImGenoGeneticsデータベース)分析[Lefranc,M.−P.et.al.,Dev.com.Immunol.,27,55−77(2003)]によって定義されるマウス抗体C7のVk領域のCDR1−IMGT、CDR2−IMGT、及びCDR3−IMGT配列を、配列識別番号No.15、No.16、及びNo.17にそれぞれ示す。この定義は、配列可変性分析だけに完全に依存しているKabatのそれとは違って、超可変性ループの特徴付け[Chothia C.及びLesk A.M.J.Mol.Biol.196:901−17(1987)]と結晶学による抗体の構造分析を考慮に入れている。
C7のVH領域の核酸配列は配列識別番号No.7で示される配列であって、それから推定されるペプチド配列は配列識別番号No.11の配列である。このVH遺伝子は准グループVH1[Honjo.T及びMatsuda F.“immunoglobulin genes”.Honjo T.and Alt F.W編集、Academic Press,London(1996), pp.145−171]に属している。Kabatナンバリング[Kabat et.al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,NIH Publication, 91−3242(1991)]によって定義されるマウス抗体C7のVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列は、配列識別番号No.22、配列識別番号No.24、及び配列識別番号No.25でそれぞれ示してある。IGMT (国際ImGenoGeneticsデータベース)分析[Lefranc,M.−P.et.al.,Dev.com.Immunol.,27,55−77 (2003)]によって定義されるマウス抗体C7のVH領域のCDR1−IMGT、CDR2−IMGT、CDR3−IMGT配列は、配列識別番号No.26、No.27及びNo.28にそれぞれ示してある。この定義は、配列可変性分析だけに完全に依存しているKabatのそれとは違って、超可変性ループの特徴付け[Chothia C.及びLesk A.M.J.Mol.Biol.196:901−17(1987)]と結晶学による抗体の構造分析を考慮に入れている。
B.キメラ性抗体EMAB604の軽鎖発現ベクターの重鎖及び軽鎖の構築
1.カッパー軽鎖ベクター
pCR4Blunt−TOPO配列決定ベクターにクローンされたVk配列を以下のクローニング・プライマーを用いて増幅した。
a)Vkセンス・プライマー(配列識別番号No.29)
5’−ATCGAACTAGTGCCGCCACCATGAAGTTGCCTGTTAGGCT−3’
下線を付した部分の配列はSpe I制限サイトに対応し、ゴシック体で示した部分の配列はKozakコンセンサス配列に対応し、そして最初のATGはイタリック体で示してある。
b)Vkアンチセンス・プライマー(配列識別番号No.30)
5’−GATGAAGACACTTGGTGCAGCCACAGTTCGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCCT−3’
このプライマーはマウスVk配列(イタリック体)とヒト定常領域(Ck)(ゴシック体)との結合をつくりだす。下線を付した配列はDraIII制限サイトに対応している。
pCR4Blunt−TOPO配列決定ベクターにクローンされたVk配列を以下のクローニング・プライマーを用いて増幅した。
a)Vkセンス・プライマー(配列識別番号No.29)
5’−ATCGAACTAGTGCCGCCACCATGAAGTTGCCTGTTAGGCT−3’
下線を付した部分の配列はSpe I制限サイトに対応し、ゴシック体で示した部分の配列はKozakコンセンサス配列に対応し、そして最初のATGはイタリック体で示してある。
b)Vkアンチセンス・プライマー(配列識別番号No.30)
5’−GATGAAGACACTTGGTGCAGCCACAGTTCGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCCT−3’
このプライマーはマウスVk配列(イタリック体)とヒト定常領域(Ck)(ゴシック体)との結合をつくりだす。下線を付した配列はDraIII制限サイトに対応している。
このようにして得られたVk PCR生成物はマウス抗体C7の天然のペプチド信号をコード表現する配列を含んでいる。このVk PCRは、従って、その核酸配列が配列識別番号No.21で示され、その推定されるペプチド配列が配列識別番号No.31であるヒトCk定常領域の5’位置の軽鎖のキメラ化ベクターのSpe I及びDra IIIサイトの間でクローンされた。このキメラ化ベクターのヒトCk配列はマウスVk配列のクローニングを可能にするためにDra III制限サイトをつくるためにサイレント突然変異によって予め修飾された。このキメラ化ベクターはRSVプロモータとbGH(仔ウシ成長ホルモン)ポリアデニル化配列、さらにdhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素)選択遺伝子を含んでいる。
このベクターによってコード表現されるキメラ性抗体EMAB604の軽鎖の配列は配列識別番号No.13のヌクレオチド配列にあり、配列識別番号No. 14の推定されるペプチド配列に対応する。
2.重鎖
同様の手順を抗体EMAB604の重鎖のキメラ化にも適用した。
pCR4Blunt−TOPOベクターにクローンされたVH配列を、以下のクローニング・プライマーを用いて最初に増幅させた。
a)VHセンス・プライマー(配列識別番号No.32)
5’−ATCGAGCTAGCGCCGCCACCATGGAATGGCCTTGTATCTT−3’
下線を付した配列部分はNhe I制限サイトに対応し、ゴシック体の配列部分はKozakコンセンサス配列に対応し、イニシエータATGをイタリック体で示してある。
b)VHアンチセンス・プライマー(配列識別番号No.33)
5’−ACCGATGGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGGAGACTGTGAGAGT−3’
このプライマーはマウスVH配列(イタリック体)とヒトG1定常領域(ゴシック体)の間の結合をつくりだす。下線を付した配列部分はApa I制限サイトに対応する。
同様の手順を抗体EMAB604の重鎖のキメラ化にも適用した。
pCR4Blunt−TOPOベクターにクローンされたVH配列を、以下のクローニング・プライマーを用いて最初に増幅させた。
a)VHセンス・プライマー(配列識別番号No.32)
5’−ATCGAGCTAGCGCCGCCACCATGGAATGGCCTTGTATCTT−3’
下線を付した配列部分はNhe I制限サイトに対応し、ゴシック体の配列部分はKozakコンセンサス配列に対応し、イニシエータATGをイタリック体で示してある。
b)VHアンチセンス・プライマー(配列識別番号No.33)
5’−ACCGATGGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGGAGACTGTGAGAGT−3’
このプライマーはマウスVH配列(イタリック体)とヒトG1定常領域(ゴシック体)の間の結合をつくりだす。下線を付した配列部分はApa I制限サイトに対応する。
この増幅されたVH断片はマウス抗体C7の天然のペプチド信号をコードする配列を含んでいる。次にこのVH PCR増幅生成物を、ヒトγ1定常領域の5’位置に重鎖を含むSpe IとApaIサイトの間にクローンした。その核酸配列を配列識別番号No.23に、そして推定されるペプチド配列を配列識別番号No.34に示す。このキメラ化ベクターはRSVプロモータとbGH(仔ウシ成長ホルモン)ポリアデニル化配列、そして新選択遺伝子を含んでいる。
このベクターによってコード表現されるキメラ性抗体EMAB604の重鎖の配列の核酸配列を配列識別番号No.19に、そして推定されるペプチド配列を配列識別番号No.20に示す。
実施例2:キメラ性EMAB604を生成する細胞株YB2/0から誘導される細胞株の作製
ラット細胞株YB2/0(ATCC# CRL−1662)を5%死産仔ウシ血清(JRH Biosciences:12103−78p)を含むEMS培養液(Invitrogen:041−95181M)内で培養した。トランスフェクションのために、Avi IIで直線化された軽鎖ベクターK463−26−C7を25μgとNot Iで直線化された重鎖ベクターH−463−27−C7を26.7μg用いて、エレクトロバッファー培養液(Cell Projects:EB−110)内で500万個の細胞をエレクトロポレーションにかけた。用いられたエレクトロポレーション条件は幅が0.4cmの0.5mlキュベットに対して230ボルト及び960マイクロファラッドであった。このエレクトロポレーション用キュベットの内容物を96ウェル・プレート5枚に1ウェルあたり5000個の細胞の密度で分散させた。
これらの細胞を、選択された5%透析血清(Invitrogen:10603−017)を含むRPMI培養液(Invitrogen:21875−034)、500μg/mlのG418(Invitrogen:10131−027)、そして25nMのメソトレキセート(Sigma:M8407)に入れる捜査はトランスフェクションから3日後に行われた。
耐性トランスフェクションウェルの上澄み液はヒトIg配列に特異性を示すELISAアッセイによってキメラ性免疫グロブリン(Ig)の存在に関してスクリーニングされた。ほとんどの抗体をつくりだす16のトランスフェクション因子を24ウェル・プレート内で増幅させて、その生成能力(生産性及び最大産出能力)とつくりだされたIgGsのフコース・レベルに関する評価を行った。
以下に『R604』と呼ぶR604 CH10(生成率:8.1pcd,最大生成:38.5μg/ml、IgGsのフコース・レベル:25.5−26.8%)を、キメラ性抗体EMAB604の生成を基準として選択した。
キメラ性抗体EMAB604の生成は、25cm2、75cm2、及び175cm2のフラスコ、継いでローラー・ボトル内で2x105細胞/mlに希釈することで得られた5%仔ウシIg枯渇血清(Invitrogen:16250−078)と500μg/mlのG418(Invitrogen:10131−027)を含むEMS培養液内で培養することで行われた。最大体積(0.9l)に達した後、細胞存続性が50%以下になるまで、培養を継続した。生成後、タンパク質A上で親和性クロマトグラフィを行うことによって精製し、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で検査した。
実施例3:ADCCテスト実施手順
標的細胞(HT−144あるいはGUY 17.2細胞株)を異なった抗体濃度(0、0.1、1、10μg/ml)で培養し、エフェクター細胞(NK細胞)をネガティブ枯渇キット(NK細胞単離キット、Myltenyl,Paris,France)を用いて精製した。健康なドナーから得られた抹消血液から開始した。4時間培養した後、この抗体によって誘発された細胞毒性を、溶解された細胞から放出された酵素乳酸塩デヒドロジェナーゼ(LDH)の活性を上澄み液内で評価することによって熱量測定で測定する。その結果を、抗体濃度を基準として特定の細胞溶解の割合で表現してある。Emax値(最大細胞溶解パーセンテージ)とEC50(50%最大溶解を誘発する抗体の量)をPRISMソフトウェア(Graphpad Software)で計算する。
実施例4:黒色腫GUY17.2細胞株上でCHO株によって生成されたEMAB604 及び抗HLA−DR抗体のADCC活性(図1)
抗体EMAB604はGUY−17.2に特異的な細胞溶解をCHO内で生成される抗HLA−DR抗体と比較してより多く誘発する。
最大細胞溶解値(Emax)はEMAB604と抗HLA−DR CHOに対してそれぞれ19及び15%である。対応するEC50s(50%最大細胞溶解に必要な抗体の量)はそれぞれ0.45と5.71μg/mlで、この事実は抗体EMAB604の活性がCHO内で生成される抗HLA−DR抗体より約10倍強いことを示している。
計算はPRISMソフトウェアによってモデル曲線(sigmoid)を作成した後にADCC値Emax(最大細胞溶解)とEC50(Emaxの50%を得るために必要な抗体濃度)を計算する。
マウス抗体3G8(抗CD−16)の存在下で全ての抗体に対して示されるので、ADCC活性はCD16に基づいている。(図2)
実施例5:黒色腫細胞株HT−144上でCHO株によって産出されるEMAB604と抗HLA−DR抗体のADCC活性(図3)
本発明による抗体EMAB604はCHO内で生成される抗HLA−DR抗体によって生成される場合より多く、黒色腫細胞株HT−144に特異的な細胞溶解を誘発する。
最大細胞溶解値(Emax)はEMAB604と抗HLA−DR CHOに対してそれぞれ18及び17%である。対応するEC50sはそれぞれ0.45と1.45 μg/mlで、この事実は抗体EMAB604の活性がCHO内で生成される抗HLA−DR抗体の活性より約8倍強いことを示している。
計算はPRISMソフトウェアによってモデル曲線(sigmoid)を作成した後にADCC値Emax(最大細胞溶解)とEC50(Emaxの50%を得るために必要な抗体濃度)を計算する。
マウス抗体3G8(抗CD−16)の存在下ですべての抗体に対して示されるので、ADCC活性はCD16に基づいている。(図4)
実施例6:IL−2分泌テスト実施手順(図5及び6)
このテストはヒトCD16受容体(FcgammaRIIIa)をエフェクター細胞(Jurkat−CD16)によってトランスフェクトされたJurkat細胞株を用いる。この技術は標的細胞(黒色腫細胞株HT−144あるいはGUY 17.2)に結合したテストされる抗体とCD16との結合によって誘発されるJurkat−CD16株によるインターロイキン2(IL−2)の分泌の測定に基づいている。この目的のために、テスト対象の抗体を、Jurkat−CD16細胞(5x106細胞/ml)の存在下で25ng/mlの割合で標的細胞(1.5x105細胞/ml)に加え、さらに10ng/mlのホルボール酢酸ミリスチン酸(PMA)を加えて、5%CO2の雰囲気内で37℃の温度下で18時間培養する。その後、培養プレートを遠心分離にかける、IL−2をELISA(Quantikine IL−2 R&D,Abingdon,UK)によって定量された培養上澄み液内に放出させる。
最終的な結果を吸着単位(OD)で示す。
最終的な結果を吸着単位(OD)で示す。
この表の結果は図5及び図6に対応する。
実施例7:黒色腫GUY 17.2細胞株上で生成されるEMAB604及び抗HLA−DR抗体のJurkat−CD16株によるIL−2分泌を誘発する能力(図5)
抗体EMAB604はGUY 17.2細胞株の存在下で、CHO内で生成される同じ抗体より多くIL−2の分泌を誘発する。
最大細胞溶解値(Emax)はEMAB604と抗HLA−DR CHO抗体に対して、それぞれ1.35及び0.28OD単位である。
YB2/0内で生成される抗RhD抗体R297は、GUY 17.2細胞に対するネガティブ・コントロールとして寄与する。
実施例8:黒色腫HT−144細胞株上で生成されるEMAB604及び抗HLA−DR抗体のJurkat−CD16株によるIL−2分泌を誘発する能力(図6)
抗体EMAB604はHT−144株の存在下で、CHO内で生成される同じ抗体より多く、IL−2の分泌を誘発する。
最大細胞溶解値(Emax)はEMAB604 と抗HLA−DR CHO抗体に対して、それぞれ1.2及び0.49OD単位である。
YB2/0内で生成される抗RhD抗体R297は、HT−144細胞に対するネガティブ・コントロールとして寄与する。
実施例9:CD16受容体結合テスト手順
CD16受容体に対する結合は、マウス抗CD16抗体(3G8)競合テストによって評価する。
エフェクター細胞(NK細胞)をネガティブ枯渇キット(NK細胞単離キット、myltenyi,Paris,France)で精製し、健康なドナーの抹消血液から開始する。次に、NK 細胞を評価される抗体の濃度を変え(0、10、及び50μg/ml)、さらにフロロクロム(3G8−PE)に結合した抗CD16抗体(3G8)は一定の濃度に保って、NK細胞を培養する。
洗浄した後、3G8−PEのNK細胞のCD16受容体に対する結合をフロー・サイトメトリー法で評価する。結果は結合の割合(パーセント)で示し、100%をマウス抗CD−16抗体(3G8)の結合の完全な抑止とする。
抗体EMABはNK細胞のCD16に対して、EMABlingプラットフォーム(特許出願WO 2006064121参照)によって生成される抗CD20抗体の場合と同様、NK細胞に対して強い結合性を示す。この結合度(62%)は50μg/mlの濃度で、CHO株内で、RituxanRの場合(18.5%)より約3倍も高い(図7)。
本発明のヒトLDL受容体に対するモノクローナル抗体は、非マウス哺乳動物の全ての科及び種類、具体的にはヒト、サル、ネズミ科(マウスを除く)、イノシシ科、ウシ科、ウマ科、ネコ科、イヌ科の動物、そして例えば鳥類も利用することができる。
Claims (30)
- ヒトLDL(低濃度リポタンパク質)受容体に対するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体断片、あるいはモノクローナル抗体誘導体において、その軽鎖のそれぞれの可変領域が配列識別番号No.5のマウス核酸配列によりコード表現され、その重鎖のそれぞれの可変領域が配列識別番号No.7のマウス核酸配列あるいはその性質及び改変されるべきでない抗原に対する前記抗体の結合親和性の上で配列識別番号No.5と配列識別番号No.7の配列と十分な相同性を有する核酸配列によってコード表現され、そして、その軽鎖とその重鎖の定常領域のそれぞれが非マウス種由来の定常領域であることを特徴とするモノクローナル抗体、モノクローナル抗体断片、あるいはモノクローナル抗体誘導体。
- その軽鎖とその重鎖の定常領域のそれぞれがヒト定常領域であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
- 各軽鎖の定常領域がタイプkであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の抗体。
- 各重鎖の定常領域がタイプγであることを特徴とする、前記請求項1から3のいずれか1項に記載の抗体。
- 各重鎖の定常領域がタイプγ1であることを特徴とする、請求項4に記載の抗体。
- 各重鎖の定常領域がタイプγ1であり、配列識別番号No.23の核酸配列でコード表現され、そして、その各軽鎖の定常領域が配列識別番号No.21の核酸配列でコード表現されることを特徴とする、請求項5に記載の抗体。
- 各軽鎖が配列識別番号No.13の核酸配列でコード表現され、さらに、各重鎖が配列識別番号No.19の核酸配列でコード表現されることを特徴とする、前記請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体。
- 配列識別番号No.13の核酸配列から推定されるペプチド配列が配列識別番号No.14の配列であり、配列識別番号No.19の核酸配列から推定されるペプチド配列が配列識別番号No.20の配列であることを特徴とする、請求項7に記載の抗体。
- ラットハイブリドーマ細胞株によって生成されることを特徴とする、前記請求項1から8のいずれか1項に記載の抗体。
- ラットハイブリドーマYB2/0(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにATCC CRL−1662の番号で預託されているYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞)によって生成されることを特徴とする、請求項9に記載の抗体。
- Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)にCNCM1−3692によって登録預託されているクローンR604によって生成される抗体EMAB604であることを特徴とする、請求項10に記載の抗体。
- 請求項1から11のいずれか1項に記載の抗体の配列識別番号No.12で示される軽鎖の発現ベクター。
- 請求項1から11のいずれか1項に記載の抗体の配列識別番号No.18で示される重鎖の発現ベクター。
- 請求項1から11のいずれか1項に記載の抗体を発現する安定した細胞株。
- 前記抗体がその内部で発現される細胞株が、SP2/0、YB2/0、IR983F、ヒト黒色腫Namalwa、PERC6、CHO株、特にCHO−K−1、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO−Lec13、CHO Pro−5、CHO dhfr−、Wil−2、Jurkat、Vero、MoIt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NS0、SP2/0−Ag 14及びP3X63Ag8.653で構成される群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の安定細胞株。
- 請求項12及び13による2つの発現ベクターを組み込んだ、請求項14あるいは15に記載の安定細胞株。
- Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に登録番号CNCM 1−3692で登録預託されているクローンR604。
- 請求項1−11のいずれか1項に記載の抗体の重鎖をコード表現する配列識別番号No.19で示されるDNA断片。
- 請求項1−11のいずれか1項に記載の抗体の軽鎖をコード表現する配列識別番号No.13で示されるDNA断片。
- in vitroでエフェクター免疫細胞のFCγRIII受容体を活性化するか、あるいはエフェクター細胞によるサイトカインあるいはケモカインの分泌のための、請求項1−11のいずれか1項に記載の抗体の使用。
- 医薬品として使用するための請求項1−11のいずれか1項に記載の抗体。
- 癌治療を目的とする医薬品製造のための、請求項1−11のいずれか1項に記載の抗体の使用。
- 黒色腫治療用医薬品製造のための、請求項1−11のいずれか1項に記載の抗体の使用。
- 黒色腫治療用医薬品製造のための、ヒトLDL受容体に対するモノクローナル抗体の使用。
- 黒色腫細胞で発現される1つあるいは複数の他の抗原に対する1つあるいは複数の他の抗体との組み合わせによる、請求項23あるいは24に記載の抗体の使用。
- 黒色腫細胞上で発現される前記抗原がHLA−DR、CD20、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、及びCD40から選択されることを特徴とする、請求項25に記載の抗体の使用。
- NK(ナチュラル・キラー)細胞、NKT(ナチュラル・キラーT)細胞、Tγdリンパ球、マクロファージ、単球、C16あるいは樹枝状細胞を発現するように遺伝子工学的に改変されたいずれかの細胞などFcγRをコード表現する細胞と組み合わせての、請求項22−25のいずれか1項記載の抗体の、in vitroあるいはex vitroでの請求項22−25に従った使用。
- 請求項1−11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの抗体と少なくとも1つの賦形剤及び/または少なくとも1つの薬学的に受け入れ可能なビーイクルを含んでいる医薬品組成物。
- 前記抗体の標的細胞上に存在しているもう一つの抗原に対して向けられた少なくとも1つの抗体を含んでいることを特徴とする、請求項28に記載の組成物。
- 抗HLA−DR抗体も含んでいることを特徴とする、請求項28及び請求項29のいずれか1項に記載の組成物。
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