JP2010284297A - 管路内の洗浄度測定方法及び測定キット - Google Patents

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Abstract

【課題】内部が汚染し得る管路において、簡便かつ高感度に管路内の洗浄度を測定することができる、管路内の洗浄度測定方法を提供すること。
【解決手段】内部が汚染し得る管路における、管路内の洗浄度測定方法であって:(i)管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有する球状繊維を、管路内で移動させる工程;及び(ii)工程(i)で得られた球状繊維中のアデニンヌクレオチド量及び/又はタンパク質量を測定する工程;を含む、管路内の洗浄度測定方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、内部が汚染し得る管路における、管路内の洗浄度測定方法及び管路内の洗浄度測定キットに関する。
管路を有する物品であって、管路の内部が汚染し得る物品は、各種製品の製造工程におけるパイプラインや、各種の機器等、様々な分野で広く用いられている。これらのうち、管路内部の洗浄を十分に行わなければならない物品について、その洗浄度の確認は非常に困難である。例えば、内視鏡は細長い管状構造を有し、一般に内径2.5〜4.2mm程度の細い管路内を、患者から採取した体液や、血液の付着した組織片が通過する。このように、管路内通過に伴う管路内への汚物等の付着は、管路内の洗浄における大きな課題となっている。
管路内は、管路外表面と異なり、管路自体を洗浄液や消毒液に浸しても、内部に固着した汚物を十分に除くことが困難である。例えば、ワイヤブラシ等を管路内に挿入してこすり洗いする方法も用いられているが、いずれの洗浄方法においても、洗浄対象の管路内が実際にどの程度洗浄されたのかを知る手段がなければ、管路内の洗浄が十分であるか否かの判断は、洗浄者の経験によるか、定型的な洗浄工程作業の実施によって行うしかない。
このような管路内の汚染度測定に関し、例えば内視鏡管路内の汚染を検出する技術として、鉗子用管路、体液吸引用管路、液滴用管路等の管路内壁に光ファイバーを用いた光源を設け、この光源と対向する内壁面にフォトダイオードを用いた光検出部を設け、光源から光検出部まで管路内を透過してくる光量が、管路内の汚物の量に応じて吸収されて低下するという原理に基づいて内視鏡管路内の汚染度を推定する機構を備えた内視鏡装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、内視鏡を洗浄槽中に配置し、内視鏡管路内にワイヤブラシを挿入、抜去して内視鏡管路を洗浄する内視鏡洗浄装置において、洗浄除去された汚物により洗浄槽中の洗浄水が濁る度合を、光の透過性に基づいて測定することによって、内視鏡管路内の洗浄度合を推定する機構を備えた内視鏡洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、出願人は、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を利用して、検体由来のATP、さらには必要に応じてADPやAMPを併せて測定することにより、該反応により生じる発光量を数値化し、極めて短時間に高感度で検体表面の洗浄度(清浄度)を測定する方法及びキットを開発し、商品化している。この方法は、洗浄度を知りたい検査箇所に、湿らせた汚れ採取用の担体である綿棒を接触させ、具体的には一定面積の平面を拭き取って汚れを担体に移し、次いでこの担体から汚れを抽出してルシフェリン−ルシフェラーゼ反応に供することを特徴とする(例えば、特許文献3参照)。
特開平8−24211号公報 特開2008−173399号公報 特開平11−69997号公報
特許文献1及び2に開示された、洗浄水の濁りや透過光減少を用いた洗浄度測定方法は、感度の点で十分とは言いがたい。また、いずれの方法においても、特殊な構造を備えた、管路を有する物品や洗浄装置を新たに導入しなければならず、従来の管路を有する物品を対象として管路内の洗浄度測定を行うことはできない。
例えば、内視鏡等管路を有する医療機器においては、管路内に通した滅菌生食水を培養することにより、管路内に細菌が残存せず洗浄が十分であることを確認する方法もあるが、培養時間が必要なため、洗浄状態を日常的に確認する方法としては適していない。また、管路内の汚れをタンパク質染色剤で染色後、アルカリ溶液を用いて押し出して、染色を確認するという洗浄度の確認方法も存在するが、この方法は操作が面倒で、測定結果も定性的であり、測定後に再洗浄が必要であるという問題がある。また、染色されたタンパク質の一部が、アルカリ溶液で押し出しきれずに管路内に残ってしまう可能性もある。
また、特許文献3に開示された方法は、複雑な構造を有する管路(例えば医療機器の管路)には適用が難しく、特に、細長い管路内の内壁面に対して従来の汚れ拭き取り方法及び汚れ採取用担体を用いて拭き取り操作を行うことは不可能であるという問題がある。発明者らは、ガーゼ片等のいくつかの拭き取り用担体を内視鏡の鉗子口付近に挿入して内視鏡管路内の汚れの拭き取りを試みた。また、ガーゼ片等のいくつかの拭き取り用担体を鉗子ではさみ、内視鏡先端部から鉗子口に向けて引き上げる方法によっても内視鏡管路内の汚れの拭き取りを試みた。しかしながら、繰り返しの測定において得られる測定値がばらつき、内視鏡管路内の洗浄度を高精度に検出することはできなかった。
以上のことから、本発明は、洗浄度を測定するための特殊な構造を具備しない、従来の管路を有する物品を用いた場合であっても、簡便かつ高感度に管路内の洗浄度を測定できる、管路内の洗浄度測定方法及びそのような測定を精度よく行うために好適な測定キットを提供することを課題とする。
出願人は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、管路内を移動でき、管路より抜去可能な装置の先端部に、管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有する球状繊維を固定して、管路内に挿入し、前記球状繊維を管路内壁に接触させた状態で管路内を移動させることにより管路内壁を拭き取った後、回収した球状繊維中に含まれるアデニンヌクレオチド及び/又はタンパク質の量を測定することで、簡便かつ高感度に管路内の洗浄度を測定できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、内部が汚染し得る管路における、管路内の洗浄度測定方法であって:(i)管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有する球状繊維を、管路内で移動させる工程;及び(ii)工程(i)で得られた球状繊維中のアデニンヌクレオチド量及び/又はタンパク質量を測定する工程;を含む、管路内の洗浄度測定方法に関する。
本発明は、また、工程(i)の、管路内で移動させる前の球状繊維表面及び内部に存在し、工程(ii)において測定されるアデニンヌクレオチド量が、2×10−14モル以下であることを特徴とする、前記の管路内の洗浄度測定方法に関する。
本発明は、また、工程(i)の、管路内で移動させる前の球状繊維の表面及び内部に存在し、工程(ii)において測定されるタンパク質量が、5マイクロモル以下であることを特徴とする、前記の管路内の洗浄度測定方法に関する。
本発明は、また、工程(ii)におけるアデニンヌクレオチド量の測定に、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を利用することを特徴とする、前記の管路内の洗浄度測定方法に関する。
本発明は、また、前記球状繊維が、綿球、合成繊維球又はスポンジ球であることを特徴とする、前記の管路内の洗浄度測定方法に関する。
本発明は、また、前記管路が内視鏡管路、腹腔鏡処置用管路、飲食品製造装置における管路、医薬品製造装置における管路、精密機器製造装置における管路又は精密機器における管路であることを特徴とする、前記の管路内の洗浄度測定方法に関する。
本発明は、また、前記球状繊維が、前記管路内に挿入し20秒後に取り出した直後に、管路の内径より大きい直径を有することを特徴とする、前記の管路内の洗浄度測定方法に関する。
本発明は、さらに、内部が汚染し得る管路における、管路内の洗浄度測定キットであって:(a)ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含むアデニンヌクレオチド測定用試薬;及び(b)測定対象の管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有する球状繊維であって、(a)のアデニンヌクレオチド測定用試薬で測定可能なアデニンヌクレオチド量が2×10−14モル以下である球状繊維;を含む、管路内の洗浄度測定キットに関する。
本発明は、さらに、内部が汚染し得る管路における、管路内の洗浄度測定キットであって:(a’)タンパク質測定用試薬;及び(b’)測定対象の管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有する球状繊維であって、(a’)のタンパク質測定用試薬で測定可能なタンパク質量が5マイクロモル以下である球状繊維;を含む、管路内の洗浄度測定キットに関する。
本発明によれば、内部が汚染し得る管路を有する物品において、簡便かつ高感度に管路内の洗浄度を測定でき、管路内の洗浄状態の確認を確実に行うことができ、管路内の汚染により生じ得る不利益を予防することができる。特に、管路内部が非常に高清浄度であることが要求される分野においても、本発明によれば、簡便かつ十分に高感度に管路内の洗浄度を測定することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
(管路)
本発明の洗浄度測定方法の対象となる管路は特に制限されず、内部が汚染し得る任意の管路について、洗浄度を測定可能である。本発明の一態様において、例えばルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を用いた測定系によりアデニンヌクレオチド量を測定する場合に非常に高感度に管路内の洗浄度を測定することができるという観点からは、非常に高い管路内の清浄度が要求される管路が、本発明の洗浄度測定方法の対象として好ましい。例えば、このような管路としては、医療用機器の管路(内視鏡の管路、腹腔鏡処置用管状器具の管路等)、飲食品、医薬品、精密機器(半導体等)等の製造装置における細長いパイプライン等の管路、各種精密機器における管路等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
洗浄度測定方法の対象は、未使用の管路、使用後の管路、使用後さらに洗浄した後の管路いずれであってもよいが、本発明の洗浄度測定方法が、特に高感度での洗浄度測定が可能であるという観点からは、使用後さらに内部を洗浄した後の管路を対象とすることで、わずかな洗い残しを高感度に検出することができるため好ましい。
例えば、本発明の洗浄度測定方法の対象となる管路の例として、内視鏡の管路、腹腔鏡処置用管路、飲食品製造装置における管路、医薬品製造装置における管路、精密機器製造装置における管路、精密機器における管路等が挙げられる。
内視鏡は、ある患者について検査や処置が終了する度に、内視鏡外部ならびに鉗子用管路及び体液吸引用管路等の管路の外部及び内部を洗浄、消毒し、次の患者の検査や処置に使用するという方法で繰り返し用いられている。また、腹腔鏡を用いて腹腔鏡手術等の腹腔鏡処置を行う際には、その内部を通過して体内に腹腔鏡や手術器具を出し入れすることが可能な、パイプ状の腹腔鏡処置用管路が用いられる。この腹腔鏡処置用管路も、ある患者についての処置が終了する度に、管路の外部及び内部を洗浄、消毒し、次の患者の処置に使用するという方法で繰り返し用いられている。患者の中には、ウイルス性肝炎やAIDS等、ウイルス性感染症の感染者も含まれる場合があるため、そのようなウイルス性感染等が内視鏡や腹腔鏡を用いた検査や処置を介して別の患者へと拡がらないよう、上記の洗浄、消毒には細心の注意が払われる必要がある。内視鏡の管路や腹腔鏡処置用管路の洗浄状態を確実に確認することは、内視鏡や腹腔鏡を用いた検査や処置を介した感染防止にもつながる。
飲食品や医薬品は、直接人体に摂取されることから、製造装置の洗浄を十分に行うことが非常に重要である。例えば、洗浄しきれなかった原料が製造装置における管路内に付着したり、該付着物を栄養源として微生物が増殖したりすることにより、同装置で次に製造される製品中にそれらが汚染物質として混入するおそれがある。また、前回の製造に用いた原料が管路内に付着したままとなり、同装置における次の製造で、その原料が本来含まれないはずの製品に持ち込まれると、特に、その原料がアレルギーを引き起こす物質であった場合等に問題となり得る。飲食品や医薬品の製造装置の管路の洗浄状態を確実に確認することは、このような製品事故の防止にもつながる。
半導体等に代表される精密な構造を有する部品や、精密部品を組み合わせてなる機器等の各種精密機器は、その製造工程において、わずかな異物、汚染物質の混入や付着も許されず、そのような異物や汚染物質の混入や付着が精密機器の性能を大きく劣化させるおそれがある。従って、そのような精密機器自体や、そのような精密機器の製造装置における各種の管路(例えば、半導体製造装置における洗浄水のパイプライン等)は十分に清浄である必要があり、万一異物や汚れが付着している場合、これを高感度で検知できることは非常に有用である。
上記各種管路の種類、具体的な長さや形状、材質等に制限はなく、通常それぞれの用途に用いられている管路を本発明の洗浄度測定方法の対象とすることが可能である。管路の形状は、内壁の洗浄を容易にし、通過する物質の通過を容易にする目的で、また、特に通過する物質が液体や気体等である場合には管路内を均一に流れることを容易にする目的で、一般的にはほぼ円形の断面を有する管路が用いられることが多い。
内視鏡管路の種類としては、例えば、鉗子用管路、体液吸引用管路等が挙げられる。一般的に、内視鏡管路の内径は2.5〜4.2mm程度であり、このような内径を有する内視鏡管路内の洗浄度測定に対し、本発明を特に好適に適用することができる。
腹腔鏡処置用管路の種類としては、例えば、腹部に差し込むトラカール(トロッカー)等が挙げられる。腹腔鏡手術の際には、パイプ状の器具であるトラカールを体内に突き刺し、その管路に腹腔鏡を差し込み、体内の様子をモニターすると共に、手術器具を通過させて手術を行う。一般的に、腹腔鏡処置用管路の内径は、10〜12mmの手術器具を管路内に通過させることができるサイズであり、内径10.0〜12.0mm程度のものが通常用いられる。また、近年、さらに細いタイプの内径5mm程度の管路も使用される傾向にある。これらの内径を有する腹腔鏡処置用管路内の洗浄度測定に対し、本発明を特に好適に適用することができる。
飲食品製造装置、医薬品製造装置、精密機器製造装置等における管路の種類は特に制限されず、任意の内径等を有する任意の管路等が挙げられる。例えば、原料が通過するパイプライン、水等が通過するパイプライン、複数の原料を混合後、更なる加工工程へと移送するためのパイプライン、特に飲食品や医薬品製造装置においては加工処理後の製品を容器に充填するためのパイプライン等、用途に応じて任意の材質、内径、管路長等が採用され得る。精密機器における管路についてもその種類は特に制限されず、任意の材質、内径、管路長等を有する任意の管路等が挙げられる。これらの管路のうち、管路の内径が、数cm以下、特に1cm以下、管路長が、数十cm以上、特に1m以上の管路は、内部を十分に洗浄することが難しいため、本発明の洗浄度測定方法の対象として特に好ましい。
(球状繊維の直径及び形状)
本発明の測定方法に用いられる球状繊維としては、繊維が全体に均等に配分して一定の形状を保っているものであれば特に限定されず、例えば、綿球、合成繊維球、スポンジ球等が挙げられる。異なる太さの管路に対応して、所望の大きさの球状繊維を容易に入手することができるという観点からは、綿球、合成繊維球が球状繊維として好ましい。球状繊維は、管路内に挿入する前の状態で、管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有することを特徴とする。例えば、内視鏡管路が洗浄度測定対象である場合、近年広く用いられている内径2.8mmの内視鏡管路の場合には、直径3.4〜4.5mmの球状繊維、これより旧型の内径3.2mmの内視鏡管路の場合には、直径3.8〜5.1mmの球状繊維が、本発明において好適に用いられる。特に、直径3.8〜4.5mm、すなわち直径約4mm前後の球状繊維であれば、新旧両方の内視鏡の管路に対して好適に利用することができる。同様に、例えば、腹腔鏡処置用管路が洗浄度測定対象である場合、内径10.0mmの腹腔鏡処置用管路の場合には、直径12.0〜16.0mmの球状繊維、細いタイプの内径5.0mmの腹腔鏡処置用管路の場合には、直径6.0〜8.0mmの球状繊維が、本発明において好適に用いられる。
上述の好適な直径を有する球状繊維を管路内で移動させると、球状繊維が管路内壁に適度な圧力で接触し、管路内壁に付着した汚れを良好に拭き取ることが可能である。上述の好適な直径よりも小さな球状繊維を管路内で移動させても、球状繊維が管路内壁に十分に接触せず、管路内壁に付着した汚れを良好に拭き取ることができない。また、上述の好適な直径よりも大きな球状繊維の場合には、管路内に球状繊維を挿入することが困難であり、挿入できたとしても管路内をスムーズに移動させることができない。さらに、上述の好適な直径を外れた大きさの球状繊維は、例えば鉗子等ではさんで管路内を移動させた場合には、鉗子等から球状繊維が脱落しやすいという問題を生じ得る。
一態様において、本発明の測定方法に用いられる球状繊維は、押し縮められた後に一定の復元力を有することを特徴とする。本発明の測定方法に用いられる球状繊維は、上述のように、管路に挿入する前に、挿入しようとする管路の内径より大きい直径を有するため、挿入する際に圧力を受けて縮められる。そして、一定の復元力を有することにより、挿入後は管路内で復元し、管路内壁に十分に密着した状態で管路内を移動することができる。具体的には、一態様において、本発明の測定方法に用いられる球状繊維は、管路に挿入し20秒後に取り出した直後に、管路内径より大きい直径を有することを特徴とする。好ましい例としては、管路に挿入し20秒後に取り出した直後の球状繊維の直径が、管路挿入前の球状繊維直径に対し80%以上である球状繊維が挙げられる。このような復元力を有する球状繊維であれば、管路内で復元するため、管路内壁に十分に密着した状態で管路内を移動して、管路内壁の汚染物質を十分に検出することができる。
本発明の測定方法に用いられる球状繊維は、必ずしも完全な球状である必要はなく、いずれかの方向に多少細長くても良いが、管路内を移動させる際に方向を選ばないという観点からは、球状に近い形状であることが好ましい。
(管路内の球状繊維の移動)
本発明の測定方法は、上記の球状繊維を、管路内で移動させる工程を含む。この工程により、管路内の汚れが球状繊維によって拭き取られる。この移動させる工程は、管路の長さや形状、材質等に応じて行うことができ、管路の一部に対して行うことも可能であるが、管路内全体の洗浄度を測定するという観点からは、管路の一端から他端まで、管路内全長にわたって球状繊維を移動させることが好ましい。一端から挿入した球状繊維を他端まで移動させた後、再度挿入した一端まで戻して抜去してもよい。また、正確な洗浄度の測定を行うという観点からは、常に一定の方法でこの移動を行うことが好ましい。例えば、球状繊維の移動は、管路内を一往復させることも数回往復させることも可能であるが、常に同条件で行うことが好ましい。移動の速度も、極力一定であることが好ましい。この移動を自動化して行っても良い。
移動の方法は特に制限されず、測定対象とする管路に合わせて任意の手法を用いることができる。例えば、管路内を移動させることができ、管路端部より抜去可能であって、その先端部に球状繊維を固定可能な部材を用意し、この移動を行うことができる。管路内を洗浄するためのワイヤブラシの骨格部のように、管路内のほぼ全長にわたり到達可能で、管路内を傷つけることの少ない材質及び形状の部材を用いれば、管路内から球状繊維が回収不能となることがなく、管路内を傷つけずにこの移動を行うことができるため好ましい。このような部材の先端部に球状繊維を固定する方法は特に制限されず、例えば、球状繊維をはさみ込んで固定するような構造を部材の先端に設けることができる。例えば、鉗子用内視鏡管路内の洗浄度を測定する場合には、鉗子そのものを用いて上記の移動を行うことができる。この場合、鉗子の先端に球状繊維をはさみ込み、通常の内視鏡操作と全く同様に内視鏡内で鉗子を移動させるという、極めて簡便な方法で上記の移動を行うことができる。
(アデニンヌクレオチド量の測定)
本明細書中において、アデニンヌクレオチドとは、ATP、AMP、サイクリックAMP及びADPを指す。アデニンヌクレオチドは、バクテリア、真菌、ウイルス等の微生物、生体組織片、体液、飲食品、その半製品等、様々な汚染対象物質中に存在するため、管路内の洗浄度を高感度に検出するための指標物質として好適である。本発明の測定方法においては、特にこのアデニンヌクレオチド量を測定することで、簡便かつ高感度に管路内の洗浄度を測定することが可能となる。特に、微生物を検出することができるため、微生物汚染が問題となる管路内の洗浄度も高感度に測定することが可能となる。
アデニンヌクレオチド量の測定方法は特に制限されず、当業者に公知の手法を用いて行うことができ、例えば、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応によるいわゆる生物発光法を用いて測定することができる。より簡便に高感度で安定した測定を行うという観点からは、特許文献3等に記載の、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を応用した方法を用いることができる。この反応を利用した市販のアデニンヌクレオチド量測定用キットとしては、清浄度検査試薬キット「ルシパックPen」「ルシパックワイド」(キッコーマン社製)等が挙げられ、また、測定用装置としては、「ルミテスターPD−20」「ルミテスターPD−10N」等の各種の「ルミテスター」シリーズ(キッコーマン社製)等が挙げられる。これらのキットや装置を用いて、アデニンヌクレオチド量の測定を高感度かつ簡便に行うことができる。また、これらのキットの一部、例えば、該キットに含まれるアデニンヌクレオチド測定用試薬を用いて、アデニンヌクレオチド量を測定することもできる。さらに、例えば後述の実施例3及び4等に記載のように、該キットに含まれるアデニンヌクレオチド測定用試薬に準じた組成の測定用試薬を調製して、アデニンヌクレオチド量を測定することもできる。例えば、上述のルシパックやルミテスターを用いてアデニンヌクレオチド量の測定を行う場合、直径1cm以下の球状繊維であれば、そのまま測定工程に持ち込むことができる。
管路内の洗浄度を評価する際の、アデニンヌクレオチド量の基準は、維持されるべき所望の洗浄程度に応じて設定することが可能であるが、未使用の管路内にはアデニンヌクレオチドはほとんど存在しないと考えられるため、理想的には検出されるアデニンヌクレオチド量は少ないほど好ましい。例えば、厨房調理器具等の清浄度検査において一定の指標とされている値である、発光量200RLU(ルシパックPen使用、ルミテスターPD−20にて測定)の測定値は、拭き取った部分が十分に清浄であることのひとつの基準となり得る。なお、RLU(RelativeLight Unit)は相対発光単位ともいい、光強度を数値化した単位である。使用する測定装置の原理(光検出部、検出波長等)により、同じ光を測定した場合のRLUの絶対値は若干変化するが、上記のルシフェリン−ルシフェラーゼ反応によるいわゆる生物発光法を用いた場合、RLUが大きいほど多量のアデニンヌクレオチドが存在し、洗浄度が低いことを意味している。
(タンパク質量の測定)
タンパク質量の測定方法は特に制限されず、当業者に公知の手法を用いて行うことができ、例えばクーマシーブリリアントブルー、アミドブラック等の、タンパク質を定量するための試薬を用いた比色法によって測定することができる。この反応を利用した各種のタンパク質測定用試薬やタンパク質量測定用キットも市販されており、例えば「Biotrace Protect M」(Biotrace社製)、「Coomassie (Bradford) Protein Assay Kit」(Pierce社製)、「Protein Assay」(BioRad社製)、等が挙げられる。このような試薬と通常の分光光度計を用いて、又は、標準液の発色と比較することにより、目視によってもタンパク質量の測定を高感度かつ簡便に行うことができる。また、このようなキットの一部、例えば、該キットに含まれるタンパク質測定用試薬を用いて、タンパク質量を測定することもできる。
管路内の洗浄度を評価する際の、タンパク質量の基準は、維持されるべき所望の洗浄程度に応じて設定することが可能であるが、未使用の管路内にはタンパク質はほとんど存在しないと考えられるため、理想的には検出されるタンパク質量は少ないほど好ましい。例えば、日本医療機器学会のワーキンググループでは、許容される器械あたりのタンパク質量として、200μgという値を一般的に推奨している。
上記アデニンヌクレオチド量の測定と、タンパク質量の測定は、測定対象及び測定原理が異なり、本発明の洗浄度測定方法の目的および必要とする感度に応じ、適宜使い分けることができる。
(その他の成分の測定)
上記のアデニンヌクレオチド量及び/又はタンパク質量の測定に加え、洗浄度測定対象の汚れの種類に応じて、他の特定の汚染関与成分に着目した測定を行うことができる。これらの測定は、上述のように管路内を移動させて管路内の汚れを拭き取った球状繊維について、当業者に公知の手法で適宜行うことができる。アデニンヌクレオチド、タンパク質を含む各種成分の測定結果から管路内の汚染に寄与する成分を判断することで、管路内の洗浄方法を適宜選択することにも役立つ。
(球状繊維に含まれるノイズ原因物質の量)
本発明の洗浄度測定方法は、微量なアデニンヌクレオチド量及び/又はタンパク質量を高感度に測定することに基づく方法であるため、測定時に用いる器具、試薬等には、アデニンヌクレオチド量及び/又はタンパク質量の増加や減少につながるノイズ成分ができるだけ混入しないことが望ましい。特に、汚れ拭き取り用の担体である球状繊維のノイズ成分は、直接に測定誤差を生じる原因となり、また、測定値のベースラインが高すぎれば洗浄度が測定不能となるため、厳密に管理される必要がある。
このような観点から、本発明の測定方法に用いる球状繊維は、アデニンヌクレオチド量を測定する場合には、例えば後述の実施例に記載のように、本発明の測定方法で測定した場合に球状繊維から抽出され、測定ノイズとして測定値に持ち込まれるアデニンヌクレオチド量が2×10−14モル以下であることが望ましい。また、タンパク質量を測定する場合には、タンパク質がノイズ成分となるため、本発明の測定方法に用いる球状繊維は、本発明の測定方法で測定した場合に球状繊維から抽出され、測定ノイズとして測定値に持ち込まれるタンパク質量が5マイクロモル以下であることが望ましい。なお、測定ノイズとは、以上の通り、本発明の測定方法で測定した場合に、管路内を通過させる前の球状繊維の表面及び内部から抽出され、測定値に影響するアデニンヌクレオチド及び/又はタンパク質の量である。すなわち、球状繊維中に予め含まれるアデニンヌクレオチド及び/又はタンパク質であっても、本発明の測定方法で測定した場合に球状繊維から抽出され測定に影響を与えるものでなければ測定ノイズとならない。
(管路内の洗浄度測定用キット)
本発明はまた、上記の球状繊維ならびにアデニンヌクレオチド測定用試薬及び/又はタンパク質測定用試薬を含むことを特徴とする、管路内の洗浄度測定キットも提供する。このようなキットに含まれる球状繊維を、測定対象の管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径となるよう調製する。この調製は、例えば、様々な直径の球状繊維を用意して所望の直径の球状繊維を選定する方法や、大きなサイズのものをカットして所望の直径の球状繊維とする方法等によって行うことができる。この球状繊維を上述のとおり管路内で移動させ、その後、キットに含まれるアデニンヌクレオチド測定用試薬を用いてアデニンヌクレオチド量を測定すること、及び/又はタンパク質測定用試薬を用いてタンパク質量を測定することで、管路内の洗浄度を測定することができる。
(アデニンヌクレオチド測定用試薬)
管路内の洗浄度測定キットに含まれるアデニンヌクレオチド測定用試薬は、アデニンヌクレオチド量を測定することができる試薬であれば特に制限されないが、簡便には、例えば、市販の「ルシパックPen」「ルシパックワイド」(いずれもキッコーマン社製)に含まれるアデニンヌクレオチド測定用試薬を用いることができる。さらに、例えば後述の実施例3及び4等に記載のように、該キットに含まれるアデニンヌクレオチド測定用試薬に準じた組成のアデニンヌクレオチド測定用試薬を調製して用いることもできる。
例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含むアデニンヌクレオチド測定用試薬を、アデニンヌクレオチドを含む試料と反応させ、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を用いてアデニンヌクレオチド(特にATP)を測定することができる。上記の組成の試薬において、さらに、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)、ホスホエノールピルビン酸及びピロリン酸(ナトリウム)を含むアデニンヌクレオチド測定用試薬を用いると、さらに高感度で安定した測定を行うことが可能になる。
特にアデニンヌクレオチドとしてADPを測定しようとする場合には、上記の組成の試薬において、さらにピルビン酸キナーゼを含む試薬を用いることが好ましい。また、特にアデニンヌクレオチドとしてサイクリックAMPを測定しようとする場合には、上記の組成の試薬において、さらにサイクリック3’,5’−ヌクレオチドホスホジエステラーゼを含む試薬を用いることが好ましい。さらに、上記の組成の試薬において、微生物細胞内成分抽出試薬やRNA分解酵素を含む試薬を用いることで、微生物細胞内の成分やRNAも、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を用いて測定することができる。また、特定の汚染関与成分に着目した試薬を適宜組み合わせて用いてもよい。これにより、測定結果から管路内の汚染に寄与する成分を判断し、管路内の洗浄方法を適宜選択することもできる。さらに、補助成分として、酵素の賦活剤、酵素の安定剤、緩衝剤、清浄度検査試薬の持込みATP消去剤等から選択される一以上の成分を添加することもできる。
上記の各成分を含むアデニンヌクレオチド測定用試薬は、例えば特許文献3等の記載を参照することにより、当業者であれば容易に調製することができる。例えば、金属塩としては、2価の金属塩、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、硫酸マンガン、塩化マンガン等のマンガン塩などを用いることができる。
アデニンヌクレオチド測定用試薬における各成分の好適な濃度を以下に示す。
ルシフェリン:5.0μM以上、特に50.0〜10000μM
ルシフェラーゼ:0.1mg/mL以上、特に0.5〜20mg/mL
金属塩:例えばマグネシウムイオンの場合、1.0mM以上、特に5.0〜100mM
ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK):0.001U/mL以上(終濃度)、特に0.002〜100U/mL
ホスホエノールピルビン酸:0.1mM以上、特に0.5〜8.0mM
ピロリン酸:1.0μM以上、特に5.0〜1000μM
(タンパク質測定用試薬)
管路内の洗浄度測定キットに含まれるタンパク質測定用試薬は、タンパク質量を測定することができる試薬であれば特に制限されず、公知の各種タンパク質測定方法に用いる組成のタンパク質測定用試薬を調製して用いることができる。簡便には、例えば、市販の「Biotrace Protect M」(Biotrace社製)、「Coomassie (Bradford) Protein Assay Kit」(Pierce社製)、「Protein Assay」(BioRad社製)等に含まれるタンパク質測定用試薬を用いることができる。
以下、実施例および比較例(本明細書中において、単に「実施例等」ともいう。)に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例等のみに限定されるものではない。
(汚れ拭き取り用担体中に含まれる測定ノイズ成分含量の検討)
汚れ拭き取り用担体として、拭き取りを行う前の各種メーカーの綿球又はガーゼを「ルシパックPen」(キッコーマン社製)の測定試薬に使用説明書に従って接触させ、ルミテスターPD−20(キッコーマン社製)を使用し、アデニンヌクレオチドの量を測定した。また、水道水中で一定時間綿球又はガーゼをもみ洗いし、含有するノイズ成分を洗い流す作業を行った後に、同様にアデニンヌクレオチドの相対量を測定した。
各担体は以下のものを用いた。
区分1〜3:A社製綿球
区分4 :B社製綿球
区分5 :C社製綿球
区分6〜8:D社製ガーゼ(綿製)
測定結果(発光強度(RLU)で記載)を以下の表1に示す。
上記の結果より、洗浄前のガーゼはいずれも拭き取りを行う前のノイズ成分となるアデニンヌクレオチドの含有量が非常に多く、このままでは測定用の汚れ拭き取り用担体として用いることが困難であることがわかった。このノイズ成分は、測定前にガーゼを水道水でもみ洗いすることにより徐々に低減したが、1分間洗浄した後でもノイズ成分が残存しているものがあり、汚れ拭き取り用担体として用いても高感度での洗浄度測定を行うことができないと考えられた。また、水道水でのもみ洗いは使用直前に行わねばならず、操作性の点で実用性が低いと考えられた。
一方、綿球の場合は、全体的にガーゼと比較して拭き取りを行う前のノイズ成分となるアデニンヌクレオチドの含有量は少ないことがわかったが、1分間洗浄した後でもノイズ成分が残存しているものもあった。もみ洗いなどの操作を行わなくても、測定ノイズは発光試薬のベースラインのRLUと同程度の数RLU〜20RLU未満程度にとどまり(この値は、本実施例における測定条件で、アデニンヌクレオチド量に換算すると2×10−14モル以下に相当する)、ノイズ成分含量が少ない汚れ拭き取り用担体として、区分1及び区分2の綿球が好適であることがわかった(本発明1、2)。
(内視鏡鉗子用管路の洗浄度測定モデル試験)
内径2.8mmの内視鏡鉗子用管路モデルを用いて、各種汚れ拭き取り用担体による汚れ拭き取りの行い易さを検討した。
消化器内視鏡(オリンパス社製、型番9−260)の鉗子部分を汚れ拭き取り用装置として利用した。この鉗子の先端部に、上述の実施例1の各区分の綿球又はガーゼ1個をはさんで固定した。次に、清浄な内径2.8mm、長さ130cmのチューブ(テフロン(登録商標)製)に予め一方の端部(鉗子口)より他方の端部まで鉗子を通し、鉗子に上述の綿球又はガーゼを固定し、静かに鉗子口まで綿球を移動させた後、抜去した。抜去時に、綿球又はガーゼの鉗子への固定状態を確認し、汚れを拭き取った綿球又はガーゼを回収した。回収した綿球又はガーゼを、「ルシパックPen」(キッコーマン社製)の綿棒によって押し込む形でルシパックPenの試薬と反応させ、ルミテスターPD−20(キッコーマン社製)を使用してアデニンヌクレオチドの量を測定した。
その結果、いずれの区分の綿球においても、直径4mmの綿球は、チューブ内を移動、抜去する際に動きがスムーズであり、かつ、適度な圧力で内壁と接触し、複数回の試験においても、チューブ内で綿球が脱落することがなかった。このことから、直径4mm前後の球状繊維が、内径2.8mmの管路の拭き取りに好適であると考えられた。
一方、直径3mm前後の綿球を用いた場合には、チューブ内を移動及び抜去する際に、チューブ内壁と綿球とが十分に接触している手ごたえが感じられず、小さすぎて十分に内壁を拭き取れていないと考えられた。また、直径5mm前後以上の綿球を用いた場合には、チューブ内への挿入が困難であった。ガーゼを用いた場合には、チューブ内を移動及び抜去する際の手ごたえはあり、挿入の困難性もみられなかったが、複数回チューブ内の移動及び抜去を実施した際には、抜去の際にガーゼを鉗子に固定した時の丸めた形状が十分に保持されていない場合があった。
(洗浄度測定用試薬の調製1)
以下の(A)発光試薬及び(B)微生物細胞内成分抽出試薬の組合せからなる、微生物以外の汚れ成分及び微生物細胞内成分である、ATP及びAMPの測定が可能な洗浄度測定用試薬を調製した。
なお上記成分のうち、記号「※」のついたHEPES緩衝剤は反応系のpH安定化のため、シュークロースはルシフェラーゼの安定化のため、EDTAは酵素の金属による阻害防止のため、ジチオスレイトールは酵素安定化のため、硫酸アンモニウムはピルベートオルトホスフェートジキナーゼの活性化を強めるため、そして、アデノシンリン酸デアミナーゼは洗浄度測定用試薬の持込みATP消去剤のため、それぞれ添加するもので、必須の成分ではない。
上記の試薬を用いて、実施例1と同様の測定を行ったところ、実施例1と同様の傾向を示す結果が得られ、アデニンヌクレオチドを測定することができた。
(アデニンヌクレオチド測定用試薬の調製2)
以下の(A)発光試薬及び(C)RNA分解酵素試薬の組合せからなる、ATP、AMP及びRNAの測定が可能な洗浄度測定用試薬を調製した。
(A)発光試薬
上記実施例2に同じ。
上記の試薬を用いて、実施例1と同様の測定を行ったところ、実施例1と同様の傾向を示す結果が得られ、アデニンヌクレオチドを測定することができた。
(使用済み内視鏡の鉗子用管路の洗浄度測定)
内径2.8mmの複数の使用済み内視鏡鉗子用管路内の洗浄度を、通常工程による内視鏡鉗子用管路内の洗浄前及び洗浄後にそれぞれ測定した。洗浄は以下の手法を用いて行った。すなわち、洗剤をつけたワイヤブラシを管路内に挿入して洗浄後、水を入れたシリンジの先端を管路の一端に挿入して管路内に水を通すことによって管路内部を水洗浄し、その後、自動洗浄器を用いて洗浄した。その後、アルコールを入れたシリンジの先端を管路の一端に挿入して管路内にアルコールを通し、吊るして内部を乾燥させた。洗浄前及び洗浄後の内視鏡に関し、実施例1において汚れ拭き取り用担体として好適であると判断された区分1の綿球と同一素材の綿球(直径:4mm)を使用し、実施例1及び2に準じて一連の汚れ拭き取り操作及び洗浄度測定操作を行った。結果を表5に示す。
表5に示すように、直径4mm前後の綿球を使用した場合、いずれの内視鏡においても、洗浄前後で発光強度が顕著に低減し、洗浄度が改善していることを数値として確認することができた。汚れを拭き取る際の綿球の状態も、脱落や形状の変化、けば立ちなどはみられず良好であった。
一方、直径3mm前後の綿球を使用して同様の測定を行った場合には、直径4mm前後の綿球の場合と比較して洗浄前後の発光強度の値が非常にばらつき、洗浄前の発光強度の値が洗浄後の発光強度の値よりも大きくなるという傾向が確認できず、また全体に小さい値となった。これは内視鏡管路の内壁の汚れを十分に拭き取れなかったことによると考えられる。直径5mmを超える綿球を使用した場合には、管路内への綿球の挿入が困難であり、洗浄度の測定を行うことができなかった。さらに、1分以上、十分に水道水で洗浄したガーゼを使用して同様の測定を行った場合でも、直径4mm前後の綿球の場合と比較して洗浄前後の発光強度の値に顕著なばらつきが見られ、高感度で安定した測定を行うことができなかった。
なお、上記の区分1の綿球と同一素材の綿球(直径:4mm)を直径2.8mmの内視鏡管路内に挿入し、20秒後に取り出し、直後に直径を測定したところ、3回の測定において、3.2mm、3.7mm及び3.5mm、平均3.5mmであった。すなわち、内視鏡管路内に挿入し、20秒後に取り出した直後の綿球の直径は、挿入した管路内径より大きく、挿入前の直径の80%以上まで復元していることがわかった。

Claims (9)

  1. 内部が汚染し得る管路における、管路内の洗浄度測定方法であって:
    (i)管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有する球状繊維を、管路内で移動させる工程;及び
    (ii)工程(i)で得られた球状繊維中のアデニンヌクレオチド量及び/又はタンパク質量を測定する工程;
    を含む、管路内の洗浄度測定方法。
  2. 工程(i)の、管路内で移動させる前の球状繊維表面及び内部に存在し、工程(ii)において測定されるアデニンヌクレオチド量が、2×10−14モル以下であることを特徴とする、請求項1に記載の管路内の洗浄度測定方法。
  3. 工程(i)の、管路内で移動させる前の球状繊維の表面及び内部に存在し、工程(ii)において測定されるタンパク質量が、5マイクロモル以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の管路内の洗浄度測定方法。
  4. 工程(ii)におけるアデニンヌクレオチド量の測定に、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を利用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の管路内の洗浄度測定方法。
  5. 前記球状繊維が、綿球、合成繊維球又はスポンジ球であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の管路内の洗浄度測定方法。
  6. 前記管路が内視鏡管路、腹腔鏡処置用管路、飲食品製造装置における管路、医薬品製造装置における管路、精密機器製造装置における管路又は精密機器における管路であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の管路内の洗浄度測定方法。
  7. 前記球状繊維が、前記管路内に挿入し20秒後に取り出した直後に、管路の内径より大きい直径を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の管路内の洗浄度測定方法。
  8. 内部が汚染し得る管路における、管路内の洗浄度測定キットであって:
    (a)ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含むアデニンヌクレオチド測定用試薬;及び
    (b)測定対象の管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有する球状繊維であって、(a)のアデニンヌクレオチド測定用試薬で測定可能なアデニンヌクレオチド量が2×10−14モル以下である球状繊維;
    を含む、管路内の洗浄度測定キット。
  9. 内部が汚染し得る管路における、管路内の洗浄度測定キットであって:
    (a’)タンパク質測定用試薬;及び
    (b’)測定対象の管路の内径に対し1.2〜1.6倍の直径を有する球状繊維であって、(a’)のタンパク質測定用試薬で測定可能なタンパク質量が5マイクロモル以下である球状繊維;
    を含む、管路内の洗浄度測定キット。
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JP2016521964A (ja) * 2013-03-06 2016-07-28 ルーホフ コーポレイション 医療機器の清浄度試験装置と方法
WO2018147442A1 (ja) * 2017-02-09 2018-08-16 キッコーマン株式会社 生体関連サンプル及び生体関連器具の清浄度測定キット及び方法

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