JP2010510287A - リスペリドン用送達システム - Google Patents
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Abstract
本発明は固形リスペリドンを含む徐放性製剤に関し、この製剤は表皮部および熱可塑性ポリマーで形成される内部区画を有する膣デバイスであり、このポリマーはリスペリドンを含有する。このポリマーは、好ましくは酢酸ビニルコポリマーで形成される。
Description
本発明は、固形リスペリドンを含む徐放性製剤および製法に関する。
リスパダール(登録商標)(リスペリドン)は、非定型抗精神病薬であり、双極性躁病や統合失調症など精神病性障害の対症的管理のために精神医学で広く使用されている。リスペリドンは、化学的な分類としてはベンズイソオキサゾール誘導体に属し、化合物名は3−[2−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]エチル]−6,7,8,9−テトラヒドロ−2−メチル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オンである。リスペリドンの合成はUS 4,804,663に記載されている。
精神病性障害において治療結果を得るには、長期にわたって使用することおよび服薬コンプライアンスが必要である。コンプライアンスが不十分であると、患者個人の回復の見込みが悪くなる上、大幅な財務コストがかかる。そのため、服薬コンプライアンスは、複雑であるとともに重要な課題である。高齢者や精神的に弱い者を含む、どの種類の患者も服薬を続けて行くのは難しい。コンプライアンス不良の原因は、健忘、複雑過ぎる投与スケジュール、薬剤の血漿中濃度の変動のピーク時における副作用の発生および注射部位の痛みによる薬剤投与時の不具合など様々である。特に、統合失調症患者では、服薬維持の問題は際立っており、患者の状態を改善するために、医師はコンプライアンスに注心している。
持続性リスペリドン(Risperdal Consta(登録商標))は、リスペリドンと生分解性コポリマーを含む微粒子の水性懸濁液である。これは筋肉内投与用であり注射部位に疼痛を伴う。US 6,596,316には、放出プロフィールが初期遅滞期を有するS字状となるマイクロスフェアの調製方法が記載されている。Risperdal Consta(登録商標)の典型的な初回投与量は、2週ごと25mgである。患者の反応によって、用量は、2週ごと最大50mgまで増量できる。現在、Risperdal Consta(登録商標)は、12.5mg、25mg、37.5mgおよび50mg注射の強度のものが販売されている。この製品は、経口製剤と比較して、血漿中薬剤濃度の変動が少ない。マイクロスフェアからのリスペリドンの顕著な放出は初回注射の3週間後に始まるため、この期間中は経口的抗精神病薬の投与が必要である。血漿中濃度は、4回の注射後に定常状態に達する。持続性リスペリドンの作用は、注射後少なくとも2週間、リスペリドンを含むマイクロスフェアの分解に要する期間、持続する。当然ながら、副作用が発生しても、この2週間の間、患者の服薬を中止できない。薬剤の消失は、最終注射後7から8週間で完了する(Harrison,T.S.,and Goa,K.L.Long−acting risperidone:review of its use in schizophrenia.CNS Drugs(2004),18:113−132)。
US 2003/0153983には、デバイス上およびデバイス環境中での微生物生育を妨げデバイスへの微生物付着を妨げる埋め込み式医療デバイスが記載されている。また、US 4,469,671には、生体内溶解性で生体適合性のポリウレタンとアルキル硫酸塩またはアルケニル硫酸塩などのアクロシン阻害剤を含む膣内用避妊具が記載されている。US 5,558,877には、薬理活性化合物または医薬的に許容される付加塩を含む癌治療用の弾性腟リングが記載されている。WO 02/076426にはエラストマーマトリクス種類の抗菌薬経腟送達システムが記載されている。また、US 4,016,251には、エチレン−酢酸ビニルの成形体からなる、薬剤を含有し、拡散による薬剤の通過に浸透性の薬剤送達デバイスが開示されている。
また、抗精神病薬を投与し得るルートを広汎に挙げたリスト中で言及されたことはあるものの(WO 2004041118)、精神薬物療法において徐放のために腟内経路システムを考えることは極めて稀である。WO 03/055424およびWO 2005/004837には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を経腟送達システムの形で徐放性製剤として用いることが記載されている。
しかし、膣経路による投与は、女性の治療目的に限定した避妊薬の投与またはホルモン代替治療で用い得る。一般に、経膣送達デバイスは、疎水性ステロイド薬を避妊用として送達するため婦人科の分野では周知である(例えばUS 4,292,955、WO 97/02015、WO 2004/103336、WO 2005/089723およびEP 0 876 815が挙げられる。)。また、避妊用の膣リングは、Organon(オランダ)によって商標Nuvaring(登録商標)として市販されている。このようなリングは、高力価ステロイドを投与するために設計されており、その場合、有益な治療効果を得るためには、薬剤送達速度は、通常、0.01から0.5mg/日程度で十分である。しかし、リスペリドンの場合、局所送達される治療有効量ははるかに高く一日0.5から10mg程度の範囲である。また、患者のコンプライアンスを改善するには、血漿濃度ピークの結果として生じる副作用を最小化する必要があり、そのためには、リングからのリスペリドンの送達速度を抑制し、バースト放出を低く抑えなければならない。
WO 03/055424に記載されるような、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を経腟送達システムの形で適用する徐放デバイスは、薬剤含有部として使用するため、表面に1以上のチャネルまたはリング内に成形されたポケットを含む、または中空ドーナツ状のポリジメチルシロキサンチューブを含む。WO 2005/004837には、分散された活性剤を含有する貯蔵部と貯蔵部を不連続的に囲む鞘状部材を備えたデバイスが記載されている。WO 01/70154は、リング内に小孔を有するシロキサンエラストマー腟リングデバイスを開示している。この小孔は、オキシブチニン組成物を含み、リング表面からリングに延びている。非ステロイド性薬剤用には、ポリシロキサンポリマーが選択されているが、これは、この高い薬剤溶解度およびポリシロキサンポリマーが有する公知の高透過性に関係がある(A.D.Woolfson,R.K.Malcolm,R.J.Gallagher,Journal of Controlled Release 91(2003)465−476)。また、同じ種類の分子の拡散係数は、ポリシロキサン中ではポリ酢酸ビニルコポリマー(poly−EVA)中の拡散係数より通常、100から200倍高い(A.Kydonieus編Treatise on controlled drug delivery;fundamentals,optimization,applications(Marcel Dekker Inc.New York,1992。ステロイドの典型的な拡散係数は66から67ページに記載)。
Harrison,T.S.,and Goa,K.L.Long−acting risperidone:review of its use in schizophrenia.CNS Drugs(2004),18:113−132
A.D.Woolfson,R.K.Malcolm,R.J.Gallagher,Journal of Controlled Release 91(2003)465−476
A.Kydonieus編Treatise on controlled drug delivery;fundamentals,optimization,applications(Marcel Dekker Inc.New York,1992
予想外にも、初期バーストがほとんどなく、1週間以上、1または2ヶ月までの期間、約0.5から10mg/日の範囲で実質的に一定の高放出速度を維持するという、放出されたリスペリドンの高効率性とともに、優れた薬剤送達特性を備えたリスペリドン用徐放性製剤が、経腟送達システムの形で調製できることが見出された。このシステムは、先行技術で教示されているポリシロキサンの使用を避けることによって、最適な機械特性、特に柔軟性を有する。
本発明は、固形リスペリドン、表皮部および内部区画を含み、この内部区画は熱可塑性ポリマーで形成され、このポリマーが固形リスペリドンを含有する膣内用デバイスを提供する。好ましくは表皮部は内部区画を覆う実質的に連続な皮膜である。内部区画がリスペリドン5から80重量%を含有する時に良好な結果が得られる。好ましくは内部区画はコアを含み、これに固形リスペリドンを含有しない。また、好ましくは内部区画および/または表皮部および/またはコアまたはこれらの3つのすべては、エチレン−酢酸ビニルコポリマーで形成される。より具体的な実施形態では、酢酸ビニル含有量が6から40%の範囲のエチレン−酢酸ビニルコポリマーを用いる。
リスペリドンを含む本発明による徐放性製剤は、非侵襲的に投与が可能であり、製剤を水性媒体に曝露させることで直ちに薬剤放出を開始でき、システムを腟から除去すれば、その後直ちに薬剤送達を中断できる(これは、治療中に、治療効果が不十分または重篤な副作用があるなどの理由のため、医師が治療を中断または変更したいと考えた場合、特に有利である。)という利点がある。さらに、本発明による製剤は、デバイスの全表面積にわたって実質的な初期バーストなしでリスペリドンを有利に送達するため、膣組織に高濃度のリスペリドンをもたらすリスクを最小化する。さらに、本発明によるデバイスの形態での徐放性製剤は、治療を必要とする女性によって製剤の適用および除去ができるという容易さがあり、この点で薬物療法へのコンプライアンスを改善する。
本発明の有利な特徴は、押し出し技術を用いて簡単に製造でき、リング状に製造した場合、デバイスの断面直径が小さいため柔軟性がある点である。これに加えて、本発明による徐放性製剤は、本質的に薬剤の急速放出を起こさない安全設計である。また、内部区画にコアを適用することによって、システムの薬剤物質効率が改善できる。さらに、コアの適用により、放出動態に実質的な影響を及ぼさずにシステムの機械的性質(これは、快適さ(異物感)や保持に関連して重要である。)が調整できる。
リスペリドンを固体の形態で存在させることにより、放出の間、リスペリドンを連続的に十分に供給でき、また、固体形態とすることで、製造中にデバイスの外部に付いた薬剤の結晶化が防止できる。
用語の説明
腟デバイスは、女性の膣内に挿入する薬剤送達システムを意味する。このシステムは、好ましくは細長い形状を有する送達システムの2つの末端が互いに連結したようなリング状の形態を有する。リングは1以上のループで構成してもよく、これらのループは、楕円形、楕円体、ドーナツ形、三角形、正方形、六角形、八角形など種々の形状を有してもよい。別の形態としては、本発明によるシステムは螺旋状である。これは、1以上のループを備え、この2つの末端が互いに連結されていない螺旋状のファイバー形状を意味する。
腟デバイスは、女性の膣内に挿入する薬剤送達システムを意味する。このシステムは、好ましくは細長い形状を有する送達システムの2つの末端が互いに連結したようなリング状の形態を有する。リングは1以上のループで構成してもよく、これらのループは、楕円形、楕円体、ドーナツ形、三角形、正方形、六角形、八角形など種々の形状を有してもよい。別の形態としては、本発明によるシステムは螺旋状である。これは、1以上のループを備え、この2つの末端が互いに連結されていない螺旋状のファイバー形状を意味する。
リスペリドンは、3−[2−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]エチル]−6,7,8,9−テトラヒドロ−2−メチル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オンを意味する。リスペリドンは、非イオン化薬剤であり、500ダルトン以下の分子量を有し、酢酸ビニル含有量28%のエチレン−酢酸ビニルコポリマーに0.1重量%の溶解度を有する。溶解度は、Laarhoven,J.A.H.ら(2002),International Journal of Pharmaceutics 232,page165に記載されるようにして測定される。本発明の製剤において、リスペリドンの塩は使用に適さない。
ポリマー中の高容量リスペリドン5から80重量%を得るために固体状態とする必要があり、この固体状態は好ましくは結晶リスペリドンである。結晶は、内部区画のポリマーに効率的に分散される。固形リスペリドンの存在を必要とする他の理由は、以下、より詳細に説明するように、内部区画内からのリスペリドンの徐放性送達を得るためである。
連続的な表皮部とは、表皮部がリスペリドン含有区画を連続的に包囲しており、表皮部に薬剤放出のため外見上明確に設けられた部分がないことを意味する。これにより、腟組織と薬剤区画との直接接触が最小となり、局所的な刺激が避けられる。例えば螺旋状に形成されたシステムの末端部、製造過程において剪断により生じた孔、または完全に閉じていないリングの末端など、偶発的な孔しかなく、そうした孔も表皮部を通してリスペリドンが通るのを促進するために意図的に表皮部に導入されたものではない、という意味において表皮部は実質的に連続である。表皮部の材料が、溶解した状態のリスペリドンを含むことは除外されない。
内部区画は、患者に送達されるリスペリドンを含有する区画であり、表皮部によって覆われる。そのため、膣組織と内部区画の間の直接接触は一切ない。表皮部は、内部区画の高濃度薬剤による望ましくない局所的作用から腟組織を守るバリアである。内部区画は熱可塑性ポリマーによって形成される。コアは内部区画内部の構造であり、内部区画中の薬剤含有スペースを低減するためのものである。コアは固形リスペリドンを含有しない。ただし、コアの材料が、溶解した状態のリスペリドンを含み得ることは除外されない。また、製造過程において、リスペリドンを内部区画に導入する際、若干のリスペリドンがコアに入り込み得る。コアは、内部区画用のポリマーまたは熱可塑性ポリマーなど任意の適当な材料で形成される。コアによりデバイスの強度または柔軟性を高めることもでき、薬剤物質効率を増大させることもできる。コアがデバイスに存在する場合、文脈によっては、内部区画を中間層と称される場合もある。
本発明による送達システムは、使用が継続する間、実質的に一定の高放出速度を有するとともに初期バースト放出がほとんどない優れた薬剤送達特性を示す。バースト放出の低減は、バースト倍率で定義される。これは、それぞれ1日目および2日目のインビトロ放出速度であるD1およびD2を用いて
実質的に一定の放出は、放出倍率が一定であることとして定義される。これは、1日目を除外した放出曲線前半の平均インビトロ放出速度(AVG1)(mg/日単位)を放出曲線後半の平均放出速度(AVG2)(mg/日単位)で割ることによって計算する(例えば24日間にわたって測定したインビトロ放出曲線では、2日目から12日目までの平均放出を14日目から24日目までの平均放出で割る。)。本発明では、一定の放出倍率は、0.80から1.2の範囲内、および好ましくは0.85から1.15の範囲内である。
本発明は、1週間から1ヶ月または2ヶ月までの使用期間中、0.5から10mg/日の範囲内のリスペリドン送達率を提供する。
本発明の特徴は、以下の説明およびこの使用によって理解し、影響される可能性がある。化合物の放出はフィックの拡散法則に従う。膣リングは、以下の式によって放出速度が記述できる円筒状の貯蔵部/膜設計物である。従って、放出速度に影響するパラメータを適切に選択することで適当なリングを形成できる。
円筒状の貯蔵部/膜設計物の放出速度は、以下の通りである。
Dp=表皮部ポリマーにおける化合物の拡散係数
Kpc=表皮部と内部区画の間での化合物の分配係数
ΔC=表皮部付近の内部区画と表皮部の間での溶解したリスペリドンの濃度の差
ro=全径、即ち表皮部を含む断面直径
ri=内部区画径(即ちro/ri=l)またはコア+内部区画径(即ちコア含有リングの場合)
この式は、式の右辺の項が一定、即ち時間の関数ではない場合、ゼロ次放出が得られることを示す。
実質的に連続的に内部区画を覆う表皮部を有する本発明によるデバイスによれば、約0.5から10mg/日で実質的に一定のリスペリドン放出速度が達成できることが図2から4に示される。明らかに、内部区画を構成するエチレン−酢酸ビニル(EVA)へのリスペリドンの溶解度は、リスペリドンに対するΔCが十分に高く、速い放出動態をもたらすものとなっている。高いリスペリドン放出速度の準定常状態において実質的に一定のΔCを維持する(即ち低バリア性の比較的薄い表皮部を含むデバイスから実質的に一定の薬剤送達を維持する。)ことに対する制限因子は、溶解したリスペリドンを内部区画と表皮部との間の界面に供給する過程である。供給量(または放出速度と称される。)は複合体の質量輸送過程の結果であり、これは、ポリマーへのリスペリドンの溶解速度などの要因によって決まり、リスペリドンの溶解速度はさらに、リスペリドンのポリマーへの溶解度とポリマーに曝露される薬剤の表面積によって決まる。後者は粒径、形状および薬剤含有量によって決定される。ポリマーを通じたリスペリドンの拡散速度も、溶解速度および放出速度を決定する重要な要素である。内部区画中のリスペリドンが30から70重量%の範囲のデバイスでは、速い放出速度をもたらすのみならず、実質的に一定の放出動態をもたらすことが見出された。
ポリマー中のリスペリドン含有量が約30重量%以上の場合、内部区画を構成するポリマー中で、薬剤粒子は互いに接近し得ると考えられる。ポリマー内の分散固体粒子が形成する構造は、薬剤含有量ならびに粒径および形状に依存する。薬剤放出の間、薬剤粒子の緩慢な溶解によって内部区画自体の特性が経時的に変化し、これにより、薬剤の溶解および移送が容易になり、実質的に一定の高放出速度がもたらされるようである。おそらく、次第に溶解する粒子が残す空孔によって、ポリマー中により通りやすい拡散経路が形成されると同時に、表皮部を通して内部区画に水性液体が流入してこの空孔を水分で満たすことが、高薬剤含有量で実質的に一定の放出を実現することの重要な要素である。
本発明の送達デバイスでは、リスペリドンはすべてのポリマー層内に存在する。システムの製造過程で薬剤を内部区画に導入する場合、システムの製造過程および/または貯蔵時において、薬剤は平衡濃度に達するまで他のポリマー層中に拡散する。
コアを含むリングを基本にした場合、コアなしリングでは拡散距離がその分延びることになるが、基本的にゼロ次放出動態を得るためには、この距離の増加分はなるべく小さく保ち、また、活性化合物は固体形態で存在すべきである。コアなしリングの場合、内部区画の断面直径を比較的小さく保つことによって、拡散距離の増加分を比較的小さく保つことができる。このような小径化を行うと、内部区画の容積が相対的に小さくなるので、目的とする使用期間全体にわたって放出を続ける必要のある活性化合物の量は、内部区画中高濃度になるように導入する。
コアなしリングの内部区画における活性化合物を高濃度とするのは、直径の大きなリングでも達成できるが、そのためには、活性化合物をかなり過剰に、即ち目的とする使用期間全体にわたって放出を維持するのに必要な量よりはるかに多くの量を使用しなければならなくなる。従って、この結果、薬剤物質効率が低くなるので、経済的にも環境的にもあまり魅力的ではない。
コアなしリングでの内部区画の小容積化と同様に、コアを含むリングでの内部区画の小容積化は、処理時に比較的小容積のポリマー内に活性化合物を高濃度化させる目的に適っている。
本発明による経腟送達システムは、1週間から1ヶ月または2ヶ月までの使用期間中、0.5から10mg/日の範囲のリスペリドン放出速度をもたらすことができる。放出速度は、好ましくは1.5から5mg/日の範囲である。
本発明によって薬剤送達システムを形成するのに使用できる熱可塑性ポリマーは、基本的にはエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー、低密度ポリエチレン、ポリウレタン類およびスチレン−ブタジエンコポリマーなどの医薬用途に適する任意の押出し可能な熱可塑性ポリマー材料でよい。好適な実施形態においては、機械的および物理的性質が優れている点で、エチレン−酢酸ビニルコポリマーが使用される。EVAコポリマーは表皮部だけでなく、コアや中間区画(内部区画)に用いてもよく、Elvax、Evatane、Lupolen、Movriton、Ultrathene、Atevaおよびvestyparなどの商品名で市販されているものなど、任意の市販エチレン−酢酸ビニルコポリマー材料が使用できる。これらのエチレン−酢酸ビニルコポリマーは、コポリマー中の酢酸ビニル量により種々のグレードのものが入手可能である。例えばEVA28は酢酸ビニル含有量28%のコポリマーである。
一つの実施形態では、少なくとも表皮部はエチレン−酢酸ビニルコポリマーで形成する。別の実施形態では、コア、内部区画および表皮部または内部区画および表皮部(コアなしリングの場合)をエチレン−酢酸ビニルコポリマーで形成する。これらのコポリマーはそれぞれ同一のグレードまたは異なるグレードでもよい。
別の実施形態では、内部区画は、同一グレードのエチレン−酢酸ビニルコポリマー材料で形成する。しかし、内部区画に異なるグレードのポリマーを選択することによって、リングの柔軟性が調整できる。表皮部の厚さおよび表皮部の酢酸ビニル含有量は、活性成分の放出速度に影響する。表皮部の厚さが薄く表皮部の活性成分含有量が高いほど、活性成分の放出速度はより大きくなる。
一つの実施形態では、酢酸ビニル含有量6%から40%のEVAコポリマーが使用される。別の実施形態では、酢酸ビニル含有量6%から33%のEVAコポリマーが使用される。さらに別の実施形態では、酢酸ビニル含有量9%から33%のEVAコポリマーが使用される。さらに別の実施形態では、12%から33%の酢酸ビニル含有量のEVAコポリマーが使用される。別の実施形態では、表皮部は酢酸ビニル含有量6%から33%のEVAコポリマーで形成する。さらに別の実施形態では、表皮部は、酢酸ビニル含有量9%から33%のEVAコポリマー、例えばEVA9、EVA15、EVA18、EVA28またはEVA33で形成する。EVAコポリマーの酢酸ビニル含有量をこれより低くすると、腟リングの剛性が高くなることは当分野では公知である。さらに、断面直径を大きくすると、剛性も高く、即ち柔軟性が低くなる。
本発明の腟リングは、共押出およびブレンド押出などの公知の押出し方法で製造できる。薬剤を含む内部区画材料を得るために、リスペリドンをEVAコポリマーと混合する。混合過程で重要な工程は、ブレンド押出である。次いで、薬剤/EVAコポリマー混合物をコアおよび表皮部材料とともに共押出して3層構造(コアを含む)ファイバーとする。または、薬剤EVAコポリマー混合物を表皮部材料とともに共押出して2層構造のファイバー(コアなしリング)とする。この工程の後、薬剤を部分的にEVAコポリマー中に溶解させてもよい。使用するEVAコポリマー中の酢酸ビニル含有量によって薬剤のコポリマーへの溶解度は決まる。溶解しない薬剤は、すべて内部区画における固相として存在する。固相は、薬剤の溶解相と平衡となり、溶解活性物質の一定濃度は表皮部層を制御する速度に近くなる。このようにして得られた3層または2層構造のファイバーを所望の長さのファイバー片に切断し、各片を当業者には既知の任意の適当な方法でリング状デバイスに組み立てる。次いで、場合により滅菌または消毒後、リングを例えば適当な小袋を用いて包装する。
押出分野の当業者であれば、当分野で公知の方法および手順および本出願の説明や実施例に基づいて、押出温度、押出速度およびエアギャップなど、薬剤を含有する3層または2層構造のファイバーを製造するための最適の処理条件を見出すことは、困難ではない。薬剤/EVAコポリマー混合物のブレンド押出のために適当な温度は80°
Cから130°
Cの範囲内、例えば90°
Cである。3層または2層構造のファイバーを共押出するために適当な温度は、80°
Cから150°
Cの範囲内である。
Cから130°
Cの範囲内、例えば90°
Cである。3層または2層構造のファイバーを共押出するために適当な温度は、80°
Cから150°
Cの範囲内である。
リスペリドンEVAコポリマー混合物の押出のために好ましい温度は薬剤の融点以下、即ちおよそ170°
C以下である。押出時に溶融が起こると、薬剤の遅発性結晶化のような現象を引き起こす可能性がある。本発明による徐放性製剤の製造では、結晶リスペリドンが好ましい。
C以下である。押出時に溶融が起こると、薬剤の遅発性結晶化のような現象を引き起こす可能性がある。本発明による徐放性製剤の製造では、結晶リスペリドンが好ましい。
このようにして、一定の薬剤放出速度で、例えば0.5から10mg/日の範囲でリスペリドンを放出する腟リングが製造できる。
本発明による腟リングは、いかなる実用的サイズでも製造できる。リングは、一つの実施形態では約50mmから60mm、別の実施形態では約52mmから56mmの外径を有する。さらに断面直径は、別の実施形態では約2.0mmから6.0mm、さらに別の実施形態では約2.5mmから5.0mm、さらにまた別の実施形態では約3.0mmから4.0mm、尚さらにまた別の実施形態では約4.0mmである。内部区画に含有される薬剤の量は、一つの実施形態では5から80重量%、別の実施形態では10から70重量%、さらに別の実施形態では30から70重量%、さらに別の実施形態では40から65重量%である。
別の実施形態では、表皮部は酢酸ビニル含有量9%から33%のEVAコポリマーで形成され、薬剤含有内部区画に含有される薬剤の量は40から65重量%である。さらに別の実施形態では、表皮部は酢酸ビニル含有量15%から33%のEVAコポリマーで形成され、厚さは30から200μmであり、内部区画のコポリマーは28から33重量%の酢酸ビニルを含有し、薬剤含有内部区画に含有される薬剤の量は30から65重量%である。
一つの実施形態では、本発明によるドラッグ送達システムは、円筒状の内部区画およびこの区画を覆う表皮部からなる円筒状ファイバーである。この円筒状ファイバーの断面直径は、特定の実施形態では約2.5mmから6mm、具体的実施形態では約3.0mmから5.5mm、および別の実施形態では約3.5mmから4.5mm、およびさらに別の実施形態では4.0mmから5.0mmである。ファイバーの表面は一つの実施形態では800mm2以上であり、別の実施形態では1000mm2以上であり、およびさらに別の実施形態では1700から2200mm2程度である。膣内での使用を意図するドラッグ送達システムの設計(物理的寸法)は、患者に不都合がない限り、相当に大きな表面積でもよい。
前記表皮部は、一つの実施形態では20から200μm、別の実施態様では20から100μmの範囲の厚さを有する。さらに別の実施形態では前記表皮部は20から70μmの範囲の厚さを有する。さらにまた別の本実施形態では、内部区画のコポリマーには酢酸ビニル18から33重量%が含有される。さらに別の実施形態では、内部区画のコポリマーには酢酸ビニル28から33重量%が含有される。さらに別の実施態様では、内部区画のコポリマーには酢酸ビニル33重量%が含まれる。
本発明は、以下の段階を含む、中間層にリスペリドンを含む本発明の3層構造薬剤送達システムの製造方法を提供する。
(i)中間層用薬剤含有均質ポリマー顆粒を製造する段階;
(ii)コア用ポリマー顆粒および中間層顆粒を表皮部用ポリマー顆粒とともに共押出して3層構造薬剤送達システムを形成する段階;
(iii)リールでファイバーを回収し、本発明による徐放性製剤を形成する段階。
(ii)コア用ポリマー顆粒および中間層顆粒を表皮部用ポリマー顆粒とともに共押出して3層構造薬剤送達システムを形成する段階;
(iii)リールでファイバーを回収し、本発明による徐放性製剤を形成する段階。
中間層用薬剤含有均質ポリマー顆粒の製造は、以下の段階を含む。
a.ポリマーを粉砕する段階;
b.粉砕したポリマーを中間層に導入するべきリスペリドンと乾燥粉末混合する段階;
c.得られた粉末混合物をブレンド押出する段階;
d.得られた薬剤含有ポリマーストランドを顆粒状に切断して、中間層用顆粒を得る段階;
e.潤滑剤で中間層用顆粒を潤滑化する段階。
b.粉砕したポリマーを中間層に導入するべきリスペリドンと乾燥粉末混合する段階;
c.得られた粉末混合物をブレンド押出する段階;
d.得られた薬剤含有ポリマーストランドを顆粒状に切断して、中間層用顆粒を得る段階;
e.潤滑剤で中間層用顆粒を潤滑化する段階。
以下、本発明を実施例により説明する。
リスペリドン含有3層構造腟リングの製造
3層構造腟リングの製造は幾つかの段階からなる。まず初めに、リスペリドンおよびEVA33コポリマーを含有する内部区画用顆粒を従来法の前混合、ブレンド押出し、ステアリン酸マグネシウムでの潤滑化によって製造した。第二に、コア材料のEVA28を供給材料の潤滑化によって製造した。その後、内部区画用顆粒、コア用顆粒および表皮部層材料を共押出して3層構造ファイバーとする。ファイバー末端を下記の所定長さに切断し、ファイバーの末端を溶接してリングとした。
3層構造腟リングの製造は幾つかの段階からなる。まず初めに、リスペリドンおよびEVA33コポリマーを含有する内部区画用顆粒を従来法の前混合、ブレンド押出し、ステアリン酸マグネシウムでの潤滑化によって製造した。第二に、コア材料のEVA28を供給材料の潤滑化によって製造した。その後、内部区画用顆粒、コア用顆粒および表皮部層材料を共押出して3層構造ファイバーとする。ファイバー末端を下記の所定長さに切断し、ファイバーの末端を溶接してリングとした。
内部区画材料は、所望の量の成分をステンレス鋼製ドラムに添加し、その後、ドラムを60分間47rpmでルーンラート(Rhoenrad)上で回転させることによって粉末混合物を予混合した。次いで、粉末混合物をBerstorff ZE25同方向回転二軸スクリュー押出機に供給し、80°
Cの押出温度でブレンド押出した。ブレンド押出によりリスペリドンが均質的にEVA33コポリマー中に分散されたストランドを得た。次いで、ストランドを内部区画用顆粒に粒状化した。共押出の前に、中間層顆粒は、0.1重量%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、47rpmの固定回転速度で60分間、ルーンラート(Rhoenrad)(樽にたがを掛ける原理)上でステンレス鋼製ドラム内で均質化した。
Cの押出温度でブレンド押出した。ブレンド押出によりリスペリドンが均質的にEVA33コポリマー中に分散されたストランドを得た。次いで、ストランドを内部区画用顆粒に粒状化した。共押出の前に、中間層顆粒は、0.1重量%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、47rpmの固定回転速度で60分間、ルーンラート(Rhoenrad)(樽にたがを掛ける原理)上でステンレス鋼製ドラム内で均質化した。
またコア顆粒用のEVA28は、0.1重量%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、47rpmの固定回転速度で60分間、ルーンラート(Rhoenrad)(樽にたがを掛ける原理)上でステンレス鋼製ドラム内で均質化した。
共押出機の構成は、表皮部材料を処理する15mm表皮部押出機、コア材料を処理する18mmコア押出機、およびブレンド押出機から取り出した内部区画顆粒を処理する18mm内部区画押出機からなる。メルトフローを紡糸口金中で混合し、表皮部−内部区画−コアの3層構造ファイバーを得た。これら合計3つのメルトフローは分離型紡糸ポンプ1式によって体積流量を制御した。押出温度としては 約90°
Cを用いた。押出により、直径約4mmの値の3層構造ファイバーを得た。水浴を用いてファイバーを室温まで冷まし、リールに巻いた。ファイバーを157mmのファイバーに切断し、その後110°
Cでリング状に溶接した。
Cを用いた。押出により、直径約4mmの値の3層構造ファイバーを得た。水浴を用いてファイバーを室温まで冷まし、リールに巻いた。ファイバーを157mmのファイバーに切断し、その後110°
Cでリング状に溶接した。
表皮部、および内部区画として様々な材料および厚さを含有する3層構造リングを製造した(表1参照)。
リスペリドン含有3層構造腟リングのインビトロ放出
リスペリドン含有3層構造腟リングからのインビトロ放出を水(緩衝液でpH4.4に調整)中、37°
Cで少なくとも24日間測定した。コアを含むリスペリドンリングの寸法を表1に記載する。
リスペリドン含有3層構造腟リングからのインビトロ放出を水(緩衝液でpH4.4に調整)中、37°
Cで少なくとも24日間測定した。コアを含むリスペリドンリングの寸法を表1に記載する。
これらのバッチの平均放出速度を表2に示す。3層構造腟リングは、薬剤濃度、表皮部厚さおよび材料を選ぶことにより放出速度が調整できる。
表皮部材料中の酢酸ビニル含有量の影響を図2に示す。図3に示すように、放出速度は腟リングの表皮部厚さによっても影響を受ける。図4は内部区画層の薬剤濃度の影響を示す。
3層構造腟リングにおけるリスペリドンのバースト倍率および定常放出倍率を表3に示す。バースト倍率は、−0.5から0.5の範囲内である。3層構造リングからのリスペリドンの定常放出倍率は、0.85から1.15の範囲である。
急速放出リスク試験
水(緩衝液でpH4.4に調整)中、37°
Cでインビトロでの放出試験により、本発明による腟リングからのリスペリドン放出速度を、2つの開放「リング末端」を有するロッド状に切断したリングと比較する。放出速度は大きく影響されることなく、急速放出は一切発生しなかった。明らかに、本発明によるデバイスの設計では、リスペリドンのような薬剤を含む高投与量薬剤送達システムの急速放出の問題が本質的に解消される。
水(緩衝液でpH4.4に調整)中、37°
Cでインビトロでの放出試験により、本発明による腟リングからのリスペリドン放出速度を、2つの開放「リング末端」を有するロッド状に切断したリングと比較する。放出速度は大きく影響されることなく、急速放出は一切発生しなかった。明らかに、本発明によるデバイスの設計では、リスペリドンのような薬剤を含む高投与量薬剤送達システムの急速放出の問題が本質的に解消される。
Claims (10)
- リスペリドンを含む徐放性製剤であり、前記製剤は表皮部を含む膣デバイスであること、前記デバイスは熱可塑性ポリマーから形成された内部区画を含むこと、前記ポリマーは固形リスペリドンを含有することを特徴とする、前記製剤。
- 前記ポリマーが5から80重量%の範囲のリスペリドンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
- 前記ポリマーが30から70重量%の範囲のリスペリドンを含有することを特徴とする、請求項2に記載の製剤。
- 前記表皮部が実質的に連続していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
- 前記デバイスがリングであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
- 前記内部区画がエチレン−酢酸ビニルコポリマーで形成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
- 前記内部区画が固形リスペリドンを含有しないコアを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
- 前記表皮部がエチレン−酢酸ビニルコポリマーで形成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
- 酢酸ビニル含有量6から40%のエチレン−酢酸ビニルコポリマーを使用することを特徴とする、請求項7または8に記載のシステム。
- 押出または共押出によって得ることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
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